(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】積層ポリイミド系フィルムの製造方法及び積層ポリイミド系フィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20240717BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B29C63/02
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2020180526
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592166137
【氏名又は名称】河村産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】川波 栄治
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓也
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-024998(JP,A)
【文献】特開平07-070335(JP,A)
【文献】特開昭62-140822(JP,A)
【文献】特開2019-018402(JP,A)
【文献】特開2016-183224(JP,A)
【文献】特開2002-234126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00
B29C 65/00
B32B 27/34
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上のポリイミド系フィルムを、接着剤層を介さずに直接積層して製造する積層ポリイミド系フィルムの製造方法であって、以下の工程を全て含む積層ポリイミド系フィルムの製造方法。
(1)ポリイミド系フィルムを準備する工程。
(2)準備した前記ポリイミド系フィルムにプラズマ処理を施す工程。
(3)プラズマ処理を施した前記ポリイミド系フィルムのうち少なくとも1層のポリイミド系フィルムに水を主成分とする水性液体を付着させる工程。
(4)少なくとも1層の前記ポリイミド系フィルムに水性液体を付着させたまま、2層以上の前記ポリイミド系フィルムを、0~80℃の温度で重ね合わせる工程。
(5)重ね合わせた前記ポリイミド系フィルムを、最高到達温度が300℃以上で熱処理を行い、重ね合わせた前記ポリイミド系フィルム
同士を1.0N/cm以上の接着強度になるように接合する工程。
【請求項2】
重ね合わせた前記ポリイミド系フィルムの熱処理を行う工程は、その一部又は全ての工程において、前記ポリイミド系フィルムをロール状に巻き取って行う請求項1に記載の積層ポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項3】
重ね合わせた前記ポリイミド系フィルムをロール状に巻き取って熱処理を行う工程は、その少なくとも一部において、前記ポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きして行う請求項2に記載の積層ポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミド系フィルムとの伴巻きに使用する金属箔は、ステンレス箔である請求項3に記載の積層ポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリイミド系フィルムにおいて表面の任意の10点における平均粗さRz(μm)は、
前記ポリイミド系フィルムにプラズマ処理および前記水性液体を付着する前の段階において、Rz≦0.6である請求項1~4のいずれか一項に記載の積層ポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層ポリイミド系フィルムの製造方法で製造された積層ポリイミド系フィルム。
【請求項7】
厚さは、75μm以上である請求項6に記載の積層ポリイミド系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリイミド系フィルムの製造方法及び積層ポリイミド系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミド等のポリイミド系フィルムは、その優れた耐熱性、信頼性、耐電子線性等の特長が生かされる電子分野や航空宇宙分野等の幅広い用途に応用されている。ポリイミド系フィルムは通常ポリイミド系樹脂を溶媒に溶解させたポリイミド系樹脂ワニスを製膜して製造されるが、そのため、厚いフィルムを得るのが困難という問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するため、特許文献1には、プラズマ処理を施した少なくとも2枚のポリイミドフィルムを重ねて熱圧着して得られるポリイミドフィルム積層体及びその製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されたポリイミドフィルム積層体はシート状の積層体を前提とし長尺品を前提としておらず、また熱圧着の温度も200℃以上と高い温度を必要としている。そのため、熱圧着のために特別な設備が必要となる上に熱圧着の際のポリイミドフィルム積層体へのダメージが問題となることがあった。
