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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022136293
(22)【出願日】2022-08-29
(65)【公開番号】P2024032571
(43)【公開日】2024-03-12
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517329487
【氏名又は名称】株式会社豆蔵
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】栗山 広志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 永幸
(72)【発明者】
【氏名】大国 征司
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-15985(JP,A)
【文献】特開平8-323675(JP,A)
【文献】特表2020-518480(JP,A)
【文献】特開2023-35160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持するための2以上の爪と、
2以上の前記爪のそれぞれが接続された前記爪と同数の指部であって、前記指部はリンクにおいて互いに回転可能に接続されている、前記指部と、
前記指部が接続された前記指部と同数のベローズと
を備え、
前記ベローズは空圧制御システムに接続され、前記空圧制御システムによって前記ベローズの内部の空圧が制御されて前記ベローズの長さが制御されることによって、前記指部の間の距離が制御されて前記爪によって前記物品が把持され、前記爪と、前記指部と、前記ベローズとは、いずれも樹脂素材によって構成され、
前記ベローズは、両端に連結部を備え、前記連結部は前記ベローズの端部を嵌める溝をそれぞれ有し前記空圧制御システム側に接続される前記連結部と前記ベローズの間パッキンを備えることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記爪は、前記指部に接続される位置に2つの突起部を有し、前記2つの突起部のそれぞれは、前記指部に設けられた2つの迎合孔に固定されることによって、前記爪は、前記指部に接続されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記指部の間の距離が最も小さいときの前記距離が、前記物品の大きさより大きいことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記ロボットハンドを構成する部品の少なくとも一部に、所定の値を超える外力によって破壊される樹脂が用いられ、前記ロボットハンドに対する過負荷により、優先的に前記部品が破壊されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
バヨネットリングと、前記空圧制御システムに接続された取付フランジとをさらに備え、前記取付フランジと前記ロボットハンドとを接触させ、前記バヨネットリングを回転させることによって前記取付フランジと前記ロボットハンドとを固定することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記バヨネットリングは、勘合溝凸部を有する勘合溝を備え、
前記ロボットハンドは、爪凹部を有する外爪を備え、
前記バヨネットリングを回転させると、前記勘合溝は前記外爪対してスライドし、前記勘合溝凸部と前記爪凹部とが勘合することによって前記取付フランジと前記ロボットハンドとが固定されることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記ロボットハンドは、弾性部と、前記弾性部の先端に突起を備え、
前記バヨネットリングは、迎合孔を備え、
前記バヨネットリングを回転させると、前記突起が前記迎合孔に入り、前記取付フランジと前記ロボットハンドとが固定されることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項8】
第2のパッキンをさらに備え、前記第2のパッキンは前記取付フランジと前記ロボットハンドとの間に配置され、前記ロボットハンドの前記空圧制御システムのエア接手と、前記取付フランジの前記空圧制御システムのエア接手、及び、前記ロボットハンドの電気接点と、前記取付フランジの電気接点とは、前記取付フランジと前記ロボットハンドとが接触する位置において接続されることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記爪は把持部を有し、前記把持部は複数の長爪から成ることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記爪は把持部を有し、前記把持部はカップ形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記爪は把持部を有し、前記把持部は押し当てプレートを有することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関し、特に、物品把持のためのロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
