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  • 特許-製造管理装置 図1A
  • 特許-製造管理装置 図1B
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  • 特許-製造管理装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】製造管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240717BHJP
   B30B 15/26 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B30B15/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022573995
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047656
(87)【国際公開番号】W WO2022149472
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021002407
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398002927
【氏名又は名称】株式会社樋口製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】樋口 徳室
(72)【発明者】
【氏名】石田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋徳
【審査官】大古 健一
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B30B 15/10 -15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備制御装置における駆動機器により金属プレス部品の加工を開始する信号を出力する信号出力部と、
前記金属プレス部品に対応する個体識別情報と前記金属プレス部品の寸法を測定した寸法データとが関連付けられたデータベースから、前記金属プレス部品に対応する寸法データを取得して、前記寸法データが所定の範囲を満たすか否かを判定する判定部と、を有し、
前記判定部が、前記寸法データが第1の所定の範囲を満たさないと判定する場合、前記信号出力部は、前記駆動機器を停止する信号を前記設備制御装置に出力し、
前記判定部は、前記設備制御装置を運用する間に取得された運用データが格納されたデータベースから所定のタイミングで運用データを取得して、前記運用データが前記金属プレス部品を製造するためのマスタデータと一致するか否かを判定し、
前記判定部が、前記運用データが前記マスタデータと一致しないと判定する場合、前記信号出力部は、前記駆動機器を停止する信号を前記設備制御装置に出力し、
前記マスタデータは、生産指示書No.に対応する使用材料の識別情報、使用金型の識別情報、及び作業者の識別情報の少なくとも一つである、製造管理装置。
【請求項2】
前記判定部が、前記寸法データが前記第1の所定の範囲を満たさないと判定する場合、前記第1の所定の範囲を満たさない原因となる候補の定型文を通信端末に出力するデータ出力部をさらに有する、請求項1に記載の製造管理装置。
【請求項4】
前記データ出力部は、前記運用データが前記マスタデータと一致しないと判定する場合、通信端末に前記運用データが前記マスタデータと一致しない原因となる候補の定型文を通信端末に出力する、請求項2に記載の製造管理装置。
【請求項5】
通信端末から、前記設備制御装置における前記駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信すると、前記信号出力部は、前記駆動機器を停止する信号を解除する信号を出力する、請求項1に記載の製造管理装置。
【請求項6】
前記運用データは、生産指示書No.に対応する使用材料の識別情報、使用金型の識別情報、及び作業者の識別情報の少なくとも一つである、請求項1に記載の製造管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、製造管理システム、製造管理装置、製造管理方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、品質管理や流通管理のために、製造品をロット単位又は個体単位で識別するニーズが高まっている。特許文献1には、製造品である部品に個体識別子に関するコードを付すことで、部品を管理する管理システムについて記載されている。特許文献1では、部品に個体識別情報を含むコードを付した後、任意のタイミングでコードを読み取った後、部品の寸法を測定し、その寸法データと個体識別情報とを関連づけてデータベースに格納することで、製造した部品を管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-024588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造品を製造したタイミングと、その部品を測定したタイミングとがずれている場合、ロット中に不良品が連続しても気が付かず、後に部品の寸法を測定して初めて部品が不良品であることがわかるという問題がある。
【0005】
上記問題に鑑み、本発明は、部品の製造及び管理において、大幅なコストの上昇や生産性の低下を伴わずにタイムリーに部品の測定を行い、安定した部品を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る製造管理装置は、設備制御装置における駆動機器により金属プレス部品の加工を開始する信号を出力する信号出力部と、金属プレス部品に対応する個体識別情報と金属プレス部品の寸法を測定した第1データとが関連付けられたデータベースから、金属プレス部品に対応する第1データを取得して、第1データが所定の範囲内を満たすか否かを判定する判定部と、を有し、判定部が、第1データが所定の範囲内ではないと判定する場合、信号出力部は、駆動機器を停止する信号を設備制御装置に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品の製造及び管理において、大幅なコストの上昇や生産性の低下を伴わずにタイムリーに部品の測定を行い、安定した部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態に係る製造管理システムを説明するブロック図である。
図1B】補助記憶部の構成を説明するブロック図である。
図2A】金属プレス部品の一例を示す斜視図である。
図2B】金属プレス部品の寸法を測定した結果を示すグラフである。
図3】金属プレス部品の寸法データが格納される製品管理データベースを示す図である。
図4A】設備制御装置において取得される運用データを説明する図である。
図4B】運用データが格納される設備制御装置データベースを説明する図である。
図4C】運用データが格納される設備制御装置データベースを説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る製造管理方法を説明するフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る製造管理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の一実施形態に係る製造管理システム1について、図1A図6を参照して説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係る製造管理システム1の構成を説明する図である。製造管理システム1は、各種機器を制御するためのシステムである。製造管理システム1は、製造管理装置100と、設備制御装置200と、通信端末300と、を備える。本実施形態では、設備制御装置200において、金属プレス部品を製造する場合について説明する。