【0004】
特許文献2には、2枚以上の非熱可塑性ポリイミドフィルムを熱接着させて得られる5m以上の長さのロール状ポリイミドフィルム及びその製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されたロール状ポリイミドフィルムを得るためには、150℃以上の高温でのラミネートとそれに続く熱処理を行う必要がある。そのため、150℃以上の温度で熱接着を行うために特別な熱ラミネート設備が必要となる上、そのように高温で熱ラミネートを行うと、ポリイミドフィルムのうねりやしわ、折れ等の問題が起こり、平坦なポリイミドフィルムを得難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-234126号公報
【文献】特開2016-183224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な工程で厚いポリイミド系フィルムが得られる積層ポリイミド系フィルムの製造方法、及びその方法により得られた積層ポリイミド系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、プラズマ処理を施したポリイミド系フィルムに水を付着させた後、2層以上のポリイミド系フィルムを重ね合わせ、最高到達温度300℃以上で熱処理を行うことにより、ポリイミド系フィルム同士が強固に接合することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す積層ポリイミド系フィルムの製造方法及び積層ポリイミド系フィルムが提供される。
【0009】
本発明の積層ポリイミド系フィルムの製造方法は、2層以上のポリイミド系フィルムを、接着剤層を介さずに直接積層して製造する積層ポリイミド系フィルムの製造方法であって、以下の工程を全て含む。
(1)ポリイミド系フィルムを準備する工程。
(2)準備したポリイミド系フィルムにプラズマ処理を施す工程。
(3)プラズマ処理を施したポリイミド系フィルムのうち少なくとも1層のポリイミド系フィルムに水を主成分とする水性液体を付着させる工程。
(4)少なくとも1層のポリイミド系フィルムに水性液体を付着させたまま、2層以上のポリイミド系フィルムを、0~80℃の温度で重ね合わせる工程。
(5)重ね合わせたポリイミド系フィルムを、最高到達温度が300℃以上で熱処理を行い、重ね合わせたポリイミド系フィルム同士を1.0N/cm以上の接着強度になるように接合させる工程。
本発明の積層ポリイミド系フィルムは、上記のいずれかの方法で製造される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、積層ポリイミド系フィルムの製造方法の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
一実施形態による積層ポリイミド系フィルムの製造方法は、プラズマ処理を施したポリイミド系フィルムに水を付着させた後、80℃以下の温度で2層以上のポリイミド系フィルムに重ね合わせ、さらに最高到達温度が300℃以上になるように熱処理を行うことでポリイミド系フィルムを1.0N/cm以上の接着強度になるように強固に接合させるというものである。
【0012】
一実施形態で用いるポリイミド系フィルムとは、その構造中にイミド基を含むポリマーのフィルムである。ポリイミド系フィルムは、例えばポリイミド、ポリアミドアミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0013】
一実施形態で用いるポリイミド系フィルムは、その表面が平滑であるほど、積層されたポリイミド系フィルムである積層ポリイミド系フィルムが強固に接合される傾向にある。具体的には、本実施形態のポリイミド系フィルムの場合、表面の任意の10点における平均粗さRz(μm)は、Rz≦0.6であることが好ましい。特に、本実施形態のポリイミド系フィルムの場合、平均粗さRz(μm)は、Rz≦0.5であることがより好ましい。
【0014】
上記の用意されたポリイミド系フィルムは、プラズマ処理が施される。プラズマ処理の方法については、従来公知の方法が適用可能であり、例えば大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理等のプラズマ処理が適用可能である。そして、本実施形態の積層ポリイミド系フィルムの製造方法の場合、長尺の積層ポリイミド系フィルムを製造するために、ロールツーロール(roll - to -roll)方式でのプラズマ処理を施すことが好ましい。特に、最終的に得られる積層ポリイミド系フィルムの接着力をより強固なものとするという観点から、ロールツーロールの真空プラズマ処理を施すことがより好ましい。
【0015】
