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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】成分分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20240717BHJP
   G01J 3/51 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01J3/51
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020014318
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021120658
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 新
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸
(72)【発明者】
【氏名】成沢 大志
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 洋輔
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535751(JP,A)
【文献】特開2014-185958(JP,A)
【文献】特開2005-027094(JP,A)
【文献】特開2019-132771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75-21/83
G01J 3/46-3/52
G01N 31/00-31/22
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の成分の種類及び濃度に応じた発色反応を示す試験紙から色情報を取得する色情報取得装置と、該色情報取得装置から色情報を受け取る演算装置とを備え、
前記演算装置には、前記試験紙の色情報に対応する検体の成分の種類及び濃度に関する情報をデータベースとして格納する記憶部と、該記憶部を参照して前記色情報取得装置によって取得した色情報から対応する検体の成分情報を取得する情報処理部と、該情報処理部が取得した検体の成分情報を表示する表示部とが設けられ
前記情報処理部は、前記記憶部のデータベースから、前記色情報取得装置によって取得した色情報に対して、色差が最小となる最近似色と、該最近似色の次に色差が最小となる準最近似色とをそれぞれ特定して、前記最近似色及び前記準最近似色の色情報に対応する検体の成分情報をそれぞれ取得し、
前記表示部は、前記情報処理部によって取得された検体の成分情報を表示する際に、前記色情報取得装置が取得した色情報に対応する色を測定色として背景表示するとともに、前記最近似色及び前記準最近似色を前記測定色に重ねて前景表示することを特徴とする成分分析装置。
【請求項2】
検体の成分の種類及び濃度に応じた発色反応を示す試験紙から色情報を取得する色情報取得装置と、該色情報取得装置から色情報を受け取る演算装置とを備え、
前記演算装置には、前記試験紙の色情報に対応する検体の成分の種類及び濃度に関する情報をデータベースとして格納する記憶部と、該記憶部を参照して前記色情報取得装置によって取得した色情報から対応する検体の成分情報を取得する情報処理部と、該情報処理部が取得した検体の成分情報を表示する表示部とが設けられ、
前記情報処理部は、前記記憶部のデータベースから、前記色情報取得装置によって取得した色情報に対して色差が最小となる近似色の候補を探索し、取得された色情報を中間に挟む2つの近似色のうち、検体の成分の濃度が高いデータに対応する近似色を上限近似色と、検体の成分の濃度が低いデータに対応する近似色を下限近似色として特定し、前記上限近似色及び前記下限近似色の色情報に対応する土壌成分情報をそれぞれ取得し
前記表示部は、前記情報処理部によって取得された検体の成分情報を表示する際に、前記色情報取得装置が取得した色情報に対応する色を測定色として背景表示するとともに、前記上限近似色及び前記下限近似色を前記測定色に重ねて前景表示することを特徴とする成分分析装置。
【請求項3】
前記色情報取得装置は、前記試験紙に光を照射して反射光を検出し、検出した反射光から色情報を取得するセンサ部と、該センサ部を前記試験紙とともに覆って前記試験紙を環境光から遮断する遮光カバーとを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の成分分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分分析装置に関し、詳しくは、土壌や作物等の検体に含まれる成分に応じて発色する試験紙の色情報に基づきデータベースを参照して検体の成分を分析する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農場、圃場等の農業現場では、必ずしも成分分析に長けた者がいたり、特別な施設や設備があったりするわけではないので、検体の成分、とりわけ土壌成分について、専門的な知識や技術、機材がなくても可能な、簡易な分析方法が求められている。
