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特許7521816プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
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  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20240717BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12M1/00 A
C12N15/11 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021535462
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029441
(87)【国際公開番号】W WO2021020561
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019140851
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 奈保子
(72)【発明者】
【氏名】中本 航介
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 康明
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/113709(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172394(WO,A1)
【文献】OZAKI, H. et al.,Post-synthetic functionalization of oligodeoxyribonucleotides at the 2'-position,Tetrahedron Letters,2001年,Vol. 42,P. 677-680
【文献】HAMM, M. L. and PICCIRILLI, J. A.,Synthesis and Characterization of Oligonucleotides Containing 2'-S,3'-O-Cyclic Phosphorothiolate Termini,J. Org. Chem.,1999年,Vol. 64,P. 5700-5704
【文献】DANTZMAN, C. L. and KIESSLING, L. L.,Reactivity of a 2’-Thio Nucleotide Analog,J. Am. Chem. Soc.,1996年,Vol. 118,P. 11715-11719
【文献】村瀬裕貴 ほか,ゲノム合成のためのDNAアセンブリ法の開発,日本化学会春季年会講演予稿集,2020年03月05日,Vol. 100th,Page. ROMBUNNO.1E6-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有し、分解性保護基R が下記式(2A)で示される光分解性保護基、又は下記式(2B)で示されるフッ化物分解性保護基であることを特徴とするプライマー。
【化1】

(ここで、Aは-S-、-S-S-、又は-Se-を示し、Bは塩基を示し、Rは分解性保護基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)
【化2】

(ここで、A は炭素数1~3のアルキレン基を示し、A は炭素数1~3のアルキレン基を示す。*はA との結合手を意味する。)
【化3】

(ここで、A は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R ~R は直鎖又は分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基を示し、R ~R は互いに同一であっても異なってもよい。*はA との結合手を意味する。)
【請求項2】
前記Rが下記式(3A)で示される2-ニトロベンジルオキシメチル基であることを特徴とする請求項に記載のプライマー。
【化4】
【請求項3】
前記Rが下記式(3B)で示されるトリイソプロピルシリルオキシメチル基であることを特徴とする請求項に記載のプライマー。
【化5】
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造装置であって、
鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、
前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、
前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅手段と、
前記二本鎖DNAの前記3’末端をクレノウフラグメントにより平滑末端とする平滑化手段と、
前記Rを脱保護して前記式(1)の構造部分でDNAを切断し、3’末端が突出した接着末端を形成する脱保護切断手段と、
を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造方法であって、
鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、を準備する準備工程と、
前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅工程と、
前記二本鎖DNAの前記3’末端をクレノウフラグメントにより平滑末端とする平滑化工程と、
前記Rを脱保護して前記式(1)の構造部分でDNAを切断し、3’末端が突出した接着末端を形成する脱保護切断工程と、
を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造方法。
【請求項6】
前記Rが前記式(2A)で示される光分解性保護基であり、脱保護切断工程は光照射により前記Rを脱保護することを特徴とする請求項に記載の二本鎖DNAの製造方法。
【請求項7】
前記Rが前記式(2B)で示されるフッ化物分解性保護基であり、脱保護切断工程はフッ化物により前記Rを脱保護することを特徴とする請求項に記載の二本鎖DNAの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学などの分野では、遺伝子組み換えや形質転換などを行うために、標的DNAをホストに組み込んだベクターが用いられている。一般に、標的DNAは、量が少ない場合はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅して使用される。PCRでは、標的DNA配列を含むテンプレートDNAを使用し、これに相補的に結合するプライマーを用いて熱変性とアニーリングを複数サイクル繰り返すことでテンプレートDNAを増幅している。
【0003】
PCRで増幅されたテンプレートDNAの増幅産物は、そのままでは平滑末端であり、これをプラスミドDNAなどのホストDNAと結合(ライゲーション)させるための処理をする必要がある。一般に、そのような処理として、特定の配列を切断する制限酵素を使用するが、この方法では、結合できるDNAが制限酵素の切断部位の配列に依存するため、汎用性に乏しいという問題がある。
【0004】
制限酵素を用いない方法として、増幅産物の3’末端及び5’末端を接着末端(粘着末端、突出末端などともいう)とし、ホスト側も同様に接着末端を形成して両者をライゲーションしてベクターを構築する技術がある。例えば、近年では、Gibson assembly法、In-Fusion法、SLiCE法などが知られている。これらの方法では、いずれも二本鎖DNA断片末端に15bp程度の相同配列を持たせ、二本鎖中の片側の鎖をエキソヌクレアーゼ活性で消化し、接着末端を生じさせたのちに連結する。なお、Gibson assembly法ではin vitroでTaq DNA ligaseを用いて連結し、In-Fusion法では大腸菌内の修復システムを利用して連結する。
【0005】
これらの方法では、酵素であるエキソヌクレアーゼを使用するため、コストがかかるほか、反応条件等によって部位特異性に劣ることがあり、定量的な接着末端形成が困難であるため、連結反応の効率が低いという問題があった。このため、酵素を使用しないシームレスクローニング法が求められていた。
【0006】
そこで、化学的手法により接着末端を有するDNAを調製する方法が開発され、そのためのPCR用のプライマーとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この文献のプライマーは、非相補DNA部分の塩基配列中の3’末端に相当する塩基が保護基で修飾されている。この保護基は、DNAポリメラーゼによるDNA複製の進行を停止させる機能を有しており、光照射処理やアルカリ処理などによって被修飾塩基から脱離しうる。また、本文献では、保護基(置換基)を生体分子に導入するための置換基導入剤を用いて塩基に保護基をプライマーの塩基に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/113709号(請求項1、請求項2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、保護基の部分でDNA複製の進行を停止するが、特定の部位で一本鎖DNAを切断して接着末端を生成するものではないため、部位特異性が低い。また、例えばDNAでは塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類あるが、特許文献1では塩基に保護基を導入しているため、塩基の種類に応じた方法で保護基を導入する必要があり、プライマーの製造に手間やコストがかかっていた。
【0009】
