(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株
(51)【国際特許分類】
C12N 5/09 20100101AFI20240717BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240717BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240717BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C12N5/09
C12Q1/02
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
(21)【出願番号】P 2020174066
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-07-19
【微生物の受託番号】ATCC PTA-125888
(73)【特許権者】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 健祐
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000038(JP,A)
【文献】特開2020-150851(JP,A)
【文献】Blood Cells, Molecules and Diseases,2018年11月14日,Vol. 75,pp. 1-10
【文献】CANCER DISCOVERY,2017年,pp. 1019-1029,doi: 10.1158/2159-8290
【文献】Cancer Res,2009年,Vol. 69, No. 8,pp. 3472-3481
【文献】Brain Pathology,2019年,Vol. 29, Suppl. 1,p. 130,Oral 12: O12-1
【文献】Brain Tumor Pathology,2019年,Vol. 36, Supplement,p. 068,S2-3
【文献】日本分子脳神経外科学会プログラム・抄録集,2019年,Vol. 20th,p. 42,S2-3
【文献】日 本脳腫瘍学会学術集会プログラム・抄録集,2018年,Vol. 36th,p. 152,P10-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCCにPTA-125888の受託番号で寄託されている、中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株。
【請求項2】
請求項1記載の細胞株を含む、中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株のセット。
【請求項3】
請求項1記載の細胞株が移植され、該細胞株が形成した腫瘍を脳内に有する免疫不全非ヒト動物からなる、中枢神経原発悪性リンパ腫モデル。
【請求項4】
前記非ヒト動物がマウスである、請求項3記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデル。
【請求項5】
請求項3又は4記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデルを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫モデルのセット。
【請求項6】
請求項1記載の細胞株を免疫不全非ヒト動物の脳に移植することを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫モデルの作製方法。
【請求項7】
請求項1記載の中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株、又は請求項2記載の中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株のセットを化合物で処理し、細胞生存率が低下するか否かを調べることを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫の治療薬のスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項3若しくは4記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデル、又は請求項5記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデルのセットに化合物を投与し、治療効果が得られるかどうかを調べることを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫の治療薬のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
包括的ゲノム解析により、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)における遺伝的異質性が明らかになってきた(非特許文献1~3)。DLBCLの遺伝的サブタイプのうち、MYD88遺伝子のL265P変異及びCD79B遺伝子の変異を両方とも有するサブタイプの予後は不良である(非特許文献1、2)。そのため、特にこれらの腫瘍に対して新たな治療戦略が必要とされている。中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、結節外非ホジキンリンパ腫の高度に侵攻的なサブタイプであり、中枢神経系(CNS)に限局する。PCNSLの大多数がDLBCLであり、活性化B細胞様(ABC)/非胚中心B細胞様(非GCB)サブタイプに属し、胚中心からのB細胞離脱に似た活性化B細胞の免疫表現型を有する(非特許文献4~6)。標準治療である高用量メトトレキサート(HD-MTX)ベースの療法を受けたPCNSL患者のサブセットにおいて治療効果が認められるが、全体の治療成績は5年生存率30~50%と不十分である(非特許文献7)。本疾患の患者の予後を改善できる新たな治療戦略の開発を促進させるために、PCNSLの病因のより良い理解が必要である。
【0003】
本願発明者のグループはこれまでに、免疫応答性のPCNSL症例にはMYD88遺伝子変異(76%)及びCD79B遺伝子変異(83%)の頻度が高いという特徴があることを報告している(非特許文献8)。変異の頻度については異なる様々な報告があるが、いくつかの研究で同様の結果が報告されており(非特許文献9)、これらのゲノム変化がPCNSLで高度に共通し、その頻度は全身性DLBCLにおける頻度よりも大いに高いことを示している(非特許文献10、11)。これらの変異はABC/非GCBにおいて頻繁に見られるが、PCNSLのGCBサブタイプにおいても同定されており(非特許文献4、5)、CNS内でリンパ腫形成を確立し維持するためにこれらの変異が重要であることが示唆される。加えて、B細胞受容体とトール様受容体のシグナル経路を連結させるキナーゼであるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤が、PCNSL患者のサブセットにおいて持続性のある放射線反応を示すことが報告されており(非特許文献4、12-14)、PCNSLにおいてBTK及び下流のNF-κB経路が果たす機能的役割があることが示唆される。一方、免疫不全を伴うPCNSL症例においては、MYD88遺伝子又はCD79B遺伝子の変異はあまり見られない;HIV/AIDS患者や臓器移植若しくは長期免疫抑制療法を受けた患者におけるPCNSLは、CD4+ T細胞の減少及びEBウイルス感染に関連している(非特許文献15、16)。PCNSLの発達における免疫応答性及び免疫不全という2つの異なる病因経路にもかかわらず、PCNSLの組織学的特徴及び臨床的特徴は従来より一律に検討されてきた。
【0004】
包括的ゲノム解析によりPCNSLの体細胞性遺伝的ランドスケープが明らかになったものの、PCNSLにおけるCNSリンパ腫形成及び腫瘍進行へのこれらのゲノム変化の機能的貢献はほとんど明らかになっておらず、その原因の一部はPCNSLの前臨床モデルの不足にある(非特許文献17)。全身性DLBCL患者に由来する患者由来異種移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルが樹立されている一方(非特許文献18、19)、PCNSLがまれな疾患であること、診断のために細針生検組織を使用することが、本疾患の生物学的理解を遅延させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Schmitz R, Wright GW, Huang DW, Johnson CA, Phelan JD, Wang JQ, et al. Genetics and Pathogenesis of Diffuse Large B-Cell Lymphoma. N Engl J Med 2018;378:1396-407
【文献】Chapuy B, Stewart C, Dunford AJ, Kim J, Kamburov A, Redd RA, et al. Molecular subtypes of diffuse large B cell lymphoma are associated with distinct pathogenic mechanisms and outcomes. Nat Med 2018;24:679-90
【文献】Reddy A, Zhang J, Davis NS, Moffitt AB, Love CL, Waldrop A, et al. Genetic and Functional Drivers of Diffuse Large B Cell Lymphoma. Cell 2017;171:481-94 e15
【文献】Grommes C, Pastore A, Palaskas N, Tang SS, Campos C, Schartz D, et al. Ibrutinib Unmasks Critical Role of Bruton Tyrosine Kinase in Primary CNS Lymphoma. Cancer Discov 2017;7:1018-29
【文献】Fukumura K, Kawazu M, Kojima S, Ueno T, Sai E, Soda M, et al. Genomic characterization of primary central nervous system lymphoma. Acta Neuropathol 2016;131:865-75
【文献】Camilleri-Broet S, Criniere E, Broet P, Delwail V, Mokhtari K, Moreau A, et al. A uniform activated B-cell-like immunophenotype might explain the poor prognosis of primary central nervous system lymphomas: analysis of 83 cases. Blood 2006;107:190-6
【文献】Grommes C, Rubenstein JL, DeAngelis LM, Ferreri AJM, Batchelor TT. Comprehensive Approach to Diagnosis and Treatment of Newly Diagnosed Primary CNS Lymphoma. Neuro Oncol 2018
【文献】Nakamura T, Tateishi K, Niwa T, Matsushita Y, Tamura K, Kinoshita M, et al. Recurrent mutations of CD79B and MYD88 are the hallmark of primary central nervous system lymphomas. Neuropathol Appl Neurobiol 2016;42:279-90
【文献】Ho KG, Grommes C. Molecular profiling of primary central nervous system lymphomas - predictive and prognostic value? Curr Opin Neurol 2019;32:886-94
【文献】Ngo VN, Young RM, Schmitz R, Jhavar S, Xiao W, Lim KH, et al. Oncogenically active MYD88 mutations in human lymphoma. Nature 2011;470:115-9
