(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】殺菌剤の製造方法及び保管方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20240717BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240717BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01P3/00
A01N25/02
(21)【出願番号】P 2020073977
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019087795
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308023594
【氏名又は名称】株式会社資源開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】高橋 常二郎
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021523(WO,A1)
【文献】特開2009-039218(JP,A)
【文献】特開2006-289236(JP,A)
【文献】特開2008-239236(JP,A)
【文献】特開2009-154076(JP,A)
【文献】特開2007-245075(JP,A)
【文献】特開2012-126649(JP,A)
【文献】特開2006-068631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,C02F,B01F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意することと、
無機水溶液に、オゾンを混合し、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌して、オゾン混合水を製造することと、
オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することと、
樹脂容器の中で、温度5~35℃で、少なくとも7日間、殺菌剤を保管することと、
を含
み、
無機水溶液が、にがり含有水であり、
オゾン混合水を製造することにおいて、オゾンを混合した無機水溶液を、バブル発生ノズルを通過させることを更に含み、バブル発生ノズルが、マイクロバブル発生ノズルであり、
KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60ppm以上である、殺菌剤の製造方法。
【請求項2】
樹脂容器の材料が、高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、請求項1に記載の殺菌剤の製造方法。
【請求項3】
オゾン混合水を製造することにおいて、無機水溶液の温度が、0~30℃である、請求項1又は2に記載の殺菌剤の製造方法。
【請求項4】
無機水溶液に含まれる無機成分が、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の殺菌剤の製造方法。
【請求項5】
殺菌剤の製造方法が、オゾン混合水を水で5倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することを含み、KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60~250ppmである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の殺菌剤の製造方法。
【請求項6】
殺菌剤の保管方法であって、
殺菌剤が、
海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意することと、
無機水溶液に、オゾンを混合し、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌して、オゾン混合水を製造することと、
オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下に希釈することと
によって製造され、
殺菌剤を、樹脂容器の中で、温度5~35℃で、少なくとも7日間、保管することを含
み、
無機水溶液が、にがり含有水であり、
オゾン混合水を製造することにおいて、オゾンを混合した無機水溶液を、バブル発生ノズルを通過させることを更に含み、バブル発生ノズルが、マイクロバブル発生ノズルであり、
KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60ppm以上である、殺菌剤の保管方法。
【請求項7】
樹脂容器の材料が、高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、請求項
6に記載の殺菌剤の保管方法。
【請求項8】
オゾン混合水を製造することにおいて、無機水溶液の温度が、0~30℃である、請求項
6又は
7に記載の殺菌剤の保管方法。
【請求項9】
無機水溶液に含まれる無機成分が、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンを含む、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の殺菌剤の保管方法。
【請求項10】
殺菌剤の保管方法が、オゾン混合水を水で5倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することを含み、KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60~250ppmである、請求項
6~
9のいずれか1項に記載の殺菌剤の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、真菌及び酵母様真菌等の微生物を殺菌するための殺菌剤の製造方法、及び殺菌剤の保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン水は、殺菌等に使用される。殺菌能力を有するオゾン水として、例えば、特許文献1には、気泡の直径が50~500nmであって、前記気泡内にオゾンを含有するオゾンナノバブルが含まれる水溶液からなることを特徴とするオゾン水が記載されている。
【0003】
また、殺菌能力を有するオゾン水の例として、特許文献2には、にがりを含有した溶液内に、オゾンとにがり水成分の一部とが結合したにがりオゾン結合物及び/又はにがり水成分の一部にオゾンが化合したにがりオゾン化物を含んでおり、無臭で無色であることを特徴とする所定のオゾン水が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、にがりを含有した溶液内に、オゾンとにがり水成分の一部とが結合したにがりオゾン結合物及び/又はにがり水成分の一部にオゾンが化合したにがりオゾン化物を含む徐放性オゾン水が開示されている。
【0005】
また、オゾンを含む殺菌剤の製造方法の例として、特許文献4には、海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意する工程と、無機水溶液に、オゾンを混合する、オゾン混合工程と、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌し、バブル発生ノズルを通過させる、撹拌工程と、を含む、殺菌剤の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-246293号公報
【文献】特開2012-101222号公報
【文献】特開2009-154076号公報
【文献】国際公開第2016/021523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オゾン水は、微生物等の殺菌に使用することができる。しかしながら、オゾンを単に水に溶解して製造した一般のオゾン水は、常温で保持すると、溶解したオゾンの大部分が製造後1~2時間程度で消滅してしまうことが知られている。特許文献2~4に記載されているように、殺菌能力を有するオゾンを水溶液中に比較的長時間保持するために、にがりを含むオゾン水を原料とした殺菌剤が開発されている。このような殺菌剤は、食中毒及び様々な疾患等を予防するために、多種の微生物、例えばウイルス、細菌、真菌及び芽胞などの微生物に対して、高い殺菌能力を有する。
【0008】
上述のように、オゾン水は、比較的短時間で、多種の微生物に対する殺菌力が低下するという問題がある。にがりを含むオゾン水を原料とした殺菌剤の場合には、単なるオゾン水と比べて、殺菌力の経時的な低下を抑制することができる。しかしながら、にがりを含むオゾン水を原料とした殺菌剤であっても、例えば、殺菌剤の製造から数日程度(例えば5日程度)経過すると、殺菌力は大きく低下する。殺菌剤の殺菌力の経時的な低下を更に抑制することができるならば、殺菌剤を長期間保管しておき、必要なときに殺菌剤を用いて多種の微生物を殺菌することが可能になる。
