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特許7521819タンパク質産生及びライブラリー生成のための哺乳類細胞株
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】タンパク質産生及びライブラリー生成のための哺乳類細胞株
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240717BHJP
   C40B 50/06 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240717BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C12N5/10
C40B50/06
C12N15/09 110
C12N15/13 ZNA
C12N5/0781
C07K16/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022037846
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2019502148の分割
【原出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2022095634
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】16163734.3
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516091949
【氏名又は名称】イーティーエッチ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】レディ,サイ
(72)【発明者】
【氏名】ケルトン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】パロラ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ポグソン,マーク
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521211(JP,A)
【文献】国際公開第2015/088643(WO,A1)
【文献】Cell,1993年,Vol.73,1155-1164
【文献】nature communications,2016年03月09日,7:10934,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00- 5/28
C40B 40/10
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類B細胞株の生成方法であって、
a.複数の哺乳類B細胞を提供する工程であって、前記複数の哺乳類B細胞の各々は、マーカータンパク質遺伝子及び内因性IgH免疫グロブリン遺伝子座に対応する2つのホモロジーアームを含む遺伝子組換えDNA配列を含むものであり、前記遺伝子組換えDNA配列が前記複数の哺乳類B細胞の各々に含まれる内因性IgH免疫グロブリン遺伝子座にCRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)システムを用いて挿入される工程を備え、及び前記遺伝子組換えDNA配列はガイドRNA標的部位を含む前記工程、
b.前記マーカータンパク質をコードする前記遺伝子組換えDNA配列を目的タンパク質及び内因性IgH免疫グロブリン遺伝子座に対応する2つのホモロジーアームを含む第2の遺伝子組換えDNA配列で置換し、目的タンパク質は、抗体、抗体様分子、ヒト化ラクダ抗体、又は免疫グロブリン抗原結合フラグメントから選択され、前記遺伝子組換えDNA配列の置換が前記遺伝子組換えDNA配列に対するgRNA標的、CRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)介在性部位特異的DNA切断及び、その後の非相同性末端結合(NHEJ)による前記マーカータンパク質をコードする遺伝子組換えDNA配列の不活性化、及び相同性指向修復(HDR)による前記第2の遺伝子組換えDNA配列の組込みをさらに含む工程、
c.前記マーカータンパク質の存在又は非存在に基づいて前記複数の哺乳類B細胞を分類する工程、及び
d.前記マーカータンパク質が存在しない哺乳類B細胞を選択及び回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の哺乳類B細胞が、プライマリーB細胞、不死化B細胞、ハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞及びリンパ腫細胞を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカータンパク質及び/又は前記目的タンパク質が、内因性免疫グロブリンプロモーターの制御下で発現される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の哺乳類B細胞の各々において、内因性V遺伝子及び内因性V遺伝子が破壊される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の哺乳類B細胞が、前記CRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)を構成的に発現するように遺伝的に改変される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の哺乳類B細胞がセーフハーバー遺伝子座を含み、前記CRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)をコードするDNA配列を含む発現カセットが前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の哺乳類B細胞が、誘導可能かつ調整可能な手段で活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)を発現するように遺伝的に改変される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の哺乳類B細胞がセーフハーバー遺伝子座を含み、前記活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)をコードするDNA配列を含む発現カセットが前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内因性免疫グロブリンプロモーターが、Vプロモーターである、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記目的タンパク質が:
(a)全長抗体、又は
(b)合成抗原結合フラグメント(sFAb)コンストラクトを含む全長抗体
である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法の後に、さらに、ドナーdsDNA又はssDNAのランダム化領域を通じてランダム化された核酸配列で前記遺伝子組換えDNA配列を改変する工程を含む、タンパク質変異体のライブラリーの生成方法。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の方法の後に、さらに、前記活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)の発現を誘導し、その後、誘導性合成体細胞超変異(iSSHM)により前記目的タンパク質内に複数の突然変異を生成する工程を含む、タンパク質変異体のライブラリーの生成方法。
【請求項13】
前記マーカータンパク質が蛍光タンパク質である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変された細胞株、並びに、タンパク質発現のための安定的な細胞の迅速な生成及び、指向性進化及びタンパク質工学のためのタンパク質ライブラリーの作製のためのその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
現在、哺乳類細胞からのタンパク質産生に利用可能な方法は、主に3つの細胞株におけるランダム化された導入遺伝子の組込みに依存している。ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞、マウス骨髄腫細胞(Sp20及びNS0)、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。これらの方法は、高価で時間がかかる。バイオテクノロジー産業の標準として治療用タンパク質産生に求められるのは、凍結細胞ストックからの更新時に無期限に近いタンパク質産生能力をもつ、安定的な組換えタンパク質産生細胞株の生成である。
【0003】
指向性進化によるタンパク質改変には、インビトロ突然変異誘発法によるDNAライブラリーの生成(例えば、変異性PCR、縮重プライマーPCR突然変異誘発、DNAシャッフリング)、続いて発現ホストへのクローニング、及びハイスループットスクリーニングが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
哺乳類細胞中において生成されうるライブラリーの大きさは、トランスフェクション効率の低さにより制限されている。それゆえに、タンパク質ライブラリーのハイスループットスクリーニングには、主にインビトロ又は微生物における発現に基づいた直交表面ディスプレイプラットフォームがしばしば用いられている(例えば、リボソーム、ファージ、酵母及び細菌のディスプレイ)。哺乳類細胞と比べて、それらのホストは、タンパク質のフォールディング、糖鎖付加パターン及び発現において大きな影響を与えうる。
【0005】
しかし決定的なことに、その標準的な系では複雑なタンパク質を効果的に発現及びスクリーニングすることができない(例えば、全長抗体)。加えて、治療用タンパク質の場合、インビトロ又は微生物系におけるライブラリーのスクリーニングに続いて、適切な特徴付けのために哺乳類発現系への遺伝的サブクローニングの必要性がしばしば生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基礎となる課題は、遺伝子組換えタンパク質の発現及び、タンパク質改変と指向性進化アプリケーションのため大きなタンパク質ライブラリーの生成及びスクリーニングのために用いられる、安定的な哺乳類細胞株を生成するための迅速で信頼性があり高価でない方法を提供することである。この問題は、独立請求項の主題により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1AB】PnP-mRuby細胞の生成を示す。(A)模式図は、抗体を発現する野生型(WT)ハイブリドーマ細胞がPnP-mRubyに変換されることを示す。(B)リーダー配列(L)、mRNAスプライス部位(SS)、V及びIgG定常重鎖領域(CH1)を有するWT IgHゲノム遺伝子座の標的を示す。CRISPR-Cas9 gRNA標的部位(黒色)はVとCH1との間のイントロン内にある。ドナーコンストラクトは、732bp及び711bpの2つのホモロジーアームと隣接する終止コドンを有するmRuby遺伝子からなる。PnP-mRuby IgH遺伝子座は、CRISPR-Cas9プラスミド(pX458)及びドナーコンストラクトのWT細胞へのトランスフェクションによって生成され、HDRに基づいたV領域のmRubyへの交換をもたらす。(C)フローサイトメトリーのドットプロットは、WT細胞は専らIgH陽性かつmRuby陰性であり、PnP-mRuby細胞は専らmRuby陽性かつIgH陰性であることを示す。(D)WT及びPnP-mRuby細胞からのゲノムDNAに対して、5’HAのフォワードプライマー及び3’HAの外部のリバースプライマーを用いてPCRを行った。アガロースゲルは予想されるバンドの大きさを示す。PnP-mRuby細胞からのバンドの抽出及びサンガーシーケンシングにより、V領域のmRubyへの交換が確認された。(E)WTハイブリドーマIgK遺伝子座の標的であり、以下の注釈:V及びIgK軽鎖定常領域(CK)、その他(A)に記載したものと同様の注釈である。2つのgRNA標的部位は、V領域を欠損させるために利用される。(F)フローサイトメトリーのドットプロットは、WT細胞がIgH及びIgK強陽性であり、PnP-mRuby細胞が専らIgH及びIgK陰性であることを示す。(E)gRNA-F部位の5’フォワードプライマー及びgRNA-H部位の3’リバースプライマーを用いて、WT及びPnP-mRuby細胞からのゲノムDNAのPCRを行った。アガロースゲルで、WT細胞において予想されたサイズが示され、またPnP-mRuby細胞株由来の増幅はほとんど示されなかった。この図全体において、WT細胞はクローンWEN1.3に対応し、PnP-mRuby細胞はクローン1E9.C3に対応する(表1参照)。
