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特許7521856CARM1によるPontinのアルギニンメチル化による自己捕食調節方法及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】CARM1によるPontinのアルギニンメチル化による自己捕食調節方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/48 20060101AFI20240717BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240717BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023531622
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2021016485
(87)【国際公開番号】W WO2022114622
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0160027
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521081975
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニヴァーシティ アール アンド ディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハイ-チャイ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンハ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1771851(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0078865(KR,A)
【文献】特表2017-527594(JP,A)
【文献】Pontin arginine methylation by CARM1 is crucial for epigenetic regulation of autophagy.,Nature communications,2020年,11(1),6297
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/48
C12N 15/12
C12N 15/54
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルトランスフェラーゼであるCARM1(Coactivator Associated argine methyltransferase 1)によるPONTINタンパク質のメチル化調節を介して自己捕食を調節する物質をスクリーニングする方法であって、前記方法は、ブドウ糖欠乏状態でCARM1及び前記メチルトランスフェラーゼCARM1の基質としてPONTINタンパク質を発現する細胞を培養する第1の段階と、
前記細胞にメチルトランスフェラーゼCARM1の前記PONTINに対するメチル化活性を抑制するものと期待される試験物質を処理する第2の段階と、
前記PONTINタンパク質を前記細胞から分離する第3の段階と、
前記分離されたPONTINタンパク質の配列番号1に基づいて333番及び339番目の残基におけるメチル化の程度を測定する第4の段階と、
前記測定結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記メチル化が増加または減少した場合、これを自己捕食を調節する候補物質として選別する第5の段階を含み、前記メチル化の増加は、自己捕食の増加、前記メチル化の減少は、自己捕食の抑制を示すものである、CARM1及びPONTINによって調節される自己捕食調節剤スクリーニング方法。
【請求項2】
前記第1の段階は、FOXO3aタンパク質をさらに発現し、
前記第4の段階の代わりに、またはそれに加えて、前記PONTIN及びFOXO3aタンパク質の結合を測定する段階を含み、前記測定結果、前記タンパク質間の結合の増加は、自己捕食の増加、結合の減少は、自己捕食の抑制を示すものである、請求項1に記載のCARM1及びPONTINによって調節される自己捕食調節剤スクリーニング方法。
【請求項3】
前記PONTINは、配列番号2に基づいて前記FOXO3aタンパク質の624、627、628、640及び642残基を介して結合するものである、請求項2に記載のCARM1及びPONTINによって調節される自己捕食調節剤スクリーニング方法。
【請求項4】
前記第4の段階に加えて、前記細胞から分離されたヒストン4(H4)タンパク質のアセチル化の有無を測定する段階を含み、前記測定結果、前記H4タンパク質のアセチル化増加は、自己捕食の増加、結合の減少は、自己捕食の抑制を示すものである、請求項1~請求項3のいずれかに記載のCARM1及びPONTINによって調節される自己捕食調節剤スクリーニング方法。
【請求項5】
前記ヒストン4のアセチル化は、配列番号3の配列に基づいて6、9、13及び17番目のリシン残基で発生するものである、請求項4に記載のCARM1及びPONTINによって調節される自己捕食調節剤スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、自己捕食調節方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
自己捕食(Autophagy)は、細胞内栄養分が不足した環境で、細胞が自分の不要なタンパク質、老化した小器官などを脂質二重層から構成された自己捕食素体(membrane vacuole,autophagosome)が取り囲んだ後、リソソームと合わせて取り囲まれた内部物質を分解するように誘導するリソソーム-依存方式で細胞内構成物質を変動、調整する過程(Levine and Klionsky,(2004)Dev Cell 6,463-377)で、欠陥のある巨大タンパク質複合体及び細胞内小器官を除去し、細胞成長、生存及び恒常性に重要な役割を果たす。
【0003】
したがって、自己捕食調節に異常がある場合、変性タンパク質(misfolded protein)の蓄積がもたらされ、これにより神経変性疾患が発生することが知られている(Komatsu et al.,(2006),Nature,441,880-884)。
【0004】
また、自己捕食は、がん細胞で活性化(Ding et al.,(2009),Mol.Cancer Ther.,8(7),2036-2045)され、自己捕食阻害剤が抗がん治療剤として作用することが知られている(Maiuri et al.,(2007)Nat.Rev.Cell Biol.8,741-752)。また、がん及び神経変性疾患に加えて、自己捕食は、肝疾患、心臓疾患、筋肉疾患及び膵臓疾患に関連していることが知られている(Levine and Kroemer,(2008),Cell,132,27-42;Fortunato and Kroemer,(2009),Autophagy,5(6))。
【0005】
したがって、細胞の自己捕食の調節による様々な治療剤の開発に関する研究が進められている。
【0006】
大韓民国登録特許第10-1594168号には、p62のZZ領域によって媒介される自己捕食調節方法及びその用途について開示されている。
【0007】
米国公開特許公報第2010-0233730号は、治療のための自己捕食調節に関するもので、細胞に試験物質を処理した後、代謝ストレスを加えてオートファゴソーム(autophagosome)の細胞内変化観察を通じて、自己捕食調節剤を選別する方法を開示している。
【0008】
しかし、これらは細胞質で作用する自己捕食タンパク質基盤の技術として、核内における転写過程や後成遺伝学的作用機序に基づく自己捕食調節技術については知られておらず、より根本的な調節のために核内で作用する機序に基づく自己捕食調節剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、核内で作用する機序に基づく自己捕食調節方法、それを用いたスクリーニング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本願は、メチルトランスフェラーゼであるCARM1(Coactivator Associated argine methyltransferase 1)によるPONTINタンパク質のメチル化調節を介して自己捕食を調節する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0011】
一具現例において、前記方法は、ブドウ糖欠乏状態でCARM1及び前記メチルトランスフェラーゼCARM1の基質としてPONTINタンパク質を発現する細胞を培養する第1の段階、前記細胞にメチルトランスフェラーゼCARM1の前記PONTINに対するメチル化活性を抑制するものと期待される試験物質を処理する第2の段階と、前記PONTINタンパク質を前記細胞から分離する第3の段階、前記分離されたPONTINタンパク質の配列番号1に基づいて333番及び339番目の残基におけるメチル化の程度を測定する第4の段階、及び
【0012】
前記測定結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記メチル化が増加または減少した場合、これを自己捕食を調節する候補物質として選別する第5の段階を含み、前記メチル化増加は、自己捕食の増加、前記メチル化の減少は、自己捕食の抑制を示す。
【0013】
他の具現例において、前記第1の段階は、FOXO3aタンパク質をさらに発現し、前記第4の段階の代わりに、またはそれに加えて、前記PONTIN及びFOXO3aタンパク質の結合を測定する段階を含み、前記測定結果、前記タンパク質間の結合の増加は、自己捕食の増加、結合の減少は、自己捕食の抑制を示す。
【0014】
さらに他の具現例において、本願によるPONTINは、配列番号2に基づいて前記FOXO3aタンパク質の624、627、628、640及び642残基を介してFOXO3aと結合する。
【0015】
さらに他の具現例において、本願に記載の方法は、前記第4の段階に加えて、前記細胞から分離されたヒストン4(H4)タンパク質のアセチル化の有無を測定する段階を含み、前記測定結果、前記H4タンパク質のアセチル化の増加は、自己捕食の増加、結合の減少は、自己捕食の抑制を示す。