弁当・調理済み食品・総菜等を示す中食を製造する中食工場における調理済みの食品を食品容器に入れる盛り付け作業は、かつては全て作業員による手作業によって行われていたが、近年の人手不足、人件費高騰等の理由により、作業員による手作業に代わって、食品盛り付けに特化したロボットが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-15985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の食品把持のためのロボットハンドは、金属部品を含むため重く、ハンドの変形、及び制御に時間がかかるため、食品の高速把持、解放動作が困難であった(例えば、特許文献1参照)。また、金属部品には錆止めオイル、潤滑オイル等が塗布され、洗浄時にはオイルに合わせた洗剤を使用し、洗浄後に再度オイルを塗布する必要があった。さらに、金属部品が錆びた場合は、錆落とし、部品交換等を行う必要があり、作業負荷が高かった。
【0005】
また、従来の金属部品を含むロボットハンドは硬くて重いため、例えばロボットハンドと作業員が接触したとき、事故が起こりかねない等、受動的安全機能の提供が困難であった。
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明は、安全性が高く、高速把持、解放動作が可能であり、洗浄時の作業負荷が低いロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ロボットハンドであって、物品を把持するための2つ以上の爪と、2つ以上の爪のそれぞれが接続された爪と同数の指部であって、指部はリンクにおいて互いに回転可能に接続されている、指部と、指部が接続された指部と同数のベローズとを備え、ベローズは空圧制御システムに接続され、空圧制御システムによってベローズの内部の空圧が制御されてベローズの長さが制御されることによって、指部の間の距離が制御されて爪によって物品が把持されることを要旨とする。
【0008】
本発明の第1の態様において、爪は、指部に接続される位置に2つの突起部を有し、2つの突起部のそれぞれは、指部に設けられた2つの迎合孔に固定されることによって、爪は、指部に接続されてもよい。
【0009】
本発明の第1の態様において、指部の間の距離が最も小さいときの距離が、物品の大きさより大きくてもよい。
【0010】
本発明の第1の態様において、ロボットハンドを構成する部品の少なくとも一部に、所定の値を超える外力によって破壊される樹脂が用いられ、ロボットハンドに対する過負荷により、優先的に部品が破壊されてもよい。
【0011】
本発明の第1の態様において、ベローズは、両端に連結部を備え、連結部はベローズの端部を嵌める溝をそれぞれ有し、空圧制御システム側に接続される連結部とベローズの間パッキンを備えてもよい。
【0012】
本発明の第1の態様において、バヨネットリングと、空圧制御システムに接続された取付フランジとをさらに備え、取付フランジとロボットハンドとを接触させ、バヨネットリングを回転させることによって取付フランジとロボットハンドとを固定してもよい。
【0013】
本発明の第1の態様において、バヨネットリングは、勘合溝凸部を有する勘合溝を備え、ロボットハンドは、爪凹部を有する外爪を備え、バヨネットリングを回転させると、勘合溝は外爪対してスライドし、勘合溝凸部と爪凹部とが勘合することによって取付フランジとロボットハンドとが固定されてよい。
【0014】
本発明の第1の態様において、ロボットハンドは、弾性部と、弾性部の先端に突起を備え、バヨネットリングは、迎合孔を備え、バヨネットリングを回転させると、突起が迎合孔に入り、取付フランジとロボットハンドとが固定されてよい。
【0015】
本発明の第1の態様において、第2のパッキンをさらに備え、第2のパッキンは取付フランジとロボットハンドとの間に配置され、ロボットハンドの空圧制御システムのエア接手と、取付フランジの空圧制御システムのエア接手、及び、ロボットハンドの電気接点と、取付フランジの電気接点とは、取付フランジとロボットハンドとが接触する位置において接続されてもよい。
【0016】
本発明の第1の態様において、爪は把持部を有し、前記把持部は複数の長爪から成ってよい。
【0017】
本発明の第1の態様において、爪は把持部を有し、前記把持部はカップ形状をなしてよい。
【0018】
本発明の第1の態様において、爪は把持部を有し、前記把持部は押し当てプレートを有してよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安全性が高く、高速把持、解放動作が可能であり、洗浄時の作業負荷が低いロボットハンドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るロボットハンドの正面図である。
図2】本実施形態に係るロボットハンドの正面断面図である。
図3】本実施形態に係るロボットハンドのベローズ部の断面図である。
図4】本実施形態に係るロボットハンドのツールチェンジャの断面図である。
図5】本実施形態に係るロボットハンドのツールチェンジャの上面図である。
図6図4、及び図5に示すツールチェンジャの断面A―A’における断面図である。
図7】本実施形態に係るロボットハンドのツールチェンジャの上面図である。
図8】本実施形態に係るロボットハンドのツールチェンジャの下面図である。
図9】本実施形態に係るロボットハンドの使用例を説明する図である。
図10】本実施形態に係るロボットハンドの安全性について説明する図である。
図11】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図12】本実施形態に係るロボットハンドの接続部の断面図である。