図1CDEFG】PnP-mRuby細胞の生成を示す。(A)模式図は、抗体を発現する野生型(WT)ハイブリドーマ細胞がPnP-mRubyに変換されることを示す。(B)リーダー配列(L)、mRNAスプライス部位(SS)、V及びIgG定常重鎖領域(CH1)を有するWT IgHゲノム遺伝子座の標的を示す。CRISPR-Cas9 gRNA標的部位(黒色)はVとCH1との間のイントロン内にある。ドナーコンストラクトは、732bp及び711bpの2つのホモロジーアームと隣接する終止コドンを有するmRuby遺伝子からなる。PnP-mRuby IgH遺伝子座は、CRISPR-Cas9プラスミド(pX458)及びドナーコンストラクトのWT細胞へのトランスフェクションによって生成され、HDRに基づいたV領域のmRubyへの交換をもたらす。(C)フローサイトメトリーのドットプロットは、WT細胞は専らIgH陽性かつmRuby陰性であり、PnP-mRuby細胞は専らmRuby陽性かつIgH陰性であることを示す。(D)WT及びPnP-mRuby細胞からのゲノムDNAに対して、5’HAのフォワードプライマー及び3’HAの外部のリバースプライマーを用いてPCRを行った。アガロースゲルは予想されるバンドの大きさを示す。PnP-mRuby細胞からのバンドの抽出及びサンガーシーケンシングにより、V領域のmRubyへの交換が確認された。(E)WTハイブリドーマIgK遺伝子座の標的であり、以下の注釈:V及びIgK軽鎖定常領域(CK)、その他(A)に記載したものと同様の注釈である。2つのgRNA標的部位は、V領域を欠損させるために利用される。(F)フローサイトメトリーのドットプロットは、WT細胞がIgH及びIgK強陽性であり、PnP-mRuby細胞が専らIgH及びIgK陰性であることを示す。(E)gRNA-F部位の5’フォワードプライマー及びgRNA-H部位の3’リバースプライマーを用いて、WT及びPnP-mRuby細胞からのゲノムDNAのPCRを行った。アガロースゲルで、WT細胞において予想されたサイズが示され、またPnP-mRuby細胞株由来の増幅はほとんど示されなかった。この図全体において、WT細胞はクローンWEN1.3に対応し、PnP-mRuby細胞はクローン1E9.C3に対応する(表1参照)。
図2ABC】新たな抗体を表面発現し分泌するようにリプログラミングされたPnP-mRubyハイブリドーマの生成を示す。(A)模式図は、mRubyを発現するPnP-mRuby細胞がsFAbを介して新たな抗体を発現するハイブリドーマに再変換されることを示す。(B)sFAbドナーコンストラクトの簡略化した設計図を示す(完全な設計図の詳細については、図S8を参照)。(C)gRNA-J標的部位がmRuby遺伝子内にあるPnP-mRuby IgH遺伝子座を示す。pX458.2及びsFAbドナーでトランスフェクションされたPnP-mRuby細胞は、HDRによりmRubyのゲノムが置換される。その後、新たな抗体は1本鎖mRNA転写物として発現する。(D)フローサイトメトリーのドットプロットは、pX458及びsFAbドナーによるPnP-mRubyのトランスフェクション後に発生した異なる細胞群を示す。IgH発現陽性細胞をソートした。(E)フローサイトメトリーのドットプロットは、PnP-mRuby細胞の初期群及び、(D)においてIgH陽性群をソートして得られたIgH及びIgK発現強陽性の細胞(PnP-HEL23)を示す。(F)グラフは、ハイブリドーマ培養液上清に対するサンドイッチELISA法の結果(IgK抗体で捕捉し、IgH抗体を主に検出した)、PnP-HEL23はWTと同程度のIgG分泌を示すことを表す。(G)(C)で示したプライマーを用いて、WT、PnP-mRuby及びPnP-HEL23細胞のゲノムDNAのPCRを行った。ゲノムPCR産物はアガロースゲルで、PnP-HEL23において予想された大きさのバンドを示す。(H)mRNAからのRT-PCRの結果、PnP-HEL23においてのみ、正しい大きさの位置にバンドが見られる。このPnP-HEL23からのバンドを抽出し、サンガーシーケンシングを行い、PnP-sFAbコンストラクトの正しい組込みが確認された。この図全体において、WT細胞はクローンWEN1.3に対応し、PnP-mRuby細胞はクローン1E9.C3に対応し、PnP-HEL23はクローンYに対応する(表1参照)。
図2DEFGH】新たな抗体を表面発現し分泌するようにリプログラミングされたPnP-mRubyハイブリドーマの生成を示す。(A)模式図は、mRubyを発現するPnP-mRuby細胞がsFAbを介して新たな抗体を発現するハイブリドーマに再変換されることを示す。(B)sFAbドナーコンストラクトの簡略化した設計図を示す(完全な設計図の詳細については、図S8を参照)。(C)gRNA-J標的部位がmRuby遺伝子内にあるPnP-mRuby IgH遺伝子座を示す。pX458.2及びsFAbドナーでトランスフェクションされたPnP-mRuby細胞は、HDRによりmRubyのゲノムが置換される。その後、新たな抗体は1本鎖mRNA転写物として発現する。(D)フローサイトメトリーのドットプロットは、pX458及びsFAbドナーによるPnP-mRubyのトランスフェクション後に発生した異なる細胞群を示す。IgH発現陽性細胞をソートした。(E)フローサイトメトリーのドットプロットは、PnP-mRuby細胞の初期群及び、(D)においてIgH陽性群をソートして得られたIgH及びIgK発現強陽性の細胞(PnP-HEL23)を示す。(F)グラフは、ハイブリドーマ培養液上清に対するサンドイッチELISA法の結果(IgK抗体で捕捉し、IgH抗体を主に検出した)、PnP-HEL23はWTと同程度のIgG分泌を示すことを表す。(G)(C)で示したプライマーを用いて、WT、PnP-mRuby及びPnP-HEL23細胞のゲノムDNAのPCRを行った。ゲノムPCR産物はアガロースゲルで、PnP-HEL23において予想された大きさのバンドを示す。(H)mRNAからのRT-PCRの結果、PnP-HEL23においてのみ、正しい大きさの位置にバンドが見られる。このPnP-HEL23からのバンドを抽出し、サンガーシーケンシングを行い、PnP-sFAbコンストラクトの正しい組込みが確認された。この図全体において、WT細胞はクローンWEN1.3に対応し、PnP-mRuby細胞はクローン1E9.C3に対応し、PnP-HEL23はクローンYに対応する(表1参照)。
図3AB】抗原特異的抗体の表面発現及び分泌をするPnP-HEL23細胞を示す。(A)フローサイトメトリーのヒストグラムは、PnP-HEL23細胞がHEL同種抗原に対する特異抗体を表面発現することを示す。(B)ELISA法のデータは、PnP-HEL23細胞がHELに特異的な抗体を分泌することを示す。WT細胞はクローンWEN1.3に対応し、PnP-mRuby細胞はクローン1E9.C3に対応し、PnP-IgG細胞はクローンYに対応する(表1参照)。
図4ABCDE】迅速で再生可能なPnP抗体産生細胞の生成を示す。(A)フローサイトメトリーのドットプロットは、pX458.2及び異なるPnP-sFAbドナーコンストラクトによりトランスフェクションされた後のPnP-mRubyを示す。細胞をIgHの発現に基づいてソートした。(B)フローサイトメトリーのドットプロットは、(A)で分類した後、3つ全てのPnP細胞株がIgH及びIgKを発現することを示す。(C)図2G及び2Hと同様に、ゲノムDNA及びmRNAについてPCR及びRT-PCRをそれぞれ行った。(D、E)PnP-HEL23.2細胞のフローサイトメトリーのドットプロットは、(A)及び(B)と同様であるが、Cas9ソート工程は省略した。PnP-HyHEL10はクローンUに対応し、PnP-EBV-2G4はクローンAAに対応し、PnP-EBV-4G7はクローンABに対応し、PnP-HEL23はクローンACに対応する(表1参照)。
図5ABC】Cas9及びAIDを発現するPnPハイブリドーマ細胞の生成を示す。(a)PnP-mRuby Rosa26遺伝子座のCRISPR-Cas9標的を示す。ドナーコンストラクトは、Cas9遺伝子に2Aペプチド及びピューロマイシン耐性遺伝子を提供する。この遺伝子座への組込みは、すべてのPnP-mRuby細胞におけるCas9の構成的発現をもたらす。(b)及び(c)Rosa26遺伝子座又は野生型AID遺伝子座いずれかへの組込みによる、誘導性AID遺伝子座のPnP-mRuby-Cas9細胞への組込みを示す。(d)模式図は、AIDの発現による誘導性合成体細胞超変異によって大きなライブラリーが生成されることを示す。これらのライブラリーは、フローサイトメトリーによるハイスループットスクリーニング及び指向性進化に使用することができる。
図5D】Cas9及びAIDを発現するPnPハイブリドーマ細胞の生成を示す。(a)PnP-mRuby Rosa26遺伝子座のCRISPR-Cas9標的を示す。ドナーコンストラクトは、Cas9遺伝子に2Aペプチド及びピューロマイシン耐性遺伝子を提供する。この遺伝子座への組込みは、すべてのPnP-mRuby細胞におけるCas9の構成的発現をもたらす。(b)及び(c)Rosa26遺伝子座又は野生型AID遺伝子座いずれかへの組込みによる、誘導性AID遺伝子座のPnP-mRuby-Cas9細胞への組込みを示す。(d)模式図は、AIDの発現による誘導性合成体細胞超変異によって大きなライブラリーが生成されることを示す。これらのライブラリーは、フローサイトメトリーによるハイスループットスクリーニング及び指向性進化に使用することができる。
図6AB】ハイブリドーマ細胞の免疫グロブリン遺伝子座を標的とするCRISPR-Cas9の検証を示す。(A)フローサイトメトリーのドットプロットは、pX458によるトランスフェクション後のWEN1.3細胞におけるCas9-2A-GFPの発現を示す。(B)Surveyorアッセイの結果は、IgH遺伝子座におけるCRISPR-Cas9の標的を検証する(全てのgRNAのアガロースゲルの位置が確認された)。(C)Surveyorアッセイの結果は、IgK遺伝子座におけるCRISPR-Cas9の標的を検証する(全てのgRNAのアガロースゲルの位置が確認された)。
図6C】ハイブリドーマ細胞の免疫グロブリン遺伝子座を標的とするCRISPR-Cas9の検証を示す。(A)フローサイトメトリーのドットプロットは、pX458によるトランスフェクション後のWEN1.3細胞におけるCas9-2A-GFPの発現を示す。(B)Surveyorアッセイの結果は、IgH遺伝子座におけるCRISPR-Cas9の標的を検証する(全てのgRNAのアガロースゲルの位置が確認された)。(C)Surveyorアッセイの結果は、IgK遺伝子座におけるCRISPR-Cas9の標的を検証する(全てのgRNAのアガロースゲルの位置が確認された)。
図7A】CRISPR-Cas9によるROSA26遺伝子座の標的を示す。(A)同定されたCRISPR標的を有するROSA26遺伝子座(マウス染色体6);切断解析のためのフラグメント増幅のために使用されるプライマーも示す。(B)SurveyorアッセイにおけるDNAゲルは、確認した4つのガイドRNAの全てがCRISPR切断の成功を誘導することを示す。フラグメントは、(A)に示す予想されたサイズと一致する。
図7B】CRISPR-Cas9によるROSA26遺伝子座の標的を示す。(A)同定されたCRISPR標的を有するROSA26遺伝子座(マウス染色体6);切断解析のためのフラグメント増幅のために使用されるプライマーも示す。(B)SurveyorアッセイにおけるDNAゲルは、確認した4つのガイドRNAの全てがCRISPR切断の成功を誘導することを示す。フラグメントは、(A)に示す予想されたサイズと一致する。
図8AB】PnP-Cas9細胞株の設計及び検証を示す。(A)ROSA26遺伝子座は、CRISPR-Cas9誘導型HDRによる構成的Cas9カセットの組込みの標的とされる。2つの別々の遺伝子がカセットに含まれている。ウシ成長ホルモン(bCGh)を有するSpCas9-2A-ピューロマイシン遺伝子、GFP遺伝子はマウスpPGKプロモーターの転写制御下にある。5’及び3’ホモロジーアームもコンストラクト中に存在する。1:SV40pA; 2:AID; 3:F2A; 4:GFP; 5:TRE3Gsプロモーター; 6:hPGKプロモーター; 7:Tet-On 3G; 8:SV40pA; 9:ホモロジーアーム; 10:pCAGプロモーター; 11:SpCas9; 12:T2A; 13:ピューロマイシン; 14:bGH pA; 15:mPGKプロモーター; 16:GFP; 17:ホモロジーアーム。(B)Cas9ドナーコンストラクトの詳細であり、Cas9誘導型NHEJによってGFPをその後不活性化するために使用されるGFP又はpPGK内のガイドRNA標的部位を示す。(C)PnPCas9におけるガイドRNAの導入前又は導入後のサンガーシーケンシング結果。(D)ガイドRNAの存在下でのPnP-Cas9細胞が、GFP細胞のCas9誘導型NHEJをもたらすことをT7E1アッセイで確認する。(E)フローサイトメトリーのプロットは、PnP-mRuby-Cas9細胞において、mRubyを標的とするgRNAの添加が、ほぼ全ての細胞におけるmRuby発現のノックアウトをもたらすことを示す。
図8C】PnP-Cas9細胞株の設計及び検証を示す。(A)ROSA26遺伝子座は、CRISPR-Cas9誘導型HDRによる構成的Cas9カセットの組込みの標的とされる。2つの別々の遺伝子がカセットに含まれている。ウシ成長ホルモン(bCGh)を有するSpCas9-2A-ピューロマイシン遺伝子、GFP遺伝子はマウスpPGKプロモーターの転写制御下にある。5’及び3’ホモロジーアームもコンストラクト中に存在する。1:SV40pA; 2:AID; 3:F2A; 4:GFP; 5:TRE3Gsプロモーター; 6:hPGKプロモーター; 7:Tet-On 3G; 8:SV40pA; 9:ホモロジーアーム; 10:pCAGプロモーター; 11:SpCas9; 12:T2A; 13:ピューロマイシン; 14:bGH pA; 15:mPGKプロモーター; 16:GFP; 17:ホモロジーアーム。(B)Cas9ドナーコンストラクトの詳細であり、Cas9誘導型NHEJによってGFPをその後不活性化するために使用されるGFP又はpPGK内のガイドRNA標的部位を示す。(C)PnPCas9におけるガイドRNAの導入前又は導入後のサンガーシーケンシング結果。(D)ガイドRNAの存在下でのPnP-Cas9細胞が、GFP細胞のCas9誘導型NHEJをもたらすことをT7E1アッセイで確認する。(E)フローサイトメトリーのプロットは、PnP-mRuby-Cas9細胞において、mRubyを標的とするgRNAの添加が、ほぼ全ての細胞におけるmRuby発現のノックアウトをもたらすことを示す。
