IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ササクラの特許一覧

<>
  • 特許-放射パネル 図1
  • 特許-放射パネル 図2
  • 特許-放射パネル 図3
  • 特許-放射パネル 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】放射パネル
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020148040
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042591
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】市来 智之
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146135(JP,A)
【文献】特開2016-100538(JP,A)
【文献】特開2010-43810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒流体が通過するパイプが装着されるヒートシンクとパネル本体との間に密着して介在する緩衝部材を備え、屋内の天井に取り付けられる放射パネルであって、
前記緩衝部材は、厚みが0.5~1.0mmの樹脂シートからなり、熱伝導率が2.0~3.5W/m・Kであり、AskerC硬度が3~40であり、
前記ヒートシンクは、帯状の基板を有しており、
前記緩衝部材は、前記基板の幅と略同じ幅で前記ヒートシンクの長手方向に沿って帯状に形成されている放射パネル。
【請求項2】
記ヒートシンクを、前記緩衝部材を介して前記パネル本体に押し付けて固定する固定部材を更に備える請求項1に記載の放射パネル。
【請求項3】
前記緩衝部材は、一方面に粘着性を有する請求項1または2に記載の放射パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の冷暖房を行うため、天井等に放射パネルを施工することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、熱交換パイプを保持する保持部材がパネル本体(原文では輻射パネル)の裏面に取り付けられた冷暖房パネルが開示されている。保持部材は、金属製のヒートシンクであり、パネル本体の裏面に塗布されたホットメルト接着剤を介して放射パネルに接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-43810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の冷暖房パネルのように、ヒートシンクとパネル本体との間にホットメルト接着剤を介在させると、汎用のホットメルト接着剤の伝熱性が低いことに加えて、ヒートシンクおよびパネル本体の部品公差や反り等の影響を受けて両者の間に部分的な剥がれが生じ易いことから、ヒートシンクに保持された熱交換パイプからパネル本体に熱を効率良く伝えることが困難であった。また、ヒートシンクを両面テープでパネル本体に接着することも従来から行われているが、両面テープの伝熱性が低く剥がれ易いために、接着剤で接着する場合と同様の問題を生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、伝熱性の向上により空調を効率良く行うことができる放射パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、熱媒流体が通過するパイプが装着されるヒートシンクとパネル本体との間に密着して介在する緩衝部材を備え、屋内の天井に取り付けられる放射パネルであって、前記緩衝部材は、厚みが0.5~1.0mmの樹脂シートからなり、熱伝導率が2.0~3.5W/m・Kであり、AskerC硬度が3~40であり、前記ヒートシンクは、帯状の基板を有しており、前記緩衝部材は、前記基板の幅と略同じ幅で前記ヒートシンクの長手方向に沿って帯状に形成されている放射パネルにより達成される。
【0007】
この放射パネルは、前記ヒートシンクを、前記緩衝部材を介して前記パネル本体に押し付けて固定する固定部材を更に備えることが好ましい。
【0008】
前記緩衝部材は、一方面に粘着性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射パネルによれば、伝熱性の向上により空調を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る放射パネルの平面図である。
図2図1のA-A断面の要部拡大図である。
図3図1のB-B断面の要部拡大図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る放射パネルの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る放射パネルの平面図である。図1に示す放射パネル1は、屋内の天井に取り付けられる冷暖房用の放射パネルであり、パネル本体10と、パネル本体10の上面に並列配置される複数(本実施形態では6つ)のヒートシンク20とを備えている。
【0012】
パネル本体10は、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属材料等からなる平面視矩形状の平板状の部材であり、短手方向の両側に側壁11a,11bが設けられている。パネル本体10の長手方向の両側には、パネル本体10の上面から略直角に起立する起立壁13a,13bが設けられている。パネル本体10の下面側は、本実施形態においては平坦状に形成されているが、複数のリブや湾曲部等を設けてもよい。パネル本体10には、必要に応じて多数の小孔を形成してもよい。
【0013】
ヒートシンク20は、熱伝導率が高い金属製の部材であり、帯状の基板21と、基板21の長手方向に沿って延びる断面円弧状の装着部22とを備え、例えば押出成形によって製造される。ヒートシンク20は、パネル本体10の長手方向に沿って、複数が等間隔に平行に配置されており、それぞれの装着部22には、パイプ90の直線部91がハンマー等で叩き込まれて装着される。ヒートシンク20は、パイプ90が装着された状態で、複数(本実施形態では3つ)の固定部材40によりパネル本体10に固定されている。
