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特許7521828OBOGS組成物制御及び健全性のモニタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】OBOGS組成物制御及び健全性のモニタリング
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240717BHJP
   B64D 13/06 20060101ALI20240717BHJP
   A62B 27/00 20060101ALI20240717BHJP
   A62B 7/14 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01M3/26 M
B64D13/06
A62B27/00
A62B7/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022549531
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021018548
(87)【国際公開番号】W WO2021168093
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】62/978,097
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505340881
【氏名又は名称】コブハム・ミッション・システムズ・ダベンポート・エルエスエス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】ピーク、スティーブン・シー
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-000410(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02143636(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
B64D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化ガスを生成するように動作可能な機内酸素発生システム(OBOGS)内の酸素濃縮器アセンブリの健全性をモニタリングする方法であって、OBOGSは、制御器と、酸素富化ガスを生成する、複数のモレキュラーシーブベッドのサブセットを有する前記酸素濃縮器アセンブリと、所定の時間に複数のモレキュラーシーブベッドのサブセットにのみ選択的に吸入空気を連通するように構成された機械システムとを含み、前記方法は、
a)システム性能の劣化の兆候をみるために前記OBOGS全体の健全性をモニターすること、及び
b)システム構成要素の健全性を決定するために前記機械システムをモニターすること、を含み、
前記モレキュラーシーブベッド及び前記酸素濃縮器アセンブリの一方又は両方は、モニターされたシステム性能の劣化及びモニターされシステム構成要素の健全性により修理される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記機械システムが、スライドバルブ及び関連するシールを含むスライドバルブアセンブリと、前記機械システムの上流に配置される圧力センサとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械システムの健全性をモニタリングする工程が、
a)前記複数のモレキュラーシーブベッドの第1のサブセットから前記複数のモレキュラーシーブベッドの第2のサブセットへの前記吸入空気の連通を切り替えるコマンドを前記制御器を介して出す工程と、
b)前記機械システムの上流に配置された圧力センサを介して、前記吸入空気の切り替え時の圧力の低下を観測する工程と、
c)前記切り替えコマンドが出た時と、圧力低下が観測されるときとの間の時間遅延を計算する工程と、
d)前記計算された時間遅延を前記機械システムの劣化の測定と関連付ける工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機械システムが、スライドバルブ及び関連するシールを備えるスライドバルブアセンブリを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