本発明の目的は、特定の部位で一本鎖を特異的に切断可能で、かつ安価に製造することが可能なプライマーを提供することにある。また、本発明の他の目的は、このようなプライマーを用いた、接着末端を有する二本鎖DNAの製造装置及び二本鎖DNAの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ヌクレオシドの糖の部分に特定のリンカーを介して分解性保護基を導入したプライマーを開発した。そして、その保護基を分解することでそのヌクレオシドの部分で一本鎖を切断することで、接着末端を有する二本鎖DNAを作製することできることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有することを特徴とするプライマーである。
【化1】
(ここで、Aは-S-、-S-S-、又は-Se-を示し、Bは塩基を示し、Rは分解性保護基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)
【0012】
この場合において、前記Rが下記式(2A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化2】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示す。*はAとの結合手を意味する。)
【0013】
さらに、前記Rが下記式(3A)で示される2-ニトロベンジルオキシメチル基であることが好ましい。
【化3】
【0014】
あるいはまた、前記Rが下記式(2B)で示されるフッ化物分解性保護基であることが好ましい。
【化4】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、R~Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基を示し、R~Rは互いに同一であっても異なってもよい。*はAとの結合手を意味する。)
【0015】
この場合において、前記Rが下記式(3B)で示されるトリイソプロピルシリルオキシメチル基であることが好ましい。
【化5】
【0016】
また、本発明は、上記のいずれかに記載のプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造装置であって、鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅手段と、前記二本鎖DNAの前記3’末端をクレノウフラグメントにより平滑末端とする平滑化手段と、前記Rを脱保護して前記式(1)の構造部分でDNAを切断し、3’末端が突出した接着末端を形成する脱保護切断手段と、を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造装置である。
【0017】
さらに、本発明は、上記のいずれかに記載のプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造方法であって、鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、を準備する準備工程と、前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅工程と、前記二本鎖DNAの前記3’末端をクレノウフラグメントにより平滑末端とする平滑化工程と、前記Rを脱保護して前記式(1)の構造部分でDNAを切断し、3’末端が突出した接着末端を形成する脱保護切断工程と、を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造方法である。
【0018】
この場合において、前記Rが前記式(2A)で示される光分解性保護基であり、脱保護切断工程は光照射により前記Rを脱保護することが好ましい。
【0019】
あるいは、前記Rが前記式(2B)で示されるフッ化物分解性保護基であり、脱保護切断工程はフッ化物により前記Rを脱保護することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特定の部位で一本鎖を特異的に切断可能で、かつ安価に製造することが可能なプライマーを提供することが可能となる。また、本発明によれば、このようなプライマーを用いた、接着末端を有する二本鎖DNAの製造装置及び二本鎖DNAの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置を示す模式図である。
図2】光切断アナログを含むオリゴヌクレオチドの切断反応の実験を示す図である。
図3】光切断反応による接着末端形成を利用したクロ-ニング反応の実験を示す図である。
図4】光切断アナログを含むオリゴヌクレオチド切断反応の実験結果を示す図である。
図5】フッ素切断アナログを含むオリゴヌクレオチドの切断反応の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.プライマー
以下、本発明のプライマーについて説明する。本発明のプライマーは、核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有する。
【化6】
(ここで、Aは-S-、-S-S-、又は-Se-を示し、Bは塩基を示し、Rは分解性保護基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)。なお、結合手*のうち、式(1)の3’側の結合手は、3’側において隣接するヌクレオチドの糖の5’炭素に結合し、5’側 の結合手は、5’側において隣接するヌクレオチドの糖の3’炭素に結合する。
【0023】
Bは塩基であり、具体的には、DNAプライマーの場合はアデニン、グアニン、シトシン、チミンから選択され、RNAプライマーの場合はアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルから選択される。
【0024】
の分解性保護基とは、何らかの処理により分解する保護基(置換基)を意味する。ここでいう処理としては、光照射処理、還元処理、アルカリ処理、酸処理、酸化処理、脱シリル化処理、熱処理、エステラーゼ処理、ホスファターゼ処理などを挙げることができる。
【0025】
(1)光分解性保護基
処理が光照射である場合、Rが下記式(2A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化7】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示す。*はAとの結合手を意味する。)
【0026】
炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。
【0027】
特に、Rが下記式(3A)で示される2-ニトロベンジルオキシメチル基であることが好適である。
【化8】
【0028】
(2)フッ化物分解性保護基(シリル系保護基)
処理が還元処理の場合、Rが下記式(2B)で示されるフッ化物分解性保護基(シリル系保護基)であることが好ましい。
【化9】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、R~Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基を示し、R~Rは互いに同一であっても異なってもよい。*はAとの結合手を意味する。)
【0029】
直鎖又は分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基を挙げることができる。
【0030】
特に、Rが下記式(3B)で示されるトリイソプロピルシリルオキシメチル基であることが好適である。
【化10】
【0031】
(3)その他の分解性保護基
アルカリ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、イソブチリル基、ベンゾイル基、アセトキシメチル基などを挙げることができる。酸処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、トリチル基を挙げることができる。酸化処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、アリルオキシメチル基、ジメトキシベンジルオキシメチル基、トリメトキシベンジルオキシメチル基などを挙げることができる。脱シリル化処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、t-ブチルジメトキシシリルオキシメチル基、t-ブチルジフェニルシリルオキシメチル基などを挙げることができる。熱処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、イソシアネート基を挙げることができる。エステラーゼ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、アセトキシメチル基を挙げることができる。ホスファターゼ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、リン酸メチル基を挙げることができる。
【0032】
本発明のプライマーは、特にPCRで好適に使用される一本鎖DNA又は一本鎖RNAであり、上記式(1)で示される構造を分子内に有するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。プライマーの塩基対の数は、標的DNAなどの配列等に応じて適宜設定することができるが、一般にオリゴヌクレオチドでは例えば20塩基対以下、ポリヌクレオチドでは例えば20塩基対超である。ポリヌクレオチドの塩基対の数の上限としては特に制限はないが、一般的に使用されるプライマーとしては例えば40塩基対以下が好ましい。また、オリゴヌクレオチドの塩基対の数の下限としては、プライマーとして使用できる長さであれば特に制限はないが、一般的に使用されるプライマーとしては例えば5塩基対以上が好ましい。
【0033】
2.プライマーの製造方法
本発明のプライマーは、下記式(4)の構造を有する修飾ヌクレオシド(以下、「ヌクレオシド誘導体」ということがある)を合成し、これに非修飾のヌクレオチドをホスホロアミダイト法などの固相合成法で連結することで製造することができる。
【化11】