図13】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図14図13の爪を指部に取り付けたときの爪を示す図であり、(a)正面図、(b)正面側斜視図である。
図15】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図16図15の爪を指部に取り付けたときの爪を示す下面側斜視図である。
図17】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図18図17の爪を指部に取り付けたときの爪を示す下面側斜視図である。
図19】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図20図19の爪を指部に取り付けたときの爪を示す図であり、(a)は指部を閉じた状態の爪、(b)は物品を把持する前段階の爪、(c)は物品を把持している状態の爪である。
図21】本実施形態に係るロボットハンドの爪の一例を示す図であり、(a)上面図、(b)左側面図、及び(c)正面図である。
図22図21の爪を指部に取り付けたときの爪を示す図であり、(a)は葱に触れる前の爪、(b)は葱に押し当てられる爪である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0022】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成や配置、レイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るロボットハンドを以下に説明する。図1に、本実施形態に係るロボットハンド1の正面図を示す。図1に示すロボットハンド1は、ツールチェンジャ2、ハンド本体3、及び爪部4から構成される。
【0024】
ツールチェンジャ2は、ハンド本体3と、図示しない空圧制御システムとを接続する。後述するように、ツールチェンジャ2によって、ハンド本体3を空圧制御システムから容易に取り外し、また、取り付けることができる。これにより、ロボットハンドの交換、洗浄等のメンテナンスが容易になる。
【0025】
ハンド本体3は、先端に爪部4が接続され、ツールチェンジャ2によって図示しない空圧制御システムに接続される。
【0026】
爪部4は、ハンド本体3の指部20a、20bに接続され、ハンド本体3が動作することによって爪部4によって物品の把持、及び開放がなされる。爪部4は、本実施形態において、爪4a、及び爪4bによって構成され、爪4aと爪4bとは、互いに鏡映対称な形状をなす。爪4a、及び爪4bの把持部17a、17bは、後述するように、物品を把持、解放が確実に、かつ容易になされるのに適した形状をなしている。爪4a、4bは取り外しが可能であり、物品の種類、形状に応じた形状の把持部17a、17bを有する爪を爪4a、4bとしてハンド本体3に取り付けることができる。図1及び図2に示す爪4a、4bは、本実施形態に係る爪の一例である。
【0027】
図1に示すロボットハンド1は、全ての部品が樹脂材料によって構成されている。従来のロボットハンドは、金属部品を含み、金属部品には、錆止めオイル、及び潤滑オイルが塗布されている。こういったロボットハンドの洗浄時には、オイルに合わせた洗剤を用いて洗浄し、洗浄後にはオイルを再度塗布する必要がある。又、金属部品が錆びた場合には、錆落とし、部品交換等の対応が必要となるなど、メンテナンス作業の負荷が高い。本実施形態に係るロボットハンド1は、全ての部品が樹脂材料によって構成されており、錆止めオイル、潤滑オイルを必要とせず、金属部品を含むロボットハンドと比較すると、洗浄が容易で作業負荷が低い。本実施形態に係るロボットハンド1に使用される樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、PTFE等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0028】
(ハンド本体)
ハンド本体3について説明する。ハンド本体3は、ベローズ12a、12bと、リンク14と、内側連結部13a、13bと、外側連結部18a、18bと、指部20a、20bと、上側指部25a、25bと、軸部19とから構成される。
【0029】
図2に、本実施形態に係るロボットハンド1の正面断面図を示す。図1に示すロボットハンド1は爪4aと爪4bとが互いに接触し、指部20aと指部20bとが互いに最も近づいた状態である。この状態を、以下では指部20aと指部20bとが閉じた状態と表現する。図2に示すロボットハンド1は、爪4aと爪4bとが互いに離れ、指部20aと指部20bの間が離れた状態である。この状態を、以下では指部20aと指部20bとが開いた状態と表現する。
【0030】
図1、及び図2に示すロボットハンド1は、リンク14の部分を除き、紙面内において鏡映対称の構造をなしており、ハンド本体3のベローズ12a、内側連結部13a、外側連結部18a、指部20a、上側指部25aと、ベローズ12b、内側連結部13b、外側連結部18b、指部20b、上側指部25bとは、互いの位置関係が鏡映対称となっている。ベローズ12aは、内側連結部13aを介して軸部19に接続されており、外側連結部18aを介して上側指部25aと接続されている。指部20aの上端から上側指部25aが連続している。軸部19の下端にリンク14が配置されている。指部20aと指部20bとは、リンク14において互いに接続されており、リンク14を中心として、指部20aと指部20bとは互いに回転可能となっている。軸部19の内部には内部配管10が配置されており、ベローズ12a、12bのそれぞれと内部配管10とは内側連結部13a、13bのそれぞれの位置において接続されている。