機械システムの劣化の測定が、使用されたスライドバルブアセンブリの計算された時間遅延を、新しいスライドバルブアセンブリの計算された時間遅延と比較することを含み、比較された計算された時間遅延が所定のを超える場合、前記酸素濃縮器アセンブリ全体を整備する必要がある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記計算された時間遅延が、平均時間遅延を生成するために、選択された数の以前に計算された時間遅延と平均化されて、前記平均時間遅延が前記所定の値を超えると、スライドバルブ警告が発せられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
a)前記制御器を介して、前記酸素富化ガスにおいて所望のO濃度を生成するのに必要なショートベッドサイクル時間をモニタリングする工程と、ここで前記ショートベッドサイクル時間は、一定の全サイクル時間の一部であり、
b)前記所望のO2濃度の生成を維持するために、前記制御器を介してショートベッドサイクル時間を調整する工程と、
c)前記ショートベッドサイクル時間が前記一定の全サイクル時間の所定の割合に達したときに警告を開始する工程と、
をさらに含み、
前記機械システムの前記計算された時間遅延が所定の値を超えない場合、警告は、前記複数のモレキュラーシーブベッドが修理を受ける必要があることを示す、
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ショートベッドサイクル時間が、移動平均を生成するために、ある期間にわたって連続的に平均され、移動平均が所定の割合に達した場合、警告が開始される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のモレキュラーシーブベッドの健全性をモニタリングする工程が、前記複数のモレキュラーシーブベッドの下流の前記酸素富化ガスの流れ及び純度をモニターする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機内酸素発生システム(OBOGS)に関し、より具体的には、OBOGSの継続的な健全性モニタリングのための改良された装置、システムおよび方法に関し、さらにより具体的には、シーブベッド(sieve bed)の健全性及びバルブ/シールの性能の両方を決定するOBOGSの継続的な健全性モニタリングの改良された装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前は、OBOGSベッドの健全性を定期的に試験するために、メンテナンス組み込み試験(MBIT)機能が開始された。MBIT 機能の目的は、飛行中に、低酸素(O)警告が発せられる前に、シーブベッドの交換の必要性を予測することにある。MBIT機能は、シーブベッドの健全性を調べるだけに限定され、バルブやシールの健全性を判断するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、OBOGSシステム/ベッドの性能をモニターし、故障がベッドの劣化によるものか、機械的又は電気的な問題によるものかを判別する方法が必要とされている。現場で交換可能なシーブベッドが利用できるようになると、ベッドの劣化及び機械的又は電気的な問題の両方をモニターすることは、適切なメンテナンス作業の選択の上でさらに重要になる。
【0004】
現在のMBIT機能は、航空機が。選択したMBITの機能中に、酸素濃縮器アセンブリ(OCA)にソースガスの既知の流れをロードすることによってベッドの健全性を評価する。この試験では、OCAに既知の吸気圧を供給するために、地上カートの供給又はエンジンの回転を必要とする。ベッドが時間の経過とともに劣化するにつれて、この一定の流れで生成される酸素濃度は減少し続け、ベッドの健全性の大まかな指標として機能する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ベッドの健全性は、OCA性能における大きな要因である。したがって、モニターの精度を高めることは、OCAの信頼性と保守性を向上させるために重要である。従来のMBIT機能と比較して、本発明による濃縮器健全性モニター(CHM)の実施形態を利用することにはいくつかの利点がある。まず、CHMは航空機の運用のバックグラウンドで継続的に実行され、MBIT機能を必要としない。これにより、メンテナンス中、地上カートの提供やエンジンの回転が不要になり、メンテナンスの労力が軽減される。第二に、CHMはOCAのソフトウェアに実装されており、追加のハードウェアを必要としない。これにより、MBITバルブを取り外すことができ、OCA全体的な重量を効果的に減らすことができる。第三に、CHMはフロー以外の変数を考慮するため、MBITよりも高い精度を提供する。第四に、CHMには、メンテナンス中にOCAの問題を特定して分離するのに役立つスライドバルブヘルス・モニタリングも含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1はショートベッドのタイミング/制御出力対ベッドの健全性パーセンテージを示すグラフである。