(ここで、A、Rは上記式(1)で定義したとおりであり、Bは塩基又は修飾塩基を意味する。)
【0034】
プライマーの合成方法の概要としては、まずヌクレオシドの3’ヒドロキシル基と5’ ヒドロキシル基を保護し、2’ヒドロキシル基をリンカー元素Aで置換し、このAに分解性保護基Rを結合させたのち、3’ヒドロキシル基と5’ ヒドロキシル基を脱保護する。その後、ホスホロアミダイトなどを反応させ、固相合成法で非修飾のヌクレオチドを連結させてプライマーを合成する。以下、実施例に掲載したいくつかのプライマーの具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0035】
(a)光分解性保護基を有するヌクレオシド誘導体1(※Aが-S-基、Rが2-ニトロベンジルオキシメチル基の化合物)及びプライマーの合成
【化12】
【0036】
上記の合成スキ-ムに沿って説明する。以下で説明する合成スキ-ムにおいて、数字は化合物の番号を表す。まず、ヌクレオシド(下記スキ-ムではアデノシン)を出発物質として用意する(化合物1)。次に、ヌクレオシドに1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサンをピリジンなどの溶媒中で反応させる。これにより、リボ-スの3’ヒドロキシル基と5’ヒドロキシル基との間でシロキサン結合の環状構造を形成させ、3’位と5’位のヒドロキシル基を保護する(化合物2)。
【0037】
次に、N-フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドを添加して、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)などの求核剤をジクロロメタン(DCM)などの溶媒中で反応させて、リボ-スの2’位をトリフルオロスルホン酸基とする(化合物3)。次に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの存在下でチオ酢酸カリウムなどのチオ-ル基を有する化合物を反応させて、リボ-スの2’位にチオエステルを形成させる(化合物4)。さらにアンモニア/メタノ-ル溶液中で反応させることでチオエステル基をチオ-ル基に変換する(化合物5)。
【0038】
続いて、2-ニトロベンジルクロロメチルエステル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、テトラヒドロフラン(THF)を添加して、分解性保護基である2-ニトロベンジルオキシメチル基をチオールに結合させる(化合物6)。さらに、塩化ベンゾイル(BzCl)、ピリジンを添加し、塩基のアミノ基にベンゾイル基を結合させる(化合物7)。この状態で、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)とテトラヒドロフラン(THF)とを添加してリボ-スの3’位と5’位の保護基を脱離させてヒドロキシル基にする(化合物8)。このようにしてヌクレオシド誘導体(化合物8)を合成することができる。
【0039】
次に、ホスホロアミダイト法によりヌクレオシド誘導体に他のヌクレオチドを連結してプライマーを製造するために、ヌクレオシド誘導体を修飾する。まず、ヌクレオシド誘導体に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(DMTrCl)、ピリジンを加え、リボースの5’ヒドロキシル基に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド基を結合させる(化合物9)。次に、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイトを、THF、DIPEAに添加し、リボースの3’ヒドロキシル基にホスホロアミダイトを結合させる(化合物10)。その後は常法により、所望の配列となるようにヌクレオチドを固相合成してプライマーを合成する。
【0040】
(b)フッ素分解性保護基を有するヌクレオシド誘導体3(※Aが-S-基、Rがトリイソプロピルシリルオキシメチル基の化合物)及びプライマーの合成
【化13】
【0041】
化合物4までの合成スキームは上記のヌクレオシド誘導体1の合成の場合と同じである。次に、3HF-EtN(無水フッ化水素(HF)、トリエチルアミン(EtN)のモル比が3:1)などのフッ素化合物と、THFとを添加してリボ-スの3’位と5’位の保護基を脱離させてヒドロキシル基にする(化合物11)。続いて、DMTrCl、ピリジンを加え、リボースの5’ヒドロキシル基に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド基を結合させる(化合物12)。次に、アンモニアメタノール(NH-MeOH)、DMFなどの存在下でクロロメトキシトリイソプロピルシラン(TOMCl)などのシラン化合物を反応させて、リボ-スの2’位にトリイソプロピルシリルオキシメチル基を結合させる(化合物13)。
【0042】
次に、ホスホロアミダイト法によりヌクレオシド誘導体に他のヌクレオチドを連結してプライマーを製造するために、ヌクレオシド誘導体を修飾する。まず、クロロトリメチルシラン(TMSCl)、BzCl、ピリジンを添加し、塩基のアミノ基にベンゾイル基を、リボースの3’ヒドロキシル基にトリメチルシランを結合させる(化合物14)。次に、HF、ピリジンを反応させてリボースの3’位をヒドロキシル基にする(化合物15)。そして、ヌクレオシド誘導体1の合成の場合と同様に、リボースの3’ヒドロキシル基にホスホロアミダイトを結合させる(化合物16)。
【0043】
(c)光分解性保護基を有するヌクレオシド誘導体3(※Aが-Se-基、Rが2-ニトロベンジルオキシメチル基の化合物)及びプライマーの合成
【化14】
【0044】
化合物3までの合成スキームは上記のヌクレオシド誘導体1の合成の場合と同じである。次に、ジ-p-トルオイルセレニド、ピペリジン、DIPEAをDMF等の溶媒中で反応させる(化合物17)。さらに、ピペリジン、空気(Air)、NaBH4、2-ニトロベンジルクロロメチルエステルを、DMF等の溶媒中で反応させて、リボ-スの2’位に光分解性保護基を有するセレノ化合物を結合させる(化合物18)。
【0045】
その後はヌクレオシド誘導体1の合成スキームと同様に処理を行い、化合物19~20を順次合成する。さらには、ホスホロアミダイト法によりヌクレオシド誘導体に他のヌクレオチドを連結してプライマーを製造する。これも、ヌクレオシド誘導体1の合成スキームと同様に処理を行い、化合物21及び化合物22を順次合成する。
【0046】
3.接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置
つぎに、接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置について説明する。本発明の二本鎖DNAの製造装置は、本発明のプライマーを用いて接着末端を有するための装置である。また、本発明の二本鎖DNAの製造方法は、標的DNA配列を含むテンプレートDNAを使用し、本発明のプライマーを用いて接着末端を有する方法である。以下、図1を参照して説明する。
【0047】
まず、試薬としてフォワードプライマーとリバースプライマーを含むPCR増幅用プライマーセットを準備する(準備工程)。フォワードプライマーは、テンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ式(1)で示される構造を有する。また、リバースプライマーは、テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ式(1)で示される構造を有する。
【0048】
図の(a)に示すように、フォワードプライマーとリバースプライマーは、増幅したい標的DNA配列を挟むように配列を決定する。また、プライマーにおける式(1)の分解性保護基を有するヌクレオチドの位置は、目的とする接着末端の配列(図の(d))において、5’陥没側における最も5’末端側のヌクレオチドの5’側に隣接する位置となるように設計する。すなわち、式(1)の構造のヌクレオチドに隣接する3’側のヌクレオチドが、接着末端の5’末端のヌクレオチドとなるようにする。その他の試薬としては、PCRに使用するポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)、バッファー、dNTPなどである。
【0049】
次に、PCR装置(増幅手段)を用いてテンプレートDNAの配列を増幅する(増幅工程)。PCR装置は、テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、フォワード側伸長鎖とリバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNA(図の(b))を生成する。
【0050】
PCRでは、熱変性、アニーリング、伸長反応を繰り返して、テンプレートDNAの配列を増幅する。PCRの条件にもよるが、熱変性は約95℃、1~3分間、アニーリングはプライマーのTm±5℃、伸長反応は1~10分間で行う。PCRのサイクル数は特に制限はないが、一般に24~40サイクル程度である。
【0051】
図のように、PCR増幅産物には3’末端が陥没した二本鎖DNAが含まれる。これは、プライマーを鋳型として相補鎖が合成される際に、式(1)の分解性保護基がポリメラーゼ反応を阻害し、反応を停止させるためである。
【0052】
次に、図の(c)に示すように、クレノウフラグメント(Klenow Fragment:平滑化手段)により、この陥没した3’末端をFill-in反応により平滑末端とする(平滑化工程)。この反応の試薬としては、Klenow Fragment(酵素)の他に、dNPT、バッファーなどが挙げられる。Fill-in反応の条件は適宜設定することができるが、例えば37℃、10~30分間とし、その後70℃、10分間で酵素を失活させる。
【0053】
その後、図の(d)に示すように、所定の処理によりRを脱保護して式(1)の構造部分で一本鎖DNAを切断し、3’末端が突出した接着末端を形成する(脱保護切断工程)。所定の処理は、Rを脱保護するための処理であり、上記の光照射処理、還元処理などを挙げることができる。
