(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】地盤削孔装置を用いた削孔方法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E02D9/00
(21)【出願番号】P 2024048830
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152642
【氏名又は名称】株式会社日東テクノ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】島野 嵐
(72)【発明者】
【氏名】上田 守
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将大
(72)【発明者】
【氏名】細野 洋祐
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-166594(JP,A)
【文献】特開2006-219941(JP,A)
【文献】特開2005-299347(JP,A)
【文献】特開2003-155747(JP,A)
【文献】特開2020-190104(JP,A)
【文献】特開昭60-140172(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113202412(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/00
E21B 10/00
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撤去対象の柱状の地中埋設物と周囲の地盤との縁切りを行うためのケーシングパイプと、前記ケーシングパイプの先端部に設けられたプラスチックビットと、を有しており、
前記プラスチックビットは、当該プラスチックビットを貫くように形成されたガイドホールであって、撤去対象の前記地中埋設物を前記ケーシングパイプ内にガイドするガイドホールを具備しており、
前記ガイドホールは、前記ケーシングパイプとほぼ同軸になるように形成されており、
前記ガイドホールの径は、前記地中埋設物の外径よりも僅かに大きく設定されている、
ことを特徴とする地盤削孔装置を用いた削孔方法であって、
ケーシングパイプの先端部にプラスチックビットを備えた地盤削孔装置を、撤去対象の地中埋設物に向かって前進させてかぶせ掘りを行い、
前記地盤削孔装置によるかぶせ掘りの過程で、
前記地中埋設物が前記プラスチックビットのガイドホールを介して
前記ケーシングパイプに入り込み、
その際、前記ガイドホールが、前記地中埋設物を
前記ケーシングパイプのほぼ中心に位置決めしつつ前記ケーシングパイプ内に
ガイドする、
ことを特徴とする削孔方法。
【請求項2】
撤去対象の柱状の地中埋設物と周囲の地盤との縁切りを行うためのケーシングパイプと、前記ケーシングパイプの先端部に設けられたプラスチックビットと、を有しており、
前記プラスチックビットは、当該プラスチックビットを貫くように形成されたガイドホールであって、撤去対象の前記地中埋設物を前記ケーシングパイプ内にガイドするガイドホールを具備しており、
前記ガイドホールは、前記ケーシングパイプとほぼ同軸になるように形成されており、
前記ガイドホールの径は、前記地中埋設物の外径よりも僅かに大きく設定されている、
ことを特徴とする地盤削孔装置を用いた地中埋設物の撤去方法であって、
ケーシングパイプの先端部にプラスチックビットを備えた地盤削孔装置を、撤去対象の地中埋設物に向かって前進させてかぶせ掘りを行い、
前記地盤削孔装置によるかぶせ掘りの過程で、
前記地中埋設物が前記プラスチックビットのガイドホールを介して
前記ケーシングパイプに入り込み、
その際、前記ガイドホールが、前記地中埋設物を
前記ケーシングパイプのほぼ中心に位置決めしつつ前記ケーシングパイプ内に
ガイドし、
前記ケーシングパイプ内の前記地中埋設物を引き抜く、
ことを特徴とする