プラズマ処理に用いるプラズマガスとしては、特に限定されないが、例えば酸素、窒素、アルゴン、水素、アンモニア、二酸化炭素、メタン、4フッ化メタン、水蒸気やそれらの混合ガス等が挙げられる。
【0016】
プラズマ処理は、ポリイミド系フィルムの片面にのみ行ってもよく、両面に行ってもよい。但し、他のポリイミド系フィルムと接合する場合、少なくとも他のポリイミド系フィルムと対向する面にはプラズマ処理が施されている必要がある。例えば2層のポリイミド系フィルムを積層する場合、2層それぞれのポリイミド系フィルムについて、少なくとも他方と対向する面にはプラズマ処理が施される。3層のポリイミド系フィルムを同時に積層する場合、1層目及び3層目の2つの層については、少なくともそれぞれ2層目のポリイミド系フィルムと対向する面にプラズマ処理が施される。そして、2層目のポリイミド系フィルムは、その両面にプラズマ処理が施される。
【0017】
本実施形態の場合、プラズマ処理を施したポリイミド系フィルムは、表面に水性液体が付着される。ポリイミド系フィルムに水性液体を均一に付着させるため、水性液体はポリイミド系フィルムの表面に塗布、又はポリイミド系フィルムは水性液体に浸漬される。これにより、水性液体は、ポリイミド系フィルムに付着させられる。ここで、水性液体とは、水を主成分とする液体であり、水単体、又は水と混和する低級アルコール、ジオール類、ケトン等の他の液体とからなる混合液体であり、水の含有率が50重量%以上のものをいう。また、水性液体のポリイミド系フィルムへの濡れ性を向上するために、水性液体には界面活性剤や消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
【0018】
ポリイミド系フィルムの表面に水性液体を付着させる場合、その塗布方法は、任意である。水性液体は、例えば滴下方式、スプレー方式、給水ローラー方式等の方式で塗布することができる。
【0019】
次に、水性液体を付着させたポリイミド系フィルムは、他の1層以上のポリイミド系フィルムと重ね合わされる。このとき、2層以上のポリイミド系フィルムは、0~80℃、好ましくは10~70℃、さらに好ましくは10~50℃の温度で重ね合わせる。重ね合わせる温度が0℃未満の場合、ポリイミド系フィルムに付着させた水性液体が凝固するという問題が生じる。また、重ね合わせる温度が80℃を超える場合は、ポリイミド系フィルムに付着した水性液体の揮発が顕著となり、製造される積層ポリイミド系フィルムのフィルム間の接着力が低下するという問題が生じるとともに、フィルム間で気泡が生じるおそれがある。
【0020】
ポリイミド系フィルムを重ね合わせる方法は、任意の方法を使用可能である。例えば、2層以上のロール状のポリイミド系フィルムの巻き出し装置、送り装置及び巻取り装置を備えた装置を用いて、巻き出しと巻取りとの間で少なくとも1層のポリイミド系フィルムに水性液体を付着させる。そして、その後に水性液体を付着させたポリイミド系フィルムを含む2層以上のポリイミド系フィルムを巻取り部で巻取りコアに巻き取りながら重ね合わせる方法を用いることができる。また、例えば、加圧式のロールラミネータを用いて2層以上のポリイミド系フィルムを重ね合わせた後、巻取りコアに巻き取る方法等を用いてもよい。
【0021】
次に、重ね合わせた2層以上のポリイミド系フィルムに対し熱処理を行う。2層以上のポリイミド系フィルムを互いに強固に接合させて積層ポリイミド系フィルムを得るために、熱処理は最高到達温度が300℃以上になるように行う必要がある。この場合、熱処理方法や熱処理の温度履歴は、任意に設定することが可能である。
【0022】
この場合、金属等の耐熱性巻取りコアに巻き取った2層以上のポリイミド系フィルムを耐熱性コアに巻き取ったまま熱処理を行うことが好ましい。このように耐熱性コアに積層したポリイミド系フィルムを巻き取った状態で熱処理を行うことにより、接合すべきポリイミド系フィルムは界面における接合が良好に行われる。また、この場合、積層するポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きにして熱処理を行うことが好ましい。このようにポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きにすることにより、熱処理の際のポリイミド系フィルムへの熱伝達が向上し、接合しないポリイミド系フィルムの界面の保護が図られる。このとき、ポリイミド系フィルムと伴巻きする金属箔は、耐熱性、耐腐食性等の観点からステンレス箔を用いることが好ましい。
【0023】
重ね合わせた2層以上のポリイミド系フィルムは、最高到達温度が300℃以上で熱処理される。これにより、ポリイミド系フィルムが互いに1.0N/cm以上の接合強度で強固に接着した積層ポリイミド系フィルムが得られる。この場合、熱処理の方法としては以下のような方法が例示される。
【0024】
(1)少なくとも1層のポリイミド系フィルムに、水性液体を付着させた2層以上の予めプラズマ処理を施したポリイミド系フィルムを、耐熱性コアに金属箔と伴巻きする。そして、ポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きにして巻き取った状態でオーブンに収容し、昇温させながら室温から300℃以上の温度まで昇温させて熱処理する。
