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特許7521820脈管サイズを決定するシステム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】脈管サイズを決定するシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B5/107
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022064049
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2018517573の分割
【原出願日】2016-10-07
(65)【公開番号】P2022095845
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】62/239,152
(32)【優先日】2015-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514226350
【氏名又は名称】ブライトシード・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BRITESEED,LLC
【住所又は居所原語表記】4660 N Ravenswood Ave.,Chicago,IL 60640 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アマル・チャターベディ
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン・サブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ガン
(72)【発明者】
【氏名】マヤンク・ヴィジェイヴァージア
(72)【発明者】
【氏名】シーサ・シュカイア
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ル・ローランド
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516182(JP,A)
【文献】特開2001-112716(JP,A)
【文献】特開2006-130201(JP,A)
【文献】特開2008-194455(JP,A)
【文献】特開2010-046425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを決定するために用いられる外科用システムであって、該システムは:
前記外科機器の前記作業末端に配置され、かつ第一強度でそれぞれ発光する複数の発光素子を含んだ発光アレイ
前記発光アレイに対向して前記外科機器の前記作業末端に配置される光センサアレイであって、前記光センサアレイは少なくとも1つの光センサの列を備え、前記光センサの列中の個別の光センサは、非パルス状の成分を含むシグナルを生成するように構成される、該光センサアレイ;並びに
前記光センサアレイと結合したコントローラーであって、前記コントローラーは、分析器を備え、前記分析器は、
前記非パルス状成分の大きさを、前記光センサの列中の個別の光センサにて決定し、
前記非パルス状の成分の大きさが、前記光センサの列に沿って大きい方から小さい方へ変化しているかどうか、及び、前記光センサの列に沿って小さい方から大きい方へ変化しているかどうかを決定し、並びに
前記非パルス状の成分の大きさが、前記光センサの列に沿って大きい方から小さい方へ変化している、且つ、前記光センサの列に沿って小さい方から大きい方へ変化している場合には、前記発光アレイ中の各発光素子の前記第一強度を第二強度に変更すべきかどうかを決定する、
ように構成される該コントローラー、
を含み、
前記コントローラーが、前記光センサの列に沿った非パルス状のプロファイルの導関数に従って、前記非パルス状の成分の大きさが大きい方から小さい方へ又は小さい方から大きい方へ変化するかどうかを決定
前記分析器がさらに、
前記非パルス状成分の大きさを、前記光センサの列中の個別の光センサにて決定し、
前記非パルス状の成分における大きさに関して、前記光センサの列に沿った大きい方から小さい方への第一の変化と、及び、前記非パルス状の成分における大きさに関して、前記光センサの列に沿った小さい方から大きい方への第二の変化とに対応する1対の位置を決定し、並びに
前記脈管の安静状態の外径を、前記1対の位置に基づいて決定する
ことを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本特許は、脈管(例えば血管)のサイズを決定するシステム及びその方法に関する、より具体的には、パルス状の成分を含むセンサアレイに伝送される光を用いたシステム及び方法に関する。
【0002】
外科処置中の手術領域において、アーチファクト、そして特に脈管を特定するシステム及び方法により、外科医又は外科チームにとって有益な情報がもたらされる。米国病院は、立替え不可能なコストとして年間数十億ドルもの損失を被っている。この原因は、外科処置中の意図しない脈管のダメージによる。更には、関与する患者が最大32%という死亡率に直面することとなり、そして、是正処置を要する蓋然性が高く、更には、追加で9日間入院することになるであろう。結果として、数十万とはいかないまでも、ケアのために数万ドルの追加コストがかかることとなる。従って、手術領域において脈管(例えば血管)の存在を正確に決定することを可能にする方法及びシステムから得ることには、このような重要な価値がある。結果としてこうしたコストを削減又は回避することができる。
【0003】
手術領域における血管の存在に関する情報を提供するシステム及び方法は、最小限の侵襲的な外科処置の最中において、特に重要となる。伝統的には、外科医は、外科処置中、触覚を頼りに、血管の同定を行い、且つ、これらの脈管に対して、意図しないダメージを回避していた。最小限の侵襲的処置へと移行してきたため(腹腔鏡手術及びロボット手術を含む)、外科医は、手術領域における血管の存在に関して決定するための直接的な視覚化や触覚を用いた能力が失われてきた。従って、外科医は、主に慣習及び経験に基づいて、手術領域において、血管の存在の有無を決定しなければならない。残念ながら、解剖学的にイレギュラーなことは、しばしば起こるものであり、その原因としては、先天性の異常、前回の手術の傷跡、及び体質(例えば、肥満)が挙げられる。
【0004】
手術領域内での脈管の有無を決定する能力は、大きな利点を外科医又は外科チームにもたらし、そして、これは、直接の視覚化及び触覚的な同定方法が失われている最小限の侵襲的処置にとって特に重要となる。そして、同定された脈管構造の特徴を分析する能力は、更なる重要な利点をもたらす。例えば、脈管のサイズ(例えば脈管の内径又は外径)に関する情報を提供できれば有利であろう。サイズに関する情報は、特に関連しており、その理由として、アメリカ食品医薬品局が現在承認している、例えば、サーマル結紮装置は、所与のサイズの範囲内(典型的には、大半のサーマル結紮装置において、直径7mm未満)で脈管をシール及びカットする。もしも、サーマル結紮装置を用いてより大きな血管をシールする場合、シール形成に関する失敗率は、19%にもなる可能性がある。
【0005】
更には、好ましいのは、こうした情報が、脈管検出と脈管分析との間で最小限の遅れで提供されることであり、結果として、情報がリアルタイムなものとして特徴づけられる。もしも、分析にそれなりの時間が必要となると、最低限、こうした遅延により、処置を行うのに必要な時間が増えることになるであろう。更には、こうした遅延は、外科医の疲労を増大させる可能性があり、その理由として、外科医は、機器の動きと情報の伝達との間の遅延を補うべく、慎重に操作することが要求されるからである。こうした遅延は、実際、システムを採用することへの障害となる可能性がある(例えば、提供される情報が脈管の損傷リスクを軽減するとしても)。
【0006】