【0031】
内部配管10は図示しない空圧制御システムに接続されており、空圧制御システムの電磁弁のオン/オフにより、内部配管10の内部の空圧が、正圧力、又は負圧力負圧力のいずれかとなるように制御される。後述するが、図3に示すように、ベローズ12aは中空構造をなしており、内部配管10の中空部分と、ベローズ12aの中空部分である空間22aは連続している。これにより、内部配管10の内部の空圧が制御されると同時に、ベローズ12aの内部の空圧も制御される。ベローズ12bにおいても、ベローズ12aと同様、内部配管10の内部の空圧が制御されると同時に、内部の空圧も制御される。
【0032】
ベローズ12a、12bは柔軟性の高い樹脂素材によって構成される。これにより、ベローズ12a、12bの内部の空圧が、正圧力になると、ベローズ12a、12bのそれぞれの長さ、即ち内側連結部13aと外側連結部18aとの間の距離、及び内側連結部13bと外側連結部18bとの間の距離が長くなり、図1に示すように、リンク14を中心として、指部20aと指部20bとが閉じた状態となる。ベローズ12a、12bの内部の空圧が、負圧力になると、ベローズ12a、12bのそれぞれの長さが短くなり、図2に示すように、指部20aと指部20bとが開いた状態となる。指部20a、20bの開閉動作により、爪部4による物品の把持、及び解放がなされる。
【0033】
指部20aと指部20bとがリンク14において接続されているため、図2に示す、ベローズ12a、12bの内部の空圧が負圧力になりベローズ12a、12bの長さが短い状態でのベローズ12a、12bと軸部19とのなす角度と、図1に示す、ベローズ12a、12bの内部の空圧が正圧力になりベローズ12a、12bの長さが長い状態でのベローズ12a、12bと軸部19とのなす角度とは、互いに異なる。従来のロボットハンドのように、指部を開閉させる機構が金属部品によって構成される場合、指部の開閉に伴いエアシリンダとレバーチャックの角度が変わるため、摺動部やリンク構造が必要となり、従って指部を開閉させる機構が複雑な構造になる。本実施形態に係るロボットハンド1のベローズ12a、12bは、柔軟性の高い樹脂材料により構成されることにより、ベローズ12a、12bの内部の空圧に応答して、図2に示す形状から図1に示す形状に容易に変形する。これにより、指部を開閉させる機構が簡単な構造となり、製造、メンテナンスが容易となる。
【0034】
また、従来の金属部品を含むロボットハンドでは、エアシリンダの配管はロボットハンド構造の外側に配置されるため、配管したエアチューブが、ロボットハンドの動作を制限する。本実施形態におけるロボットハンド1によれば、ロボットハンド1の内側に配管を配置するため、配管がロボットハンド1の動作を制限しない。
【0035】
さらに、ロボットハンド1は、全ての部品が樹脂材料によって構成されており、従来の金属部品を含むロボットハンドと比較すると、非常に軽量である。従来の金属部品を含むロボットハンドにおいて、物品の把持、及び解放に伴う摺動部やリンク構造によるハンドの変形は、機構が複雑なため時間がかかるが、本実施形態に係るロボットハンド1においては、回転部分がリンク14の1箇所のみであり、ベローズ12a、12bによる簡単な構造のため、変形に時間がかからない。従って、従来の金属部品を含むロボットハンドの指の開閉動作と比較すると、指部20a、20bの開閉動作は、空圧制御システムの電磁弁のオン/オフに対して素早く応答する。
【0036】
ベローズ12a、内側連結部13a、及び外側連結部18aの締結は、接着剤を使用して行われてもよく、又は、接着剤を使用せず、ベローズ12aを溝23a、及び溝24aに嵌める嵌め込み構造によってなされてもよいが、これらに限定されない。本実施形態においては、ベローズ12a、内側連結部13a、及び外側連結部18aの締結方法の一例として、嵌め込み構造による方法を示している。
【0037】
図3は、ベローズ12a、内側連結部13a、及び外側連結部18aの断面図である。内側連結部13a、及び外側連結部18aは、それぞれ、溝23a、溝24aを有する。図3の紙面手前方向からベローズ12aの端部を溝23aに嵌め、ベローズ12aをスライドさせることにより、ベローズ12aと、内側連結部13aとを締結させる。ベローズ12aと、外側連結部18aとを締結させる場合も、ベローズ12aと、内側連結部13aとを締結させる場合と同様、ベローズ12aの端部を溝24aに嵌め、ベローズ12aをスライドさせる。
【0038】
先に述べたように、内部配管10の中空部分と、ベローズ12aの中空部分である空間22aは連続しており、内部配管10に接続された空圧制御システムの電磁弁のオン/オフ操作によって空間22aの空圧を制御する。空間22aの気密性を高めるため、ベローズ12aと内側連結部13aの間にパッキンを使用してもよい。本実施形態においては、一例として、パッキンを使用した例を示す。ベローズ12aと内側連結部13aの接続部に環状のゴム製、又は樹脂製のパッキン21aを設置し、空間22aからベローズ12aの外部への空気の漏れを防止する。
【0039】
食品を扱う環境下において使用されるロボットハンドが、樹脂製の部品を含む場合、食品対応の接着剤は種類が少なく、入手が容易でない、高温・多湿の環境下において、接着剤の使用は推奨されない等の製造におけるリスクがある。これらの締結が嵌め込み構造によってなされることは、上述のリスクを低減するというメリットを有する。食品対応で入手が容易なベローズ、パッキンを使用することにより、製造におけるリスクを低減し、多様な環境で使用することが可能となる。