【0016】
さらに他の具現例において、前記ヒストン4のアセチル化は、配列番号3の配列に基づいて6、9、13及び17番目のリシン残基で発生する。
【発明の効果】
【0017】
自己捕食は、栄養分欠乏、代謝ストレス、ウイルス感染、老化などの様々なストレス状況で活性化されて細胞の生存及び恒常性の維持に重要な役割を果たすメカニズムで、自己捕食信号の調節に問題が生じたとき、がんと退行性脳疾患などの様々な疾患と関連が深い。核内で作用するメカニズムに基づく自己捕食調節方法をスクリーニングを通じて知ることができれば、自己捕食の異常に起因する疾患(がん、退行性脳疾患など)の新しい治療標的を発掘する過程で理論的な基盤知識を提供しうる。
【0018】
そこで、本願によるCARM1-PONTIN-FOXO3aシグナル伝達系を標的とする自己捕食調節方法は、様々なレベルで自己捕食調節問題による様々な疾患の治療剤の開発に有用に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、CARM1によってPontinのR333、R339残基がアルギニンメチル化される。(a)HEK293Tに発現させたFlag-CARM1をFlag-M2 agaroseを用いてpulldownする。Mass spectrometric分析を通じてブドウ糖欠乏状態でCARM1と結合するタンパク質であるPontinを究明した。(b)affinity chromatographyから得られたeluateでCARM1の結合蛋白質としてPontinをimmunoblotで示す。(c)CARM1とPontin/Reptinの結合をGST pulldown実験で示す。(d)His-PontinとHA-CARM1 WT/R169A突然変異を用いてin vitroメチル化実験の結果、(e)GST-Pontin WTとR333/339A突然変異をHA-CARM1を用いてin vitroメチル化させる。その後、Rme2a抗体でimmunoblotした結果(f)Pontin WT,R333K/R339K,R333A/R339A突然変異を用いてin vitroメチル化実験の結果。RIを用いたバージョン(g)Pontinの構造とR333、R339残基(h)いくつかの種におけるPontinタンパク質配列と保存されたR333、R339残基。(i)作製したPontinメチル化抗体をdot blotを通じて確認。使用したペプチドMethyl peptide sequence:IVIFASNR(me2)GNCVIR(me2)GTEDITS;Non-methyl peptide sequence:IVIFASNRGNCVIRGTEDITS。(j)GST-Pontin WT、R333A、R339A、R333/339AとCARM1を用いてin vitroメチル化の進行。その後、Rme2a抗体でimmunoblot。(k)GST-Pontin WT、R333K、R339K、R333/339Kで前記と同様の実験結果。Rme2a抗体とPontinメチル化抗体の使用。(l)His-PontinとHA-CARM1 WT/R169Aを用いてin vitroメチル化実験の進行。Pontinメチル化抗体で確認した結果である。
図2図2は、CARM1によるPontinのメチル化は、ブドウ糖欠乏状態で核内で起こる。(a)ブドウ糖欠乏18時間の状況でHeLa細胞におけるCARM1とPontinの結合(b)CARM1 inhibitor EZM2302(100nM)、EPZ025654(100nM)を96時間処理した後、Pontinのメチル化測定。(c)CARM1 WT MEFとknockout MEFでのブドウ糖欠乏状態におけるPontinメチル化の変化(d)CARM1 KO MEFにCARM1 WTまたはR169Aを発現させた後、Pontinメチル化の変化(e)MEFの核と細胞質におけるPontinメチル化の変化(f)Pontinメチル化とCARM1を撮ったconfocalイメージ。
図3図3は、Pontinのメチル化が欠乏依存的自己捕食の増加に重要である。(a)Pontin f/f MEFにFlag-Pontin WT or R333A/R339A(RA)stableに発現させる方法モデル(b)Pontinのprotein発現レベル(c)Pontin f/f+Flag Pontin WT/RK、RA MEFにcre処理後、Pontinメチル化抗体でIP(d)代表的なGFP-LC3 punctaイメージ。Scale bar 20um、グラフは、LC3-positive細胞数を定量化したもの(e)Pontin WT、RA MEFでimmunoblot結果。数字は、LC3-II/bactin比率(f)bafilomycin Al処理の有無による代表的なGFP-LC3 punctaイメージ。(g)Bafilomycin AlとChloroquine処理の有無による自己捕食flux測定。数字は、LC3-II/bactin比率(h)CYTO-IDを用いて染色後の代表的なconfocalイメージ(i)PontinWT、RA MEFでmCherry-GFP-LC3を用いた代表的なconfocalイメージ。mCherryとGFPシグナルが一緒にある黄色いpunctaの場合、リソソームと結合していない自己捕食胞子(ファゴフォア、オートパゴソーム)であり、赤いpunctaは、酸性化された自己捕食胞子(アムビゾーム、オートリソソーム)である。
図4図4は、多くの自己捕食とリソソーム遺伝子がPontinのメチル化によって調節されることをRNA-sequencingを通じて確認した。(a)RNA-seq分析方式(b)Hierarchical clusteringを通じて4131個のDEGが生成される(c)遺伝子群1に対するDAVIDを用いてGene ontologyとKEGG pathway分析(d)代表的なGSEA結果(e)自己捕食過程に分類したPontinメチル化依存的な遺伝子(f)Pontinメチル化依存的な自己捕食またはリソソーム関連遺伝子のqRT-PCR結果(g)ブドウ糖欠乏状態でのPontin WT,RK,RAでのターゲットタンパク質の発現程度をimmunoblotで確認した結果である。
図5図5は、PontinとFOXO3aがメチル化を介して結合する。(a)EnrichRを用いたPontinメチル化依存的な遺伝子の転写因子の分析(b)Pontinメチル化ChIP-seq結果を用いたBinding motif分析(c)Pontinと様々な自己捕食関連転写因子との結合有無の確認(d)Pontin WT,RK,RAとFOXO3aの結合有無の確認(e,f)CARM1KOでPontinとFOXO3aの結合有無の確認(g)CARM1 inhibitorであるEZM2302とEPZ025654処理後PontinとFOXO3aの結合有無の確認(h)in vitroメチル化実験後に行われたGST pulldown実験手順及び結果(i)Pontinメチル化有無ペプチドを用いたimmunodot実験結果(j)PontinとFOXO3aの様々なaromatic残基突然変異と結合有無の確認(k)FOXO3aWTとF640/642L突然変異を用いてPontinとの結合有無を確認した結果である。
図6図6は、メチル化されたPontinとTip60がFOXO3aターゲット遺伝子をH4 acetylationを通じて活性化させる。(a)Pontin WT/RKを用いたルシフェラーゼ実験結果(b)FOXO3a WT,F640/642Lを用いたルシフェラーゼ実験結果(c)Pontinメチル化ChIP-seq結果を用いてTSS近くのpeakと遠くにあるpeakをHeatmapで示した結果。(d)Map1lc3bのプロモーターとエンハンサー付近でのPontinメチル化ChIP-seq peak表示(e)CARM1 WT/KO MEFにおいてFOXO3a結合部位でのCHIP結果(f)Pontinの有無によるFOXO3aとTip60の結合(g)Pontin WT/RKとTip60の結合を確認した結果である。
図7図7は、Pontinのメチル化依存的な自己捕食遺伝子の活性においてTip60が重要である。(a)Tip60 knockdown有無による自己捕食flux程度。数字は、LC3-II/bactin比率(b)Tip60 knockdownの有無によるPontinメチル化依存的/非依存的遺伝子のmRNA発現の変化(c)Tip60 knockdownした細胞でFOXO3a、Pontinメチル、H4アセチル化、Tip60に対するChIP結果(d)Tip60 knockdownの有無とPontin WT/RAによるPontinメチル化依存的遺伝子の発現パターン(e)Tip60 knockdownの有無とPontin WT/RAによるLC3発現の差異。数字は、LC3-II/bactin比率(f)モデル図である。
図8図8は、CARM1-Pontin-FOXO3a軸が自己捕食遺伝子のエンハンサーの活性に役割を果たす。(a,b)FOXO3a、Pontinメチル、H4アセチル、Tip60、H3R17me2を用いてMap1LC3b、Ctns、Atg14においてFOXO3a結合部位(a)、TFEB結合部位(b)でChIPした結果。Pontin WT、RKで進行。(c)Map1LC3bのプロモーターとエンハンサー部分の結合を確認するために行われた3C結果。PCR後にDNA gelで確認したデータ。右側はそのモデル。(d)Pontin WT/RA MEFで自己捕食とリソソーム関連遺伝子のeRNAをqRT-PCRで確認した結果である。
図9図9は、本願で究明された機序を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願では、CARM1->PONTIN->FOXO3につながる経路がブドウ糖欠乏
状態で細胞の自己捕食の調節に重要な機序であることを究明した。具体的には、CARM1は、PONTINをメチル化し、メチル化されたPONTIN(Tip60と結合)は、FOXO3と結合して複合体を形成し、これらの複合体は、自己捕食に関与する遺伝子から発見されるエンハンサーに結合してこれら遺伝子の転写を調節する方式で自己捕食の調節に関与し、自己捕食が増加する。
【0021】
細胞において栄養分代謝の恒常性の維持は、細胞の健康と機能にとって重要である。自己捕食は、栄養分不足状態で代表的な防御機序の一つで、栄養分が不足すると自己捕食を通じて栄養分が自ら供給されて生存に役立つ。