【0054】
以下、切断メカニズムについて説明する。下記式に示すように、所定の処理を施すと、式(1)の分解性保護基Rが脱離し、リンカーAに水素が結合する。リンカーAはリボースの2’炭素と3’炭素と三員環からなるヘテロ環(例えば、Aが硫黄の場合はチイラン環)を形成し、これにより3’炭素のリン酸結合が切断される。
【化15】
【0055】
光照射処理としては、例えば、光源装置(脱保護切断手段)により300~400nmの波長の光を1~30分間照射する方法を挙げることができる。また、還元処理としては、例えば、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)などのフッ化物イオンを用い、例えば70~80℃、1~30分間処理する方法を挙げることができる。これにより、プライマーの式(1)のヌクレオシドを含む5’末端側の一本鎖DNAが切断され、3’突出末端(5’陥没末端)を有する二本鎖DNAを合成することができる。その他の処理についても同様に、分解性保護基を脱保護する装置(脱保護切断装置)を使用して脱保護と一本鎖DNAの切断を行う。
【0056】
本発明では、制限酵素などによらずに自由自在に接着末端を設計することができるため、所望の配列を有するDNAを自由に連結することができる。例えば、標的DNAとベクターの両方の配列を設計し、脱保護切断処理により両者に共通の接着末端を形成させてライゲーションを行って組換えDNAを調製し、これをクローニングやライブラリーの作成、大量発現系の構築などに使用することができる。また、接着末端を有する複数のゲノム配列を連結することで、試験管内でゲノムビルドアップ反応を行うことができる。あるいは、平滑末端の状態で細胞内に二本鎖DNAを導入し、細胞内で脱保護切断処理を行うことで、細胞内でゲノムビルドアップ反応を行うこともできる。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。また、以下の実施例において「%」表示は特に規定しない限り質量基準(質量パ-セント)である。
【0058】
1.光切断アナログ(S)
1-1.光切断アナログ(A*)の合成
以下に光切断アナログの合成スキームを示す。以下、この合成スキームに従って、光切断アナログの合成手順を説明する。
【化16】
【0059】
(1)3’,5’-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)アデノシン(化合物2)
1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン(3.9mL、12.3mmol)を、ピリジン(112mL)中のアデノシン(化合物1、3.00g、11.2mmol)溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで温め、5.5時間撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をHO及びCHClで抽出した。有機相を1M HCl溶液、飽和NaHCO溶液、食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/MeOH、100/0~95/5v/v)で精製し、化合物2(5.43g、10.65mmol、95%)を得た。
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ0.95-1.07(m,8H),3.92(dd,J=12.8,2.8Hz,1H),3.97-4.01(m,1H),4.05(dd,J=12.8,3.2Hz,1H),4.51(d,J=5.6Hz,1H),4.79(dd,J=8.8,5.2Hz,1H),5.60(brs,1H),5.86(d,J=1.2Hz,1H),7.30(brs,2H),8.06(s,1H),8.20(s,1H);LRMS(ESI)calc.m/z 510.26(M+H),532.24(M+Na),found m/z 510(M+H),532(M+Na)。
【0060】
(2)3’,5’-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2’-O-トリフリル-アデノシン(化合物3)
N-フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(4.57g、12.8mmol)を、化合物2(5.43g、10.7mmol)の溶液及びCHCl(106mL)中のDMAP(3.90g、32.0mmol)に0℃で加えた。反応混合物を0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。混合物を、冷却した0.1MのAcOH溶液及びCHClで抽出した。有機相を、飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、1/1v/v)で精製して化合物3(4.76g、7.42mmol、69%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ0.98-1.11(m,28H),3.94-4.08(m,3H),5.37(dd,J=9.6,5.6Hz,1H),6.08(d,J=4.8Hz,1H),6.45(s,1H),7.42(br s,2H),8.03(s,1H),8.26(s,1H);LRMS(ESI)calc.m/z642.21(M+H),664.19(M+Na),foundm/z 642(M+H),664(M+Na)。
【0061】
(3)9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-アセチルチオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物4)
化合物3(1.06g、1.65mmol)及びCHCOOSK(302mg、2.64mmol)をDMF(4.1mL)に溶解し、室温で20時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液及びヘキサン/EtOAc(1/3v/v)で抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、2/1~1/2v/v)で精製し、化合物4(0.57g、1.00mmol、61%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ1.01-1.18(m,28H),2.19(s,3H),3.89-3.98(m,2H),4.17(dd,J=11.6,6.4Hz,1H),4.62(dd,J=10,8.0Hz,1H),5.26(t,J=8.0Hz,1H),6.39(d,J=8.0Hz,1H),7.34(br s,2H),8.02(s,1H),8.10(s,1H);HRMS(ESI) calc. m/z 568.24(M+H),590.23(M+Na),found m/z 568.2467(M+H),590.2286(M+Na)。
【0062】
(4)9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物5)
MeOH(25mL)中の化合物4(2.11g、3.72mmol)の溶液に、触媒量のナトリウムメトキシドの28%MeOH溶液を加えた。混合物を室温で4時間撹拌し、HO及びEtOAcで抽出した。有機相をHO及び食塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮して化合物5(1.96g、3.72mmol、quant.)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ1.04-1.14(m,21H),1.18(s,7H),3.81-3.92(m,2H),4.06(dd,J=13.2, 3.2Hz,1H),4.22(dd,J=13.2, 3.6Hz,1H), 4.60-4.65(m,1H),5.64(s,1H),6.38(d,J=7.2Hz,1H),8.10(s,1H),8.34(s,1H)。
【0063】
(5)9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物6)
2-ニトロベンジルオキシメチルクロリド(1mL、1.30mmol)の1.3M溶液を、CHCl(4.0mL)中の化合物5(0.53g、1.00mmol)及びDIPEA(524μL、1.30mmol)の溶液に0℃で加え、1時間撹拌した。混合物をHO及びCHClで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/MeOH、50/1~20/1v/v)で精製し、化合物6(0.57g、0.82mmol、82%)を得た。
H-NMR(400MHz、CDCl)):δ1.00-1.11(m 21H),1.17(s,7H),3.88-3.98(m,2H),4.04(dd,J=12.8,2.8Hz,1H),4.19(dd,J=13.2,4.4Hz,1H),4.67-4.84(m,5H),7.44-7.48(m,1H),7.62-7.72(m,2H),7.94(s,1H),8.07(dd,J=8.0,1.2Hz,1H),8.23(s,1H)。
【0064】
(6)N-ベンゾイル-9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物7)