更に言えば、脈管構造の検出及び分析を、造影媒体又は造影剤の使用を必要とすることなく行えば有利であろう。脈管構造を特定するために造影剤を使用することについては普及してきているもの、依然として、造影剤の使用は、手順を複雑にすることとなる。造影剤の使用により、本来必要でない装置を追加する必要に迫られる可能性があり、そして、こうした処置により生じる医療廃棄物が増加する可能性がある。更に、造影剤の使用は、患者による悪性反応のリスクを増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以降で詳述するが、本開示は外科用システムについて説明し、該システムは、脈管サイズを決定するシステム及びその方法を含み、これらは、既存の方法に対する有利な代替手段を実現し、これらは、脈管の回避又は単離のための同定を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様によれば、外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを決定するために用いられる外科用システムを提供する。前記システムは、以下を包含する:
前記外科機器の前記作業末端に配置される少なくとも1つの発光素子(ここで、前記少なくとも1つの発光素子は第一強度で発光する);、及び、
前記少なくとも1つの発光素子に対向して前記外科機器の前記作業末端に配置される光センサアレイ(ここで、前記光センサアレイは、少なくとも1つの光センサの列を含み、前記光センサの列中の個別の光センサは、非パルス状の成分を含むシグナルを生成するように構成される)。また、システムは以下を含む:前記光センサアレイと結合したコントローラー(ここで、前記コントローラーは分析器を含み、前記分析器は、前記光センサの列中の個別の光センサにおける前記非パルス状の成分の大きさを決定し、前記非パルス状の成分の大きさが大きい方から小さい方へ変化しているかどうか、及び、小さい方から大きい方へ変化しているかどうかを決定し、及び前記非パルス状の成分の大きさが大きい方から小さい方へ変化している、且つ、小さい方から大きい方へ変化している場合には、前記第一強度を第二強度に変更すべきかどうかを決定する)。
【0009】
本開示の別態様によれば、外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを決定する方法を提供する。前記方法は以下を含む:
前記外科機器の前記作業末端にて光を発すること(ここで、前記光は第一強度で発光される)、
少なくとも1つの光センサの列を含む光センサアレイにて前記外科機器の前記作業末端の光を感知すること、及び
光センサの列に沿った個別のセンサに関して、非パルス状の成分を含むシグナルを発生させること。
前記方法は更に以下を含む:
前記光センサの列中の個別の光センサにおける前記非パルス状の成分の大きさを決定すること、
前記非パルス状の成分の大きさが大きい方から小さい方へ変化しているかどうか、及び、小さい方から大きい方へ変化しているかどうかを決定すること、並びに、
前記非パルス状の成分の大きさが大きい方から小さい方へ変化している、及び、小さい方から大きい方へ変化している場合には、前記第一強度を第二強度に変更すべきかどうかを決定すること。
【0010】
更なる本開示の態様によれば、外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを決定するために用いられる外科用システムを提供する。前記システムは以下を含む:
前記外科機器の前記作業末端に配置される少なくとも1つの発光素子;、及び
前記少なくとも1つの発光素子に対向して前記外科機器の前記作業末端に配置される光センサアレイ(ここで、前記光センサアレイは、少なくとも1つの光センサの列を含み、前記光センサの列中の個別の光センサは、非パルス状の成分を含むシグナルを生成するように構成される)。また、システムは以下を含む:前記光センサアレイと結合したコントローラー(ここで、前記コントローラーは分析器を含み、前記分析器は、前記光センサの列中の個別の光センサにおける前記非パルス状の成分の大きさを決定し、前記非パルス状の成分における大きさに関して大きい方から小さい方への第一の変化と、及び、前記非パルス状の成分における大きさに関して小さい方から大きい方への第二の変化とに対応する1対の位置を決定し、並びに、前記1対の位置に従って、対称的な非パルス状のプロファイルに基づいて、前記脈管の安静状態の外径を決定する)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示内容については、以降の説明及び添付した図面から、更に完全な形で理解できるであろう。他の要素を明示する目的から、幾つかの図面においては、選択された要素を省略して簡略化している場合がある。幾つかの図面におけるこうした要素の省略は、例示的な実施形態において、必ずしも特定の要素の存在の有無を示すわけではない(例外として、対応する記載された説明において明記しない限り)。どの図も、必ずしも実スケールとは限らない。
【0012】
図1】本開示の一実施形態に従った外科用システムの概念図である。;
【0013】
図2図1による発光素子及び光センサを有する外科機器の拡大部分断面図である。ここで、発光素子と光センサとの間に配置されたものとして脈管の一部を図示する。;
【0014】
図3】血管の拡大断面図である。ここで、壁部分は、脈管を血液が流れるに従って、拡大及び収縮する。これに伴い、安静状態及び拡張状態との間で外径が変化する(血管外径の変化を誇張して図示)。;
【0015】
図4】本開示の一実施形態に従った方法のフロー図である。前記方法は、図1のシステムを用いて実行できる。;
【0016】
図5】特定の動作のフロー図であり、図4に示した方法の一部として実行できる。;
【0017】
図6】光センサアレイの各要素(ピクセル)に関して、パルス状の(AC)成分及び非パルス状の(DC)成分の大きさのグラフである。グラフは、本明細書に記載の包括的概念を示すために使用される。;
【0018】
図7図4に示した方法の一部として実行できる別の動作のフロー図である。;
【0019】
図8】様々なブタ動脈の外径を、当該動脈の内径と比較したグラフである。;
【0020】
図9】本開示の別の実施形態に従った方法のフロー図であり、前記方法は、図1のシステムを用いて実行できる。;
【0021】
図10】更なる本開示の別の実施形態に従った方法のフロー図であり、前記方法は、図1のシステムを用いて実行できる。;
【0022】
図11】ミラーリング前の、光センサアレイの各要素に関する非パルス状の(DC)成分の大きさのグラフである。;
【0023】
図12図11を補正したグラフであり、ミラーリングを用いて、対象となる架空の領域を提供する。;
【0024】
図13】発光素子が発する光強度を調節させるための方法を説明するために用いられる例示的なDCプロファイルのグラフである。;
【0025】
図14】異なる光強度でのDCプロファイルのグラフである。;
図15】異なる光強度でのDCプロファイルのグラフである。;
図16】異なる光強度でのDCプロファイルのグラフである。;
【0026】
図17】DCプロファイルのパラメーターを用いた方法のフロー図であり、発光素子が発する光強度を調節させ、脈管サイズ決定エラーを制限する;
【0027】
図18図1のシステムにおいて用いられるビデオ・モニタでのシミュレートした部分的スクリーンのキャプチャである;
【0028】
図19】第一実験群において使用される光センサアレイ(直線状CCDアレイ)の各要素(ピクセル)に関して、パルス状の(AC)成分及び非パルス状の(DC)成分の大きさのグラフである。;
【0029】
図20】第二実験群において使用される光センサアレイ(光検出器アレイ、図19との比較のためピクセルで提示された測定値を有する)の各要素に関するパルス状の(AC)成分及び非パルス状の(DC)成分の大きさのグラフである;及び
【0030】
図21】様々なブタ動脈の内径を比較したグラフであり、光センサアレイ(直線状CCDアレイ)を用いて決定され、及び第三実験群にて測定される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の一実施形態に従った外科用システムは、少なくとも1つの発光素子と、少なくとも1つの光センサと、及びコントローラーとを含む。また、システムは、外科機器も含む。
【0032】