柱状の地中埋設物の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設管や杭などの地中埋設物の撤去に利用可能な地盤削孔装置、削孔方法、地中埋設物の撤去方法、プラスチックビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良の施工時において、改良効果の確認や改良品質の確認、周辺地盤の影響確認などを目的とし、計測管を鉛直・水平・斜めに埋設する。そして、埋設した計測管に挿入・貼り付け等を行ったセンサーや計器を用いて、音・光・圧力・温度などを機械的・電磁気的・熱的・音響的・化学的な性質や物理量を検知・検出・測定し評価する。一般的に、計測管は10mm程度~200mm程度の径を有しており、計測管の材質は鉄(スチール)や銅、ステンレス、アルミ、硬質ポリ塩化ビニル等である。
【0003】
上記のような計測管等からなる地中埋設物は、計測終了後にそのまま地中に残置すると次工程の障害(シールドマシンの通過、立坑の構築、構造物の築造などの妨げ)となる場合があるので、計測管を抜管するなどして当該地中埋設物を撤去する必要がある。
【0004】
例えば埋設管(埋設された計測管)を抜管する際、従来では、埋設管を収容可能な径のケーシングパイプ(ボーリングをしている間に、孔壁が崩れないように挿入されるパイプ)の先端にプラスチックビットを用いて埋設管を損傷させないようにしていた。また、ケーシングパイプ先端のビットに鉄製の材質のものを使用する場合もあった。
【0005】
しかしながら、ケーシングパイプ先端に鉄製ビットを用いる場合において、
図9に示すように撤去対象の埋設管が地中で曲がっている場合には、先端の鉄製ビットで埋設管を切断したり、ケーシングパイプ内に切削したものを巻き込み除去に時間が掛かり、場合によっては回収できず地中に残置するなどの問題があった。
【0006】
また、ケーシングパイプ先端にプラスチックビットを用いる場合において、埋設管が地中で曲がっている場合は途中で掘削が出来なくなったり再削孔を余儀なくされるなどして効率が悪かった。
【0007】
なお、埋設管を撤去する場合に限らず、杭などを撤去する場合でも上記と同様の問題が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、地盤内に埋設された管や杭などの地中埋設物を、途中で切断したり残置することなく、また再削孔などをせずに撤去・縁切りを可能とする地盤削孔装置、削孔方法、地中埋設物の撤去方法、プラスチックビットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、地中埋設物の撤去に用いる地盤削孔装置であって、
撤去対象の地中埋設物と周囲の地盤との縁切りを行うためのケーシングパイプと、
前記ケーシングパイプの先端部に設けられたプラスチックビットと、を有しており、
前記プラスチックビットは、撤去対象の前記地中埋設物をセンタリングしつつ前記ケーシングパイプ内にガイドするガイドホールを具備する地盤削孔装置によって達成される。
【0010】
上記地盤削孔装置において、プラスチックビットのガイドホールは、前記地中埋設物とほぼ同程度の径を有している。
【0011】
また、上記地盤削孔装置のプラスチックビットは、
前記ケーシングパイプの先端部の内側に部分的に埋め込むように設けられ、かつ、
前記ケーシングパイプの先端と前記プラスチックビットの先端との間に段差が生じるように、または、前記プラスチックビットが前記ケーシングパイプの先端を覆うように、設けられている。
【0012】
また、上記地盤削孔装置のプラスチックビットは、
削孔水を吐出するための吐出口と、
前記ケーシングパイプ内を介して送水された削孔水を前記吐出口へガイドするための削孔水ガイド部と、
を更に具備している。
【0013】
また、前述した目的は、上記地盤削孔装置を用いた削孔方法であって、
ケーシングパイプの先端部にプラスチックビットを備えた地盤削孔装置を、撤去対象の地中埋設物に向かって前進させてかぶせ掘りを行い、
前記地盤削孔装置によるかぶせ掘りの過程で、前記プラスチックビットのガイドホールを介して、前記地中埋設物をセンタリングしつつ前記ケーシングパイプ内に取り込む、
ことによって達成される。
【0014】
また、前述した目的は、上記地盤削孔装置を用いた地中埋設物の撤去方法であって、
ケーシングパイプの先端部にプラスチックビットを備えた地盤削孔装置を、撤去対象の地中埋設物に向かって前進させてかぶせ掘りを行い、
前記地盤削孔装置によるかぶせ掘りの過程で、前記プラスチックビットのガイドホールを介して、前記地中埋設物をセンタリングしつつ前記ケーシングパイプ内に収容し、
前記ケーシングパイプ内の前記地中埋設物を引き抜く、
ことによって達成される。
【0015】