【0022】
本願において自己捕食(autophagyまたはautophagocytosis)とは、リソソームを用いて細胞内に不要または変性されたタンパク質を含む様々な細胞構成成分を除去する異化作用をいう。自己捕食の調節に異常がある場合、変性タンパク質(misfolded protein)の蓄積がもたらされ、これにより神経変性疾患が発生することが知られている(Komatsu et al.,(2006),Nature,441, 880-884)。また、自己捕食は、がん細胞において活性化(Ding et al.,(2009)、MoI.Cancer Ther.,8(7),2036-2045)され、自己捕食阻害剤が抗がん治療剤として作用することが知られている(Maiuri et al.,(2007)Nat.Rev.Cell Biol.8,741-752)。また、がん及び神経変性疾患に加えて、自己捕食は、肝疾患、心臓疾患、筋肉疾患及び膵臓疾患に関連していることが知られている(Levine and Kroemer,(2008),Cell,132,27-42;Fortunato and Kroemer,(2009),Autophagy,5(6))。したがって、本願に開示された技術を用いた自己捕食調節剤、調節方法は、自己捕食調節異常による様々な疾患の治療または予防に効果的に使用されてもよい。
【0023】
そこで、一態様において本願は、メチルトランスフェラーゼであるCARM1(Coactivator Associated argine methyItransferase 1)によるPONTINタンパク質のメチル化調節を介して自己捕食を調節する物質をスクリーニングする方法に関する。
【0024】
一具現例において、前記方法は、ブドウ糖欠乏状態でCARM1及び前記メチルトランスフェラーゼCARM1の基質としてPONTINタンパク質を発現する細胞を培養する第1の段階、前記細胞にメチルトランスフェラーゼCARM1の前記PONTINに対するメチル化活性を抑制するものと期待される試験物質を処理する第2の段階、前記PONTINタンパク質を前記細胞から分離する第3の段階、前記分離されたPONTINタンパク質の配列番号1に基づいて333番目及び339番目の残基におけるメチル化の程度を測定する第4の段階、及び前記測定結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記メチル化が増加または減少した場合、これを自己捕食を調節する候補物質として選別する第5の段階を含み、前記メチル化の増加は自己捕食増加、前記メチル化の減少は自己捕食抑制を示す。
【0025】
本願において調節(modulation)とは、特定の生物学的機能の活性化、刺激または上向き調節、または低下または下向き調節、またはその両方を含み、インビトロ状態での調節、インビボ状態での調節、エックスビボ状態での調節をすべて含む。
【0026】
本願による方法に使用されるCARM1(coactivator-associated arginine methyltransferase 1)またはPRMT4(protein arginine N-methyltransferase 4)は、αヘリックス及びβシートから構成されるS-アデノシル-L-メチオニンからアル
ギニン残基の側鎖窒素のメチル化を触媒する酵素であり、哺乳動物においてCARM1の遺伝子及びタンパク質配列は公知であり、例えば、ヒト遺伝子及びタンパク質配列は、Gene ID:10498、Protein ID:NP_954592.1として公知されている。本願による方法では、前記のようなメチル化酵素機能を有する限り、様々な由来、及び各由来のタンパク質配列及びそれと実質的に同じ配列を有する全長または断片が使用されてもよい。
【0027】
本願による前記方法においてCARM1の基質(substrate)は、PONTINである。
【0028】
本願において、PONTINは、ATPaseとDNAヘリカーゼ機能を有するクロマチンリモデリング因子(chromatin remodeling factor)であり、例えば、ヒト遺伝子及びタンパク質配列は、それぞれGene ID:8607、Protein ID:NP_003698.1として公知されている。本願による方法では、前記のようなメチル化酵素機能を有する限り、様々な由来、及び各由来のタンパク質配列、及びそれと実質的に同じ配列を有する全長または断片が使用されてもよい。
【0029】
PONTINは、CARM1タンパク質によって配列番号1の配列に基づいて333番及び339番目のアルギニン残基がメチル化される。
【0030】
メチル化されたPONTINは、次の段階でFOXO3aと結合する。
【0031】
メチル化されたPONTINは、FOXO3aの624、627、628、640及び642番目の残基(配列番号2の配列基準)と接触して結合する。
【0032】
本願においてFOXO3aは、Forkhead box protein3aの略字であり、細胞成長、増殖、分化、寿命と恒常性の維持に関与する転写調節因子である。その遺伝子及びタンパク質配列は、それぞれGene ID:2309、Protein ID:NP_001446.1として公知されている。本願による方法では、前記のようなメチル化酵素機能を有する限り、様々な由来、及び各由来のタンパク質配列及びそれと実質的に同じ配列を有する全長または断片が使用されてもよい。
【0033】
本願では、特にCARM1によるPONTINメチル化がFOXO3aの結合を誘導し、最終的にCARM1-Pontin-FOXO3a軸がH4アセチル化を介してエンハンサーで作用し、自己捕食関連遺伝子のcoactivatorとして作動できることを究明した。
【0034】
そこで、本願による方法は、ヒストン4のアセチル化をさらに測定しうる。ヒストンは、染色質(chromatin)を構成する中心タンパク質で、DNA鎖を巻く糸巻きの役割をしてDNAを凝縮し、遺伝子発現に重要な役割を果たすことが知られている。ヒストンタンパク質にはH1、H2A、H2B、H3及びH4などが存在し、H2A、H2B、H3及びH4がそれぞれ2つずつ集まって8量体であるコアヒストンを形成し、H1は連結体である。コアヒストンは、非常によく保存された配列を有し、様々な変異体も見出され、そのような配列は、公開されたヒストンDB2.0を参照しうる。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/HistoneDB2.0/index.fcgi/browse/)。本願で究明された機序に関与するヒストンH4の配列(Gene ID:8359、Protein ID:NP_003529.1)においてH4の6、9、13及び17番目のリシン残基(配列番号3の配列を基準)をアセチル化させる。
【0035】
実質的に同一とは、タンパク質及び核酸配列レベルにすべて適用され、参照または基準となる配列と比較して、塩基またはアミノ酸残基に1つ以上の置換、欠損、または付加があり得るが、全体的に見ると機能に差がないか、または機能を悪くしないレベルの機能を持つことを意味する。相同性とは、対象となる配列を最大限対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最低61%の相同性、より好ましくは、70%の相同性、より好ましくは、80%の相同性、最も好ましくは、90%以上、特に95%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアライメント方法は、当業界に公知されている。例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.(1981)2:482;Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.(1970)48:443;Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.(1988)24:307-31;Higgins and Sharp,Gene(1988)73:237-44;Higgins and Sharp,CABIOS(1989)5:151-3;Corpet et al.,Nuc. Acids Res.(1988)16:10881-90;Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.(1992)8:155-65及びPearson et al.,Meth.Mol.Biol.(1994)24:307-31に開示されている。NCBI Basic LocaI Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.(1990)215:403-10)は、NBCIなどでアクセス可能であり、blast,blastp,blasm,blastx,tblastn及びtblastxなどの配列分析プログラムと連動して利用してもよい。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でアクセス可能であり、このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認しうる。
【0036】
一具現例において、本願による方法は、前記タンパク質を発現する細胞を用いて行われてもよい。細胞を用いて行われる場合、タンパク質はそれを発現する細胞として提供しうる。
【0037】
本願によるPONTINタンパク質のメチル化の程度も当業界に公知の方法を用いて行われてもよく、例えば、本願の実施例に記載された方法を参考してもよい。
【0038】
本願の方法において使用される試験物質は、CARM1-PONTIN-FOXO3aシグナル伝達システムに作用してブドウ糖が欠乏した状態でPONTINメチル化を調節することが期待される物質で、低分子量化合物、高分子量化合物、化合物の混合物(例えば、天然抽出物または細胞または組織培養物)、またはバイオ医薬品(例えば、タンパク質、抗体、ペプチド、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、アプタマー、RNAzyme及びDNAzyme)、または糖及び脂質などを含むが、これに限定されるものではない。
【0039】