【0010】
(製造管理システムの概要)
製造管理装置100は、各種情報を集約して処理する情報処理装置である。製造管理装置100は、設備制御装置200と、通信端末300とが、それぞれ通信可能に接続されている。製造管理装置100には、設備制御装置200を制御するためのプログラムの設計や保守等の運用するための専用ソフトウェアがインストールされている。ユーザの操作を受けて、製造管理装置100は、専用ソフトウェアを起動して、設備制御装置200を運用するための各種機能を実行する。
【0011】
設備制御装置200は、入力機器の信号の状態により、あらかじめ決められた条件(プログラム)に従って、出力機器を制御する装置であり、PLC(Programmable Logic Controller)とも呼ぶ。図1Aでは、入力機器として操作部410、検知部420、測定部430、プレス機械440、プレス周辺装置460を記載している。また、設備制御装置200には、出力機器として、表示部470、レーザ印字機480、及びプレス機械440を記載している。設備制御装置200は、プレス機械440を制御することで、金属プレス部品を製造することができる。また、本明細書等において、検知部420、測定部430、プレス機械440、プレス周辺装置460、レーザ印字機480を、駆動機器と呼ぶ。
【0012】
通信端末300は、製造管理装置100から各種データの送受信や、各種信号の送受信を実行する。例えば、通信端末300は、製造管理装置100から信号及びデータを送受信したり、設備制御装置200から信号及びデータを送受信したりする。通信端末300は、例えば、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、又はパーソナルコンピュータであってもよい。また、通信端末300は、携帯型の端末に限らず、据え置き型の端末であってもよい。
【0013】
次に、製造管理システム1の概要について説明する。まず、設備制御装置200によって、金属プレス部品を製造する工程について説明する。設備制御装置200は、製造管理装置100から、プレス機械440の動作を開始する信号を受信すると、プレス機械440の動作を開始して、金属プレス部品を製造する。プレス機械440には、金型が取り付けられており、金型の間に金属などの素材(被加工素材)を挟み込み、強い力を伴った上下動により素材を金型表面に押し付けて、金型と同じ形状に加工する。
【0014】
設備制御装置200は、プレス機械から金属プレス部品が排出されたことを検知すると、補助記憶部230に格納されたテーブルから個体識別情報を含むコードを読み出し、レーザ印字機480によって金属プレス部品の表面に個体識別情報を含むコードを付す。ここで、個体識別情報とは、製造した金属プレス部品同士を区別するために利用される、金属プレス部品に固有の文字列や数字である。本実施形態では、個体識別情報を2次元コードに変換したコードを部品に付す。2次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)を利用できる。ただし、個体識別情報は、2次元コードに限定されず、1次元コードであってもよい。また、2次元コードが容易に消えることがないように、部品に2次元コードが刻印されることが好ましい。本実施形態では、2次元コードの刻印方法として、レーザ印字機480によってレーザを照射することにより部品の表面を削る方法について説明するが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。2次元コードの刻印方法として、例えば、金属プレス部品を部分的に酸化させたり、電気化学エッチングを利用したりしてもよい。
【0015】
図2Aは、金属プレス部品の表面に個体識別情報を含む2次元コード501が付された様子を示す。図2Aでは、金属プレス部品の上面に2次元コード501が付された様子を示すが、金属プレス部品の側面又は底面に2次元コード501が付されてもよい。後に、2次元コード501を読み取ることが可能な位置であれば、金属プレス部品のどの位置に2次元コード501が付されてもよい。
【0016】
次に、設備制御装置200は、測定部430において金属プレス部品の寸法を測定する。本実施形態では、金属プレス部品の寸法データ(第1データともいう)として、高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差を取得する。測定部430において測定された寸法データは、個体識別情報と関連付けられて、補助記憶部230に格納される。その後、設備制御装置200は、個体識別情報及び寸法データを、製造管理装置100に送信する。製造管理装置100は、個体識別情報及び寸法データと受信すると、製品管理データベース(以降、製品管理DBと記載する。)に格納する。なお、補助記憶部230内に格納された個体識別情報及び寸法データは、一時的に格納されてもよく、次に製造された金属プレス部品の寸法が測定された際に消去されてもよい。次に製造された金属プレス部品の個体識別情報と寸法データとが関連付けられた際に、個体識別情報及び寸法データが、書き換えられてもよい。また、補助記憶部230内に、複数の個体識別情報及び寸法データが長期的に格納されてもよい。
【0017】
図2Bは、金属プレス部品の寸法データの一例である。縦軸は、金属プレス部品の高さであり、横軸は、金属プレス部品の幅を示している。図2Bでは、金属プレス部品の高さ及び内径を示している。寸法データとして、金属プレス部品の形状に応じて適宜設定することができる。寸法データは、金属プレス部品の種類に応じて、異なる製造管理DBに格納されてもよい。
【0018】
図3は、製品管理DBの一例である。製品管理DBでは、寸法データとして、高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差等が格納される。なお、寸法データは、高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差に限定されず、凹部又は溝の深さ、平面度などを含んでいてもよい。また、寸法データは、高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差、深さ、平面度などの少なくとも一つであってもよい。
【0019】
次に、製造された金属プレス部品の判定工程について説明する。製造管理装置100は、製品管理DBから寸法データを読み出して、当該金属プレス部品が良品か否かを判定する。製造管理装置100は、金属プレス部品の寸法データが所定の範囲内であると判定した場合、金属プレス部品が良品であると判定する。また、製造管理装置100は、金属プレス部品の寸法データが所定の範囲内ではないと判定した場合、金属プレス部品が不良品であると判定する。寸法データの判定結果は、製品管理DBに格納されてもよい。寸法データの判定結果が製品管理DBに格納される場合、寸法データが所定の範囲内であると判定されると、製品管理DBに判定結果として1が格納され、寸法データが所定の範囲内ではないと、判定結果として0が格納される。
【0020】