【0009】
また、にがりを含有したものを含む従来の殺菌剤では、殺菌力の低下を抑制するために、殺菌剤の保管は、低温(例えば5℃未満)で行っている。また、殺菌剤は、製造直後の高濃度の状態で保管をしている。殺菌剤を希釈して保管すると、低温保存するためのスペースが大きくなり、殺菌剤のコストが増加するためである。長期間の殺菌剤の保管の際に、もし室温程度(例えば、5~35℃)での保管が可能であれば、冷蔵庫などの冷温保管装置が不要となり、殺菌剤を簡便に保管することができるので、殺菌剤のコストを低減できる。
【0010】
そこで、本発明は、ウイルス、細菌、真菌及び芽胞などの微生物を殺菌するための、にがりを含むオゾン水を原料とする殺菌剤であって、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる殺菌剤の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、微生物を殺菌するための、にがりを含むオゾン水を原料とする殺菌剤の保管方法であって、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる殺菌剤の保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
本発明の構成1は、海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意することと、
無機水溶液に、オゾンを混合し、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌して、オゾン混合水を製造することと、
オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することと、
樹脂容器の中で、温度5~35℃で、少なくとも7日間、殺菌剤を保管することと、
を含む、殺菌剤の製造方法である。
【0013】
本発明の構成1によれば、ウイルス、細菌、真菌及び芽胞などの微生物(以下、単に「微生物」ともいう。)を殺菌するための殺菌剤の製造のために、にがりを含むオゾン混合水を製造し、オゾン混合水を水で所定の倍率に希釈した後に、樹脂容器の中で、室温(温度5~35℃)で、殺菌剤を保管した場合、殺菌剤の製造から長期間が経過しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる殺菌剤の製造方法を提供することができる。
【0014】
(構成2)
本発明の構成2は、樹脂容器の材料が、高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、構成1の殺菌剤の製造方法である。
【0015】
本発明の構成2によれば、樹脂容器の材料が所定の樹脂材料であることにより、殺菌剤を樹脂容器の中で保管した場合、殺菌剤の殺菌能力の低下を、より抑制することができる。
【0016】
(構成3)
本発明の構成3は、オゾン混合水を製造することにおいて、無機水溶液の温度が、0~30℃である、構成1又は2の殺菌剤の製造方法である。
【0017】
本発明の構成3によれば、殺菌剤の製造のためのオゾン混合水の製造の際に、無機水溶液の温度を所定の範囲とすることによって、より高い殺菌能力の殺菌剤を製造することができる。
【0018】
(構成4)
本発明の構成4は、無機水溶液に含まれる無機成分が、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンを含む、構成1~3のいずれかの殺菌剤の製造方法である。
【0019】
本発明の構成4によれば、無機水溶液に含まれる無機成分が、にがりに含まれるような上述の成分を含むことにより、殺菌能力の高い殺菌剤を、より確実に製造することができる。
【0020】
(構成5)
本発明の構成5は、無機水溶液が、にがり含有水である、構成1~4のいずれかの殺菌剤の製造方法である。
【0021】
にがりには、無機成分として、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンなどのイオンが含まれている。そのため、本発明の構成5の殺菌剤の製造方法によれば、にがり含有水に含まれるにがりにより、殺菌能力の高い殺菌剤を得るための無機成分を供給することができる。
【0022】
(構成6)
本発明の構成6は、オゾン混合水を製造することにおいて、オゾンを混合した無機水溶液を、バブル発生ノズルを通過させることを更に含む、構成1~5のいずれかの殺菌剤の製造方法である。
【0023】
本発明の構成6によれば、殺菌剤の製造のためのオゾン混合水の製造の際に、マイクロバブルを発生することのできるバブル発生ノズルを利用することにより、無機水溶液に混合したオゾンをマイクロバブルのような微細な泡状にすることができる。この結果、より殺菌能力の高い殺菌剤を、より確実に製造することができる。
【0024】
(構成7)
本発明の構成7は、殺菌剤の製造方法が、オゾン混合水を水で5倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することを含み、KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60~250ppmである、構成1~6のいずれかの殺菌剤の製造方法である。KI法で測定したオゾン濃度(KI値)が所定の範囲であるオゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することにより、長期保存に適した殺菌剤を得ることができる。
【0025】
(構成8)
本発明の構成8は、殺菌剤の保管方法であって、
殺菌剤が、
海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意することと、
無機水溶液に、オゾンを混合し、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌して、オゾン混合水を製造することと、
オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下に希釈ことと
によって製造され、
殺菌剤を、樹脂容器の中で、温度5~35℃で、少なくとも7日間、保管することを含む、殺菌剤の保管方法である。
【0026】
本発明の構成8によれば、微生物を殺菌するための殺菌剤の保管のために、にがりを含むオゾン混合水を製造し、オゾン混合水を水で所定の倍率に希釈した後に、樹脂容器の中で、温度5~35℃で、殺菌剤を保管した場合、殺菌剤の製造から長期間が経過しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる。
【0027】
(構成9)
本発明の構成9は、樹脂容器の材料が、高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、構成8の殺菌剤の保管方法である。
【0028】
本発明の構成9によれば、樹脂容器の材料が所定の樹脂材料であることにより、殺菌剤を樹脂容器の中で保管した場合、殺菌剤の殺菌能力の低下を、より抑制することができる。
【0029】
(構成10)
本発明の構成10は、オゾン混合水を製造することにおいて、無機水溶液の温度が、0~30℃である、構成8又は9の殺菌剤の保管方法である。
【0030】
本発明の構成10によれば、殺菌剤の製造のためのオゾン混合水の製造の際に、無機水溶液の温度を所定の範囲とすることによって、より高い殺菌能力の殺菌剤を得ることができる。
【0031】
(構成11)
本発明の構成11は、無機水溶液に含まれる無機成分が、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンを含む、構成8~10のいずれかの殺菌剤の保管方法である。
【0032】
本発明の構成11によれば、無機水溶液に含まれる無機成分が、にがりに含まれるような上述の成分を含むことにより、殺菌能力の高い殺菌剤を、より確実に得ることができる。無機水溶液に含まれる無機成分が、にがりに含まれる成分を含むことにより、殺菌能力の高い殺菌剤を、より確実に製造することができる。
【0033】
(構成12)
本発明の構成12は、無機水溶液が、にがり含有水である、構成8~11のいずれかの殺菌剤の保管方法である。
【0034】
にがりには、無機成分として、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンなどのイオンが含まれている。そのため、本発明の構成12の殺菌剤の保管方法において、にがりを用いることにより、殺菌能力の高い殺菌剤を得るための無機成分を殺菌剤に対して供給することができる。
【0035】
(構成13)
本発明の構成13は、オゾン混合水を製造することにおいて、オゾンを混合した無機水溶液を、バブル発生ノズルを通過させることを更に含む、構成8~12のいずれかの殺菌剤の保管方法である。