【0003】
農業現場で土壌成分を簡易に分析できるものとしては、土壌分析用の試験紙が知られている(例えば、特許文献1参照。)。土壌分析用の試験紙は、土壌の土を水に懸濁させてできた溶液に浸すことで、土壌成分に応じた発色をする。したがって、発色した試験紙の色味を、土壌成分の種類及び含有量に対照させた色見本と比較することによって土壌成分の種類ごとの濃度を判断可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-279560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試験紙による土壌分析では、人が目視によって試験紙の色味を判断せねばならず、判断する人の色覚(視力の差や色覚異常の有無も含む)や判断時の環境光次第で判断結果にばらつきが生じ正確性が担保されないという問題があった。
【0006】
また、そもそも、人の色覚では土壌成分の濃度差に対応する試験紙の発色濃度の変化(色差;dE)を正確に識別することが困難である場合があった。人は彩度が高いほど色差を感じにくくなるので、試験紙の発色濃度も濃くなる土壌成分の濃度が高い領域では、とりわけ識別が困難になる傾向が顕著であった。
【0007】
そこで本発明は、検体の成分を現場で簡易にかつ正確に分析可能な成分分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の成分分析装置は、検体の成分の種類及び濃度に応じた発色反応を示す該試験紙から色情報を取得する色情報取得装置と、該色情報取得装置から色情報を受け取る演算装置とを備え、前記演算装置には、前記試験紙の色情報に対応する検体の成分の種類及び濃度に関する情報をデータベースとして格納する記憶部と、該記憶部を参照して前記色情報取得装置によって取得した色情報から対応する検体の成分情報を取得する情報処理部と、該情報処理部が取得した検体の成分情報を表示する表示部とが設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、前記色情報取得装置は、前記試験紙に光を照射して反射光を検出し、検出した反射光から色情報を取得するセンサ部と、該センサ部を前記試験紙とともに覆って前記試験紙を環境光から遮断する遮光カバーとを備えている。
【0010】
さらに、前記情報処理部は、前記記憶部のデータベースから、前記色情報取得装置によって取得した色情報に対して、色差が最小となる最近似色と、該最近似色の次に色差が最小となる準最近似色とをそれぞれ特定して、前記最近似色及び前記準最近似色の色情報に対応する検体の成分情報をそれぞれ取得するように構成されている。
【0011】
そして、前記表示部は、前記情報処理部によって取得された検体の成分情報を表示する際に、前記色情報取得装置が取得した色情報に対応する色を測定色として背景表示するとともに、前記最近似色及び前記準最近似色を前記測定色に重ねて前景表示するように構成されている。
【0012】
あるいは、前記情報処理部は、前記記憶部のデータベースから、前記色情報取得装置によって取得した色情報に対して色差が最小となる近似色の候補を探索し、探索した近似色の候補から取得した色情報に対して推定される土壌成分の濃度よりも、検体の成分の濃度が高いデータに対応する上限近似色と、検体の成分の濃度が低いデータに対応する下限近似色を特定し、前記上限近似色及び前記下限近似色の色情報に対応する検体の成分情報をそれぞれ取得するように構成されている。
【0013】
そして、前記表示部は、前記情報処理部によって取得された検体の成分情報を表示する際に、前記色情報取得装置が取得した色情報に対応する色を測定色として背景表示するとともに、前記上限近似色及び前記下限近似色を前記測定色に重ねて前景表示するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成分分析装置によれば、色情報取得装置によって取得した試験紙の色情報から、対応する検体の成分情報、すなわち、検体の成分の種類及び濃度に関する情報を、演算装置によって機械的に取得して演算装置の表示部に表示させることができるので、現場において検体の成分を簡易にかつ正確に分析することができる。
【0015】
また、色情報取得装置が、遮光カバーを備えていることから、試験紙の色情報を取得する際に環境光の影響を除外できるので、現場において検体の成分をより正確に分析することができる。
【0016】
さらに、色情報取得装置から取得した色情報に対して、記憶部のデータベースから最近似色及び準最近似色を特定し、各近似色の色情報に対応する検体の成分情報を表示部に表示するので、試験紙の示す検体の成分濃度に近い値を知ることができる。
【0017】