製造管理装置100が、金属プレス部品の寸法データが所定の範囲内ではないと判定した場合、駆動機器を停止する信号を設備制御装置200に出力する。本明細書等において、所定の範囲内ではないと判定された寸法データを、異常データと記載する。その後、製造管理装置100は、製品管理DBから所定の寸法データを読み出して寸法データの分析を実行する。寸法データを分析することにより、設備制御装置200のどの部分、プレス機械440のどの部分、又は金型のどの部分に異常が生じているかを推定する。その結果、例えば、異常が生じた機器や、異常データや、寸法データに異常が生じた原因を示す候補の定型文などを、製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部に表示する。
【0021】
製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部のいずれかにおいて、寸法データに異常が生じた原因となる候補の定型文を確認したユーザは、設備制御装置200において、プレス機械440、プレス機械440に設けられた金型、及びプレス周辺装置460などのメンテナンスを実行する。メンテナンスの完了後、ユーザは、製造管理装置100、設備制御装置200、又は通信端末300のいずれかから、製造管理装置100に駆動機器を停止する信号を解除する信号を送信する。製造管理装置100は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信すると、駆動機器の動作を停止する信号を解除する信号を、設備制御装置200に出力する。
【0022】
また、製造管理装置100は、設備制御装置200において駆動機器が動作している間、所定のタイミングで、設備制御装置200の運用中のデータ(以降、運用データ(第2データともいう)と記載する。)を取得する。運用データは、金属プレス部品に付された個体識別情報と関連付けて取得することが可能なプレス機械440の信号、検知部420の信号、及びプレス周辺装置460の信号、並びに属性データを指す。
【0023】
図4Aは、製造管理装置100及び設備制御装置200において運用データを取得するタイミングと運用データの内容とを示す表である。運用データは、設備制御装置200において定期的(例えば、1秒ごと)に取得される。また、運用データは、設備制御装置200において、金属プレス部品が製造される直前に取得されてもよい。設備制御装置200は、定期的にプレス機械440、検知部420、及びプレス周辺装置460から入力されるデータ(又は信号)を取得する。
【0024】
図4Aにおいて、運転モードとは、プレス機械440において、プレスセレクトスイッチの状態が寸動モードであるか、連続モードであるかを表す。プレスクラッチとは、プレスクラッチの状態がオン状態であるか、オフ状態であるかを表す。カウントは、金属プレス部品の生産数を表す。停止要因は、検知部420からの信号の検知の有無を表す。また、生産指示書No.とは、製造現場に発行される指示書の番号を表す。生産指示書No.毎に、それぞれ異なる属性データが設定されている。属性データとは、金型属性、設備属性、材料属性、及び作業者属性などを指す。金型属性とは、複数の金型を識別するための識別情報である。また、設備属性とは、設備を識別するための識別情報である。材料属性とは、材料ごとに付された識別情報である。また、作業者属性とは、複数の作業者を識別するための識別情報である。例えば、金型に貼られたQRコード(登録商標)を取得することで、金型の識別情報を取得することができる。金型属性、設備属性、材料属性、及び作業者属性を表す識別情報は、二次元コードから取得してもよいし、バーコードから取得してもよい。金型、設備、材料、及び作業者の識別情報は、一度取得したら識別情報が更新されるまで同じ識別情報が運用データとして取得される。
【0025】
また、作業者属性を表す識別情報は、顔、指紋、虹彩、静脈、又は声紋などの生体認証によって取得してもよい。例えば、顔認証により、作業者属性を表す識別情報を取得する場合、設備制御装置200を稼働させる前に、通信端末300が有する撮像装置(カメラ)によって作業者の顔情報を取得して、顔情報に基づいて作業者属性を表す識別情報を取得する。その後、通信端末300から設備制御装置200に作業者属性を表す識別情報を送信する。設備制御装置200は、作業者属性を表す識別情報を取得すると、運用データに格納する。なお、生体認証は通信端末300が有するものに限定されず、設備制御装置200に有線又は無線で接続されているものであってもよい。
【0026】
例えば、プレスセレクトスイッチが連続モードであり、プレスクラッチがオン状態の場合、プレス機械440は、自動運転で動作している。プレス機械440が自動運転で動作している場合、設備制御装置200は、1秒ごとにプレス機械440の信号、検知部420の信号、及びプレス周辺装置460の信号、及び属性データを取得する。
【0027】
設備制御装置200は、金属プレス部品に対応する個体識別情報及び寸法データを取得する際に、当該金属プレス部品を製造する際に取得した運用データを取得する。設備制御装置200において取得された運用データは個体識別情報と関連付けられて、補助記憶部230に格納される。その後、設備制御装置200は、取得した運用データを、製造管理装置100に送信する。製造管理装置100は、運用データ及び個体識別情報を受信すると、設備制御装置DBに格納する。なお、補助記憶部230に格納された個体識別情報及び運用データは、一時的に取得されてもよく、次に金属プレス部品を製造したときの運用データを取得した際に、消去されてもよい。次に、製造された金属プレス部品の個体識別情報と運用データとが関連付けられた際に、個体識別情報及び運用データとが書き換えられてもよい。また、補助記憶部230内に、複数の個体識別情報及び運用データが長期的に格納されてもよい。
【0028】
図4B及び図4Cは、設備制御装置DBの一例である。図4Bは、個々の金属プレス部品に対応する運用データである。図4Bには、金属プレス部品の個体識別番号ごとの運用データが示されている。図4Cは、図4Bにおける運用データを、設備制御装置200においてプレスが稼働している時間ごとに集計した運用データである。図4Cには、プレス累計稼働時間が1時間ごとの生産数と、プレスの累計停止時間と、が集計されている。設備制御装置DB132では、運用データとして、生産指示書No.、品番、生産日、使用プレス、使用材料コード、使用金型コード、作業者コード、生産数、プレス稼働時間、プレス停止コード、及びプレス停止時間等が格納される。また、運用データとして、生産指示書No.、品番、生産日、使用プレス、使用材料コード、使用金型コード、作業者コード、生産数、プレス稼働時間、プレス停止コード、及びプレス停止時間のそれぞれに対応する識別情報が格納されてもよい。図4B及び図4Cには、使用プレス、使用材料コード、使用金型コード、作業者コードから取得された各種識別情報が記載されている。なお、運用データは、これらの項目に限定されず、これらの項目のうち、少なくとも一つを含んでいればよい。また、運用データは、これらの項目以外の項目を含んでいてもよい。なお、図4B及び図4Cにおいて、プレス停止コードは、金型に設けられたセンサの番号に対応している。図4B及び図4Cにおいて、個体識別番号プレス停止コード3とは、金型に設けられた3番のセンサが異常を検知したことを示している。
【0029】