【文献】Davis RE, Ngo VN, Lenz G, Tolar P, Young RM, Romesser PB, et al. Chronic active B-cell-receptor signalling in diffuse large B-cell lymphoma. Nature 2010;463:88-92
【文献】Narita Y, Nagane M, Mishima K, Terui Y, Arakawa Y, Yonezawa H, et al. Phase 1/2 Study of Tirabrutinib, a Second-Generation Bruton's Tyrosine Kinase Inhibitor, in Relapsed/Refractory Primary Central Nervous System Lymphoma. Neuro Oncol 2020
【文献】Soussain C, Choquet S, Blonski M, Leclercq D, Houillier C, Rezai K, et al. Ibrutinib monotherapy for relapse or refractory primary CNS lymphoma and primary vitreoretinal lymphoma: Final analysis of the phase II 'proof-of-concept' iLOC study by the Lymphoma study association (LYSA) and the French oculo-cerebral lymphoma (LOC) network. Eur J Cancer 2019;117:121-30
【文献】Grommes C, Tang SS, Wolfe J, Kaley TJ, Daras M, Pentsova EI, et al. Phase 1b trial of an ibrutinibbased combination therapy in recurrent/refractory CNS lymphoma. Blood 2019;133:436-45
【文献】Kleinschmidt-DeMasters BK, Damek DM, Lillehei KO, Dogan A, Giannini C. Epstein Barr virusassociated primary CNS lymphomas in elderly patients on immunosuppressive medications. J Neuropathol Exp Neurol 2008;67:1103-11
【文献】Biggar RJ, Chaturvedi AK, Goedert JJ, Engels EA, Study HACM. AIDS-related cancer and severity of immunosuppression in persons with AIDS. J Natl Cancer Inst 2007;99:962-72
【文献】Pouzoulet F, Alentorn A, Royer-Perron L, Assayag F, Mokhtari K, Labiod D, et al. Primary CNS lymphoma patient-derived orthotopic xenograft model capture the biological and molecular characteristics of the disease. Blood Cells Mol Dis 2018;75:1-10
【文献】Zhang L, Nomie K, Zhang H, Bell T, Pham L, Kadri S, et al. B-Cell Lymphoma Patient-Derived Xenograft Models Enable Drug Discovery and Are a Platform for Personalized Therapy. Clin Cancer Res 2017;23:4212-23
【文献】Chapuy B, Cheng H, Watahiki A, Ducar MD, Tan Y, Chen L, et al. Diffuse large B-cell lymphoma patient-derived xenograft models capture the molecular and biological heterogeneity of the disease. Blood 2016;127:2203-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒト患者のPCNSLを再現できる新規なPCNSLモデル、及びそのようなモデルを構築できる新規なPCNSL細胞株を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、鋭意研究の結果、ヒト患者のPCNSLを高レベルで再現する12例のPCNSL PDXモデルの作出に成功するとともに、そのうちの1例として、ビトロでの長期培養も可能な細胞株を取得し、本願発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、本願発明者がYML15と命名した、ATCCにPTA-125888の受託番号で寄託されている中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株及びその利用に関する発明であり、以下の態様を包含する。
(1) ATCCにPTA-125888の受託番号で寄託されている、中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株。
(2) (1)記載の細胞株を含む、中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株のセット。
(3) (1)記載の細胞株が移植され、該細胞株が形成した腫瘍を脳内に有する免疫不全非ヒト動物からなる、中枢神経原発悪性リンパ腫モデル。
(4) 前記非ヒト動物がマウスである、(3)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデル。
(5) (3)又は(4)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデルを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫モデルのセット。
(6) (1)記載の細胞株を免疫不全非ヒト動物の脳に移植することを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫モデルの作製方法。
(7) (1)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株又は(2)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫細胞株のセットを化合物で処理し、細胞生存率が低下するか否かを調べることを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫の治療薬のスクリーニング方法。
(8) (3)若しくは(4)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデル、又は(5)記載の中枢神経原発悪性リンパ腫モデルのセットに化合物を投与し、治療効果が得られるかどうかを調べることを含む、中枢神経原発悪性リンパ腫の治療薬のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本願発明により、非ヒト動物脳内で異種移植腫瘍を形成する能力を有し、ビトロでの長期培養も可能なPCNSL細胞株が初めて提供される。PCNSLの細胞株樹立の報告としては、非特許文献17の報告に次いで2番目となるが、本願発明者が実施例において作出したPDX株は12株であり、本願出願日時点で世界最多の細胞パネルである。特に、ビトロでの長期培養も可能なPCNSL細胞株の報告はこれまでになく、本発明が提供するYML15株は非常に希少な細胞株である。本発明のPCNSL細胞株及びPCNSLモデルは、組織、遺伝子解析、代謝評価などの詳細な解析により、患者のPCNSLを高率に再現するモデルであることを確認しており、さらには薬剤感受性を再現し得ることも確認している(下記実施例参照)。本発明により、PCNSLの維持・悪性化機構の解明が促進されるのみならず、治療標的分子の探求を細胞、動物レベルで検討することが可能となるので、PCNSLに関する研究が大きく促進し、安全性及び有効性の高い治療法の開発に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施例で作出したマウス同所異種移植腫瘍モデル全12モデルの脳組織CD20染色の全体像。バーは500μm。
【
図1B】PCNSL腫瘍細胞(YML11、YML16)を同所移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線。細胞は図中に示した個数でマウス脳に移植した。
【
図1C】PCNSL腫瘍細胞を同所移植したマウス脳のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色の全体像。図中に記載したsc番号はin vivo継代数を示す。例えばsc2はin vivo継代2代目のマウス脳である。各H&E染色像の右下にCD20免疫染色像を示した(バーは50μm)。
【
図1D】患者の腫瘍細胞(pt)及び対応する異種移植腫瘍細胞(sc、全てin vivo継代1代目)を、H&E染色又は図示したマーカーで免疫染色した染色像である。バーは50μm。
【
図1E】YML16を同所移植したマウスの各組織(肺、肝臓、脾臓、小腸)のCD20免疫染色像。バーは50μm。
【
図1F】YML16を尾静脈注入により移植したマウス脳(移植後60日)のCD20免疫染色像。バーは50μm。
【
図1G】YML16を尾静脈注入により移植したマウスの各組織(肺、肝臓、脾臓、小腸;移植後60日)のCD20免疫染色像。バーは50μm。
【
図1H】初代培養YML5細胞(左)及びYML15異種移植片細胞(右)の顕微鏡画像である。バーは50μm。
【
図2A】患者腫瘍(pt)及び図示したin vivo継代数時の異種移植腫瘍(sc)において同定されたprivate非同義変異、及び患者腫瘍-異種移植腫瘍間で共通する非同義変異を図式化したベン図。
【
図2B】PCNSL患者腫瘍及び対応する異種移植腫瘍細胞における非同義変異のランドスケープ。
【
図2C】連続継代した異種移植腫瘍においてMYD88遺伝子変異(L265P、矢印)を検出したサンガーシークエンシングの結果である。
【
図2D】連続継代した異種移植腫瘍におけるCD79BY196一塩基変異(矢印)の存在を表すサンガーシークエンシング及びパイロシークエンシングの結果である。
【
図2E】同所異種移植腫瘍より抽出したセルフリーDNA中にMYD88L265P一塩基変異を同定したドロップレットデジタルPCRの結果である。
【
図2F】患者腫瘍(pt)及び図示したin vivo継代数時の異種移植腫瘍(sc)におけるコピー数変化(CNA)を評価するためのlog R比。
【
図2G】患者腫瘍及び図示したin vivo継代数時の異種移植腫瘍の系統樹。バーは非同義変異(ns-mts)20回。
【
図2H】PCNSL患者腫瘍及び異種移植腫瘍の系統追跡図。コピー数変化(CNA)及び非同義変異の系統学的再構築。各色が腫瘍内の別個のクローンを表す。
【
図2I】幹クローン及びサブクローンの異常な体細胞超変異ターゲット数及び他のターゲット非同義変異数。
【
図3A】PCNSL患者の脳腫瘍及び対側の正常脳(NB)におけるFDGの標準取込値最大値(SUV max)。
【
図3B】PCNSL患者4名(YML9, YML12, YML15, YML16)の脳のFDG-PET画像。
【
図3C】PCNSL患者の脳腫瘍及び対側の正常脳(NB)の、グルコーストランスポーター1(Glut-1)、ヘキソキナーゼ2(HK-2)及び乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)の免疫染色像。バーは50μm。
【
図3D】YML12異種移植腫瘍を有するマウス脳の冠状断像。上段左がH&E染色像、上段右がT2強調MRI画像、下段左がFDG-PET画像、下段右がMRIとFDG-PETの統合画像。バーは50μm。
【
図3E】YML12異種移植腫瘍(Tumor)及び偽処置脳(Sham)の、FDG-PET画像のSUV max及びSUV mean(平均値)。*は腫瘍と偽処置脳との間でP < 0.05。