ピリジン(5mL)中の化合物6(0.56g、0.81mmol)の溶液に、塩化ベンゾイル(282μL、2.43mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、HO(2mL)を加え、混合物を0.5時間撹拌した。conc. NH(水溶液)(2mL)を加え、混合物を0.5時間撹拌した。反応混合物をHO及びEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、1/1v/v)で精製し、化合物7(0.46g、0.58mmol、72%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 1.01-1.10(m,21H),1.18(s,8H),3.93-4.09(m,2H),4.21(dd,J=12.8,3.6Hz,1H),4.69-4.83(m,5H),7.46-7.56(m,3H),7.60-7.69(m,3H),7.96(dd,J=8.0,1.2Hz,1H),8.05-8.11(m,2H),8.73(s,1H),8.79(dd,J=5.2,1.6Hz,1H)。
【0065】
(7)N-ベンゾイル-9-[2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物8)
THF(5mL)中の化合物7(0.47g、0.59mmol)の溶液に、TBAF(THF中1M、1.2mL)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/EtOAc、50/1~20/1v/v)により精製し、化合物8(0.33g、0.59mmol、定量的)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ3.16(d,J=5.6Hz,1H),3.64-3.70(m,1H),3.73-3.78(m,1H),3.80-3.84(m,1H),3.97(dd,J=7.2,2.8Hz,1H),4.38-4.45(m,1H),4.61-4.84(m,4H),5.12(t,J=5.6Hz,1H),5.85(d,J=6.0Hz,1H),6.62(d,J=7.6Hz,1H),7.53-7.59(m,3H),7.62-7.67(m,2H),7.73-7.77(m,1H),8.02-8.06(m,3H),8.61(d,J=4.8Hz,2H),11.11(s,1H)。
【0066】
(8)N-ベンゾイル-9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物9)
ピリジン(4.0mL)中の化合物8(0.33g、0.59mmol)の溶液に、4,4-ジメトキシトリリルクロリド(0.24g、0.71mmol)を加えた。反応混合物を室温で7.5時間撹拌した。混合物をHO及びEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/MeOH、60/1~20/1v/v)で精製し、化合物9(0.38g、0.44mmol、72%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ1.04(d,J=6.0Hz,5H),2.17(s,1H),3.18(d,J=3.2Hz,1H),3.56(d, J=4.4Hz,2H),3.78(d,J=1.2Hz,6H),3.85(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),4.07-4.11(m,1H),4.62-4.71(m,3H),4.84(d,J=12.Hz,1H),4.94(d,J=14.4 Hz,1H),6.65(d,J=7.6Hz,1H),6.80-6.83(m,4H),7.20-7.33(m,4H),7.42-7.64(m,7H),8.03-8.06(m,3H),8.20(s,1H),8.72(s,1H),9.07(s,1H)。
【0067】
(9)N-ベンゾイル-9-{3-O-[2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル]-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)チオ-β-D-アラビノフラノシル}アデニン(化合物10)
2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(241μL、1.08mmol)を、THF(2.5mL)中の化合物9(0.42g、0.49mmol)及びDIPEA(417μL、2.45mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液及びEtOAcで抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、1/2v/v)で精製し、化合物10(0.46g、0.49mmol、90%)を得た。31P-NMR(159MHz,CDCl):δ150.4,150.7。
【0068】
1-2.光切断アナログ(A*)を含むオリゴヌクレオチドの切断反応
図2は、光切断アナログを含むオリゴヌクレオチドの切断反応が光照射と加熱に依存することを示す実験を示す図である。この図の(a)は、用いた20塩基長のオリゴヌクレオチド配列と構造及び予想される反応機構を示す化学式であり、(F)はフルオレセイン基による修飾を示す。この図の(b)は、切断反応の変性ポリヌクレオチドゲル電気泳動分析の結果であり、(c)は、(b)に示した電気泳動結果から算出した、切断反応生成物の定量結果を示すグラフである。
【0069】
オリゴヌクレオチド(5’fluorescein-d(ACGACTCA*CTATAGGGCGAA)、1μM)を10mM Tris-HCl(pH8.5)、50mM
MgCl、10mM ジチオスレイト-ル(DTT)を含む緩衝液中に混合した。
【0070】
本溶液40μLを96穴マルチウェルプレ-トのウェルに加え、MAX-305光源装置(朝日分光)により4mW/cmの光量で365nmの光を0分、1分、5分、又は10分間照射した。続いて、同溶液を10μLずつチュ-ブに分注し、72℃で0分、5分、又は10分間加熱した。氷上で冷却後、10μLの2×ホルムアミドロ-ディング溶液(80(v/v)%ホルムアミド、50mM EDTA(pH8.0))を添加し、7.5M尿素を含む20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により解析した。ゲル中のオリゴヌクレオチドは5’末に標識した。フルオレセイン基の蛍光によりChemiDoc XRS+イメ-ジングシステム(Bio-Rad)を用いて検出した。
【0071】
1μM オリゴヌクレオチド、10mM Tris-HCl(pH8.5)、50mM
MgCl、10mM DTT(40μL)に4mW/cmの光量で365nm光を5分間照射し、72℃で5分間加熱した。ZipTip μ-C18レジン充填ピペットチップを用いて脱塩、濃縮したものをサンプルとし、ultraflex III(Bruker Daltonics)によりMALDI-TOF分子量解析を行った。マトリクスとしては3-ヒドロキシピコリン酸を使用した。図の(a)に示した原料オリゴヌクレオチド(i)とその脱保護後体(ii,iii)、及び切断産物(iv,v)のMALDI-TOF MS法による検出結果を下記表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
図の(b)、(c)に示すように、光照射5分の条件で切断産物が増えており、光照射10分の条件では切断産物がより増加していることがわかる。また、図(b)から、特に光照射10分、加熱時間5分以上の条件で、原料のバンドが薄くなり、切断産物のバンドが濃くなっていることから、この条件が切断反応に好ましいことがわかる。
【0074】
1-3.光切断反応による接着末端形成を利用したクロ-ニング反応
以下、図3を参照して、クローニング及び形質転換について説明する。図は、光切断アナログを使用したGFP発現ベクター作成法を示している。概要としては、まず、pET21d,pAcGFP1を鋳型にしてPCR反応を行い、それぞれベクター断片、インサート断片を得る。次いで、光照射と加熱により接着断片を生成したのち両者の混合物で大腸菌を形質転換し、連結産物をプラスミドDNAとして得る。以下、詳細に説明する。
【0075】
ベクター側断片は以下のようにして調製した。反応液[0.5μM プライマ-鎖(pET21d_Fw及びpET21d_Rev,表2)、0.8ng/μL pET21d(Novagen)、1×PCR Buffer for KOD-Plus-Neo、1.5mM MgSO、 0.2mM dNTPs、 0.02U/μL KOD-Plus-Neo(東洋紡)]をアプライドバイオシステムズ2720サ-マルサイクラ-にて(95℃,30秒→50℃,30秒→72℃,3分間)/サイクル、30サイクルの条件で調製した。PCR反応後の反応液200μLに制限酵素DpnI(16U/μL、東洋紡)2μLを添加し37℃で1時間加温した。これにTE飽和フェノ-ル(ナカライテスク)とクロロホルムの等量混合液200μLを加え、激しく混和したのち遠心14,000×g、3分間)し、水層を分離した。同様にクロロホルム200μLで反応液を抽出したのち、3M NaOAc(pH5.2)20μLとイソプロピルアルコ-ル220μLを加えた。-30℃で1時間冷却した後、遠心(20,000×g、20分間)することでDNAを回収した。目的とするPCR産物をアガロ-スゲル電気泳動(GelRed(和光純薬工業)を含む、0.8% AgaroseS(和光純薬工業))により精製した。切り出したゲル片からWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ)を用いてDNAを抽出した(収量1.27μg DNA)。
【0076】
インサ-ト側断片は以下のようにして調製した。反応液[0.5μM プライマー鎖(pAcGFP1_Fw及びpAcGFP1_Rev,表2)、0.8ng/μL pAcGFP1(タカラバイオ)、1×PCR Buffer for KOD-Plus- Neo,1.5mM MgSO,0.2mM dNTPs,0.02U/μL KOD-Plus-Neo)]をアプライドバイオシステムズ2720サ-マルサイクラ-にて(95℃,30秒→55℃,30秒→72℃,1分間)/サイクル、30サイクルの条件で調製した。PCR反応後の反応液100μLに制限酵素DpnI(16U/μL,東洋紡)1μLを添加し37℃で1時間加温した。これにTE飽和フェノ-ル(ナカライテスク)とクロロホルムの等量混合液100μLを加え、激しく混和したのち遠心(14,000×g,3分間)し、水層を分離した。同様にクロロホルム200μLで反応液を抽出したのち、3M NaOAc(pH5.2)10μLとイソプロピルアルコ-ル110μLを加えた。-30℃で1時間冷却した後,遠心(20,000×g,20分間)することでDNAを回収した。目的とするPCR産物をアガロ-スゲル電気泳動(GelRed(和光純薬工業)を含む1.5% Agarose S(和光純薬工業))により精製した。切り出したゲル片からWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ)を用いてDNAを抽出した(収量5.33μg DNA)。ポスト切断PCRプライマー配列を下記表に示す。配列中のA*は光切断アナログ(図2)を示す。
