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特許7521817エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンドバリア被覆
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンドバリア被覆
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20240717BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B32B27/28 102
B65D65/40 D
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021543152
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020013859
(87)【国際公開番号】W WO2020154167
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】62/796,750
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515286656
【氏名又は名称】マイケルマン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】プートッド,ギヨーム
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/025058(WO,A1)
【文献】特開2009-006508(JP,A)
【文献】特開2007-112116(JP,A)
【文献】特表平10-502882(JP,A)
【文献】特表2010-513086(JP,A)
【文献】特開2006-070108(JP,A)
【文献】特開平10-286915(JP,A)
【文献】特表2002-506144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆フィルムであって:
ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される層を含むフィルム;
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を1.5:1~:1のEVOH:EAAの重量比で含み、EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有する、前記層の上のエチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリヤ被覆;
を含み、
前記被覆フィルムは、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して80%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度50%)の減少率を有する、上記被覆フィルム。
【請求項2】
前記EVOH/EAAバリア被覆が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋剤を更に含む、請求項1に記載の被覆フィルム。
【請求項3】
前記架橋剤が、1:0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する、請求項2に記載の被覆フィルム。
【請求項4】
前記EVOH/EAAバリア被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される接着促進剤を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項5】
前記EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)を有する、請求項1~4のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項6】
前記EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する、請求項1~5のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項7】
前記EAAが40%~70%の中和度を有する、請求項1~6のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項8】
前記EVOH/EAAバリア被覆が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む、請求項1~7のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項9】
前記EVOH/EAAバリア被覆が、1ミクロン未満の厚さである、請求項1~8のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項10】
前記ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項11】
前記真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む、請求項1~10のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項12】
前記プライマー被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、又はポリウレタンとEAAの混合物を含む、請求項1~11のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項13】
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する、請求項1~12のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項14】
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する、請求項1~13のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項15】
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する、請求項1~14のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項16】
前記被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない、請求項1~15のいずれかに記載の被覆フィルム。
【請求項17】
方法であって:
エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆混合物をフィルムの層に適用すること、ここで、前記EVOH/EAAバリア被覆混合物は、1.5:1~:1のEVOH:EAAの重量比でエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を含み、前記EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有し、前記層が、ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される;及び
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物を乾燥して、前記層上にEVOH/EAAバリア被覆を生成すること;
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用する前に前記層をコロナ処理すること;
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記EVOH/EAAバリアー被覆に印刷層を適用すること;
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記EVOH/EAAバリアー被覆に真空適用被覆を適用すること;
