(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】AlN焼結部材の製造方法、電極埋設部材の製造方法および電極埋設部材
(51)【国際特許分類】
C04B 35/581 20060101AFI20240717BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20240717BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C04B35/581
C04B35/645
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020115207
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-040865(JP,A)
【文献】特開2005-203734(JP,A)
【文献】特開2012-216816(JP,A)
【文献】特開2005-029458(JP,A)
【文献】特開2005-317749(JP,A)
【文献】特開2017-157328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
C04B 35/56-35/599
C04B 35/645
H01L 21/67-21/687
C30B 1/00-35/00
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成されたAlN焼結部材の製造方法であって、
AlN原料粉から第1および第2のAlN成形体を形成する工程と、
前記第1および第2のAlN成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して第1および第2のAlN脱脂体を作製する工程と、
前記第1および第2のAlN脱脂体を仮焼して第1および第2のAlN仮焼体を作製する工程と、
前記第1のAlN仮焼体に第1の平面を形成する工程と、
前記第2のAlN仮焼体に第2の平面を形成する工程と、
前記第1の平面または前記第2の平面の少なくとも一方に凹部を形成する工程と、
前記第1のAlN仮焼体と前記第2のAlN仮焼体とを、前記第1の平面と前記第2の平面とを接触させた状態で積層する工程と、
前記積層した前記第1のAlN仮焼体および前記第2のAlN仮焼体を、積層方向に10kgf/cm
2以上の圧力を加えながら焼成する工程と、を備え
、
前記第1および第2のAlN仮焼体を作製する工程の仮焼温度は、1200℃以上1700℃以下であり、かつ、前記焼成する工程の焼成温度は、1800℃以上2000℃以下であり、
前記第1のAlN仮焼体と前記第2のAlN仮焼体とを積層する工程において、前記凹部の少なくとも一部に電極を配置して積層し、
前記第1または第2のAlN成形体を形成する前記AlN原料粉は、少なくとも一方にY成分が添加され、
前記第1および第2のAlN脱脂体を作製する工程において、Y成分が添加された前記第1または第2のAlN成形体は、脱脂温度T(℃)と脱脂時間H(h)と添加したY成分をY
2
O
3
換算した内比でC(wt%)として、T>20×C+440かつH≧300/{T-(20×C+440)}を満たす条件で前記第1または第2のAlN脱脂体が作製されることを特徴とするAlN焼結部材の製造方法。
【請求項2】
一体に形成され、処理対象を表面上に保持する電極埋設部材であって、
AlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成された絶縁層およびバルク層と、
前記絶縁層とバルク層との間に設けられた電極と、を備え、
前記絶縁層の厚みのバラツキは
58μm以下であ
り、
前記絶縁層の300℃での体積抵抗率は、1×10
7
~6×10
10
(Ωcm)であることを特徴とする電極埋設部材。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記セラミックス焼結体のAlN粒界にYAG粒子が含まれ、YAP粒子およびYAM粒子が含まれないことを特徴とする請求項
2記載の電極埋設部材。
【請求項4】
前記電極埋設部材は、さらに、前記処理対象を保持する表面と対向する面にAlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成された支持部材が接合されていることを特徴とする請求項
2または請求項
3に記載の電極埋設部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlN焼結部材の製造方法、電極埋設部材の製造方法および電極埋設部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、ウエハなどの基板を表面に保持するセラミック製静電チャックは、基板載置面とセラミックスに埋設されている静電吸着用電極や高周波電極までの離間距離、すなわち絶縁層の厚みを均一にすることが要求されている。そしてこのようなセラミックス素材として、AlN(窒化アルミニウム)焼結体が用いられている。
【0003】