図8D】PnP-Cas9細胞株の設計及び検証を示す。(A)ROSA26遺伝子座は、CRISPR-Cas9誘導型HDRによる構成的Cas9カセットの組込みの標的とされる。2つの別々の遺伝子がカセットに含まれている。ウシ成長ホルモン(bCGh)を有するSpCas9-2A-ピューロマイシン遺伝子、GFP遺伝子はマウスpPGKプロモーターの転写制御下にある。5’及び3’ホモロジーアームもコンストラクト中に存在する。1:SV40pA; 2:AID; 3:F2A; 4:GFP; 5:TRE3Gsプロモーター; 6:hPGKプロモーター; 7:Tet-On 3G; 8:SV40pA; 9:ホモロジーアーム; 10:pCAGプロモーター; 11:SpCas9; 12:T2A; 13:ピューロマイシン; 14:bGH pA; 15:mPGKプロモーター; 16:GFP; 17:ホモロジーアーム。(B)Cas9ドナーコンストラクトの詳細であり、Cas9誘導型NHEJによってGFPをその後不活性化するために使用されるGFP又はpPGK内のガイドRNA標的部位を示す。(C)PnPCas9におけるガイドRNAの導入前又は導入後のサンガーシーケンシング結果。(D)ガイドRNAの存在下でのPnP-Cas9細胞が、GFP細胞のCas9誘導型NHEJをもたらすことをT7E1アッセイで確認する。(E)フローサイトメトリーのプロットは、PnP-mRuby-Cas9細胞において、mRubyを標的とするgRNAの添加が、ほぼ全ての細胞におけるmRuby発現のノックアウトをもたらすことを示す。
図8E】PnP-Cas9細胞株の設計及び検証を示す。(A)ROSA26遺伝子座は、CRISPR-Cas9誘導型HDRによる構成的Cas9カセットの組込みの標的とされる。2つの別々の遺伝子がカセットに含まれている。ウシ成長ホルモン(bCGh)を有するSpCas9-2A-ピューロマイシン遺伝子、GFP遺伝子はマウスpPGKプロモーターの転写制御下にある。5’及び3’ホモロジーアームもコンストラクト中に存在する。1:SV40pA; 2:AID; 3:F2A; 4:GFP; 5:TRE3Gsプロモーター; 6:hPGKプロモーター; 7:Tet-On 3G; 8:SV40pA; 9:ホモロジーアーム; 10:pCAGプロモーター; 11:SpCas9; 12:T2A; 13:ピューロマイシン; 14:bGH pA; 15:mPGKプロモーター; 16:GFP; 17:ホモロジーアーム。(B)Cas9ドナーコンストラクトの詳細であり、Cas9誘導型NHEJによってGFPをその後不活性化するために使用されるGFP又はpPGK内のガイドRNA標的部位を示す。(C)PnPCas9におけるガイドRNAの導入前又は導入後のサンガーシーケンシング結果。(D)ガイドRNAの存在下でのPnP-Cas9細胞が、GFP細胞のCas9誘導型NHEJをもたらすことをT7E1アッセイで確認する。(E)フローサイトメトリーのプロットは、PnP-mRuby-Cas9細胞において、mRubyを標的とするgRNAの添加が、ほぼ全ての細胞におけるmRuby発現のノックアウトをもたらすことを示す。
図9A】PnP-iAID-mRuby細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Dox誘導性プロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてmRubyを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分離コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図9B】PnP-iAID-mRuby細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Dox誘導性プロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてmRubyを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分離コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図9C】PnP-iAID-mRuby細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Dox誘導性プロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてmRubyを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分離コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図10A】PnP-iAID-IgG細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Doxinducibleプロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてsFAbを介してIgGを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分類コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図10B】PnP-iAID-IgG細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Doxinducibleプロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてsFAbを介してIgGを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分類コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図10C】PnP-iAID-IgG細胞株の生成及び選択を示す。(A)iSSHMドナーカセット(Doxinducibleプロモーターシステム下のGFP-2A-AIDコンストラクト)の組込み物が、Cas9誘導性HDRによってハイブリドーマ細胞のRosa26座に組込まれることを示す。ハイブリドーマ細胞は、それらのリプログラミングされたIgH遺伝子座においてsFAbを介してIgGを発現する。(B)Cas9(2A-BFP)を発現する細胞をソートし、次いでDoxの存在下(又は陰性対照として非存在下)で、GFP陽性細胞を単一細胞分離し、増殖させる。(C)Bからの単一細胞分類コロニー中のDoxの有無によるGFP発現の解析。
図11A1】ssODN誘導性HDRを最適化し、CDRH3遺伝的多様性を有する合成抗体(sAb)ライブラリーを構築するための一般的なワークフローを示す。(A)A.I:Cas9ベクターpX458でトランスフェクションした後の、Cas9による切断を指示するためのCDRH3 sgRNA部位を有する重鎖遺伝子座におけるPnP-HEL23 sAbコンストラクト。Cas9誘導性二本鎖切断は、NHEJを介した切断部位の近くに挿入/欠失(InDels)を導入し、フレームシフト突然変異及び機能不全タンパク質発現を引き起こす。分解図中に示す配列は配列番号17である。A.IIa:次いで、CDRH3についてのコドン再配列を伴うドナーssODNによって促進されるHDRを介して、抗体発現を回復させることができる。A.IIb:縮重ssODNのHDR取込みを介したsAbカセットのCDRH3へのさらなる遺伝的多様性の付加(NNKランダム化)。ソート結果:左上:A1上パネル; 右上:A1下パネル(=A.IIa/b上パネル); 左下:A.IIa下パネル; A.IIb下パネル。(B)HDRパーセンテージは、蛍光標識された抗原での標識を介して、フローサイトメトリー解析によって評価される。HELに対する抗原特異的抗体発現を回復した細胞のパーセンテージを表す。トランスフェクション陽性(GFP+)細胞についてスクリーニングした後のn=2の実験の代表データを示す。1:Cas9プラスミド; 2:Cas9 RNP; 3:Cas9 RNP+改変ssODN; 4:Cas9細胞+改変ssODN。
図11A2】ssODN誘導性HDRを最適化し、CDRH3遺伝的多様性を有する合成抗体(sAb)ライブラリーを構築するための一般的なワークフローを示す。(A)A.I:Cas9ベクターpX458でトランスフェクションした後の、Cas9による切断を指示するためのCDRH3 sgRNA部位を有する重鎖遺伝子座におけるPnP-HEL23 sAbコンストラクト。Cas9誘導性二本鎖切断は、NHEJを介した切断部位の近くに挿入/欠失(InDels)を導入し、フレームシフト突然変異及び機能不全タンパク質発現を引き起こす。分解図中に示す配列は配列番号17である。A.IIa:次いで、CDRH3についてのコドン再配列を伴うドナーssODNによって促進されるHDRを介して、抗体発現を回復させることができる。A.IIb:縮重ssODNのHDR取込みを介したsAbカセットのCDRH3へのさらなる遺伝的多様性の付加(NNKランダム化)。ソート結果:左上:A1上パネル; 右上:A1下パネル(=A.IIa/b上パネル); 左下:A.IIa下パネル; A.IIb下パネル。(B)HDRパーセンテージは、蛍光標識された抗原での標識を介して、フローサイトメトリー解析によって評価される。HELに対する抗原特異的抗体発現を回復した細胞のパーセンテージを表す。トランスフェクション陽性(GFP+)細胞についてスクリーニングした後のn=2の実験の代表データを示す。1:Cas9プラスミド; 2:Cas9 RNP; 3:Cas9 RNP+改変ssODN; 4:Cas9細胞+改変ssODN。
図11A3】ssODN誘導性HDRを最適化し、CDRH3遺伝的多様性を有する合成抗体(sAb)ライブラリーを構築するための一般的なワークフローを示す。(A)A.I:Cas9ベクターpX458でトランスフェクションした後の、Cas9による切断を指示するためのCDRH3 sgRNA部位を有する重鎖遺伝子座におけるPnP-HEL23 sAbコンストラクト。Cas9誘導性二本鎖切断は、NHEJを介した切断部位の近くに挿入/欠失(InDels)を導入し、フレームシフト突然変異及び機能不全タンパク質発現を引き起こす。分解図中に示す配列は配列番号17である。A.IIa:次いで、CDRH3についてのコドン再配列を伴うドナーssODNによって促進されるHDRを介して、抗体発現を回復させることができる。A.IIb:縮重ssODNのHDR取込みを介したsAbカセットのCDRH3へのさらなる遺伝的多様性の付加(NNKランダム化)。ソート結果:左上:A1上パネル; 右上:A1下パネル(=A.IIa/b上パネル); 左下:A.IIa下パネル; A.IIb下パネル。(B)HDRパーセンテージは、蛍光標識された抗原での標識を介して、フローサイトメトリー解析によって評価される。HELに対する抗原特異的抗体発現を回復した細胞のパーセンテージを表す。トランスフェクション陽性(GFP+)細胞についてスクリーニングした後のn=2の実験の代表データを示す。1:Cas9プラスミド; 2:Cas9 RNP; 3:Cas9 RNP+改変ssODN; 4:Cas9細胞+改変ssODN。
図11B】ssODN誘導性HDRを最適化し、CDRH3遺伝的多様性を有する合成抗体(sAb)ライブラリーを構築するための一般的なワークフローを示す。(A)A.I:Cas9ベクターpX458でトランスフェクションした後の、Cas9による切断を指示するためのCDRH3 sgRNA部位を有する重鎖遺伝子座におけるPnP-HEL23 sAbコンストラクト。Cas9誘導性二本鎖切断は、NHEJを介した切断部位の近くに挿入/欠失(InDels)を導入し、フレームシフト突然変異及び機能不全タンパク質発現を引き起こす。分解図中に示す配列は配列番号17である。A.IIa:次いで、CDRH3についてのコドン再配列を伴うドナーssODNによって促進されるHDRを介して、抗体発現を回復させることができる。A.IIb:縮重ssODNのHDR取込みを介したsAbカセットのCDRH3へのさらなる遺伝的多様性の付加(NNKランダム化)。ソート結果:左上:A1上パネル; 右上:A1下パネル(=A.IIa/b上パネル); 左下:A.IIa下パネル; A.IIb下パネル。(B)HDRパーセンテージは、蛍光標識された抗原での標識を介して、フローサイトメトリー解析によって評価される。HELに対する抗原特異的抗体発現を回復した細胞のパーセンテージを表す。トランスフェクション陽性(GFP+)細胞についてスクリーニングした後のn=2の実験の代表データを示す。1:Cas9プラスミド; 2:Cas9 RNP; 3:Cas9 RNP+改変ssODN; 4:Cas9細胞+改変ssODN。
図12A】誘導性AIDの突然変異活性の評価。(a)実験概要。(GFP-2Aを介して)組込まれたTetOne-AIDに基づいてソートされたPnP-mRuby細胞を、Dox(1μg/ml、毎日誘導更新)により72時間誘導し、FACSで高(未変化)又は低(減少)mRuby蛍光に基づいてソートした。ゲノムDNA(gDNA)を2つの集団から抽出し、mRuby遺伝子をクローン化しサンガーシーケンシングを行った。(b)左から右へ、FACSのプロットを表す:ソート時の細胞(表示されたゲート及びパーセンテージは原型のものではないが、説明目的のために解析後に再現した)。回復後の2つのソートされた集団:mRuby高発現に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-hig、及びmRuby発現減少に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-low;陽性対照として用いたPnP-mRuby細胞。配列解析のためにゲノムDNAを単離した。(c)配列をmRubyにマッピングし、突然変異の存在を調べた。このグラフは、各サンプルの変異したクローンの割合を示す。「大きな欠失」とは、1ヌクレオチドより大きい欠失を意味する。大きな欠失を有するクローンを産生する唯一のサンプルは、PnP-mRuby-AID Red-lowであった。棒の上の値は、群における実際の頻度(%変換前)を表す。(d)解析したクローンにおける1kbあたりの突然変異率。4つのサンプル/群のそれぞれについて、全ての解析されたクローンについて配列決定されたヌクレオチド(mRuby ORFのみ、711bp)を合計し、結果的にkb当たりの突然変異したヌクレオチドの頻度を計算した。特に、欠失の場合、欠失した各ヌクレオチドは突然変異したものとして計算された。注:(c)及び(d)で報告されたデータは、単一のnt置換のコード化又は非コード化(サイレント)結果を説明しない。