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋剤を更に含む、請求項17~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記架橋剤が、1:0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される接着促進剤を更に含む、請求項17~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)を有する、請求項17~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する、請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記EAAが40%~70%の中和度を有する、請求項17~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む、請求項17~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記EVOH/EAAバリア被覆が1ミクロン未満の厚さである、請求項17~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項17~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む、請求項17~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記プライマー被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、又はポリウレタンとEAAの混合物を含む、請求項17~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記層を含む前記フィルム;及び前記EVOH/EAAバリア被覆;を含む被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する、請求項17~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記層を含む前記フィルム;及び前記EVOH/EAAバリア被覆;を含む被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する、請求項17~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記層を含む前記フィルム;及び前記EVOH/EAAバリア被覆;を含む被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する、請求項17~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記層を含む前記フィルム;及び前記EVOH/EAAバリア被覆;を含む被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない、請求項17~34のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ポリマーフィルムのバリア特性及び耐水性を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]熱可塑性ポリマーフィルム(例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、及びポリエステルフィルム)は、優れた強度及び透明性を有し、これによりこれらは食品、化粧品、医薬品などのための包装材料として特に好適である。しかしながら、かかるフィルムは、酸素のようなガスに対して比較的透過性である。貯蔵中、ガスはフィルムに浸透して、包装された内容物と相互作用し、劣化を引き起こすことがある。
【0003】
[0003]ガスバリア被覆は、包装においてバリアを与えて製品の劣化を防止するために、ポリマー基材上で使用される。1つの公知のガスバリア被覆は、結晶性ポリ塩化ビニリデン(PVDC)である。しかしながら、高いガスバリア特性を達成するためには、PVDCの厚さは1ミクロンよりも大きくなければならない。実際には、PVDCは、水中に懸濁して、フィルム表面上に被覆として堆積される。次に、PVDCは高温に曝露されると分解するので、水を追い出して結晶性PVDC被覆を残留させるための乾燥プロセスは、かなりの量の時間及び製造設備の設置面積を要する。更に、(例えば、ごみ燃焼発電所において)PVDC被覆を有するフィルムを燃焼させると、有毒なダイオキシンが生成する可能性があり、これは環境及び作業者の安全性の懸念を引き起こす可能性がある。
【0004】
[0004]他のポリマーバリア被覆は、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)である。EVOHは、0%の相対湿度においてPVDCよりも有意に低い酸素透過性を有する。しかしながら、EVOHは湿気に敏感である。したがって、湿分レベルが増加するにつれて、酸素バリア特性が損なわれる。更に、EVOHは、より高い温度に曝露されると収縮する傾向がある。したがって、EVOHを食品包装用途において使用する場合には、加工及び貯蔵条件は、好適なガスバリア特性及び包装の完全性を維持するために重要である。
【0005】
[0005]他の公知のガスバリア被覆は、金属又は金属酸化物の真空適用被覆である。かかる被覆は、通常はアルミニウム及び/又は酸化アルミニウムの薄層を含み、これは真空蒸着によって基材に適用される。かかる真空適用被覆は、光、水、及び酸素に対するポリマーフィルム基材の透過性を低下させる。しかしながら、真空適用被覆は、フィルム製造プロセスに含めるのに費用がかかる。金属真空適用被覆はまた不透明である。更に、真空適用被覆は容易に損傷する可能性があり、これによりバリア特性が無効になる。更に、金属及び/又は金属酸化物を含ませると、包装のリサイクル性が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006]以下の図面は、実施形態の特定の態様を例示するために含まれており、排他的な実施形態と見なされるべきではない。開示された主題は、本発明の利益を有する当業者に想起されるように、形態及び機能において相当な修正、変更、組み合わせ、及び均等物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]図1は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図2図2は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図3図3は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図4図4は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図5図5は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図6図6は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図7図7は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図8図8は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図9図9は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図10図10は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図11図11は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を含むフィルムの例である。
図12】[0008]図12は、乾燥被覆における(エチレンビニルアルコール)EVOHの重量パーセントの関数としての酸素透過度(OTR)(cc/(m・日))のグラフである。
図13】[0009]図13は、乾燥被覆におけるEVOHの重量%の関数としてのOTR(cc/(m・日))及び耐水性のグラフである。
図14】[0010]図14は、EAAの中和度の関数としてのEVOH/EAAバリア被覆混合物の粘度のプロットである。
図15】[0011]図15は、EVOH/EAAバリア被覆混合物におけるEAAの中和度の関数としてのEVOH/EAAバリア被覆のOTR(cc/(m・日))のプロットである。
図16】[0012]図16は、EVOH/EAAバリア被覆の乾燥被覆重量(g/cm)の関数としてのOTR(cc/(m・日))のグラフである。
図17】[0013]図17は、EVOH/SA組合せバリア被覆からプロットされたOTR及び耐水性のデータである。
図18】[0014]図18は、PVOH/EAA組合せバリア被覆からプロットされたOTR及び耐水性のデータである。
図19】[0015]図19は、EVOH/EVA組合せバリア被覆からプロットされたOTR及び耐水性のデータである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0016]本発明は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆を使用して、ポリマーフィルムのバリア特性及び耐水性を改善することに関する。有利には、EVOH/EAAバリア被覆は、フィルム中の薄い被覆(例えば、約1ミクロン以下の厚さ)であってよく、EVOH/EAAバリア被覆を有さないフィルムと比較して、酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の約80%以上の減少を達成することができる。EVOH/EAAバリア被覆は非常に薄いので、得られる包装はより薄く、良好なバリア特性を有する。更に、EVOH/EAAバリア被覆の薄さにより、単一のポリマーの約95重量%以上の包装の製造が可能になり、これにより公知の方法による再循環を簡単にする。
【0009】