図2図2は、コマンド信号対圧力変化を示すグラフである。
図3図3は、本発明の一実施形態による、例示的な濃縮器状チアモニター(CHM)の単純化された空気圧概略図である。
図4図4は、本発明の一実施形態によるCFIMの一実施形態と共に使用するように構成された酸素濃縮器アセンブリ(OCA)の概略図である。
図5図5は、システム漏れが毎分0リットル(lpm)の場合の漏れ負荷試験の5回のうち1回の実行の結果を示す表である。
図6図6は、システム漏れが7lpmの場合の漏れ負荷試験の5回のうち2回の実行の結果を示す表である。
図7図7は、システム漏れが14lpmの場合の漏れ負荷試験の5回のうち3回の実行の結果を示す表である。
図8図8は、システム漏れが28lpmの場合の漏れ負荷試験の5回のうち4回の実行の結果を示す表である。
図9図9は、システム漏れが42lpmの場合の漏れ負荷試験の5回のうち5回の実行の結果を示す表である。
図10図10は、図5~10に示されたデータを生成するために使用されるOCA構成の概略図である。
図11図11は、図1~9に列挙された1回~5回の実行についてのシステム漏れ関数としての短いベッドサイクル時間を示すグラフである。
図12図12は、漏れ負荷試験の5回中1回の実行についての制御出力対時間を示すグラフである。
図13図13は、漏れ負荷試験の5回のうちの2回の実行に対する制御出力対時間を示すグラフである。
図14図14は漏れ負荷試験の5回のうちの3回の実行に対する制御出力対時間を示すグラフである。
図15図15は漏れ負荷試験の5回のうちの4回の実行に対する制御出力対時間を示すグラフである。
図16図16は、漏れ負荷試験の5回のうちの5回の実行に対する制御出力対時間を示すグラフである。
図17図17は、毎分44呼吸(bpm)の重負荷下で35lpmの漏れを有する漏れ負荷試験の制御出力対時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一態様によれば、組成制御アルゴリズムは、制御出力値を連続的に計算することによって、酸素濃縮器の健全性をモニタリングするための新しい可能性を導入した。この出力値をフィードバック制御で使用し、目標酸素(O)濃度を維持する。一実施形態では、出力値は、約6秒ごとに計算することができ、約2,200から3,000の間の値として表すことができる。この値は、二つのシーブベッド(後述)の短い方のサイクルタイミングを表し、ミリ秒単位で計算される。
【0008】
現在、出願人のSureSTREAM(商標)酸素濃縮器ユニットは、6秒のフルサイクルで作動し、酸素出力を制御するために半サイクル間のバランスを変化させる。スライドバルブを使用して、制御出力に応じてシーブベッドに空気を出し入れすることができる。以下では、スライド弁及び関連するシールを含むものとして機械システムが説明されるが、他の機械システムが既知であり、当技術分野で使用されて、ベッドの切り替えを容易にするものであることに留意されたい。本明細書で説明される例示的な方法は、そのような他の機械システムに適合させることができ、そのような適合は本発明の教示の範囲内である。
【0009】
短いベッドサイクル時間(秒単位)ごとに、対応する長いベッドサイクル時間がある。長いベッドサイクルの値(秒)は、短いベッドサイクル時間(たとえば 2.2秒)を全サイクル時間(つまり6秒)から差し引くことで計算できる。この例では、長いサイクルタイムは3.8秒になる。これらの値は、異なる実施形態で変更することができる。たとえば、システム要件によっては、完全なサイクルタイムが異なる場合がありうる。
【0010】
短いベッドサイクルの時間の長さとそのベッドによって濃縮されたOの量との間に正の相関関係があることが見出された。たとえば、出力値2,200(サイクル長2.2秒)ではOの濃度が最も低くなり、出力値3,000(サイクル長3秒)では最も酸素濃度が高くなる。修正された組成制御が実装されている場合、最大値は最大補償制御値に等しく、これは全サイクル値の半分であることに注意してください。6秒のフルサイクル長を有する例では、最大補正制御値は3,000である(つまり、長いベッドサイクルと短いベッドサイクルの両方で3秒のサイクル時間)。
【0011】
酸素濃縮器の性能が低下すると、制御器は、フィードバック制御操作を介して酸素スケジュールに従って目標Oレベルに到達するために、短いベッドサイクルの長さを補償する。本発明の一態様では、スライドバルブのタイミングは、目標のO生成を送達するように調整される。したがって、ベッドが劣化するにつれて、制御出力値は、同じ仕事量を達成するために大きくなる(すなわち、同じ量の酸素を生成するために、2,200から3,000へ増加する)。
【0012】