図12B】誘導性AIDの突然変異活性の評価。(a)実験概要。(GFP-2Aを介して)組込まれたTetOne-AIDに基づいてソートされたPnP-mRuby細胞を、Dox(1μg/ml、毎日誘導更新)により72時間誘導し、FACSで高(未変化)又は低(減少)mRuby蛍光に基づいてソートした。ゲノムDNA(gDNA)を2つの集団から抽出し、mRuby遺伝子をクローン化しサンガーシーケンシングを行った。(b)左から右へ、FACSのプロットを表す:ソート時の細胞(表示されたゲート及びパーセンテージは原型のものではないが、説明目的のために解析後に再現した)。回復後の2つのソートされた集団:mRuby高発現に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-hig、及びmRuby発現減少に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-low;陽性対照として用いたPnP-mRuby細胞。配列解析のためにゲノムDNAを単離した。(c)配列をmRubyにマッピングし、突然変異の存在を調べた。このグラフは、各サンプルの変異したクローンの割合を示す。「大きな欠失」とは、1ヌクレオチドより大きい欠失を意味する。大きな欠失を有するクローンを産生する唯一のサンプルは、PnP-mRuby-AID Red-lowであった。棒の上の値は、群における実際の頻度(%変換前)を表す。(d)解析したクローンにおける1kbあたりの突然変異率。4つのサンプル/群のそれぞれについて、全ての解析されたクローンについて配列決定されたヌクレオチド(mRuby ORFのみ、711bp)を合計し、結果的にkb当たりの突然変異したヌクレオチドの頻度を計算した。特に、欠失の場合、欠失した各ヌクレオチドは突然変異したものとして計算された。注:(c)及び(d)で報告されたデータは、単一のnt置換のコード化又は非コード化(サイレント)結果を説明しない。
図12C】誘導性AIDの突然変異活性の評価。(a)実験概要。(GFP-2Aを介して)組込まれたTetOne-AIDに基づいてソートされたPnP-mRuby細胞を、Dox(1μg/ml、毎日誘導更新)により72時間誘導し、FACSで高(未変化)又は低(減少)mRuby蛍光に基づいてソートした。ゲノムDNA(gDNA)を2つの集団から抽出し、mRuby遺伝子をクローン化しサンガーシーケンシングを行った。(b)左から右へ、FACSのプロットを表す:ソート時の細胞(表示されたゲート及びパーセンテージは原型のものではないが、説明目的のために解析後に再現した)。回復後の2つのソートされた集団:mRuby高発現に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-hig、及びmRuby発現減少に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-low;陽性対照として用いたPnP-mRuby細胞。配列解析のためにゲノムDNAを単離した。(c)配列をmRubyにマッピングし、突然変異の存在を調べた。このグラフは、各サンプルの変異したクローンの割合を示す。「大きな欠失」とは、1ヌクレオチドより大きい欠失を意味する。大きな欠失を有するクローンを産生する唯一のサンプルは、PnP-mRuby-AID Red-lowであった。棒の上の値は、群における実際の頻度(%変換前)を表す。(d)解析したクローンにおける1kbあたりの突然変異率。4つのサンプル/群のそれぞれについて、全ての解析されたクローンについて配列決定されたヌクレオチド(mRuby ORFのみ、711bp)を合計し、結果的にkb当たりの突然変異したヌクレオチドの頻度を計算した。特に、欠失の場合、欠失した各ヌクレオチドは突然変異したものとして計算された。注:(c)及び(d)で報告されたデータは、単一のnt置換のコード化又は非コード化(サイレント)結果を説明しない。
図12D】誘導性AIDの突然変異活性の評価。(a)実験概要。(GFP-2Aを介して)組込まれたTetOne-AIDに基づいてソートされたPnP-mRuby細胞を、Dox(1μg/ml、毎日誘導更新)により72時間誘導し、FACSで高(未変化)又は低(減少)mRuby蛍光に基づいてソートした。ゲノムDNA(gDNA)を2つの集団から抽出し、mRuby遺伝子をクローン化しサンガーシーケンシングを行った。(b)左から右へ、FACSのプロットを表す:ソート時の細胞(表示されたゲート及びパーセンテージは原型のものではないが、説明目的のために解析後に再現した)。回復後の2つのソートされた集団:mRuby高発現に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-hig、及びmRuby発現減少に基づいてソートされたPnP-mRuby-AID Red-low;陽性対照として用いたPnP-mRuby細胞。配列解析のためにゲノムDNAを単離した。(c)配列をmRubyにマッピングし、突然変異の存在を調べた。このグラフは、各サンプルの変異したクローンの割合を示す。「大きな欠失」とは、1ヌクレオチドより大きい欠失を意味する。大きな欠失を有するクローンを産生する唯一のサンプルは、PnP-mRuby-AID Red-lowであった。棒の上の値は、群における実際の頻度(%変換前)を表す。(d)解析したクローンにおける1kbあたりの突然変異率。4つのサンプル/群のそれぞれについて、全ての解析されたクローンについて配列決定されたヌクレオチド(mRuby ORFのみ、711bp)を合計し、結果的にkb当たりの突然変異したヌクレオチドの頻度を計算した。特に、欠失の場合、欠失した各ヌクレオチドは突然変異したものとして計算された。注:(c)及び(d)で報告されたデータは、単一のnt置換のコード化又は非コード化(サイレント)結果を説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
用語及び定義
本明細書の文脈において、配列同一性及び配列同一性のパーセンテージという用語は、2つの整列した配列を比較することによって決定される値を指す。比較のための配列のアラインメントのための方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列のアラインメントは、SmithとWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanとWunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のグローバルアラインメントアルゴリズム、PearsonとLipman,Proc.Nat. Acad.Sci.85:2444 (1988)の類似検索法又は、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって行われ、CLUSTAL、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAを含むが、これらに限定されない。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。
【0009】
アミノ酸配列の比較のための一例としては、デフォルト設定を用いるBLASTPアルゴリズムがある:期待値:10; ワードサイズ:3; クエリ範囲での最大一致:0; マトリックス:BLOSUM62; ギャップコスト:存在11、拡張1; 構成調整:条件付き構成スコアマトリクス調整。核酸配列の比較のためのそのような一例は、デフォルト設定を用いるBLASTNアルゴリズムである:期待閾値:10; ワードサイズ:28; クエリ範囲での最大一致:0; マッチ/ミスマッチスコア:1.-2; ギャップコスト:リニア。他に記載がない限り、本明細書で提供される配列同一性値は、タンパク質及び核酸比較のための上記の既定のパラメーターをそれぞれ用いて、BLASTプログラム群(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403-410(1990))を用いて得られた値を指す。
【0010】
本明細書の文脈において、用語「B細胞」は、V(D)J組換えによって免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子座のゲノム再編成を完了したリンパ系統の細胞を指す。
【0011】
本明細書の文脈において、用語「IgH遺伝子座」は、免疫グロブリン重鎖遺伝子座を指す。
【0012】
本明細書の文脈において、用語「部位特異的エンドヌクレアーゼ」は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びメガヌクレアーゼからなる群から選ばれるエンドヌクレアーゼを指す。
【0013】
本明細書の文脈において、「CRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)」という用語は、Streptococcus pyogenes(SpyCas9)のCas9エンドヌクレアーゼ、SpyCas9の相同分子種、又はSpyCas9もしくはその相同分子種の改変タンパク質変異体を指す。
【0014】
本明細書の文脈において、用語「相同分子種」は、単一の祖先遺伝子からの直系で進化した遺伝子及びその対応するポリペプチドを指す。言い換えれば、相同分子種遺伝子/ポリペプチドは共通の祖先を共有し、ある種が2つの別々の種に分かれたときに分離した。その後、生じた2種における単一の遺伝子のコピーを相同分子種と称する。2つの遺伝子が相同分子種であることを確かめるために、当業者は、遺伝子又はポリペプチドの整列したヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較することによって、遺伝子系統の系統発生分析を行うことができる。
【0015】
本明細書の文脈において、抗体という用語は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られているその意味で使用される;G型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD型)、E型(IgE型)又はM型(IgM型)の免疫グロブリンを含むが、これに限定されない全抗体を意味し、任意の抗原結合フラグメント又はその単鎖、及び関連する又は誘導されたコンストラクトを含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(C)を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2及びC3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)及び軽鎖定常領域(C)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を介在し得る。
【0016】
本明細書の文脈における抗体様分子という用語は、高い親和性(kd≦10E-8mol/L)で別の分子又は標的に特異的に結合することができる分子を指す。抗体様分子は、抗体の特異的結合と同様にその標的に結合する。抗体様分子という用語は、例えば設計されたアンキリンリピートタンパク質(Molecular Partners、Zurich)アルマジロリピートタンパク質に由来するポリペプチド、ロイシンリッチリピートタンパク質に由来するポリペプチド、及びテトラリコペプチドリピートタンパク質に由来するポリペプチドのようなリピートタンパク質を包含する。抗体様分子という用語は、プロテインAドメインに由来するポリペプチド(プロテインAドメイン由来ポリペプチド)、フィブロネクチンドメインFN3に由来するポリペプチド、コンセンサスフィブロネクチンドメインに由来するポリペプチド、リポカリンに由来するポリペプチド、ジンクフィンガーに由来するポリペプチド、Src相同ドメイン2(SH2)に由来するポリペプチド、Src相同ドメイン3(SH3)に由来するポリペプチド、PDZドメインに由来するポリペプチド、γ-クリスタリン由来のポリペプチド、ユビキチン由来のポリペプチド、システインノットポリペプチド由来のポリペプチド、及びノッティン由来のポリペプチドをさらに包含する。
【0017】
用語「プロテインAドメイン由来ポリペプチド」は、プロテインAの誘導体であり、免疫グロブリンのFc領域及びFab領域に特異的に結合することができる分子を指す。
【0018】
アルマジロリピートタンパク質という用語は、少なくとも1つのアルマジロリピートを含むポリペプチドを指し、アルマジロリピートは、ヘアピン構造を形成するαヘリックスの対によって特徴付けられる。
【0019】
本明細書の文脈におけるヒト化ラクダ科動物抗体という用語は、重鎖又は重鎖の可変ドメイン(VHHドメイン)のみからなり、そのアミノ酸配列がヒトにおいて天然に産生される抗体との類似性を増加させるように改変された抗体を指し、したがって、ヒトに投与した場合、免疫原性の低下が示される。ラクダ抗体をヒト化するための一般的な戦略は、Vinckeら “General strategy to humanize a camelid single-domain antibody and identification of a universal humanized nanobody scaffold”, J Biol Chem. 2009 Jan 30;284(5):3273-3284, and US2011165621A1.に示されている。
【0020】
本明細書の文脈において、結晶化可能フラグメント(Fc)領域という用語は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られているその意味で使用される;それは、ジスルフィド結合によって共有結合されたC2及びC3ドメインを含む2つの同一の重鎖フラグメントを含む抗体の画分を指す。
【0021】
本明細書で使用される用語のさらなる定義は、必要に応じて文書全体を通して与えられる。
【0022】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、細胞株の生成方法であって、