また、前述した目的は、上記地盤削孔装置で用いるプラスチックビットであって、
プラスチックビットをケーシングパイプに装着した状態で、当該ケーシングパイプの先端部の内側に埋没する埋没部と、
前記埋没部と一体的に形成されており、プラスチックビットをケーシングパイプに装着した状態で、当該ケーシングパイプの先端から突き出る突出部と、
前記埋没部と前記突出部を貫くように形成され、撤去対象の地中埋設物をセンタリングしつつ前記ケーシングパイプ内にガイドするガイドホールと、
を有するプラスチックビットによって達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地盤削孔装置は、ケーシングパイプの先端部にプラスチックビットを備えている。したがって、鉄製ビットのように埋設管を切断したり損傷等を与える恐れが無い。
また、本発明において、プラスチックビットは、地盤削孔装置の削孔過程で、撤去対象の地中埋設物(例えば埋設管や杭など)をセンタリングしつつケーシングパイプ内にガイドする機能(ガイドホール)を有している。これにより、撤去対象の地中埋設物が地中で曲がっている場合でも、地盤削孔装置が当該埋設物の曲がり具合に追従しながら前進できるので、かぶせ掘りの途中で削孔不能に陥ることがない。
したがって、本発明によれば、埋設管や杭などの地中埋設物を、切断や残置をすることなく、また再削孔などをせず撤去・縁切りが可能となる。
【0017】
また、本発明の地盤削孔装置において、プラスチックビットのガイドホールは、埋設管や杭などの地中埋設物とほぼ同程度の径(地中埋設物の径よりも僅かに大きい径)を有するように形成されている。
これにより、撤去対象の地中埋設物は、ケーシングパイプへの入口で確実にセンタリングされてケーシングパイプ内にガイドされるので、かぶせ掘り時の地中埋設物の損傷等を確実に回避できる。
【0018】
また、本発明の地盤削孔装置では、プラスチックビットは、ケーシングパイプの先端部の内側に部分的に埋没するように設けられており、地盤削孔装置の先端部(プラスチックビットを装着したケーシングパイプの先端部)が二重管の様な構造となっている。さらに、ケーシングパイプの先端とプラスチックビットの先端との間に段差が生じるように、または、プラスチックビットがケーシングパイプの先端を覆うように、当該プラスチックビットが設けられている。
上記のような構造を具備するようにプラスチックビットをケーシングパイプ先端に設けることで、かぶせ掘りの過程で、ケーシングパイプ先端が直接地中埋設物に接することが無いので、かぶせ掘り時の地中埋設物の損傷等を確実に回避できる。
【0019】
また、本発明の地盤削孔装置において、プラスチックビットは、削孔水を吐出する吐出口と、ケーシングパイプ内を介して送水された削孔水を吐出口へガイドする削孔水ガイド部を更に具備している。
これにより、ケーシングパイプの内部を、撤去対象の地中埋設物を収容可能な空間として活用できるだけでなく、削孔水を効率的に送水するための流路としても活用することができる。
【0020】
また、本発明に係る削孔方法および撤去方法によれば、埋設管や杭などの地中埋設物を、切断や残置をすることなく、また再削孔などをせず撤去・縁切りが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るプラスチックビットは、掘削機能のみならず、撤去対象の地中埋設物に対するセンタリング機能も備えている。したがって、このプラスチックビットを単に既存のケーシングパイプに取り付けるだけで、地中埋設物の撤去に利用可能な地盤削孔装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ケーシングビットの先端部を二重構造とし、内側にプラスチックビットを埋め込む構造となっている地盤削孔装置を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
【
図2】
図1(a)に示す地盤削孔装置の分解図である。
【
図3】
図1に示す地盤削孔装置を使って地中埋設物をセンタリングしながらケーシングパイプ内に収容している様子を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
【
図4】変形例に係る地盤削孔装置を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
【
図5】
図4(a)に示す変形例の地盤削孔装置を示す分解図である。