本願による一具現例において、低分子化合物が試験物質として使用されてもよい。前記試験物質は、合成または天然化合物のライブラリーから得られており、そのような化合物のライブラリーを得る方法は、当業界に公知されている。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(UK),Comgenex(USA),Brandon Associates(USA),Microsource(USA)及びSigma-AIdrich(USA)から購入可能であり、天然化合物のライブラリーは、Pan Laboratories(USA)及びMycoSearch(USA)から購入可能である。試験物質は、当業界に公知の様々な組合せライブラリー法によって得ることができ、例えば、生物学的ライブラリー、空間アドレッシブルパラレルパラレル固相または液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、デコンボリューションが要求される合成ライブラリー法、「1-ビーズ1-化合物」ライブラリー法、及び親和性クロマトグラフィー選別を用いる合成ライブラリー法によって得られる。分子ライブラリーの合成方法は、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,6909、1993;Erb et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37,2678,1994;Cho et al.,Science 261,1303,1993;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2061;Gallop et al.,J.Med.Chem.37,1233,1994などに開示されている。例えば、薬物のスクリーニング目的のために化合物は、低分子量の治療効果を有することが使用されてもよい。例えば、重量が400Da、600Daまたは800Daなどの約1000Da内外の化合物が使用されてもよい。目的に応じてそのような化合物は、化合物ライブラリーの一部を構成してもよく、ライブラリーを構成する化合物の数字も数十個から数百万個まで多様である。そのような化合物ライブラリーは、ペプチド、ペプトイド及びその他の環状または線状のオリゴマー化合物、及び鋳型に基づく低分子化合物、例えば、ベンゾジアゼピン、ヒダントイン、バイアリル、カルボサイクル及びポリサイクル化合物(例えば、ナフタレン、フェノチアジン、アクリジン、ステロイドなど)、カーボハイドレート及びアミノ酸誘導体、ジヒドロピリジン、ベンズヒドリル及びヘテロサイクル(例えば、トリアジン、インドール、チアゾリジンなど)を含んでもよいが、これは単なる例示的なものであり、これに限定されるものではない。
【0040】
また、例えば、バイオロジックスがスクリーニングに使用されてもよい。バイオロジックスは、細胞またはバイオ分子を指すもので、バイオ分子とは、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質または生体内及び生体外で細胞システムなどを用いて産生された物質を指すものである。バイオ分子を単独で、または他のバイオ分子または細胞と組み合わせて提供されてもよい。バイオ分子は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体、またはその他の血漿から発見されるタンパク質または生物学的有機物質を含むものである。
【0041】
本願で使用されるタンパク質は、当業界に公知の方法を使用して製造されてもよい。特に遺伝子組換え技術を用いるものである。例えば、前記タンパク質をコーディングする相応の遺伝子を含むプラスミドを原核または真核細胞、例えば昆虫細胞、哺乳類細胞に伝達して過発現させた後、精製して使用してもよい。前記プラスミドは、例えば、本願の例示的な具現例において使用したものと同じ動物細胞株にトランスファクションした後、発現されたタンパク質を精製して使用してもよいが、これに制限されるものではない。この場合、タンパク質は、検出の便宜のために様々な標識物質、例えば、ビオチン、蛍光物質、アセチル化、放射線同位体などの公知の方法または市販のタンパク質標識キットを使用して標識されてもよく、標識された物質に適した検出機器を使用して検出されてもよい。
【0042】
またはスクリーニングタンパク質を暗号化するDNAまたはRNA配列を適当な宿主細胞で発現させてその細胞破砕物を作製するか、または前記スクリーニングタンパク質のmRNAを試験管内で翻訳した後、当業界に公知のタンパク質分離方法によりスクリーニングタンパク質を精製してもよい。通常、細胞残渣(Cell debris)などを除去するために、前記細胞破砕物または試験管内で翻訳した結果物を遠心分離した後、沈殿、透析、各種カラムクロマトグラフィーなどを適用する。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、HPlC、逆相-HPlC、プレップ用SDS-PAGE、親和性カラムなどはカラムクロマトグラフィーの例である。親和性カラムは、例えば、抗スクリーニングタンパク質抗体を用いて作製してもよい。
【0043】
本願による方法においてメチル化測定結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、PONTIN 333及び339番目の残基のメチル化が増加または減少した場合、これを自己捕食を調節する候補物質として選別し、これを様々な疾患の治療剤として開発しうる。
実験結果、試験物質と接触していない対照群と比較して、試験物質の存在下で自己捕食を調節する物質を候補物質として選別する。対照群と比較して約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、または約100%以上、またはこれ以上を増加または減少したものを候補物質として選別してもよい。
【0044】
本願による方法では、PONTINとFOXO3aの結合を検出する段階を追加して、またはPONTINのメチル化の代わりに含んでもよい。タンパク質-タンパク質相互作用は、当業界で公知の様々な方法を用いて測定されてもよい。例えば、細胞内タンパク質の結合/相互作用を確認するイーストツーハイブリッド法、コンポカル顕微鏡法、共同免疫沈降法、表面プラズマ共鳴(SPR)及びスペクトロスコーピ法を含んでもよいが、これに制限されるものではなく、これらの方法に関する比較及び詳細な実験法に関するさらなる参考文献は、Berggard et al.,(2007)「Methods for the detection and analysis of protein-protein interactions」,PROTEOMICS Vol7:pp2833-2842に記載されているものを参考してもよい。
【0045】
本願による様々なスクリーニング方法において使用されるタンパク質の量、細胞の種類及び試験物質の量及び種類などは、使用する具体的な実験方法及び試験物質の種類によって異なり、当業者であれば適切な量を選択できるだろう。
【0046】
本願による様々なスクリーニング方法によってスクリーニングされてもよい自己捕食調節剤は、自己捕食に異常がある場合に変性されたタンパク質の蓄積のために、様々な疾患または自己捕食の過剰活性に関連した疾患の治療または予防に使用されてもよい。
【0047】
例えば、これに制限されるものではないが、神経退行性疾患を含む神経変性疾患、肝疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、代謝疾患、過誤腫症候群、遺伝性筋肉疾患、筋疾患またはがん(Hara t et al Nature 2006,Mizushima n
et al Genes & Dev.2007,Takamura a et al
Genes & Dev.2011,Ratuo p et al J Hepatology 2010などを参照)などの予防または治療に使用できる物質である。例えば、神経変性疾患は、例えば、副腎白質ジストロフィー(Adrenal Leukodystrophy)、アルコール中毒、アレキサンダー病(Alexander’s disease)、アルパー病(Alper’s disease)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症 (ataxiatelangiectasia)、バトン病(Batten disease)、牛海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy)、カナバン病(Canavan disease)、脳性麻痺、コケイン症候群(cockayne syndrome)、皮質基底退化(corticobasal degeneration)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、致死性家族性不眠症(familial fatal insomnia)、前頭葉側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、HIV関連認知症、ケネディ病(Kennedy’s disease)、クラベ病(Krabbe’s disease)、レビー小体型認知症(Lewy body dementia)、神経ボレリア症(neuroborreliosis)、マチャド・ジョセフ病(Machado-Joseph disease)、多系統萎縮症(muItiple system atrophy)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、睡眠発作(narcolepsy)、ニーマンピック病(Niemann Pick disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ペリツェウス・メルツバッハー病(Pelizaeus-Merzbacher disease)、ピック病(Pick’s disease)、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis)、プリオン病(prion disease)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)、レフサム病(Refsum’s disease)、サンドホフ病(Sandhoff disease)、シルダー病(Schilder’s disease)、有毒性貧血続発性の脊髄の亜急性連合変性(subacute