製造管理装置100は、所定のタイミングで設備制御装置DB132から運用データを取得して、取得した運用データが所定の基準を満たすか否かを判定する。製造管理装置100は、運用データが所定の基準を満たさないと判定する場合、設備制御装置200に何らかの異常が生じているとして、設備制御装置200における駆動機器の動作を停止する信号を出力する。ここで、所定の基準を満たさないと判定された運用データを、異常データと記載する。その後、製造管理装置100は、設備制御装置DBから取得した運用データの分析を実行する。運用データの分析により、運用データの異常を推定する。分析した結果、例えば、運用データに異常が生じた原因となる候補などを、製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部に表示する。
【0030】
具体的には、製造管理装置100は、設備制御装置DBから運用データ(例えば、生産指示書No.、使用材料コード、使用金型コード、及び作業者コード)の各々から識別情報を取得して、マスタデータと一致するか否かを判定する。マスタデータは、生産指示書No.に対応する使用材料コード(又は使用材料の識別情報)、使用金型コード(又は使用金型の識別情報)、作業者コードとその識別情報等が定義されたデータである。また、マスタデータとして、対象の作業に対して認定を受けている作業者コード(又は作業者の識別情報)が格納されている。製造管理装置100は、設備制御装置DBから取得した運用データと、マスタデータとを照合した結果、取得した運用データがマスタデータと異なっている場合、設備制御装置200に駆動機器を停止させる信号を出力する。例えば、ある対象製品を生産した際に取得した運用データのうち使用材料の識別情報が、マスタデータの使用材料の識別情報と異なっている場合、製造管理装置100は設備制御装置200に駆動機器を停止させる信号を出力する。例えば、取得した運用データのうち使用金型の識別情報が、マスタデータの使用金型の識別情報と異なっている場合、製造管理装置100は設備制御装置200に駆動機器を停止させる信号を出力する。例えば、取得した運用データのうち、作業者コードがマスタデータの作業者コードと異なっている場合、製造管理装置100は設備制御装置200に駆動機器を停止させる信号を出力する。これにより、生産指示書No.に対して、金型や材料を間違えて使用することや、対象の作業に対して認定を受けていない作業者が作業を行うことを防止することができる。また、製造管理装置100は、運用データを分析することによって、生産指示書No.に対する正しい使用材料コード、使用金型コード、及び作業者コードを推定してもよい。
【0031】
設備制御装置200は、駆動機器の稼働中、例えば、検知部420から入力された信号に基づいて、材料の送り位置が正しいか、製品が置かれる位置が正しいか、製品の排出は正しく行われたかどうか等を判定することができる。検知部420によって、駆動機器から異常を示す信号、例えば、材料の送り位置が正しくないことを示す信号、製品が置かれる位置が正しくないことを示す信号、製品の排出が正しく行われていないことを示す信号(プレス停止コード)の少なくとも一つを受信すると、設備制御装置200は、駆動機器を直ちに停止させることができる。このとき、設備制御装置200はプレス停止コードを受信したことを補助記憶部230に一時的に格納してもよい。設備制御装置200は、補助記憶部230に一時的に格納されたプレス停止コードを、製造管理装置100に運用データとして送信してもよい。製造管理装置100が運用データを受信すると、運用データは設備制御装置DBに格納される。
【0032】
製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部のいずれかにおいて、運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文を確認したユーザは、設備制御装置200において、プレス機械440、プレス機械440に設けられた金型、プレス周辺装置460などのメンテナンスを実行する。例えば、表示部に使用材料コードがマスタデータと一致しないことが提示された場合には、マスタデータと一致する使用材料コードを設定する。メンテナンスの完了後、ユーザは、製造管理装置100、設備制御装置200、又は通信端末300のいずれかから、製造管理装置100に駆動機器を停止する信号を解除する信号を送信する。製造管理装置100は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信すると、駆動機器を停止する信号を解除する信号を、設備制御装置200に出力する。
【0033】
(製造管理装置のハードウェア構成)
次に、製造管理装置100のハードウェア構成について説明する。製造管理装置100は、制御部110と、主記憶部120と、補助記憶部130と、表示部140と、入出力IF部150と、通信IF部160と、を有する。
【0034】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等であり、製造管理装置100が有する各ブロックの動作を制御する。制御部110は、例えば、補助記憶部130に記録されている各ブロックの動作プログラムを読み出し、主記憶部120に展開して実行することにより、各ブロックの動作を制御する。
【0035】
主記憶部120は、例えば、揮発性メモリ等の一時的な情報保持に用いられる書き換え可能な記憶装置である。主記憶部120は、補助記憶部130に記録されている各ブロックの動作プログラム等の展開領域として用いられる。
【0036】
補助記憶部130は、例えば、不揮発性メモリなどの長期的な情報保持に用いられる書き換え可能な記憶装置である。図1Bは、補助記憶部130の構成を説明するブロック図である。補助記憶部130には、例えば、本発明の一実施形態に係る管理方法を実行するためのプログラム133が格納されている。その他、製造した金属プレス部品の寸法データ等を管理するための製品管理DB131や、設備制御装置の運用データを管理するための設備制御装置DB132が格納される。なお、プログラム133、製品管理DB131、及び設備制御装置DB132は、同じ記憶装置に格納されていても良いし、それぞれ異なる記憶装置に格納されていてもよい。プログラム133については、後に詳細に説明する。図示しないが、補助記憶部130には、マスタデータ、後述する品質データ及び金属プレス部品の寸法データが所定の範囲を満たさなかった原因の候補の定型文等が格納されていてもよい。
【0037】
表示部140は、液晶パネル、ELパネル等であり、情報を表示するための機器である。表示部140は、ユーザがキーボードを操作して情報を入力するために必要な情報、制御部110の処理結果等を表示する。また、表示部140とタッチセンサとが接続されている場合には、タッチパネルとして機能させることができる。
【0038】
入出力IF部150は、外部から情報の入力を受け付けたり、外部に情報を出力したりするユーザインタフェースである。外部から情報の入力を受け付ける機器として、例えば、ボタン、マウス、キーボード、タッチセンサ等が挙げられる。入出力IF部150は、各ユーザインタフェースに対して操作入力がなされたことを検出すると、なされた操作入力に対応する制御信号を制御部110に出力する。また、外部に情報を出力する機器として、例えば、表示部140、プリンタ等が挙げられる。
【0039】
通信IF部160は、製造管理装置100が有する通信インターフェースである。本実施形態に係る製造管理システム1では、製造管理装置100は通信IF部160を介することで、ネットワークを経由して設備制御装置200と接続し、設備制御装置200との間で信号やデータの送受信を行うことができる。また、製造管理装置100は通信IF部160を介することで、ネットワークを経由して通信端末300と接続し、通信端末300との間で信号やデータの送受信を行うことができる。また、図示しないが、通信端末300によって作業者の顔、指紋、静脈、虹彩等により生体認証を実行するための撮像装置を備えていても良いし、作業者の音声により生体認証を実行するためのマイク等を備えていても良い。