しかしながら、AlN焼結体は焼結温度が高く、難焼結性であり、かつ、金属電極をAlN焼結体中に埋設するにはホットプレス焼成など手段が限られていた。
【0004】
なお、特許文献1には、セラミックス仮焼体同士を通常の焼成温度より高い温度で常圧、荷重下で焼成することにより、一体化する技術が開示されている。ただし、錘を載置した荷重下でアルミナの仮焼体同士及びムライトの仮焼体同士を一体化した実施例しか挙げられておらず、AlN仮焼体を一体化する実施例は挙げられていない。
【0005】
また、特許文献2には、2つの被焼結体をホットプレス成形することにより厚さの異なるセラミックス焼結体を得る技術が開示されている。被焼結体には、セラミックス粉末、セラミックス成形体、セラミックス脱脂体及びセラミックス焼結体が含まれるとされている。成形型上に形成された成形体の上に金属部材を載せ、その上に粉末を収容しホットプレス焼成する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、冷間等方圧加圧法(CIP)によりセラミックス成形体を成形し、セラミックス成形体に形成した溝内に電極を収容し、複数のセラミックス成形体を重ね合わせ、重ね合わせ方向に加圧しながら焼成することにより、電極が内蔵されたセラミックス焼成体を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-298574号公報
【文献】特開2000-141336号公報
【文献】特許6148845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、実際にはAlN仮焼体同士を焼成しても一体化することはできないという課題があった。また、特許文献2、3に記載された技術では、セラミックス中に電極等が埋設された部材を製造した際、その各部寸法精度にバラツキがみられる。たとえば、セラミックスからなる絶縁層の厚みの均一性が要求される場合や絶縁層自体の物性を製造条件で調節することは困難であり、特に所定の電気的特性を要求される電極埋設部材の製法としては適当でないという課題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、寸法精度の向上したAlN焼結部材の製造方法、および絶縁層の厚みの均一性が高く物性が調整された電極埋設部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のAlN焼結部材の製造方法は、AlNを主成分とするAlN焼結部材の製造方法であって、AlN原料粉から第1および第2のAlN成形体を形成する工程と、前記第1および第2のAlN成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して第1および第2のAlN脱脂体を作製する工程と、前記第1および第2のAlN脱脂体を仮焼して第1および第2のAlN仮焼体を作製する工程と、前記第1のAlN仮焼体に第1の平面を形成する工程と、前記第2のAlN仮焼体に第2の平面を形成する工程と、前記第1の平面または前記第2の平面の少なくとも一方に凹部を形成する工程と、前記第1のAlN仮焼体と前記第2のAlN仮焼体とを、前記第1の平面と前記第2の平面とを接触させた状態で積層する工程と、前記積層した前記第1のAlN仮焼体および前記第2のAlN仮焼体を、積層方向に10kgf/cm2以上の圧力を加えながら焼成する工程と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明のAlN焼結部材の製造方法によれば、凹部に由来する中空構造を有するAlN焼結部材を得ることが可能となる。第1および第2のAlN仮焼体に第1および第2の平面並びに凹部を形成しているが、これらを形成するための研削や研磨などの作業は、AlN焼結体にこれらを形成する場合と比較して、作業時間の短縮化を図ることが可能となる。また、凹部を形成したAlN成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部に由来するAlN焼結部材の外形および中空構造の寸法精度の向上を図ることが可能となる。また、錘を用いた小さな荷重を加えた状態で焼成を行う上記特許文献1に開示された技術と比較して、10kgf/cm2(=0.98MPa)以上の加圧を行いながら焼成を行うので、接合強度の向上、およびAlN焼結部材の緻密化を図ることが可能となる。
【0012】
(2)また、本発明のAlN焼結部材の製造方法において、前記第1および第2のAlN仮焼体を作製する工程の仮焼温度は、1200℃以上1700℃以下であり、かつ、前記焼成する工程の焼成温度は、1800℃以上2000℃以下であることを特徴としている。これにより、AlN焼結部材を形成する各層の接合強度が強くなる。
【0013】
(3)また、本発明のAlN焼結部材の製造方法は、前記第1のAlN仮焼体と前記第2のAlN仮焼体とを積層する工程において、前記凹部の少なくとも一部に電極を配置して積層することを特徴としている。これにより、電極が埋設されたAlN焼結部材の寸法精度の向上を図ることが可能となる。例えば、AlN焼結部材の絶縁層となる層の厚みの寸法精度を向上させると、絶縁層の厚みのバラツキを低減させることができる。