combined degeneration of spinal cord secondary to pernicious anaemia)脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy)、スピールマイヤー-フォークト-ショーグレン-バットン病(Spielmeyer-Vogt-Sjogren-Batten disease)、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病(Steele-Richardson-Olszewski disease)、脊髄梅毒(Tabes dorsalis)、中毒性脳症(toxic encephalopathy)を含んでもよいが、これに制限されるものではない。本願による一具現例において、タンパク質変性に関連した疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、脊髄小脳変性症または球脊髄性筋萎縮症(spinobulbar musclular atrophy)を含む。
【0048】
さらに他の具現例において、本願による方法が使用されてもよい自己免疫疾患は、アロペシア・グレアタ(alopecia greata)、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン疾患、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、腹腔スプルー皮膚炎(celiac sprue-dermatitis)、慢性疲労免疫異常症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、Churg-Strauss症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状皮疹、混合性本態性クリオグロブリン血症、線維筋痛-繊維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑症、IgA神経炎、燃焼性関節炎、扁平苔腺、紅斑性ループス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、タイプIまたは免疫-媒介糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発軟骨炎、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎と皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、スティッフパーソン症候群、全身性紅斑性ループス、紅斑性ループス、高安動脈炎、一時的動脈炎、巨細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症及びウェゲナー肉芽腫症からなる群から選ばれる自己免疫疾患である。
【0049】
さらに他の具現例において、本願による方法が使用されてもよい心血管疾患は、管動脈性心臟病、心筋症、高血圧性心疾患、心不全、肺性心、心律動障害、心臓内膜炎、炎症性心肥大症、心筋炎、心臓弁膜症、脳血管障害、下肢動脈疾患、先天性心疾患及び心臓リウマチからなる群から選ばれる心血管疾患である。
【0050】
さらに他の具現例において、本願による方法が使用されてもよい代謝疾患は、肥満、糖
尿病、異常脂肪血症、脂肪肝、高血圧、動脈硬化、高脂血症及び高インスリン血症からなる群から選ばれる代謝疾患である。
【0051】
さらに他の具現例において、本願による方法が使用されてもよいがんは、下垂体腺腫、神経膠腫、脳腫瘍、上咽頭がん、喉頭がん、胸腺腫、中皮腫、乳がん、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、肝がん、膵臓がん、膵内分泌腫瘍、胆嚢がん、陰茎がん、尿管がん、腎細胞がん、前立腺がん、膀胱がん、非ホジキン性リンパ腫、骨髄異形成症からなる群から選ばれるがんである。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0053】
実験方法及び実験材料
【0054】
PontinのR333、R339を認知する抗体は、該当ペプチドを用いてPeptronで作製した。
【0055】
Generation of Pontinf/fMEFs及び細胞培養
【0056】
Pontin f/f MEFは、Pontin KOマウスを用いて3T3方式で作製した。
【0057】
Pontin f/f MEFにFlag-tagged Pontin WT、RK、RAをレンチウイルスで感染させた後、hygromycinを用いて1週間selectionした。
【0058】
親和度精製によるCARM1結合タンパク質の究明
【0059】
HEK293TにFlag-tagged CARM1を発現させる。Flag M2
affinity gel(100u1 of 50% slurry)(sigma)でCARM1を引いた後、20mM Tris-HCl(pH7.9),15%Glycerol、1mM EDTA,1mM dithiothreito1(DTT),0.2mM PMSF,0.05% Nonidet P40,and 150mM KC1でwashして非特異的結合を低下させる。その後、Flagペプチド(0.2mg/m1)を用いてbeadからCARM1及び複合体を低下させる。その後、SDS-PAGEを介してジェルをつけた後、LC-MS/MSを通じてタンパク質情報を分析する。
【0060】
Bacterial expression and GST pull-down assay
【0061】
GST-tagged constructは、Rosetta E.coIiにtransformationされた後、タンパク質の発現に用いる。その後、glutathione beadで抽出する。His-tagged Pontinの場合、Ml5[pREP4]E.coIiで育てた後、Ni-NTA beadを介して抽出する。In vitro trans1atedタンパク質は、TNT Quick CoupIed Transcription/TransIation system(Promega)の説明書に従って抽出する。抽出したタンパク質とin vitro transIated proteinは、binding buffer(125mM NaC
l、20mM Tris[pH7.5]、10% glycerol、0.1% NP40、and 0.5mM DTT supplemented with protease inhibitors)でGST pulldown実験に用いる。その後、4回のwash後、SDS sampIe buffer処理後にgelをつける。
【0062】
In vitro methylation assay
【0063】
In vitro methylation実験は、ビーズと結合されたHis-PontinまたはGST-Pontinとともに購入したrecombinant CARMl(Active Motif,31347)タンパク質またはHA-CARM1 WT/R169A突然変異タンパク質とともに行う。反応は、PBS bufferで30度3時間行われ、5X sampling bufferを入れて5分間煮沸して終結する。SDS-PAGEに取り付けられた後、PVDF membraneにsemi-dry electroblotterを通じて移す。Rme2a or Pontin-me抗体を通じてimmunoblotを行う。
【0064】
In vitro methylation assay using 3H-SAM
【0065】
GST-Pontinとともに購入したrecombinant CARM1(Active Motif,31347)タンパク質をmethylation buffer(50mM Tris-HC1 pH 8.5, 20mM KC1,10mM MgCl2,10mM-mercaptoethanol,and 250mM sucrose)with 1 μCi of 3H-SAMに入れた後、30℃で一日置く。Reaction buffer除去後、2X sampling bufferを入れた後、10分間沸騰後、SDS-PAGEに取り付けられた後、フィルムを用いて観察する。
【0066】
Immunodot blot assay
【0067】
Non-methylated Pontin peptideとmethylated Pontin peptideをmembraneに点でつける。十分に乾かした後、PBSTに溶かした5% milkで1時間blockingを行う。purified GST-FOXO3a proteins(1μg/m1)を入れたprotein-binding buffer(100mM NaCl,20mM Tris-HCl[pH7.6],10% glycerol,0.1% Tween-20,2% skim milk powder and 1mM DTT)を用いてmembraneに結合させる。その後、GST antibodyを用いたimmunoblotを行う。
【0068】
Lentivirus construction and production
【0069】
3X Flag-Pontin WT、RK and RAはpLVX vector、lentiviral shRNA constructsは、pLKO.1 vectorにクローニングした。Lentiviral constructsは、packaging vectors(psPAX2 and VSV-G)とともにHEK293T細胞にtransfection、48時間後に0.45μm filterを通じて培養液を集める。shRNAシーケンス情報Tip60;
5’-GCAACGCCACTTGACCAAATG-3’,Pontin;
5’-GTGGCGTCATAGTAGAATTA A-3’,FOXO1/3/4;
5’-CTGTGTGCCCTACTTCAAGGA-3’。
【0070】
Autophagic vacuole staining
【0071】
Autophagic vacuolesは、Cyto-ID autophagy detection kit(Enzo Life Sciences,ENZ-51031)を用いて染色した。細胞は、coverslipsに2x10^4個とともにCyto-ID green detection reagent(1:500)とHoechst 33342(1:1000)を混合したメディアを入れる。37℃で30min置いた後、PBSでwash後、2% paraformaldehyde/PBSを入れた後、常温で10分間固定。その後、confocal microscope(Zeiss,LSM700)でイメージ撮影。