【0077】
【表2】
【0078】
ベクター断片溶液(6ng/μL DNA、10mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM MgCl、10mM DTT)及びインサ-ト断片溶液(8.4ng/μL DNA、10mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM MgCl、10mM DTT)をそれぞれ50μLずつ96穴マルチウェルプレ-トのウェルに加え、ハンディUVランプ(フナコシ)により約4mW/cmで365nm光を5分間照射した。続いて、同溶液2つを1本の1.5mLチュ-ブに回収し、72℃で10分間加熱した。3M NaOAc(pH5.2)10μLとイソプロピルアルコ-ル110μLを加え、-30℃で1時間冷却した後、遠心(20,000×g,20分間)してDNAを回収した。DNAを5μLの水に溶解し、うち4.7μLを大腸菌コンピテントセル溶液50μL(NEB 5-alpha Competent E.coli(High Efficiency)、New England Biolabs)に添加した。これを50μg/mLアンピシリンナトリウムを含むLB寒天培地に塗布し37℃で一晩培養した。光照射と加熱を行ったサンプルからは9クロ-ンの連結産物を得た。これに対し光照射と加熱を行わなかったコントロ-ルサンプルからは2クロ-ンの連結産物を得た。
【0079】
2.フッ素切断アナログ
2-1.フッ素切断アナログ(A**)の合成
以下にフッ素切断アナログの合成スキームを示す。以下、この合成スキームに従って、フッ素切断アナログの合成手順を説明する。
【化17】
【0080】
(1)9-[2-デオキシ-2-チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物11)
THF(10mL)中の化合物4(572mg、1.00mmol)の溶液に、3HF-EtN(409μl、2.51mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/MeOH、92/8v/v)で精製し、化合物11(265mg、0.81mmol、81%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ2.15(s,3H),3.64-3.87(m,3H),4.34(dd,J=10.0,7.6Hz,1H),4.50(dd,J=16.8,10 Hz,1H),5.12(t,J=5.2Hz,1H),5.80(d,J=6.4Hz,1H),6.42(d,J=7.6 Hz,1H),7.30(br s,2H),8.10(s,1H),8.22(s,1H);HRMS
(ESI)calc.m/z 326.09(M+H),348.07(M+Na) found m/z 326.3798(M+H),348.0800(M+Na)。
【0081】
(2)9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-チオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物12)
ピリジン(8.0mL)中の化合物11(265mg、0.815mmol)の溶液に、4,4’-ジメトキシトリリルクロリド(413mg、1.22mmol)を加え、反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。反応混合物をHO及びCHClで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(CHCl/MeOH、100/0~95/5v/v)で精製し、化合物12(371mg、0.59mmol、72%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ2.17(s,3H),3.16(d,J=8.4Hz,1H),3.45(dd,J=10.4, 7.6Hz,1H),3.69(s,3H),3.71(s,3H),4.02-4.07(m,1H),4.37(dd,J=10.0, 8.0Hz,1H),4.67(dd,J=16.8,
8.4Hz,1H),5.77(d,J=5.6Hz,1H),6.47(d,J=8.0Hz,1H),6.72(d,J=8.8Hz,2H),6.78(d,J=9.2Hz,2H),7.14-7.21(m,7H),7.29-7.33(m,4H),7.96(s,1H),8.14(s,1H);13C-NMR(100MHz,DMSO):δ30.0, 51.2, 54.9, 63.7, 72.2, 82.5, 83.3, 85.4, 112.9, 113.0, 119.1, 126.5, 127.6, 129.6, 129.7, 135.4, 135.5, 140.1,
144.8, 148.7, 152.3, 156.0, 157.9, 158.0, 193.9;HRMS(ESI)calc.m/z 628.22(M+H),650.20(M+Na),found m/z 628.2216(M+H),650.2054(M+Na)。
【0082】
(3)9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-トリイソプロピルシリルオキシメチルチオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物13)
MeOH(6.0mL)中の化合物12(749mg、1.19mmol)の溶液に、MeOH(6.0mL)中の28%NaOMeを加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌し、真空中で濃縮した。残渣をCHClで希釈し、飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。さらに精製することなく、得られた残渣をTHF(12mL)に溶解した。溶液にDIPEA(1.4mL、8.33mmol)、(トリイソプロピルシロキシ)メチルクロリド(304μL、1.31mmol)を加え、0℃で16.5時間撹拌した。反応混合物をHO及びCHClで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、1/1~1/2v/v)で精製し、化合物13(499mg、0.65mmol、54%)を得た。
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ0.95-1.00(m,21H), 3.19(d,J=8.4Hz,1H),3.45(dd,J=10.8, 7.6Hz,1H),3.70(s,3H),3.71(s,3H),3.88(t,J=7.6Hz,1H),3.97-4.01(m,1H),4.49(dd,J=14.4,
8.8Hz,1H),4.67(d,J=10.4Hz,1H),4.76(d,J=10.8Hz,1H),5.75(d,J=6.0Hz,1H),6.49(d,J=7.2Hz,1H),6.77(d,J=8.8Hz,2H),6.81(d,J=9.2Hz,2H),7.18-7.26(m,9H),7.35-7.36(m,2H),8.02(s,1H),8.11(s,1H);13C-NMR(100MHz,DMSO):δ11.2, 17.6, 17.7, 52.5, 54.9, 63.5, 63.8, 74.2, 82.9, 84.0, 85.4, 113.0, 118.7, 126.6, 127.7, 129.6, 135.4, 135.5, 139.4, 144.8, 149.0, 152.3, 155.9, 157.9, 158.0;HRMS(ESI) calc. m/z 794.34(M+Na), found m/z 794.3113(M+Na)。
【0083】
(4)N-N-ジベンゾイル-9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-トリイソプロピルシリルオキシメチルチオ-3-O-トリメチルシリル-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物14)
ピリジン(7.0mL)中の化合物13(488mg、0.63mmol)の溶液に、室温でTMSCl(96μL、0.76mmol)を加えた。1時間撹拌した後、BzCl(218μL、1.90mmol)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物にHO(11mL)を添加し、10分間撹拌した。次いで、28%NH水溶液(14mL)を添加し、混合物を15分間撹拌した。反応混合物をHO及びCHClで抽出した。飽和NaHCO溶液及び食塩水で有機相を洗浄し、乾燥(NaSO)し、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、3/1~2/1v/v)で精製し、化合物14(211mg、0.20mmol、32%)を得た。