【0036】
本発明の構成13によれば、殺菌剤の製造のためのオゾン混合水の製造の際に、マイクロバブルを発生することのできるバブル発生ノズルを利用することにより、無機水溶液に混合したオゾンをマイクロバブルのような微細な泡状にすることができる。この結果、より殺菌能力の高い殺菌剤を、より確実に得ることができる。
【0037】
(構成14)
本発明の構成14は、殺菌剤の保管方法が、オゾン混合水を水で5倍以上500倍以下に希釈して、殺菌剤を製造することを含み、KI法で測定したオゾン混合水のオゾン濃度が、60~250ppmである、構成8~13のいずれかの殺菌剤の保管方法である。KI法で測定したオゾン濃度(KI値)が所定の範囲であるオゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することにより、長期保存に適した殺菌剤を得ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、ウイルス、細菌、真菌及び芽胞などの微生物を殺菌するための、にがりを含むオゾン水を原料とする殺菌剤であって、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる殺菌剤の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、微生物を殺菌するための、にがりを含むオゾン水を原料とする殺菌剤の保管方法であって、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる殺菌剤の保管方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の製造方法に用いることができるオゾン混合水製造装置の概念的、概略的な説明図である。
【
図2】マイクロバブル発生ノズルの断面説明図である。
【
図3】KI法で測定したオゾン濃度(KI値)の、保管前(0日)のKI値を1としたときのKI値の比の値を、殺菌効果絶対希釈倍率に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、微生物を殺菌するための殺菌剤の製造方法及び保管方法である。
【0041】
本発明者らは、所定の方法で製造したオゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することにより殺菌剤を製造し、その殺菌剤を室温程度の温度(5~35℃)で少なくとも7日間、樹脂容器の中で保管することにより、室温で長期間保存したとしても殺菌能力の低下を防止又は低減できることを見出し、本発明に至った。また、本発明者らは、オゾン混合水を製造後、希釈せずに保管した場合には、そのオゾン混合水の殺菌能力は時間と共に急激に低下するとの知見を得た。
【0042】
なお、オゾン混合水を、所定の倍率で希釈した直後の殺菌剤(殺菌剤の原水)を、所定の条件で少なくとも7日間、保管することにより、ウィスキー及びワインなどのエイジングのようなことが行われ、長期保存に適した殺菌剤を得ることができるものと推論できる。オゾン混合水を、所定の倍率で希釈した直後の殺菌剤は、殺菌剤の原水であり、所定期間のエイジングを経ることにより、長期保存に適した殺菌剤を製造できると推論できる。なお、本発明は、この推論に拘束されるものではない。オゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することにより製造して殺菌剤の原水を製造し、殺菌剤の原水を所定期間保管した本発明の殺菌剤は、所定の条件で、長期保存することができる。本発明の製造方法により得られる殺菌剤は、殺菌水溶液の形態として用いることができる。
【0043】
一方、本発明により、オゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈した殺菌剤(殺菌剤の原水)を長期保管することが可能になる。したがって、本発明は、上述の殺菌剤を長期保管するための殺菌剤の保管方法である。
【0044】
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の殺菌剤の製造方法に用いることができるオゾン混合水製造装置1について説明する。
【0045】
図1に、本発明の殺菌剤の製造方法に用いることができるオゾン混合水製造装置1の一例を示す。オゾン混合水製造装置1は、所定の無機成分を含有した無機水溶液を貯留するための貯留槽3と、この貯留槽3内に粒径が1.0μm~50μmのマイクロバブルを発生するためのマイクロバブル発生装置5とを備えている。
【0046】
より詳細には、マイクロバブル発生装置5は、ケーシング(図示せず)を備えることができる。ケーシング内には、モータによって回転駆動されるポンプ15が装着される。このポンプ15としては、例えば渦流ポンプ又はカスケードポンプなどを用いることができる。ポンプ15の吸引口17は吸引路19を介して、無機水溶液を貯留した貯留槽3に接続されている。
【0047】
ポンプ15に吸引される無機水溶液にオゾンを混合するために、吸引路19の途中には、オゾンガスを吸引するための気体吸引路21が分岐接続される。吸引路19にはポンプ15の吸引作用による負圧が発生しているので、吸引路19に気体吸引路21を接続することにより、気体吸引路21から吸引路19内へオゾンを吸引することが可能である。
【0048】
無機水溶液にオゾンを混合するために、気体吸引路21にオゾン供給手段23が接続される。このオゾン供給手段23としては、酸素ボンベ(図示せず)から供給される酸素を、放電領域中を通過させる構成とすることができる。
【0049】
ポンプ15の吐出口は、接続路27を介してオゾン溶解装置29に接続される。このオゾン溶解装置29は、密閉した密閉容器31を備えている。この密閉容器31の上部側の位置には、接続路27と接続した流入管33を備えている。この流入管33の内端部(流入口)35は、上側に向けてあることが好ましい。また流入口35の位置は、密閉容器31内に貯留された状態にある水面より僅かに上側であることが好ましい。
【0050】
さらに、密閉容器31の上部には、ポンプ15によって密閉容器31内に流入された混合液(混合水)内の余分な気体としてのオゾン及び酸素を排出するための排出弁37が備えられている。上記排出弁37は、密閉容器31の上部から過剰気体を排出する機能を有すると共に、密閉容器31内の圧力を大気圧よりも大きな所定の圧力に保持する機能を有するものである。排出弁37は、例えばボール等のごとき弁体39を備えた逆止弁等を用いることができる。排出弁37として用いる逆止弁の排気孔には、密閉容器31内の圧力が大きく低下することのないように、微細孔が形成されている。
【0051】
密閉容器31の底部(底面)31B付近には、密閉容器31内の、オゾンを混合した無機水溶液を外部へ流出するための流出管41が備えられている。オゾンを混合した無機水溶液は、流出口43から流出管41へ流出する。
【0052】
流出管41には接続路(接続管)47を介してバブル発生ノズル49が接続される。
図2に示すように、このバブル発生ノズル49は、接続管47を接続したノズル本体51を備えている。このノズル本体51において接続管47へ連通した連通穴53にはバブル発生カートリッジ55が着脱可能に取り付けてある。
【0053】
より詳細には、バブル発生カートリッジ55は、
図2に示すように、一端側を壁部によって閉じて他端側を開口した形態の円筒形状のカートリッジ本体57を備えている。このカートリッジ本体57内には、微細目の網部材59、1以上の数の小孔を備えたオリフィス61を、カートリッジ本体57の他端側の開口から順次挿入する。さらに、リング状のナット、スナップリング等のごときリング状の固定具63をねじ込むことによって、網部材59及びオリフィス61が着脱可能に固定される。そして、カートリッジ本体57の一端側の壁部と網部材59との間には圧力解放室65が備えられている。この圧力解放室65の周壁にはオリフィス61より小径の複数の貫通孔67が形成される。
【0054】
カートリッジ本体57の一端側は、ノズル本体51における連通穴53から、ノズル本体51に形成した大径の穴よりなる撹拌室69内に突出している。カートリッジ本体57の貫通孔67は撹拌室69に連通される。
【0055】
次に、本発明による殺菌剤の製造方法について説明する。
【0056】
本発明の殺菌剤の製造方法では、まず初めに、オゾン混合水を製造する。次に、オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下、好ましくは5倍以上200倍以下、より好ましくは5倍以上100倍以下、さらに好ましくは5倍以上50倍以下、特に好ましくは10倍以上30倍以下に希釈することにより、殺菌剤(殺菌剤の原水)を製造することができる。その後、その殺菌剤(殺菌剤の原水)を樹脂容器の中で、温度5~35℃で、少なくとも7日間、保管することにより、殺菌剤を得ることができる。
【0057】