【0014】
(4)また、本発明のAlN焼結部材の製造方法において、前記第1または第2のAlN成形体を形成する前記AlN原料粉は、少なくとも一方にY成分が添加され、前記第1および第2のAlN脱脂体を作製する工程において、Y成分が添加された前記第1または第2のAlN成形体は、脱脂温度T(℃)と脱脂時間H(h)と添加したY成分をY2O3換算した内比でC(wt%)として、T>20×C+440かつH≧300/{T-(20×C+440)}を満たす条件で前記第1または第2のAlN脱脂体が作製されることを特徴としている。これにより、電極が埋設されたAlN焼結部材の少なくとも一部の焼結体の体積抵抗率を相対的に低い値に調整することができる。例えば、AlN焼結部材が静電チャックとして使用される場合、絶縁層の体積抵抗率を低い値に調整することにより、処理対象に対し強い静電吸着力を発揮できる。
【0015】
(5)また、本発明の電極埋設部材は、一体に形成され、処理対象を表面上に保持する電極埋設部材であって、AlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成された絶縁層およびバルク層と、前記絶縁層とバルク層との間に設けられた電極と、を備え、前記絶縁層の厚みのバラツキは75μm以下であることを特徴としている。このように絶縁層の厚みのバラツキが低減されていることにより、例えば、電極埋設部材が静電チャックとして使用される場合、面内の吸着力の差を低減することができる。また、例えば、ウエハ加熱用ヒーターとして用いられる場合、面内の温度のバラツキを低減することができる。
【0016】
(6)また、本発明の電極埋設部材において、前記絶縁層は、前記セラミックス焼結体のAlN粒界にYAG粒子が含まれ、YAP粒子およびYAM粒子が含まれないことを特徴としている。これにより、絶縁層の体積抵抗率を小さい範囲で調整することができ、例えば、電極埋設部材が静電チャックとして使用される場合、処理対象に対し強い静電吸着力を発揮できる。
【0017】
(7)また、本発明の電極埋設部材は、さらに、前記処理対象を保持する表面と対向する面にAlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成された支持部材が接合されていることを特徴としている。これにより、電極埋設部材をシャフト付きヒーター等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1および第2の実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】(a)~(d)それぞれ第1の実施形態の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図3】(a)~(d)それぞれ第2の実施形態の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図4】Y成分の添加量としきい式の関係を例示した図である。
【
図5】第2の実施形態に係る電極埋設部材を模式的に示す正断面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る電極埋設部材を模式的に示す正断面図である。
【
図7】各試料の製造条件および評価結果を示す表である。
【
図8】各試料の製造条件および評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0020】
[第1の実施形態]
(AlN焼結部材の製造方法)
図1は、本発明の第1および第2の実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法を示すフローチャートである。本発明の第1の実施形態に係るAlN焼結部材10の製造方法は、
図1に示すように、第1および第2のAlN成形体形成工程STEP1、第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2、第1および第2のAlN仮焼体作製工程STEP3、第1の平面形成工程STEP4、第2の平面形成工程STEP5、凹部形成工程STEP6、積層工程STEP7および焼成工程STEP8を備えている。
【0021】
図2(a)~(d)は、それぞれ本実施形態の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。第1および第2のAlN成形体形成工程STEP1では、AlN原料粉から第1および第2のAlN成形体11、12を形成する。例えば、AlN粉末に焼結助剤、熱硬化性樹脂バインダなどの添加剤を適宜添加して混合して、AlN原料粉を作製し、顆粒を造粒後、加圧成形してAlN成形体を形成することができる。
【0022】
AlN粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、AlN粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。
【0023】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。