【0040】
なお、ベローズ12b、内側連結部13b、及び外側連結部18bの構成は、図3に示すベローズ12a、内側連結部13a、及び外側連結部18aと、鏡映対称である点を除いて、同様の構成である。
【0041】
図1図2に示すように、本実施形態に係るロボットハンドの指部20a、20bの本数は2本であるが、指部20a、20bの本数は2本に限定されず、3本以上であってもよい。指部の本数が3本以上である場合においても、ロボットハンドは指部の本数と同数の、ベローズ、内側連結部、及び外側連結部を有する。それぞれの指部は、1又は複数のリンクによって軸部に接続され、さらに、外側連結部を介してベローズに接続される。それぞれの指部に接続されたベローズは、内側連結部を介して軸部に接続される。指部の本数が3本以上である場合においても、指部の開閉はベローズ内部の空圧の制御によってなされる。
【0042】
従来の、金属部品によって構成されるロボットハンドの場合、指部を開閉させる機構が複雑であり、従って指部が3本以上である場合、ロボットハンドの重量が重くなり、体積が大きくなる等、問題点が多い。本発明に係るロボットハンドによれば、指部を改変させる機構が簡単な構造であるため、3本以上の指部を有するロボットハンドの製造、メンテナンスが、従来のロボットハンドと比較して容易である。
【0043】
(ツールチェンジャ)
ツールチェンジャ2について説明する。図4に、ツールチェンジャ2の断面図を、図5に、図4に示すツールチェンジャ2の上面図を示す。図4及び図5に示すツールチェンジャ2は、ロボットハンド本体56と、バヨネットリング55と、取付フランジ53と、パッキン57とから構成される。
【0044】
ロボットハンド本体56、及びエア接手52の中心に、内部配管10が配置されている。エア接手52と取付フランジ53とは互いに固定され、取り外されることはない。バヨネットリング55は、取付フランジ53に対して回転可能となっている。ハンド本体3を空圧制御システムから取り外す際は、バヨネットリング55を回転させ、ロボットハンド本体56を、取付フランジ53から取り外す。
【0045】
取付フランジ53は、エア接手52に対して固定されており、バヨネットリング55を回転させても、取付フランジ53がエア接手52に対して回転することはない。又、ロボットハンド本体56を、取付フランジ53に取り付ける、又は、取り外す際、取付フランジ53に対してバヨネットリング55のみを回転させ、ロボットハンド本体56を回転させることはない。
【0046】
従来のロボットハンドは、フランジにロボットハンドを取り付ける際、フランジとロボットハンドの回転式締結機構が一般的であった。すなわち、フランジ及びロボットハンドの中心部分に締結機構があり、フランジに対して、ロボットハンドを回転させて締結する機構である。この機構によれば、フランジに対するロボットハンドの回転に合わせてロボットハンド側のエア接手、及び電気接点が回転し、フランジとロボットハンドのそれぞれのエア接手、及び電気接点が互いに離れてしまうという問題があった。また、フランジ及びロボットハンドの中心部分に締結機構があるため、フランジとロボットハンドの内部にエア接手、及び電気接点を組み込むための十分なスペースを確保することが困難であった。このため、エア接手、及び電気配線をフランジとロボットハンドの外部に設置する必要が生じ、エア接手、及び電気配線がロボットの動きを制限する恐れがあった。
【0047】
本実施形態に係るツールチェンジャ2によれば、取付フランジ53とロボットハンド本体56は回転させず、バヨネットリング55のみを回転させて締結するため、取付フランジ53の中央にエア接手、及び電気接点を組み込むための十分なスペースを確保することができる。また、締結時に取付フランジ53とロボットハンド本体56は回転させないため、エア配管接点は擦れることがなく、電気接点は離れることがない。これにより、エア接手、及び電気接点を取付フランジ53とロボットハンド本体56の内部に組み込むことができ、これらによってロボットの動きが制限されることがない。
【0048】
従来の金属部品を含むロボットハンドをフランジに取り付ける際、エアロック、電磁石、又はネジ構造等によって強固に締結するため、従来のロボットハンドは締結機構に高強度の金属部材を使用する必要があった。こういった強固な金属部材を使用するため、従来のロボットハンドの締結機構は大型で重いものであった。これに対して、本実施形態に係るツールチェンジャ2は、全て樹脂材料によって構成される。これにより、従来のロボットハンドと比較して、本実施形態に係るロボットハンドは軽量とすることができる。また、バヨネットリング55のみを回転させて締結する機構であるため、小型化が可能である。
【0049】
本実施形態に係るツールチェンジャ2は、取付フランジ53にロボットハンド本体56を締結する。エア接手52の中空部分と、取付フランジ53の中空部分と、ロボットハンド本体56の中空部分とは、連続しており、図1に示す内部配管10の中空部分を形成している。このため、取付フランジ53とロボットハンド本体56の接続部に環状のゴム製、又は樹脂製のパッキン57を設置し、内部配管10の中空部分からエア接手52の外部への空気の漏れを防止する。
【0050】
(凹凸勘合によるロック機構)
本実施形態に係るツールチェンジャ2は、バヨネットリング55を回転させてロボットハンド本体56を取付フランジ53に締結する際、ロックされ、ロック時にスイッチを押したようなクリック音や手ごたえ(以下、クリック感と呼ぶ)を体感し、確認することができるロック機構を有する。本実施形態にかかるロック機構として、凹凸勘合によるロック機構について以下に説明する。