[0017]本明細書に記載されるEVOH/EAAバリア被覆は、主要成分としてエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含み、少量成分としてエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を含む。好ましくは、被覆に使用されるEAAは低いアクリル酸含量(例えば15重量%~25重量%)を有しており、それは疎水性であるが、EVOHとブレンドするのに十分なアクリル酸単位を有する。理論によって限定されるものではないが、疎水性EAAは、EAAを有さないEVOHと比較してバリア被覆の耐水性を増大させ、より広い範囲の相対湿度レベルにわたって酸素透過度を低下させると考えられる。更に、EVOHとEAAのポリマー鎖を架橋するために架橋剤を使用することにより、被覆のバリア特性及び耐水性を更に高めることができると考えられる。更に、電子ビーム照射によって硬化させると、EVOH/EAA被覆及びその下層の基材の収縮を低減して、耐水性を増大させることができる。
【0010】
[0018]一般に、EVOH/EAAバリア被覆混合物をポリマーフィルムの層に適用し、乾燥して、EVOH/EAAバリア被覆を生成する。ポリマーフィルムの層は、ポリマー層、真空適用被覆(例えば、金属及び/又は金属酸化物を含む)、印刷層、又はプライマー被覆であってよい。幾つかの場合においては、その上にEVOH/EAAバリア被覆を有する層は外側層であり、ポリマー層の使用のために更なる処理は必要ない。幾つかの場合においては、次に、その上にEVOH/EAAバリア被覆を有する層を更に処理して、最終ポリマーフィルムを製造することができる。
【0011】
[0019]粘度を使用してポリマーの分子量を特徴付けることができ、ここで、より高い粘度は一般により高い分子量を示す。本発明の組成物及び方法において使用するのに好適なEVOHは、約1cps~約35cps、又は約3cps~約30cpsの粘度(20℃、pH6~8の水中4%固形分)(20℃, 4% solids in water pH 6 to 8)を有することができる。
【0012】
[0020]本発明の組成物及び方法において使用するのに好適なEAAは、約10重量%~約35重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約15重量%~約20重量%のアクリル酸含量を有していてよい。アクリル酸含量は、FTIRによって測定することができる。
【0013】
[0021]本発明の組成物及び方法において使用するのに好適なEAAは、約2,000g/モル~約180,000g/モル、又は約5,000g/モル~約50,000g/モル、又は約50,000g/モル~約150,000g/モル、又は約75,000g/モル~約125,000g/モルのMnを有していてよい。Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0014】
[0022]本発明の組成物及び方法において使用するのに好適なEAAは、約40%~約70%、又は約45%~約65%、又は約50%~約60%の中和度を有していてよい。中和度は水酸化ナトリウムによる滴定によって測定することができ、完全中和は100%の中和度である。
【0015】
[0023]EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用する場合、容易に加工可能でありながら均一な被覆を与えるためには、粘度は中程度のレベル(例えば、1000センチポアズ(cps)未満、好ましくは500cps未満)でなければならない。EAAについてのより高い中和度はEVOH/EAAバリア被覆混合物の粘度を増加させる可能性があり、中和度が過度に高いと混合物が加工不能になる可能性がある。EAAについての中和度がより低いと、混合物が、好適なバリア特性を与えるのに十分な厚さのバリア被覆を与えるのに十分には粘性にならずに、バリア特性が損なわれる可能性がある。EAAの量及びEAAの中和度は、両方とも、EVOH/EAAバリア被覆混合物について好適な粘度を与えるように変更することができる。
【0016】
[0024]EVOH/EAAバリア被覆混合物及び結果として得られるEVOH/EAAバリア被覆中のEVOH:EAAの重量比は、約1.5:1~約6:1、約2:1~約5.5:1、又は約3:1~約5:1であってよい。
【0017】
[0025]EVOH/EAAバリア被覆混合物には、約5重量%の固形分~約15重量%の固形分、又は約7重量%の固形分~約10重量%の固形分を含ませることができ、残りは水である。
【0018】
[0026]好ましくは、EVOH/EAAバリア被覆は、ポリビニルアルコール(PVOH)を有しない。本明細書において使用する「PVOHを有しない」とは、EVOHの重量を基準として0.05重量%の混入レベル以下のPVOHが存在することを包含する。即ち、幾つかの場合においては、EVOH原材料は、少量(例えば、約0.1重量%未満)のPVOHの混入を含み得る。好ましくは、更なるPVOHはEVOH/EAAバリア被覆混合物に加えず、したがって、EVOH/EAAバリア被覆及びEVOH/EAAバリア被覆混合物は、EVOHの重量を基準として0重量%~0.05重量%、より好ましくはEVOHの重量を基準として0重量%のPVOH濃度を有する。
【0019】
[0027]EVOH/EAAバリア被覆混合物及びEVOH/EAAバリア被覆中に、架橋剤を含ませることができる。架橋剤の例としては、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
[0028]EVOH/EAAバリア被覆混合物及びしたがって得られるEVOH/EAAバリア被覆中のEVOH:架橋剤(1種類より多い架橋剤が使用される場合には累計重量)の重量比は、約1:0.01~約1:0.1、又は約1:0.04~約1:0.1であってよい。
【0021】
[0029]場合によっては、EVOH/EAAバリア被覆混合物、及びしたがって得られるEVOH/EAAバリア被覆には、接着促進剤を更に含ませることができる。本発明の組成物及び方法において使用するのに好適な接着促進剤の例としては、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
[0030]EVOH/EAAバリア被覆混合物及びしたがって得られるEVOH/EAAバリア被覆中のEVOH/EAA:接着促進剤の重量比は、約1:0.001~約1:0.3、約1:0.02~約1:0.1であってよい。
【0023】
[0031]場合によっては、組成物に、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含ませることができる。本明細書で使用する「アスペクト比」という用語は、粒子の最大直径を粒子の最小直径で割ったものを指す。例えば、1ミクロンの厚さ及び10ミクロンの直径を有するディスク形状の粒子は、10のアスペクト比を有する。
【0024】
[0032]本発明の組成物及び方法において使用するのに好適な2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤の例としては、粘土粒子、マイカ粒子、タルク粒子、グラフェン、ハロイサイトナノチューブ(HNT)など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
[0033]EVOH/EAAバリア被覆混合物及びしたがって得られるEVOH/EAAバリア被覆中のEVOH/EAAと粒子状添加剤との重量比は、約1:0.01~約1:5、約1:0.1~約1:3、約1:0.5~約1:1、又は約1:1~約1:5であってよい。
【0026】
[0034]EVOH/EAAバリア被覆混合物の調製は、任意の方法によることができる。例えば、EVOH/EAAバリア被覆混合物の成分を全て、水又はEAAを中和するためにアルカリ溶液に加え、混合物を適用する前に、好適な時間、場合によって昇温温度(例えば、約100℃以下、又は周囲温度~約100℃、又は約80℃~約100℃)で混合することができる。或いは、EVOH/EAAバリア被覆混合物の成分を全て、水又はEAAを中和するためにアルカリ溶液に順次加え、混合物を適用する前に、添加の間に、好適な時間、場合によって昇温温度(例えば、約100℃以下)で混合することができる。或いは、混合物を適用する前に、EVOH及びEAAをそれぞれ、好適な時間、場合によって昇温温度(例えば、約100℃以下)で水及びアルカリ溶液中に混合して別々の混合物を得ることができる。次に、2つの混合物を他の成分と適切な割合で一緒に混合して、EVOH/EAAバリア被覆混合物を生成させることができる。
【0027】
[0035]EVOH/EAAバリア被覆混合物は、ポリマーフィルムの層に適用し、乾燥してEVOH/EAAバリア被覆を生成させることができる。場合により、層の間の接着性を高めるために、コロナ処理又は同様の処理を使用して、EVOH/EAAバリヤー被覆混合物を適用する層の親水性を増加させることができる。
【0028】
[0036]EVOH/EAAバリア被覆混合物の適用は、グラビアコート、リバースグラビアコート、ロールコート被覆、ワイヤロッドコート、フレキソ印刷、スプレーコートなど(しかしながらこれらに限定されない)の任意の好適な方法によることができる。被覆組成物は、好ましくは乾燥したら被覆が平滑で均一に分布した層を形成するように適用する。場合により、EVOH/EAAバリア被覆混合物は、乾燥又は実質的に乾燥されたEVOH/EAAバリア被覆の上に適用することができる。これは、EVOH/EAAバリア被覆混合物の2回以上の適用を使用して最終EVOH/EAAバリア被覆を形成するように行うことができる。EVOH/EAAバリア被覆(1以上の処理で適用される)は、約1ミクロン未満、約0.1ミクロン~約1ミクロン、又は約0.3ミクロン~約0.5ミクロンの厚さを有し得る。