【0024】
第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2では、第1および第2のAlN成形体11、12を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して第1および第2のAlN脱脂体21、22を作製する。AlN成形体は、例えば、400℃以上800℃以下の温度で熱処理され、AlN脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、バインダの有機成分を除去することが重要なので大気炉の方が好ましい。なお、第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2において、第1および第2のAlN成形体の脱脂温度および脱脂時間は同じであっても、相違していてもよい。
【0025】
第1および第2のAlN仮焼体作製工程STEP3では、第1および第2のAlN脱脂体21、22を1200℃以上1700℃以下の温度で仮焼して第1および第2のAlN仮焼体31、32を作製する。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。なお、第1および第2のAlN仮焼体作製工程STEP3において、第1および第2のAlN脱脂体の仮焼温度および仮焼時間は同じであっても、相違していてもよい。
【0026】
第1の平面形成工程STEP4では、第1のAlN仮焼体31に第1の平面31aとその反対面31bを形成する。第2の平面形成工程STEP5では、第2のAlN仮焼体32に第2の平面32aとその反対面32bを形成する。なお、第1の平面31aと第2の平面32aは、積層工程STEP7において接触する面となる。
【0027】
NC旋盤、MC加工機などの平面研削機やラッピング加工機などを用いて、例えば、表面粗さRaが、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下、より好ましくは0.15μm以上0.4μm以下となるように研磨または研削を行うことにより、第1および第2の平面31a、32aを形成する。
【0028】
凹部形成工程STEP6においては、第1の平面31aまたは第2の平面32aの少なくとも一方に凹部33を形成する。凹部33は、第1の平面31a、第2の平面32aの何れか一方、または双方から掘り込むように研削加工などによって形成する。
【0029】
なお、第1の平面形成工程STEP4または第2の平面形成工程STEP5において、第1または第2の平面31a、32aを研磨加工せずに、あるいは粗く研削加工しただけとしておき、凹部形成工程STEP5において凹部33を形成した後で、第1または第2の平面31a、32aを研磨加工、あるいは仕上げの研削加工を行ってもよい。
【0030】
なお、第1および第2の平面31a、32aの双方から掘り込むように凹部33を形成する場合、これらの凹部33は、第1および第2の平面31a、32aを積層工程STEP6において接触されたときに、一体化するものであってもよいが、他の平面によって閉じられるものであってもよい。
【0031】
また、第1の平面形成工程STEP4、第2の平面形成工程STEP5または凹部形成工程STEP6において、乾式の研削加工または研磨加工により、第1の平面31a、第2の平面32aまたは凹部33を形成することが好ましい。これにより、研削液又は研磨液が第1または第2のAlN仮焼体31、32の内部に侵入し、AlN焼結部材10に不純物が残存するおそれの解消を図ることが可能となる。なお、研削加工および研磨加工を行う場合、これら加工の双方ともに乾式で行うことが好ましい。
【0032】
積層工程STEP7では、第1のAlN仮焼体31と第2のAlN仮焼体32とを、第1の平面31aと第2の平面32aとを接触させた状態で積層する。
【0033】
焼成工程STEP8では、積層した第1のAlN仮焼体31および第2のAlN仮焼体32を、積層方向に10kgf/cm2以上の圧力を加えながら1800℃以上2000℃以下で焼成する。これにより、第1および第2のAlN仮焼体31、32が焼結して、それぞれ第1および第2のAlN焼結体41、42となり、これらが一体化されたAlN焼結部材10が得られる。
【0034】
焼成工程STEP8においては、少なくとも積層方向に加圧した状態で加熱するホットプレスなどによって、加圧焼結を行う。加熱時間は、好ましくは0.1時間以上10時間以下、より好ましくは1時間以上5時間以下である。そして、焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0035】
上述した本発明のAlN焼結部材10の製造方法においては、凹部を形成したAlN成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部33に由来するAlN焼結部材10の外形および中空構造などの寸法精度の向上を図ることが可能となる。AlN焼結部材に形成される中空構造は電極の配置スペースやガス流路、熱電対などの配線用の空間として利用される。
【0036】