a.複数の哺乳類B細胞を提供し、複数のB細胞の各々は、マーカータンパク質をコードする遺伝子組換えゲノムDNA配列を含み、遺伝子組換えゲノムDNA配列が前記B細胞に含まれる内因性免疫グロブリン遺伝子座、特にIgH遺伝子座に挿入され、前記遺伝子組換えゲノムDNA配列は部位特異的ヌクレアーゼ、特にCRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)による切断に適する工程、
b.前記マーカータンパク質をコードする前記遺伝子組換えゲノムDNA配列を、目的タンパク質をコードする第2の遺伝子組換えDNA配列で置換する工程、
c.前記マーカータンパク質の存在又は非存在に基づいて前記B細胞をソートする工程、及び
d.前記マーカータンパク質が存在しないB細胞を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、マーカータンパク質は蛍光タンパク質である。
【0024】
特定の実施形態では、マーカータンパク質は、抗生物質薬物に対する耐性を付与するタンパク質である。
【0025】
特定の実施形態では、前記マーカータンパク質は蛍光タンパク質であり、前記ソートはフローサイトメトリーによって行われる。
【0026】
本明細書の文脈において、「前記マーカータンパク質をコードする前記遺伝子組換えゲノムDNA配列を、目的タンパク質をコードする第2の遺伝子組換えDNA配列で置換する」という表現は、マーカータンパク質はもはや発現されず、目的タンパク質が代わりに発現されるように、実際にDNA配列が置換され、機能的にも置換されることを示す。
【0027】
当業者であれば、「(マーカータンパク質をコードする)前記遺伝子組換えゲノムDNA配列は部位特異的ヌクレアーゼによる切断に適する」という表現が、マーカータンパク質をコードするDNA配列内の切断及び、直近の3’及び/又は5’隣接領域内の切断のいずれもを含むことを認識する。
【0028】
特定の実施形態では、前記遺伝子組換えゲノム配列は、5’隣接配列領域及び3’隣接配列領域と隣接し、前記5’隣接配列領域及び/又は前記3’隣接配列領域は、部位特異的ヌクレアーゼによる切断に適する。
【0029】
特定の実施形態では、前記隣接配列領域は、0~1500ヌクレオチド、特に0ヌクレオチド又は1~700ヌクレオチド、さらに特に0ヌクレオチド又は1~100ヌクレオチドから成る。部位特異的ヌクレアーゼ、特にCas9による切断を受けやすい部位は、典型的には、マーカータンパク質をコードする配列から500ヌクレオチド以内又はマーカータンパク質をコードする配列内にある。
【0030】
特定の実施形態では、目的タンパク質は、抗体、抗体様分子、ヒト化ラクダ科動物抗体又は免疫グロブリン抗原結合フラグメントである。後に挿入される目的遺伝子が抗体である場合、内因性免疫グロブリンV遺伝子は、マーカータンパク質をコードする組換えゲノムDNA配列によって置換又は破壊される。
【0031】
本明細書の文脈において、「V遺伝子」という用語は、免疫グロブリン重鎖の可変領域をコードするDNA配列を指す。
【0032】
本明細書の文脈において、「V遺伝子」という用語は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を指す。
【0033】
特定の実施形態では、複数のB細胞は、プライマリーB細胞、不死化B細胞、ハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞及びリンパ腫細胞を含む群から選択される。
【0034】
特定の実施形態では、マーカータンパク質及び/又は目的タンパク質は、内因性免疫グロブリンプロモーター、特にVプロモーターの制御下で発現される。
【0035】
本明細書の文脈において、用語「Vプロモーター」は、「V遺伝子」のプロモーターを指す。
【0036】
特定の実施形態では、内因性V遺伝子及び内因性V遺伝子は、前記複数のB細胞のそれぞれにおいて破壊される。これは、B細胞が免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖のいずれも発現できないことを意味する。
【0037】
特定の実施形態において、複数のB細胞は、前記CRISPR介在エンドヌクレアーゼを構成的に発現するように遺伝子改変される。
【0038】
特定の実施形態では、複数のB細胞は、誘発可能かつ調整可能な手段で活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)を発現するように遺伝子改変される。
【0039】
本明細書の文脈において、「活性化誘導型シチジンデアミナーゼ」という用語は、ゲノムDNA内のシトシン塩基を脱アミノ化して、それらをウラシル(EC 3.5.4.38)に変換することができる酵素を指す。
【0040】
特定の実施形態では、複数のB細胞はセーフハーバー遺伝子座を含み、CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードするDNA配列を含む第1の発現カセットが前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0041】
本明細書の文脈において、用語「セーフハーバー遺伝子座」は、導入遺伝子の組込みに適した染色体位置を指す。セーフハーバー遺伝子座に組込まれた導入遺伝子は、安定して発現され、内因性遺伝子の活動を乱さない。セーフハーバー遺伝子座の例は、マウスRosa26遺伝子座又はAAVS1遺伝子座である。
【0042】
特定の実施形態では、前記セーフハーバー遺伝子座に挿入されたCRISPR介在エンドヌクレアーゼは、構成的活性型プロモーター、特にCAGプロモーター、CBhプロモーター、又はCMVプロモーターの制御下にある。CAGプロモーターは、ニワトリβ-アクチンプロモーター(Jun-ichiら、Gene 79(2):269-277)に融合したサイトメガロウイルスエンハンサーからなるハイブリッドコンストラクトである。CBhプロモーターは、CBA(ニワトリβ-アクチン)プロモーターのハイブリッド型である(Grayら、Hum Gene Ther。、2011,22(9):1143-1153)。「CMVプロモーター」という用語は、ヒトヘルペスウイルス5 Toledo株(GenBank GU937742.2)のようなヒトヘルペスウイルスのヒトサイトメガロウイルス前初期エンハンサー及びプロモーター配列を指す。例示的なCMV配列は、参照番号X03922.1、M64940.1、M64941.1、M64942.1、M64943.1、M64944.1及びK03104.1でGenBankに寄託されている。
【0043】
特定の実施形態では、複数のB細胞はセーフハーバー遺伝子座を含み、前記活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)をコードするDNA配列を含む第2の発現カセットが前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0044】
特定の実施形態では、第2の発現カセットは、活性化因子分子による誘導性活性化に適した調節配列を含む。
【0045】
特定の実施形態では、第2の発現カセットは、誘導性発現系、特にTet-One誘導性発現系を含む。Tet-One誘導性発現系は、転写活性化タンパク質(Tet-On)及び誘導性プロモーター(PTRE3GS)を含む。抗生物質ドキシサイクリンの存在下で、Tet-OnはPTRE3GSのtetO配列に結合し、プロモーターの下流遺伝子、すなわち活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)をコードする遺伝子の高レベルの転写を活性化する。ドキシサイクリン濃度が低下すると、発現が減少し、AID発現及び体細胞超変異の調整可能な系が生成される。
【0046】
本明細書の文脈において、「体細胞超変異(SHM)」という用語は、複数のゲノム突然変異が生成される細胞機構を指す。SHMは、酵素活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)によるDNA中のシトシンのウラシルへの脱アミノ化を含む。得られた塩基対のミスマッチ(ウラシル -グアノシン、U:G)は、ゲノム突然変異を引き起こすことができ、例えば、変異性DNAポリメラーゼによるウラシル塩基の除去及びギャップの補充を介して、又はウラシルがチミジンとして処理される際のDNA複製を介して行われる。
【0047】
本明細書の文脈において、「誘導性合成体細胞超変異(iSSHM)」という用語は、誘導性発現系からのAID発現の活性化によって前記複数のB細胞において誘導され得るSHMを指す。
【0048】
特定の実施形態では、前記遺伝子組換えゲノムDNA配列の前記置換は、Cas9介在性部位特異的DNA切断及び、その後の相同性指向修復(HDR)又は非相同性末端結合(NHEJ)による前記第2の遺伝子組換えDNA配列の組込みによって介在される。この方法はガイドRNA及び置換DNAを提供することを含む。
【0049】
本明細書の文脈において、ガイドRNA又はgRNAは、Cas9結合に必要な配列と、改変されるべきゲノム標的を定義する約23ヌクレオチドのユーザー定義の「標的配列」とからなる短い合成RNAである(表2参照)。
【0050】
そのようなガイドRNAは、インビトロで転写されたRNA又は市販の合成オリゴヌクレオチドRNAのトランスフェクションによって提供することができる。あるいは、ガイドRNAは、細胞へのDNA配列のトランスフェクション又はウイルス形質導入によって提供することができ、そのようなDNA配列は、ガイドRNAをコードする(及び細胞内で発現する)。IgH遺伝子座における複数のゲノム部位の同時切断のために、複数のガイドRNAが提供され得る(これは導入遺伝子挿入の効率を改善する)。
【0051】
置換DNAは、目的タンパク質をコードする前記第2の遺伝子組換えDNA配列を含む。置換DNAは、環状又は線状のいずれかの二本鎖DNA(dsDNA)、又は一本鎖DNA(ssDNA)(例えば、オリゴヌクレオチド)のトランスフェクション又はウイルス形質導入によって提供することができる。
【0052】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、前記目的タンパク質は全長抗体である。全長抗体は、合成抗原結合フラグメント(sFAb)コンストラクトに基づくことができる。免疫グロブリン重鎖遺伝子座及び免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の両方の標的化を回避しながら新しい全長抗体を再導入するために、全長軽鎖及び重鎖のいずれもを一本鎖転写物として野生型Vプロモーターから発現させることができる(図2B)。
【0053】
特定の実施形態では、複数のB細胞はマウスハイブリドーマ細胞である。
【0054】
特定の実施形態では、複数のB細胞はマウスハイブリドーマ細胞であり、マウスC領域は異なる種のC領域、特にヒトC領域で置換される。これは、マウスハイブリドーマ細胞によるヒト抗体の生成を可能にする。
【0055】
本明細書の文脈において、「C領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖の定常領域をコードするDNA配列を指す。
【0056】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、前記第2の遺伝子組換え核酸配列は、1つ以上の目的遺伝子及び追加のプロモーターを含む。このようにして、本発明の方法によって、複数の遺伝子又は合成遺伝子ネットワーク全体を安定して発現する細胞株を生成することができる。
【0057】
安定した哺乳類細胞からの組換えタンパク質発現のための現在の技術的方法は、開発するために少なくとも8~10週間を要し、商業的実体において1つのタンパク質当たり10,000USドル以上の費用がかかる。産業的な治療目的のための安定な細胞株の生成には最大で1年間かかる。
【0058】
通常、タンパク質産生の効率の変動により、複数クローンの解析が必要となる。遺伝子サイレンシングがいくつかの組込み部位で経時的に起こることが知られているため、クローンの生産性に影響を及ぼす要因は、組込み数及び組込み部位である。
【0059】
本発明の第2の態様によれば、タンパク質変異体のライブラリーの生成方法が提供される。この方法は、本発明の第1の態様又は上記の実施形態のいずれかに従う方法、続いて、(ドナーdsDNA又はssDNA上のランダム化領域を通じて)ランダム化された核酸配列で遺伝子組換えDNAの領域を改変するさらなる工程を含む。その後、部位特異的突然変異誘発による目的タンパク質内のゲノム突然変異が生成される。
【0060】
本発明のこの態様の代替法によれば、タンパク質変異体のライブラリーを生成する方法は、本発明の第1の態様による方法又は上記の態様のいずれかを含み、その後に
a.活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)の発現を誘導し、その後、誘導性合成体細胞超変異(iSSHM)によって目的タンパク質内に複数のゲノム突然変異を生成し、又は
b.前記遺伝子組換えDNAの領域をランダム化された核酸配列で改変し、その後、部位特異的突然変異誘発により目的タンパク質内にゲノム突然変異を生成する工程を含む。
【0061】
本発明の第3の態様によれば、タンパク質変異体のライブラリーの生成方法が提供される。この方法は、本発明の第1の態様による方法を含み、続いて、活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)の発現を誘導するさらなる工程により、その後、誘導性合成体細胞超変異(iSSHM)による目的タンパク質内の複数のゲノム突然変異を生成する。
【0062】
AIDは、免疫グロブリン(IgH、IgK又はIgL)遺伝子座内で突然変異を生成するのに特に有効である。したがって、目的タンパク質をコードするDNA配列が免疫グロブリン遺伝子座、例えばIgH遺伝子座に挿入されることは、iSSHMにとって有利である。
【0063】
特定の実施形態では、遺伝子組換えゲノムDNA配列の前記領域の前記改変は、Cas9介在性部位特異的DNA切断及び、