【0029】
[0037]EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用した後、熱風、輻射熱、又は透明な接着性被覆を与える任意の他の好適な方法によって乾燥させることができる。乾燥は、ポリマー及び架橋剤(存在する場合)を架橋し得る。場合により、この方法にはまた、被覆を(乾燥の前、後、又は乾燥中に)電子ビーム(eビーム)放射に曝露することを含ませることができる。eビーム放射は、好ましくは高温架橋と比較してEVOH/EAAバリア被覆の収縮を減少させることができる。更に、フィルムが感温層を含む場合には、架橋のために電子ビーム放射を好ましく使用することができる。
【0030】
[0038]EVOH/EAAバリア被覆混合物は、ポリマー層、金属層、金属酸化物層、印刷被覆(例えば、隣接する層を完全に覆うか又は完全には覆わないインク被覆)、又はプライマー被覆など(しかしながらこれらに限定されない)のポリマーフィルムの任意の層に適用することができる。
【0031】
[0039]図1~9は、EVOH/EAAバリア被覆を含むフィルムの例である。
[0040]図1において、フィルム100は、ポリマー層102の表面上にEVOH/EAAバリア被覆104を有するポリマー層102から構成される。この実施例では、フィルム100の少なくとも95重量%(好ましくは少なくとも98重量%)がポリマー層102から構成される。したがって、EVOH/EAAバリア被覆104はフィルム100の非常に少ない重量であるので、ポリマー層102の組成物に適用可能な標準的なリサイクル方法を使用してフィルム100をリサイクルすることができる。
【0032】
[0041]場合により、オーバーコート層を、EVOH/EAAバリア被覆104がポリマー層102とオーバーコート層との間になるように、EVOH/EAAバリア被覆104の上に加えることができる。
【0033】
[0042]図2において、フィルム200は、ポリマー層202と、ポリマー層202の表面上の真空適用被覆206、及び真空適用被覆206上のEVOH/EAAバリア被覆204を含み、真空適用被覆206(金属及び/又は金属酸化物を含む)は、ポリマー層202とEVOH/EAAバリア被覆204との間にある。場合により、オーバーコート層を、EVOH/EAAバリア被覆204が真空適用被覆206とオーバーコート層の間になるように、EVOH/EAAバリア被覆204の上に加えることができる。
【0034】
[0043]図3において、膜300は、順番に、EVOH/EAAバリア被覆304、プライマー被覆308、コアポリマー層302、及びヒートシール可能なポリマー層310を含む。場合により、フィルムには、コアポリマー層とヒートシール可能なポリマー層との間に接着剤被覆(図示せず)を更に含ませることができ、ここでフィルムの2層部は積層によって形成される。場合により、オーバーコート層を、EVOH/EAAバリア被覆304がプライマー被覆308とオーバーコート層の間になるようにEVOH/EAAバリア被覆304の上に加えることができる。
【0035】
[0044]図4において、フィルム400は、EVOH/EAAバリア被覆404と真空適用被覆406の間にポリマー層402を含む。場合により、オーバーコート層を、EVOH/EAAバリア被覆404がポリマー層402とオーバーコート層の間になるようにEVOH/EAAバリア被覆404の上に加えることができる。
【0036】
[0045]図5において、フィルム500は、順番に、オーバープリント層512、印刷被覆514、EVOH/EAAバリア被覆504、及びポリマー層502を含む。この例では、印刷被覆514は、EVOH/EAAバリア被覆504に直接適用される。次に、オーバープリント層512は、印刷被覆514からの保護層として作用する。
【0037】
[0046]図6において、フィルム600は、順番に、ポリマー層602、EVOH/EAAバリア被覆604、プライマー被覆608、及びヒートシール可能なポリマー層610を含む。
【0038】
[0047]図7において、膜700は、順番に、ポリマー層702、EVOH/EAAバリア被覆704、印刷被覆714、接着剤被覆716、及びヒートシール可能なポリマー層710を含む。
【0039】
[0048]図8において、膜800は、順番に、ポリマー層802、EVOH/EAAバリア被覆804、及びヒートシール可能なポリマー層810を含む。場合により、プライマー被覆は、ポリマー層802とEVOH/EAAバリア被覆804の間、及び/又はEVOH/EAAバリア被覆804とヒートシール可能なポリマー層810の間にあってもよい。
【0040】
[0049]図9において、フィルム900は、順番に、ポリマー層902、真空適用被覆906、EVOH/EAAバリア被覆904、プライマー被覆908、及びヒートシール可能なポリマー層910を含む。
【0041】
[0050]図10において、フィルム1000は、順番に、ポリマー層1002、プライマー被覆1008、及びEVOH/EAAバリア被覆1004を含む。場合により、オーバーコート層を、EVOH/EAAバリア被覆1004がプライマー被覆1008とオーバーコート層との間になるようにEVOH/EAAバリア被覆1004の上に加えることができる。
【0042】
[0051]図11において、フィルム1100は、順番に、ポリマー層1102、第1プライマー被覆1108a、EVOH/EAAバリア被覆1104、第2プライマー被覆1108b、及びヒートシール可能な高分子層1110を含む。
【0043】
[0052]図3図6図9、及び図11の例示的なフィルムは、その上に示されている被覆を有するポリマー層又は真空適用被覆を、ヒートシール可能なポリマー層に積層することによって製造することができる。かかるフィルムは、当該技術においてはラミネートフィルムと呼ぶことができる。
【0044】
[0053]上記の実施例のいずれかによるフィルムを使用する場合、食品はフィルムのいずれかの側と接触し得る。即ち、EVOH/EAAは食品と接触することが許容されているので、包装は、食品と接触するか、周囲と接触するか、又は他の層の間にEVOH/EAAバリア被覆を有するように設計することができる。
【0045】
[0054]ポリマー層において使用するのに好適なポリマーの例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
[0055]真空適用被覆において使用するのに好適な金属及び金属酸化物の例としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素(オキシ窒化ケイ素)(silicon oxynitride)、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
[0056]プライマー被覆において使用するのに好適な材料の例としては、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、及びポリウレタンとEAAの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用する場合、プライマー被覆は、通常はポリマー層又はヒートシール可能な層(コロナ処理されているか又はされていない)に適用し、EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用する前に乾燥する。プライマー被覆は、通常は10ミクロン未満の厚さであり、バリア被覆がポリマー膜又はヒートシール可能な層に付着するのを助ける。
【0048】
[0057]オーバーコート層において使用するのに好適な材料の例としては、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、EAA、ポリウレタン、PVOH、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
[0058]フィルムの酸素及び水蒸気バリア特性は、フィルムの種々の層によって定まる。即ち、本発明のEVOH/EAAバリア被覆は、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して、フィルムのバリア特性を改善する。
【0050】
[0059]EVOH/EAAバリア被覆を有するフィルムの酸素バリア特性は、式1:
【0051】
【化1】
【0052】
(式中、(OTREVOH/EAA)は、EVOH/EAAバリア被覆を有するフィルムの酸素透過度である)
による参照試料(即ち、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルム)の酸素透過度(OTRref)に対する酸素透過度の減少率として報告することができる。OTRrefとOTREVOH/EAAは、同じ温度及び相対湿度において測定しなければならない。
【0053】
[0060]酸素透過度は、ASTM-D3985-17にしたがって測定することができる。
[0061]23℃、相対湿度0%においては、OTRは、約50%以上、約75~約99.9%、約85~約99.9%、又は約90~約99.9%の減少率を示し得る。