さらに、錘を用いた小さな荷重を加えた状態で焼成を行う上記特許文献1に開示された技術と比較して、10kgf/cm2以上の加圧を行いながら焼成を行うので、接合強度の向上、およびAlN焼結部材10の緻密化を図ることが可能となる。なお、10kgf/cm2未満の加圧では、焼成時に第1及び第2のAlN仮焼体31、32の第1および第2の平面31a、32aの良好な面接触が得られず接合不良を引き起こすため不適である。
【0037】
[第2の実施形態]
(電極埋設部材の製造方法)
次に、本発明の第2の実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法について説明する。本実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法は、積層工程において、電極を配置して積層するため、電極が埋設されたAlN焼結部材(電極埋設部材)となる。このような電極埋設部材は、例えば、静電チャックやウエハ加熱用ヒーターとして使用される。また、さらに脱脂条件を調節してAlN脱脂体を作製することができる。ここで、脱脂条件を下記に示す条件とすることにより、静電チャックとしての機能をより高く発揮させることができる。
【0038】
本発明の第2の実施形態に係るAlN焼結部材(電極埋設部材)50の製造方法は、
図1に示すように、第1および第2のAlN成形体形成工程STEP1、第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2、第1および第2のAlN仮焼体作製工程STEP3、第1の平面形成工程STEP4、第2の平面形成工程STEP5、凹部形成工程STEP6、積層工程STEP7および焼成工程STEP8を備えている。本実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法は、第1の実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法と同様の方法で製造されるため、以下では、第1の実施形態に係るAlN焼結部材の製造方法と異なる点を説明する。
【0039】
図3(a)~(d)は、それぞれ本実施形態の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。積層工程STEP7では、凹部形成工程STEP6で形成した凹部33の少なくとも一部に電極150を配置した後に、第1のAlN仮焼体31と第2のAlN仮焼体32とを、第1の平面31aと第2の平面32aとを接触させた状態で積層する。これにより、電極150が埋設されたAlN焼結部材50となる。
【0040】
本発明のAlN焼結部材50の製造方法においては、凹部を形成したAlN成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部33や電極150に由来するAlN焼結部材10の各層の厚み、外形、中空構造がある場合の中空構造などの寸法精度の向上を図ることが可能となるため、例えば、絶縁層となる層の厚みのバラツキを所定の範囲に収まるように調整することもできる。その結果、例えば、電極埋設部材が静電チャックとして使用される場合、面内の吸着力の差を低減することができる。また、例えば、ヒーターとして用いられる場合、面内の温度のバラツキを低減することができる。
【0041】
第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2では、以下の熱処理条件に従って脱脂することが好ましい。以下の熱処理条件に従って脱脂をする場合、第1および第2のAlN成形体形成工程STEP1における第1または第2のAlN成形体11、12を形成するAlN原料粉は、少なくとも一方にY成分が添加されていることとする。添加されるY成分は、Y2O3であることが好ましいが、脱脂時の熱処理によりY2O3となるものであってもよい。Y成分は、AlN原料粉に対し、Y2O3に換算した内比で0.3~7.0wt%添加することが好ましい。バインダは、PVA系であることが好ましい。
【0042】
Y成分が添加されるAlN原料粉は、第1のAlN成形体11を形成するAlN原料粉および第2のAlN成形体12を形成するAlN原料粉の両方であってもよい。両方に添加される場合、以下の熱処理条件は、両方に適用されることが好ましいが、一方のみに適用される場合も、本発明の方法に含む。また、以下の熱処理条件は、少なくとも電極150の上部に配置され、焼成後絶縁層となるAlN形成体に適用されることが好ましい。
【0043】
(熱処理条件)
Y成分が添加された第1または第2のAlN成形体11、12は、脱脂温度T(℃)と脱脂時間H(h)と添加したY成分をY2O3換算した内比でC(wt%)として、以下の式1および式2を満たすように制御して脱脂することで、第1または第2のAlN脱脂体21、22を作製することが好ましい。
T>20×C+440 … (式1)
H≧300/{T-(20×C+440)} … (式2)
【0044】