システムは、外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを決定する。具体的には以下のように考えられる:システムは、外科機器の作業末端の近領域内の脈管のサイズを、脈管周辺の組織の存在又は種類に関係なく決定するために用いることができる。以下説明するシステムの実施形態は、光センサが決定する光透過率に基づいて、標的領域内の脈管の存在及びサイズに関する決定を実行する。従って、この実施形態は、酸素飽和度(即ち、酸素を搭載する血液ヘモグロビンのパーセンテージ)を決定するために透過型(transmissive)パルスオキシメトリで用いられる技術と表面上類似しているかもしれない。後述の開示内容を注意深く検討すること以下の点が明らかになるであろう:即ち、開示されたシステムは、発光素子(複数可)及び光センサ(複数可)を、コントローラー(独自回路又は独自化プログラムされたプロセッサのいずれかの形態)と併せて使用している。そして、パルスオキシメータでは提供されない脈管の存在及びサイズに関する情報を提供する。更に、本開示の実施形態は、センサアレイの使用を含む。コントローラーは、前記アレイからのシグナルのパルス状の及び非パルス状の成分を処理する。そして、脈管の直径(複数可)(例えば、内径又は安静状態の外径)に関する情報を出力する。更に、本開示の技術は、血管以外の脈管でも使用することができる(更に、開示されたシステム及び方法を、透過型(transmissive)パルスオキシメータから切り離して)。
【0033】
図1及び2は、こうした外科用システム(100)の実施形態を表し、該実施形態は、脈管Vのサイズ(例えば、直径)を決定するために使用され、該脈管は、組織Tの領域(102)内に存在し、外科機器(106)の作業末端(104)の近くに存在する。以下の点を理解されたい:即ち、脈管Vは、組織Tの領域(102)において他の脈管と接続されてもよく、そして、更には、脈管Vは当該領域(102)を超えて延在してよく、患者の体内でみられる他の器官(例えば、心臓)を流体連通することができる。更に、組織Tは、図1及び2において、脈管Vを完全に特定の深さまで覆っている(周方向及び長さ方向の両方の観点から)ものの、このことは、システム(100)を利用するすべての例において、必ずしも当てはまるものではない。例えば、組織Tは、脈管Vの周方向を部分的に覆うだけであってもよく、及び/又は、脈管Vの長さ方向の一部を覆うだけであってもよい。又は組織Tは、脈管V上に、ごく薄い層として存在してもよい。更に非限定的な例として、脈管Vは血管であってもよく、及び組織Tは、結合組織、脂肪組織又は肝臓組織であってもよい。
【0034】
外科用システム(100)は、以下を含む:少なくとも1つの発光素子(110)(又は単純に発光素子(110));、少なくとも1つの光センサ又は光検出器(112)(又は単純に光センサ(112));、及び発光素子(110)及び光センサ(112)と結合したコントローラー(114)。上述したように、また、システム(100)は、以下も含むことができる:外科機器(106)。
【0035】
発光素子(110)は、外科機器(106)の作業末端(104)に配置される。また、光センサ(112)も、外科機器(106)の作業末端(104)に配置される。図1及び2に示すように、光センサ(112)は、発光素子(110)と対向して配置されてもよい。なぜならば、発光素子(110)及び光センサ(112)は、外科機器(106)の対向素子上に配置されるからである。これについては後で詳述する。
【0036】
発光素子(110)は、少なくとも1つの波長の光を発するように構成される。例えば、発光素子(110)は、660nmの波長を有する光を発することができる。これについては、単一の素子又は複数の素子を用いて達成することができる(例えば、素子は、アレイ状に配置又は構成されてもよく、これについては後で詳述する。)。同様の態様で、光センサ(112)は、少なくとも1つの波長(例えば、660nm)で光を検出するように構成される。本明細書に記載の実施形態によれば、光センサ(112)は、複数の素子を含み、これらの素子は、アレイ状に配置又は構成される。
【0037】
ある特定の実施形態によれば、発光素子(110)は、少なくとも2つの異なる波長の光を発するように構成されてもよく、及び光センサ(112)は、少なくとも2つの異なる波長の光を検出するように構成されてもよい。例えば、発光素子(110)は、3つの波長の光を発してもよく、一方で、光センサは、3つの波長の光を検出してもよい。一例として、発光素子(110)は以下を発することができ、及び、光センサ(112)は以下を検出することができる:可視光範囲の光、近赤外線範囲の光、及び赤外線範囲の光。具体的には、発光素子(110)は以下を発することができ、及び、光センサ(112)は以下を検出することができる:660nm、810nm、及び940nmの光。こうした実施形態は、例えば、インビボ条件下で、血管V及び周辺組織Tが最適に貫通することを確保するために使用することができる。
【0038】
特に、810nmで発せられる光は、動き及び/又は血液かん流を原因とする光出力の変化を除去するための基準として使用することができる。810nm波長は、同等(isobestic)ポイントに該当し、当該ポイントでは、酸素化されたヘモグロビンと脱酸素化されたヘモグロビンの両者の吸収が等しい。従って、この波長での吸収は、血液の酸素化とは独立したものであり、そして、光透過率の変化(原因として、かん流における動き及び/又は変化)のみによって影響を受ける。
【0039】
上述したように、光センサは、光センサアレイの形態であってもよい。実際、光センサアレイ(112)は、更に少なくとも1つの光センサの列を含む(図2を参照);ある特定の実施形態によれば、アレイ(112)は、単一の光センサの列を含むことができ、及び、アレイ(112)は、別の形態において、直線状アレイと称してもよい。少なくとも1つの光センサの列(112)は、複数の個別の光センサを含む。個別の光センサ(112)は、互いに接して配置されてもよく、又は、光センサは、互いに離れて配置されてもよい。光センサの列を形成する個別の光センサについては、アレイの異なる行又は列を形成する光センサによって、互いに分離することさえも可能である。しかし、特定の実施形態によれば、アレイは、電荷結合素子(CCD)、特に複数のピクセルを含む直線状CCD撮像装置を含むことができる。更なる別の形態として、CMOSセンサアレイを用いてもよい。
【0040】
本開示の実施形態によれば、個別の光センサ(112)(例えば、ピクセル)は、第一パルス状成分と第二非パルス状成分とを含むシグナルを生成するように構成される。以下の点を認識されたい:即ち、第一パルス状成分は、シグナルの交流電流(AC)成分であってもよく、一方で、第二非パルス状成分は、直流電流(DC)成分であってもよい。光センサ(112)がアレイの形態である場合(例えばCCDアレイ)、パルス状の及び非パルス状の情報は、アレイの各素子に関して、又は、少なくとも、アレイの少なくとも1つの列を形成するアレイの各素子に関して生成されてもよい。
【0041】
パルス状成分に関して、以下の点を認識されたい:即ち、血管については、1分あたり約60パルス(又はビート)の特徴を有する脈動を有するものとして説明することができる。この点は、患者の年齢及び条件によって変動しうるものの、脈動の範囲は、典型的には60~100パルス(又はビート)/分である。光センサ(112)は、シグナル(コントローラー(114)を通過する)を生成し、該シグナルは特定のAC波形を有し、該波形は、脈管を通過しての血液の移動に対応する。特に、AC波形は、脈管内のパルス状の血流による光吸収に対応する。一方で、DC成分は、原則として、周辺組織による光吸収及び散乱に対応する。
【0042】
特に、以下の点が考えられる:即ち、光センサアレイ(112)の素子が、脈管Vを挟んで発光素子(110)とは反対側に配置されている場合、脈管Vが発光素子(110)と光センサアレイ(112)との間に配置されていない場合と比べて、ACシグナルが高くなる。この理由として、透過光における著しい変動のほとんどは、脈管に関連する脈動によって引き起こされるからである。また、以下の点が考えられる:即ち、脈管Vを挟んで発光素子(110)と反対側にアレイ(112)の素子が配置される場合、脈管Vが発光素子(110)とアレイ(112)との間に配置されていない場合のアレイ(112)の素子と比べて、DCシグナルが低くなる。
【0043】