【
図6】
図4に示す変形例の地盤削孔装置を使って地中埋設物をセンタリングしながらケーシングパイプ内に収容している様子を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
【
図7】地盤削孔装置による削孔時の様子(地盤削孔装置を使って地中埋設物を撤去しているときの様子)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の地盤削孔装置は、ケーシングビットの先端部を二重構造とし、内側にプラスチックビットを埋め込む構造となっている。このような構造を採用することで、地中埋設物を撤去する際のかぶせ掘り時に当該埋設物を損傷させることが無くなる。さらに、プラスチックビットの内径を地中埋設物と同程度の径とすることで、かぶせ掘り時に地中埋設物がケーシング内にセンタリングされることにより損傷等の恐れが無いことから地中内で切断し残置させるリスクが低い。
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る地盤削孔装置の具体的実施形態について説明する。
【0025】
以下の説明では、撤去対象の地中埋設物の具体例として、地盤改良の施工時に埋設した計測管などの埋設管を挙げる。なお、本発明を利用して撤去可能な地中埋設物は、このような埋設管に限定されるものではなく、杭などの撤去を目的として本発明を利用することもできる。
【0026】
(地盤削孔装置の構成)
はじめに、
図1~
図3に基づいて、地盤削孔装置の構成について説明する。
図1は、ケーシングビットの先端部を二重構造とし、内側にプラスチックビットを埋め込む構造となっている地盤削孔装置を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
図2は、
図1(a)に示す地盤削孔装置の分解図である。
図3は、
図1に示す地盤削孔装置を使って地中埋設物をセンタリングしながらケーシングパイプ内に収容している様子を示す(a)部分断面図と(b)底面図である。
【0027】
地盤削孔装置1は、
図1~
図3に示すように、ケーシングパイプ2の先端部にプラスチックビット3を備えた装置であって、撤去対象の埋設管を周囲の地盤から縁切りするケーシングパイプ2と、その先端部に装着するプラスチック製のビット3を有している。この出願では、プラスチック製のビットを「プラスチックビット」と称する。
【0028】
円筒状のケーシングパイプ2には、撤去対象の埋設管を収容可能な空間が形成されている。ケーシングパイプ2の内側空間は、埋設管の収容空間として機能する。また、地盤削孔装置1によるかぶせ掘りの過程で削孔水を吐出する場合には、ケーシングパイプ2の内側空間は削孔水を送水するための流路としても機能する。ケーシングパイプ2は、1本でもよく、2本以上を継ぎ足してなるものでもよい。
【0029】
プラスチックビット3は、略円筒状に形成されており、その内周面は段差が無い均一な径(内径)を有し、外周面は段差を有するように部位によって異なる径(外径)を有するように形成されている。このプラスチックビット3は、
図1(a)に示すように、ケーシングパイプ2の先端部に部分的に埋め込むように取り付ける構造となっている。
【0030】
プラスチックビット3は、本実施形態ではプラスチックで一体成型されており、
主として、
・ケーシングパイプ2の先端部の内側に埋没する埋没部31と、
・ケーシングパイプ2の先端から突き出る突出部32と
で構成されている。
【0031】
プラスチックビット3の素材は、プラスチックである限り特に限定されない。例えば、耐衝撃性や耐摩耗性が高いMCナイロンやPOM(ポリオキシメチレン)などを採用することができる。
【0032】
また、本実施形態で用いるプラスチックビット3は、略円筒状のプラスチックビット3の内側に位置するガイドホール34を有しており、さらに、任意の特徴として、削孔水を吐出するための吐出口36と、吐出口36へ削孔水をガイドするための削孔水ガイド部38を有している。なお、削孔水の吐出口36と、流路である削孔水ガイド部38は、必須の特徴ではなく、これらを省いた構成とすることもできる。
【0033】
プラスチックビット3の埋没部31は、
図1(a)に示すようにプラスチックビット3をケーシングパイプ2に装着した状態で、当該ケーシングパイプ2の先端部の内側に埋没する。
【0034】