このような熱処理条件で作製された脱脂体を仮焼、焼成して作製されるセラミックス焼結体は、粒界にYAG粒子が含まれ、YAP粒子およびYAM粒子が含まれなくなる。粒界にYAGが生成するとAlNセラミックスの体積抵抗率が相対的に低くなる。そのため、静電チャックの絶縁層として用いることに好適となる。本発明の1つの態様として静電チャックがあり、その静電吸着力は絶縁層の体積抵抗率に影響を受ける。絶縁層の体積抵抗率は、脱脂(熱処理)条件を上記の所定の条件することにより、AlNセラミックスの粒界にYAG組織のみを生成させることができる。YAG組織のみが生成すると絶縁層の体積抵抗率は低くなる。
【0045】
上記式はYAG組織のみが生成するときの脱脂(熱処理)条件式であり、焼結助剤の量Cの値によって
図4のようにしきい式が表すグラフが変わってくる。すなわち、上記しきい式を充足する条件で脱脂したのちに仮焼体接合して静電チャックを作製すると絶縁層の厚みバラツキが抑えられ、かつ良好な静電吸着力を発揮させることができる。
図4は、Y成分の添加量としきい式の関係を例示した図である。
【0046】
(電極埋設部材の構成1)
次に、本実施形態に係る電極埋設部材の構成を説明する。
図5は、本実施形態に係る電極埋設部材100を示す正断面図である。電極埋設部材100は、円板等の板状に形成され、絶縁層110、バルク層120および電極150を備える。絶縁層110およびバルク層120は、AlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成されている。また、Y
2O
3とAl
2O
3の複酸化物の結晶相が含まれていてもよい。電極150には、モリブデンまたはタングステンが用いられる。
図4に示す例では、電極150が、絶縁層110とバルク層120との間のみに設けられているが、電極が複数の層をなすように設けられていてもよい。その場合、処理対象を保持する側の最外層を絶縁層110、その他の層をバルク層120という。
【0047】
絶縁層110の厚みのバラツキは、75μm以下である。このように絶縁層110の厚みのバラツキが低減されていることにより、例えば、電極埋設部材100が静電チャックとして使用される場合、面内の吸着力の差を低減することができる。また、例えば、ウエハ加熱用ヒーターとして用いられる場合、面内の温度のバラツキを低減することができる。
【0048】
絶縁層110を構成するセラミックス焼結体のAlN粒界には、YAG粒子が含まれ、YAP粒子およびYAM粒子が含まれないことが好ましい。これにより、絶縁層110の体積抵抗率を絶縁層110を構成するセラミックス焼結体のAlN粒界にYAP粒子またはYAM粒子が含まれ、YAG粒子が含まれない場合と比べ相対的に低く調整することができ、例えば、電極埋設部材100が静電チャックとして使用される場合、処理対象に対し強い静電吸着力を発揮できる。
【0049】
なお、このような組成は、X線回折においてYAG、YAM、YAPのピークが認められるか否かで評価できる。ピークか否かは、バックグラウンドの2倍以上の強度を示す先端があるか否かで判断できる。YAG粒子が含まれるか否かは、JCPDSカードICDD#01-073-3184に示されたYAGの回折ピークのうち、回折角度18.11°付近に表れるピークの有無で判断できる。YAM粒子が含まれるか否かは、JCPDSカードICDD#00-033-0368に示されたYAMの回折ピークのうち、回折角度30.60°付近に表れるピークの有無で判断できる。YAP粒子が含まれるか否かは、JCPDSカードICDD#00-033-0041に示されたYAPの回折ピークのうち、回折角度34.24°付近に表れるピークの有無で判断できる。
【0050】
バルク層120を構成するセラミックス焼結体のAlN粒界には、YAP粒子またはYAM粒子が含まれ、YAG粒子が含まれないことが好ましい。これにより、体積抵抗率を相対的に高く維持でき、リーク電流を抑止できる。なお、電極埋設部材100は必ずしも静電チャックである必要はなく、電極150がヒーター用電極やRF電源の電極として用いられてもよい。
【0051】
(電極埋設部材の構成2)
図6は、電極埋設部材200を示す正断面図である。電極埋設部材200は、処理対象を表面上に保持する板状の保持部材210と、保持部材210の処理対象を保持する表面と対向する面に接合され、保持部材210を支持する支持部材220とを備えている。電極埋設部材200は、例えば、ウエハ加熱用ヒーターや静電チャックとして用いることができる。なお、電極埋設部材200も電極150がヒーター用電極やRF電源の電極として用いられてもよい。
【0052】
保持部材210は、円板等の板状に形成され、絶縁層110、バルク層120および電極150を備える。絶縁層110およびバルク層120は、AlNを主成分とするセラミックス焼結体で形成されている。また、Y
2O
3とAl
2O
3の複酸化物の結晶相が含まれていてもよい。
図6に示す例では、電極150が、絶縁層110とバルク層120との間のみに設けられているが、電極が複数の層をなすように設けられていてもよい。電極150には、モリブデンまたはタングステンが用いられる。
【0053】