【0014】
パイプ90は、流路が蛇行するように、隣接する直線部91の端部同士が曲線部92を介して接続されており、一方端部側93から他方端部側94に向けて熱媒流体が内部を通過する。パイプ90の材料は特に限定されないが、アルミニウム等からなる金属管や、この金属管の内外面がポリエチレン等の樹脂でコーティングされた三層管など、軽量且つある程度の剛性を有する材料を好ましく例示することができる。なお、図1においては、パイプ90の両端部近傍の図示を省略している。
【0015】
図2図1のA-A断面の要部拡大図であり、図3図1のB-B断面の要部拡大図である。図2および図3に示すように、放射パネル1は、パネル本体10とヒートシンク20との間に密着して介在する緩衝部材50を備えている。緩衝部材50は、アクリル系樹脂、カーボン系樹脂、シリコン系樹脂等により形成された柔軟性を有する樹脂シートからなり、アルミニウム、銅、銀、アルミナ、カーボンブラック等の熱伝導率が高い材料からなる公知の熱伝導性フィラーを全体に分散させることにより、厚み方向の伝熱性を高めたものが使用される。緩衝部材50は、ヒートシンク20の基板21の幅と略同じ幅で、ヒートシンク20の長手方向に沿って帯状に形成されている。
【0016】
固定部材40は、断面コ字状に形成された桟部材からなり、コ字状の先端がパイプ90の上部に当接するようにヒートシンク20の長手方向と直交方向に配置されて、両端部がパネル本体10の側壁11a,11bにリベットやボルト等で取り付けられることにより、ヒートシンク20を、緩衝部材50を介してパネル本体10に押し付けて固定する。固定部材40は、押さえ板等であってもよく、ヒートシンク20をパネル本体10に固定可能であれば、その形状や個数は特に限定されない。
【0017】
緩衝部材50は、両面が非粘着性のものを使用してもよいが、本実施形態においては一方面にのみ粘着性を有する緩衝部材50を使用し、緩衝部材50の粘着面50aをパネル本体10の所定位置に貼着した後に、緩衝部材50の非粘着面にヒートシンク20を載置して放射パネル1を構成している。この場合、緩衝部材50は、パネル本体10の略全体に貼着するように構成してもよく、これによって、緩衝部材50を介した伝熱を確実に行いつつ、各ヒートシンク20の配置の自由度を高めて放射パネル1を効率良く製造することができる。一方面にのみ粘着性を有する緩衝部材50は、粘着面側をヒートシンク20に貼着し、非粘着面側をパネル本体10の適宜の位置に配置することもできる。更に、緩衝部材50は、両面に粘着性を有するものであってもよく、緩衝部材50を介してヒートシンク20をパネル本体10に接着することで、固定部材40を備えない構成にすることもできる。
【0018】
本実施形態の放射パネル1は、柔軟性および伝熱性が良好な緩衝部材50を、パネル本体10とヒートシンク20との間に介在させることで、パネル本体10およびヒートシンク20の部品公差や反り等を緩衝部材50で吸収することができるので、ヒートシンク20の全体からパネル本体10への熱伝導を促して、空調を効率良く行うことができる。例えば、図3に示すように、パネル本体10は、長手方向の中央部Cが自重で下方に撓み易いため、この中央部Cの近傍でヒートシンク20との間に剥がれが生じ易くなるが、本実施形態の放射パネル1は、緩衝部材50が、ヒートシンク20からの押圧力を受けて、主に両端部の厚みが薄くなるように変形するため、これによって、緩衝部材50の両端部だけでなく中央部もパネル本体10およびヒートシンク20の双方に確実に密着させることができる。
【0019】
緩衝部材50の厚みは、小さ過ぎると、パネル本体10およびヒートシンク20の部品交差や反り等を緩衝部材50で十分吸収できないおそれがある一方、大き過ぎると、緩衝部材50の伝熱性が低下すると共に製造コストが高くなるおそれがある。したがって、緩衝部材50の厚みは、0.5~1.0mmであることが好ましい。緩衝部材50の厚みは、従来使用されていた両面テープの厚みよりも大きいが、後述するように材料の熱伝導率を十分高くすることで、厚みを大きくしても良好な伝熱性を確保することができる。
【0020】
緩衝部材50は、良好な伝熱性と共に、低硬度で柔軟性を有することが好ましいが、一般には伝熱性が高くなると硬度も高くなり易い。すなわち、熱伝導率および硬度の双方を低くすることには限界があるため、それぞれを一定の数値範囲に設定して両立を図る必要がある。本発明者らが、緩衝部材50として種々の市販の放熱シート等を使用して図1等に示す放射パネル1を構成し、性能試験を行ったところ、熱伝導率が2.0~3.5W/m・Kであり、AskerC硬度が3~40である場合に、緩衝部材50の長手方向の略全体がパネル本体10およびヒートシンク20に密着し、市販の両面テープでパネル本体10およびヒートシンク20を貼着した場合よりも高い熱伝導率が得られた。例えば、スリーエムジャパン株式会社製の放熱シート「6550H」は、熱伝導率が3.0W/m・K、AskerC硬度が5であり、これを緩衝部材50として使用することで、放射パネルの性能向上が可能であった。
【0021】
本実施形態の放射パネル1は、パネル本体10とヒートシンク20との間に、両者に密着して介在する緩衝部材50を設けているが、ヒートシンク20を設けずに、熱媒流体が通過するパイプ90を緩衝部材50に直接接触させてもよい。図4に示す放射パネル1’は、緩衝部材50が、パイプ90とパネル本体10との間に密着して介在するように配置されており、固定部材40によりパイプ90が緩衝部材50を介してパネル本体10に押し付けられて、固定されている。この放射パネル1’によれば、パイプ90により押圧された緩衝部材50の上面が、パイプ90の外周面に沿うように湾曲状に変形する。これにより、パイプ90と緩衝部材50との接触が面接触となるため接触面積が増加し、これによってパイプ90から緩衝部材50を介したパネル本体10への伝熱を促すことができる。?
【符号の説明】
【0022】
1,1’ 放射パネル
10 パネル本体
20 ヒートシンク
21 基板
22 装着部
40 固定部材
50 緩衝部材
90 パイプ
図1
図2
図3
図4