まず、オゾン混合水の製造方法について説明する。上述の
図1及び
図2に示すオゾン混合水製造装置1を用いて、オゾン混合水を製造する場合を例に説明する。
【0058】
まず、初めに、海水を原料とする無機成分を含む無機水溶液を用意する(無機水溶液を用意する工程)。用意された無機水溶液は、貯留槽3に供給される。無機水溶液については、後述する。
【0059】
次に、無機水溶液に、オゾンを混合する(オゾン混合工程)。具体的には、オゾン混合水製造装置1のモータを駆動してポンプ15を回転駆動すると、貯留槽3内の無機水溶液が吸引路19を介して吸引されると共に、気体が気体吸引路21を介して吸引される。この気体は、オゾン及び酸素を含んでいる。そのため、無機水溶液に、オゾンが混合される。
【0060】
次に、オゾンを混合した無機水溶液を密閉容器31内で撹拌し、バブル発生ノズル49を通過させる(撹拌工程)。無機水溶液に、オゾンを混合し、オゾンを混合した無機水溶液を撹拌することにより、オゾン混合水を製造することができる。
【0061】
オゾンを混合した無機水溶液の撹拌は、次のようにして行うことができる。すなわち、オゾン混合水製造装置1のポンプ15に吸引された無機水溶液と、オゾン及び酸素を含む気体とはポンプ15内において撹拌及び混合され、オゾン及び酸素の一部は無機水溶液に混合及び溶解される。オゾンが混合及び溶解された無機水溶液は、オゾン溶解装置29の密閉容器31内へ、流入管33の流入口35から噴射される。この密閉容器31内の上部付近においては、噴射された水によって上部の水が撹拌されて、オゾン及び酸素の一部の溶解(含有)が行われる。この際、水に溶解(含有)することのない余分なオゾン及び酸素は、密閉容器31内の水面に浮上集中し、排出弁37を介して外部へ排出される。すなわち、水内のオゾン及び酸素が大きな気泡となって浮上することに起因する急速な上昇流は、流入口35から上側の部分に生じているものである。なお、密閉容器31内の圧力は外気圧よりも常に高圧に保持されているものである。
【0062】
なお、オゾンが混合及び溶解された無機水溶液が、オゾン溶解装置29の密閉容器31内へ噴射されるときに、流入口35を密閉容器31の内壁方向に向けることによって、無機水溶液を内壁へ指向して噴射することができる。無機水溶液を内壁に向けて噴射することにより、無機水溶液に対するオゾンの混合及び溶解を、より効率的に行うことができる。
【0063】
本発明の殺菌剤の製造方法において、オゾン混合水の製造の際に、オゾンを混合した無機水溶液を、バブル発生ノズルを通過させることが好ましい。
【0064】
オゾンが混合された無機水溶液の撹拌後、この無機水溶液を、バブル発生ノズル49を通過させることができる。具体的には、密閉容器31の底部31B付近のオゾンが混合及び溶解された無機水溶液は、オゾン混合水製造装置1の流出管41から接続管47を経てバブル発生ノズル49へ供給される。
【0065】
接続管47からバブル発生ノズル49へ流入したオゾンを含む無機水溶液は、オリフィス61の小孔を通過すると、圧力が開放されるので、オゾンを含む無機水溶液に溶解(含有)していたオゾン及び酸素が微細気泡となって発生する。この発生した微細な気泡は網部材59によってさらに微細化されて圧力解放室65へ噴射される。圧力解放室65においてオゾンを含む無機水溶液の圧力がさらに解放されるので、溶解(含有)していた気体が微細気泡となってさらに発生すると共に、圧力解放室65の一端側の壁部に衝突してさらに微細化される。
【0066】
そして、圧力解放室65から貫通孔67を通過して撹拌室69へ噴射されたオゾンを含む無機水溶液は、さらに圧力の解放を受けて微細な気泡をさらに発生する。それと共に撹拌作用により無機水溶液中の気泡はさらに微細化されて、粒径が1μm~50μm程度の均一なマイクロバブルとなる。
【0067】
水中に上記マイクロバブルが発生すると、最初は乳白色になる。そして、時間の経過と共にマイクロバブルの圧壊によって透明化してくると、無色で無臭のオゾン混合水が生成される。
【0068】
既に理解されるように、無機水溶液を適量溶解(含有)したオゾンを含む無機水溶液内に粒径が1.0μm~50μmのオゾンのマイクロバブルを発生させることにより、貯留槽3に、無臭で無色を呈するオゾン混合水が生成(製造)される。
【0069】
本発明の殺菌剤の製造方法において、オゾン混合水の製造の際に、上述のオゾン混合工程及び撹拌工程で処理される無機水溶液の量をXリットル、オゾン混合工程及び撹拌工程の処理速度をYリットル/分とするとき、オゾン混合工程及び撹拌工程を、A・X/Y分間(Aは、10以上)、交互に繰り返して実施することにより殺菌剤を製造することが好ましい。オゾンが混合される所定の無機水溶液を、時間を上述の所定時間とすることにより、微生物を殺菌するための、殺菌能力の高い殺菌剤を製造するためのオゾン混合水を製造することができる。
【0070】
なお、オゾン混合工程及び撹拌工程は、連続的に交互に繰り返して実施することが好ましい。これらの工程を、連続的に交互に繰り返して実施することにより、殺菌能力の高い殺菌剤のためのオゾン混合水を製造することができる。また、オゾン混合工程及び撹拌工程は、断続的に交互に繰り返して実施することもできる。
【0071】
図1に示すオゾン混合水製造装置1の例では、無機水溶液を用意する工程において用意され、貯留槽3に供給された無機水溶液の量(処理量)がXリットルに相当する。オゾン混合水製造装置1を運転して、オゾン混合水を製造する際には、処理量Xリットルの無機水溶液は、オゾンと混合・撹拌された状態で、オゾン混合水製造装置1の貯留槽3、ポンプ15の内部、密閉容器31並びにそれらを接続する流入管33及び流出管41等の配管に存在することとなる。
【0072】
図1に示すオゾン混合水製造装置1の例では、オゾン混合工程及び撹拌工程は、無機水溶液に対して、系の水路に沿って交互に、循環して行われる。したがって、オゾン混合工程及び撹拌工程の処理速度(Yリットル/分)は、ポンプ15の流量によって決まる。ポンプ15の流量を制御することにより、処理速度(Yリットル/分)を制御することができる。X(リットル)/Y(リットル/分)は、オゾン混合工程及び撹拌工程を1サイクル実施するために要する時間に対応する。
【0073】
上述のAは、処理の繰り返し回数に相当する無次元数である。Aは、好ましくは10~150の範囲、より好ましくは15~100の範囲、さらに好ましくは20~50の範囲である。オゾン混合工程及び撹拌工程を、上述の所定の時間、ポンプ15によって無機水溶液をオゾン混合水製造装置1に循環させることにより、オゾン混合工程及び撹拌工程を繰り返して実施することできる。その結果、殺菌能力の高い殺菌剤を製造するためのオゾン混合水を製造することができる。
【0074】
上述のオゾン混合水の製造方法では、オゾン混合工程及び撹拌工程における無機水溶液の温度は、0℃~30℃であることが好ましく、0℃~25℃であることができ、5℃~15℃であることができ、5℃~10℃であることがより好ましく、5℃~9℃であることがさらに好ましい。オゾン混合水の製造方法において、オゾン混合工程及び撹拌工程における無機水溶液の温度を所定の範囲とすることによって、より殺菌能力の高い殺菌剤を製造するためのオゾン混合水を製造することができる。
【0075】
無機水溶液の温度を所定の範囲とするために、オゾン混合水製造装置1に循環する無機水溶液の温度を制御するための温度制御機構を設けることができる。温度制御機構として、例えば、
図1に示すように、温度制御機構本体52と、貯留槽3に配置された熱交換器50aとの間を冷媒などの所定温度の熱交換媒体を循環させることにより、貯留槽3の無機水溶液の温度を制御することができる。貯留槽3に配置された温度センサー(図示せず)によって無機水溶液の温度の測定値に基づくフィードバックにより、温度制御機構本体52における熱交換媒体を所定の温度にすることができる。温度制御機構は、
図1に示すように、貯留槽3に配置することが好ましい。貯留槽3内には、オゾン混合水製造装置1を循環する無機水溶液のうち、多くの体積の無機水溶液が存在しているためである。なお、熱交換器50aは、貯留槽3以外に、ポンプ15、密閉容器31及びそれらを接続する配管など、無機水溶液がオゾン混合水製造装置1を循環する経路の任意の場所に配置することができる。
図1の例では、貯留槽3の他に、吸引路19にも熱交換器50bが配置されている。無機水溶液のような水溶液の温度を制御するための温度制御機構は公知である。
【0076】
本発明の殺菌剤の製造のためのオゾン混合水の製造方法では、バブル発生ノズル49が、マイクロバブルを発生するためのバブル発生ノズル49であることが好ましい。具体的には、撹拌工程において、
図2に示すようなバブル発生ノズル49を用いることにより、無機水溶液に混合したオゾンをマイクロバブルのような微細な泡状にすることができる。この結果、より殺菌能力の高い殺菌剤の製造するためのオゾン混合水を、より確実に製造することができる。
【0077】