【0051】
図6に、図4、及び図5に示す断面A―A’における断面図を示す。また、図7に、図4に示すロボットハンド本体56の上面図を示す。図6、及び図7は、本実施形態に係るツールチェンジャ2が凹凸勘合によるロック機能を有する場合の図である。図7に示すロボットハンド本体56の上面図は、図4に示すロボットハンド本体56から、取付フランジ53、及び、バヨネットリング55を取り除いた状態のものである。
【0052】
図6に示すように、バヨネットリング55は勘合溝79を有し、図7に示すロボットハンド本体56は、外爪71を有する。ロボットハンド本体56と取付フランジ53の締結時、バヨネットリング55の回転とともに、外爪71は勘合溝79の中をスライドする。バヨネットリング55は、勘合溝79内部に、凸形状となっている勘合溝凸部122を有する。また、ロボット本体の外爪71は、凹形状となっている爪凹部121と、外爪71の先端から滑らかに傾斜する爪先端部123を有する。
【0053】
ロボットハンド本体56と取付フランジ53の締結時、図5に示すように、バヨネットリング55を締め付け方向である矢印Bの方向へ回転させると、図6に示すように、勘合溝79は外爪71に対して矢印B方向へスライドする。勘合溝79の矢印B方向へのスライドとともに、爪先端部123は、先端が傾斜する形状であるから、勘合溝凸部122を乗り越え、勘合溝凸部122と爪凹部121とが勘合する。その際、クリック感が生じるとともに、ロボットハンド本体56と取付フランジ53とがロックされる。
【0054】
従来の、ロボットハンドをロボットハンド制御システムから取り外し、また、取り付ける機構は、ネジ形状の、らせん構造の固定部品を強く締め付けることによって固定するものであった(例えば、再表2019/142709号参照)。こういった機構においては、締結時にクリック感がないため、ロック確認ができず、未締結で使用する、固定部品が締結位置で止まらないため、過度の締め付けにより破損する、等の恐れがある。
【0055】
本実施形態のツールチェンジャ2によれば、クリック感によってロボットハンド本体56が取付フランジ53に締結したことを確認することができ、固定部品の回しすぎによる部品の破損、摩耗等を防止することができる。また、勘合溝凸部122が爪凹部121と勘合し、固定されることによって、締結後に取付フランジ53に対してロボットハンド本体56が動くことなく、固定される。
【0056】
(スナップフィットによるロック機構)
図8に、ツールチェンジャ2の下面図を示す。図8は、本実施形態に係るツールチェンジャ2がスナップフィットによるロック機能を有する場合の図である。ロボットハンド本体56は、弾性部72、及び弾性部72の先端に突起75を有する。弾性部72とロボットハンド本体56の本体部58との間には、間隙74が設けられ、突起75に本体部58の方向へ圧力を加えると、弾性部72は変形し、突起75は本体部58の方向へ変形する。バヨネットリング55の外周面には迎合孔78が設けられている。
【0057】
ロボットハンド本体56を取付フランジ53に締結する際、突起75に本体部58の方向へ押し込んだ状態でロボットハンド本体56をバヨネットリング55に取り付ける。バヨネットリング55を回転させると、バヨネットリング55によって突起75は本体部58の方向へ押され、弾性部72は変形した状態のままバヨネットリング55が回転し、バヨネットリング55に設けられた迎合孔78が突起75の位置に移動すると、突起75は弾性によって迎合孔78に入り、固定される。突起75が迎合孔78に入るとき、クリック感が生じ、このクリック感によって突起75と迎合孔78が勘合し、ロボットハンド本体56が取付フランジ53に締結したことを体感し、確認することができる。
【0058】
本実施形態に係るツールチェンジャ2がスナップフィットによるロック機能を有する場合、迎合孔78に入っている突起75の、バヨネットリング55の外周面から飛び出した部分を、本体部58の方向へ指等によって押すことでバヨネットリング55の内側に押し込み、その状態でバヨネットリング55を回転させて、ロボットハンド本体56を取付フランジ53から取り外すことができる。
【0059】
図9に、本実施形態に係るロボットハンド1の使用例を説明する図を示す。図9に示す使用例は、一例として、中食工場において、調理済みの食品81、82を、ベルトコンベアに乗って流れてくる食品容器84に入れる盛り付け作業である。図9において、ロボットハンド1は、ロボット本体85に、ロボットアーム86を介して接続されている。ロボットハンド1は、作業員83の隣に配置され、ロボットハンド1と作業員83とは、協同で盛り付け作業を行っている。
【0060】
中食工場における盛り付け作業において容器に盛り付けられる食品は多様多種であり、盛り付ける食品の種類や量の変更等も頻繁に行われる、等の理由により、全ての盛り付け作業をロボットアームによって行うことは容易ではない。したがってロボットアームと作業員とが互いに近い位置で作業する場合があり得る。
【0061】
従来のロボットハンドは、エアシリンダにリンク機構を組み合わせたものであり、アクチュエータ、リンク摺動部は金属製部材のため硬く、例えばロボットハンドと作業員が接触したときに事故が起こりかねない等、受動的安全機能の提供が困難であった。
【0062】