a.相同性指向修復(HDR)又は非相同性末端結合(NHEJ)による前記ランダム化遺伝子組換えDNA配列のその後の組込み、又は
b.NHEJによる遺伝子組換えDNA配列の修復による塩基のその後の挿入又は欠失
のいずれかによって介在される。
【0064】
この方法は、本発明の第1の態様と同様の方法でガイドRNA及び置換DNAを提供することを含む。ガイドRNA及びランダム化核酸配列は、縮重ヌクレオチド又はトリヌクレオチドコドンを含むdsDNA又はssDNAのトランスフェクション又はウイルス形質導入によって提供することができる。ssDNAのHDR効率を改善するために、ホスホロチオエート結合を5’及び3’末端並びにssDNAオリゴヌクレオチド全体に導入する。ホスホロチオエート結合は、リン酸骨格の非架橋酸素と硫黄原子との交換である。リン酸骨格の硫黄原子は、ヌクレアーゼ分解に対するssDNAの耐性を増加させる。
【0065】
本明細書の文脈において、「縮重ヌクレオチド」という用語は、任意の混合ヌクレオチド組成物をコードするDNA配列の箇所を指す。
【0066】
本明細書の文脈において、「トリヌクレオチド」又は三量体ホスホラミダイトという用語は、任意の混合アミノ酸組成物をコードするDNA配列の3つの連続したヌクレオチドを指す。
【0067】
当業者であれば、本発明の第2の態様によるタンパク質変異体のライブラリーの生成が、細胞株のライブラリーの生成を含むことを認識する。
【0068】
それらの例において、目的タンパク質が抗体である場合、突然変異抗体は、改善された又は新規な抗原結合のためにスクリーニングされる。蛍光標識した抗原を細胞に添加し、細胞をFACSによりスクリーニングする。あるいは、抗原に結合した磁気ビーズを使用する磁気関連細胞ソーティング(MACS)によって初期スクリーニング工程を実施することができる。いくつかの周期のスクリーニング及びiSSHM又は部位特異的突然変異誘発を実施して、抗体又はタンパク質の改変を継続することができる。
【0069】
特定の実施形態では、マーカータンパク質は蛍光タンパク質である。非限定的な例として、そのような蛍光タンパク質は、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその誘導体、例えば以下より選択され得る。
-強化型青色蛍光タンパク質(EBFP)、強化型青色蛍光タンパク質2(EBFP2)、azurite、mKalama1、Sirius
-強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、emerald、superfolder avGFP、T-sapphire
-黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、citrine、 venus、YPet、topaz、SYFP、mAmetrine
-強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)、mTurquoise、mTurquoise2、 cerulean、CyPet、SCFP。
【0070】
本発明を実施するための蛍光タンパク質はまた、Discosoma striata由来の蛍光タンパク質及びその誘導体を含む群から選択され得る:
-mTagBFP、
-TagCFP、AmCyan、Midoriishi Cyan、mTFP1
-Azami Green、mWasabi、ZsGreen、TagGFP、TagGFP2、TurboGFP、CopCFP、AceGFP
-TagYFP、TurboYFP、ZsYellow、PhiYfP
-Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mOrange、mOrange2、dTomato、dTomato-Tandem、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)、DsRed-Express2、DsRed-Max、DsRed-Monomer、TurboRFP、TagRFP、TagRFP-T
-mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、eqFP611、tdRFP611、HcRed1、mRaspberry
-tdRFP639、mKate、mKate2、katushka、tdKatushka、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143。
【0071】
蛍光タンパク質はまた、小超赤色蛍光タンパク質(smURFP)のようなシアノバクテリアTrichodesmium erythraeumのalpha-allophycocyanin由来のタンパク質を含む。
【0072】
当業者であれば、本発明の第1の態様による方法が、上記のリストに含まれていない他の蛍光タンパク質でも機能し得ることを認識する。
【0073】
本発明の別の態様は、本発明の第1、第2又は第3の態様による方法によって得られる前記B細胞に含まれる内因性免疫グロブリン遺伝子座に挿入された発現遺伝子組換えゲノムDNA配列を含むヒトB細胞株を提供する。
【0074】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明の第1、第2又は第3の態様による方法によって得られたタンパク質が提供される。
【0075】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明の第2又は第3の態様による方法によって得られたタンパク質改変体のライブラリーが提供される。
【0076】
本発明のさらに別の態様によれば、哺乳類B細胞が提供され、
a.マーカータンパク質をコードする遺伝子組換えゲノムDNA配列を、前記B細胞に含まれる内因性免疫グロブリン遺伝子座、特にIgH遺伝子座に挿入し、マーカー遺伝子は蛍光タンパク質をコードし、
b.前記遺伝子組換えゲノム配列は、部位特異的ヌクレアーゼ、特にCRISPR介在エンドヌクレアーゼ(Cas9)による切断に適する。
【0077】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、前記B細胞の内因性V遺伝子及び内因性V遺伝子は破壊される。
【0078】
特定の実施形態では、哺乳類B細胞はヒト細胞である。
【0079】
本発明のさらに別の態様は、それぞれが遺伝子組換えタンパク質の変異体をコードする複数の哺乳類B細胞と関連する。その全体中の複数は、そのような変異体のライブラリーを構成する。その複数に含まれる複数のB細胞の各細胞は、目的タンパク質の変異体をコードする遺伝子組換えゲノムDNA配列を含む。遺伝子組換えゲノムDNA配列は、前記B細胞、特にIgH遺伝子座に含まれる内因性免疫グロブリン座に挿入され、前記複数の細胞によってコードされる各変異体は、前記複数の別の細胞によってコードされる任意の他の変異体とは区別される。当業者であれば、複数の各細胞が1以上の個別の細胞によって表現される可能性が高いこと、すなわち、クローンのいくつかの細胞が細胞を構成し得ることを理解する。ここで重要な点は、変異体がある細胞においては共通していて、多数(特定の実施形態では、≧100、≧1000、≧10,000、又は≧100.000)の異なる変異体が複数の中に存在し得ることである。
【0080】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、複数のB細胞にコードされる各変異体は、そのアミノ酸配列の1~5位において別の変異体と区別される。
【0081】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、各変異体は、前記複数のB細胞によってコードされる任意の他の変異体と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一である。言い換えれば、変異体は、個々のB細胞間でそれらの配列の重要な部分を共有しながらも非常に広い変異幅を示すことができる。
【0082】
本発明のこの態様の特定の実施形態において、複数のB細胞は、プライマリーB細胞、不死化B細胞、ハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞、及びリンパ腫細胞を含む群から選択される。
【0083】
単一の分離可能な特徴の代替手段が「実施形態」として本明細書に記載されている場合は、そのような代替手段を自由に組み合わせて、本明細書に開示する本発明の別個の実施形態を形成できることを理解されたい。
【実施例
【0084】
本発明は、以下の実施例及び図面によりさらに説明され、それからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明することを意図しているが、その範囲を限定するものではない。
【0085】
本発明を実現するために、本発明者らはplug-and-(dis)play(PnP)哺乳類細胞株を生成した。本発明者らは、抗体タンパク質の産生工場として機能するマウスBリンパ球(ハイブリドーマ細胞)を用いた。
【0086】
PnP細胞株は、以下の要素からなる:
1)IgH遺伝子座内の内因性V遺伝子は、蛍光タンパク質(mRuby、元々はmRuby2と呼ばれ、Addgene.org プラスミド#:40260(Lamら、Nat Methods 2012, 9:1005-1012)に由来する)に置換した。これは、WTハイブリドーマ細胞を、V及びIgG CH1遺伝子の間のイントロンを標的としたガイドRNA(gRNA)を有するCRISPR-Cas9プラスミド(pX458)(Addgene.org プラスミド#:48138)(Congら、Science 2013, 339:819―823)でトランスフェクションすることにより行った。さらに、mRuby遺伝子及びWTハイブリドーマ細胞のIgH遺伝子座に対応するホモロジーアームからなるドナーDNAコンストラクトを、コトランスフェクションした。CRISPR-Cas9システムは、WT細胞のDNA中の標的とされた2本鎖切断(DSB)を誘導し、相同性指向修復(HDR)又は非相同性末端結合(NHEJ)のDNA修復メカニズムを促進し、V遺伝子に代わりmRuby遺伝子の部位特異的な組込みをもたらした。野生型IgHプロモーターはmRubyの発現に使用された(図1a-d)。
【0087】
2)IgK遺伝子座の内因性V遺伝子は、軽鎖ノックアウト細胞株を生成するために欠失させた。これは、IgK遺伝子座内のV遺伝子に隣接する2箇所を標的としたgRNAを有するpX458を、(1)に記載した)ハイブリドーマ細胞にトランスフェクションすることによって行った。これにより、ハイブリドーマ細胞においてV遺伝子が欠失し、内因性軽鎖の発現がノックアウトされた(図1e-g)。得られた細胞をPnP-mRuby細胞とよぶ。
【0088】
3)PnP-mRuby細胞は、新しい抗体を産生する細胞に転換された。これらをPnP-IgG細胞とよぶ。これは、(IgH遺伝子座内に組込まれている)mRuby遺伝子を標的とするgRNAを有するpX458で、PnP-mRuby細胞をトランスフェクションすることにより行った。さらに、IgH遺伝子座に対応するホモロジーアームをともなう合成抗体フラグメント(sFAb)のドナーDNAコンストラクトをコトランスフェクションした。1)と同様、CRISPR-Cas9はDSB及びHDR、又はNHEJを促進し、それらはIgH遺伝子座へのsFAbの組込みを標的とした。この結果、この全長抗体(IgK及びIgH)が1本鎖RNA転写物としてIgH遺伝子座から発現されることが示された(図2)。PnP-mRuby細胞は、1度のトランスフェクション及び選択の手順により、組換えタンパク質(例えばPnP-IgG)を発現する安定的な哺乳類細胞株に変換し得る(図3及び4)。
【0089】
4)PnP-mRuby細胞は、Cas9の構成的発現のために改変された(PnP-mRuby-Cas9細胞)。これは、Rosa26のセーフハーバー遺伝子座内の領域を標的としたgRNA及びCas9-2A-ピューロマイシンからなるドナーDNAコンストラクトを有するpX458を、構成的活性化プロモーター(例えば、CAGプロモーター又はCMVプロモーター)の制御下でPnP-mRuby細胞にトランスフェクションすることにより行った(Addgene.org プラスミド#:48139)(Plattら、CELL 2014、159:440-455;Ranら、NatProtec 2013、8:2281-2308)。これらの細胞の利点は、CRISPR-Cas9プラスミド(pX458)でトランスフェクションする必要性が除かれていることであり、従って、PnP-mRuby細胞を組換えタンパク質(例えばPnP-IgG)を発現する細胞株に転換するためには、gRNA(インビトロで転写されたもの、又は商業的に合成されたもの)及びドナーコンストラクト(置換DNA、例えばsFAb)をトランスフェクションすることのみが必要であり、このことは効率を良くする(図5a)。
【0090】
gRNAのインビトロ転写は、pX458の設計に従って、T7プロモーター、gRNAをコードするカスタマイズされたスペーサー領域及び転写促進領域からなるテンプレートDNAを用いて行われる。このコンストラクトは、MEGAscript(登録商標)T7転写キット(Thermo、AM1334)の鋳型として供され、インビトロ転写の結果、キメラ的な1本鎖gRNAが得られた。プロトコルは以下で入手可能である。https://www.protocols.io/view/In-vitro-transcription-of-guide-RNAs-d4w8xd?step=3
【0091】
5)さらにHEL(PnP-HEL23)に抗原特異的な抗体を発現するPnP-IgG細胞を、V遺伝子の相補性決定領域3(CDR-H3)において改変し、部位特異的突然変異誘発によりタンパク質変異体の大きなライブラリーを生成した。それにより、抗原親和性や新たな抗原の結合を増大させるためのスクリーニングが可能となった。これは次の方法により行った:
【0092】