次に、本発明の殺菌剤の製造方法に用いることのできる無機水溶液について説明する。無機水溶液は、海水を原料とする無機成分を含む。無機水溶液が所定の処理を受けることにより、海水を原料とする無機成分とオゾンとが、高い殺菌能力を有する化合物に変化して、殺菌剤を得ることができるものと推測する。
【0078】
本発明の殺菌剤の製造方法では、無機水溶液に含まれる無機成分が、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンから選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、上記イオンをすべて含むことがより好ましい。また、無機水溶液に含まれる無機成分が、さらに硫黄、ホウ素、リチウム、ケイ素、亜鉛、鉄及びストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一つのイオンを含むことが好ましい。この結果、殺菌能力の高い殺菌剤を、確実に製造することができる。
【0079】
本発明の殺菌剤の製造方法では、無機水溶液が、にがり含有水を原料とすることが好ましい。
【0080】
「にがり」とは、海水から食塩を析出させた後の残液である。にがりは、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオン、場合により硫黄、ホウ素、リチウム、ケイ素、亜鉛、鉄及びストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一つのイオンを含む。そのため、本発明の殺菌剤の製造方法に用いる無機水溶液として、にがり含有水を希釈したものを好ましく用いることができる。
【0081】
にがり含有水は、MgイオンをMgCl2換算で12~30重量%含み、その他に、Caイオンを10~100mg/リットル、Kaイオンを100~1000mg/リットル、Naイオンを100~1000mg/リットル含むことができる。無機水溶液として、にがり含有水を、水(水道水)で例えば3倍希釈したものを用いることができる。したがって、にがり含有水を原料とする無機水溶液は、MgイオンをMgCl2換算で4~10重量%含み、その他に、Caイオンを3.3~33mg/リットル、Kaイオンを33~333mg/リットル、Naイオンを33~333mg/リットル含むことができる。これらのイオンを所定の濃度含む無機水溶液にオゾンを添加することにより、殺菌能力の高い殺菌剤を得ることができる。
【0082】
また、にがり含有水としては、例えば、「天海のにがり(商品名)」及び「深層水にがり 業務用」(共に赤穂化成株式会社製)などを原料として用いることができる。また、海洋深層水には有機物が少ない。本発明の殺菌剤に有機物が含まれる場合には、殺菌性能が低下する傾向にあるので、本発明の殺菌剤の製造方法に用いる無機水溶液としては、海洋深層水を原料とする、にがり含有水を原料として用いることが好ましい。無機水溶液としては、「天海のにがり(商品名)」のにがり含有水の原料を、蒸留水等の純水又は水道水などの水で3倍希釈して、所定のイオン濃度に調整したものを用いることができる。
【0083】
本発明の殺菌剤の製造方法では無機水溶液が有機物を含まないことが好ましい。殺菌剤中に、有機物が混入すると、殺菌剤の殺菌能力は低下する。そのため、無機水溶液の有機物の含有量を極力低く(例えば1ppm以下)することにより、殺菌剤中に、有機物が実質的に混入しないようにすることができる。この結果、有機物による、殺菌剤の殺菌能力の低下を防止することができる。
【0084】
本発明の殺菌剤の製造方法では、上述のように製造したオゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することにより、殺菌剤(殺菌剤の原水)を製造することができる。水で所定の濃度に希釈された殺菌剤を樹脂容器の中で、室温程度の温度で少なくとも7日間、保管すると、殺菌剤の製造(オゾン混合水の製造及び希釈)から長期間が経過しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる。希釈のための水としては、蒸留水及びイオン交換水などの純水、又は水道水を用いることができる。殺菌剤中の無機成分を制御する点から、希釈のための水としては、純水を用いることが好ましく、蒸留水を用いることがより好ましい。
【0085】
本発明の殺菌剤の製造方法では、オゾン混合水を水で2倍以上500倍以下、好ましくは5倍以上200倍以下、より好ましくは5倍以上100倍以下、さらに好ましくは5倍以上50倍以下、特に好ましくは10倍以上30倍以下に希釈して、殺菌剤(殺菌剤の原水)を製造することができる。オゾン混合水を水で所定倍率に希釈することにより、長期に保管した場合の殺菌能力の低下を防止又は抑制することができる。
【0086】
オゾン混合水を所定の倍率で希釈後の、殺菌剤のKI法により測定したオゾン濃度(KI値)は、0.1~50ppmであることが好ましく、1~30ppmであることがより好ましく、2~20ppmであることがさらに好ましい。そのため、オゾン混合水を水で2倍以上5倍未満に希釈する場合には、希釈前のオゾン混合水のKI法により測定したオゾン濃度(KI値)は、60~100ppmであることが好ましい。また、オゾン混合水を水で5倍以上500倍以下に希釈する場合には、希釈前のオゾン混合水のKI法により測定したオゾン濃度(KI値)は、60~250ppmであることが好ましく、100~200ppmであることがより好ましく、120~170ppmであることがさらに好ましい。KI法によるオゾン濃度の測定については、実施例において説明する。
【0087】
本発明の殺菌剤の製造方法は、オゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈した殺菌剤(殺菌剤の原水)を、樹脂容器の中で、室温程度、具体的には温度5~35℃、好ましくは5~30℃で、少なくとも7日間、殺菌剤を保管することを含む。本発明では、長期保存に適した殺菌剤を製造することにより、殺菌剤を所定時間、所定温度、所定容器内で保管することができる。
【0088】
本発明の殺菌剤の製造方法は、殺菌剤を保管する際に樹脂容器を用いることができる。殺菌剤を保管する際の樹脂容器の材料は、高密度ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラート(PET)であることが好ましく、樹脂容器の材料が、ポリエチレンテレフタラート(PET)であることがより好ましい。殺菌剤を保管する際に所定の樹脂材料を用いることにより、殺菌力を有する状態で殺菌剤を長期に保管することがより確実になる。
【0089】
殺菌剤を保管するための樹脂容器として、ポリエチレンテレフタラート(PET)を材料とする容器(PETボトル)であれば、いずれも好ましく用いることができる。例えば、PETボトルには、低温保管用のPETボトル、及び高温保管用のPETボトル(例えば、耐熱温度が85℃及び95℃など)があるが、いずれも好ましく用いることができる。なお、耐熱性のあるPETボトルは、結晶化度を上げることにより耐熱性を付与しているが、材質はポリエチレンテレフタラート(PET)であり、低温保管用のPETボトルと同じである。また、酸素の透過防止のために、PETボトルの内面を、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon:DLC)でコーティングしたPETボトルを用いることができる。コストと、殺菌剤を保管する効果との観点から、DLCコーティング無しの高温保管用のPETボトルを好ましく用いることができ、耐熱温度が85℃である高温保管用のPETボトルをより好ましく用いることができる。
【0090】
本発明は、上記のようにして製造した殺菌剤の保管方法である。具体的には、本発明の殺菌剤の保管方法は、上述のようにして製造したオゾン混合水を、水で所定の倍率に希釈することによって製造した殺菌剤を、樹脂容器の中で少なくとも7日間、保管することを含む。オゾン混合水は殺菌能力を有するので、それ自体が殺菌剤であるともいえる。オゾン混合水を希釈せずに保管した場合、その殺菌能力は時間と共に急激に低下する。本発明の保管方法では、オゾン混合水を製造後、水で所定の倍率に希釈し、所定の樹脂容器の中で少なくとも7日間、保管することにより、殺菌剤の製造から長期間が経過しても、殺菌能力が高い状態を保つことができる。
【0091】
本発明の殺菌剤は、水を用いて所定の倍率に希釈しても高い殺菌能力を示す。したがって、本発明の殺菌剤を微生物等の殺菌に使用する場合には、殺菌対象に対して所定の殺菌能力を有するように、適当な倍率に水で希釈して使用することができる。
【0092】
本発明の殺菌剤の製造方法により製造された殺菌剤(以下、単に、「本発明の殺菌剤」という。)は、殺菌能力が高い。そのため、本発明の殺菌剤は、微生物、例えば、ウイルス、細菌、真菌及び芽胞のうち少なくとも一つを殺菌するための殺菌剤として用いることができる。
【0093】