【0072】
Luciferase assay
【0073】
MEFsに6X canonical FOXO response eIement(6x DBE-luciferase)とともにtransfectionして行う。Luciferase activityは、transfection後、36時間後に測定し、beta-galactosidase発現によって定量した。
【0074】
RNA-seq analysis
【0075】
RNA-seq librariesは、TruSeq RNA sample prep kit v2(Illumina)方式で作製した。RNA-seq librariesは、paired-end sequence方式でIllumina HiSeq 4000(Macrogen)を介してシーケンシングされる。RNA-seq dataは、Tophat packageを介してmouse genome(mm9)にmappingする。Differential analysisは、EdgeR packageを通じて分析される。Differentially regulated genesは、false discovery rate(FDR)cut-off 1x10^-5。Hierarchical clustering分析は、あらゆる状況における遺伝子発現数値とする。Ward’s criterion for genes with 1-(correlation coefficient)が distance measureに使用される。 Clustering heatmapは、z-scorを基準として描く。Functional enrichment analysis of GOBPs and KEGG pathwaysは、DAVID softwareを介して行われ、Gene set enrichment analysisは、GSEA (version 3.0)softwareを用いる。The phenotype label for GSEA was set WT_normal:WT_Glc starv.:RA_normal:RA_G1c starv.=1:3:1:1.7,then Pearson corre1ation coefficient was calculated per gene for ranking.Gene setsは、Molecular Signature Database(MSigDB)v6.2から得られる。
【0076】
ChIP-seq analysis
【0077】
ChIP-seq librariesは、TruSeq DNA Sample prep Kit方式で作製した。ChIP-seq librariesは、paired-end方式でIllumina pIatform(MACROGEN)でシーケンスされる。ChIP-seq readsは、mouse reference genome(GRCm38/mm10)にBowtie2を用いてmappingする。methylated Pontin peakの場合、Homer(v4.7.2)を介し
て作製する。我々が作製したPontinメチル化抗体を使用した。
【0078】
実施例1.PontinのR333、R339アミノ酸残基がCARM1により333と339残基のアルギニンがメチル化されることを究明
【0079】
ブドウ糖欠乏状態で自己捕食関連転写調節を行うことが知られているCARM1の結合パートナーを探すために、tandem affinity purificationを介してCARM1と結合するタンパク質を分離した。興味深いことに、LC-MS/MSを通じてPontinというクロマチン再配置因子が抽出された(図1a)。PontinとCARM1が実際に結合するかどうかを確認するため、前記で抽出したCARM1複合体eluateにPontinを認知する抗体で確認した(図1b)。PontinとCARM1が直接的に結合するかどうがを確認するために、Gglutathione
S-transferase(GST)を付着したCARM1とin vitroで抽出したPontinタンパク質との結合をGST pulldown assayを通じて確認した。Pontinと複合体をなすことがよく知られているReptinも同様に確認した。実験結果、CARM1は、Reptinと結合せずにPontinと選択的に結合した(図1c)。
【0080】
次に、CARM1 WTと酵素活性が壊れたR169A突然変異を用いて、PontinがCARM1によってアルギニンメチル化できるかをin vitro methylation assayを通じて確認した。単にCARM1 WTを入れたときのみ、Pontinがin vitroメチル化されることを確認した(図1d)。これにより、CARM1の酵素活性がPontinのアルギニンメチル化にとって重要であることが確認された。次に、CARM1によってメチル化されるPontinがアミノ酸残基を探すために、インターネット上でオープンされたメチル化予測プログラムを使用し、予測されたアルギニン残基をアラニンに置き換えた突然変異を作製した。実験の結果、アルギニンR333とR339をそれぞれ一つずつアラニンに置き換えた突然変異においてメチル化が減少していることを確認し、2つを同時に突然変異させたとき、Pontinのメチル化が完全に消失することを確認した(図1e)。放射線同位元素H-S-Adenosyl methionine(SAM)を用いてPontin WTと様々な突然変異においてin vitroメチル化実験を行った場合にもPontinのWTは、メチル化される反面、333及び339番目のアルギニンをアラニンやリジンに突然変異する場合、メチル化されないことが確認された(図1f)。実際にPontinの構造を確認したとき、R333とR339は近い位置に存在し(図1g)、様々な種においても2つのアルギニンだけでなく周辺のアミノ酸残基も種間によく保存されていることを確認した(図1h)。
【0081】
さらなる研究のために、Pontinのアルギニンメチル化を認知できる抗体を作製した。Dot blotを通じて我々が作製したPontinメチル化抗体がよく作動することを確認し(図1i)、in vitroメチル化実験によっても抗体の特異性が確認された(図1j)。R333/339AだけでなくR333/339K突然変異においても同様に抗体がよく作動することを確認した(図1k)。CARM1のWTと酵素活性が壊れた突然変異を用いてin vitroメチル化実験を行ったとき、WTによってのみPontinのメチル化が増加することを直接作製した抗体で再確認した(図11)。Pontinのアルギニンメチル化が他のアルギニンメチル化酵素においても起こることが報告されたので、Pontinメチル化抗体がCARM1でない他のアルギニンメチル化酵素によって起こるメチル化を捕捉するかを確認した。実験の結果、Pontinの場合、CARM1/PRMT4だけでなくPRMT5、PRMT6とも結合できたが(結果示さず)、我々が作製したPontinメチル化抗体は、CARM1によるメチル化のみ認知することを確認した。まとめると、我々は、CARM1によってPontinのアルギニン333、339番残基がメチル化されることをin vivo、in vitro実験を通じて証明した。
【0082】
実施例2.CARM1によるPontinのメチル化の機序の究明:ブドウ糖欠乏状態で核内で発生
【0083】
CARM1のタンパク質がブドウ糖欠乏状態で増加することが知られていたので、PontinとCARM1の結合が欠乏状態で増加するかを確認した。CARM1とPontinの結合がブドウ糖欠乏状態で増加することが確認した(図2a)。次に、我々はこのように増加した結合によってPontinがメチル化が増加するかを確認した。我々はブドウ糖欠乏状態でPontinのメチル化が増加する反面、CARM1特異的阻害剤であるEZM2302(CAS No.:1628830-21-6)とEPZ025654(CAS No:1888328-89-9)を処理したとき、Pontinのメチル化があまり増加しないことが確認された(図2b)。CARM1 WT MEFとCARM1 knockoutMEF細胞を用いて観察したとき、CARM1が存在する細胞でのみブドウ糖欠乏特異的なPontinのメチル化の増加を観察した(図2c)。また、CARM1 knockout MEFにCARM1 WTと酵素活性突然変異を発現させたとき、CARM1 WTでのみPontinのメチル化が回復することを確認した(図2d)。これにより、Pontinのメチル化がCARM1依存的であることを再び確認した。以前の報告によると、CARM1は核内で安定化されているので、我々はcellular fractionation実験(図2e)とimmunocytochemistry analysis(図2f)を用いてPontinのメチル化を確認したところ、ブドウ糖欠乏特異的核内で増加することを確認した。
【0084】
PontinとReptinは、核内でhetero-dodecamer複合体をなすことが知られているので、Pontinのメチル化が複合体に及ぼす影響を確認した。In vitroメチル化実験後、invitro binding assayを行った場合、PontinとReptinの複合体の形成にPontinのメチル化が影響を及ぼしていないことが分かった(結果示さず)。また、アルギニン突然変異も複合体の形成に影響を及ぼさなかった(結果示さず)。まとめると、我々はPontinのメチル化がCARM1のReptinとの結合に影響を及ぼしていないことをを確認した。
【0085】
実施例3.Pontinのメチル化がブドウ糖欠乏依存的自己捕食の増加に重要であることを究明
【0086】
ブドウ糖欠乏状態で増加するPontinのメチル化の役割を調べるために、我々は Flag-tagged Pontin WTとアルギニン突然変異(R333/339K、R333/339A)を発現させたPontin f/f MEFを作製した(図3a)。このように作製された細胞は、Creウイルスに感染させると、元の細胞のDNAから発現されたendogenous Pontinが除去され、細胞内に我々が発現させたFlag-tagged Pontinのみが存在することになる。実際に我々が作製した細胞を確認すると、cre処理後にendogeneous Pontinは消失することを確認し、発現させたPontin WT、RK、RAがendogeneous Pontinの発現量だけ発現することを確認した(図3b)。このように作製された細胞を用いてさらなる実験を行った。Pontinのメチル化は、Pontin WT