【
図3F】異種移植腫瘍(YML9, YML15, YML16)及び偽処置脳(Sham)のFDG-PET画像(上段)及びSUV max、SUV mean(下段)。*は腫瘍と偽処置脳との間でP < 0.05。
【
図3G】PCNSL異種移植腫瘍(YML9, YML11, YML12, YML15, YML16)及び偽処置脳(Sham)におけるGlut-1、HK-2及びLDHAの発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図3H】WZB117又は2-DGで処理したPCNSL異種移植片細胞(YML9, YML11, YML12, YML15, YML16)及び不死化正常ヒトアストロサイト(NHA)の相対細胞生存率。*はコントロールのDMSOに対してP < 0.05で有意差あり。
【
図3I】非サイレンシング(NS)shRNA又はGLUT1 shRNA(GLUT1#1, #2)を導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML15, YML16)及び正常ヒトアストロサイト(NHA)におけるGLUT1の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図3J】非サイレンシング(NS)shRNA又はGLUT1 shRNA(GLUT1#1, #2)を導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML15, YML16)及び正常ヒトアストロサイト(NHA)の相対細胞生存率を調べた結果。NS shRNA導入細胞とGLUT1 shRNA導入細胞との間で*, **はP < 0.05で有意差あり。
【
図3K】非サイレンシング(NS)shRNA又はHK2 shRNA(HK2#1, #2)を導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML15, YML16)及び正常ヒトアストロサイト(NHA)におけるHK-2の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図3L】非サイレンシング(NS)shRNA又はHK2 shRNA(HK2#1, #2)を導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML15, YML16)及び正常ヒトアストロサイト(NHA)の相対細胞生存率を調べた結果である。NS shRNA導入細胞とHK2 shRNA導入細胞との間で*, **はP < 0.05で有意差あり。
【
図3M】非サイレンシング(NS)shRNA、GLUT1 shRNA又はHK2 shRNAを導入したYML15細胞を同所移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線。
【
図4A】PCNSL異種移植腫瘍(Tumor)及びマウス正常脳(NB)における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図4B】非サイレンシング(NS)shRNA又はMYD88 shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図4C】非サイレンシング(NS)shRNA又はCD79B遺伝子shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図4D】NS shRNA、MYD88 shRNA又はCD79B shRNAを導入した異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)中のp65値をELISAにより半定量した結果である。データは平均値±SEM。
【
図4E】NS shRNA、MYD88 shRNA又はCD79B shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)の相対生存率である。*, **, ***, ****はNSに対してP < 0.05で有意差あり。データは平均値±SEM。
【
図4F】NS shRNA、MYD88 shRNA又はCD79B shRNAを導入したYML16及びHKBML異種移植腫瘍細胞の、2-DG処理後の相対生存率である。*はNSとMYD88との間で、**はNSとCD79Bとの間でP < 0.05。データは平均値±SEM。
【
図4G】NS shRNA又はMYD88 shRNAを導入したHKBML細胞を同所移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線。
【
図4H】NS shRNA又はMYD88 shRNAを導入したHKBML細胞を移植したマウス脳(21日目)における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図4I】DMSO又は10μM BAY11-7082で12時間処理後のPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)中の各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図4J】BAY11-7082で処理した異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)及び正常ヒトアストロサイトの、処理3日目の相対細胞生存率である。*はDMSO及びBAY11-7082間でP <0.05で有意差あり。データは平均値±SEM。
【
図4K】NS shRNA又はRELA shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)中の各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図4L】NS shRNA又はRELA shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML16, HKBML)中のp65をELISAにより半定量した結果である。*はNS及びRELA間でP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図4M】NS shRNA又はRELA shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)の相対生存率である。*, **はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図5A】マウスに腫瘍を形成した異種移植腫瘍形成性のPCNSL患者腫瘍細胞(YML1R, YML2, YML3, YML4, YML8, YML9, YML11, YML12, YML16)及び形成しなかった異種移植腫瘍非形成性のPCNSL患者腫瘍細胞(YML7, YML13)における、MYD88遺伝子, CD79B遺伝子及びCARD11遺伝子の一塩基変異の有無を示した図である。ボックスが一塩基変異あり。
【
図5B】異種移植腫瘍形成性のPCNSL腫瘍(YML1R, YML11, YML12)及び非形成性のPCNSL腫瘍(YML13)におけるPin1及び古典的NF-κB経路タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図5C】免疫応答性の異種移植腫瘍形成性PCNSL患者腫瘍(YML1R, YML2, YML3, YML4, YML8, YML9, YML11, YML12, YML16, YML17)及び異種移植腫瘍非形成性PCNSL患者腫瘍(YML7, YML13)における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図5D】免疫応答性のPCNSL異種移植腫瘍組織(YML12、YML16、HKBML)及び偽処置マウス脳組織(Sham)における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図5E】in vivo継代1代目(sc1、腫瘍細胞移植後145日)及び2代目(sc2、腫瘍細胞移植後44日)のYML16異種移植腫瘍のH&E染色像である。バーは50μm。
【
図5F】in vivo継代1代目(sc1)及び2代目(sc2)のYML16異種移植腫瘍におけるPin1、古典的NF-κB経路タンパク質及び解糖系タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図5G】in vivo継代1代目(sc1)及び2代目(sc2)のYML16異種移植腫瘍におけるPin1、古典的NF-κB経路タンパク質及び解糖系タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図5H】in vivo継代1代目(sc1)及び2代目(sc2)のYML16異種移植腫瘍細胞を2-デオキシグルコース(2-DG)で処理して3日目の相対生存率である。*はYML16sc1及びYML16sc2間でP <0.05で有意差あり。データは平均値±SEM。
【
図5I】非サイレンシング(NS)shRNA又はPIN1 shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞におけるPin1、古典的NF-κB経路及び解糖系タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図5J】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)中のp65値をELISAにより半定量した結果である。*はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図5K】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML12, YML16, HKBML)の相対細胞生存率である。*(PIN1#1)、**(PIN1#2)はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図5L】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入したHKBML細胞を同所異種移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線である。
【
図6A】上段は、YML15患者腫瘍細胞(Pt)及び対応するin vivo継代1代目(Sc1)の異種移植腫瘍細胞における、コピー数変化(CNA)を評価するためのlog R比。下段は、PCNSL患者腫瘍細胞とin vivo継代1代目の異種移植腫瘍細胞との間のコピー数変化のピアソン相関係数。
【
図6B】YML15患者腫瘍細胞及び異種移植腫瘍細胞(Sc1)で同定されたprivate非同義変異、及び患者腫瘍-異種移植腫瘍間で共通する非同義変異を図式化したベン図(左)と、private非同義変異及び共通する非同義変異の変異アレル頻度(右)。*はprivate非同義変異と共通非同義変異との間でP <0.05。
【
図6C】上段は、患者腫瘍及び図示したin vivo継代数における異種移植腫瘍の系統樹。バーは非同義変異20回。下段は、PCNSL患者腫瘍及び異種移植腫瘍の系統追跡図。CNA及び非同義変異の系統樹再構築。各色が腫瘍内の別個のクローンを表す。
【
図6D】PCNSL患者(YML5, YML14)の脳のMR画像(左)とH&E染色像及びCD20免疫染色像(中央)、並びに同所移植マウス脳の全体像(右)。バーは50μm。
【