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ-0.05(s,9H),0.95-1.05(m,21H),3.20(d,J=8.8Hz,1H),3.39(dd,J=11.2, 6.8Hz,1H),3.68(s,3H),3.69(s,3H),3.97-4.02(m,2H),4.54-4.63(m,3H),6.68(d,J=7.6Hz,1H),6.78(d,J=3.6Hz,2H),6.81(d,J=3.6Hz,2H),7.15-7.21(m,7H),7.32-7.34(m,2H),7.40(t,J=8.0Hz,4H),7.55(t,J=8.0Hz,2H),7.75(d,J=7.2Hz,4H),8.60(s,1H),8.65(s,1H);13C-NMR(100MHz,DMSO-d):δ0.3, 11.2, 17.6, 17.7, 52.2, 55.0, 65.8, 69.5, 74.3, 82.7, 84.7, 85.6, 113.1, 126.6, 127.1, 127.7, 128.9, 129.6, 129.7, 133.3, 133.4, 135.2, 135.5, 144.4, 146.1, 150.8, 151.6, 152.4, 158.0, 178.9;HRMS(ESI) calc. m/z 1052.45(M+H), found m/z 1052.4480(M+H)。
【0084】
(5)N-N-ジベンゾイル-9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-トリイソプロピルシリルオキシメチルチオ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物15)
ピリジン(1.5mL)中の化合物14(160mg、0.15mmol)の溶液に、ピリジン(11μL、0.42mmol)中の70%HFを加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をHO及びCHClで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、2/1v/v)で精製し、化合物15(93mg、0.09mmol、62%)を得た。
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ0.94-1.05(m,21H),3.20(d,J=8.0Hz,1H),3.46(dd,J=10.8, 7.6
Hz,1H),3.68(s,3H),3.69(s,3H),3.92-4.05(m,2H),4.41(dd,J=15.2, 8.8Hz,1H),4.65(d,J=10.4Hz,1H),4.76(d,J=10.8Hz,1H),6.64(d,J=7.6Hz,1H),6.78(d,J=8.0Hz,2H),6.80(d,J=8.4Hz,2H),7.13-7.21(m,7H),7.31-7.33(m,2H),7.42(t,J=7.6Hz,4H),7.57(t,J=7.6Hz,2H),7.75(d,J=7.6Hz,4H),8.54(s,1H),8.58(s,1H);13C-NMR(100MHz,DMSO-d):δ11.2, 17.6, 17.7, 52.5, 54.9, 63.6, 66.0, 74.1, 83.0, 84.8, 85.4, 113.0, 126.6, 127.1, 127.7, 128.9, 129.5, 129.8, 133.3, 133.5, 135.2,
135.8, 144.6, 146.0, 150.8, 151.6, 152.4, 152.9, 158.0, 171.9;HRMS(ESI) calc. m/z 980.41(M+H), found m/z 980.4331(M+H)。
【0085】
(6)N-N-ジベンゾイル-9-{3-O-[2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル]-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-トリイソプロピルシリルオキシメチルチオ-β-D-アラビノフラノシル}アデニン(化合物16)
THF(950μL)中の化合物15(93mg、0.01mmol)の溶液に、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(42μL、0.19mmol)及びDIPEA(80μL、0.47mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物をHO及びEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaHCO溶液及び食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-(ヘキサン/EtOAc、2/1v/v)で精製し、化合物16(83mg、0.07mmol、70%)を得た。
31P-NMR(159MHz、DMSO-d):δ149.1、149.9、 HRMS(ESI)calc.m/z 1180.52(M+H)、found m/z 1180.5363(M+H)。
【0086】
2-2.オリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドはホスホロアミダイト法に基づきDNA合成機を用いて合成した。5’末端の蛍光標識には6-FAM amidite(Chemgenes)を用いた。合成した各切断アナログのアミダイトは終濃度50mMのアセトニトリル溶液とし、DNA合成機を用いてDNAプライマ-内部に導入した。脱保護は定法に従って行い、各DNAは20% PAGEにより精製し、MALDI-TOF/MS(Bruker)を用いて構造を確認した。合成したDNAの配列を以下の表に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
3-3.フッ素切断アナログ(A**)を含むオリゴヌクレオチドの切断反応
オリゴヌクレオチド(5’fluorescein-d(ACGACTCA**CTATAGGGCGAA),1μM)を10mM Tris-HCl(pH8.5)、50mM MgCl、10mM ジチオスレイト-ル(DTT)を含む緩衝液中に混合した後、同量の1M TBAF in THF溶液を加え、72℃で10分間加熱した。氷上で冷却後、遠心エバポレータより溶媒を除き、10μLの2×ホルムアミドロ-ディング溶液(80(v/v)% ホルムアミド、50mM EDTA(pH8.0))に再度溶解した。得られたサンプルを7.5M 尿素を含む20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により解析した。ゲル中のオリゴヌクレオチドは5’末に標識した。フルオレセイン基の蛍光によりChemiDoc XRS+イメ-ジングシステム(Bio-Rad)を用いて検出した。図4に、電気泳動ゲルの写真を示す。この図に示すように、切断反応によりオリゴヌクレオチドが切断されたことがわかる。
【0089】
3.光切断アナログ(Se)
3-1.光切断Seアナログ(ASe)の合成
以下に光切断Seアナログの合成スキームを示す。以下、この合成スキームに従って、光切断アナログの合成手順を説明する。
【化18】
【0090】
(1)9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-p-トルオイルセレノ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物17)
DMF(160mL)中のジ-p-トルオイルセレニド(14.8g、46.7mmol)の溶液に、ピペリジン(4.3mL、43.7mmol)及びDIPEA(8.2mL、46.7mmol)を加え、室温で撹拌した。5分間撹拌した後、化合物3(10g、15.6mmol)を上記混合物に加え、60℃で1時間撹拌した。AcOEtを反応混合物に加え、1N HCl水溶液、飽和NaHCO水溶液で洗浄した。食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて粗化合物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex/AcOEt=1/1~1/4、v/v)で精製し、化合物17(5.7g、53%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.16(1H,s),7.92(1H,s),7.56(2H,d,J=8.4Hz),7.15(2H,d,J=8.4Hz),6.47(1H,d,J=7.6Hz),6.09(2H,brs),5.25(1H,dd,J=10.0,8.0Hz),4.72(1H,dd,J=10.4, 7.6Hz),4.27(1H,dd,J=12.0, 4.8Hz),4.03-4.01(2H,m),2.34(3H,s),1.18-0.99(28H,m);13C-NMR(100MHz,CDCl):δ192.5, 155.2, 151.9, 149.4, 145.3, 140.2, 135.5, 129.6, 127.5, 120.1, 85.0, 84.3, 73.5, 62.1, 50.4, 21.8, 17.6, 17.5, 17.4, 17.3, 17.1, 13.7,
13.2, 12.9, 12.5;77Se-NMR(75MHz,CDCl):δ535.6;HRMS(ESI)calc.m/z 692.2197[M+H],found m/z 692.2200[M+H]
【0091】
(2)9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)セレノ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物18)