MEFでは観察されたが、RK、RA MEFでは観察されなかった(図3c)。ブドウ糖欠乏だけでなく、Rapamycin処理やアミノ酸欠乏状態でもPontinのメチル化が増加した(結果示さず)。我々は以前にPontin KO MEFで自己捕食が壊れていることをGFP-LC3 puncta assayを通じて確認した(結果示さず)。Pontinのメチル化による自己捕食の変化を確認するために、我々が作製
した細胞でGFP-LC3 puncta実験を行った。実験の結果、PontinWT
MEFでは、GFP-LC3 punctaがブドウ糖欠乏が特異的に増加することが示されたが、Pontin RA MEFでは変化しないことが分かった(図3d)。Rapamycin処理やアミノ酸欠乏状態でも同じ結果が得られた(結果示さず)。また、western blotを介して自己捕食の活性度の尺度の一つであるLC3-IIのlipidation比を確認したとき、Pontin WT MEFではLC-3 IIが増加したが、Pontin Rk,RA MEFでは増加しないことを確認した(図3e)。
【0087】
次に、我々は自己捕食fluxを確認するために自己捕食のmaturationを妨げる物質であるBafilomycin AlやChloroquineを処理した。GFP-LC3 puncta実験を通じてPontin WT MEFの場合、自己捕食のfluxを遮断したときにGFP-LC3 punctaが蓄積することが分かったが、Pontin RA MEFでは蓄積しないことを確認した(図3f)。Immunoblot実験によってもBafilomycin AlやChloroquineを処理した場合、LC3-IIはWTでは増加するが、RAでは大きく増加しないことが分かった(図3g)。さらに自己捕食vacuoleを染色するCyto-IDを利用したときにも類似した結果が得られた(図3h)。自己捕食の進行過程でどの段階が壊れているかを確認するためにmCherry-GFP-LC3リポーターを利用した実験を行った。自己捕食過程中、オートパゴソームは、リソソームと結合しつつpHが低くなるが、このとき、GFPの緑色シグナルが弱くなる。一方、mCherryの赤色は、pHの影響を受けないため、オートパゴソームの場合、緑色と赤色が合わさった黄色い光を帯びるのに対し、リソソームと結合したオートリソソームは、赤い光を帯びることになる。これを用いて実験した場合、Pontin RA MEFでは、ブドウ糖欠乏状態でオートファゴソームとオートリソソームの比率が変わらず、全体的な個数がWT MEFに比べて減少することが分かった(図3i)。このデータを通じて我々は、CARM1によるPontinのメチル化が、自己捕食そのものの増加において重要であることが分かった。
【0088】
Pontinのメチル化による自己捕食の調節が普遍的な自己捕食調節機序であるかを確認するために、MEF細胞だけでなくHepG2、HeLaなどのヒト細胞でも確認した。ブドウ糖欠乏状態において、両方の細胞において、CARM1の核内での増加とPontinのメチル化の増加が確認された(結果示さず)。HepG2、HeLaでもendogenous Pontinをknockdownさせた後、Pontin WTとRAを発現させた。我々はこれらの細胞でもPontin WT細胞においてBafilomycin Al依存的にLC3-IIが増加することを確認し、Pontin RA細胞ではそうではないことを確認した。我々はこのデータを通じてPontinのメチル化による自己捕食の調節が様々な細胞でも共通していることを確認した。
【0089】
細胞において栄養分代謝の恒常性の維持は、細胞の健康と機能にとって重要である。自己捕食は、栄養分不足状態で代表的な防御機序の一つで、栄養分が不足すると自己捕食を通じて栄養分が自ら供給されて生存に役立つ。Pontinのメチル化による細胞生存を確認するために、Pontin WTとRK MEFの細胞成長率を確認した。Pontin WT MEFの場合、ブドウ糖欠乏15~18時間から成長が増加できず、24時間後から早く死に始める。しかし、Pontin RK MEFの場合、ブドウ糖欠乏12時間まではWT MEFと大きな差異がないが、12時間後に早く死に始めた(結果示さず)。次に、我々は細胞の生存率を確認した。成長率と同様に、Pontin WT MEFの場合、ブドウ糖欠乏24時間後に細胞生存率が減少することが分かった。しかし、Pontin RK MEFの場合、ブドウ糖欠乏の18時間後から生存率が減少した(結果示さず)。まとめると、我々の結果は、Pontinのメチル化によってブドウ糖欠乏状態で細胞の成長と生存に影響を及ぼし、持続する欠乏状態で細胞の生存において自己捕食の転写調節の重要性を示す。
【0090】
実施例4.多数の自己捕食とリソソーム遺伝子がPontinのメチル化によって調節されることを究明
【0091】
Pontinのメチル化がブドウ糖欠乏状態において核内で増加するので、我々はPontinのメチル化が自己捕食遺伝子調節にとって重要であると仮定した。どの遺伝子がPontinメチル化によって調節されるかを確認するために、我々はPontin WT、RA MEFにブドウ糖欠乏の有無に応じてRNA-sequencingを行った(図4a)。PCAを通じて我々はPontin WT、RA MEFが正常な状況では類似した遺伝子発現パターンを有するが、ブドウ糖欠乏状態では、全体的な遺伝子発現パターンが異なることを確認した(結果示さず)。我々は、DEGを6つの遺伝子群に分けたヒートマップを得た(図4b)。遺伝子群を用いてGene ontologyとpathwayを察し見るとき、遺伝子群1番で自己捕食とリソソーム関連遺伝子が非常に多く出てきた(図4c)。実際、自己捕食とリソソームに影響を及ぼす遺伝子群を探すために、我々はGene Set Enrichmnet Analysis(GSEA)を行った。我々は、結果を通じて自己捕食の調節とリソソームの調節、及びファゴフォアの形成に関連した遺伝子群と遺伝子群の1番が相関関係が高いことを見出した(図4d)。
【0092】
次に、我々はメチル化されたPontinが自己捕食の過程でどのように重要な役割を果たすかを察し見た。自己捕食の調節を中心にRNA-sequencingデータを分析した。興味深いことに、自己捕食の開始とパゴフォアnucleationと膨張、及びcargo recruitment/traffickingに関連した遺伝子がPontin RA MEFで低いことを確認した(図4e)。Quantitative
RT-PCRとimmunoblotを通じて実際にこのような遺伝子とタンパク質の発現がPontinメチル化依存的であることを確認した(図4f,g)。また、HepG2とHeLaなどの他の細胞でも同じ結果が得られており、Rapamycin処理やアミノ酸欠乏状態でも類似した結果が得られた。まとめると、我々は栄養素欠乏状態で増加するPontinのメチル化が自己捕食とリソソーム関連遺伝子を活性化させるのに重要であり、このような調節が自己捕食の初期段階から影響を及ぼすことがあるという事実を明らかにした
【0093】
実施例5.メチル化されたPontinとFOXO3aの結合
【0094】
Pontinの場合、様々な転写因子のコアクチベーターとして知られているので、我々はPontinのメチル化が特定の転写因子との結合に影響を及ぼすのではないかと考えた。Pontinメチル化依存的に結合する転写因子を探すために、我々はRNA-seqから得られたターゲット遺伝子を用いて転写因子スクリーニングを行った。これにより、我々は自己捕食に関連したくつかの候補転写因子を得ることができた(図5a)。さらに我々はPontinメチル化抗体を用いてChIP-seqを行った。Pontinのメチル化が結合するクロマチンのモチーフ分析を通じて、我々はFOXO3a結合部分が高いことを確認した(図5b)。我々は、候補転写因子が実際にPontinと結合するかを確認するために、ブドウ糖欠乏状態で結合するかどうかを確認した。実験の結果、PontinがFOXO3aとは結合するが、他の候補転写因子とは結合しないことを確認した(図5c)。PontinとFOXO3aの結合はメチル化依存的であり、Pontin WTは結合できるが、Pontin RA、RKは、結合できないことを確認した(図5d)。PontinとFOXO3aの結合においてメチル化が重要であるかどうかをより確実にするために、我々はCARM1による2つのタンパク質の結合を確認した。CARM1 KO MEFにおいてPontinとFOXO3aが結合できないことを確認し(図5e,f)、CARM1特異的なinhibitorを処理したとき、PontinとFOXO3aの結合が減少することを確認した(図5g)。これにより、PontinとFOXO3aの結合において、CARM1によるメチル化が重要であることが分かった。
【0095】
次に、我々はPontinとFOXO3aの直接的な結合を確認するために、in vitro GST pulldown実験を行った。In vitroメチル化を通じてPontinをメチル化させた後、我々はGST-FOXO3aとの結合を確認した。実験の結果、FOXO3aとメチル化されたPontinは結合するのに対し、メチル化させないPontinは、結合できないことが確認した(図5h)。さらに、Immunodot blot実験を通じてFOXO3aがメチル化されたPontinペプチドと結合するのに対し、メチル化されていないPontinペプチドには結合しないことを確認した(図5i)。FOXO3aのどの位置にPontinが結合するかを調べるために、我々はFOXO3aの様々な突然変異を用いてPontinとの結合を確認した。我々は、FOXO3aの418-673アミノ酸部分にPontinが結合することを確認し、さらなる実験を通じて、FOXO3aのCR3 domainである610-650アミノ酸部分でPontinとの結合が起こることを見出した。
【0096】