【0054】
[0062]23℃、相対湿度50%においては、OTRは、約80%以上、約80~約99.9%、約85~約99.9%、約90~約99.9%、又は約95~約99.9%の減少率を示し得る。
【0055】
[0063]23℃、相対湿度90%においては、OTRは、約60%以上、約60~約99.9%、約70~約99.9%、約80~約99.9%、約90~約99.9%、又は約95~約99.9%の減少率を示し得る。
【0056】
[0064]EVOH/EAAバリア被覆を有するフィルムの水蒸気バリア特性は、式2:
【0057】
【化2】
【0058】
(式中、(WVTREVOH/EAA)は、EVOH/EAAバリア被覆を有するフィルムの水蒸気透過度である)
による参照試料(即ち、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルム)の水蒸気透過度(WVTRref)に対する水蒸気透過度の減少率として報告することができる。WVTRrefとWVTREVOH/EAAは、同じ温度及び相対湿度において測定しなければならない。
【0059】
[0065]水蒸気透過度は、ASTM-F1249-13にしたがって測定することができる。
[0066]38℃、相対湿度90%においては、WVTRの減少率は、約10%以上、約10~約99.9%、約25~約99.9%、又は約50~約99.9%であり得る。
【0060】
[0067]耐水性は、被覆が液体水に曝露された場合にその完全性をどの程度良好に維持するかの尺度である。種々の包装用途に関して、EVOH/EAAバリア被覆は、水に曝露されたときにその完全性を維持することができることが重要である。
【0061】
[0068]耐水性は、以下の手順にしたがって測定される。
・水中エオシン1重量%の混合物を調製する。
・エオシン混合物を乾燥EVOH/EAAバリア被覆に適用し、105℃で1分間乾燥させる。被覆及び乾燥プロセスにおいて、エオシンはバリア被覆中のEVOHに結合し、染色されたEVOH/EAAバリア被覆を生成する。
【0062】
・水滴を、染色されたEVOH/EAAバリア被覆上の3つの位置の上に配置する。
・23℃及び相対湿度50%で1分後、3つの水滴の1番目を、まずティッシュペーパーで水滴を吸い取り、次に残りの水をティッシュで穏やかに拭き取ることによって、染色されたEVOH/EAAバリア被覆から除去する。。
【0063】
・23℃及び相対湿度50%で2分後、3つの水滴の2番目を、1分の水滴について記載したのと同じようにして染色されたEVOH/EAAバリア被覆から除去する。
・23℃及び相対湿度50%で5分後、3つの水滴の3番目を、1分の水滴について記載したのと同じようにして染色されたEVOH/EAAバリア被覆から除去する。
【0064】
・次に、染色されたEVOH/EAAバリア被覆の状態を観察し、下記のスケールにしたがってEVOH/EAAバリア被覆の耐水性を分類するために試験する。エオシンはバリア被覆をピンクがかった赤色に染色するので、染色されたEVOH/EAAバリア被覆の完全性を観察することができる。フィルムの背後に白色の背景(ティッシュ又は紙片など)を使用することは、退色の程度を求めるのに役立つ。
【0065】
・5:1分間、2分間、及び5分間の水滴について、染色されたEVOH/EAAバリア被覆に対する変化は観察されなかった。
・4:1分間及び2分間の水滴について、染色されたEVOH/EAAバリア被覆に対する変化は観察されなかった。5分間の水滴についての染色されたEVOH/EAAバリア被覆の退色は、染色されたEVOH/EAAバリア被覆はほとんど未変化であるように見えるが、水滴が存在した箇所から視認される境界が存在するように観察される。
【0066】
・3:5分間の水滴についての染色されたEVOH/EAAバリア被覆の退色が観察され、被覆の10%以下が消失したように見える。例えば、フィルムの背後に白色の背景を使用すると、5分間の水滴と接触した表面の10%以下にわたって色素が観察されない。
【0067】
・2:5分間の水滴についての染色されたEVOH/EAAバリア被覆の退色は、被覆の10%~30%より多くが消失したように見えると観察され、2分間の水滴についての染色されたEVOH/EAAバリア被覆の退色が観察され、1分間の水滴についての染色されたEVOH/EAAバリア被覆の退色は観察されないか、又はほとんど未変化であるが、水滴が存在した箇所から視認される境界が存在する。例えば、フィルムの背後に白色背景を使用すると、5分間の水滴と接触した表面の10%~30%より多くにわたって色素が観察されない。
【0068】
・1:2より多い退色。
[0069]本明細書に記載のEVOH/EAAバリア被覆の耐水性は、約3~約5、又は約4~約5であり得る。
【0069】
[0070]EVOH/EAAバリア被覆を含む本明細書に記載のフィルムは、食品包装、飲料包装、医薬包装、栄養補助食品包装など(しかしながらこれらに限定されない)の種々の包装用途において使用することができる。
【0070】
実施形態の例:
[0071]非限定的な実施形態の例は、ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される層を含むフィルム;エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を1.5:1~約6:1のEVOH:EAAの重量比で含み、EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有する、層の上のエチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリヤ被覆;を含み、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して80%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度50%)の減少率を有する被覆フィルムである。場合により、この実施形態は以下の1以上の要件を更に含み得る:要件1:EVOH/EAAバリア被覆が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される架橋剤を更に含む;要件2:要件1、並びに架橋剤が、0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する;要件3:EVOH/EAAバリア被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される接着促進剤を更に含む;要件4:EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)(20℃, 4% solids in water pH 7)を有する;要件5:EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する;要件6:EAAが40%~70%の中和度を有する;要件7:EVOH/EAAバリア被覆が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む;要件8:EVOH/EAAバリア被覆が、1ミクロン未満の厚さである;要件9:ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される;要件10:真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む;要件11:プライマー被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、又はポリウレタンとEAAの混合物を含む;要件12:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する;要件13:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する;要件14:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する;及び要件15:被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない。組み合わせの例としては、要件1(及び場合により要件2)と要件3~15の1以上との組み合わせ;要件3と要件4~15の1以上との組み合わせ;要件5と要件6~15の1以上との組み合わせ;要件6と要件7~15の1以上との組み合わせ;要件7と要件8~15の1以上との組み合わせ;要件8と要件9~15の1以上との組み合わせ;要件9と要件10~15の1以上との組み合わせ;要件10と要件11~15の1以上との組み合わせ;要件11と要件12~15の1以上との組み合わせ;要件13と要件14~15の1以上との組み合わせ;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
