(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】吸着保持ユニット及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 35/00 20060101AFI20240717BHJP
B65G 47/91 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B65G35/00 B
B65G47/91 A
(21)【出願番号】P 2020199392
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520450673
【氏名又は名称】UTM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝口 兼太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 良祐
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2002733(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0354723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0084157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/00
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行なレールに沿って移動可能な被搬送体に対し一体的に設けられる吸着保持ユニットであって、
前記一対のレールの各上方部位に各組で配置され、かつ、その上面をワークの載置面とするよう前記一対のレールの延在方向に沿う一対の突出部と、
前記載置面に開放して真空圧力によって前記ワークを保持する吸着孔と、
前記吸着孔に連通して設けられて前記真空圧力を保持/解除させるバルブと、
を備え
、
前記バルブは、
前記各組の一対の突出部に対して前記一対のレールよりも外側に位置し、かつ、前記被搬送体が搬送方向上流側から所定位置に達した際に前記載置面にワークが載置されている場合に、前記吸着孔に対する前記真空圧力を解除する真空破壊ボタンを備える、
ことを特徴とする吸着保持ユニット。
【請求項2】
前記
突出部は、
前記被搬送体が搬送方向上流側から所定位置に達した際に前記
載置面にワークが載置されていない場合に、前記
載置面にワークが載置されると同時に前記吸着孔に対する前記真空圧力を発生させるノズル部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸着保持ユニット。
【請求項3】
請求項
1に記載の吸着保持ユニットを用い、
前記
ワークが所定位置に搬送された吸着保持ユニットに対して、当該吸着保持ユニットの前記真空破壊ボタンを操作して真空破壊させる操作部と、
真空破壊後に前記
載置面に載置されたワークを取り出すハンド部と、
を備える、
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項
2に記載の吸着保持ユニットを用い、
前記
ワークが所定位置に搬送された吸着保持ユニットに対して、当該吸着保持ユニットの前記
載置面にワークを載置するハンド部と、
ワーク載置後に前記ノズル部に接続されて前記吸着孔に対する前記真空圧力を発生させるバキューム部と、
を備える、
ことを特徴とする搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着保持ユニット及び搬送システムに係わり、特に、ワークを真空圧力によって吸着して搬送する吸着保持ユニット及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、搬送手段によって搬送される被搬送体を用い、治具だけでは固定することが困難な板状又は薄肉のワーク(金属板の他、フィルムや軽量品等を含む)を真空圧力によって吸着して搬送する吸着保持ユニットを備えた搬送システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、真空圧力は、ワークステージに固定の支柱等の内部に配管による真空吸着経路を構成し、ロータリーポンプ等の真空供給装置と接続することによって、ワークをワーク吸着板で保持した状態の被搬送体をレールに沿って目的通りの姿勢で移動可能としている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-024297号公報
【文献】特開2016-001271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した搬送システムにあっては、個々の被搬送体でのワークの吸着保持が必要となるが、特許文献2に示すように、移動体に対して固定の配管を用いているため、真空状態とする機能及びその真空圧力を保持する機能としてのエア流量制約が低く、搬送中のワークが不安定であり、かつ、真空圧力を長期間(例えば、時間単位)保持することが困難であるという問題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、個々の被搬送体に真空状態とする機能及びその真空圧力を保持/解除するバルブ機能を配置することによってエア流量制約を向上させ、ワークを安定して吸着保持したまま真空圧力を長期間保持することができる吸着保持ユニット及び搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、一対の平行なレールに沿って移動可能な被搬送体に対し一体的に設けられる吸着保持ユニットであって、前記一対のレールの各上方部位に各組で配置され、かつ、その上面をワークの載置面とするよう前記一対のレールの延在方向に沿う一対の突出部と、前記載置面に開放して真空圧力によって前記ワークを保持する吸着孔と、前記吸着孔に連通して設けられて前記真空圧力を保持/解除させるバルブと、を備え、前記バルブは、前記各組の一対の突出部に対して前記一対のレールよりも外側に位置し、かつ、前記被搬送体が搬送方向上流側から所定位置に達した際に前記載置面にワークが載置されている場合に、前記吸着孔に対する前記真空圧力を解除する真空破壊ボタンを備える、ものである。