図6E】BAY11-7082処理したEBV陽性のPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)及び不死化正常ヒトアストロサイト(NHA)の相対生存率である。*はコントロールのDMSOに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6F】20μMジュグロン(Pin1阻害剤)で12時間処理したEBV陽性PCNSL異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)において、Pin1、古典的NF-kB経路及び解糖系タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6G】ジュグロン処理したEBV陽性PCNSL異種移植片細胞(YML15, YML5)及び不死化正常ヒトアストロサイト(NHA)の相対生存率である。*はコントロールのDMSOに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6H】EBV陽性の免疫不全PCNSL患者細胞(YML5, YML14, YML15)及びEBV陰性の免疫応答性PCNSL患者細胞における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6I】EBV陽性PCNSL患者腫瘍(YML5, YML14, YML15)及び正常脳組織(NB)における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図6J】EBV陽性PCNSL異種移植腫瘍(YML5, YML15)及び正常脳組織(NB)における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6K】EBV陽性PCNSL異種移植腫瘍(YML5, YML15)及び偽処置マウス脳(Sham)における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図6L】非サイレンシング(NS)shRNA又はLMP1 shRNAを導入したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6M】NS shRNA又はLMP1 shRNAを導入した異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)中のp65値をELISAにより半定量した結果である。*はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6N】NS shRNA又はLMP1 shRNAを導入した異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)の相対細胞生存率である。*(LMP1#1)、**(LMP1#2)はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6O】NS shRNA又はLMP1 shRNAを導入したYML15細胞を同所異種移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線である。
【
図6P】DMSO又は10μM BAY11-7082で12時間処理したPCNSL異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)中の各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6Q】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入した患者腫瘍細胞(YML15, YML5)中の各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6R】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入した患者腫瘍細胞(YML15, YML5)の相対生存率である。*、**はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6S】NS shRNA又はPIN1 shRNAを導入したYML15細胞を同所異種移植したマウスのカプラン・マイヤー曲線である。
【
図6T】NS shRNA又はRELA shRNAを導入したYML15異種移植腫瘍細胞における各タンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図6U】NS shRNA又はRELA shRNAを導入した異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)中のp65値をELISAにより半定量した結果である。*はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図6V】NS shRNA又はRELA shRNAを導入した異種移植腫瘍細胞(YML15, YML5)の相対生存率である。*, **はNSに対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図7A】PCNSL患者の造影MR画像。左(Pretreatment)が高用量メトトレキサート(HD-MTX)治療の開始前、右(Post HD-MTX)が2サイクルのHD-MTX治療後。CR, 完全奏効; PR, 部分奏効; PD, 進行。
【
図7B】高用量MTXで処理後3日のCNSL異種移植腫瘍細胞の相対生存率。*はコントロールのDMSO処理に対しP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図7C】PCNSL患者及び異種移植腫瘍細胞の高用量MTXに対する感受性をまとめた表である。
【
図7D】高用量MTXに感受性の細胞(YML3, YML11, YML12, YML16, HKBML)及び耐性の細胞(YML2, YML5, YML15)を各濃度のMTXで処理し、古典的NF-κB経路及び解糖系のタンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図7E】高用量MTXに感受性の細胞(YML3, YML11, YML12, YML16, HKBML)及び耐性の細胞(YML2, YML5, YML15)を100μMのMTXで処理後、各時間における古典的NF-κB経路及び解糖系のタンパク質の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図7F】DMSO、100μM MTX、100μMロイコボリン (LV)、又はMTX+LVの組み合わせでPCNSL異種移植片細胞を処理後2日目の相対細胞生存率である。*はP <0.05。データは平均値±SEM。
【
図7G】各薬剤で12時間処理後のPCNSL異種移植腫瘍細胞におけるリン酸化p65の発現をウエスタンブロットにより調べた結果である。
【
図7H】溶媒又は高用量MTXを投与したYML16同所移植マウスのカプラン・マイヤー曲線である。
【
図7I】溶媒又は高用量MTXを投与したYML16同所移植マウスの脳組織における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図7J】溶媒又は高用量MTXを投与したYML15同所移植マウスのカプラン・マイヤー曲線である。
【
図7K】溶媒又は高用量MTXを投与したYML15同所移植マウスの脳組織における各タンパク質の発現を免疫染色により調べた結果である。バーは50μm。
【
図7L】PCNSLにおいて古典的NF-kB経路の活性化が腫瘍進行を促進することを説明した略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のPCNSL細胞株YML15は、EBV陽性かつHIV陽性のヒトPCNSL患者の脳から採取されたリンパ腫細胞であり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)にPTA-125888の受託番号で寄託されている(受領日2019年4月9日、生存確認日2019年4月29日、受託証発行日2019年5月1日)。YML15株自体は、EBV(EBVがコードするEBER)陽性であるが、PCRレベルでHIV陰性であることが確認されている。
【0012】
下記実施例において樹立されたPCNSLのPDX株の中でも、YML15株は、in vitro培養による増殖、継代培養が可能であることを特徴の1つとする。YML15株の培養には、例えば、1x B27サプリメント (Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044), 0.25x N2サプリメント(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048), 3 mM(終濃度) L-グルタミン, 1x Antibiotic-Antimycotic (Thermo Fisher Scientific、カタログ番号15240062), 20 ng/ml(終濃度) 組換えヒトEGF(R&D Systems、カタログ番号236-EG-200), 及び20 ng/ml(終濃度) 組換えヒトFGF-basic (Alomone Labs、カタログ番号F-170)を添加したNeurobasal培地(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号21103049)で構成される無血清EF20培地を使用し、37℃で培養すればよい。
【0013】
YML15を非ヒト動物の脳に移植すると、脳内でYML15細胞が腫瘍を形成する。YML15細胞の腫瘍を脳内に形成した非ヒト動物は、YML15が由来する患者腫瘍を高レベルに再現したPCNSLモデルとして有用である。YML15を移植する非ヒト動物は、ヒト由来の異種移植片であるYML15を拒絶しない免疫不全の非ヒト動物であれば特に限定されず、実験動物として一般的に用いられるマウス、ラット、ウサギ等を用いることができる。レシピエントとして好ましく使用できる非ヒト動物の一例として、SCIDマウス、SCID Beigeマウス、NOD/SCIDマウス等の免疫不全マウス、SCIDラット等の免疫不全ラットを挙げることができるが、これらに限定されない。103個~105個程度のYML15細胞を免疫不全非ヒト動物の脳(例えば右線条体)に移植することにより、非ヒト動物の脳内に腫瘍を形成させることができる。YML15は侵襲性の高い腫瘍であり、非ヒト動物の脳内に移植後、通常1か月程度以内に腫瘍の形成を確認することができる。
【0014】
YML15株は、他のヒトPCNSL患者の脳から採取された、非ヒト動物の脳内に異種移植腫瘍を形成する能力を有する1以上のPCNSL細胞株(PCNSL PDX株)と組み合わせて、PCNSL細胞株のセットとして提供することができる。PCNSL細胞株の異種移植腫瘍形成能は、実際に免疫不全非ヒト動物の脳内に移植して調べることができる。具体的には、ヒトPCNSL患者から、定位脳生検又はニューロナビゲーションシステム(Brain Lab)を用いた直視下生検により腫瘍検体を取得した後、トリプシン等の酵素で検体を処理して細胞を分離し、免疫不全の非ヒト動物の脳(例えば右線条体)に移植することにより、非ヒト動物の脳内に腫瘍を形成する能力を有するか否かを調べることができる。腫瘍検体の取得から非ヒト動物への移植までの作業は、12時間程度以内、例えば6時間程度以内に完了することが好ましい。YML15細胞のようにin vitro培養で長期間維持できるPCNSL PDX株を得ることは非常にまれである。in vitro培養での長期維持ができないPCNSL PDX株は、非ヒト動物脳での継代(非ヒト動物の脳に移植→腫瘍形成→腫瘍細胞回収→非ヒト動物の脳に移植)を繰り返して維持することができる。非ヒト動物の脳から腫瘍組織を採取し、トリプシン等の酵素で処理して細胞を分離、培養し、再度非ヒト動物の脳に移植する作業は、48時間程度以内、例えば24時間程度以内に行なうことが好ましい。YML15以外のPCNSL PDX株を培養する際にも、YML15と同様の培地を用いることができる。あるいは、凍結保存後も異種移植腫瘍を形成する能力を維持するPCNSL細胞株の場合には、凍結保存による長期保存も可能である。
【0015】
YML15以外のPCNSL PDX株を免疫不全非ヒト動物の脳に移植して得られる、脳内に移植細胞由来の腫瘍が形成された非ヒト動物も、PCNSLモデルとして有用である。非ヒト動物の条件は、YML15の移植に用いる非ヒト動物と同じである。
【0016】
YML15を非ヒト動物の脳に移植して作製されたPCNSLモデルは、YML15以外のPCNSL PDX株を非ヒト動物の脳に移植して作製された1種以上のPCNSLモデルと組み合わせて、PCNSLモデルのセットとして提供することができる。「1種のPCNSLモデル」という語は、1種類のPCNSL PDX株を移植して作製された1個体以上のPCNSLモデルを意味する。「2種のPCNSLモデル」は、1種類のPCNSL PDX株を移植して作製された1個体以上のPCNSLモデルと、別の1種類のPCNSL PDX株を移植して作製された1個体以上の別のPCNSLモデルとの組み合わせを意味する。
【0017】