[0072]別の非限定的な実施形態は、エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆混合物をフィルムの層に適用すること(ここで、EVOH/EAAバリア被覆混合物は、1.5:1~約6:1のEVOH:EAAの重量比でエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を含み、EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有し、層は、ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される);及び、EVOH/EAAバリア被覆混合物を乾燥して、層上にEVOH/EAAバリア被覆を生成すること;を含む方法である。場合により、この実施形態は以下の1以上の要件を更に含み得る:要件16:EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用する前に層をコロナ処理すること;を更に含む方法;要件17:EVOH/EAAバリアー被覆に印刷層を適用すること;を更に含む方法。要件18:EVOH/EAAバリアー被覆に真空適用被覆を適用すること;を更に含む方法;要件19:EVOH/EAAバリア被覆混合物がポリビニルアルコールを有さない;要件20:EVOH/EAAバリア被覆混合物が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋剤を更に含む;要件21:架橋剤が、1:0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する;要件22:EVOH/EAAバリア被覆混合物が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される接着促進剤を更に含む;要件23:EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)を有する;要件24:EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する;要件25:EAAが40%~70%の中和度を有する;要件26:EVOH/EAAバリア被覆混合物が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む;要件27:EVOH/EAAバリア被覆が1ミクロン未満の厚さである;要件28:ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む;要件29:真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む;要件30:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する;要件31:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する;要件32:被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する;要件33:被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない。組み合わせの例としては、要件16~18の1つと要件19~33の1以上との組み合わせ;要件19と要件20~33の1以上との組み合わせ;要件20と要件21~33の1以上との組み合わせ;要件21と要件22~33の1以上との組み合わせ;要件22と要件23~33の1以上との組み合わせ;要件23と要件24~33の1以上との組み合わせ;要件24と要件25~33の1以上との組み合わせ;要件25と要件26~33の1以上との組み合わせ;要件26と要件27~33の1以上との組み合わせ;要件27と要件28~33の1以上との組み合わせ;要件28と要件29~33の1以上との組み合わせ;要件29と要件30~33の1以上との組み合せ;要件30と要件31~33の1以上との組み合わせ;要件31と要件32~33の1以上との組み合わせ;及び要件32と33との組み合わせ;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
[0073]特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において使用されるで使用される成分の量、分子量のような特性、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合において「約」という語によって修飾されるものとして理解すべきである。したがって、逆に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において示される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、且つ特許請求の範囲への均等論の適用を限定する意図ではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈すべきである。
【0073】
[0074]本明細書で開示される本発明の実施形態を組み込んだ1以上の代表的な実施形態をここで示す。明快にするために、物理的実施形態の全ての特徴が本出願において記載又は示されてはいない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的な実施形態の開発においては、開発者の目標を達成するために、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約(これらは実施形態によって且つ時々変化する)の遵守のような多数の実施形態固有の決定が行われなければならないことが理解される。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、そのような努力はそれにもかかわらず、当業者にとって日常的な作業であり、本発明の利益を有するであろう。
【0074】
[0075]組成物及び方法は種々の成分又は工程を「含む」という観点で本明細書に記載されているが、組成物及び方法は種々の成分及び工程から「本質的に構成される」又は「構成される」こともある。
【0075】
[0076]本発明の実施形態のより良好な理解を容易にするために、好ましいか又は代表的な実施形態の以下の実施例を与える。以下の実施例は、本発明の範囲を限定するか又は規定するようには決して読むべきではない。
【実施例
【0076】
[0077]異なるEVOHポリマーを使用し、水中に固形分4%で溶解することによって3つの試料を調製した。混合物の粘度(表1)を測定し、ここで、より高い粘度は一般により高分子量のポリマーを示す。このデータを表1にまとめる。
【0077】
【表1】
【0078】
[0078]次に、これらの試料を、約20重量%のアクリル酸含量、約100,000g/モルの分子量、及び約67%の中和度を有するEAAと種々の比でブレンドした。次に、混合物を、K-Loxハンドコーターを使用して、BOPETフィルム、又は真空蒸着AlO被覆を有するBOPETフィルムのいずれかの上に被覆し、続いて105℃で1分間乾燥した。フィルム試料の酸素透過度を図12にプロットする。それぞれのEVOHについて、より多くのEAAをEVOH/EAAバリア被覆中に含ませるのにつれて、バリア特性の低下がある。更に、バリア特性はEVOHの分子量によって定まり、より高い分子量は、EVOH/EAAバリア被覆中のより高いEAA濃度を有するバリア特性を与える。即ち、EVOHの分子量を増加させることによって、より高いEAA濃度を使用してより高いバリアを維持することができる。より高いEAA濃度はEVOH/EAAバリア被覆の耐水性を増加させると考えられるので、より高い分子量のEVOHが好ましい可能性がある。
【0079】
[0079]高分子量EVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117及びEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び67%の中和度)を使用して複数のフィルムを調製した。これらのフィルムのバリア特性及び耐水性を表2に示す。耐水性は複数回測定し、試験の平均値を表2に報告する。
【0080】
【表2】
【0081】
[0080]高分子量EVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117、EAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び67%の中和度)、及びグリオキサール系架橋剤(ClariantからのCARTABOND(登録商標)TSIを使用して複数のフィルムを調製した。これらのフィルムのバリア特性及び耐水性を表3に与える。
【0082】
【表3】
【0083】
[0081]BOPET上の被覆についての表2及び3におけるデータを図13にプロットする。このプロットは、EAAの重量%を減少させると、耐水性が減少し、酸素バリア特性が増加することを示している。しかしながら、好適な耐水性(好ましくは3以上)及び好適なOTR(好ましくは5cc/(m・日)未満)であるスイートスポットが存在する。
【0084】
[0082]EAAの中和度の効果も調べた。EAA(20重量%のアクリル酸含量、及び100,000g/モルの分子量)の分散液を、種々の中和度で調製した。分散液を、EVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117と、EVOH73重量%:EAA27重量%のブレンド比でブレンドした。試料の粘度及びOTRをそれぞれ図14及び15にプロットする。中和度を増加させると、混合物の粘度が増加し、バリア特性が改善される。