【0040】
(設備制御装置のハードウェア構成)
設備制御装置200は、制御部ユニット21と、入力部22と、出力部23と、補助記憶部230と、通信IF部260と、電源部270と、を備える。制御部ユニット21は、制御部210と、主記憶部220と、を備える。
【0041】
制御部210は、各種の処理を実行するCPUである。主記憶部220は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含み、CPUの作業領域として用いられる他、設備制御装置200の基本動作の為にCPUが実行する制御プログラムを記憶する。また、主記憶部220には、プロセス制御やシーケンス制御等を実行するPLC用のプログラミング言語(例えば、ラダー言語)で記述されたプログラムが格納されている。当該プログラムは、演算命令と指定ポートとの組が複数記述された構成を有する。
【0042】
通信IF部260は、設備制御装置200が有する通信インターフェースである。設備制御装置200は、通信IF部260を介することで、ネットワークを経由して製造管理装置100と接続し、製造管理装置100との間で信号やデータの送受信を行うことができる。
【0043】
電源部270は、制御部210、主記憶部220、通信IF部260、電源部270、入力部22、及び出力部23と接続されて、各ブロックに電源を供給する。
【0044】
入力部22は、入力回路と、リレー素子と、を含む。入力回路は、操作部410、検知部420、測定部430、プレス機械440、及びプレス周辺装置460と接続されている。入力回路は、操作部410、検知部420、測定部430、プレス機械440、及びプレス周辺装置460それぞれからの入力信号に応じて起動して制御部210に送信する信号を生成するための電子回路である。また、リレー素子は、接点を有するメカニカルリレーである。リレー素子は、入力機器の数に応じて設けられる。リレー素子の接点は、機器からの入力信号を受けていない場合は、開状態となっており、入力機器からの入力信号を受けている場合は、閉状態となっている。入力部22において、例えば、操作部410から入力信号を受けると、リレー素子の接点が閉状態となり、入力回路はデジタル信号を生成して、生成したデジタル信号を、制御部210に送信する。
【0045】
出力部23は、出力回路と、リレー素子と、を含む。出力回路は、表示部470、レーザ印字機480、及びプレス機械440と接続されている。出力回路は、表示部470、レーザ印字機480、及びプレス機械440を、駆動又は停止するための電子回路である。出力回路は、制御部210からの指示に応じて起動して、リレー素子の接点を、開状態又は閉状態に制御する。リレー素子は、出力機器の数に応じて設けられる。出力部23は、制御部210から信号を受信すると、リレー素子の接点が閉状態となる。これにより、プレス機械440に電圧が印加されて、プレス機械440が駆動する。出力部23は、製造管理装置100、操作部410、検知部420、測定部430のそれぞれからの入力信号に基づいて、プレス機械440及び表示部470に信号を出力する。
【0046】
入力部22と接続される操作部410、検知部420、測定部430、プレス機械440、プレス周辺装置460について説明する。操作部410は、設備制御装置200を操作するためのキーボード、ボタン、タッチセンサ等である。例えば、操作部410によって、使用材料コード、使用金型コード、作業者コード等の属性データが入力されてもよい。なお、属性コードは、操作部410によって入力されても良いし、属性データを表す二次元コード及びバーコードを読み取る読取部(図示しない)によって、入力されてもよい。また、検知部420は、光電センサ、レーザセンサ、リミットスイッチ、近接スイッチなどのセンサである。検知部420は、プレス機械440に金型に設置されている。金型に検知部420を設けることにより、材料の送り位置、製品が置かれる位置、製品の排出等を検出することができる。金型には、複数のセンサが設けられており、センサが設けられている位置に応じて、センサの番号が設定されていてもよい。検知部420で取得された各種データは、設備制御装置DBに格納される。測定部430は、例えば、変位センサ、測長センサ、形状センサ等であり、製造された金属プレス部品の寸法の測定を行う。金属プレス部品を測定する部分に応じてセンサを適宜選択すればよい。測定部430で測定された金属プレス部品の寸法データは、個体識別情報に関連付けられて、補助記憶部230に格納される。その後、寸法データは、通信IF部260を介して、製造管理装置100に送信される。
【0047】
プレス機械440には、プレス機械の運転モード選択(寸動・自動など)、プレス機械のクラッチ状態(開、閉)、プレスカウント数を示すが入力される。プレス周辺装置460には、例えば、金属プレス部品を製造する際の搬送装置から製品搬送中の状態(正しく製品をグリップできたか、ミスグリップが発生していないか)を示す信号が入力される。プレス機械440に入力された信号、プレス周辺装置460に入力された信号は、補助記憶部230に格納される。また、操作部410又は読取部によって取得された属性データも、補助記憶部230に格納される。その後、上記の信号及び属性データを含む運用データは、通信IF部260を介して、製造管理装置100に送信される。
【0048】
出力部23と接続される表示部470、レーザ印字機480、プレス機械440について説明する。表示部470は、設備制御装置200の状態を表示したり、製造管理装置100から受信したデータを表示したりする。レーザ印字機480は、例えば、レーザ照射装置である。レーザ照射装置によって、製造された金属プレス部品に個体識別情報を含むコードを付す。また、プレス機械440は、例えば、金属プレス機械である。プレス機械440は、一つ備えている例を示すが、複数備えていてもよい。プレス機械440を複数備えることで、トランスファー加工、順送加工が可能となる。なお、プレス機械440から出力された信号は、入力部22に入力される。
【0049】
(通信端末のハードウェア構成)
通信端末300は、制御部310と、主記憶部320と、補助記憶部330と、表示部340と、入出力IF部350と、通信IF部360と、を有する。
【0050】
制御部310は、例えば、CPU等であり、通信端末300が有する各ブロックの動作を制御する。制御部110は、例えば、補助記憶部330に記録されている各ブロックの動作プログラムを読み出し、主記憶部320に展開して実行することにより、各ブロックの動作を制御する。
【0051】
主記憶部320は、例えば、揮発性メモリ等の一時的な情報保持に用いられる書き換え可能な記憶装置である。主記憶部320は、補助記憶部330に記録されている各ブロックの動作プログラム等の展開領域として用いられる。
【0052】
補助記憶部330は、製造管理装置100とデータや信号を送受信するためのアプリケーションプログラムが格納されている。当該アプリケーションプログラムによって、製造管理装置100から通信IF部360で受信した金属プレス部品の異常データや、異常が生じた原因の候補の定型文等を、表示部340に表示させることができる。また、当該アプリケーションプログラムによって、製造管理装置100に、駆動機器の停止を解除する信号を送信することができる。
【0053】
表示部340は、例えば、液晶表示パネル又はEL表示パネル等の通信端末300を構成する筐体内に一体となって接続された表示装置である。表示部340には、製造管理装置100から受信したデータを表示する。