実際、以下の点が考えられる:即ち、脈管(例えば血管)の特定の領域は、他の領域と比べてより明瞭な脈動を有してもよく、この違いは、アレイ(112)から受信するシグナルのパルス状成分の違いに反映されてもよい。より具体的には、及び非限定的な例として、血管に関して述べると、心臓が血液を体内へポンプ循環させると、筋性動脈は、体内に向けられる血液のボリュームを収容するためにパルスを発生させる。こうしたことが発生すると、脈管の中間層(又は中膜)が、拡張及び収縮をする。中膜の拡張及び収縮により、結果として、脈管の内径に比べて、脈管の外径に対して、相対的に、より有意な変化をもたらす。以下の点が考えられる:即ち、脈管の拡張及び収縮の最中に発生する外径の相対的により有意な変化は、脈管の末端において時間とともにACシグナル(上述したように、脈動と関連する)について最も大きな変動をもたらす(外径が拡張位置Aと安静位置Bとの間を変動する際に)(図3を参照)。
【0044】
従って、本開示の実施形態によれば、コントローラー(114)は、光センサ(112)と結合しており、そして、スプリッタ(116)を含み、光センサアレイ(112)の各要素に関して、第一パルス状成分を、第二非パルス状成分から分離する。コントローラー(114)は、また、分析器(118)も含み、外科機器(106)の作業末端(104)の近領域(102)内の脈管Vのサイズを、パルス状成分に基づいて定量化する。領域(102)内の脈管Vのサイズを表示、示唆、又は伝える目的で、コントローラー(114)は、出力装置又はインジケータ(130)と結合してもよく(図1を参照)、これらは、視覚的、聴覚的、触覚的、又は他のシグナルを、機器(106)のユーザーに提供することができる。
【0045】
特に、分析器(118)は、光センサの列中の個別の光センサにおけるパルス状成分の大きさを決定することができる。更に、分析器は、パルス状成分の第一ピークの大きさ及び第二ピークの大きさを決定することができる。分析器は、第一及び第二ピークの大きさを決定することができ、その前に、まず、シグナルのパルス状の及び非パルス状の成分の大きさについて、より大きい方へ、及びより小さい方への変化が起きている場所を決定することができる。これについては後で詳述する。更には、分析器(118)は、脈管Vの安静状態の外径を、パルス状成分の第一及び第二ピークの大きさに基づいて決定することができる。
【0046】
ある特定の実施形態によれば、前記分析器(118)は、以下を決定することによって、脈管Vの安静状態の外径を決定することができる:光センサの列に沿った第一ペアの位置、ここで、パルス状成分の大きさは、第一(又は第二)ピークの大きさのパーセンテージ(例えば、25%~75%の間、(例えば50%))である;、並びに光センサの列に沿った第二ペアの位置、ここでの、パルス状成分の大きさも、同じく、第一(又は第二)ピークの大きさのパーセンテージであり、第二ペアは、光センサの列に沿って、第一ペアの位置の間に配置される。前記分析器は、その後、第一ペアの位置間の第一距離、及び第二ペアの位置間の第二距離を決定し、並びに、脈管の安静状態の外径を、第一及び第二距離の平均として決定する。他の実施形態によれば、分析器(118)は、代わりとして、内側のペアの位置と、並びに、内径及び安静状態の外径の関係を用いてもよい。ある特定の実施形態によれば、非パルス状の成分を、パルス状成分の代わりに用いてもよい。
【0047】
ある特定の実施形態によれば、スプリッタ(116)及び分析器(118)は、1以上の電気的な回路構成要素によって規定される。他の実施形態によれば、1以上のプロセッサ(又は単純に、プロセッサ)は、スプリッタ(116)及び分析器(118)がある動作を行うよう、プログラミングされてもよい。更なる実施形態によれば、スプリッタ(116)及び分析器(118)は、一部は、電気的な回路構成要素によって規定されてもよく、及び、一部は、プロセッサによって規定されてもよく、該プロセッサは、スプリッタ(116)及び分析器(118)がある動作を行うようプログラミングされてもよい。
【0048】
例えば、スプリッタ(116)は、プロセッサを含むことができ、又はプロセッサによって規定されてもよく、該プロセッサは、第一パルス状成分を、第二非パルス状成分から分離するようプログラミングされてもよい。更に、分析器(118)は、プロセッサを含むことができ、又はプロセッサによって規定されてもよく、該プロセッサは、外科機器(106)の作業末端(104)の近領域(102)内の脈管Vのサイズを、第一パルス状成分に基づいて定量化するようプログラミングされてもよい。プロセッサがプログラミングされる指示内容は、プロセッサに関連するメモリ上に保存されてもよく、ここで、メモリは、以下を含むことができる:1以上の有形の非一時的なコンピュータ可読メモリであって、コンピュータ実行可能指示を当該メモリ上に有するもの。当該指示は、プロセッサによって実行されるとき、1以上のプロセッサに対して1以上の動作を引き起こすことができる。
【0049】
システム(100)のほか、本開示は、方法(200)の実施形態を含み、該方法は、外科機器(106)の作業末端(104)の近領域(102)内の脈管Vのサイズを決定する。方法(200)は、例えば、上述したように、図1に関連するシステム(100)を用いて、実行することができる。図4に示すように、システム(100)を動作させる方法(200)は以下を含む:ブロック(202)にて、外科機器の作業末端において光を発すること;、及び、ブロック(204)にて、少なくとも1つの光センサの列を含む光センサアレイにて外科機器の作業末端の光を感知すること。上述したように、発せられた光は、以下を含むことができる:少なくとも2つの異なる波長の光、従って、感知するステップは、少なくとも2つの異なる波長の光を感知することを含む。これについても上述したが、3つの異なる波長の光を使用することができ、そして、例えば、可視光範囲及び近赤外線範囲の光を使用することができる。一実施形態に従って、使用する光は、以下の波長を有してもよい:660nm、810nm、及び940nm。
【0050】
方法(200)は続いてブロック(206)まで進み、ここでは、光センサの列に沿った個別のセンサに関して、パルス状成分が非パルス状の成分から分離される。また、方法(200)は以下を含む:ブロック(208)にて、パルス状成分の大きさを、光センサの列中の個別の光センサにて決定すること;、ブロック(210)にて、パルス状成分の第一ピークの大きさ及び第二ピークの大きさを決定すること;、並びに、ブロック(212)にて、脈管の安静状態の外径を、パルス状成分の第一及び第二ピークの大きさに基づいて決定すること。
【0051】
より具体的には、図5に示すように、図4の方法(200)のブロック(212)は、1以上の動作を含むことができる。特に、図5に示すように、ブロック(212)の動作は、以下を含むことができる:ブロック(212-1)にて、光センサの列に沿った第一ペア及び第二ペアの位置を決定すること、ここで、第一ペア及び第二ペアの位置のパルス状成分の大きさは、第一(又は第二)ピークの大きさのパーセンテージである。第二ペアの位置は、第一ペアの位置の間に配置される、これについては、図6に関連して後で詳述する。更には、ブロック(212)の動作は、以下を含むことができる:ブロック(212-2)にて、第一ペアの位置間の第一距離と、第二ペアの位置間の第二距離を決定すること;、並びに、ブロック(212-3)にて、脈管Vの安静状態の外径を、第一及び第二距離の平均として決定すること。
【0052】
図4及び5に示すようなシステム(100)の動作方法(200)を更に説明すると、図6にて、プロットが提供される。特に、図6は、光センサアレイの各素子に関するパルス状の(AC)成分の大きさのシミュレートプロット、及び前記アレイの同一の素子に関する非パルス状の(DC)成分の大きさのプロットである。直線をマークし、AC及びDCに関して2つのプロットの差分をとる。このシミュレーションによれば、脈管(具体的には、血管)は、光センサアレイと発光素子アレイとの間に配置され、ここで、脈管は、概して発光素子アレイと光センサアレイとの間に、40~180ピクセルの範囲で位置する。
【0053】
図6に示すように、DCシグナルプロットは、比較的高い値から、著しく低い値へと減少し、及びその後は、その低い値から、また高い方の値へ増加し、該増減は、2つの異なるポイント(即ち、ポイント(300)、及びポイント(302)にて)、センサアレイ(112)に沿って起こる。上記観察内容によれば、前記領域でのDCシグナルの大きさの減少は、脈管が発光素子(110)と光センサ(112)との間に配置された場合に起こると予想される。そして、従って、脈管Vが、以下の2つポイントの間に配置されていることが推測される:DCシグナルプロットがより高い値からより低い値へ変化するポイント(即ち、ポイント300);、及びDCシグナルプロットがより低い値からより高い値へ変化して戻るポイント(即ち、ポイント302)。