【0085】
[0083]BOPET基材上に被覆された73重量%のEVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117及び27重量%のEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び67%の中和度)である固形分4%の混合物を用いて、OTRに対する被覆重量の効果を調べた。表4及び図16は、乾燥被覆重量の関数としてのOTRを与える。一般に、被覆重量に対してOTRの直線的な傾向があり、より高い被覆重量は、より良好なバリア特性を与える。
【0086】
【表4】
【0087】
[0084]BOPPフィルムに適用された先の混合物を使用して、さらなる試料を調製した。表5は、BOPPフィルム及び被覆BOPPフィルムについてのOTR及びWVTRを与える。OTR及びWVTRの減少率は、BOPET又はAlO/BOPET基材を使用したOTR及びWVTRにおける減少率と同等である(表2)。
【0088】
【表5】
【0089】
[0085]ポリエチレン基材(PE)及びポリ乳酸(PLA)、並びにその中に架橋剤を乾燥基準で1:0.03のEVOH/EAA:架橋剤の重量比で有する78重量%のEVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117)及び22重量%のEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び55%の中和度)である固形分5%の混合物を使用して更なる被覆フィルムを調製した。乾燥被覆重量は0.8g/mであった。表6は、本明細書に記載のEVOH/EAAバリア被覆が複数の基材について有用であることを示すOTRデータを与える。
【0090】
【表6】
【0091】
[0086]ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、及びその中に架橋剤を乾燥基準で1:0.03のEVOH/EAA:架橋剤の重量比で有する78重量%のEVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117)及び22重量%のEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び55%の中和度)である固形分5%の混合物を使用して更なる被覆フィルムを調製した。乾燥被覆重量は0.8g/mであった。表7は、本明細書に記載されるEVOH/EAAバリア被覆を異なる架橋剤を使用して製造することができることを示すOTR及び耐水性データを与える。
【0092】
【表7】
【0093】
[0087]EVOH/EAAの組み合わせ以外のバリア被覆混合物を使用して、PET基材上に比較被覆フィルムを調製した。具体的には、EVOH/スチレンアクリル樹脂(EVOH/SA)、PVOH/EAA、及びEVOH/EVAの組み合わせを使用した。乾燥被覆重量は0.8g/mであった。表8は、異なる組み合わせについてのOTR、外観、耐水性、及び形成安定性(7日後の湿潤混合物の凝集についての定性的目視検査)のデータを与える。
【0094】
【表8】
【0095】
[0088]図17は、EVOH/SAの組み合わせからプロットされたOTR及び耐水性データである。図18は、PVOH/EAAの組み合わせからプロットされたOTR及び耐水性データである。図19は、EVOH/EVAの組み合わせからプロットされたOTR及び耐水性データである。EVOH/SAの組み合わせ及びPVOH/EAAの組み合わせについては、より低いバリア特性を達成することができるが、妥当な耐水性と組み合わさっていない。例えば、90/10のEVOH/SAは0.22cc/(m・日)のOTRを有するが、0.5の耐水性を有し;80/20のPVOH/EAAは0.88cc/(m・日)のOTRを有するが、0.5の耐水性を有する。これに対して、本発明の90/10のEVOH/EAAは、0.16cc/(m・日)のOTR及び3の耐水性を有する(表3参照)。
【0096】
[0089]EVOH/EVAの組み合わせと比較して、OTRは、本発明のEVOH/EAAほどではないが多少の耐水性を維持しながら改善することができる。しかしながら、被覆前のEVOH/EVAの組み合わせは不安定であり、曇ったフィルムを形成する。
【0097】
[0090]この実施例は、本発明のEVOH/EAAの組み合わせが、相乗的に、透明性及び耐水性を維持しながら改善されたOTRを有するバリア被覆を生成することを示す。
[0091]EVOH/EAAバリア被覆と基材の間の接着性を改善するために、プライマーを試験した。被覆は、その中にポリエチレンイミン架橋剤を乾燥基準で1:0.03のEVOH/EAA:架橋剤の重量比で有する78重量%のEVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117)及び22重量%のEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び55%の中和度)である固形分5%の混合物であった。基材はBOPPであった。基材を、最初にプライマー、次にEVOH/EAA混合物で被覆した。EVOH/EAAバリア被覆についての乾燥被覆重量は0.8g/mであった。表9は、プライマーを施したBOPPフィルムとEVOH/EAAバリア被覆の間の湿潤性及び接着性に関する定性的観察を含む。湿潤性に関しては、ホール又はフィッシュアイのような目に見える欠陥が非常に少ない乃至全く有さないで形成された良好なフィルムは有とみなし、欠陥が増加するにつれて、ok、中程度、不良、及び無として特徴づけられ。接着性については、100の値はテープ試験(テープを適用してその後に除去する)の後に基材上に全ての被覆が残留することを指し、0の値はテープ試験後に基材上に被覆がないことを指す。
【0098】
【表9】
【0099】
[0092]幾つかの場合においては、バリア被膜へのオーバーコート層が望ましい。表10による基材上に、その中にポリエチレンイミン架橋剤を乾燥基準で1:0.03のEVOH/EAA:架橋剤の重量比で有する78重量%のEVOH(EXCEVAL(登録商標)RS-2117)及び22重量%のEAA(20重量%のアクリル酸含量、100,000g/モルの分子量、及び55%の中和度)である固形分5%の混合物を被覆することによって、幾つかの試料を調製した。EVOH/EAAバリア被覆についての乾燥被覆重量量は0.8g/m2であった。次に、表10にしたがって、水性オーバーコート層を適用した。オーバーコート層は、0.8g/mの乾燥被覆重量を有していた。試料の特性を表10に示す。
【0100】
【表10】
【0101】
[0093]表10のそれぞれの実施例において、フィルムの外観(又は透明性)は、水性のオーバーコート層を適用した場合には保持された。これに対して、100%EVOH被覆は、水性のオーバーコート層を適用した場合には、曇るか又はゴム状になる。架橋EVOH被覆は、透明なままである場合があるが、経時的に安定ではない。ここにEAAを含めることにより、バリア被覆の特性が改善された。
【0102】
[0094]したがって、本発明は、言及された目的及び有利性、並びに本発明において固有のものを達成するのに十分に適している。上記に開示された特定の実施形態は例示的のみであり、本発明における教示の恩恵を受ける当業者には明らかな異なるが均等な方法で修正及び実施することができる。更に、ここで示す構造又はデザインの詳細に対して、下記の特許請求の範囲に記載された以外の限定をする意図はない。したがって、上記で開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正することができ、かかるすべての変形は本発明の範囲及び精神内にあるとみなされることは明らかである。本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要件及び/又は本明細書に開示される随意的な要件の不在下で好適に実施することができる。組成物及び方法は、種々の成分又は工程を「含む」、「含有する」、又は「包含する」というように記載されているが、組成物及び方法はまた、種々の成分及び工程から「本質的に構成され」るか又は「構成され」ていてもよい。上記にに開示される全ての数及び範囲は、若干量だけ変化してもよい。下限及び上限を有する数値範囲が開示されているときは常に、その範囲内にある任意の数及び任意の包含される範囲が具体的に開示されている。特に、本明細書に開示されている値の全ての範囲(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、或いは同等に「約a~b」)は、より広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を示すと理解すべきである。また、特許権者によって明瞭かつ明確に定義されていない限り、特許請求の範囲中の用語はその平易な通常の意味を有する。更に、特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それに続く要件の1つ又は1つより多くを意味する。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
被覆フィルムであって:
ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される層を含むフィルム;
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を1.5:1~約6:1のEVOH:EAAの重量比で含み、EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有する、前記層の上のエチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリヤ被覆;
を含み、
前記被覆フィルムは、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して80%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度50%)の減少率を有する、上記被覆フィルム。
[態様2]
前記EVOH/EAAバリア被覆が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋剤を更に含む、態様1に記載の被覆フィルム。
[態様3]
前記架橋剤が、1:0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する、態様2に記載の被覆フィルム。
[態様4]
前記EVOH/EAAバリア被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される接着促進剤を更に含む、態様1~3のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様5]
前記EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)を有する、態様1~4のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様6]
前記EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する、態様1~5のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様7]
前記EAAが40%~70%の中和度を有する、態様1~6のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様8]
前記EVOH/EAAバリア被覆が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む、態様1~7のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様9]
前記EVOH/EAAバリア被覆が、1ミクロン未満の厚さである、態様1~8のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様10]
前記ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、態様1~9のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様11]
前記真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む、態様1~10のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様12]
前記プライマー被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、又はポリウレタンとEAAの混合物を含む、態様1~11のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様13]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する、態様1~12のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様14]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する、態様1~13のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様15]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する、態様1~14のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様16]
前記被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない、態様1~15のいずれかに記載の被覆フィルム。
[態様17]
方法であって:
エチレンビニルアルコールコポリマー/エチレンアクリル酸コポリマーブレンド(EVOH/EAA)バリア被覆混合物をフィルムの層に適用すること、ここで、前記EVOH/EAAバリア被覆混合物は、1.5:1~約6:1のEVOH:EAAの重量比でエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)及びエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を含み、前記EAAは10重量%~35重量%のアクリル酸含有量を有し、前記層が、ポリマー層、真空適用被覆、印刷層、及びプライマー被覆からなる群から選択される;及び
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物を乾燥して、前記層上にEVOH/EAAバリア被覆を生成すること;
を含む、前記方法。
[態様18]
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物を適用する前に前記層をコロナ処理すること;
を更に含む、態様17に記載の方法。
[態様19]
前記EVOH/EAAバリアー被覆に印刷層を適用すること;
を更に含む、態様17に記載の方法。
[態様20]
前記EVOH/EAAバリアー被覆に真空適用被覆を適用すること;
を更に含む、態様17に記載の方法。
[態様21]
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、乳酸チタン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋剤を更に含む、態様17~20のいずれかに記載の方法。
[態様22]
前記架橋剤が、1:0.01~約1:0.1のEVOH:架橋剤の重量比で存在する、態様21に記載の方法。
[態様23]
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される接着促進剤を更に含む、態様17~22のいずれかに記載の方法。
[態様24]
前記EVOHが、約1cps~約35cpsの粘度(20℃、pH7の水中4%固形分)を有する、態様17~23のいずれかに記載の方法。
[態様25]
前記EAAが、2,000g/モル~約180,000g/モルの数平均分子量を有する、態様17~24のいずれかに記載の方法。
[態様26]
前記EAAが40%~70%の中和度を有する、態様17~25のいずれかに記載の方法。
[態様27]
前記EVOH/EAAバリア被覆混合物が、2以上のアスペクト比を有する粒子状添加剤を更に含む、態様17~26のいずれかに記載の方法。
[態様28]
前記EVOH/EAAバリア被覆が1ミクロン未満の厚さである、態様17~27のいずれかに記載の方法。
[態様29]
前記ポリマー層が、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、態様17~28のいずれかに記載の方法。
[態様30]
前記真空適用被覆が、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む、態様17~29のいずれかに記載の方法。
[態様31]
前記プライマー被覆が、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、又はポリウレタンとEAAの混合物を含む、態様17~30のいずれかに記載の方法。
[態様32]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して50%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)の減少率を有する、態様17~31のいずれかに記載の方法。
[態様33]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して60%以上の酸素透過度(23℃、相対湿度90%)の減少率を有する、態様17~32のいずれかに記載の方法。
[態様34]
前記被覆フィルムが、EVOH/EAAバリア被覆を有さない同じフィルムと比較して10%以上の水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%)の減少率を有する、態様17~33のいずれかに記載の方法。
[態様35]
前記被覆フィルムがポリビニルアルコールを有さない、態様17~34のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19