本発明の殺菌剤は、低病原性鳥インフルエンザウイルス(H3N3)などのウイルスを殺菌するための殺菌剤として用いることができることが確認された。また、本発明の殺菌剤は、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、カンピロバクター、ヘリコバクター・シネジ菌、ピロリ菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、炭疽菌(一苗株及び二苗株)、トレポネーマ属菌及びボツリヌス菌(ボツリヌスA型菌及びボツリヌスB型菌)などの細菌を殺菌するための殺菌剤として用いることができることが確認された。また、本発明の殺菌剤は、真菌としてAspergillus flavusなどを殺菌するための殺菌剤として用いることができることが確認された。また、本発明の殺菌剤は、酵母様真菌としてCandida albicansなどを殺菌するための殺菌剤として用いることができることが確認された。また、本発明の殺菌剤は、芽胞として枯草菌、ボツリヌスA型菌(芽胞)、及びボツリヌスB型(芽胞)などを殺菌するための殺菌剤として用いることができることが確認された。また、本発明の殺菌剤は、上述の細菌等に対する殺菌剤として有効であることから、炭疽菌の殺菌剤として有効であるものと考えられる。したがって、本発明の製造方法で製造された殺菌剤は、上述のウイルス、細菌、真菌及び芽胞の殺菌剤として用いることができる。
【0094】
本発明の殺菌剤は、上述の実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でも実施可能である。すなわち、海水の代わりに、海水の成分を疑似するように調整した無機成分を、純水等の不純物を含まないH2Oの液体に添加したものを無機水溶液として用いることもできる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例によって、本発明を具体的に説明する。
【0096】
(実験1)
実験1では、まず、所定のオゾン混合水を製造した。実験1では、
図1に示すようなオゾン混合水製造装置1を用いて、処理される無機水溶液の温度を4℃に保つように設定して、実験1のオゾン混合水を製造した。その際、バブル発生ノズル49として、
図2に示すようなマイクロ発生用のバブル発生ノズル49を用いた。オゾン混合水製造装置1の貯留槽3に供給された無機水溶液の量(処理量X)は、9リットルである。また、オゾン混合水製造装置1の処理速度Yは7リットル/分である。処理時間tを30分として、オゾン混合水を製造した。このとき、処理の繰り返し回数に相当するA(=t・Y/X)は、A=23.3となる。
図1に示すオゾン混合水製造装置1では、オゾン混合工程及び撹拌工程は、連続的に交互に繰り返して実施される。
【0097】
実験1に用いた無機水溶液としては、「深層水にがり 業務用」(赤穂化成株式会社製)のにがり含有水を、水(蒸留水)で3倍希釈したものを用いた。「深層水にがり 業務用」は、MgイオンをMgCl2換算で12~30重量%含み、その他に、Caイオンを10~100mg/リットル、Kイオンを100~1000mg/リットル、Naイオンを100~1000mg/リットル含む。
【0098】
以上のようにして製造したオゾン混合水を、表1に示すように、実験1-1~1-7の「(A)保管時の希釈倍率」で示す希釈倍率で、水(蒸留水)を用いて希釈し、最長6カ月間、室温(15~25℃)で、高密度ポリエチレン(HDPE)を材料とする容器の中に密封して保管した。なお、実験1-1の場合には希釈は行わず、製造したオゾン混合水をそのまま保管した。したがって、実験1-1は比較例であり、実験1-2~1-7は実施例である。
【0099】
実験1として製造したオゾン混合水のオゾン濃度を、オゾン濃度センサ及びKI法により測定した。なお、これらの測定及び評価は、実験1のオゾン混合水の製造後、24時間後に行った。その間、実験1のオゾン混合水は、蓋付きの容器内に入れて、蓋をした状態で4℃の保冷庫内に保存した。なお、後述する実験2~5でも、実験1と同様のオゾン混合水を製造して用いた。
【0100】
オゾン混合水のオゾン濃度の測定には、オゾン濃度センサ及びKI法を用いた。オゾン濃度センサとしては、東亜ディーケーケー株式会社製の型番OZ-20オゾン計を使用した。
【0101】
KI法による測定は、次のように行った。すなわち、KI法は、酸化剤の存在下でKIからI2が遊離することを利用した測定法である。ここで、オゾン(O3):ヨウ素(I2):チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)の反応は1:1:2のモル比である。そして、O3の分子量は16.00×3=48、I2の分子量は126.9×2=253.8、Na2S2O3の分子量は22.9×2+32.07×2+16×3≒158である。
【0102】
オゾンとチオ硫酸ナトリウムとの反応は1:2のモル比でおこることから、オゾン:チオ硫酸ナトリウムの重量比は48:(2×158)となり、オゾン混合水1リットル中に存在するオゾン量をX(g)、Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム)1/100規定(N)のml数をBとすると、
(48/2)/158=X/(B/1000)×(158/100)により、
X=0.24B×10-3(g)=0.24Bmg(ppm)
となる。
【0103】
上記オゾン濃度を測定するに当り、デンプンを50~100mlの水(蒸留水)に溶かしてデンプン溶液を作製する。また濃度35%の塩酸(HCl)を5倍に希釈して塩酸溶液を作製する。ヨウ化カリウム(KI)20gを100mlの蒸留水に溶解してKI溶液を作製する。Na2S2O3を水で溶解したNa2S2O3の1/100N溶液を作製する。次に、2リットルのガラスビーカーにオゾン混合水1リットルを入れ、デンプン溶液20ml、KI溶液20ml、塩酸溶液10mlをビーカーに入れてよく混ぜると、薄紫色になる。
【0104】
そして、Na2S2O3の1/100N溶液で滴定し、薄紫色が消えて無色透明になったときの滴定量を読む。ここで、1mlの場合は、0.24×1=0.24ppmとなり、5mlの場合には、0.24×5=1.2ppmとなる。すなわち、Na2S2O3の1/100N溶液の滴定量によって、KI法によるオゾン濃度を測定(推定)することができる。本明細書では、KI法によるオゾン濃度の測定値のことを「KI値」という。
【0105】
ところで、一般のオゾン水においては、KI法によってオゾン濃度を測定する場合、薄紫色が消えて無色透明になると、再び薄紫色になることはない。しかし、実験1のオゾン混合水は、Na2S2O3の1/100N溶液を滴定して無色透明になった後、数分から十数分すると再び薄紫色に変化する。したがって再びNa2S2O3の1/100N溶液を滴定して無色透明にすることを数回繰り返し、所定時間、例えば60分経過後にも再び薄紫色に変色しなかった場合に、滴定したNa2S2O3の1/100N溶液の全量を用いてオゾン濃度を測定(推定)するものである。なお、オゾン濃度をより高精度に測定するには、所定時間をより長時間にすればよい。
【0106】
実験1として製造したオゾン混合水を、オゾン濃度センサによりオゾン濃度測定をしたところ、測定値は零だった。一方、実験1として製造したオゾン混合水のKI法による測定値(KI値)は、150~160ppmの範囲だった。
【0107】
次に、殺菌剤の殺菌能力を評価するための方法について説明する。
【0108】
製造した実験1-1~1-7の殺菌剤の殺菌能力を評価するために、ATCCの基準株(ATCC番号25922)の大腸菌に対して、実験1-1~1-7の殺菌剤を所定の倍率で希釈して適用し、残存する大腸菌数を測定した。表1の「所定時間保管後の保存殺菌水の殺菌効果希釈倍率」として記載されている数値は、大腸菌がすべて殺菌されて残存しなかったときの最大希釈倍率を示す。この倍率より大きい倍率に希釈した場合は、大腸菌がすべて殺菌されなかったことを意味する。ただし、「>1000」のように、不等号「>」を付した場合には、本実験で最大に希釈した場合であっても、すべての大腸菌が殺菌されたことを意味する。例えば、実験1-2は、保管前にオゾン混合水を5倍に希釈した殺菌剤である。この実験1-2の殺菌剤を、例えば4カ月後に100倍に希釈したもの(保管前のオゾン混合水を5倍希釈×100倍=500倍に希釈したもの)を大腸菌に適用した場合には、大腸菌がすべて殺菌されて残存しなかったが、100倍より大きい倍率に希釈した場合は、すべての大腸菌は殺菌されず、一部の大腸菌が残ったことを意味する。
【0109】
なお、表1の「所定時間保管後の保存殺菌水の殺菌効果希釈倍率」欄に記載の「0」は、1倍(水で希釈しなかった場合)でも殺菌効果を得られなかったことを示す。また、表1中の「NA」は、それまでの結果から、既に所望の殺菌効果が得られないことが明らかなので、測定しなかったことを示す。表2~8においても同様である。
【0110】
表3には、表1の数値を、オゾン混合水に対する希釈倍率に換算した殺菌効果絶対希釈倍率を示す。例えば、実験1-2は、保管前に、オゾン混合水を5倍に希釈した殺菌剤である。この殺菌剤の殺菌効果希釈倍率が、4カ月後に100倍だったので、表3の「4カ月」の欄には、「殺菌効果絶対希釈倍率」として500倍(=保管前の5倍希釈×100倍希釈)と記載している。表3の「殺菌効果絶対希釈倍率」が大きいほど、その殺菌剤は、高い殺菌能力を示すといえる。