あるいは、色情報取得装置から取得した色情報に対して、記憶部のデータベースから上限近似色及び下限近似色を特定し、各近似色の色情報に対応する検体の成分情報を表示部に表示するので、試験紙の示す検体の成分濃度が含まれる範囲を的確に知ることができる。
【0018】
しかも、表示部が検体の成分情報を表示すると、測定色が背景表示されるとともに、各近似色が前景表示されることから、測定色に対して各近似色が隣接した状態で表示されるので、測定色と各近似色との近似度を、視覚を通じて直感的に把握しやすく、利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一形態例を示す成分分析装置の概略図である。
図2】測色計に試験紙をセットする様子を示す模式図である。
図3】演算装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】土壌成分の分析結果が表示された演算装置の表示部を示す模式図である。
図5】成分分析装置による土壌成分分析のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1乃至図4は、本発明の成分分析装置の構成及び機能を説明する図であり、図5は、本発明の成分分析装置による土壌成分分析の流れを説明するフローチャートである。
【0021】
図1に示されるように、成分分析装置11は、土壌成分の種類及び量に応じた発色反応を示す試験紙12と、発色した試験紙12の色を測定して試験紙12から色情報を取得する色情報取得装置である測色計13と、測色計13から色情報を受け取る演算装置であるスマートフォン又はタブレットからなる電子計算機14とを備えている。
【0022】
試験紙12は、検体である土壌の土を精製水で懸濁させてできた溶液(懸濁液)に浸すことで、土壌成分に応じた発色をするものであり、分析する土壌成分に応じて複数種類が用意されている。試験紙12によって検出可能な土壌成分は、例えば、肥料成分として重要な硝酸態窒素N、水溶性リン酸P、水溶性カリウムK等である。試験紙12は、これらの土壌成分の濃度に応じて色の濃さが変化するように調整されている。
【0023】
測色計13は、近接させた試験紙12に赤、緑、青の光を照射して反射光を検出し、検出した反射光から色情報を取得するセンサ部13aが端部に設けられており、センサ部13aに取り付け可能に形成された遮光カバー13bと、センサ部13aが取得した色情報をWifiやBluetooth(登録商標)等の無線通信によって外部に送信する送信部13cとを備えている。
【0024】
図2に示されるように、遮光カバー13bは、測色計13の端部に被せることが可能なキャップ状に形成されており、センサ部13aとの間に試験紙12を挟み込んでセンサ部13aに取り付けることで、センサ部13aを試験紙12とともに覆い、測定の際に試験紙12を環境光から遮断するができる。
【0025】
ここで、色情報とは、色を定量的に表すための色空間における座標のことであり、例えば、L表色系における光のL値、a値、b値である。なお、色空間においては、色差dEは2色の座標間の距離として算出される。
【0026】
図3に示されるように、電子計算機14は、無線通信によって測色計13から送信された情報を受け取る受信部15と、試験紙12の色情報に対応する土壌成分の情報を格納する記憶部16と、記憶部16を参照して受信部15から取得した色情報に対応する土壌成分情報を判定する情報処理部17と、情報処理部17の判定に基づいて土壌成分情報を表示する、液晶や有機EL等からなる画面を有する表示部18と、各部の情報のやりとりを制御する制御部19とを備えている。
【0027】
ここで、土壌成分情報とは、土壌成分の種類(硝酸態窒素N、水溶性リン酸P、水溶性カリウムK等)とその濃度(土壌の重量100g当たりの当たりの成分重量)を指す。
【0028】
記憶部16には、あらかじめ、試験紙12がどの土壌成分に対してどのような色を示すのかという情報が登録されている。すなわち、記憶部16には、土壌成分の種類ごとに、濃度に関する情報と、その濃度に対応する試験紙12の色情報とを紐付けたデータベースDBが格納されている。
【0029】
データベースDBには、土壌成分の種類として、例えば、硝酸態窒素N、水溶性リン酸P、及び、水溶性カリウムKに関するデータテーブルが格納されている。
【0030】
硝酸態窒素Nのデータテーブルでは、硝酸態窒素Nの濃度が0,1.5,3,4.5,7.5,15,22.5,30,37.5,45,52.5,60,75,150(mg/100g)となる水溶液について、それぞれの濃度対応する試験紙12の発色度合いを示す色情報が紐付けられて登録されている。
【0031】
水溶性リン酸Pのデータテーブルでは、水溶性リン酸Pの濃度が0,1.5,4.5,7.5,15,22.5,30,37.5,45,60,75(mg/100g)となる水溶液について、それぞれの濃度対応する試験紙12の発色度合いを示す色情報が紐付けられて登録されている。
【0032】