YML15株、又はYML15株を含むPCNSL PDX株のセットは、PCNSL治療薬のスクリーニングに用いることができる。YML15株又はPCNSL PDX株のセットを用いたPCNSL治療薬のスクリーニングでは、YML15株又はPCNSL PDX株のセットを化合物で処理し、細胞生存率が低下するか否かを調べればよい。細胞生存率の測定方法は周知であり、生存率測定のためのキット類が市販されている。コントロールの化合物非処理群(例えば溶媒処理群)の細胞と生存率を比較し、化合物処理群で生存率の有意な低下が認められた場合に、その化合物をPCNCLの治療薬候補として選択ないし判定することができる。複数の細胞株を含むPCNSL PDX株のセットを用いる場合には、例えば、半分(50%)以上、又は60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、若しくは全てのPCNSL PDX株で生存率の有意な低下が認められた場合に、その化合物をPCNSL治療薬候補として選択ないし判定することができる。PCNSL治療効果を評価したい化合物が1つある場合には、その1つの化合物でYML15株又はPCNSL PDX株のセットを処理し、生存率が低下するか否かを調べればよい。複数の化合物から治療薬候補を選択したい場合には、それら複数の化合物でYML15株又はPCNSL PDX株のセットを処理し、生存率の有意な低下が認められる化合物を選択すればよい。
【0018】
YML15を移植して作製されたPCNSLモデル、又は該PCNSLモデルを含むPCNSLモデルのセットも、PCNSL治療薬のスクリーニングに用いることができる。モデル又はモデルのセットを用いたスクリーニングでは、モデル個体に化合物を投与し、腫瘍の治療効果が得られるかどうかを調べればよい。脳内に形成された腫瘍が縮小し、若しくは腫瘍の増殖・進行が抑制された場合、モデル個体の生存率の向上(生存期間の延長)が認められた場合、又は、モデル個体の神経症状が緩和若しくは神経症状の進行が抑制された場合に、治療効果ありと評価することができる。複数種類のモデルを含むモデルのセットを用いる場合には、例えば、半分(50%)以上、又は60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、若しくは全てのモデルで治療効果が認められた場合に、その化合物をPCNSL治療薬候補として選択ないし判定することができる。PCNSL治療効果を評価したい化合物が1つある場合には、その1つの化合物をモデル又はモデルのセットに投与し、治療効果が得られるかどうかを調べればよい。複数の化合物から治療薬候補を選択したい場合には、それら複数の化合物をモデル又はモデルのセットに投与し、治療効果が得られた化合物を選択すればよい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例中、略号はそれぞれ以下を表す。
CNSL:中枢神経系リンパ腫(central nervous system lymphoma)
PCNSL:中枢神経原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma)
SCNSL:二次性中枢神経系リンパ腫(secondary central nervous system lymphoma)
DLBCL:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)
EBV:EBウイルス(Epstein-Barr virus)
EBER:EBVがコードする小RNA(EBV-encoded small RNA)
【0020】
I. 材料及び方法
本研究はヘルシンキ宣言に従って行われ、横浜市立大学(日本国横浜市、A200900004 及びB190700012)及び国立がん研究センター(日本国東京、2013-042)の治験審査委員会によって承認された。本研究に参加した全ての患者より書面によるインフォームドコンセントを得た。全てのマウス実験は横浜市立大学の動物実験委員会に承認された。患者より採取したYML15細胞株は、2019年4月9日付でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されている(受託番号PTA-125888)。
【0021】
CNSL患者の臨床的特徴
PCNSL患者14名、SCNSL患者1名の臨床的特徴を表1に示す。年齢中央値は72歳(41~85歳)で男性が多かった(男性9名、女性6名)。12名が免疫応答性(IC、免疫不全なし)、3名が免疫抑制性(IS、免疫不全状態)であり、3名中の2名はAIDS関連、1名は免疫抑制剤の投与を受けていた。免疫不全の患者3名はEBERの発現陽性であり、EBV陽性のPCNSLであった。免疫応答性の患者は全員EBER陰性であった。MRI及びCT画像診断によると、9名の病変部は均一であり、免疫不全3名を含む6名では不均一であった(
図1A)。腫瘍の位置は、10名がテント上、5名がテント下であった。症例YML1は、脳病変が生検によりPCNSLと診断され、化学放射線療法により完全寛解となったが、55か月時に頸部リンパ節に腫瘍が再発、切除し(YML1R)、DLBCLと診断された。組織学的・遺伝学的特徴は原発腫瘍と類似していたため、YML1RをPCNSL YML1の再発と判断した。症例YML2は、全身FDG-PET/CTにより脳に局限したFDG取り込み上昇が判明したが、30年以上前に精巣リンパ腫を発症し、治療により完全寛解したという病歴があったため、その後に発生した脳病変(YML2)をSCNSLと判断した。他の患者は全て新規に診断された症例であった。全ての腫瘍サンプルは、B細胞マーカーCD20、CD79aの強い発現を認め、組織学的にDLBCLであることが確認された。診断後、YML17を除く患者全員が2~6サイクル(平均3.4±1.5)の高用量メトトレキサート(HD-MTX)(3.5 g/m
2)治療を全脳照射(30 Gy)の併用あり又は併用なしで受けた。YML17は、MTX(1 g/m
2)+リツキシマブ(375mg/ m
2)+シタラビン(2g/m
2)の併用療法を受けた後に全脳照射(36Gy)を行なった。
【0022】
【0023】
CNSL細胞株及び同所異種移植モデル
新鮮外科標本は、定位脳生検又はニューロナビゲーションシステム(Brain Lab, 独国Munich)を用いた直視下生検により取得した後、酵素で分離し、1~3x105個の細胞を、4~9週齢の雌性SCID Beigeマウス(Charles River, 日本国横浜市)の右線条体に定位的に移植した。既報[1]の通り、新鮮外科標本の取得から移植までの作業を6時間以内に行なった。マウスは週に少なくとも3回モニターし、神経症状が致死的になった時、又は移植時体重に比べて20%以上の体重減少が認められた時に犠牲死させた。犠牲死マウスより遺伝的及び病理学的研究のために脳腫瘍を収集し、分離して腫瘍開始細胞(TIC)を培養し、24時間以内にマウス脳に移植するか、あるいは、in vitro実験に使用した。EBV陽性のPCNSL患者に由来するリンパ腫細胞であるHKBMLは、理研BRCセルバンクより入手した。全ての腫瘍サンプルは、各継代時にin vitro実験に使用する前に凍結保存した。細胞の培養には、1x B27サプリメント (Gibco), 0.25x N2 (Gibco), L-グルタミン (3 mM, Gibco), 1x Antibiotic-Antimycotic (Gibco), 20ng/ml 組換えヒトEGF(R&D), 及び20ng/ml 組換えヒトFGF-basic (Alonome labs)を添加したNeurobasal培地で構成される無血清EF20培地を用いた。
【0024】
細胞生存率の解析
細胞生存率の評価のため、初代培養細胞及び異種移植片に由来するCNSL細胞を単一細胞に分離し、96ウェルプレートに3,000~8,000細胞/ウェルで播種した。3~12時間後、BAY11-7082 (Cayman Chemical), ジュグロン(Cayman Chemical), ロイコボリン(Tokyo Chemical Industry), メトトレキサート (Sigma), WZB117 (Sigma), 又は2-デオキシグルコース (Sigma) を段階希釈してウェルに添加した。3日目にCellTiter-Glo (Promega)アッセイにより細胞生存率を測定し、DMSOコントロールに対する%生存率として生存率を示した。IC50 (細胞生存率が50%となる薬剤濃度) を決定した。患者及び同所移植モデルにおけるMTX感受性の関連性を評価するため、定性的評価及び細胞生存アッセイをそれぞれ実施した。異種移植片細胞においてはIC50が200μM未満である場合に治療応答性とし、患者においては完全奏効(complete response; CR)及び部分奏効(partial response; PR)の場合に治療応答性とした。
【0025】
shRNA細胞株の作製
MYD88, CD79B, LMP1, PIN1, RELA, GLUT1及びHK2遺伝子のノックダウンのため、ヒトMYD88 shRNA(#1, 8024, #2, 417209, #3, 11223, #4, 429754, Sigma Aldrich)、CD79B shRNA(#1, 57651, #2, 57648, Sigma Aldrich)、LMP1 shRNA(#1, 159220, #2, 161551, #3, 160157, #4, 160933, #5, 161061, Sigma Aldrich)、PIN1 shRNA(#1, 1035, #2, 1036, #3, 1035, #4, 1036, #5, 10577, Sigma Aldrich)、RELA shRNA(#1, 14683, #2, 14686, #3, 14684, #4, 32980, #5, 32975, Sigma Aldrich)、GLUT1 shRNA(#1, 427320, #2, 43584, Sigma Aldrich)又はHK2 shRNA(#1,195340 , #2, 195582, #3, 196260, #4, 232925, #5, 232928, Sigma Aldrich)を含むレトロウイルスベクターパッケージングプラスミドDNA 6μgを、3.5μgのpHIV-GP及び3.5μgのpVSVg-Revとともにトランスフェクション試薬(Lipofectamine(商品名) 3000 Transfection Reagent, Thermo Fisher Scientific)を用いて293T細胞にコトランスフェクトした。ポリブレン(8μg/ml)を用いてレンチウイルスをPCNSL細胞に8時間~一晩感染させた。2日後、細胞を2日間ピューロマイシン(0.2~0.5μg/ml)による選択にかけ、実験に用いた。GIPZ Non-silencing Lentiviral shRNA Control(RHS4348, GE Dharmacon)を非サイレンシング(NS)コントロールとして用いた。
【0026】
免疫組織化学検査
腫瘍組織検体は、10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋した。H&E染色は標準的手順により実施した。IHC解析のため、5μm厚切片を脱パラフィンし、0.5% H2O2メタノール溶液で処理し、再水和させ、20分間加熱して抗原回復させた。血清でブロッキングした後、組織切片をBcl-6 (Nichirei Bioscience), CD10 (Leica), CD20 (Leica and Novus Biologicals), CD79a (Nichirei Bioscience), Glut-1 (CST), HK-2 (CST), LDHA (CST), Ki-67 (Dako), MUM-1 (DAKO), NF-kB p65 (CST), Phospho-NF-kB p65 (CST), 又はPin1 (R&D systems)に対する一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。翌日、切片をPBSで洗浄し、ビオチン化二次抗体とともに室温30分間インキュベートした後、ABC溶液(PK-6101, PK-6102; Vector laboratories)で室温30分間インキュベートした。最後に、切片をDAB(Dako)でインキュベートし、ヘマトキシリンでカウンター染色した。in vivoでアポトーシス細胞を検出するため、TUNEL染色(In Situ Cell Death Detection Kit, Sigma)を製造者の推奨に従って実施した。強く染色された細胞のみをタンパク質発現陽性とした。EBVがリンパ腫形成に関連しているかどうかを評価するため、EBVがコードする小RNA(EBV-encoded small RNA; EBER)のin situハイブリダイゼーション(ISH, Leica)を行なった。腫瘍を組織学的にシート様増殖パターン又は血管周囲増殖パターンに分類した。
【0027】
ウエスタンブロッティング