(2)少なくとも1層のポリイミド系フィルムに、水性液体を付着させた2層以上の予めプラズマ処理を施したポリイミド系フィルムを、耐熱性コアに金属箔と伴巻きする。そして、ポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きにして巻き取った状態でオーブンに収容し、昇温させながら150℃程度の温度になるまで熱処理して仮接合を行う。さらに、その後、金属箔を巻きほどいて取り除き、仮接合したポリイミド系フィルムを再度耐熱性コアに巻き取って、最高到達温度が300℃以上になるように熱処理する。
(3)少なくとも1層のポリイミド系フィルムに、水性液体を付着させた2層以上の予めプラズマ処理を施したポリイミド系フィルムを、耐熱性コアに金属箔と伴巻きする。そして、ポリイミド系フィルムと金属箔とを伴巻きにして巻き取った状態でオーブンに収容し、昇温させながら150℃程度の温度になるまで熱処理して仮接合を行う。さらに、その後、仮接合したポリイミド系フィルムを、ロールツーロールの熱処理装置で300℃以上の温度になるように熱処理する。
【0025】
一実施形態の積層ポリイミド系フィルムの製造方法によると、接着剤を介することなく長尺のポリイミド系フィルム同士を強固に接合することが可能となり、75μm以上の厚膜のポリイミド系フィルムを効率よく生産することができる。そして、本実施形態の積層ポリイミド系フィルムの製造方法により得られた積層ポリイミド系フィルムは、真空装置のガスケット、フレキシブルプリント配線板の補強板、真空ガラスのピラー等幅広い用途に利用することができる。
【0026】
以下、本実施形態のポリイミド系フィルムを実施例に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施例は、理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
<ポリイミド系フィルムの表面粗さ>
ポリイミド系フィルムの表面粗さRzは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡VK-9510)を用いて、JIS B0601に基づき、スキャン長さMD:210μm、TD:280μm、カットオフ値0.25で測定して求めた。
【0028】
<積層ポリイミド系フィルムの層間接着力>
各実施例又は比較例で作成された積層ポリイミド系フィルムは、10mm幅×150mm長に切り出した。そして、そのうち切り出した積層ポリイミド系フィルムの一部を約50mmの長さで剥がし、層間接着力測定用サンプルとした。次いで、引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAGS-J)を用いて、90°剥離法により、引き剥がし速度50mm/分で積層ポリイミド系フィルムを引き剥がし、積層ポリイミド系フィルムの層間の接着力を測定した。
【0029】
(実施例1)
厚さ38μmのポリイミド系フィルム(東洋紡株式会社製ゼノマックス)を準備した。本ポリイミド系フィルムの任意の10点における表面粗さはRz=0.28μmであった。
【0030】
幅500mm×長さ20mのポリイミド系フィルムを2本準備し、それぞれのフィルムの片面に、ロールツーロールの真空プラズマ装置を使用し、プラズマガスとして二酸化炭素を20Pa導入してグロー放電によりプラズマ処理を施した。
【0031】
プラズマ処理を施したポリイミド系フィルムのプラズマ処理面に、スプレー方式でイオン交換水を塗布して水性液体として水を付着させた。続けて、室温において、プラズマ処理面が互いに重なり合うように別途準備した厚さ100μmで幅500mmのステンレス箔と伴巻きしながらステンレス製の巻取りコアに巻き取った。このプロセスにより、2層のポリイミド系フィルムは、フィルムの相互間に水を含む状態でプラズマ処理面同士が重ね合わされ、ステンレス箔と伴巻きされつつステレンス製の巻取りコアに巻き取られる。
【0032】
次に、ステンレス製の巻取りコアにステンレス箔とともに巻き取られた2層のポリイミド系フィルムは、循環式熱風オーブンにセットした。巻き取られた2層のポリイミド系フィルムは、この循環式熱風オーブンにおいて熱処理を行った。熱処理は、室温から360℃まで10℃/分の速度で昇温し、360℃に達したところで1時間保持した。これにより、2層のポリイミドフィルム同士を強固に接合させ、積層ポリイミドフィルムとした。その後、室温まで冷却した後、積層ポリイミド系フィルムをオーブンから取り出し、巻替え装置により巻き替えて、ステンレス箔と積層ポリイミドフィルムとに分離し、厚さ76μmの長尺の積層ポリイミド系フィルムとした。
【0033】
この「実施例1」により得られた積層ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系フィルム間の接着力が3.0N/cmと強固に接合されていた。
【0034】
(実施例2)