水溶性カリウムKのデータテーブルでは、水溶性カリウムKの濃度が0,1.5,4.5,7.5,15,22.5,30,37.5,45,60,75(mg/100g)となる水溶液について、それぞれの濃度対応する試験紙12の発色度合いを示す色情報が紐付けられて登録されている。
【0033】
図4に示されるように、成分分析装置11によって土壌成分分析が行われると、電子計算機14の表示部18に分析結果が表示される。
【0034】
土壌成分分析では、測定色に対応する土壌成分濃度を直接算定するのではなく、推定される土壌成分濃度に対応する近似色(測定色との色差dEが所定値以下の色)をデータベースDBから特定することが行われる。
【0035】
表示部18には、測色計13が取得した色情報に対応する色が、測定色として全体的に背景表示され、土壌成分分析によって特定された複数の近似色(「近似色1」、「近似色2」)が測定色に重なって部分的に前景表示されるとともに、各近似色について、測定色に対する近似度と、対応する土壌成分情報(土壌成分の種類及び濃度)とが、それぞれテキスト表示される。
【0036】
ここでいう近似度とは、色空間における測定色との近さを示すものであり、あらかじめ設定された近さ(色差dEの小ささ)の基準に従って、高、中、低と三段階に区分けされている。
【0037】
また、近似色の特定には複数の方法がある。第一の近似色特定方法では、データベースDBの各データに対して測定色との色差dEを計算し、色差dEが最小となる最近似色と、最近似色の次に測定色に近い準最近似色を特定する。この場合、表示部18に表示された「近似色1」の項目には最近似色が、「近似色2」の項目には、準最近似色が適用される。
【0038】
第二の近似色特定方法では、推定される土壌成分濃度を含む範囲の上限濃度及び下限濃度に対応する近似色をそれぞれ特定する。具体的には、データベースDBにある色情報から近似色の候補を探索し、推定される測定色の土壌成分濃度よりも土壌成分濃度が高い側の近似色を上限近似色、低い側の近似色を下限近似色として、それぞれ1つずつデータベースDBから特定する。この場合、「近似色1」の項目には上限近似色が、「近似色2」の項目には、下限近似色が適用される。
【0039】
上限近似色及び下限近似色の特定アルゴリズムは次の通りである。まず、測定色の色座標Xに対して、データベースDB中の全データから測定色との色差dEが最小となる最近似色の色座標Aを特定する。
【0040】
ここでは、土壌成分濃度の変化に対して、対応する色座標上の軌跡を定式化していないので、色座標Xに対応する土壌成分濃度が、色座標Aに対応する土壌成分濃度よりも高いのか低いのかを、色座標の位置関係から判別することはできない。
【0041】
しかし、データベースDB中の各色のデータは、それぞれ土壌成分濃度と紐付いているので、対応する土壌成分濃度の高低によって序列づけられている。したがって、色座標Aが特定されると、色座標Aに対応する土壌成分濃度に対して、次に濃度の低い土壌成分濃度に対応する色座標Bと、次に濃度の高い土壌成分濃度に対応する色座標Cとが、それぞれ第二の近似色候補として得られる。
【0042】
また、仮に、連続的に変化する土壌成分濃度に対応する試験紙12の色情報のデータ(色座標)が得られたとすると、それらのデータを色空間上にプロットすることで軌跡を描くことができる。そこで、これによって描かれる色空間上の軌跡をLとおく。
【0043】
すると、各色座標A,B,C,Xは、軌跡L上に存在するはずなので、対応する土壌成分濃度の順序関係から、色座標Xは、軌跡L上の領域において、[B,A]間か、[A,C]間にあることになる。
【0044】
そこで、色空間上において距離BA及び距離BX(又は、距離CA及び距離CX)を算出する。BA<BX(又は、CX<CA)であれば、色座標Xは[A,C]間に含まれ、BA>BX(又は、CX>CA)であれば、色座標Xは[B,A]間に含まれることがわかる。
【0045】
色座標Xが[A,C]間に含まれるのであれば、下限近似色は、色座標Aが示す色となり、上限近似色は色座標Cが示す色となる。他方、色座標Xが[B,A]間に含まれるのであれば、下限近似色は、色座標Bが示す色となり、上限近似色は色座標Aが示す色となる。このようにして測定色に対する上限近似色及び下限近似色が特定される。
【0046】
図5に示されるように、成分分析装置11による土壌成分分析の手順は以下の通りである。まず、所定量の土を土壌から採取し、所定量の精製水で懸濁させた溶液(土壌懸濁液)を作る。この土壌懸濁液に試験紙12を浸し、所定時間おいて発色させる(ステップS1)。
【0047】
試験紙12が発色したら測色計13のセンサ部13aに発色した試験紙12を近接させ、遮光カバー13bによってセンサ部13aを試験紙12とともに覆った状態で試験紙12の色を測定し、測定色の色情報(L値、a値、b値)を取得する(ステップS2)。
【0048】