【0054】
入出力IF部350は、例えば、ボタン、タッチセンサ等、通信端末300が有するユーザインタフェースである。入出力IF部350は、各ユーザインタフェースに対して操作入力がなされたことを検出すると、なされた操作入力に対応する制御信号を制御部310に出力する。
【0055】
通信IF部360は、通信端末300が有する通信インターフェースである。通信端末300は、通信IF部360を介して、製造管理装置100や設備制御装置200と、信号やデータを送受信する。
【0056】
(補助記憶部の構成)
次に、補助記憶部130の構成について、図1Bを参照して説明する。補助記憶部130に、プログラム133、製品管理DB131、及び設備制御装置DB132が格納されている。
【0057】
プログラム133は、信号受信部1331、判定部1332、データ出力部1333、データ受信部1334、信号出力部1336、及び分析部1335を有する。
【0058】
信号受信部1331は、設備制御装置200からの信号を受信したり、通信端末300からの信号を受信したりする。
【0059】
信号出力部1336は、設備制御装置200の駆動機器の動作を開始する信号を出力したり、駆動機器を停止する信号を出力したり、駆動機器を停止する信号を解除する信号を出力したり、停止条件処理を開始する信号を出力したりする。
【0060】
判定部1332は、製品管理DB131から、金属プレス部品の寸法データを取得して、寸法データが所定の範囲内であるか否かを判定する。寸法データにおける所定の範囲とは、取得された寸法のデータが製品として許容される値の範囲をいう。所定の範囲とは、例えば、図面指定公差の下限から上限の範囲をいう。また、所定の範囲とは、例えば、直近10個の寸法データの平均値から設定された割合に含まれる範囲である。所定の範囲は、図面指定公差の下限から上限の範囲、又は直近10個の寸法データの平均値から設定された割合に含まれる範囲の少なくとも一方を満たせばよい。判定部1332は、例えば、図3に示す寸法データの高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差の全ての項目が所定の範囲内である場合、金属プレス部品は良品であると判定する。図3に示す寸法データの高さ、距離、内径、外径、角度、幾何公差のいずれか一つでも所定の範囲内ではない場合、金属プレス部品は不良品であると判定する。寸法データにおける高さ、距離、及び内径などの項目は、金属プレス部品に応じて適宜設定される。判定部1332が取得した寸法データが所定の範囲内であり、金属プレス部品が良品であると判定する場合、判定結果を1として製品管理DB131に格納する。判定部1332が取得した寸法データが所定の範囲内ではなく、金属プレス部品が不良品であると判定する場合、判定結果を0として製品管理DB131に格納する。判定部1332は、所定の範囲を満たさないと判定する場合に、駆動機器の停止条件を満たすと判定する。また、判定部1332は、設備制御装置DB132から取得した運用データを取得して、駆動機器の停止条件を満たすか否かを判定する。ここで、駆動機器の停止条件とは、運用データが所定の基準を満たすか否かである。また、所定の基準とは、マスタデータに格納されたデータである。取得した運用データとマスタデータとを照合して、運用データとマスタデータとが一致すれば、所定の基準を満たすと判定する。つまり、判定部1332は、駆動機器の停止条件を満たさないと判定する。運用データとマスタデータと一致しなければ、所定の基準を満たさないと判定する。つまり、判定部1332は、駆動機器の停止条件を満たすと判定する。
【0061】
データ受信部1334は、設備制御装置200から、寸法データ及び運用データを受信する。寸法データや運用データの形式は特に限定されず、CSVデータ、テキストデータなどを適用すればよい。
【0062】
分析部1335は、判定部1332において、所定の範囲を満たさないと判定された寸法データを分析する。また、分析部1335は、判定部1332において、所定の基準を満たさないと判定された運用データを分析する。分析部1335は、予め人工知能によって学習した機械学習モデルを用いて、寸法データが所定の範囲を満たさなかった原因や、運用データが所定の基準を満たさなかった原因を推定する。分析部1335は、過去に取得した寸法データや、運用データや、品質データに基づいて、異常データを分析してもよい。ここで、品質データは、過去に製品の不具合発生時に取得されたデータであり、不具合が発生した原因と、不具合が発生したときに施した対策と、その評価を記録したデータであってもよい。また、品質データは、金型をメンテナンスした際に取得したデータや、金型の立ち上げ時の課題と対策を記録したデータであってもよい。例えば、判定部1332において、寸法データが所定の範囲を満たさないと判定された場合に、分析部1335は、製品管理DB131から少なくとも異常データを取得する。本明細書等において、異常データとは、判定部1332において、所定の範囲を満たさないと判定された寸法データをいう。分析対象のデータは、異常データだけでなく、異常データを含む所定の数の寸法データであってもよい。分析部1335の分析の結果、金属プレス部品の寸法データが所定の範囲を満たさなかった原因の候補の定型文を出力する。また、判定部1332において、運用データが所定の基準を満たさないと判定された場合に、分析部1335は、設備制御装置DB132から、少なくとも異常データを取得する。分析対象のデータは、異常データだけでなく、異常データを含む所定の数の運用データであってもよい。分析部1335の分析の結果、金属プレス部品の運用データが所定の基準を満たさなかった原因の候補の定型文を出力する。
【0063】
分析部1335は、製品管理DB131から所定の数の寸法データを抽出して、分析することで、寸法データの平均値、工程能力の算出等を実行することができる。これらの分析結果は、定型フォームにテキスト化することができる。
【0064】
データ出力部1333は、寸法データ又は運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文を、設備制御装置200、及び通信端末300に送信する。また、データ出力部1333は、寸法データ又は運用データの異常データ含む所定の数のデータを設備制御装置200及び通信端末300に送信してもよい。また、分析部1335から得られた、寸法データの平均値、工程能力を算出した結果等のテキストファイルを、データ出力部1333から出力することができる。
【0065】
(製造管理方法のフローチャート)
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る製造管理方法を説明するフローチャートである。本発明の一実施形態に係るプログラム133は、製造管理装置100の制御部110によって実行される。設備制御装置200において、金属プレス部品の製造が開始されたタイミングで、プログラム133が開始される。
【0066】
図5において、プログラム133が開始されると、信号出力部1336は、設備制御装置200に駆動機器の動作を開始する信号を送信する(ステップS401)。設備制御装置200は駆動機器の動作を開始する信号を受信すると、プレス機械440、検知部420、プレス周辺装置460等の動作を開始して、金属プレス部品を製造する。また、設備制御装置200は、プレス機械440の動作を開始すると、設備制御装置200において製造された金属プレス部品に対応する運用データを取得して、補助記憶部230に格納する。その後、設備制御装置200は、運用データを、製造管理装置100に送信する。設備制御装置200は、運用データと受信すると、設備制御装置DB132に格納する。