アルギニンメチル化を認知できるアルギニンメチル化認知ドメインの場合、aromatic残基によってメチル化が認知されることが報告されている。我々はFOXO3aのメチル化認知残基を見出すために、一番目にCR3 domainに存在するaromatic残基を1つずつ突然変異させた。実験の結果、FOXO3aのF640とF642をロイシンでそれぞれ突然変異させた場合、Pontinとの結合が減少することを確認し、2つのフェニルアラニンをすべてロイシンに置き換えた場合、Pontinとの結合が完全に消失することを確認した(図5j)。また、in vitro GST pulldownを通じてFOXO3a F640/6421突然変異がメチル化されたPontinと結合しないことを確認した(図5k)。これにより、我々はFOXO3aのF640とF642がPontinのメチル化認知に重要であると考えた。
【0097】
一方、我々はFOXO3aとPontinの構造を通じてメチル化認知構造をモデリングを通じて予測した。FOXO3aは、hydrophobic残基であるM624、I627、I628がPontinのメチル化を認知できるものと予想された。これを確認するために、我々は、前記3つの残基をすべて突然変異させたFOXO3a 3A突然変異とWTを用いてPontinとの結合を確認した。GST pulldown実験を通じて、我々はFOXO3a 3A突然変異の場合、Pontinと結合しないことを確認し、細胞実験によっても同じ結果を確認した。これによって我々は、FOXO3aのM624、I627、I628もPontinのメチル化認知において重要であると考えた。
【0098】
実施例6.メチル化PontinとTip60がFOXO3aターゲット遺伝子をH4
acetylationを通じて活性化させることを究明
【0099】
メチル化されたPontinがFOXO3aのコアクチベーターとして機能することを確認するために、FOXO結合位置を有するluciferase reporterを用いてluciferase実験を行った。Pontin WTでは、ブドウ糖欠乏状態でluciferase活性が増加したが、Pontin RK、RA突然変異では増加しなかった(図6a)。また、FOXO3a F640/642Lや3A突然変異では、Pontinによるさらなる転写活性の増加が確認されなかった(図6b)。メチル化されたPontinがどのようなFOXO3aターゲット遺伝子を調節するかを確認するために、Pontinメチル化ChIP-seqデータを察し見た。我々はメチル化されたPontinが転写開始周辺部だけでなく、H3K4melとH3K27Acが高いエンハンサー部分にも結合できることを確認した(図6c)。興味深いことに、メチル化Po
ntin peakのうち、FOXO3aモチーフを持っているものの36%がTSSから遠く離れていた。代表的な自己捕食遺伝子であるMapllc3bの遺伝子付近でPontinメチル化ChIP-seq peakを察し見たとき、転写開始部位だけでなく遠い部分でも結合することを確認した(図6d)。我々はChIPを介してブドウ糖欠乏状態でPontinが遺伝子転写開始部分の近く(-1.2kb)だけでなく、遠い部分(-11.3kb、-5kb)まで結合できることを確認した(結果示さず)。しかし、Pontin RA MEFでは、Pontinのrecruitmentが壊れることを確認した(結果示さず)。これらのデータを通じて、我々はPontinのメチル化によるFOXO3aとの結合を通じてFOXO3aのコアクチベーターとして作動できることを示した。
【0100】
次に、我々はPontinの結合がどのようにFOXO3aターゲット遺伝子の転写活性を高めることができるかを察し見た。Pontinは、よく知られているTip60の複合体の1つの要素であり、Tip60複合体の場合、ヒストンアセチル化を通じて転写活性に重要な役割を果たす。これを確認するために、我々はFOXO3a結合位置にPontinとともにTip60とH4アセチル化が変化するかを確認した。ChIP実験を通じて、我々はTip60とともにH4アセチル化がブドウ糖欠乏特異的に増加することを確認した(図6e)。興味深いことに、Tip60とH4アセチル化がCARM1 KO MEFではrecruitされないことによって、Pontinのメチル化状態が依存的であることが分かった(図6e)。FOXO3aとTip60の結合は、Pontinが存在するときに増加することが確認できたが(図6f)、PontinとTip60の結合は、メチル化の有無に関連性がなかった(図6g)。まとめると、我々はメチル化されたPontinがTip60をFOXO3a位置に移して自己捕食関連遺伝子のcoactivatorとして作動できることを明らかにした。
【0101】
実施例7.Pontinのメチル化依存的な自己捕食遺伝子の活性においてTip60が重要であることを究明
【0102】
自己捕食遺伝子の調節においてTip60の重要性を確認するために、shRNAを用いたTip60 knockdown MEFを作製した。Bafilomycin A1を処理して自己捕食fluxを察し見た場合、Tip60がなければ、LC3-IIの増加はよく観察されなかった(図7a)。これにより、Tip60が自己捕食の増加にも関与していることを確認した。次に、qRT-PCRを通じて前述したPontinメチル化依存的なターゲット遺伝子がTip60がない場合にどのように変化するかを確認した。ブドウ糖欠乏特異的に転写が増加するMapllc3b、Sirt1、Bnip3、Ctnsは、WTでよく上がるが、Tip60のない場合には増加できないことを確認した(図7b)。一方、Pontinのメチル化に依存的でない自己捕食遺伝子の場合、Tip60とも関連性がなかった(図7b)。これにより、我々はPontinのメチル化とTip60が関連していることをもう一度確認した。次に、我々はChIP実験を通じて、Tip60がない場合にFOXO3aとPontin、及びH4アセチル化がどのように変化するかを確認した。Tip60がない場合、FOXO3aとメチル化されたPontinはよくrecruitされるが、H4アセチルの増加が壊れることをChIP実験を通じて確認した(図7c)。
【0103】
Tip60をknockdownするか、またはPontinのメチル化を壊したとき、FOXOターゲット遺伝子の増加が同様に壊れることが分かり、2つを同時に壊したとき、さらなる減少は見られなかった(図7d)。これにより、我々はTip60と伴うH4アセチル化によるFOXOターゲット遺伝子調節がPontinのメチル化によって起こることが分かった。また、immunoblotによるLC3-IIの増加も類似した結果を示した(図7e)。まとめると、Pontinのメチル化がTip60のFOXO3a response element結合に重要であり、これによるH4アセチル化が自己捕食遺伝子の活性において重要であることを明らかにした(図7f)。
【0104】
実施例8.CARM1-Pontin-FOXO3a軸が自己捕食遺伝子のエンハンサーの活性に役割を果たすことを究明
【0105】
以前の研究において、我々はAMPKによるFOXO3aリン酸化がSkp2抑制に重要であることを明らかにした。Pontinのメチル化によってSkp2が調節可能であるかを確認したが、Skp2 mRNAの減少に影響がなく、Skp2 promoterにもPontinとH4アセチル化がrecruitされなかった。また、Pontinのメチル化が壊れてもCARM1の安定化には影響がないことが分かった。我々は、以前の研究で増加したCARM1がTFEBと結合してH3R17メチル化を増加させることを明らかにした。Map1lc3bの場合、2つの転写因子TFEBとFOXO3aによって調節されるため、CARM1-Pontin-FOXO3a軸とTFEB-CARM1軸がどのように作動するかを察し見た。
【0106】
CARM1はFOXO3a結合部分とTFEB結合部分の両方に関与しているので、我々はCARM1が両方の部分に結合できるかを確認した。ChIPを通じて察し見ると、TFEB結合部位であるCLEARモチーフではCARM1が結合し、H3R17me2の増加が確認されたが、FOXO3a結合部位ではCARM1の結合は確認されなかった。我々はFOXO結合部位ではメチル化されたPontinを始めとしたTip60とH4アセチル化がよく増加することを確認した。しかし、Pontin RK、RA突然変異では、Pontinを始めとしたTip60、H4アセチル化の増加が確認されなかった(図8a)。一方、TFEB結合部位では、FOXO3a、Pontin、Tip60がすべてrecruitされておらず、Pontinのメチル化の有無にかかわらず、H3R17me2が増加していることを確認した(図8b)。まとめると、CARM1-Pontin-FOXO3a軸とTFEB-CARM1軸が同じ遺伝子を調節するが、それぞれの結合部位で独立して作動することを確認した。
【0107】
FOXO3aの場合、エンハンサーでも作動できることが知られていたので、Pontin-Tip60が結合する部分がエンハンサーとして作動できるかを確認した。Map1lc3bの-11.3kbと-5kbに結合するPontin-Tip60がMap1lc3bのエンハンサーとして作動できるかを確認するために、3C実験を行った。3C実験を通じてMap1lc3bの-11.3kbと-5kb部分がプロモーター部分に近接していることを確認した(図8c)。次に、我々はエンハンサーの活性の有無を確認するために、eRNAをqRT-PCRを通じて確認した(図8d)。Pontin WT
MEFではブドウ糖欠乏特異的にeRNAが増加することが確認されたが、Pontin RA MEFでは増加しないことが観察された。まとめると、CARM1-Pontin-FOXO3a軸がH4アセチル化を通じてエンハンサーで作動できることを明らかにした。
【0108】
以上、本願の例示的な実施例について詳細に説明したが、本願の権利範囲は、これに限定されるものではなく、以下の請求範囲で定義している本願の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本願の権利範囲に属する。
【0109】
本発明で使用されるすべての技術用語は、特に定義されない限り、本発明の関連分野で通常の当業者が一般的に理解するのと同じ意味で使用される。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は、本発明に導入される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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