スライドバルブタイミングのフィードバック制御をモニターすることにより、経時的な濃縮器の性能の低下を判定することができる。3-3の対称サイクル(ベッド当たり3秒)は、生成されるOの量を最大にする(例として、6秒の全サイクル ユニットの場合)。一定のターゲット濃度でサイクルタイミングが3-3に近づくと、濃縮器が比例して劣化し、すぐにメンテナンスが必要になると推測できる。制御出力値は、1回の飛行中、または飛行の種類によっても大きく変化する。このため、制御値は、酸素需要の増加を伴う短期間の健全性(システムの漏れなど)による厄介なメンテナンスの決定を防ぐために、かなりの期間にわたって平均化する必要がある。本発明の一態様によれば、制御平均期間は20~30時間となり得る。最後の20~30時間の飛行データからの制御出力の移動平均値を使用することにより、生成された値を使用して濃縮器の保守が必要な時期を判断できる。シーブベッドの健全性に関する上記の議論では、ベッドの健全性の可能な指標としてスライドバルブのタイミングを分析したが、モレキュラーシーブベッドの酸素富化ガス下流の流れ及び純度をモニターするのに限定されず、ベッドの状況を示すために他の分析を使用できることも留意すべきである。
【0013】
上記の方法を実施する際の2つの重要なポイントは、最初の電源投入時に「平均値」を初期化することと、6秒ごとに更新される20~30時間の平均値を管理するのに十分な分解能を提供することを含む。たとえば、フライトデータのない新しいユニットは、「出力平均」値として2,000に初期化される場合がある。この値は、新しいデータが平均に追加されると、時間とともに変化する。ベッドを交換すると、古い値は「高」になり、ベッドパックの交換後最初の30時間はこの値を無視するようにメンテナンスガイダンスが提供される。また、必要な分解能のソフトウェア実装にある程度の柔軟性を持たせるために、その値は20~30時間と記される。本発明の一態様では、2,200~3,000ミリ秒の出力平均は、生成されたときにパラメータロギングメモリ(PLM)列に格納することができる。PLMは1秒ごとに書き込まれるため、PLM値は6秒の各グループで同じになる。出力の平均値は、適切なデータバス上で、メンテナンスクルーが定期的に読み取ることができる健全性指標値として送信することもできる。
【0014】
ミリ秒(ms)単位のショートベッドタイミング対濃縮器の概算健全性パーセントのグラフが図1に示されている。スライドバルブのタイミングが約2800ミリ秒に増加すると、濃縮器の正常性は25%になる。この時点でOCAの性能が大幅に低下するため、メンテナンスが特に必要となる。
【0015】
CHMは、スライドバルブ健全性モニタリング(SVHM)も含む。OCAで2番目に多いメンテナンスの問題は、シーブの劣化に次ぐもので、スライドバルブの劣化に関連する。スライドバルブと濃縮器全体の健全性の両方をモニタリングすることで、メンテナンス担当者はスライドバルブとシーブベッドの劣化をすばやく区別できるため、全体的なメンテナンス作業が軽減される。
【0016】
SVHMは、「理論上の」コマンド信号および圧力センサーの読みをモニタリングすることによって動作する。一般的に図2、さらに図3及び図4に示すように、コマンド100が制御器からスライドバルブ50に送信されて、ベッドを変更する(例えば、ベッド1からベッド2へ、またはその逆)場合、コマンド100が送信される時間の間にわずかな時間遅延102がある。そして、スライドバルブ50が動くと、空気104が「アクティブな」ベッド(例えば、ベッドがベッド1に切り替わる)に突然流入する。この「アクティブな」ベッド1への流れは、圧力センサー54の後でベッド1及び2の前に位置する空洞52内に、測定可能な圧力の対応するディップ106を生成する。図2から図4から分かるように、スライドバルブ50が反対側(例えば、ベッド2に向かって)に移動するときに、示されたプロセスが繰り返される。制御器の信号コマンド100と圧力のディップ104との間の遅延102を測定することにより、スライドバルブの健全性を評価することができる。コマンドから圧力ディップまでのタイムラグが大きいほど、スライドバルブの劣化度が大きくなる。
【0017】
シールなどのスライドバルブ50の可動部品は、スライドバルブの性能に重大な影響を及ぼし、一般にメンテナンスを必要とする重要な部品である。シールが磨耗すると、制御器コマンド信号100と圧力低ディップ106との間の遅れの長さ(時間遅延102)が増加し、メンテナンスの必要性を知らせる。コマンド信号100とスライドバルブの動きとの間の時間遅延102(圧力ディップ106によって測定される)も、OCAシステム200の動作全体の指標となり得る。スライド弁50の動きは、パイロットバルブ(図示せず)などの他の追加の上流構成要素によっても影響を受ける。これらのバルブは、OCA200の効率と空気圧駆動システム220の健全性に直接影響を与える可能性がある。したがって、スライド弁50の時間遅延102に関するデータは、メンテナンスの必要性の強力な指標となり得る。