【0008】
吸着保持ユニットは搬送手段によって搬送される被搬送体に対し一体的に設けられており、その各吸着保持ユニットにワークの載置部が設けられている。
【0009】
吸着保持ユニットの載置部には、真空圧力によってワークを保持する吸着孔が載置面に開放して設けられている。
【0010】
また、吸着保持ユニットには、真空圧力を保持/解除させるバルブが吸着孔に連通して設けられている。
【0011】
これにより、個々の被搬送体において、吸着孔によるワーク保持のために真空状態とする機能と、その吸着孔の真空圧力を保持/解除するバルブの機能と、を具備させることによって、エア流量制約を向上させ、ワークを安定して吸着保持したまま真空圧力を今までの分単位から時間単位へと長期間保持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、個々の被搬送体に真空状態とする機能及びその真空圧力を保持/解除するバルブ機能を配置することによってエア流量制約を向上させ、ワークを安定して吸着保持したまま真空状態を長期間保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】搬送システムの一例を示す概略の構成図である。
【
図2】搬送システムの要部を示し、(A)はワーク吸着前の要部の斜視図、(B)はワーク吸着後の要部の斜視図である。
【
図3】搬送システムの要部を示し、ワーク吸着後の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る吸着保持ユニット及び搬送システムについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1において、搬送システム1は、紙面の奥行方向に平行に配置された一対のレール2と、このレール2に沿って移動可能な被搬送体としてのスライダ3と、スライダ3に一体的に設けられた吸着保持ユニット10と、搬送前又は搬送後の薄肉平板状のワークW1,W2を積載したワーク積載台4と、これらワークW1,W2を吸着保持ユニット10とワーク積載台4との間で受け渡しするワーク移送ロボット20と、を備える。
【0016】
なお、ワーク移送ロボット20には、例えば、架台21に設けられたスイングアーム22に揺動可能な昇降装置23をさらに設け、この昇降装置23にワークW1,W2を保持/移送するロボットアーム24を昇降可能に備えたものなど、基本構成は公知のものを用いることができる。
【0017】
なお、
図1に示すワーク積載台4に積載したワークW1,W2のうち、ワークW1は吸着保持ユニット10によって既に搬送された後のもの、ワークW2は吸着保持ユニット10によってこれから搬送される前のもの、として説明する。
【0018】
スライダ3は、一対のレール2に保持されて図示しないモータ等の駆動手段を備えた搬送手段によって搬送されるスライドベース部31と、スライドベース部31の上面に固定のベース部32と、ベース部32の四隅付近から立ち上がる脚部33と、を備える。
【0019】
図2及び
図3に示すように、吸着保持ユニット10は、脚部33の上端面に載置状態で固定された基台部11と、基台部11の上面11aから突出する複数(この例では一対二組)の軸状突起から構成された突出部12と、突出部12の上端面を載置面12aとしてこの載置面12aに開放する吸着孔13と、基台部11の上面11aに開放する貫通孔状のノズル部14と、吸着孔13に連通するバルブ40と、を備える。
【0020】
なお、本実施の形態において、基台部11と突出部12とは載置部を構成しており、その載置部に対して突出部12を一対のレール2の各上方部位に各一対の計二組で配置している。これに伴い、これらに合わせてノズル部14とバルブ40とをレール2の延在方向に沿って逆向き方向に配置し、同時に2枚のワークW1又はワークW2、或いは、ワークW1とワークW2、を搬送するようになっている。
【0021】
図1及び
図2において、バルブ40は、金属製の本体41と、本体41の内部を貫通して本体41から図示上下端を突出させて軸線方向に沿って移動可能に支持された弁軸42と、本体41に固定されて本体41を基台部11に固定するためのブラケット43と、本体41の内部に形成された負圧側ポート部(図示せず)に接続された接続接手44と、本体41の内部に形成された正圧側ポート部(図示せず)に接続されたマフラー45と、弁軸42の上端に設けられた真空破壊ボタン46と、を備える。
【0022】
なお、詳細な図示は省略するが、負圧側ポート部と正圧側ポート部とは、本体41の内部において、例えば、弁軸42の貫通穴(図示せず)を利用して連通されており、この貫通穴を介して全体として断面構造で折り返し状態の連通経路を形成している。
【0023】
また、弁軸42は、例えば、本体41の内部において貫通穴の正圧側ポート部との連通部分を開閉する弁体(図示せず)を備え、常時はスプリング(図示せず)の付勢によって閉弁し、スプリングの付勢に抗して真空破壊ボタン46が押下されると弁軸42も下方に変位して開弁するようになっている。
【0024】
本実施の形態において、ロボットアーム24は、
図1に示すように、搬送手段によって所定位置に搬送された吸着保持ユニット10に対して、当該吸着保持ユニット10の真空破壊ボタン46を操作して真空破壊させる操作部25と、突出部12に載置されたワークW1を取り出し、かつ、突出部12にワークW2を載置するハンド部26と、ワークW2の載置後にノズル部14に接続されて吸着孔13に対する真空圧力を発生させるバキューム部27と、を具備する。
【0025】
吸着孔13、ノズル部14、負圧側ポート部(接続接手44)は、基台部11の下方に設けられて空気の脈動を平滑化し急速な空気圧の低下を防ぐ空気圧タンク47を介して図示しない配管によって接続されている。