【0054】
更には、ACシグナルは、脈管がおそらく位置しているであろう一方の面にて、ポイント(即ち、ポイント(304))にて、比較的低い値からより高い値へ有意に増加する。そして、脈管が位置する他方の面にて、高い値からより低い値へ変化する(即ち、ポイント(306))。また、上述したように、パルス状の(AC)シグナルの相対的な増加は、脈管が発光素子(110)と光センサ(112)との間に配置された場合に起こると考えられる。従って、脈管Vが、以下の2つポイントの間に配置されていることが推測される:ACシグナルプロットがより低い値からより高い値へ変化するポイント(即ち、ポイント304);、及び、ACシグナルプロットがより高い値からより低い値へ変化して戻るポイント(即ち、ポイント306)。
【0055】
DCシグナルの変化又はACシグナルの変化のいずれか一方を利用して、対象となる領域(ROI)を規定することができるが、ACシグナルの変化に関する情報の組み合わせをDCシグナルにおける変化と組み合わせて、ROIを規定してもよく、該ROIは、パルス状の(AC)情報を更に考慮することで規定される。即ち、この情報に従い、システム(100)(及びより具体的には、コントローラー(120))は、センサアレイ(112)の全ての素子のうちのいくつかの素子のサブセットを考慮することができる。このことは、アレイに沿った個別のセンサにおいて脈管に関連しない変動を除外するのに特に有用となる可能性がある。こうした実施形態によれば、各DCプロット及びACプロットに関するより高い値とより低い値との間の変化を決定する。そして、減少したDCの大きさと増加したACの大きさとの間でオーバーラップしているROIだけを考慮する。図6に示すように、こうした領域は、垂直バーの間になる(即ち、約40ピクセル~180ピクセル)。
【0056】
本開示の実施形態によれば、図4及び5に示すように、脈管の安静状態の直径は、拡張状態の脈管の外径と脈管の内径との間で観察される相関関係に基づいて計算することができる。特に、観察されることとして、脈管の安静状態の直径は、拡張状態の脈管の外径及び脈管の内径の平均に関連する。この計算を行うことを目的として、脈管の拡張状態の外径(又はラインA)は、以下のように、ACの大きさがピークACの大きさの約50%となる第一ペアのポイント間の距離として決定される:最も左側のACピークの大きさ(即ち、ポイント(308))よりも前にある(又はこれに先行する)最も左側の発生箇所(即ち、ポイント(312));、及び、最も右側のACピークの大きさ(即ち、ポイント(310))の後の(又はこれよりも遅れる)最も右側の発生箇所(即ち、ポイント(314))。更には、内径(又はラインC)は、以下のように、ACの大きさがピークACの大きさの約50%となる第二ペアのポイント間の距離として決定される:最も左側のACピークの大きさ(即ち、ポイント(308))の後の(又はこれよりも遅れる)最も左側の発生箇所(即ち、ポイント(316));、及び、最も右側のACピークの大きさ(即ち、ポイント(310))よりも前にある(又はこれに先行する)最も右側の発生箇所(即ち、ポイント(318))。また、これらの距離は、ピークACの大きさの外側及び内側に存在する50%ピークACの大きさの2つの発生箇所間の距離として説明できる。また、第二ペアは第一ペアの間又は内側に配置されているということができる。
【0057】
全ての本開示の実施形態によれば、50%ピークACの大きさでの発生箇所を必ずしも使う必要はない。他の実施形態によれば、内径は、以下の間の距離として決定されてもよい:5%ピークACの大きさの最も左側のACピークの大きさの後の(又はこれよりも遅れる)最も左側の発生箇所;、及び5%ピークACの大きさの最も右側のACピークの大きさよりも前にある(又はこれに先行する)最も右側の発生箇所。一方で、拡張状態の外径も、上述した5%ピークACの大きさの発生箇所で決定される。
【0058】
最後に、図6に示すように、安静状態の外径(ラインB)は、内径(ラインC)と拡張状態の外径(ラインA)との間の平均として決定できる。
【0059】
他の本開示の実施形態によれば、脈管Vの安静状態の外径の決定は、光センサの列に沿った位置の2つのペアを参照しないで計算することができる。より具体的には、図4の方法(200)のブロック(212)にてシステム(100)が実行する動作(脈管Vの安静状態の外径を決定するため)は、図7に示すものであってもよい。こうした代替の方法によれば、ブロック(212)の動作は、以下を含むことができる:ブロック(212-1’)にて、ピークの大きさが発生する2つの位置の間で、光センサの列に沿った一対の位置を、決定すること。ある位置の単独のペア(又は「内側」ペア)は、パルス状成分の大きさが第一(又は第二)ピークの大きさのパーセンテージである箇所で発生してもよい。例えば、内側ペアは、第一(又は第二)ピークの大きさの50%に対応するピークの大きさが発生する位置の間にある位置のペアによって規定されてもよい。更には、ブロック(212)の動作は、以下を含むことができる:ブロック(212-2’)にて、内側ペアの間の距離を決定すること。
【0060】
その後、ブロック(212-3’)にて、位置の内側のペア間の距離を、安静状態の外径を計算するために利用する。この方法によれば、図5の方法のケースでもそうであったが、位置の内側のペア間の距離は、脈管Vの内径を代表するものである。更に、考えられる点として、拡張及び収縮を行う脈管の内径は、変化の度合いがかなり低く、(もしあるとしても)外径より小さい。更に、以下の事象が観察される:脈管の端からのシグナルが、脈管周辺に配置された組織の存在によって不明瞭になる可能性がある。従って、脈管の外径を近似化することを試みるよりは、内径と安静状態の外径との間の関係を経験的に決定してもよく、この関係を利用して、安静状態の外径を、内径の測定に基づいて計算することができ、内径については、ブロック(212-1’及び212-2’)の動作に従い決定することができる。
【0061】
最もシンプルな形式では、安静状態の外径は、内径を乗じることで決定することができる。他の実施形態によれば、安静状態の外径は、定数項を追加したうえで内径を乗じることで計算することができる。図8は、グラフであり、1組の筋性動脈の内径及び安静状態の外径を比較している。このグラフに基づいて、外径(y)と内径(x)との関係式を決定した(y=1.2x+0.9)。従って、ブロック(212-1’及び212-2’)にて決定される所与の内径に関して、ブロック(212-3’)にて、式を利用して安静状態の外径を計算することができる。
【0062】
例えば、図1で説明したシステム(100)を用いて実践できる、方法の更なる実施形態を図9に示す。図9に示す方法(220)は、脈管を機器の挟持部(例えば図1及び2に示すように)間にしっかりと挟持した場合に生じる可能性がある複雑化に取り組む。特に、外科機器(106)の挟持部の間での脈管Vの圧縮によりシグナルのパルス状成分が変わる可能性があり、結果として、図6に示す2つのピークの代わりに、単一のピークだけが観察される可能性がある。
【0063】
方法(220)は、以下の点で方法(200)と類似する:ブロック(222)にて、発光素子(110)から光を発すること;、及び、ブロック(224)にて、光センサアレイ(112)が、透過光を感知又は検出すること。システム(100)(又はより具体的には、コントローラー(114))は、ブロック(226)にて、シグナルの非パルス状の成分を、シグナルのパルス状成分から分離するために動作し、及びブロック(228)にて、パルス状成分の大きさを、個別のセンサにより決定する。
【0064】
ブロック(230)にて、システム(100)(コントローラー(114))は、その後、ピークのパルス状の大きさで以って同定された位置の数に関して決定を行う。ある特定の実施形態によれば、こうした決定は、対象となる領域をある変化を用いて同定した後で、実行してもよく、該変化は、非パルス状の成分(例えば、大きさの大きい方から低い方へ)の変化であってもよく、任意で、パルス状成分(例えば、大きさの小さい方から大きい方へ)の変化であってもよい。実際、幾つかの実施形態によれば、ブロック(230)での決定は、一旦、シグナルの非パルス状の成分の変化(大きさの大きい方から低い方へ)を同定してから、実行される。