支持部材220は、円筒等の柱状に形成される。支持部材220は、AlNを主成分とするセラミック焼結体で形成されている。また、Y2O3とAl2O3の複酸化物の結晶相が含まれていてもよい。電極埋設部材200が、ウエハ加熱用ヒーターとして用いられる場合、支持部材220は、熱伝導率を低くする観点から、Y成分が含まれないことが好ましい。支持部材220は従前の接合材を用いた接合方法や接合材を用いない拡散接合によって一体化される。
【0054】
なお、本発明は、上述した第1または第2の実施形態に具体的に記載したAlN焼結部材の製造方法、電極埋設部材の製造方法および電極埋設部材の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、AlN焼結部材10、50は2個のAlN仮焼体が一体化したものであるが、3個以上のAlN仮焼体が一体化したものであってもよい。また、第2の実施形態において電極を埋設しない凹部が有っても、AlNセラミックスとしては一体化される。その場合、AlN焼結部材に形成される中空構造はガス流路や熱電対などの配線用の空間として利用されてもよい。
【0055】
[実施例および比較例]
(試料a1~a21、b1~b4)
図7および
図8は各試料の製造条件および評価結果を示す表である。実施例a1~a21、b1~b4は、まず、第1および第2のAlN成形体形成工程STEP1として、純度98%、平均粒径0.5μmのAlN粉末に、焼結助剤としてY
2O
3を0.3~5質量%、成形助剤としてPVAなどのバインダなどを添加したものを原料粉末とした。次に、この原料粉末をスプレードライヤーで顆粒化して顆粒を得た。
【0056】
そして、この顆粒を金型に充填し、圧力を20MPaとした一軸加圧成形して2個のAlN成形体を得た。
【0057】
次に、第1および第2のAlN脱脂体作製工程STEP2として、これらAlN成形体を大気雰囲気炉内にて
図7または
図8の表に記載する熱処理条件で脱脂とともに熱処理を行い2個のAlN脱脂体を得た。
【0058】
次に、第1および第2のAlN仮焼体作製工程STEP3として、これらAlN脱脂体を還元雰囲気炉内にて窒素雰囲気で炉内温度を実施例a1~a21において1700℃として3時間焼成、実施例b1~b4においては1100~1800℃、3時間として各水準2個のAlN仮焼体を得た。
【0059】
次に、第1および第2の平面形成工程STEP4、5として、2個のAlN仮焼体に、第1および第2の平面を形成した。第1および第2の平面の算術平均粗さ(Ra)および最大高さ(Rz)の平均は、Raが0.2~0.6μm、Rzが2~6μmであった。
【0060】
次に、凹部形成工程STEP6として、第2のAlN仮焼体の第2の平面に凹部を形成した。凹部は、深さ0.1mmの円形状とした。
【0061】
次に、積層工程STEP7として、凹部に電極を配置して、第1のAlN仮焼体と第2のAlN仮焼体とを、電極を凹部に配置した後、第1の平面と第2の平面とを接触させた状態で積層させた。配置した電極の性状は以下の通りである。
【0062】
(電極の性状)
材質:モリブデン
形態:メッシュ(平織り)、メッシュサイズ#50、モリブデンワイヤー径0.1mm
【0063】
次に、焼成工程STEP8として、このように積層した第1および第2のAlN仮焼体を焼成炉内にて窒素雰囲気で押圧板としてのカーボン平板で挟み込んで、1800℃、1MPa、2時間、窒素雰囲気中で焼結して、試料a1~a21、試料b1~b4を作製した。これにより、AlN焼結部材(電極埋設部材)が得られた。
【0064】
(試料c1~c3)
また、比較例として、試料c1~c3を作製した。試料c1およびc2は、いわゆる成形体ホットプレス法(特許6148845号公報に記載された方法)によって作製した。すなわち、実施例と同様に作製したAlN成形体に凹部加工を行った後、脱脂処理を行い、その後に電極を凹部に配置後、脱脂体を積層し、ホットプレス焼成(1800℃、1MPa、2時間)した。試料c1とc2は脱脂条件のみ異なり、c1は脱脂温度600℃、脱脂時間12時間とし、c2は脱脂温度600℃、脱脂時間4時間とした。
【0065】
試料c3は、いわゆる粉末ホットプレス法によって電極埋設部材を作製した。すなわち、AlN粉末をカーボン型に充填後、電極を配置し、更にその上にAlN粉末を充填し、ホットプレス焼成(1800℃、1MPa、2時間)した。なお、試料c3の作製工程には、脱脂工程はない。
【0066】
(絶縁層の厚みのバラツキ評価)
そして、これらのAlN焼結部材の各試料に対して、絶縁層の厚みが平均で1mmとなるように研削加工し、所定の位置の絶縁層の厚さを測定した。絶縁層の厚みは渦電流計で面内17か所(中心、R70-8等配、R140-8等配)で測定し、平均値および最小値、最大値を記録した。
【0067】
結果は、本発明による試料a1~a21の絶縁層のバラツキ(絶縁層厚み測定値の最大値-最小値)は35~58μmであった。試料b1は仮焼体の凹部形成工程で仮焼体の強度不足から破損し以後の工程は実施できなかった。試料b2の絶縁層のバラツキは75μm、試料b3は、60μmであった。試料b4は、焼成工程において第1の平面と第2の平面の間で接合不良が生じ評価ができなかった。また比較例として、従来の製法による試料c1~c3の絶縁層のバラツキは、c1が98μm、c2が95μm、c3が210μmであった。