【0018】
シールが劣化するにつれてOCA性能が著しく低下し、ベッド1に向かうスライドバルブ50の動きとベッド2に向かう動きとの間に300msを超える不均衡(時間遅延102)があることが発見された。スライド弁50に移動を指示するソフトウェアコマンド信号100と、レギュレータ(圧力センサ54)後の圧力106のディップとの間の遅延時間(時間遅延102)を使用して、スライド弁のタイミング又は「緩慢さ」を感知することができる。バルブが動くのに必要な時間は、OCA200の機械的及び電気的制御システムの動作健全性に直接関係している。
【0019】
本発明の一態様によれば、OCA200内の既存のセンサ、ハードウェアおよびソフトウェアを使用することにより、入口圧力調整器(圧力センサ54)の出口での圧力を、50ms間隔などでモニタリングすることができる。100ミリ秒間隔などでメインソフトウェアに報告される。スライドバルブ50及び駆動システムは、ベッド交換のためのソフトウェアコマンド100と、入口圧力が1.0psi(6.89kPa)を超えるなどの所定の量の分106、低下するときとの間の時間をモニタリングすることによってモニターされる。命令された後のバルブ応答時間106を記録することによって、スライドバルブ及び関連する駆動構成要素の相対的な健全性を表す数値を導き出すことができる。
【0020】
したがって、一実施形態によれば、ベッド交換がソフトウェアによって命令されると、100msのタイマーが開始され、現在の圧力調整器バルブの後の圧力の読みが記憶される。上記の例では、分解能は少なくとも0.1psiである必要がある。この読み取り値は、保存された圧力読み取り値より1.0psi低い値と、100ミリ秒ごとに比較される。ポスト圧力調整器センサーの読み取り値が、この値(たとえば、保存された圧力読み取り値から1.0psiを差し引いた値)に達すると、タイマーが停止し、時間値が保存される。タイマーが500ミリ秒に達すると停止し、500ミリ秒が保存された時間値になる。毎秒1回、PLMモジュールで、保存された時間値が以前の3600の読み取り値と平均化される。この平均時間値は、1秒ごとにPLMデータに書き込まれる。
【0021】
本発明の一態様によれば、バルブ応答の遅延値106が経時的に増加すると、このことはバルブがより鈍くなっていることを示す。健全性モニタリングの目的では、合格/不合格の基準が必要ない場合がある。むしろ、連続遅延測定値データは、保守担当者が定期的にレビューして、変化がないかどうかを確認できる。限定ではなく一例として、PLMモジュールによって記録された平均時間値が、300ミリ秒などの予め選択された閾値よりも大きくなると、スライドバルブ50は、酸素発生器(OCA200)の動作に悪影響を与える危険にさらされる。また、適切な担当者に警告するためにメンテナンスの注意がトリガーされてもよい。たとえば、稼働中の濃縮器(OCA200)が飛行中に警告灯を点灯させた場合、メンテナンス担当者は、ベッド(ベッド1とベッド2)が劣化のため交換する必要があるかどうかを判断するために、ベッドの継続的な健全性値とバルブの健全性値を確認できる。また、バルブシステムが劣化し、濃縮器を修理に戻す必要があるかどうかを決定するために、ベッドの健全性値及びバルブの健全性値が連続してレビューすることができる。さらに、記録された平均時間値が、10サイクルなどの事前に選択されたサイクル数を超えて、たとえば500ミリ秒などの所定のしきい値を超える場合(スライドバルブ50の機能が停止していることを示す)、警告を発することが望ましい。OBOGSからO不足(スライドバルブの早期故障を示す)の警告を発する必要があることにも留意すべきである。
デモンストレーション試験手順
プログレッシブ漏れ負荷試験
【0022】
図5から図9に示されているように、毎分の呼吸数(bpm)、毎分の流量(リットル単位)、毎分の圧力(ポンド単位)(psi)、及び高度(キロフィート単位)(kft)のさまざまなランダム値を組み込んだいくつかの飛行プロファイルが作成された。これらは、実際の飛行で発生する可能性のある動的な条件と変動を表すために、いくつかのプラットフォームからの最近の飛行データから作成された。
【0023】
様々なレベルの劣化をともなうシーブベッドを得ることは困難である。劣化したシーブをシミュレートするために、徐々に大きな漏れがシステムに導入され、以下の表1に従って 2 人のパイロットに対する呼吸要求に連続的に追加された。
【表1】
【0024】