【0065】
ブロック(230)にて、2つのピークが存在する旨の決定が行われると、例えば、方法(220)は、ブロック(232)、(234)、(236)に進むことができ、ここでは、図7に関して説明したものと同様の方法が実行される(ただし、以下の点を理解されたい:即ち、図5に関して説明したものと同様の方法を代えたものでもよい)。ブロック(230)にて、単一のピークが存在する旨の決定が行われると、方法(220)は、ブロック(242)、(244)、(246)に進むことができる。特に、ブロック(242)にて、光センサの列に沿った位置の単一のペアに関する決定を行い、ここで、パルス状成分の大きさはピークの大きさのパーセンテージである。例えば、前記ペアは、ピークの大きさのいずれかの側(即ち、ピークの大きさに対応する位置に対して左側又は右側)の位置のペアによって規定することができ、ここで、大きさはピークの大きさの50%に対応する。更には、システム(100)(コントローラー(114))は、ブロック(244)にて、前記位置のペア間の距離を決定することができる。システム(100)は、その後、その距離を、内径に関する値として利用することができ、及び、安静状態の外径を、内径と外径との間で確立された関係を用いて計算することができ、プロセスとしては、図7のブロック(212-3’)に関して説明したものと同様であってもよい。
【0066】
以下の点を認識されたい:即ち、方法(220)については、ピークが幾つ存在するかに関する決定に関して参照して説明したものの、こうした決定をいかにして行うかに関する具体例は、様々な実施形態で異なってもよい。例えば、前記決定は、存在するピークが1つなのか又は2つなのかに従って行ってもよい。或いは、前記決定は、単一のピークが存在するかどうかに従って行ってもよく、ここで、次に行う動作については、前記質問に関する答えがYesなのか又はNoなのかに依存してもよい。
【0067】
更に、図4~9で説明した方法に代わるものとして、シグナルの非パルス状の成分を用いて、脈管外径を決定する。図10に示すように、方法(250)は、以下の点で、方法(200)、(220)と類似して開始される:ブロック(252)にて光を発せられること;、ブロック(254)にて透過光を感知又は検出すること;、及びブロック(256)にて、パルス状の成分及び非パルス状の成分を分離すること。上述の方法と違って、システム(100)(コントローラー(114))は、ブロック(258)にて非パルス状の成分を確認し、個別のセンサが、ブロック(258)にて非パルス状の大きさを決定する。更に、上述の方法と違って、システム(100)は、ブロック(260)にて、光センサの列に沿った複数の位置を決定する(ここで、非パルス状の大きさは、値の大きい方から低い方へ変化し、且つ非パルス状の大きさは、値の低い方から高い方へ戻って変化する)。その後、ブロック(262)にて、シグナルの非パルス状の成分におけるこれらの変化に基づくこうした位置のペアを、利用して、安静状態の外径を決定する。例えば、位置のペア間の距離を、安静状態の外径に関する見積もりとして利用することができ、又は、経験的なデータに基づく関係を用いて、安静状態の外径を、非パルス状の成分が変化する位置のペア間の距離に従って計算してもよい。
【0068】
上記実施形態において、更なる強化策を含んでもよく、又は、別途組み合わせを実践して、外科用システム(100)の使用のための方法の更なる実施形態を提供してもよい。
【0069】
例えば、対象となる領域の検出に関連して、DCプロファイルのコントラストを利用して、DCプロファイルが減少しその後増加する領域(即ち、「窪み」)の存在を決定してもよい。この方法によれば、DCプロファイルのコントラストは、以下のように定義される:
1-(min1≦j≦NDCj/max1≦j≦NDCj) (Eqn.)
ここで、N=センサのトータル数。
対象となる領域は、その後、一次導関数を用いて決定できる。
【0070】
更に、ミラーリングを用いて、「架空」の対象となる領域を抽出することができる。以下の点が考えられる:即ち、ミラーリングは、こうしたセッティングに有用となる可能性があり、なぜならば、脈管(例えば動脈)は、対称構造になっていると予想できるからである。従って、異なる厚さの組織が脈管周辺に配置されることが原因で、DCプロファイルは対称的な脈管に従ったものではない可能性があるものの、DCプロファイルが対称的であるという予想を用いて、少なくとも脈管サイズの決定の精度を向上させることができる。図11及び12を参照されたい。
【0071】
更には、DCプロファイルを用いて、発光素子(110)が発する強度を調節してもよい。特に、以下の点が考えられる:即ち、発光素子(110)の強度は、脈管検出及び脈管サイズの決定の精度において重要な役割を果たす。発光素子(110)の強度の設定が低すぎると、光は、センサ(112)に到達する前に、組織に吸収されてしまう可能性がある。こうした状況において、センサ(112)は、脈管のパルス状の性質を検出することができない可能性があり、そして、脈管(例えば、動脈)と周辺組織との区別が困難になる可能性がある(即ち、解像度が低くなる)。一方で、発光素子の強度の設定が高すぎると、脈管のごく中心に位置するセンサ(112)部分しか、非パルス状の(DC)シグナルの減少を感知することができない。このことは、脈管の対象となる領域及び他の空間的特徴を決定する際のエラーにつながる。従って、望ましいのは、発光素子(110)の強度を選択する方法及び機構を提供することであり、これにより、条件として低すぎる又は高すぎるのいずれかであった場合の強度を用いたときの結果を限定する。
【0072】
図13は例示的なDCプロファイルを示すが、これは、発光素子強度を調節するために用いることのできる様々なプロファイルパラメーターについて説明するために用いることができる。結果として特定の設定において低すぎず高すぎずの状態となる。以下の点を認識されたい:即ち、図13に示すDCプロファイルは、4つの分離した領域を有しており、ローマ数字I、II、III、及びIVでラベル付される。ある特定のプロファイルパラメーターは、領域I及びIV内で分析され、一方で、他のパラメーターは、領域II及びIII内で分析される。
【0073】
特に、領域I及びIV内において、関連パラメーターは、導関数プロファイルであり、一方で、領域II及びIII内において、関連パラメーターは、左右の角度、コントラスト、幅プロファイル及び対称性である。導関数プロファイル自体が説明的なものであるものの、以下の点を認識されたい:即ち、左右の角度は、以下の2点間の直線を用いて決定される:導関数プロファイルがゼロ以外の値に変化するポイント(「窪み」の開始部分)からDCの最低値(「窪み」の底部)(ここで、図13に示す水平線を基準に測定する)まで。そして、幅プロファイルは、「窪み」の左側エッジ(図13に示すように)と右側エッジとの間の距離である。コントラストは、上記の式を用いて決定する。更には、コントラストと幅の比(CWR)と称する更なるパラメーターは、幅プロファイルに対するコントラストの比をとることで決定することができる。
【0074】
まず、領域I及びIVにおける導関数プロファイルに関して、以下の点が考えられる:即ち、発光強度が低すぎず高すぎずの場合、導関数プロファイルは、領域I及びIVにおいて約ゼロになる。更に、以下の点が考えられる:即ち、左右の角度は、45~65度の範囲内になる。また、以下の点が考えられる:即ち、コントラストは0.4~0.6の範囲内であり、及び幅プロファイルは大きすぎず且つ小さすぎない。特に、以下の点が考えられる:即ち、CWRは、強度が低すぎず且つ高すぎずの場合、約1である。また、以下の点が考えられる:即ち、プロファイルは、領域II~IIIの間で、比較的均等な対称性を示す。これについては、領域IIIにおけるプロファイルの幅に対する領域IIにおけるプロファイルの幅の比として定量化できる。ここでも同様、当該比は、強度が低すぎず且つ高すぎずの場合、約1であると考えられる。
【0075】