【0111】
殺菌剤の殺菌効果絶対希釈倍率が、3カ月程度の保管期間後に500倍以上であれば、殺菌剤として十分な殺菌能力を有するといえる。また、殺菌剤の殺菌効果絶対希釈倍率が、4カ月程度の保管期間後に500倍以上であれば、殺菌剤としてより十分な殺菌能力を有するといえる。
【0112】
表3から明らかなように、オゾン混合水を希釈しなかった実験1-1の場合には、オゾン混合水製造直後(0日)では、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示したが、14日後には200倍まで低下し、その後も殺菌能力が低下した。
【0113】
一方、表3から明らかなように、オゾン混合水を5倍以上の倍率で希釈して保管した実験1-2~1-7の場合には、1か月後でも800倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示し、5か月後でも500倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、オゾン混合水を所定の倍率(例えば、2倍以上500倍以下)で希釈して、所定の樹脂容器に保管することにより、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌剤の殺菌能力が高い状態を保つことができることが明らかになった。
【0114】
また、実験1-2~1-7の結果から、オゾン混合水を希釈する倍率は、好ましくは5倍以上200倍以下、より好ましくは5倍以上100倍以下、さらに好ましくは5倍以上50倍以下であることが明らかになった。
【0115】
(実験2)
実験1と同様に、オゾン混合水を製造した。実験1と同様に、表2に示すように、そのオゾン混合水を、実験2-1~2-7の「(A)保管時の希釈倍率」で示す希釈倍率で、水(蒸留水)を用いて希釈し、最長7カ月間、室温(15~25℃)で保管した。ただし、実験2では、保管のための容器の材料が実験1とは異なる。実験2では、ポリエチレンテレフタラート(PET)を材料とする容器(本明細書では、「PET-1」という。)の中に密封して所定期間保管した。このPET容器(PET-1)は、85℃の耐熱性を有する容器である。なお、実験2-1の場合には希釈は行わず、製造したオゾン混合水をそのまま保管した。したがって、実験2-1は比較例であり、実験2-2~2-7は実施例である。
【0116】
表2に、実験1と同様に、製造した実験2-1~2-7の殺菌剤の殺菌能力を評価するために、ATCCの基準株(ATCC番号25922)の大腸菌に対して、実験2-1~2-7の殺菌剤を所定の倍率で希釈して適用し、残存する大腸菌数を測定した。表2の「所定時間保管後の保存殺菌水の殺菌効果希釈倍率」として記載されている数値は、大腸菌がすべて殺菌されて残存しなかったときの最大希釈倍率を示す。
【0117】
実験1の表3と同様に、表4に、実験2の表2の数値を、オゾン混合水に対する希釈倍率にした殺菌効果絶対希釈倍率を示す。表3の「殺菌効果絶対希釈倍率」が大きいほど、その殺菌剤は、高い殺菌能力を示すといえる。
【0118】
表4から明らかなように、オゾン混合水を希釈しなかった実験2-1の場合には、オゾン混合水製造直後(0日)では、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示したが、14日後には200倍まで低下し、その後も殺菌能力が低下した。
【0119】
一方、表4から明らかなように、オゾン混合水を5倍以上の倍率で希釈して保管した実験2-2~2-7の場合には、4か月後でも500倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、オゾン混合水を所定の倍率(例えば、2倍以上500倍以下)で希釈して、所定の樹脂容器に保管することにより、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌剤の殺菌能力が高い状態を保つことができることが明らかになった。また、実験2-3~2-5(保管時の希釈倍率10~50倍)の場合には、7か月後でも500倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、保管時の希釈倍率10~50倍の場合には、特に長期間に渡って、殺菌剤の殺菌能力を高い状態に保つことができることが明らかになった。
【0120】
また、実験1との比較では、ポリエチレンテレフタラート(PET)を材料とする容器を用いた実験2の方が、高い殺菌能力を示した。このことから、殺菌剤の保管のための容器の材料として、ポリエチレンテレフタラート(PET)を用いることにより、より長期間、高い殺菌能力を示す殺菌剤を得ることができることが明らかになった。
【0121】
(実験3)
実験1と同様に、オゾン混合水を製造した。実験1と同様に、表5に示すように、そのオゾン混合水を、実験3-1から3-12の「(A)保管時の希釈倍率」で示す希釈倍率で、水(蒸留水)を用いて希釈し、最長4カ月間、保管した。ただし、実験3では、保管の際の温度を、異なった4つの温度(25℃、37℃、42℃及び50℃)とした。また、実験3では、保管のための容器の材料を、実験2と同様に、材料がポリエチレンテレフタラート(PET)であり、85℃の耐熱性を有する容器(PET-1)の中に密封して所定期間保管した。なお、実験3-1、実験3-4、実験3-7及び実験3-10の場合には希釈は行わず、製造したオゾン混合水をそのまま保管した。したがって、実験3-1、実験3-4、実験3-7及び実験3-10は比較例である。また、実験3-5、実験3-6、実験3-8、実験3-9、実験3-11、及び実験3-12は、保管温度を37℃以上としたので、比較例である。実験3-2及び実験3-3は、保管時の希釈倍率及び保管温度が所定の範囲なので、実施例である。
【0122】
実験1と同様に、製造した実験3-1から3-12の殺菌剤の殺菌能力を評価するために、ATCCの基準株(ATCC番号25922)の大腸菌に対して、実験3-1から3-12の殺菌剤を所定の倍率で希釈して適用し、残存する大腸菌数を測定した。表5に、殺菌能力の評価結果を示す。表5の「所定時間保管後の殺菌効果絶対希釈倍率(初期オゾン混合水に対する希釈倍率)」に示す倍率の数値は、実験1の表3と同様の「殺菌効果絶対希釈倍率」である。すなわち、表5に示す実験3-2(20倍希釈で保管)の場合には、5倍希釈して保管した殺菌水を14日保管した後、100倍に希釈して殺菌能力を評価したところ、殺菌能力があったことを示している。このときの実験3-2の「殺菌効果絶対希釈倍率」は、1000倍(=保管前の5倍希釈×100倍希釈)である。表5の「殺菌効果絶対希釈倍率」が大きいほど、その殺菌剤は、高い殺菌能力を示すといえる。
【0123】
表5から明らかなように、オゾン混合水を希釈しなかった実験3-1の場合には、オゾン混合水製造直後(0日)では、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示したが、14日後には100倍まで低下した。実験3-4、実験3-7及び実験3-10についても同様に、保管後の殺菌能力は低かった。
【0124】
一方、表5から明らかなように、オゾン混合水を5倍及び25倍の倍率で希釈して保管した実験3-2及び3-3の場合には、4か月後でも500倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、オゾン混合水を所定の倍率(例えば、2倍以上500倍以下)で希釈して、所定の樹脂容器に保管することにより、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌剤の殺菌能力が高い状態を保つことができることが明らかになった。
【0125】
また、表5から明らかなように、20倍で希釈して保管した実験3-3、実験3-6、実験3-9及び実験3-12の場合には、5倍で希釈して保管した場合と比較して、より優れた殺菌能力を有するといえる。したがって、オゾン混合水を水で10倍以上30倍以下に希釈して、殺菌剤を製造し、その後、所定期間保管することにより、特に優れた殺菌剤を得ることができるといえる。
【0126】
また、表5から明らかなように、37℃以上の保管温度で保管した実験3-5、実験3-6、実験3-8、実験3-9、実験3-11、及び実験3-12の場合には、長期の保存の場合に、実施例である実験3-2及び実験3-3よりも殺菌能力が低い。しかしながら、例えば、実験3-12のように、保管温度が50℃の場合でも、保管期間が14日程度のときには、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示した。このことは、短期間であれば、保管温度が高温になったとしても、殺菌能力に対する悪影響は低いことが示唆される。すなわち、所定の倍率に希釈して製造した殺菌剤を小売店などに運搬する際に、ある程度の温度変化は許容さるため、運搬用自動車には、恒温装置は不要であるなどの点で有利であるといえる。