ポリイミド系フィルムに付着させる水性液体を、イオン交換水95%、エタノール5%の混合液体に変更した以外は実施例1と同様に行って、厚さ76μmの積層ポリイミド系フィルムを作成した。
【0035】
この「実施例2」により得られた積層ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系フィルム間の接着力が2.8N/cmと強固に接合されていた。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同様に、厚さ38μmのポリイミド系フィルムに、プラズマ処理の実施、イオン交換水の付着、厚さ100μmのステンレス箔と伴巻きしながらのステンレス製巻取りコアへの巻取り行い、2層のポリイミド系フィルムのプラズマ処理面同士を重ね合わせた。
【0037】
次に、ステンレス製の巻取りコアにステンレス箔とともに巻き取られた2層のポリイミド系フィルムは、循環式熱風オーブンにセットした。巻き取られた2層のポリイミド系フィルムは、この循環式熱風オーブンにおいて熱処理を行った。熱処理は、室温から130℃まで30分かけて昇温し、130℃に達したところで2時間保持した。これにより、2層のポリイミドフィルムを仮接合した。その後、室温まで冷却した後、仮接合した積層ポリイミド系フィルムをオーブンから取り出した。さらに、仮接合した2層のポリイミドフィルムは、遠赤外線炉を備えたロールツーロールの熱処理装置により熱処理を行った。この熱処理は、400℃で2分間の環境を提供した。これにより、2層のポリイミドフィルム同士を強固に接合させ、厚さ76μmの長尺の積層ポリイミドフィルムとした。
【0038】
この「実施例3」により得られた積層ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム間の接着力が3.1N/cmと強固に接合されていた。
【0039】
(実施例4)
厚さ38μmのポリイミド系フィルムの代わりに、別の種類の厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製カプトン200H、10点平均粗さRz=0.38μm)を用いた以外は実施例1と同様に行って、厚さ100μmの積層ポリイミドフィルムを作成した。
【0040】
「実施例4」により得られた積層ポリイミドフィルムは、ポリイミド系フィルム間の接着力が2.9N/cmと強固に接合されていた。
【0041】
(実施例5)
実施例1で用いた幅500mm×長さ20m、厚さ38μmのポリイミド系フィルムを3本準備した。そのうち、表面側及び裏面側の2本のポリイミド系フィルムについては片面のみ、挟み込まれる1本のポリイミド系フィルムについては両面に実施例1と同様の方法及び条件にしたがいプラズマ処理を施した。
【0042】
プラズマ処理を施した各ポリイミド系フィルムのプラズマ処理面に、水性液体としてイオン交換水を付着させた。そして、両面にプラズマ処理を施したポリイミド系フィルムを中間層とし、片面にのみプラズマ処理を施したポリイミド系フィルムのプラズマ処理面が中間層のポリイミドフィルムのプラズマ処理面と接するようにステンレス製の巻取りコアに巻取りコアに実施例1で用いた厚さ100μmのステンレス箔とともに伴巻きした。
【0043】
次に、実施例1と同様の方法で熱処理を行い、3層のポリイミドフィルムが接合された厚さ114μmの積層ポリイミド系フィルムを作成した。
【0044】
この「実施例5」により得られた積層ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム間の接着力がいずれも3.0N/cmと強固に接合していた。
【0045】
(実施例6)
厚さ38μmのポリイミド系フィルムの代わりに厚さ50μmの別の種類のポリイミド系フィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックス50S、10点表面粗さRz=0.29μm)を用いた以外は実施例1と同様に行って、2層のポリイミド系フィルムが積層された厚さ100μmの積層ポリイミド系フィルムを作成した。
【0046】
「実施例6」により得られた積層ポリイミド系フィルムは、ポリイミド系フィルム間の接着力が1.8N/cmと強固に接合していた。
【0047】
(比較例1)
比較例1では、ポリイミド系フィルムにプラズマ処理を施さなかった。それ以外は実施例1と同様の条件で厚さ76μmの積層ポリイミド系フィルムを作成した。比較例1では、ポリイミド系フィルムにプラズマ処理を行わなかったため、積層ポリイミド系フィルムのポリイミド系フィルム間の接着力は0.1N/cm未満と低く、ポリイミド系フィルム間で容易に剥離してしまった。
【0048】
(比較例2)
比較例2では、ポリイミド系フィルムに水性液体を付着させなかった。それ以外は実施例1と同様の条件で厚さ76μmの積層ポリイミド系フィルムを作成した。比較例2では、ポリイミド系フィルムに水性液体を付着させなかったため、積層ポリイミド系フィルムのポリイミド系フィルム間の接着力は0.1N/cm未満と低く、ポリイミド系フィルム間で容易に剥離してしまった。