本実施形態に係るロボットハンド1は、全てが樹脂素材である。また、図10に示すロボットハンド1の一部の、破線によって囲まれた箇所は、所定の値を超える外力を受けると破壊される厚さ以下の樹脂によって構成される部分であり、ロボットハンドと作業員が接触する等、過負荷により、優先的に破壊される構造となっている。本実施形態においては、図10に示す破線によって囲まれた箇所の樹脂の厚さを5mm以下としている。さらに、ベローズ12は、柔軟性の高い樹脂材料により構成されており、過負荷によって変形する。これらの構成により、本実施形態に係るロボットハンド1は、ロボットハンドと作業員が接触した場合においても、事故が生じない等、受動的安全機能を提供することができる。
【0063】
(爪)
爪部4について説明する。爪部4を構成する爪4a、4bのそれぞれが、ハンド本体3の指部20a、20bのそれぞれに接続され、ハンド本体3が動作することによって爪部4において物品の把持、及び開放がなされる。以下に示すように、本実施形態にかかるロボットハンド1が中食工場において使用される場合、ハンド本体3には、調理済みの食品の種類、形状等に適した形状の爪を取り付けることができる。
【0064】
図11に、本実施形態に係る爪120aを示す。図11(a)、図11(b)、及び図11(c)は、それぞれ爪120aの上面図、左側面図、正面図であり、ハンド本体3の指部20a、20bに取りつけていない状態の爪である。図12に示す爪120aは、接続部15a、支持部16a、把持部17aから構成される。接続部15aは、ツメ120aをハンド本体3の指部20a、20bと接続させる部位である。把持部17aは、物品を把持する部位である。支持部16aは、接続部15a、及び把持部17aを支持する。図11に示す爪120aの把持部17aは、3本の長爪123aで構成される。
【0065】
図11に示す爪は、図1に示すロボットハンド1の2つの爪のうち、1つの爪であり、図11に示す爪を2つ用意し、2つの爪のそれぞれを、図1に示すロボットハンド1の2つの指部20a、20bのそれぞれに、図11(c)に示す爪の紙面左側が内側となるように取り付ける。ロボットハンド1の2つの指部20a、20bを開閉することにより、把持部17aにおいて物品を把持する。
【0066】
図12に、図1に示すロボットハンド1の接続部15aの、紙面水平方向から見たときの断面図を示す。爪4の支持部16が、爪4aの突起部90によってハンド本体3の指部20aに固定されている。ハンド本体3には、本体支柱91、92、93、94が設けられ、本体支柱91と本体支柱93との間には、支柱95が隙間なくはめ込まれる間隙が設けられ、本体支柱91と本体支柱92との間、及び本体支柱93と本体支柱94との間には、突起部90が通り抜けられる間隙が設けられ、突起部90がハンド本体3の外部に露出し、突起部90が引っ掛かり、弾性によって突起部90が固定され、外れない構造をなす迎合孔96が設けられている。
【0067】
爪4aを指部20aに取り付ける際には、爪4aの支柱95及び突起部90を図12の紙面下方からハンド本体3の本体支柱91と本体支柱93との間、本体支柱91と本体支柱92との間、及び本体支柱93と本体支柱94との間に差し込む。突起部90が迎合孔96に引っ掛かることで、爪4aは指部20aに取り付けられる。爪4aを指部20aから取り外す際には、指等によって、突起部90を迎合孔96に押し込み支柱97及び突起部90を変形させ、爪4aを図12の紙面下方へ引き抜く。
【0068】
図1に示すロボットハンド1は、2つの指部20a、20bの間に隙間79が設けられている。この隙間79により、2つの指部20a、20bの間に物品が挟まるのを防ぐことができる。
【0069】
図13に、本実施形態に係る爪140aを示す。図13(a)、図13(b)、及び図13(c)に、爪140aの上面図、左側面図、正面図を示す。図11に示す爪120aと比較すると、爪140aの把持部17aは5本の長爪141aから構成される。
【0070】
図14に、ハンド本体3の指部20に爪140aを取り付け、図1に示すように2つの指部20a、20bの間を閉じた状態としたときの爪部4の様子を示す。図14(a)は正面図、図14(b)は正面側斜視図である。図14に示すように、5本の長爪141aによって物品を挟むことで物品を把持する。
【0071】
図11に示す爪120aの把持部を構成する長爪123aは3本、図13に示す爪140aの把持部を構成する長爪141aは5本であるが、長爪の数はこれらに限定されない。このように、把持部17aを構成する長爪の数によって、把持可能な物品の量や大きさを調整することができる。
【0072】
図15に、本実施形態に係る爪160aを示す。図15(a)、図15(b)、及び図15(c)に、爪160aの上面図、左側面図、正面図を示す。図1及び図2に示す爪4a、4bは、図15に示す爪160aと同一のものである。
【0073】
図16に、ハンド本体3の2つの指部20a、20bのそれぞれに爪160aを取り付け、図1に示すように2つの指部20a、20bの間を閉じた状態としたときの爪160aの様子を示す。図16は下面側斜視図である。図16に示すように、把持部17aはカップの形状をなし、2つのカップによって物品を挟むことで物品を把持する。
【0074】
図17に、本実施形態に係る爪180aを示す。図17(a)、図17(b)、及び図17(c)に、爪180aの下面図、左側面図、正面図を示す。また、図18に、ハンド本体3の2つの指部20a、20bのそれぞれに爪180aを取り付け、図1に示すように2つの指部20a、20bの間を閉じた状態としたときの爪180aの様子を示す。図18は下面側斜視図である。図15(b)に示す爪160aの把持部17aのカップ形状の幅と、図17(b)に示す爪180aの把持部17aのカップ形状の幅が異なる。カップのサイズ、形状によって、把持可能な物品の量や大きさを調整することができる。