【0026】
このような基本構成において、本実施の形態に係る吸着保持ユニット10及び搬送システム1は、個々のスライダ3の吸着保持ユニット10に、ワークW1,W2を保持するために真空状態とする機能及びその真空圧力を保持/解除するバルブ機能を配置することによってエア流量制約を向上させ、ワークW1,W2を安定して吸着保持したまま真空状態を長期間保持することにある。
【0027】
すなわち、搬送手段によって搬送されるスライダ3に対し一体的に設けられる吸着保持ユニット10は、ワークW1,W2が載置される突出部12と、突出部12の載置面12aに開放して真空圧力によってワークW1,W2を保持する吸着孔13と、吸着孔13に連通して設けられて真空圧力を保持/解除させるバルブ40と、を備える。
【0028】
バルブ40には、真空破壊弁が用いられている。バルブ40は、スライダ3が搬送方向上流側から所定位置に達した際に突出部12にワークW1が載置されている場合に、吸着孔13に対する真空圧力を解除する真空破壊ボタン46を備える。
【0029】
突出部12は、スライダ3が搬送方向上流側から所定位置に達した際に突出部12にワークW2が載置されていない場合に、突出部12にワークW2が載置されると同時に吸着孔13に対する真空圧力を発生させるノズル部14と、を備える。
【0030】
次に、搬送システム1及び吸着保持ユニット10における具体的な作用を説明する。
【0031】
(ワークW1が載置されて搬送)
図1に示す紙面右側の搬送方向上流側から吸着保持ユニット10にワークW1が搬送され、所定位置に達すると、搬送手段によって吸着保持ユニット10の搬送が一時停止され、ロボットアーム24が待機位置からワークW1の上方位置にまで移動される。
【0032】
そして、昇降装置23の駆動によってロボットアーム24が下降すると、操作部25が真空破壊ボタン46を押下すると同時にバルブ40が開弁して吸着孔13が真空破壊される。
【0033】
この真空破壊により、ロボットアーム24のハンド部26が載置部としての載置面12aに載置されたワークW1を取り出し、ワーク積載台4の所定位置にワークW1を積載する。
【0034】
また、ハンド部26が載置面12aからワークW1を取り出すと、搬送手段によって吸着保持ユニット10が搬送方向下流側へと搬送され、以降、この搬送・一次停止・ワーク取り出し・搬送工程が順次実行される。
【0035】
(ワークW2を載置して搬送)
図1に示す紙面右側の搬送方向上流側から空の吸着保持ユニット10が搬送され、所定位置に達すると、搬送手段によって吸着保持ユニット10の搬送が一時停止され、ワーク積載台4の所定位置に積載されたワークW2をハンド部26で保持したロボットアーム24が待機位置から載置部としての載置面12aの上方位置にまで移動される。
【0036】
そして、昇降装置23の駆動によってロボットアーム24が下降し、ロボットアーム24のハンド部26が載置面12aにワークW2を載置すると同時にバキューム部27の先端がノズル部14の孔内に侵入し、バルブ40の閉弁とともに吸着孔13が真空状態とされる。
【0037】
この真空状態により、ロボットアーム24のハンド部26からワークW2が離脱し、再び昇降装置23の駆動によってロボットアーム24が上昇するとともに載置部としての載置面12aの上方位置から待機位置にまで移動される。
【0038】
また、ハンド部26が載置面12aにワークW2を載置すると、搬送手段によって吸着保持ユニット10が搬送方向下流側へと搬送され、以降、この搬送・一次停止・ワーク載置・搬送工程が順次実行される。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、上記実施の形態では、基台部11と突出部12とで載置部を構成するとともに、その載置部に対して突出部12を各一対二組で配置し、これらに合わせてノズル部14とバルブ40とをレール2の延在方向に沿って逆向き方向に配置し、同時に2枚のワークW1又はワークW2、或いは、ワークW1とワークW2、を搬送する場合で説明しているが、例えば、ワークW1,W2の種類や大きさ等に応じて、その突出部12、ノズル部14、バルブ40の設置数やレイアウト等は任意に変更可能である。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。したがって、これらの変更や修正、組み合わせなどの後の技術も、当然に本発明の技術的思想の範囲に属するものである。
【0042】
具体的には、ワーク移送ロボット20のロボットアーム24に操作部25及びバキューム部27を備えたシステム構成を例示したが、操作部25及びバキューム部27をワーク移送ロボット20又はロボットアーム24とは別の独立した機構としてライン上に配置したものであってもよい。
【0043】
同様に、一つのロボットアーム24でワークW1,W2の取り出し及び載置を可能とせず、独立したワーク取り出し用のロボットアーム及びワーク載置用のアームを配置してワークW1,W2の取り出し及び載置を可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明に係る吸着保持ユニット及び搬送システムは、個々の被搬送体に真空状態とする機能及びその真空圧力を保持/解除するバルブ機能を配置することによってエア流量制約を向上させ、ワークを安定して吸着保持したまま真空状態を長期間保持することができるという効果を有し、ワークを真空圧力によって吸着して搬送する吸着保持ユニット及び搬送システム全般に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 搬送システム
3 スライダ(被搬送体)
10 吸着保持ユニット
11 基台部(載置部)
11a 上面
12 突出部(載置部)
12a 載置面
13 吸着孔
14 ノズル部
20 ワーク移送ロボット
24 ロボットアーム
25 操作部
26 ハンド部
27 バキューム部
40 バルブ
41 本体
42 弁軸
43 ブラケット
44 接続接手
45 マフラー
46 真空破壊ボタン
47 空気圧タンク
W1 ワーク
W2 ワーク