測色計13は、試験紙12から測定色の色情報を取得すると、取得した色情報を送信部13cによって外部に送信する(ステップS3)。測色計13から送信された測定色の色情報を、電子計算機14の制御部19が受信部15から受け取ると、電子計算機14の制御部19は、情報処理部17に、受信した測定色の色情報を送るとともに、この色情報に対応する土壌成分情報の判定を行うよう指令を出す(ステップS4)。
【0049】
その旨の指令を受けた情報処理部17は、記憶部16からデータベースDBを参照して受信した測定色について、近似色1及び近似色2を、第一の近似色特定方法又は第二の近似色特定方法によって特定する(ステップS5)。そして、情報処理部17は、特定した各近似色の色情報と、土壌成分情報と、測定色に対する近似度とを、それぞれ取得して制御部19に送る(ステップS6)。
【0050】
制御部19は、情報処理部17から各近似色の色情報及び土壌成分情報と、測定色に対する近似度とをそれぞれ受け取ると、表示部18に各近似色及びそれらの土壌成分情報を近似度とともに表示するよう指令を出し、その旨の指令を受けた表示部18は、各近似色及びそれらの土壌成分情報を近似度とともに表示する(ステップS7)。
【0051】
このように、成分分析装置11によれば、測色計13によって取得した試験紙12の色情報から、対応する土壌成分の情報、すなわち、土壌成分の種類及び濃度に関する情報を、演算装置である電子計算機14によって機械的に取得して電子計算機14の表示部18に表示させることができるので、農業現場において土壌成分を簡易にかつ正確に分析することができる。
【0052】
また、測色計13が、遮光カバー13bを備えていることから、試験紙12の色情報を取得する際に環境光の影響を除外できるので、農業現場において土壌成分をより正確に分析することができる。
【0053】
さらに、第一の近似色特定方法では、測色計13から取得した測定色の色情報に対して、記憶部16のデータベースDBから最近似色及び準最近似色を特定し、各近似色の色情報に対応する検体の成分情報を表示部18に表示するので、試験紙12の示す検体の成分濃度に近い値を知ることができる。
【0054】
あるいは、第二の近似色特定方法では、測色計13から取得した測定色の色情報に対して、記憶部16のデータベースDBから測定色の上限近似色及び下限近似色を特定し、各近似色の色情報に対応する土壌成分情報を表示部18に表示するので、試験紙12の示す土壌成分濃度が含まれる範囲を的確に知ることができる。
【0055】
しかも、表示部18が土壌成分の情報を表示すると、測定色が背景表示されるとともに、各近似色(最近似色及び準最近似色又は上限近似色及び下限近似色)が前景表示されることから、測定色に対して各近似色が隣接した状態で表示されるので、測定色と各近似色との近似度を、視覚を通じて直感的に把握しやすく、利便性が高い。
【0056】
なお、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、分析する成分について、一例として硝酸態窒素、水溶性リン酸、水溶性カリウムといった肥料成分を検出可能な試験紙を用いているが、分析可能な情報がこれらの成分に限られるわけではなく、他にも可給態リン酸、交換性カリウムその他の多量要素、微量要素、pH等を検出可能な試験紙を用いてもよい。
【0057】
また、本形態例では、土壌の土を検体として用いているが、検体が土壌の土に限定されるわけではなく、例えば、培養液や作物汁液を検体とし、これらの溶液中の栄養成分を分析してもよい。
【0058】
また、本形態例では、土壌成分の濃度を「土壌の重量100g当たりの当たりの成分重量」と定義しているが、この定義以外にも、「所定の深さの土壌の単位面積当たりの成分重量」や「水溶液中の単位体積当たりの成分重量」という定義を用いてもよい。
【0059】
また、本形態例では、測色計の送信部と電子計算機の受信部とはそれぞれ無線通信によって情報をやりとりしているが、必ずしも無線通信である必要はなく、測色計と電子計算機とをケーブル接続して有線通信によって情報をやりとりしてもよい。
【0060】
また、本形態例では、成分分析において、第一の近似色特定方法及び第二の近似色特定方法を用いて、測定色に対して近似色を2つ取得しているが、取得する近似色を2つに限定する必要はなく、測定色に対して3つ以上の近似色を取得して近似度に応じて表示部に表示するようにしてもよい。さらに、表示部に近似色の濃度の値だけでなく、濃度の値に応じて、肥料散布量を増やす、もしくは減らすといった具体策も表示するようにしてもよい。
【0061】
さらに、本形態例では、演算装置としてスマートフォンやタブレット等の電子計算機を用いているが、農業現場で使用できるなら必ずしも演算装置をこれらに限る必要はなく、例えばPCを用いてもよく、色情報取得装置と一体化させた装置としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
11…成分分析装置、12…試験紙、13…測色計、13a…センサ部、13b…遮光カバー、13c…送信部、14…電子計算機、15…受信部、16…記憶部、17…情報処理部、18…表示部、19…制御部
図1
図2
図3
図4
図5