PnP-HEL23細胞のsFAb遺伝子を、抗体発現をノックアウトするように改変した。CDR-H3を標的とするガイドRNAを含むpX458ベクターでこれらの細胞をトランスフェクションすることによって、NHEJによる修復を通したヌクレオチドの挿入又は欠失により、抗体の発現をノックアウトする。ヌクレオチドの挿入又は欠失は、フレームシフト突然変異と、その後の遺伝子内に残る下流の全てのアミノ酸の変異とを引き起こす。抗体を発現しない単一細胞クローンをフローサイトメトリーで単離し、増幅することができる。適切なクローン(PnP-HEL23-IgH)は表現型及び遺伝子型の解析により選択した。タンパク質変異体のライブラリーは、その後、ランダム化された核酸の組込みを通じて、前記細胞クローンに由来され得る。
【0093】
抗体の親和性成熟は、CDR-H3を標的とするガイドRNAの提供と、トランスフェクション又はウイルス形質導入によるDNA置換とにより行った。その置換されたDNAは、各部位とも元のCDR-H3に含まれる単一のアミノ酸に対応する3つのランダム化された核酸の領域を含んだ(図11)。
【0094】
新しい抗原特異抗体を探索するためのタンパク質ライブラリーは、抗体親和性成熟のために記載された方法と類似した方法でCDR-H3を完全に置換することによって生成してもよい。CDR-H3を標的とするガイドRNAと置換DNAはトランスフェクション又はウイルス形質導入によって提供される。その置換DNAは、CDR-H3の可変長領域に対応する3~69のランダム化された核酸を含む領域を有する(図11)。いずれの例においても、標的抗原に対して機能的な抗体を産生する細胞はフローサイトメトリーによってスクリーニングされ、ソートされる。
【0095】
6)このplug-and-(dis)play(PnP)哺乳類細胞株を、誘導性合成体細胞超変異iSSHMによってタンパク質変異体の大きなライブラリーを生成できるようにさらに改変し、これは指向性進化とハイスループットスクリーニングのために使用可能である(PnP-iAID細胞)。これは次の方法により行った:
【0096】
PnP-mRuby2細胞株を、ROSA26セーフハーバー遺伝子座を標的とするsgRNA及びドナーコンストラクト(置換DNA)を含むpX458ベクターでトランスフェクションした。ドナーコンストラクトは、次の要素からなるTet-Oneシステム(Clontech)(Heinzら、 Human Gene Therapy 2011、22:166-176)を含む(図5b):
i.順方向に、Tet-On 3Gタンパク質の構成的発現をもたらすヒトホスホグリセリン酸キナーゼ1(hPGK)プロモーター;
ii.順方向に、VP16活性化領域と接続するrTetRの融合タンパク質(rtTA)であるTet-On 3G転写活性化タンパク質のコード配列;
iii.逆方向に、改変されたtet応答要素(TRE)及び最小のCMVプロモーターに結合したTETオペレーターの7つの直接重複配列を含む、PTRE3Gの改変版であるPTRE3GS誘導プロモーター;
iv.その発現がPTRE3GSプロモーターにより制御され、以下をコードするDNA配列を含む目的遺伝子(GOI):
i.蛍光性レポータータンパク質(例えば、GFP又は青色蛍光タンパク質(BFP));
ii.「自己切断型」2Aペプチド;
iii.活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID);
v.ROSA26遺伝子座に対応するホモロジーアーム(>500 bp)。
代わりに、ホモロジーアームのないドナーコンストラクトを使用可能である。これらの例では、NHEJによってドナーコンストラクトを組込むことができる。
【0097】
代替方法においては、PnP-iAID細胞株の生成のための開始基盤としてPnP-mRuby-Cas9細胞が使用された。この例では、PnP-mRuby-Cas9細胞は、Rosa26のセーフハーバー遺伝子座内の直交部位を標的としたgRNAのインビトロ転写産物及びドナーコンストラクト(置換DNA)でトランスフェクションした。ドナーは前記4)と同じ要素を含む。
【0098】
代替方法においては、PnP-mRuby-Cas9細胞は、マウスの野生型AIDゲノム遺伝子座を標的とするgRNAのインビトロ転写物でトランスフェクションした。この場合、ドナーコンストラクトは前記4)と同じ要素からなるが、iv)のうち活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)をコードする遺伝子の第1イントロンが存在するもののみは除かれる(図5c)。
【0099】
抗生物質ドキシサイクリン(Dox)の存在下では、Tet-OnはPTRE3GSの中のtetO配列と結合し、高レベルの転写を活性化する。しかし、Doxの量が減少すると、発現は減少し、それによりAID発現及びSHMの調整可能な系が作られる。PnP-iAID細胞は、IgH遺伝子座のタンパク質変異体の大きなライブラリーを生成するために、Doxと共に長時間培養され得る。指向性進化及びタンパク質改変はその後、フローサイトメトリーによるハイスループットスクリーニングによって実施可能である(図5d)。
【0100】
表1.ハイブリドーマクローンの概要
【表1】
【0101】
表2.gRNAsのリスト
【表2】
この表(配列番号01~配列番号18)に列挙された配列は、それぞれのgRNAの標的配列をコードするDNA配列を示す。
【0102】
方法
ハイブリドーマ細胞培養条件
WTハイブリドーマ細胞株(Wen1.3)は、Annette Oxenius教授(ETHチューリッヒ)から寄贈されたものである。すべてのハイブリドーマ細胞株を、10%熱不活性化ウシ胎児血清[(FBS)、Thermo、10082-147]、100 U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo、15140-122)、2mMグルタミン(Sigma-Aldrich、G7513)、10mM HEPESバッファー(Thermo、15630-056)及び50μM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、M3148)を添加した高グルコースダルベッコ改変イーグル培地[(DMEM)、Thermo Fisher Scientific(Thermo)、11960-044]で培養した。すべてのハイブリドーマ細胞は、温度37℃及びCO2濃度5%のインキュベーター中で保持された。ハイブリドーマは、典型的には、T-25フラスコ(Thermo、NC-156367)中の10mlの培地中に保持され、48/72時間ごとに継代された。
【0103】
CRISPR-Cas9標的コンストラクトのクローニング及び組立て
特に明記しない限り、CRISPR-Cas9プラスミド及びHDRドナーコンストラクトのクローニングは、Gibson Assembly(登録商標)Master Mix(NEB、E2611S)(Gibsonら、Nat Methods 2009,6:343-345)によるGibsonアセンブリ及びクローニングによって行った。必要に応じて、GibsonアセンブリクローニングのためのフラグメントをKAPA HiFi HotStart Ready Mix[KAPA Biosystems(KAPA)、KK2602]で増幅した。すべてのgRNAは、標準的な脱塩により精製された一本鎖5’-リン酸化オリゴヌクレオチドとしてIntegrated DNA Technologies(IDT)社より入手した。CRISPR-Cas9実験の基礎は、Feng Zhangからの贈与物として得られたプラスミドpSpCas9(BB)-2A-GFP(pX458)(Addgeneプラスミド#48138)に依存していた(Ranら、Nat Protoc 2013、8: 2308)。GFP(eGFP変異体)をBPF(TagBFP変異体)に置換することにより、pX458の代替バージョンを生成した(pX458.2又はpSpCas9(BB)-2A-BFP)。gRNAをクローニングするために、両バージョンのpX458をBbsI[New England BioLabs(NEB)、R0539S]で消化し、gRNAオリゴヌクレオチドをDNA T4リガーゼ(NEB、M0202S)でプラスミドに連結した。mRuby(mRuby2変異体)の遺伝子は、Michael Linからの贈与物であるプラスミドpcDNA3-mRuby2(Addgeneプラスミド#40260)(Lamら、Nat Methods 2012,9:1005-1012; Jinekら、eLife 2013、2:e00471-e00471)に由来した。Genewizから入手したpUC57(Kan)-HDRプラスミドに、HDRドナー(mRuby及び抗体コンストラクト)をクローニングした。このベクターは、アノテートされたマウスゲノム配列(GRCm38)に従ってホモロジーアームを用いて設計された。2A抗体コンストラクトは、合成遺伝子フラグメント(gBlocks、IDT)として得られた。HDRドナーベクターを、KAPA HiFi HotStart ReadyMix(KAPA Biosystems、KK2602)を用いたPCRによって線状化した。HDRドナーの全てのプラスミド及び線状版、並びにpX458及びpX458-BFPは、最終精製工程としてエタノール沈殿した。
【0104】
CRISPR-Cas9コンストラクトによるハイブリドーマトランスフェクション
ハイブリドーマ細胞を、プログラムCQ-104を有するSF細胞株4D-Nucleofector(登録商標)XキットL(Lonza、V4XC-2024)を用いて4D-Nucleofector(商標)システム(Lonza)でトランスフェクションした。細胞を以下のように調製した:10個の細胞を取り、90×Gで5分間遠心分離し、1mlのOpti-MEM(登録商標)I Reduced Serum Medium(Thermo、31985-062)で洗浄し、そして同条件で再度遠心分離した。最終的に、SFバッファーで希釈したベクターを含む総容量100μlのヌクレオフェクション混合物に細胞を再懸濁した(キットメーカーガイドラインによる)。V遺伝子座の交換のために、gRNA-E(Vを標的とする)又はgRNA-J(mRubyを標的とする)を有する5μgのpX458(又はpX458-BFP)及び、5μgの環状又は線状化HDRドナーコンストラクトを、細胞にヌクレオフェクションした。Vを欠損させるために、gRNA-F及びgRNA-Hを有するpX458をそれぞれ5μg、細胞にコトランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を、典型的には、24ウェルプレート(Thermo、NC-142475)中の1mlの増殖培地で培養した。著しい細胞増殖が観察された場合、24時間後に0.5-1.0mlの新鮮な増殖培地を細胞に補充した。選別後、典型的にはトランスフェクションの48時間後、細胞を24ウェルプレートに回収し、増殖後に6ウェルプレート(Thermo、NC-140675)及びT-25フラスコに徐々に移動させた。VをmRubyに置き換えた後、細胞を、U底96ウェルプレート(Sigma-Aldrich、M0812)中で100μlの回収容量で単一細胞分離した。最終的にクローンは24ウェルプレート、6ウェルプレート及びT-25フラスコで増殖させた。
【0105】
CRISPR-Cas9標的のゲノム解析及び転写解析
ハイブリドーマ細胞株のゲノムDNAを典型的には10個の細胞から回収し、遠心分離(250×G、5分)によりPBSで洗浄し、QuickExtractTM DNA抽出溶液(Epicenter、QE09050)に再懸濁した。次いで、細胞を68℃で15分間、95℃で8分間インキュベートした。転写解析のために、全RNAを10~5×10個の細胞から単離した。細胞をTRIzol(登録商標)試薬(Thermo、15596-026)で溶解し、全RNAをDirect-zolTM RNA MiniPrepキット(Zymo Research、R2052)で抽出した。Maxima逆転写酵素(Thermo、EP0742)を、全RNAからのcDNA合成に使用した(Taq DNA Polymerase with ThermoPol(登録商標) Buffer, NEB, M0267S)。下流のPCR反応の鋳型として、ゲノムDNA及びcDNAの両方を用いた。WT IgH及びIgK遺伝子座並びにmRubyを標的とするgRNAを、最初にNHEJの30回の誘導によってその活性について試験した。標的フラグメントをKAPA2G Fast ReadyMix(KAPA、KK5121)を用いたPCRにより増幅し、PCR産物をSurveyorヌクレアーゼで消化してミスマッチを検出した(Surveyor突然変異検出キット、IDT、706020)。HDR評価のために、ホモロジーアームの内側及び外側に結合するプライマーを用いてゲノム及びcDNAについてPCRを行い、続いてDNAアガロースゲルでフラグメントサイズ分析を行った。選択されたPCR産物をサンガーシーケンシングに供した。
【0106】
ハイブリドーマのフローサイトメトリー解析及びソート
フローサイトメトリーに基づく解析及び細胞単離を、それぞれBD LSR Fortessa(商標)及びBD FACS Aria(商標) III(BD Biosciences)を用いて行った。トランスフェクションの24時間後、約100μlの細胞を採取し、250xGで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁し、(2A-GFP/-BFPを介して)Cas9の発現について解析した。トランスフェクションの48時間後、全てのトランスフェクションされた細胞を採取し、ソーティングバッファー(SB):2mMのEDTA及び0.1%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。標識が必要な場合、細胞をPBSで洗浄し、氷上で30分間標識抗体又は抗原とともにインキュベートし、光から保護し、PBSで再度洗浄し、解析又はソートした。標識試薬及び作業濃度は、以下の表3に記載されている。10個とは異なる細胞数の場合には、抗体/抗原及びインキュベーション容量を比例的に調節した。
【0107】
表3.フローサイトメトリー標識試薬とそれらの作業濃度
【表3】
【0108】
ELISA法による抗体分泌の測定