細胞の溶解は、Protease Inhibitor Cocktail Tablets(Roche)を用いてRIPAバッファー(Sigma-Aldrich)中で行なった。50μgのタンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、エレクトロブロッティングによりPVDFメンブレン(Millipore)に転写した。TBST(25 mM Tris [pH, 7.4], 137 mM NaCl, 0.5% Tween20)中で1%又は5%の脱脂粉乳にてブロッキングした後、メンブレンを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(CST)と共にインキュベートした後、メンブレンを洗浄し、化学発光HRP基質(Millipore)を用いてシグナルを可視化した。一次抗体として、β-アクチン (CST), CD79B (GeneTex), Cleaved-PARP (Gene Tex), GAPDH (Gene Tex), Glut-1 (Novus Biologicals), HK-2 (CST), LDHA (CST), LMP1 (Bethyl Laboratories), MYD88 (Novus Biologicals), NF-kB p65 (CST), NF-kB p105/p50 (Novus Biologicals), NF-kB p100/p52 (Novus Biologicals), リン酸化IkBα (CST), リン酸化NF-kB p65 (CST), Pin1 (R&D systems), ビンキュリン (CST)に対する抗体を用いた。
【0028】
ELISA
p65は、NF-kB p65 ELISA Kit (ab1766648) を製造者の推奨に従い用いて半定量的に測定した。腫瘍細胞はプロトコール通りに調製し、3x104細胞/ウェルで播種した。450nmにおけるODをELISA (Abs 450nM, Promega)によって測定し、検量線に当てはめて数値を算出した。
【0029】
全エキソームシークエンシング(WES)
サンプルよりゲノムDNAを単離し、SureSelect Human All Exon Kit v6(Agilent Technologies, 米国カリフォルニア州Santa Clara)を用いてエキソン断片を濃縮した。単離した断片の超並列シークエンシングは、HiSeq2500(Illumina)にてペアエンドオプションを使用して行なった。ペアエンドWESリードは、BWAを用いてヒト参照ゲノム(hg38)及びマウス参照ゲノム(mm10)にアライメントした[2]。ヒト参照ゲノムにマップされたリードを更なる解析に用いた。MuTect (http://www.broadinstitute.org/cancer/cga/mutect), SomaticIndelDetector (http://www.broadinstitute.org/cancer/cga/node/87), 及びVarScan (http://varscan.sourceforge.net)を用いて体細胞変異をコールした。(I) リード深度が20未満、又は変異アレル頻度(VAF)が0.05未満、(II) ゲノムの一方のストランドのみによってサポートされている、(III) 1000 Genomes Project データセット(http://www.internationalgenome.org/)又は我々のin-houseデータベースのいずれかにおいて、正常ヒトゲノムに存在、のいずれかの条件を満たした変異は除外した。SnpEff (http://snpeff.sourceforge.net)により遺伝子変異をアノテーションした。コピー数ステータスの解析には我々のin-houseパイプラインを使用し、log R比(LRR)を下記(I)~(IV)の通りに決定した。
(I) それぞれの正常サンプルのゲノム中でホモ接合状態(VAF≦0.05又は≧0.95)又はヘテロ接合状態(VAF 0.4~0.6)にある、1000 Genomes ProjectデータベースにおけるSNP位置を選択した。
(II) 選択した位置での正常及び腫瘍リード深度を、当該位置に隣接する100bpウインドウのG+Cパーセンテージに基づいて調整した[3]。
(III) LRR =log2 (ti/ni)(ni及びtiは、位置iにおける正常及び腫瘍の調整済み深度)を算出した。
(IV) 位置iを中央とするmoving window(1 Mb)のメジアンにより、それぞれの代表LRRを決定した。
【0030】
腫瘍の系統学的解析及びその可視化は、LICHeE (https://github.com/viq854/lichee)を用いて下記のパラメータで実行した:maxVAFAbsent, 0.005; minVAFPresent, 0.005; minPrivateClusterSize, 2; sampleProfile, ON。入力変数として、各腫瘍の体細胞SNVコールのVAFならびにサンプル全体にわたるバイナリー存在-非存在パターンを特定する情報を提供した。免疫応答性の原発腫瘍とそれらに対応する同所異種移植片との間のゲノムワイドな遺伝的差異を評価するため、ペアの末梢血単核球(カバレッジ中央値151×, 70~229)を有する、患者(カバレッジ中央値153×, 94~208)及び異種移植片(カバレッジ中央値157×, 70~229)に由来する8つのマッチドサンプルを用いてWESを行なった。
【0031】
マルチプレックスPCRアンプリコンのIon Torrentシークエンシング
大規模ゲノム解析において共通して同定された、ないしはPCNSL発症に重大だと考えられる43遺伝子[4,5]の全てのエキソン及びエキソン-イントロン境界を増幅するためにプライマーペアのセットを設計した。遺伝子パネルには、BCR及びNF-κBシグナル伝達関連遺伝子(MYD88, CD79B, CARD11, TNFAIP3, BTK, CXCR4, PLCG2)、エピジェネティック制御関連遺伝子(CREBBP, TBL1XR1, HIST1H1E, KMT2D, KMT2C, DNMT1, ARID1B, EZH2, TOX)、ミスマッチ修復及びアルキル化剤耐性に関連する遺伝子(TP53, HFE, MSH6, MSH3)、細胞周期関連遺伝子(RB1, CCND3, MYC, PIM1)、B細胞分化関連遺伝子(PRDM1, IRF4, GNA13, BCL6)、転写関連遺伝子(BTG1, BTG2, ETV6, MEF2B)、細胞接着関連遺伝子(TENM4)、アポトーシス関連遺伝子(BCL2, TNFRSF14)、並びに免疫反応関連遺伝子(CIITA, B2M, CD80, TAGAP, ITPKB, KLHL14, HLA-C, CD58)が含まれていた。カットオフ値は1%に設定し、ミスセンス変異、スプライス部位変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異を含む非同義変異(ns-mts)をコールした。生殖細胞系列変異を除外するため、血液DNAを用いて非同義変異をサブトラクトした。移植された腫瘍中にあるマウスDNA由来の塩基変異を除外するため、正常マウス肝臓由来のDNAを用いてマウス特異的な塩基変異をサブトラクトした。
【0032】
標的DNAのシークエンシング及びMultiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)
DNeasy Blood & Tissue Kits (Qiagen) を製造者の推奨に従って使用し、凍結組織からゲノムDNAを抽出した。細胞株フィンガープリンティングによりマッチドDNA同定を確認するため、PowerPlex 16 HS System (Promega) を製造者の推奨に従って使用し、DNAを増幅した。次いで、3500xL Genetic Analyzer及びGene Mapper Software (Applied Biosystems) を製造者のプロトコールに従って使用し、フラグメント解析を実施した。 To evaluate MYD88L265P及びCD79Bステータスを評価するため、既報[4,6]の通りにサンガーシークエンシング及びパイロシークエンシングを実施した。患者サンプル及び異種移植サンプルにおけるCDKN2A (染色体9p21.3) 欠失を調べるため、既報[7]の通りにSALSA MLPA P383, P335, 又はP088プローブミックス(MRC, Amsterdam)を用いてmultiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA) を実施した。
【0033】
MYD88変異についてのドロップレットデジタルPCR
ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)試薬及びMYD88 L265Pに対するPrimer/probeミックスはBio-Rad (米国カリフォルニア州Hercules)より購入した。10μLの2x ddPCR Supermix for Probes (No dUTP) (Bio-Rad), 1μLのddPCR Mutation Assay (Bio-Rad)及び9μLのセルフリーDNAからなる20μL PCRミックスを8チャネルディスポーザブルドロップレット生成カートリッジ(Bio-Rad)のサンプルウェルにロードした。70μLのドロップレット生成オイル(Bio-Rad)を各チャネルのオイルウェルにロードした。ドロップレット生成後、96ウェルPCRプレートにドロップレットを移し、熱サイクル反応を行なった。QX200 Droplet digital PCR system (Bio-Rad)上で20μL反応ミックスの増幅反応を行なった。PCR後、96ウェルPCRプレートをQX-200 droplet reader (Bio-Rad)に供し、QuantaSoft analysis software (Bio-Rad)でデータを解析した。MYD88L265P変異に特異的なシグナルはFAMチャネルで、MYD88野生型シグナルはHEXチャネルで、それぞれ生成された。
【0034】
動物のイメージング
YML9, YML12, YML15, 及びYML16 PCNSL異種移植片細胞1x105個を、SCID Beigeマウスの脳の右線条体に移植した(n = 4)。比較のために偽手術を行なった(n = 3)。マウスの状態が致死的になった時に、T2強調二次元マルチスライススピンエコー(rapid acquisition with relaxation enhancement; RARE)をマウス頭部に適用して腫瘍の形成を確認した。トランスミッション用のボリュームコイル(Bruker BioSpin)と受信用の直角位相表面コイル(Rapid Biomedical)を備えた、Brukerコンソール(BioSpec, Bruker Biospin)に適合した7テスラ40cmボアMRIマグネット(Kobelco and Jastec)を使用した。MRIパラメータは既報[8]と同様とした。VECTor又は小動物用スキャナ(MILabs)及び製造者のソフトウェア(version 3.6g3s, MILabs)を使用し、既報[9]の手順で翌日に18F-FDG PET/CTを実施した。マウスに18F-FDG(9.25 MBq)を静脈内注入してから60分後に、脳領域にフォーカスして30分間PETスキャンを行なった。スキャン中はマウスを2%イソフルラン麻酔下で保ち、ヒーターで体温を維持した。PET/CT画像は、医用画像定量化ソフトウェアPMOD(PMOD Technologies)により解析した。PET画像の放射能濃度値(kBq/cc)は、減衰補正を用いた既知の放射能濃度によるキャリブレーションに基づいて決定した。再構成し位置合わせした画像について、関心領域(ROI)を腫瘍領域に設定した。体重あたりの放射能投与量で除した平均放射能濃度である標準取込値(standardized uptake value; SUV)は、ROI中の各ピクセルに対して算出した。PMODの画像位置合わせ及び重ね合わせ(PFUS)ツールにより、PET/CT画像を位置合わせしてT2強調MRI画像上に重ね合わせた。
【0035】
動物実験
遺伝子ノックダウンにより同所性の腫瘍形成が延長するか否かを評価するため、EBV陽性HKBML又はEBV陽性YML細胞株をヒトの非サイレンシング(NS)shRNA、MYD88遺伝子shRNA(#2), PIN1遺伝子shRNA(#1,#4), LMP1遺伝子shRNA(#1), GLUT1遺伝子shRNA(#1), 又はヘキソキナーゼ2(HK2)遺伝子shRNA(#1)を含むレンチウイルス(Sigma Aldrich)に感染させた後、1x105個の細胞を6~9週齢の雌性SCID Beigeマウスの右線条体に同所移植した。血管内への腫瘍細胞注入により異種移植腫瘍が形成されるか否かを調べるため、PCNSL細胞3x106個をマウスの尾静脈より注入した。尾静脈移植の60日後に剖検を行なった。PCNSL同所性異種移植モデルにおける高用量メトトレキサート(HD-MTX)の反応性を調べるため、1x105個のYML16細胞株及びYML15細胞株を脳内移植した。移植7日後に、マウスをランダムにMTX皮下投与群(400mg/kg、1週間おきに2回投与)又は溶媒投与群に割り当てた。投与処置の12時間後に、既報[10]の通りにマウスに4時間おきに3回ロイコボリン(25mg/kg)を投与した。神経障害又は全身症状が安楽死の基準に達した時にマウスを犠牲死させた。