図14~16は、発光素子(110)に関する異なる光強度での、一連のDCプロファイル及びACプロファイルを示す(DCプロファイルは実線、及びACプロファイルは鎖線)。全ての図において、左右の角度を計算するために使用する線を追加している。しかし、領域I、II、III及びIVについては、上記のようにマークしていない。しかし、図14~16においてこれらの領域を、これらの線の存在に基づいて、容易に決定できるであろう。図14は、発光素子の強度が低すぎる条件を選択した場合の状況を示す、一方で、図15は、発光素子の強度が高すぎる条件を選択した場合の状況を示す。一方で、図16は、脈管のサイズの決定を改善するようになされた発光素子の強度の状況を示す。
【0076】
ある特定の状況下で、発光素子の光強度を調節する場合に、DCプロファイルを概して利用する強化策を、これらのパラメーターと併せて用いてもよい。例えば、発光素子(110)の光強度を調節するためにDCプロファイルを使用する場合、ミラーリングを、他のパラメーターと併せて使用してもよい。
【0077】
光強度を調節するための上記パラメーターを用いた1つの方法(400)を、図17に示す。DCプロファイルにおける窪みの存在に関して、ブロック(402)にて、DCプロファイルを分析する。ブロック(404)にて、窪みが存在するか否かの決定を行う。ブロック(404)にて窪みが存在すると決定した場合、方法(400)は、ブロック(406)へと進む;もしそうでない場合、方法(400)はブロック(402)へと戻る。
【0078】
ブロック(406)にて、上述したパラメーターを、DCプロファイルに関して決定し、及び一連の比較を、上述した範囲を基準に行う。例えば、ブロック(408)にて、領域I及びIVにおける導関数プロファイルが約ゼロであるかどうかを決定する。導関数プロファイルが約ゼロである場合、方法(400)は、ブロック(410)での決定に進む;導関数プロファイルが約ゼロではない場合、ブロック(412)にて、光強度を上昇させ、そして、方法(400)はブロック(408)へと戻る。
【0079】
ブロック(410)にて、左右の角度が範囲内であるかどうかを決定する。もしも角度が範囲内である場合、方法(400)はブロック(414)へと進む。もしも角度が範囲内ではない場合、ブロック(416)にて、以下について引き続き決定を行う:角度が範囲外になった原因が角度が大きすぎたことによるものなのかどうか。もしも角度が大きすぎる場合、方法(400)はブロック(412)へと進み、そして、光強度を上昇させる;もしも角度が範囲外となった原因が角度が大きすぎることによるものではない場合(即ち、角度が小さすぎる)、方法(400)はブロック(418)へと進み、そして、光強度を減少させる。
【0080】
方法(400)がブロック(414)へと進んだ場合、コントラストと幅の比が約1であるかどうかを決定する。CWRが約1である場合、方法(400)はブロック(420)へと進み、ここでは、脈管サイズを決定する。CWRが約1ではない場合、方法(400)はブロック(422)へと進み、ここでは、CWRが大きすぎるかどうかを決定する。CWRが大きすぎる場合、ブロック(412)にて、光強度を上昇させ、そして、方法(400)はブロック(408)へと戻る;CWRが大きすぎるわけではない場合、ブロック(418)にて、光強度を減少させ、そして、方法(400)はブロック(408)へと戻る。
【0081】
外科用システム(100)、方法(200)、並びにシステム(100)及び方法(200)の原理を包括的な観点で説明してきたが、システム(100)及びこの動作に関する更なる詳細を以下説明する。
【0082】
まず、発光素子(110)及びセンサ(112)については、外科機器(106)の作業末端(104)に配置するものとして説明しているが、以下の点を認識されたい:即ち、発光素子(110)及びセンサ(112)を規定する構成要素の全てが、機器(106)の作業末端に配置される必要はない。即ち、発光素子(110)は、発光ダイオードを含むことができ、そして、その構成要素は、作業末端(104)に配置されてもよい。或いは発光素子(110)は、ある長さの光ファイバー及び光源を含むことができ、前記光源は作業末端(104)から離れて配置されてもよく、そして、前記光ファイバーは光学的に前記光源と結合した第一端を有し、及びセンサ(112)と向き合い且つ作業末端(104)に配置される第二端を有する。本開示によれば、こうした発光素子(110)についても、なお、作業末端(104)に配置されたものとして説明する。なぜならば、機器(106)の作業末端(104)において組織に対して光を発するからである。センサ(112)について、同様の変更を説明できる。ここでは、光ファイバーは以下を有する:発光素子(110)と対面する第一端(又はより具体的には、発光素子(110)を部分的に規定する光ファイバーの一端);、及び、センサ(112)を集合的に規定する他の構成要素と光学的に結合した第二端。
【0083】
また、上述したように、発光素子(110)及び光センサ(112)は、互いに反対側に位置する。このことは、発光素子(110)及びセンサ(112)が互いに直接向かい合うことを必須とするものではないが、こうしたことが好ましい。ある特定の実施形態によれば、発光素子(110)及びセンサ(112)は、外科機器(106)の挟持部(180)と一体形成されてもよい(即ち、1つの部材として)。図1及び2を参照されたい。この方法で、挟持部(180)の間で、且つ対象となる組織を通過する、発光素子(110)が発する光は、光センサ(112)によって捕捉することができる。
【0084】
発光素子(110)は、1以上の素子を含むことができる。一実施形態によれば、図2に概念的に示すが、光センサ(112)は、以下を含むことができる:第一発光素子(110-1)、第二発光素子(110-2)、及び第三発光素子(110-3)。全ての発光素子は、特定の波長(例えば、660nm)で発光するように構成されてもよく、又は、ある特定の発光部は、他の発光部とは異なる波長で発光してもよい。
【0085】
これらの実施形態に関して(ここでは、発光素子(110)がアレイ形態となっており、該アレイは1以上の発光ダイオードを含む)、図2に示すが、例えば、ダイオードを、一次元の、二次元の又は三次元のアレイ形態で配置してもよい。一次元アレイの例は、以下を含むことができる:単一平面上に1つのラインに沿ってダイオードを配置すること。一方で、二次元のアレイの例は、以下を含むことができる:単一平面上の複数の行及び列にダイオードを配置すること。二次元のアレイの更なる例は、以下を含むことができる:湾曲面の上又はその中に、ラインに沿ってダイオードを配置すること。3次元アレイは、以下を含むことができる:複数面においてダイオードを配置すること、(例えば湾曲面の上又はその中に複数の行及び列にわたって)。
【0086】
また、本開示の実施形態によれば、光センサ(112)は、1以上の個別の素子を含む。一実施形態によれば、図2に示すように、光センサ(112)は、以下を含むことができる:第一光センサ(112-1)、第二光センサ(112-2)、n番目の光センサ(112-n)など。発光素子(110-1、110-2、110-3)についてもそうであったように、光センサ(112-1、112-2、112-3)はアレイ状に配置してもよく、そして、アレイに関する上記説明は、ここでも同様に当てはまる。
【0087】
上述したように、システム(100)は、発光素子(110)、センサ(112)、及びコントローラー(114)のほか、ハードウェア及びソフトウェアを含むことができる。例えば、複数の発光素子(110)を用いる場合、ドライブコントローラーを設けて、個別の発光素子のスイッチングを制御してもよい。同様の態様で、マルチプレクサを設けてもよく、ここで、複数のセンサ(112)が含まれ、マルチプレクサは、センサ(112)及び増幅器と結合してもよい。更に、コントローラー(114)は、必要に応じて、フィルタ、及び、アナログ-デジタル変換機を含むことができる。
【0088】