【0067】
次に、信号出力部1336は設備制御装置200に停止条件処理を開始する信号を出力する(ステップS402)。停止条件処理につついては、後に詳細に説明する。
【0068】
設備制御装置200は、検知部420によってプレス機械から金属プレス部品が排出されたことを検知すると、補助記憶部230に格納されたテーブルから個体識別情報を含む2次元コードを読み出し、レーザ印字機480によって金属プレス部品の表面に個体識別情報を含むコードを付す。
【0069】
次に、設備制御装置200は、測定部430において金属プレス部品の寸法を測定する。本実施形態では、金属プレス部品の寸法データとして、内径、深さ、平面度を取得して個体識別情報と関連付けて、補助記憶部230内に格納する。その後、設備制御装置200は、当該個体識別情報及び寸法データを製造管理装置100に送信する。製造管理装置100は、個体識別情報及び寸法データと受信すると、製品管理DB131に格納する。
【0070】
次に、判定部1332は、製品管理DB131から、金属プレス部品の寸法データ及び個体識別情報を取得し(ステップS403)、当該寸法データが所定の範囲を満たすか否かを判定する(ステップS404)。判定部1332が取得した寸法データが所定の範囲を満たすと判定する場合(ステップS404;Yes)、判定結果を1として製品管理DB131に格納して(ステップS405)、プログラムが終了する(END)。そして、次の金属プレス部品の製造が開始されたタイミングで、プログラム133が開始される。
【0071】
ステップS401~S405までの処理は、金属プレス部品が正常に製造された場合の処理である。次に、金属プレス部品が正常に製造されなかった場合について、ステップS404、S407~S411を参照して説明する。
【0072】
判定部1332が、寸法データが所定の範囲ではないと判定する場合(ステップS404;No)、信号出力部1336は、駆動機器を停止する信号を設備制御装置200に送信する(ステップS407)。判定部1332は、寸法データの内径、深さ、平面度等の項目うち少なくとも一つでも所定の範囲を満たさなければ、寸法データを異常データと判定し、金属プレス部品が不良品であると判定する。設備制御装置200は、駆動機器を停止する信号を受信すると、駆動機器を停止する。次に、判定部1332は、判定結果を0として製品管理DB131に格納する(ステップS408)。次に、分析部1335は、異常データを取得して分析する(ステップS409)。分析部1335の分析の結果、金属プレス部品の寸法データが所定の範囲とならなかった原因の候補の定型文を出力する(ステップS410)。金属プレス部品の寸法データが所定の範囲とならなかった原因の候補の定型文は、可能性が高いものから順に複数提示されてもよい。データ出力部1333は、寸法データに異常が生じた原因となる候補の定型文を、設備制御装置200、及び通信端末300に送信する。そして、寸法データに異常が生じた原因となる候補の定型文が、製造管理装置100の表示部、設備制御装置200の表示部140、通信端末300の表示部140に表示される。また、製造管理装置100の表示部、設備制御装置200の表示部140、及び通信端末300の表示部140に表示されるデータは、寸法データに異常が生じた原因となる候補の定型文だけでなく、分析部1335が分析する前の寸法データであってもよい。
【0073】
製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部のいずれかにおいて、寸法データに異常が生じた原因となる候補の定型文を確認したユーザは、設備制御装置200において、金型、プレス機械、プレス周辺装置などのメンテナンスを実行して、金属プレス部品が正常な寸法となるように調整する。ユーザは、メンテナンス後の金属プレス部品の寸法が正常であることを確認した後、製造管理装置100、設備制御装置200、又は通信端末300のいずれかから、製造管理装置100に駆動機器を停止する信号を解除する信号を送信する。データ受信部1334は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信する(ステップS411;Yes)と、信号出力部1336は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を設備制御装置200に送信する(ステップS401)。そして、次に製造された金属プレス部品に対して運用データを用いて、設備制御装置200の停止条件処理を開始する(ステップS402)。データ受信部1334は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信しなければ(ステップS411;No)、当該信号を受信するまで待機する。
【0074】
(駆動機器停止条件処理)
次に、駆動機器の停止条件処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。製造管理装置100は、設備制御装置DBから所定のタイミングで運用データを取得する。ここで、判定に用いられる運用データは、生産指示書No.、使用材料コード、使用金型コード、及び作業者コードから取得された各種識別情報である。
【0075】
駆動機器の停止条件処理が開始されると、判定部1332は、設備制御装置DB132から運用データを取得して、駆動機器の停止条件を満たすか否かを判定する(ステップS421)。判定部1332は、取得した運用データが、マスタデータと一致する場合に、駆動機器の停止条件を満たさないと判定する場合(ステップS421;No)、ステップS403の処理に進む。または、判定部1332は、取得した運用データが、マスタデータと一致しない場合に、駆動機器の停止条件を満たすと判定する。判定部1332は、駆動機器の停止条件を満たすと判定する場合(ステップS421;Yes)、信号出力部1336は、駆動機器を停止する信号を設備制御装置200に送信する(ステップS422)。設備制御装置200は、駆動機器を停止する信号を受信すると、プレス機械440を停止する。次に、分析部1335は、少なくとも異常データを取得して分析する(ステップS423)。分析部1335の分析の結果、運用データが所定の基準を満たさなかった原因の候補の定型文を出力する(ステップS424)。データ出力部1333は、運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文を、設備制御装置200、及び通信端末300に送信する。そして、運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文が、製造管理装置100の表示部、設備制御装置200の表示部140、通信端末300の表示部140に表示される。また、製造管理装置100の表示部、設備制御装置200の表示部140、及び通信端末300の表示部140に表示されるデータは、運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文だけでなく、分析部1335が分析する前の運用データであってもよい。
【0076】