【0036】
統計解析
統計解析にはJMP Pro15.0.0ソフトウェア(米国ノースカロライナ州Cary)及びGraphPad Prism (ver. 8.4.2, 米国カリフォルニア州San Diego)を用いた。パラメトリック解析には両側t検定又は1元配置分散分析を用いた。名義データの頻度の解析には両側フィッシャー直接確率検定を用いた。ヒトPCNSL検体と移植片(マウス脳由来)検体におけるゲノム変化の関連を評価するため、ピアソンの相関係数を利用した。生存時間解析は、アームの比較のためにログランク検定を使用してカプラン・マイヤー法を用いて実施した。データは平均値±SEMで表した。P<0.05を統計学的に有意と判断した。
【0037】
II. 結果
1. CNSLの同所性患者由来異種移植片は原発腫瘍の表現型特性を再現した
同所異種移植片を生成するため、PCNSL患者14名及びSCNSL患者1名より新鮮外科標本を得た。このコホートの臨床的特徴(表1)は、典型的なPCNSL集団を代表するものであった。PCNSLの細胞及びSCNSLの細胞は全て、移植前に生存能力があることを確認した。免疫不全マウスの脳に細胞を移植した後、15例のうちのEBV陽性PCNSL症例2例を含む12例(80%)において、神経症状の発現及び異種移植腫瘍の形成が観察された(
図1A)。移植が成功したマウスの生存期間中央値は54.5日であった。
【0038】
同所異種移植細胞の生着に必要な腫瘍細胞の数を評価するため、PCNSL細胞数を種々に変えてマウス脳に移植したところ、致死的な異種移植腫瘍の発生には5x10
2個の細胞で十分であった。生存期間中央値は注入した細胞数に依存していた(
図1B)。ほとんどのケースにおいて、異種移植腫瘍の組織学的表現型は両半球の全体にわたるびまん性浸潤を特徴としたが、一部の異種移植腫瘍は局在していた(
図1A、1C)。CD20陽性のリンパ腫細胞が時間依存的に脳の広範囲に浸潤した。
【0039】
マウス脳に移植した腫瘍細胞を収集して再度マウス脳に継代移植すると、CD20を発現する第2世代の患者由来異種移植腫瘍がモデル12例のうちの10例(83.3%)で誘導された(表2-1、2-2)。9例中の9例(100%)で凍結細胞からも同所異種移植腫瘍が確立され(表1)、このモデルが将来的な前臨床検査において広範な用途に使用できる可能性が示された。各CNSL移植マウスにおいて致死性を発現するのに必要な時間はほぼ一定であり、YML16のみビボでの継代2代目以降の腫瘍形成が速かった(表2-1、2-2)。移植腫瘍のヘマトキシリン-エオジン染色により、全てのPCNSL患者及び異種移植モデルにおいてCD20及びCD79aの発現が陽性であることがDLBCLの組織学的特徴であることが明らかになった。マウスに異種移植腫瘍を形成したPCNSL患者12名の腫瘍の組織学的構造は、シート様(SL)の増殖パターン(10例)又は血管周囲(PV)の増殖パターン(2例)のどちらかを優先的に示しており、対応する第1世代PDXモデル(継代1代目: sc1)と91.7%(12例中の11例)一致していた。また、これらの特徴はビボで複数回継代(例えば継代2代目: sc2)した後も完全に再現されていた(
図1C、1D; 表2-1、2-2)。異種移植腫瘍におけるKi-67インデックスに基づく細胞増殖は典型的には非常に高く(40%~90%)、対応する原発腫瘍において見られた細胞増殖と類似していた。CD10、Bcl-6及びMUM1 [11]の発現に基づく組織学的サブタイプ分類の結果、異種移植腫瘍を形成した患者腫瘍のうち、9例がABC/非GCBサブタイプであり、3例がGCBサブタイプであった。
【0040】
全てのケースで、異種移植腫瘍における免疫染色パターンは原発腫瘍と一致しており(
図1D; 表3)、これらのサブタイプはビボで連続継代しても維持されていた。PCNSL患者2名(YML1及びYML17)は再発時に全身性リンパ腫を生じた。一方、脳内移植したPDXマウスの全ての個体で、CD20陽性の新生物はCNS以外の全身臓器において同定されなかった(
図1E)。
【0041】
PCNSL細胞が血流を介して他の臓器に転移する能力を有するかどうかを調べるため、マウス脳での継代を経た腫瘍細胞3x10
6個をマウスの尾静脈に注入したところ、60日後にYML16の1例のみ(11例中の1例、9.1%)で脳に腫瘍を生じた(
図1F)。脳以外の臓器には腫瘍は生じなかった(
図1G)。脳内異種移植腫瘍が確立する率は、血管内注入よりも同所移植の方が有意に高かった(P < 0.0001)。分離直後の異種移植腫瘍から長期間のインビトロ培養による増殖を試みたところ、EBV陽性のPCNSLであるYML5とYML15の2つの異種移植細胞でビトロの増殖に成功したが(
図1H)、免疫応答性の患者に由来する細胞は長期培養による増殖ができなかった。これらの結果は、脳の向性及び鍵となるCNSLの表現型特性を幅広く代表する免疫応答性EBV陽性患者に由来するPDXモデル樹立の実現可能性を証明している。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
2. サブクローンの不均一性はaSHM遺伝子依存であり、反復性のMYD88遺伝子及びCD79B遺伝子変異は免疫応答性PCNSL異種移植モデルにおいて恒常的に保持されている
免疫応答性の原発腫瘍とそれらに対応する同所異種移植腫瘍との間のゲノムワイドな遺伝的差異を評価するため、末梢血単核球とペアの一致する患者由来PCNSLサンプル8つについて全ゲノムシークエンシング(WES)を行なった。WESの結果、各患者サンプルにおいて非同義変異(ns-mts)の個数が158.9±13.9(平均値±SEM)であることが明らかになった(
図2A)。それらの非同義変異は、患者腫瘍群内では93.3%±1.3%が、異種移植腫瘍群内では91.2%±1.0%が共有されていた。C>T遷移で濃縮された(50.6%±2.2%、平均値±SEM)、患者の腫瘍に関連する96のトリヌクレオチド中の一塩基変異(SNV)のプロファイルは、対応する異種移植腫瘍で得られたプロファイル(49.3%±1.6%、P = 0.62)と類似していた。共有された非同義変異換の変異アレル頻度(VAF)は、患者8名中の6名(75%)及び異種移植8例中の8例(100%)において、private非同義変異のVAFよりも有意に高かった。
【0046】
さらに、WESを評価してPCNSLのドライバー遺伝子を決定した。WESにより30の反復代表遺伝子が検出され(
図2B)、MutSigCV解析及び/又はMutPanning解析により有意に変異した遺伝子が3つ(MYD88, CD79B, HIST1H1E)ドライバー候補として同定された。さらに、10例の患者及び異種移植腫瘍において、ターゲットマルチプレックスPCRに基づく次世代シークエンシングを実施した。MYD88遺伝子のL265P変異(第265番ロイシンのプロリンへの変異)(MYD88L265P)及びCD79Bの一塩基変異(single nucleotide variants; SNVs)が、患者腫瘍では10例中8例で(80%)、異種移植腫瘍では10例中6例で(60%)発見され、全てのCD79B変異腫瘍でMYD88L265Pが併発していた(
図2B; 表4)。CD79B変異PCNSLでは、6つのSNVのうちの4つ(66.7%)がY196(第196番チロシン)に位置していた。興味深いことに、MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子のSNVは、13世代まで連続移植を行った後でも各異種移植腫瘍で連続的に保持されており(
図2C、2D; 表2-1、2-2)、これらの変異がPCNSL異種移植腫瘍の増殖及び維持に機能的役割を果たしている可能性が示唆された。
【0047】
【0048】
近年の研究によると、PCNSL患者の血清及び脳脊髄液中のセルフリーDNAよりMYD88L265Pを検出することができる(非特許文献14、[12])。異種移植腫瘍モデル由来のセルフリーDNAにおいてMYD88L265Pレベルを検出可能かどうかを調べるため、異種移植マウスより血清セルフリーDNAを抽出した。ドロップレットデジタルPCRにより、変異MYD88遺伝子を有するPCNSL異種移植マウス由来の血清セルフリーDNA中にMYD88L265Pを検出(6サンプル中の6つ、100%)することができた一方、コントロールとして用いたMYD88野生型のGMB異種移植マウスの血清中にはMYD88遺伝子のSNVは同定されなかった(
図2E; 表5)。患者腫瘍10例中の4例(40%)でCARD11遺伝子の非同義変異が見つかり、YML3異種移植腫瘍及びYML11患者腫瘍においてprivate mutationであるCARD11遺伝子SNVが同定された。これらの所見はBAMファイル由来のデータによっても確認された(
図2B; 表4)。
【0049】
【0050】
免疫応答性のPCNSL患者及び異種移植腫瘍サンプルにおけるコピー数変化(copy number alteration; CNA)を調べたところ、2者間で正の相関が認められた(r = 0.91±0.01, 平均値±SEM;
図2F)。PCNSLでこれまでに報告されているCNA [13-15]を評価するため、WES及びMLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)アッセイを行なった。患者8名中の5名(62.5%)でNF-κB経路を阻害するTNFAIP3遺伝子(6q23.3)を含む6q21-23領域の欠失が見つかり、PCNSL患者10名中の7名(70%)で9p21.3(CDKN2A遺伝子)の欠失が見つかったが、9p24.1(PD-L1遺伝子)の増幅と12qの増幅は認められなかった。これらのCNAは異種移植腫瘍において完全に保持されていた。
【0051】
異種移植腫瘍におけるサブクローンの不均一性の進化についても評価した。系統樹解析の結果、MYD88L265P変異及びCD79BY196変異は早期のゲノム変異として生じていることがわかった(
図2G)。一方で、個々のケースで同定された幹クローン及びサブクローンは体細胞変異の多様性が最小限であったが、クローン組成は異種移植腫瘍の確立と継代の過程で動的に変化していた(
図2H)。異常な体細胞超変異(aberrant somatic hypermutation; aSHM)は、変異した場合に全身性のDLBCL及びPCNSLでゲノム不安定性を生じ得る遺伝子を標的とすることができるので(非特許文献4、5、[16])、PCNSL及び遺伝的に不均一なクローンにおいて発がん変異の発生源となり得る。そこで、幹クローン及びサブクローンにおけるaSHMの効果を評価した。我々が過去にPCNSL患者より同定した76のaSHM標的遺伝子(非特許文献5)を用いて調べたところ、aSHM標的遺伝子の変異はサブクローンでは有意に増加していなかった(
図2I)。PIM1、BTG2及びHIST1H1Eの3遺伝子は、aSHMの影響を最も受けやすく、PCNSLにおいて一般的に変異が認められている遺伝子であるため(非特許文献4、5)、これら3遺伝子に着目してさらに解析を行なった。我々のコホートでは、ビボの継代1代目又は2代目で同定されたさらなる変異は、PIM1遺伝子で2.3%(±1.1%、平均値±SEM)、BTG2遺伝子で0%、HIST1H1E遺伝子で0%(カットオフ値未満のパーセンテージも含む)であった。これらの結果は、同所異種移植腫瘍の形成過程でaSHMはロバストに起きているわけではないことを示している。これにより、WESによって同定されるPCNSLでの不均一なゲノム進化はおそらくaSHMの進行によって誘導されるものではない、という結論に達した。
【0052】
3. CNSLにおける過剰な解糖作用は異種移植腫瘍細胞において再現される
PCNSLでは
18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)の取り込みが上昇していることが脳のPET画像診断により明らかにされている[17,18]。FDG取り込みの上昇は、グルコース輸送と解糖が増加していることを意味している。横浜市立大学病院で画像診断を受けたPCNSL患者についてFDG取り込みを評価したところ、FDGの標準取込値(standardized uptake value; SUV)は、対側の白質(SUVmax = 3.5±0.1)と比べてリンパ腫病変部(SUVmax = 14.5±0.8)において有意に高く(P < 0.0001,
図3A)、既報と一致する結果であった。さらに、FDG-PETによると、異種移植モデルを構築できたCNSL患者の腫瘍ではFDG取り込みが高かった(平均SUVmax = 17.8±2.1;