空気条件下で、ピペリジン(143μL、1.4mmol)をDMF(4mL)中の化合物17(400mg、0.58mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、雰囲気をアルゴンと交換し、溶液をアルゴンガスで10分間バブリングし、続いてNaBH(53mg、1.4mmol)を加え、室温で撹拌した。15分後、反応混合物を0℃に冷却し、DMF(2mL)中の2-ニトロベンジルオキシメチルクロリド(0.87mmol)の溶液を添加し、0℃で1時間撹拌した。HOの添加により反応をクエンチし、AcOEtで抽出し、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH=25/1、v/v)によって精製し、化合物18(226mg、53%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.14(1H,s),8.01-7.86(2H,m),7.68-7.32(3H,m),6.37(1H,d,J=7.6Hz),6.15(2H,brs),5.02(1H,s,diastereotopic),4.97(1H,s,diastereotopic),4.86(1H,dd,J=10.0, 8.0Hz),4.77(1H,s,diastereotopic),4.75(1H,s,diastereotopic),4.13(1H,dd,J=12.8, 4.4Hz),4.01-3.94(2H,m),3.84-3.82(1H,m),1.11-0.95(28H,m);13C-NMR(100MHz,CDCl):155.8, 152.8, 149.6, 147.4, 139.2, 133.7, 133.5, 129.1, 128.4, 124.8, 119.6, 84.8, 84.1, 74.9, 69.5, 67.9, 61.6, 48.7, 17.6, 17.5, 17.4, 17.2, 17.1, 17.0, 13.7, 13.1, 13.0, 12.6;77Se-NMR(75MHz,CDCl):δ231.7;HRMS(ESI)calc.m/z 739.2204[M+H],found m/z 739.2208[M+H]
【0092】
(3)N,N-ジベンゾイル-9-[3,5-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)セレノ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物19)
ピリジン(3mL)中の化合物18(200mg、0.27mmol)の溶液に、塩化ベンゾイル(125μL、1.08mmol)を加え、混合物を室温で4時間撹拌した。AcOEtを反応混合物に加え、HO及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=2/1から1/2、v/v)で精製し、化合物19(126mg、49%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.54(1H,s),8.13(1H,s),8.04-7.28(14H,m),6.47(1H,d,J=7.6Hz),5.05-4.79(5H,m),4.19-3.85(4H,m),1.13-0.95(28H,m);13C-NMR(100MHz,CDCl):δ172.3, 152.9, 152.0, 151.9, 147.6, 143.8, 134.2, 133.7, 133.2, 133.0, 129.6, 129.3, 128.7, 128.6, 128.0, 124.9, 85.4, 84.3, 75.2, 69.7, 68.2, 61.7, 49.1, 17.6, 17.5, 17.4, 17.2, 17.1, 14.2, 13.7, 13.1, 13.0,
12.6;77Se-NMR(75MHz,CDCl):δ234.4;HRMS(ESI)calc.m/z 947.2729[M+H],found m/z 947.2727[M+H]
【0093】
(4)N,N-ジベンゾイル-9-[2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)セレノ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物20)
THF(1mL)中の化合物19(125mg、0.13mmol)の溶液に、TBAF(THF中1M、290μL)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=25/1、v/v)によって精製し、化合物20(65mg、71%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.56(1H,s),8.51(1H,s),8.02(1H,d,J=8.0Hz),7.81(4H,d,J=7.2Hz),7.60-7.30(9H,m),6.55(1H,d,J=7.6Hz),5.02(2H,s),4.83-4.69(3H,m),3.98-3.75(4H,m);13C-NMR(100MHz,CDCl):δ 172.4, 152.6, 152.1, 151.9, 147.7, 144.6, 133.9, 133.8,
133.2, 132.7, 130.1, 129.5, 128.9, 128.4, 127.5, 125.0, 86.2, 85.1, 73.5, 69.5,
68.5, 59.9, 49.7;77Se-NMR(75MHz,CDCl):δ250.1。
【0094】
(5)N,N-ジベンゾイル-9-[5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)セレノ-β-D-アラビノフラノシル]アデニン(化合物21)
ピリジン(0.8mL)中の化合物20(60mg、0.085mmol)の溶液に、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(35mg、0.102mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をAcOEtで希釈し、飽和HOで洗浄した。NaHCO水溶液。食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=1/1、v/v)によって精製し、化合物21(48mg、56%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.52(1H,s),8.21(1H,s),8.03(1H,d,J=8.0Hz),7.83-7.81(4H,m),7.57-7.15(18H,m),6.79-6.77(4H,m),6.60(1H,d,J=7.2Hz),5.04-4.72(4H,m),4.66(1H,dd,J=8.8Hz),4.05-4.03(1H,m),3.93(1H,dd,J=8.8,7.2Hz),3.72(6H,s),3.52-3.50(2H,m);13C-NMR(100MHz,CDCl):δ172.3, 158.7, 152.7, 152.2, 151.9, 147.8, 144.4, 143.8, 135.7,
135.6, 134.2, 133.8, 133.0, 132.5, 130.1, 129.5, 129.0, 128.7, 128.3, 128.0, 127.0, 125.1, 113.3, 86.9, 85.4, 83.3, 76.5, 69.5, 68.6, 62.9, 55.3, 49.6;77Se-NMR(75MHz,CDCl):δ252.0;HRMS(ESI)calc.m/z 1007.2513[M+H],found m/z 1007.2536[M+H]
【0095】
(6)N,N-ジベンゾイル-9-{3-O-[2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル]-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-2-(2-ニトロベンジルオキシメチル)セレノ-β-D-アラビノフラノシル}アデニン(化合物22)
2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(25μL、0.11mmol)を、21(45mg、0.045mmol)及びCHCl(0.5mL)中の化合物DIPEA(47μL、0.27mmol)の溶液に添加し、0℃で1時間撹拌した。反応混合物をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO水溶液及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=1/1、v/v)によって精製し、化合物21(41mg、76%)を得た。
31P-NMR(159MHz,CDCl):δ150.6, 150.3;HRMS(ESI)calc.m/z 1207.3592[M + H],found m/z 12707.3624[M + H]
【0096】
3-2.オリゴヌクレオチドの合成
合成した切断アナログASeのアミダイトは終濃度50mMのアセトニトリル溶液とし、ホスホロアミダイト法に基づきDNA合成機を用いてDNAオリゴマーを合成した。脱保護は定法に従って行い、逆相HPLC[日立ハイテクサイエンス社製 LaChrom
Elite; カラム,YMC社製Hydrosphere C18(250×10mm)]により精製し、MALDI-TOF/MS(Bruker)を用いて構造を確認した。合成したDNAの配列を以下の表に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
3-3.光切断アナログ(ASe)を含むオリゴヌクレオチドの切断反応
10mM Tris-HCl(pH8.5), 5mM MgCl, 10mM ジチオスレイトール(DTT)を含む緩衝液中にオリゴヌクレオチド(3μM)を混合した後、光照射装置 MAX-305(朝日分光)により波長365nmの光を約4mW/cmで10分間照射した。得られたサンプルをホルムアミドローディング溶液(80(v/v)%ホルムアミド, 50mM EDTA(pH8.0))にて2倍希釈した後、7.5M尿素を含む15%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により解析した。ゲル中のオリゴヌクレオチドはSYBR Green II Nucleic Acid Gel Stainにより染色し、ChemiDoc XRS+イメージングシステム(Bio-Rad)を用いて検出した。結果を図5に示す。この結果から、緩衝液中、室温下での10分間の光照射により、切断産物がみられた。
図1
図2
図3
図4
図5