【0068】
本発明の製法によって絶縁層のバラツキが従来製法によって作製された比較例と比較して改善されることが確認された。
【0069】
(体積抵抗率の測定)
次に、絶縁層の体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の測定は、JIS C2139に準拠する方法で測定した。セラミック焼結体の両面に耐熱金属(Ni)の電極を配置し、電極間に電圧(500V)を印加し、電流を微小電流計(エーディーシー社R8340A)で測定した。温度は、300℃で測定した。そして、セラミック焼結体および電極寸法より体積抵抗率に換算した。体積抵抗率は、高圧電源と電流計により同様に電流値から算出してもよい。結果は、
図7または
図8の表に示す通りであった。
【0070】
結果は、試料a1~a21を参照し、焼結助剤としてY2O3を内比でC(wt%)添加して作製したAlN成形体を、脱脂温度T(℃)と脱脂時間H(h)として、T>20×C+440かつH≧300/{T-(20×C+440)}の熱処理条件を施したものは体積抵抗率が低下し、静電チャックの絶縁層として機能することがわかった。
【0071】
(4点曲げ強度)
次に、特性評価後のAlN焼結体を切断し、4点曲げ強度試験を行った。その結果、試料a1~a21の各々の10点の測定値の平均値が、最小値260MPa、最大値320MPaであり仮焼体接合後に得られるAlN焼結体部材として十分な機械的強度があることが確かめられた。
【0072】
(結晶相の確認)
次に、切断面を研磨加工した後、接合部および電極を拡大鏡などを用いて実験者が目視した。その結果、接合部に接合不良や破損などは確認されなかった。また、X線回折装置(Rigaku MultiFlex Cu Kα 40kV/40mA)を用いたAlN焼結体の粒界観察を行った。
【0073】
その結果、熱処理条件(脱脂条件)によって粒界に生成するイットリウム酸化物の結晶相が異なっていることが確認された。すなわち、粒界にYAG(Y3Al5O12)が生成し、YAP(YAlO3)、YAM(Y4Al2O9)が生成していないものは300℃での体積抵抗率が相対的に低くなっていることが確認された。また、YAGが生成せず、YAPやYAMが生成しているものは相対的に体積抵抗率が高くなっていることが確認された。また、従来製法による比較例のうち、脱脂時間が短かった試料c2の組織はYAG(Y3Al5O12)、YAM(Y4Al2O9)が生成しておらず、YAP(YAlO3)が生成していた。また、脱脂工程を設けていない試料c3の組織はYAG(Y3Al5O12)が生成しておらず、YAP(YAlO3)、YAM(Y4Al2O9)が生成していた。なお、従来製法による比較例のうち、脱脂時間が長かった試料c1は、YAG(Y3Al5O12)が生成し、YAP(YAlO3)、YAM(Y4Al2O9)が生成していなかった。
【0074】
AlNセラミックスは本来体積抵抗率の高い絶縁体であるが、静電チャックの絶縁層として使用するには、ジョンセンラーベック力を誘起して強い静電吸着力を発現させるため絶縁層の体積抵抗率は一定程度低くすることが好ましい。そのため、YAGのみが生成しているAlNセラミックス組織からなる実施例は、特に静電チャックとしての用途に好適であることが確かめられた。
【0075】
なお、脱脂条件と体積抵抗率低下の関係については、脱脂によりAlN粒子の表面にAl2O3のような酸化物が生成し、これと焼結助剤のY2O3が反応してイットリウムアルミニウム酸化物(YAG、YAP、YAM)が生成する。このときY2O3の量に対してAl2O3の量が多いとき、すなわち脱脂条件で温度が高くかつ脱脂時間が長い場合にYAGが生成されると考えられる。
【0076】
図7または
図8の表には、Y
2O
3添加量、脱脂時間、および脱脂温度とAlN焼結体の粒界の生成粒子の結晶相を測定した結果をまとめた。これらを整理すると、脱脂温度H(℃)と脱脂時間、Yの添加量がY
2O
3換算でC(wt%)としてT>20×C+440かつH≧300/{T-(20×C+440)}であるときが粒界にYAGが生成し静電チャックの絶縁層として更に好適であることが確認された。
【0077】
以上により、本発明のAlN焼結部材の製造方法は、寸法精度の向上したAlN焼結部材を製造できることが分かった。また、本発明のAlN焼結部材(電極埋設部材)の製造方法は、絶縁層の厚みのバラツキを低減でき、体積抵抗率を小さい範囲で制御できることが分かった。また、本発明の電極埋設部材は、静電チャックやウエハ加熱用ヒーターとして好適であることが確かめられた。
【0078】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0079】
10、50 AlN焼結部材
11 第1のAlN成形体
12 第2のAlN成形体
21 第1のAlN脱脂体
22 第2のAlN脱脂体
31 第1のAlN仮焼体
31a 第1の平面
32 第2のAlN仮焼体
32a 第2の平面
33 凹部
41 第1のAlN焼結体
42 第2のAlN焼結体
100、200 電極埋設部材
110 絶縁層
120 バルク層
150 電極
210 保持部材
220 支持部材