図3B; 表1)。グルコーストランスポーター1(Glut-1)及びヘキソキナーゼ2(HK-2)の発現はFDG取り込みと強い相関を示した。CNSL患者の腫瘍では、正常な大脳皮質と比べて乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)レベルも上昇していた(
図3C)。
【0053】
異種移植腫瘍におけるFDG取り込みの上昇を動物用FDG-PETで検出できるかどうかを調べたところ、予想通り、FDG-PET画像診断及びMR画像診断により対側の正常脳と比べてYML12移植腫瘍(SUVmax = 17.3)でFDG取り込みが高いことがわかった(P < 0.0001,
図3D、3E)。複数の異種移植腫瘍において、偽処置マウス脳と比べてFDG取り込みが有意に増加していた(
図3F)。免疫組織化学検査の結果によると、解糖経路のタンパク質の発現がCNSL異種移植腫瘍においてコントロール脳組織よりも高く(
図3G)、CNSL異種移植腫瘍での過剰な解糖作用が示唆された。解糖系阻害による選択的細胞毒性を調べるため、GLUT1阻害剤であるWZB117とHK-2阻害剤である2-デオキシグルコース(2-DG)を用いて阻害実験を行なったところ、CNSL異種移植腫瘍細胞は正常ヒトアストロサイト(NHA)よりもこれらの阻害剤に対する感受性が高かった(
図3H)。GLUT1遺伝子又はHK2遺伝子をノックダウンすると、PCNSL同所異種移植腫瘍の細胞生存率が低下し、移植マウスの全生存期間が延長した(
図3I-3M)。
【0054】
4. 脳内のPCNSLの進行は古典的NF-κB経路における遺伝的変化により媒介される
これまでの研究により、全身性のDLBCLにおいてMYD88遺伝子及びCD79B遺伝子の変異が古典的NF-κB経路を活性化することが示されている(非特許文献10、11)。そこで、PCNSLにおいてもこれらのゲノム変化が古典的NF-κB経路を介して情報を伝達し解糖を誘導すると仮定し、実験を行なった。予想通り、ウエスタンブロット解析の結果、解糖系及び古典的NF-κB経路のタンパク質の発現は、MYD88変異及びCD79B変異を有する異種移植腫瘍において正常脳組織よりも高かった(
図4A)。
【0055】
PCNSLにおいて古典的NF-κB経路の阻害が解糖系の同時阻害に関連するかどうかを調べるため、MYD88L265P・CD79B変異細胞及びHKBML細胞(MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子が野生型であるPCNSLの培養細胞)にMYD88遺伝子及びCD79B遺伝子のノックダウンを導入したところ、リン酸化p65、p65及び糖分解タンパク質(特にHK-2)の細胞内の発現レベル低下が観察された(
図4B-4D)。さらに、MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子のノックダウンによりビトロでの細胞増殖の阻害が認められ、これらの遺伝子が腫瘍進行の強力なドライバーであることが示唆された(
図4E)。これとは対照的に、MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子のノックダウンはビトロで2-DGへの感受性をリバースした(
図4F)。また、HKBML細胞でMYD88遺伝子をノックダウンすると異種移植されたマウスの全生存期間が延長することも確認された(
図4G)。免疫組織化学検査の結果、MYD88ノックダウン細胞ではコントロール細胞と比べてリン酸化p65、p65及びHK-2の発現レベルが低下していた(
図4H)。NF-κB阻害剤であるBAY11-7082で処理した場合にも、PCNSL異種移植腫瘍細胞において、コントロール細胞と比べてリン酸化p65及びHK-2の発現低下と細胞生存の抑制が確認された(
図4I、4J)。
【0056】
RelA/p65の発現変化が直接的に解糖系に影響するか否かを調べるため、RELA遺伝子ノックダウン細胞を作出した。RELAのノックダウンにより、RelA/p65、HK-2、及び細胞増殖がビトロで抑制された(
図4K-4M)。
【0057】
これらの結果は、NF-κBのRelA/p65-HK-2シグナル伝達軸が免疫応答性のPCNSLの腫瘍増殖の過程で重要な機構的役割を果たしていることを示している。
【0058】
5. 免疫応答性のPCNSLではPin1の活性化がRelA/p65の安定性を誘導し、腫瘍進行を促進する
in vitro培養により異種移植腫瘍の形成能が低下するか否かを調べるため、YML11細胞を培養0日及び培養4日でマウスに移植した。マウスの生存率に差はなく、培養4日のYML11細胞でもリン酸化p65の保持を確認できた。このことは、ビトロで短期間培養しても細胞の異種移植腫瘍の形成能が損なわれないことを示している。対照的に、免疫応答性のYML7及びYML13(いずれもMYD88、CD79Bに変異あり)は、初代培養細胞の生存は確認されたが、マウスで異種移植腫瘍を形成しなかった(
図5A)。従って、同所異種移植腫瘍形成に重大な、RelA/p65の発現を促進するさらなるメカニズムが存在すると考えられる。
【0059】
p65の安定性は発がん活性を促進するペプチジルプロリルイソメラーゼPin1によって制御されていることから[19,20]、異種移植腫瘍を形成可能な患者細胞と形成できない患者細胞との間でPin1の発現レベルに違いがあるかどうかを調べた。PCNSL患者細胞におけるPin1の発現は、リン酸化p65及びp65の発現と同様に、異種移植腫瘍形成性の患者腫瘍細胞(YML1R, YML11, YML12)において高発現していた(
図5B、5C)。また、これらのタンパク質は、in vivo継代した異種移植腫瘍細胞において、偽処置マウス脳よりも高発現していた(
図5D)。Pin1はワールブルク効果を促進することも知られている[21]。興味深いことに、YML16異種移植腫瘍は、in vivo継代1代目の増殖が緩徐であるが、in vivo継代数を重ねると悪性度が高まった(
図5E; 表2-2)。悪性度の上昇と同様に、Pin1、リン酸化p65、p65及びHK-2タンパク質の発現も、YML16のin vivo継代1代目よりも2代目の方が上昇していた(
図5F、5G)。細胞生存率を調べたところ、YML16のin vivo継代2代目の細胞は継代1代目の細胞よりも2-DGに対する感受性が高かった(
図5H)。腫瘍細胞においてPIN1遺伝子をノックダウンすると、リン酸化p65、p65及び解糖系タンパク質の発現が低下し、ビトロでの細胞増殖が阻害され、ビボでの同所異種移植腫瘍の形成が遅くなった(
図5I-5L)。ノックダウンと同様に、Pin1阻害剤であるジュグロンでPCNSL細胞を処理した場合にも、Pin1及びリン酸化p65の発現が低下し、細胞生存率が低下した。これらの結果は、MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子の変異のようなNF-κB経路における遺伝子変化とPin1が協同してRelA/p65-HK-2シグナル伝達軸を増強し、これによりPCNSLの腫瘍進行を促進することを示唆している。
【0060】
6. LMP1及びPin1がEBV陽性PCNSL異種移植腫瘍の形成を促進する
EBV陽性のYML15においては、コピー数変化(CNA)が対応異種移植腫瘍と強く相関した(r = 0.966,
図6A)。また、YML15では、非同義変異数は40個と比較的少なく、MYD88/CD79B遺伝子及びaSHM標的遺伝子の変異は同定されなかった(表4)。このことは、YML15腫瘍細胞が免疫応答性のPCNSL細胞とは異なる特徴的なゲノムプロファイルを有することを意味している。患者腫瘍の非同義変異の80%(32個)が対応異種移植腫瘍においても発見され、共有される非同義変異のVAFはprivate非同義変異のVAFよりも有意に高かった(
図6B)。免疫応答性PCNSLと同様に、YML15の系統樹解析によりサブクローンの不均一性が明らかとなった(
図6C)。
【0061】
latency membrane protein-1 (LMP1) 遺伝子はEBVがコードする主要なオンコジーンであり、EBV陽性リンパ腫においてNF-κB経路を活性化することが報告されている[22]。この報告に一致して、LMP1遺伝子は、本研究で得られたEBV陽性のMYD88/CD79B野生型患者PCNSL細胞(YML5, YML15, YML14)で発現しており、一方でEBV陰性のYML16細胞では発現が検出されなかった(
図6H)。リン酸化p65とPin1の発現レベルは、異種移植腫瘍形成性であるYML15及びYML5において異種移植腫瘍非形成性のYML14よりも高く、免疫応答性のPCNSL腫瘍において観察された結果と同様であった(
図6D、6H、6I)。リン酸化p65、Pin1及び解糖系タンパク質も、EBV陽性PCNSL異種移植腫瘍において高発現しており(
図3G、6J、6K)、免疫応答性のPCNSL異種移植腫瘍で観察されたRelA/p65-HK-2シグナル伝達軸の活性化と同様の結果が得られた。また、EBV陽性PCNSL細胞においてLMP1遺伝子をノックダウンしたところ、古典的NF-κB経路及び解糖系のタンパク質の発現が低下し、細胞生存率が低下し、細胞を同所異種移植したマウスの全生存期間が延長した(
図6L-6O)。YML15及びYML5異種移植片細胞をBAY11-7082で処理すると、古典的NF-κB経路及び解糖経路のタンパク質の発現が抑制され、細胞生存率が低下した(
図6E、6P)。さらに、PIN1ノックダウンとPin1阻害剤(ジュグロン)処理の実験も行なったところ、どちらもYML15及びYML5異種移植片細胞の死亡生存率の低下とリン酸化p65及び解糖系タンパク質の発現低下が観察された(
図6F、6G、6Q、6K)。PIN1遺伝子をノックダウンしたEBV陽性PCNSL細胞を同所異種移植したマウスにおいても、全生存期間の延長が認められた(
図6S)。RELA遺伝子のノックダウンの結果も免疫応答性PCNSL細胞と同様であり、EBV陽性PCNSL細胞においても細胞生存率の低下とリン酸化p65及びHK-2の発現低下が観察された(
図6T-6V)。これらの結果は、LMP1及びPin1の両者によって起こるRelA/p65-HK2シグナル伝達軸の活性化がEBV陽性のPCNSLにおける腫瘍進行に非常に重要であり、PCNSLの異なる病因における機構的な収束を表している。
【0062】
7. RelA/p65-HK-2シグナル伝達軸の不活化はCNSL異種移植モデルの化学療法への応答性と相関する
本研究で構築したPDXモデルが原発腫瘍のMTX化学療法応答性の表現型を模写しているか否かを調べた。2サイクルの高用量MTX単剤療法を実施後、患者11名中の7名でX線画像上の治療への応答性が認められた(完全奏効[CR]+部分奏効[PR];
図7A)。培養したPCNSL異種移植片細胞のMTXへの応答性は、対応する患者において観察されたX線画像上の応答性と正に相関していた(P = 0.02,
図7B、C; 表6)。ビトロで培養したCNSL異種移植片細胞が化学療法に対する患者の臨床反応を反映したことから、当該細胞を用いたビトロの治療試験により患者における治療効果を予測できる可能性がある。
【0063】
【0064】
高用量MTXは標準的な化学療法レジメンであるものの、高用量MTXに対する感受性を調べるバイオマーカーは未だ見い出されていない[23]。MTXはヒトT細胞リンパ腫において古典的NF-κB経路の活性化を抑制することから[24]、MTX感受性のPCNSL細胞において高用量MTXがRelA/p65-HK-2シグナル伝達軸を不活化するという仮説を立てて検証したところ、MTXがMTX感受性細胞においてはリン酸化p65及びHK-2の発現を時間及び用量依存的に抑制するが、MTX耐性細胞においては抑制しないことが判明した(
図7D、7E)。細胞生存率及びリン酸化p65発現の低下は、ロイコボリン処理により回復した。このことは、MTXにより誘導されるリン酸化p65の不活化がオンターゲットの薬効を表示するものであることを示している(
図7F、7G)。臨床応答性と一致して、高用量MTX治療はYML16(MTX感受性)移植モデルの全生存期間を延長したが、YML15(MTX耐性)移植モデルでは生存期間の延長は認められなかった。薬力学的解析の結果、YML16移植モデルでは高用量MTX投与によりリン酸化p65及びHK-2の発現低下とTUNEL陽性細胞率の増加が認められたが(
図7H-7I)、YML15移植モデルでは高用量MTX投与によるこれらの効果は認められず(
図7J-7K)、古典的NF-κB経路及び解糖系の阻害が高用量MTX療法に対する感受性のバイオマーカーになり得ることが示唆された。以上の結果は、CNSLにおいて高用量MTXへの応答性が古典的NF-κB経路の阻害及び過剰な解糖反応と強く相関していることを示している。
【0065】
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