サンドイッチELISA法を用いて、ハイブリドーマ細胞株からのIgGの分泌を測定した。PBS(Thermo、10010-015)中で4μg/mlの濃度としたVk軽鎖に特異的な捕捉ポリクローナル抗体(ヤギ抗マウス、Jackson ImmunoResearch、115-005-174)でプレートを被覆した。2%w/vのミルク(AppliChem、A0830)及び0.05%v/v Tween(登録商標)-20(AppliChem、A1389)(PBSMT)を添加したPBSでプレートをブロッキングした。次いで、細胞培養上清(10細胞/試料、最小濃度の試料に標準化したもの)を2%w/vミルク(PBSM)を添加したPBS中で、(1:3の比率で)段階希釈した。陽性対照として、精製マウスIgG2b、κアイソタイプコントロール(BioLegend、401202)を5ng/μl(ハイブリドーマ増殖培地で希釈)の開始濃度で使用し、上清として段階希釈した。ブロッキング後、上清及び陽性対照を室温にて1時間又は4℃にて終夜インキュベートし、続いてTween-20 0.05%v/vを添加したPBS(PBST)で3回洗浄した。マウスFc領域に特異的なHRP標識二次抗体(ヤギ抗マウス、Sigma-Aldrich、A2554)を使用し、PBSM中で1.7μg/mlの濃度とし、続いてPBSTで3回洗浄した。ELISA検出は、HRP基質として1-Step TM Ultra TMB-ELISA基質溶液(Thermo、34028)を用いて行った。Infinite(登録商標)200 PRO NanoQuant(Tecan)を用いて450nmでの吸光度を読み取った。抗原特異性の測定のために、プレートをPBS中で濃度4μg/mlとした精製鶏卵リゾチーム(Sigma-Aldrich、62971-10G-F)で被覆した。ブロッキング、洗浄及び上清のインキュベーション工程は、1:5の比の上清の段階希釈を除いて、前述の手順と同様にして行った。0.7μg/ mlの濃度としたVk軽鎖特異的HRP標識二次抗体(ラット抗マウス、Abcam、AB99617)を使用した。HRP基質によるELISA検出及び吸光度の読み取りは、先に述べたように行った。
【0109】
ROSA26遺伝子座の標的化
Wen1.3細胞のマウスセーフハーバー座ROSA26を増幅し、サンガーシーケンシングを行い、得られた配列を用いてDNAカセットホモロジーアームを設計した。ガイドRNA標的配列(gRNA-LからgRNA-P)は、Surveryorアッセイによって個別に検証された(図7)。この遺伝子座は、PnP-mRuby-AID、PnP-IgG-AID及びPnP-mRuby-Cas9細胞株の生成の標的となった。PnP-mRuby-AID及びPnP-mRuby-Cas9細胞株の生成におけるROSA26の標的化のために、それらの高い切断効率によりgRNA-O及びgRNA-Pが選択された。
【0110】
AID細胞株の生成及びドキシサイクリンによる誘導
誘導性AID(iSSHM)系へのドナーカセットのクローニングを3段階で行った。(1)Tet-One(商標)誘導性発現系(634301)はTakara Clontechから購入した;GFP-2A-AIDは、合成遺伝子フラグメント(gBlocks、IDT)として得て、GibsonアセンブリクローニングによってpTetOneベクターにクローニングした。(2)ハイブリドーマのROSA26遺伝子座のためのホモロジーアーム(829及び821bp)をゲノムDNA PCRによって得て、pUC57(Kan)プラスミドにクローニングした。(3)最後に、以前にクローニングされた-ポイント(1)参照-Tet-One-GFP-2A-AIDコンストラクト(順方向:ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(hPGK)、Tet-On 3G転写活性化タンパク質、及びSV40ポリAシグナル;逆方向:PTRE3GS誘導性プロモーター、GFP-2A-AIDコンストラクト及びSV40ポリAシグナルを含む)を、Gibsonアセンブリクローニングによってホモロジーアームの間に挿入した。HDRドナーを、酵素AjuI(Thermo、ER1951)を用いて制限消化してPCRにより線状化した。以前にpX458-BFPにおいて記載したように、gRNA-Oを得てクローニングした。代替のNHEJ挿入設計として、TetOne-GFP-2A-AIDコンストラクトは、ホモロジーアームなしで線状化される。TetOne-iSSHM系の導入のために改変された細胞株は:PnP-mRuby-pA(bGHポリA鎖を有するPnP-mRuby);PnP-HEL23-IgH(HCDR3にフレームシフト挿入を有し抗体発現がノックアウトされたPnP-HEL23-次のセクションを参照)。これらの細胞のためのワークフローを図9図10に示す。
【0111】
a.細胞株の生成
トランスフェクション段階から、細胞をTetフリーGMで維持した:米国調達の、Tet System Approved FBS(Takara Clontech、631105)を添加した標準増殖培地。PnP-HEL23-IgH及びPnP-mRuby-pA細胞を、gRNA-Oを有する約2.5μg程度までのpx458-BFP及び2.5μgの線状化pTetOne-HDRドナーでトランスフェクションした(前のセクションを参照)。トランスフェクションの48時間後、細胞をBFPに基づいてソートし、回収のために増殖させた。一旦回収し、系の機能性を検証するため誘導実験を行った。ドキシサイクリン(Takara Clontech、631311)をヌクレアーゼフリーの水に溶解し1mg/mlの濃度とし、滅菌濾過し、使用直前の必要時にTetフリーGMで希釈した。1ng/ml~2μg/mlの範囲の濃度を試し、1μg/mlが最も効率的であることが証明された。37℃での24時間又は48時間のインキュベーションにより細胞を誘導したが、24時間のインキュベーションが最良の結果をもたらし、組込みの陽性及び誘導効率を確認するための主要条件として選択された。
【0112】
24時間の誘導後に細胞をソートした:GFP陽性集団から、単一細胞クローンを単離し、増殖させ、解析した。Dox誘導後に強陽性のクローンを選択するために第1のスクリーニングを行った:各試料を1μg Dox/細胞 10個/1ml培地の条件で播種し、24時間後にGFPに基づいてスクリーニングした。ゲノムDNA抽出、遺伝子座特異的増幅及びサンガーシーケンシングのために、最初のスクリーニング段階による最も優れたクローン(PnP-HEL23-IgHの9つ、PnP-mRuby-pAの4つ)を使用した。ゲノム配列によって、各細胞株について1つの最終クローンを選択した。
【0113】
b.誘導最適化
トランスフェクションされた各細胞株について最良のクローンを選択した後、500ng/mlから1.5μg/mlの間の濃度で第2のより厳密な調整を行い、異なる時点(理想的には:24時間; 48時間 ; 72時間; 96時間)で誘導測定した。ドキシサイクリンの半減期が24時間であるために、製造業者(Clontech)により推奨された通り、48時間毎に培地中で置換された。
各時点について、誘導は以下によって評価した:
・FACS解析(GFP)
・RT-PCR(mRNA/cDNA)
・ウェスタンブロット
cDNAからのAIDの増幅は、KAPA HiFi HotStart Ready Mixを用いて行った。ウエスタンブロットでは、Halt(商標)Protease Inhibitor Cocktail(Thermo、78430)を添加したM-PER(商標)Mammalian Protein Extraction Reagent(Thermo、78501)を使用して培養ハイブリドーマ、典型的には細胞10個から溶解物を得た。精製抗ヒト/マウス活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)(eBioscience、14-5959-80)を、WBによるAID検出のための一次抗体として使用した。
【0114】
c.iSSHM(AID活性)評価
PnP-mRuby-pA-AID細胞株について、FACS解析及びmRuby蛍光の減少の検出によって、超変異活性が最初に評価された。より詳細な評価のために、mRuby遺伝子をcDNAから増幅させ、サンガー法又は次世代シーケンシング(NGS)によって分子増幅フィンガープリント法を用いて解析した(図12)。PnP-HEL23-IgH-AID細胞株について、抗IgG2C及び抗IgK(ランダム突然変異による任意の陽性)並びにHEL-647(HEL陽性の再獲得)を用いて、細胞を標識した後のフローサイトメトリーにより、回復した抗体発現及び/又は抗原特異性を評価した(前のセクションを参照)。系のより詳細な評価及び最適化のために、(2つの出発プラットフォームのいずれかによって得られた)機能性抗体を発現する細胞株に対してiSSHMワークフローを繰り返した。このような状態を得るために、pAP-mRuby-pA細胞をトランスフェクションしてmRubyをsAbドナーと交換した;PnP-HEL23-IgH-AID細胞をトランスフェクションして、ノックアウトされたHEL23 sAbを同じ又は別の特異性を有する機能的なものと交換した;別の状況では、元のHCDR3のコドン変異バージョンを含む120のssODNでHDRによってHEL23フレームが修復された。以前に試験されたバインダーがない場合、典型的には、既知で試験可能な抗原を有する抗体を、親和性成熟を評価するために選択した。PnP-sAb-AID細胞株を獲得した後、前述のようにAIDを誘導した(オン)。48時間から96時間の誘導後、ドキシサイクリンを系から取り除いた(オフ)。親和性成熟を評価するために、前述のようにFACS標識を行ったが、抗原濃度を減少させて行った(典型的には1-0.001μg/ml、解析/親和性成熟サイクルの各周期において10倍の減少)。陽性細胞をソートし、さらなるiSSHMサイクルを経た;必要に応じてサイクルを繰り返した。系からのドキシサイクリン除去後の親和性成熟の各段階について、FACSによりGFP蛍光をモニタリングすることによって有効なスイッチオフを評価した。いったんオフ状態になると、V及びV領域がcDNAから増幅され、iSSHMは、分子増幅フィンガープリント法を用いてNGSによって評価された。
【0115】
PnP-mRuby2-Cas9細胞株の生成
Cas9タンパク質の構成的発現のためのドナーカセットのクローニングを3段階で行った。(1)pSpCas9(BB)-2A-Puroベクター(pX459)及びMDH1-PGK-GFP_2.0ベクターは、Addgeneから得た(それぞれプラスミド#48139、#11375)。Cas9-2A-Puro及びGFP遺伝子フラグメントをPCR(KAPA HiFi HotStart ReadyMix)によってそれぞれのベクターから得て、Gibsonアセンブリクローニングにより一緒に組立てた。(2)ハイブリドーマのROSA26遺伝子座に対するホモロジーアーム(1,000及び976bp)をゲノムDNA PCRによって得て、GibsonアセンブリクローニングによりpUC57(Kan)プラスミド骨格を用いて組立てた。(3)最後に、前に組立てられたフラグメント―ポイント(1)及び(2)参照―をGibsonアセンブリクローニングによって組立てた。HDRドナーを、XhoI及びMluI制限エンドヌクレアーゼによる制限消化、続いてゲル電気泳動精製によって線状化した。pX458(BFP)において前述したようにgRNA-Pをクローニングした。代替的なNHEJ挿入設計のために、Cas9-2A-Puro-GFPコンストラクトをホモロジーアームなしで線状化した。Cas9-2A-Puro-GFPドナーでトランスフェクションした後、GFP細胞をソートし、増殖させた。次いで、単一細胞分離、増殖及びPCR解析の前の最大1週間、2.5μg/mLのピューロマイシン(Thermo、A1113802)を添加した標準増殖培地で培養することによって、ドナーコンストラクトの安定な組込みのための細胞を選択した。Cas9-2A-Puro-GFPカセットが正確に組込まれた単一クローンを同定後、GFPを標的とするガイドRNAのトランスフェクションにより、細胞内のCas9活性が検証された。Cas9切断活性は、T7E1アッセイ及びPCR単位複製配列のサンガーシーケンシングによって確認した(図8)。GFPノックアウトの有効性は、フローサイトメトリーによって確認した。
構成的なCas9発現のために改変された細胞株は、PnP-mRuby-pA; PnP-HEL23-IgH。構成的Cas9及び誘導性AIDの両方を組込むように、より包括的な細胞株を設計した; ROSA26遺伝子座の2つの異なる領域と相同性を有するコンストラクトによって、それらを図8Aに示すように縦列に組み込むことが可能であった。こうして、iSSHMワークフローでのCas9の構成的発現によって、高いHDR効率が達成できるようになった。
【0116】
Cas9細胞-ガイドRNA又は合成オリゴヌクレオチド(IDT)のインビトロ転写
Cas9を構成的に発現するPnP-mRuby-Cas9細胞株は、10の適切なHDRドナー及び既に転写されたガイドRNAでトランスフェクションした。後者は、IDT社からのオリゴヌクレオチド又はインビトロ転写物として得られた。インビトロ転写の場合、前述のガイドDNAオリゴデオキシヌクレオチド(CRISPR-Cas9標的コンストラクトのクローニング及び組立てのセクションを参照)は、MEGAscript(登録商標)T7転写キット(Thermo、AM1334)の鋳型として機能した。適応されたプロトコルは前述の通りであった(https://www.protocols.io/view/In-vitro-transcription-of-guide-RNAs-d4w8xd?step=3 accessed Feb.21,2017).
図1AB
図1CDEFG
図2ABC
図2DEFGH
図3AB
図4ABCDE
図5ABC
図5D
図6AB
図6C
図7A
図7B
図8AB
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A1
図11A2
図11A3
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
【配列表】
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