【0075】
図19に、本実施形態に係る爪200aを示す。図19(a)、図19(b)、及び図19(c)に、爪200aの下面図、左側面図、正面図を示す。図19に示す爪200aの把持部17aは、3本の長爪201aで構成される。長爪201aは、図11に示す長爪121aと比較すると、形状は幅が広く、柔軟性の高い樹脂素材によって構成される。
【0076】
図20に、2つの指部20a、20bのそれぞれに爪200aを取り付けたときの、実際に物品を把持する様子を説明する図を示す。図20(a)には、物品を把持せずに指部20a、20bを閉じた状態、図20(b)には、指部20a、20bを開き、物品110を把持する前段階、図20(c)には、指部20a、20bを閉じ、物品110を把持している状態を示す。
【0077】
図20に示す物品110は、一例として、刻んだ状態の葱である。刻んだ葱は、柔らかく、強い力で挟むと形状が変形する等、破損しやすい。図20に示す爪200aは、柔軟性の高い樹脂素材によって構成されているため、図20(c)に示すように、爪200aがしなることによって、刻んだ葱に対して、破損しない程度の力で挟むことができる。従来の金属部品を含むロボットハンドにおいて、把持力制御は複雑な制御系が必要となり、高速動作が困難となる。本実施形態に係る爪200aによれば、爪200aを柔軟性の高い樹脂素材によって構成することにより、破損しやすい物品を把持することができる。また、爪200aの柔軟性の度合い、長さ等の形状を調整することにより、物品の柔らかさ、形状、重量等に適応することができる。
【0078】
図21に、本実施形態に係る爪220aを示す。図21(a)、図21(b)、及び図21(c)に、爪220aの下面図、左側面図、正面図を示す。図21に示す爪220aの把持部17aは、押し当てプレート111を有する。
【0079】
図22に、2つの指部20a、20bのそれぞれに爪220aを取り付けたときの、実際に物品を把持する様子を説明する図を示す。図22(a)、及び図22(b)に示す物品は、一例として、刻んだ状態の葱である。刻んだ葱は、柔らかく、大量の刻んだ葱が積み上げられている場合、積み上げられた葱の上部に位置する葱は刻んだときの形状を保ち、密度が低くなっていると考えられる。積み上げられた葱の底部に位置する葱は、積まれた葱の重さにより圧迫され、密度が高くなっていると考えられる。積み上げられた葱の中間の深さに位置する葱は、上部に位置する葱と底部に位置する葱の間の密度になっていると考えられる。したがって、積まれた葱を取るタイミングによって、取れる葱の量が変わる。
【0080】
図22(a)では、爪220aの押し当てプレート111は葱に触れていないため、葱の密度が、積み上げられた葱の上部において低くなっている。図22(b)では、押し当てプレート111を葱に押し当て葱に圧力をかけることによって、上部に位置する葱の密度が、中間の深さに位置する葱の密度と同程度になっている。
【0081】
図22(a)、及び図22(b)に示す物品のように、バラ積みにされた物品に対して、押し当てプレートを使用することにより、表面状態を整えて把持量を安定化することができる。
【0082】
図11図22に示した爪は、本実施例に係るロボットハンドに使用できる爪の一例であるが、爪はこれらに限定されず、物品の形状、大きさ、硬さ等に応じて、様々な形状の爪を使用することができる。また、指部20a、20bは、図1に示すロボットハンド1においては2本であるが、3本以上であってもよく、指部20a、20bの本数に応じて爪の形状は変わり得る。さらに、図11図22に示した爪は、全て、形状等が同一の2本の爪を2つの指部20a、20bのそれぞれに取り付けて使用するものであるが、一つのロボットハンドの複数の指部のそれぞれに取り付ける複数の爪は互いに同一である必要はなく、物品の形状、大きさ、硬さ等に応じて、一つのロボットハンドの複数の指部のそれぞれに取り付ける複数の爪は、形状等が互いに異なる爪であってもよい。
【0083】
以上述べたように、本実施形態に係るロボットハンドは、安全性が高く、高速把持、解放動作が可能であり、洗浄時の作業負荷が低いロボットハンドを提供することができる。本実施形態において、本実施形態に係るロボットハンドが把持する物品は調理済み食品であるとしたが、これに限定されず、食品以外の物品にも対応可能である。
【0084】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 ロボットハンド
2 ツールチェンジャ
3 ハンド本体
4 爪部
4a、4b 爪
10 内部配管
12a、12b ベローズ
13a、13b 内側連結部
14 リンク
16a、16b 支持部
17a、17b 把持部
18a、18b 外側連結部
19 軸部
20a、20b 指部
22a 空間
23a、24a 溝
25a、25b 上側指部
52 エア接手
53 取付フランジ
55 バヨネットリング
56 ロボットハンド本体
57 パッキン
58 本体部
71 外爪
72 弾性部
74 間隙
75 突起
78 迎合孔
79 勘合溝
81、82 食品
83 作業員
84 食品容器
85 ロボット本体
86 ロボットアーム
90 突起部
91、92、93、94 本体支柱
95 支柱
96 迎合孔
100 爪
110 物品
111 押し当てプレート
120a、140a、160a、180a、200a、220a 爪
121 爪凹部
122 勘合溝凸部
123 爪先端部
123a、141a、121a 長爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22