【0127】
(実験4)
実験3と同様に、オゾン混合水を製造し、表6に示すように、そのオゾン混合水を、実験4-1から4-12の「(A)保管時の希釈倍率」で示す希釈倍率で、水(蒸留水)を用いて希釈し、異なった4つの温度(25℃、37℃、42℃及び50℃)で最長3カ月間、保管した。ただし、実験4の場合には、保管のための容器の材料として、95℃耐熱のPET容器(本明細書では、「PET-2」という。)を用いた。実験4-2及び実験4-3は、保管時の希釈倍率及び保管温度が所定の範囲なので、実施例である。
【0128】
実験3と同様に、実験4-1から4-12の殺菌能力を評価した。表6に、殺菌能力の評価結果を示す。表6の「殺菌効果絶対希釈倍率」が大きいほど、その殺菌剤は、高い殺菌能力を示すといえる。
【0129】
表6から明らかなように、オゾン混合水を希釈しなかった実験4-1の場合には、オゾン混合水製造直後(0日)では、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示したが、14日後には200倍まで低下した。実験4-4、実験4-7及び実験4-10についても同様に、保管後の殺菌能力は低かった。
【0130】
一方、表6から明らかなように、オゾン混合水を5倍及び25倍の倍率で希釈して保管した実験4-2及び4-3の場合には、3か月後でも500倍以上の殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、オゾン混合水を所定の倍率(例えば、2倍以上500倍以下)で希釈して、所定の樹脂容器に保管することにより、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌剤の殺菌能力が高い状態を保つことができることが明らかになった。
【0131】
また、表6から明らかなように、20倍で希釈して保管した実験4-3、実験4-6、実験4-9及び実験4-12の場合には、5倍で希釈して保管した場合と比較して、より優れた殺菌能力を有するといえる。したがって、オゾン混合水を水で10倍以上30倍以下に希釈して、殺菌剤を製造し、その後、所定期間保管することにより、特に優れた殺菌剤を得ることができるといえる。
【0132】
また、表6から明らかなように、37℃以上の保管温度で保管した実験4-5、実験3-6、実験4-8、実験4-9、実験4-11、及び実験4-12の場合には、長期の保存の場合に、実施例である実験4-2及び実験4-3よりも殺菌能力が低い。しかしながら、例えば、実験4-12のように、保管温度が50℃の場合でも、保管期間が14日程度のときには、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示した。このことは、短期間であれば、保管温度が高温になったとしても、殺菌能力に対する悪影響は低いことが示唆される。すなわち、所定の倍率に希釈して製造した殺菌剤を小売店などに運搬する際に、ある程度の温度変化は許容されるため、運搬用自動車には、恒温装置は不要であるなどの点で有利であるといえる。
【0133】
(実験5)
実験3と同様に、オゾン混合水を製造し、表7に示すように、そのオゾン混合水を、実験5-1から5-12の「(A)保管時の希釈倍率」で示す希釈倍率で、水(蒸留水)を用いて希釈し、異なった4つの温度(25℃、37℃、42℃及び50℃)で最長3カ月間、保管した。ただし、実験5の場合には、保管のための容器の材料として、内面をダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon: DLC)でコーティングしたPET容器(本明細書では、「DLC PET」という。)を用いた。実験5-2及び実験5-3は、保管時の希釈倍率及び保管温度が所定の範囲なので、実施例である。
【0134】
実験3と同様に、実験5-1から5-12の殺菌能力を評価した。表7に、殺菌能力の評価結果を示す。表7の「殺菌効果絶対希釈倍率」が大きいほど、その殺菌剤は、高い殺菌能力を示すといえる。
【0135】
表7から明らかなように、オゾン混合水を希釈しなかった実験5-1の場合には、オゾン混合水製造直後(0日)では、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示したが、14日後には100倍まで低下した。実験5-4、実験5-7及び実験5-10についても同様に、保管後の殺菌能力は低かった。
【0136】
一方、表7から明らかなように、オゾン混合水を5倍及び25倍の倍率で希釈して保管した実験5-2及び5-3の場合には、3か月後でも1000倍より大きい殺菌効果絶対希釈倍率を示した。したがって、オゾン混合水を所定の倍率(例えば、2倍以上500倍以下)で希釈して、所定の樹脂容器に保管することにより、殺菌剤の製造から長期間、室温で保管しても、殺菌剤の殺菌能力が高い状態を保つことができることが明らかになった。
【0137】
また、表7から明らかなように、37℃以上の保管温度で保管した実験4-5、実験3-6、実験4-8、実験4-9、実験4-11、及び実験4-12の場合には、長期の保存の場合に、実施例である実験4-2及び実験4-3よりも殺菌能力が低い。しかしながら、例えば、実験5-9のように、保管温度が42℃の場合でも、保管期間が14日程度のときには、「>1000」倍という高い殺菌効果絶対希釈倍率を示した。このことは、短期間であれば、保管温度が42℃という高温になったとしても、殺菌能力に対する悪影響は低いことが示唆される。すなわち、所定の倍率に希釈して製造した殺菌剤を小売店などに運搬する際に、ある程度の温度変化は許容されるため、運搬用自動車には、恒温装置は不要であるなどの点で有利であるといえる。
【0138】
(KI値の評価)
実験3-1から3-3において、殺菌効果絶対希釈倍率を測定する際に、KI法によるKI値の測定を行った。表8に、実験3-1から3-3のKI値の測定結果を示す。表8の「A.希釈殺菌水のKI値(ppm)」には、希釈した状態で測定した希釈殺菌水のKI値の測定値を示す。表8の「B.1倍希釈の殺菌水に換算したKI値」には、1倍希釈(すなわち希釈なし)の場合のKI値を算出した値を示す。また、「C.0日のKI値に対する比(ppm)」には、保管前(0日)のKI値を1としたときの、所定期間保管後に測定したKI値(0日のKI値に対する比)を示す。「D.所定時間保管後の殺菌効果絶対希釈倍率」に示す所定時間保管後の殺菌効果絶対希釈倍率と比較すると、KI値(又はKI値の比)は、殺菌能力と良い相関を示しているといえる。
図3は、この点をさらに確認するために作成した図である。
図3には、実験3から5において、殺菌効果絶対希釈倍率を測定する際に測定したKI値の比の値(表8の「C.0日のKI値に対する比(ppm)」と同様の値)を、殺菌効果絶対希釈倍率に対してプロットした図である。
図3から明らかなように、KI値と、殺菌効果絶対希釈倍率とは相関があるといえる。したがって、KI値は、殺菌剤の殺菌能力を示す値として用いることができるといえる。
【0139】
表8及び
図3に示す結果、並びに実験1~3の結果を考慮すると、希釈前の殺菌剤(オゾン混合水)のKI値は、60~250ppmであることが好ましく、100~200ppmであることがより好ましく、120~170ppmであることがさらに好ましいといえる。この殺菌剤(オゾン混合水)を所定の希釈倍率で希釈し、所定期間、所定の温度範囲で保管することにより、長期間に渡って高い殺菌能力を維持する殺菌剤を得ることができるといえる。
【0140】
(PET容器の種類と殺菌能力)
また、実験1~5の結果から、殺菌剤の保管容器としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)を材料とするPET容器を好ましく用いることができるといえる。また、耐熱性のあるPET容器、例えば85℃用及び95℃用のPET容器(PET-1及びPET-2)を用いることができる。また、内面をダイヤモンドライクカーボン(DLC)でコーティングしたPETボトルを用いることもできることが明らかになった。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【符号の説明】
【0149】
1 オゾン混合水製造装置
3 貯留槽(貯水槽)
5 マイクロバブル発生装置
15 ポンプ
17 吸引口
19 吸引路
21 気体吸引路
23 オゾン供給手段
27 接続路
29 オゾン溶解装置
31 密閉容器
31B 底部
33 流入管
35 内端部(流入口)
37 排出弁
39 弁体
41 流出管
43 流出口
47 接続路(接続管)
49 バブル発生ノズル
50a、50b 熱交換器
51 ノズル本体
52 温度制御機構本体
53 連通穴
55 バブル発生カートリッジ
57 カートリッジ本体
59 網部材
61 オリフィス
63 固定具
65 圧力解放室
67 貫通孔
69 撹拌室