試験のために各シーブベッドの劣化レベルを制御および測定することが困難であるため、比較的高い一連の課題を導入する別の方法が使用された。シーブ材料が劣化すると、材料は新品のときほど多くのOを生成できなくなる。OCAと呼吸調整器との間に静的漏れ410(図10参照)を追加することによって、システムは同様に影響を受ける。Oがシステムから排出されると、制御器は、目標濃度を達成するためにOをより多く濃縮するようにスライドバルブのタイミングを調整することで補償する。そのため、短いベッドサイクルの長さは3秒に近づき、最大補正値3,000に反映される。制御された測定可能な漏れを使用することにより、制御出力の平均を濃縮器の正常性のレベルに結び付ける、より高い解析度のモデルを生成することができる。
試験手順
【0025】
出願人の新規なシーブベッド((SureSTREAM(商標)OCA200)が、図9に示される構成400を使用し、図5から図9の変数に従って試験された。制御出力のタイミングを追跡するために、圧力トランスデューサ402を排気ポート404に配置し、20Hzのレートで記録した。通気ベッドが排気されると、制御器によってログに記録される流れスパイクが生成される。20Hzで記録することにより、ベッド制御値 (短いベッド サイクル) のタイミングを、この試験に十分な時間分解能で推測できます。分析器の他のすべてのチャネルは1Hzに設定された。OCA200は組成制御モードで操作された。圧力トランスデューサ402によって測定された排気ポート圧力は、ベッドが変化するたびに値が大幅に変化することを示す。次に、これらの値の変化を分析して、制御出力又は提案された「出力平均」数である短いベッドの持続時間を生成することができる。
結果
徐々に増加する漏れ負荷試験の結果
【0026】
制御出力平均で表された結果は、図4に示されている。 漏れ量と制御出力平均値の間には直線関係が見られた。予想通り、導入された漏れにより、制御ソフトウェアは、スライドバルブのタイミングを調整して酸素生成を最大化することで補償するようにする。漏れとシミュレートされた劣化が大きいほど、最初のベッドでの滞留時間が長くなり、バランスの取れたベッド制御出力に近づく。
【0027】
図12は、試験の第一回目対時間の制御出力を示す。このグラフで見ることが変動性は、需要のフライトシミュレーションによる変動によって引き起こされるスライドバルブタイミングのリアルタイム補正によるものである。これは、多数のフライトにわたるベッドの性能の変化を表す「長期平均」の必要性を裏付けている。ソフトウェアで実施した場合の結果を表すために、図12から図16に示されているように、要求が連続的に増加する各試験の回について平均がとられた。
【0028】
1つの注目すべき結果が図17に示されている。この試験では、35lpm の大量の漏れと、44bpm の高速の呼吸器がある。この高い要求では、OCA内のOの分圧は約190mmHgの値に達する。これは、196mmHgで警告しきい値をトリガーするのに非常に近かった。これは、実施方法の有効性に関する追加の証拠を与えている。しかし、警告灯は分圧196mmH以下で26秒の持続健全性が必要で、結果として警告灯は点灯しなかった。制御平均が 2,000又は2,850の値に達すると、飛行中に警告灯が点灯するリスクが大幅に増加する点まで濃縮器の性能が低下する。
【0029】
図11は、制御出力値と濃縮器の健全性(O生成能力)との間にほぼ線形の相関関係があることを示している。したがって、制御出力値を使用して濃縮器の性能の低下レベルを予測し、飛行中の警告灯の点灯を防止するためにいつメンテナンスが必要になるかを予測することもできる。図11に示されるように、高い需要とシーブの劣化(高い漏れでシミュレートされる)との組み合わせなど、OCAに対する「多大な稼働」の時間中、Oの分圧は、警告灯が作動する程度まで低下する可能性がある。
【0030】
CHMは、制御出力値を測定してシーブの劣化レベルを決定することによって健全性をモニターする。この方法は、継続的なモニタリングを提供し、現在のMBIT機能よりも高い精度を提供する。CHMには、スライドバルブが位置をシフトするように命令されてから圧力低下が観察されるまでの時間遅延を測定することによる、スライドバルブの劣化のモニタリングも含まれる。
【0031】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、特許請求の範囲によって規定される本発明の完全な思想及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができることを理解されたい。装置構成要素のローテイションな移動について特に言及したが、そのようなローテイションは逆にすることができ、そのような教示は本発明の範囲内であることを当業者は理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17