製造管理装置100の表示部や、設備制御装置200の表示部や、通信端末300の表示部のいずれかにおいて、運用データに異常が生じた原因となる候補の定型文を確認したユーザは、設備制御装置200において、プレス機械440、プレス機械440の金型、プレス周辺装置などのメンテナンスを実行する。メンテナンスの完了後、ユーザは、製造管理装置100、設備制御装置200、又は通信端末300のいずれかから、製造管理装置100に駆動機器を停止する信号を解除する信号を送信する。データ受信部1334は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信する(ステップS425;Yes)と、信号出力部1336は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を設備制御装置200に送信して(ステップS426)、ステップS403に進む。データ受信部1334は、駆動機器を停止する信号を解除する信号を受信しなければ(ステップS425;No)、当該信号を受信するまで待機する。
【0077】
自動車部品など大量に流動する金属プレス部品を識別するために、個体識別情報を含む2次元コードを用いることにより、金属プレス部品の品質を含む生産管理データを1個単位で管理することができる。これにより、後に金属プレス部品の不具合が発生したとしても、対象ロットの絞り込みや、寸法データの変化点の管理が1個単位で追跡することができる。また、金属プレス部品の寸法を測定した後に、直ちに判定結果を行うことにより、寸法データの異常をすぐに見つけ出すことができる。また、寸法データの異常を検知した場合は、設備制御装置200を停止することで、ユーザは直ちに設備制御装置200において、プレス機械440、プレス機械440の金型、プレス周辺装置460などのメンテナンスを実行することができる。本発明の一実施形態に係る製造管理装置によれば、金属プレス部品の製造及び管理において、大幅なコストの上昇や生産性の低下を伴わずに金属プレス部品の測定を行い、安定した金属プレス部品を提供することができる。
【0078】
また、設備制御装置200において、駆動機器が動作している間、所定のタイミングで、運用データを取得している。設備制御装置200は、取得した運用データを製造管理装置100に送信している。製造管理装置100が取得した運用データと、マスタデータとを照合することにより、取得した運用データが異常データか否かを判定することができる。取得した運用データが、異常データである場合には、製造管理装置100は、駆動機器を停止させる信号を出力することができる。このように、設備制御装置200を停止することで、ユーザは直ちに設備制御装置200において、プレス機械440、プレス機械440の金型、プレス周辺装置460などのメンテナンスを実行することができる。また、運用データを取得して直ちに判定を実行することで、指示書に対して材料を間違えて使用することや、対象の作業に対して認定を受けていない作業者が作業を行うことを防止することができる。本発明の一実施形態に係る製造管理装置によれば、金属プレス部品の製造及び管理において、大幅なコストの上昇や生産性の低下を伴わずに金属プレス部品の測定を行い、安定した金属プレス部品を提供することができる。
【0079】
本発明の一実施形態では、製造された金属プレス部品に対して直ちに寸法データを取得して、個体識別情報と寸法データとを関連付けて補助記憶部130に格納している。そのため、製造管理装置100の制御部110は、補助記憶部130から定期的に複数の寸法データを取得して、分析部1335によって寸法データを解析することができる。これにより、取得した寸法データに基づいて、各項目における寸法の中央値を算出することができる。設備制御装置200は、算出された寸法の中央値に基づいて、プレス機械の金型などを調整するように制御してもよい。
【0080】
本発明の一実施形態では、金属プレス部品が製造されたことを検知すると、個体識別情報を含む2次元コードを付した後、金属プレス部品の寸法を測定して、寸法データと個体識別情報とを関連付けて補助記憶部230に格納する例について説明したが、これに限定されない。例えば、個体識別情報を含む2次元コードを付した後、設備制御装置200の入力部に接続された読取部で2次元コードを読みとった後、金属プレス部品の寸法を測定してもよい。その後、個体識別情報と寸法データとを対応づけて、補助記憶部230に格納してもよい。
【0081】
本発明の一実施形態において、製品管理DB131は、金属プレス部品の種類に応じて複数あってもよい。例えば、第1金属プレス部品と第2金属プレス部品のそれぞれの寸法データは、異なる製品管理DBに格納されてもよい。第1金属プレス部品が第2金属プレス部品に組みつけられる場合、第1金属プレス部品の寸法データに基づいて、第2金属プレス部品の製品管理DBに格納された寸法データから、適切な第2金属プレス部品の寸法データを抽出してもよい。適切な第2金属プレス部品の寸法データは、例えば、所定のアルゴリズムにしたがって、第1金属プレス部品と第2金属プレス部品との間に生じる隙間や段差の大きさなどが所定の範囲に収まるデータである。これにより、第1金属プレス部品に対して適切な組み付け相手部品(第2金属プレス部品)を選択することができる。
【0082】
本発明の一実施形態において、設備制御装置200の停止条件処理を実行した後、金属プレス部品の寸法データに異常がないかを判定する処理を実行する方法について説明したが、これに限定されない。図5において、プログラム133を開始した後、ステップS402~S404に従って、金属プレス部品の寸法データに異常がないかを判定する処理を実行した後、図6に示す設備制御装置200の停止条件処理を実行してもよい。また、図5において、プログラム133を開始した後、ステップS402~S404に従って、金属プレス部品の寸法データに異常がないかを判定する処理に並行して、図6に示す設備制御装置200の停止条件処理を実行してもよい。このとき、寸法データに対する判定処理と、運用データに対する判定処理の少なくとも一方に異常があると判定された場合には、直ちに、設備制御装置200の駆動機器を停止する停止信号を送信する。また、本発明の一実施形態において、ステップS402の設備制御装置200の停止条件処理を省略して、金属プレス部品の寸法データに異常がないかを判定する処理を行ってもよい。
【0083】
以上説明した通り、本発明の一実施形態に係る製造管理システム、製造管理装置、製造管理方法、及びプログラムは、様々な形態に適用できる。したがって、発明の実施形態として説明した製造管理システム、製造管理装置、製造管理方法、及びプログラムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。また、上述した各実施形態は、技術的矛盾の生じない範囲において、相互に組み合わせることが可能である。
【0084】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【0085】
本発明の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に相当し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1:製造管理システム、21:制御部ユニット、22:入力部、23:出力部、100:製造管理装置、110:制御部、120:主記憶部、130:補助記憶部、131:製品管理DB、132:設備制御装置DB、133:プログラム、140:表示部、150:入出力IF部、160:通信IF部、200:設備制御装置、210:制御部、220:主記憶部、230:補助記憶部、260:通信IF部、270:電源部、300:通信端末、410:操作部、420:検知部、430:測定部、440:プレス機械、460:プレス周辺装置、470:表示部、480:レーザ印字機、500:金属プレス部品、501:2次元コード
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6