コントローラー(114)と併せて使用されるインジケータ(130)に関して、種々の出力装置を使用することができる。図1に示すように、発光ダイオード(130-1)は、関連する外科機器(106)に取り付けられてもよく、又は組み込まれてもよく、そして、機器(106)の作業末端(104)に配置されてもよい。或いは又は更には、警告を、外科処置に使用されるビデオ・モニタ(130-2)上に表示してもよく、又は、該警告により、モニタ上の画像について、色の変化、又は点滅、サイズの変更、又は外観の変更などの変化をひき起こしてもよい。例えば、図18は、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)の一部を示すが、該GUIは、ビデオ・モニタ(130-2)上に表示されてもよい。ここで、第一領域(132)は、外科機器(106)の挟持部の間にある脈管及び周辺組織の断片の場所を表す。そして、第二領域(134)は、第一領域(132)に表される脈管及び周辺組織の断片を強調して表したものである。ここで、脈管は、周辺組織に対してコントラストを伴った態様で表される(例えば、脈管及び周辺組織に関して異なる色のバンドを使用することによって)。また、インジケータ(130)は、スピーカー(130-3)の形態であってもよく、又は該スピーカーを含んでもよく、該スピーカーは、聴覚的な警告を提供する。また、インジケータ(130)は、外科機器(106)に関連するセーフティ・ロックアウト(130-4)の形態であってもよく、又は該ロックアウトを組み込んでもよく、機器(106)の使用の中断させる。例えば、ロックアウトは、結紮又は焼灼を防止することができる(外科機器(106)がサーマル結紮装置の場合)。更なる例として、また、インジケータ(130)は触覚的フィードバックシステム(例えばバイブレータ(130-5)の形態であってもよく、これについては、外科機器(106)のハンドル又はハンドピースに取り付けてもよく、これらと一体形成されてもよく、触覚的な示唆又は警告を提供することができる。また、これら特定の形態のインジケータ(130)の様々な組み合わせを用いることができる。
【0089】
上述したように、外科用システム(100)は、作業末端(104)を有する外科機器(106)を含むこともできる。これらの作業末端に、発光素子(110)及び光センサ(112)が取付けられる(代替する形で、取り外し可能に/可逆的に、又は恒久的に/不可逆的に)。発光素子(110)及び光センサ(112)は、代わりに、外科機器(106)と一体形成される(即ち、1つのピースとして)。更に可能な点として、発光素子及び光センサは、別の機器又はツールに取り付けられてもよく、これらは、外科機器又はツール(106)と併せて使用することができる。
【0090】
上述したように、一実施形態において、外科機器(106)はサーマル結紮装置であってもよい。別の実施形態では、外科機器(106)は、単純に、対向する挟持部を有する把持具又は切断器であってもよい。更なる実施形態によれば、外科機器は、他の外科機器であってもよい(例えば外科用ステープラ、クリップアプライヤー、及びロボット外科用システムなど)。更なる他の実施形態によれば、外科機器は、以下に述べる機能以外に他の機能を有さなくてもよい:発光素子/光センサを搭載すること、及び、これらを手術領域内に配置すること。単一の実施形態に関する説明は、他の外科機器又はツール(106)とともにシステム(100)を使用することを除外することを意図するものではない。
【実施例
【0091】
上述のシステムの実施形態を利用して、実験を実施した。実験及び結果を以下に報告する。
【0092】
第一実験群は、切除したブタの頸動脈を用いて行った。該血管内に見出される流体のパルス状の流れをシミュレートするため、埋め込み可能なDCポンプを用いた。ポンプは、40~80サイクル/分で動作することができ、そして、特定の値に設定することができる流速を提供することができた。用いた流体はウシの全身血液であり、これに、ヘパリンを添加し、そして、生理学的粘度を維持するため温度を上昇させて維持させた。後述する実験に関して、血液を60サイクル/分で、且つ流速500mL/分で押し出した。
【0093】
発光素子アレイを、光センサアレイと対向する形で配置し、ここで、切除したブタ頸動脈はこれらの間に配置した。発光素子アレイは、5つの発光ダイオードを備え、660nmでの光を発した。光センサアレイは、直線状CCDアレイを備え、その構成としては、250個の素子から構成され、これらを並べて配置した。ここで、各グループ又は各群の20個の素子を、アレイに沿った1mmの隣接した空間にフィットさせた。システムは10秒間稼働させ、プロットした実験結果を図19に示す。脈管の内径については、一対の位置の間の距離を用いて決定した。ここで、パルス状成分の大きさは、ピークの大きさの50%であった(即ち、図19でのラインC)。
【0094】
第二実験群は、光センサアレイと対向する発光素子アレイを用いて行い、ここで、生きたブタの被検体のブタ頸動脈をこれらの間に配置した。光センサアレイは、5つの発光ダイオードを備え、660nmでの光を発した。光センサアレイは、16個の個別の光検出器素子を備え、各素子は0.9mm幅であった。これらの素子は、隣り合う素子と0.1mmだけ間をあけて配置した。結果として、各素子は、アレイに沿って隣接した空間について1mmを占めた。システムは15秒間動作させた。プロットした実験結果を図20に示す。各光検出器に関する測定値を挿入し、及び、ピクセルに変換し、第一実験群と第二実験群との比較を可能にした。再度、脈管の内径については、一対の位置の間の距離を用いて決定した。ここで、パルス状成分の大きさは、ピークの大きさの50%であった(即ち、図20のラインC)。
【0095】
両方の実験群において、開示されたシステムの実施形態を用いて決定されたブタ動脈の内径は、脈管の大まかな直径測定ミリメートルの範囲内であった。例えば、第一実験群に関して、システムの実施形態を用いて決定された内径は4.7mmであった。一方で、大まかな直径測定は4.46mmであった。第二実験群に関して、システムの実施形態を用いて決定された内径は1.35mmであった。そして、大まかな直径測定は1.1mmであった。
【0096】
第三実験群に関して、940nmで発するLEDアレイと直線状CCDアレイとを含むシステムの実施形態を用いた。システムを用いて、生きたブタの被検体において、4つの異なる動脈の安静状態の外径を決定した(胃、左側の腎臓、右側の腎臓、及び腹部)。システムは10秒間稼働させ、そして、内径は、ピークの大きさの50%に関連する一対のポイントを用いて決定した。内径を決定するためのシステムを用いた後、動脈を切除し、そして、大まかな脈管直径については、脈管に沿った測定ポイントにて、NIH ImageJソフトウェアを用いて、脈管の断面を定量化することで得られた。
【0097】
第三の実験群の結果を、図21に示す。グラフに示すように、本明細書に記載のシステムの実施形態を用いて決定された内径と、従来の技術で測定された内径との間には、密接な相関関係がある。エラーバーは、時間的に異なるポイントで得られた同じ動脈の測定の標準偏差を表す。
【0098】
結論として、上記では本発明の異なる実施形態の詳細な説明を行ってきたが、以下の点を理解されたい:即ち、本発明の法的な範囲は、本件特許の最後に記載した特許請求の範囲に記載した言葉によって規定される。詳細な説明は、例示的なものとしてのみ解釈すべきであり、そして、全ての可能な本発明の実施形態を説明しているわけではない。なぜならば、全ての可能な実施形態を記載することは、不可能ではないにしても、実際的ではないからである。数多くの別の実施形態を実施することが可能であり、現時点での技術、又は、本特許の出願日より後に開発された技術を用いてもよく、これらも、なお、本発明を規定した特許請求の範囲内に入るであろう。
【0099】
また、以下の点を理解されたい:即ち、本件特許において「ここで使用される用語「____」は、~を意味するものとして定義する」という文章、又は同様の文章を用いて明示的に用語を規定しない限りは、明瞭な意味又は通常の意味を超えて、明示的又は暗黙的にその用語の意味を限定することを意図するものではない。そして、こうした用語は、本件特許において任意のセクションで行われた任意の記載内容(特許請求の範囲の言葉以外)に基づいて限定解釈されるべきものではない。本件特許において本件特許の最後にある特許請求の範囲に記載された任意の用語が単独の意味と一致する態様で言及される程度に、読者を混乱させず、簡潔にするためだけに、こうした解釈を行う。そして、また、こうした特許請求の範囲の用語が暗黙的に制限されたり、又は単独の意味に限定されることを意図しない。最後に、特許請求の範囲の構成要件を、単語「手段」及び任意の構造の記載のない機能を記載することで規定しない限りは、特許請求の範囲の任意の構成要件の範囲は米国特許法112条(f)の適用に基づいて解釈されることを意図するものではない。
図1
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