埋没部31の外周面には、ケーシングパイプ2の内周面に形成された雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が形成されている。プラスチックビット3の雄ネジ部とケーシングパイプ2の雌ネジ部とが互いに螺合することで、プラスチックビット3が脱落しないようにケーシングパイプ2の先端部に固定される。なお、埋没部31の雄ネジ部は任意の構成であり、これを省いた構成としてもよい。また、前述したネジ部の代わりに、破断可能な部材(例えばシアピン)を用いてプラスチックビット3をケーシングパイプ先端に固定してもよい。
【0035】
また、埋没部31の外周面には、ストッパーとして機能する段差部41が形成されている。この埋没部31の段差部41が、ケーシングパイプ3の内周面に形成された段差部に突き当たることで、削孔時に突出部32がケーシングパイプ先端から所定長さ突き出した状態が維持される。すなわち、プラスチックビット3の全体がケーシングパイプ2の内側に埋没することはない。
【0036】
突出部32は、埋没部31と一体的に形成されている。この突出部32は、プラスチックビット3をケーシングパイプ2に装着した状態で、当該ケーシングパイプの先端から突き出ている。また、突出部32の先端には掘削刃43が設けられている。
【0037】
ガイドホール34は、
図2に示すように、埋没部31と突出部32からなるプラスチックビット3の全体を貫くように円柱状に形成されている。このガイドホール34は、
図3に示すように、撤去対象の埋設管5をセンタリングしつつケーシングパイプ2内に案内する役割を担っている。
【0038】
ガイドホール34は、プラスチックビット3をケーシングパイプ2に取り付けた状態で、ケーシングパイプ2の内側空間とほぼ同軸になるように形成されている。また、ガイドホール34は、撤去対象の埋設管5とほぼ同程度の径を有している。具体的には、ガイドホール34の径は、撤去対象の埋設管5の外径よりも僅かに大きく設定されている。したがって、撤去対象の埋設管5は、ガイドホール34を介してケーシングパイプ2内に入り込むことができる一方で、削孔の過程で、ケーシングパイプ2の先端部と埋設管5との同軸状態が常に維持される。
【0039】
次に、プラスチックビット3のセンタリング機能について説明する。ここでいうセンタリングとは、地盤削孔装置1を地中で前進させる過程で、撤去対象の埋設管5をケーシングパイプ2のほぼ中心(ケーシングパイプ2とほぼ同軸になるような位置)に位置決めする機能である。このようなセンタリング機能が有ることで、埋設管5はケーシングパイプ2とほぼ同軸状態でケーシングパイプ2の内部に入り込むことになる。したがって、仮に埋設管5が地中で曲がっていても、地盤削孔装置1が地中で前進する過程で埋設管5の曲がり具合に追従することができる。
【0040】
削孔水ガイド部38は、ケーシングパイプ2内を介して送水された削孔水を吐出口36へガイドする役割を担う流路である。このような流路を設けることで、
図3に示すように埋設管5がガイドホール34を通過しているときでも、ケーシングパイプ2内を介して送水された削孔水を吐出口36へ向けて効率的に送水することができる。なお、削孔水ガイド部38をなす流路は、プラスチックビット3の内周面に沿って形成した溝でもよく、あるいは、プラスチックビット3を貫通するように形成された孔でもよい。
【0041】
吐出口36は、プラスチックビット3の突出部32の端面に形成されている。この吐出口36は、削孔方向(削孔時の前進方向)に向けて削孔水を吐出する役割を担う。
【0042】
上記構成のプラスチックビット3は、
図1(a)に示すように、その埋没部31が、ケーシングパイプ2の先端部の内側に埋没するように設けられる。また本実施形態の場合では、プラスチックビット3は、ケーシングパイプ2の先端とプラスチックビット3の先端(突出部32の先端)との間に段差が生じるように、ケーシングパイプ2の先端に装着される。すなわち、
図1(a)に示すように、ケーシングパイプ2の先端内側から環状の突出部32が突き出ている結果、プラスチックビット3の先端(突出部32)と、その外側のケーシングパイプ2の先端との間に、段差が生じている。その結果、
図3に示すように、埋設管5がケーシングパイプ2内に入り込む過程で、直接埋設管5とケーシングパイプ2が接することがない。すなわち、プラスチックビット3の突き出た先端部が、ケーシングパイプ2から埋設管5を保護している。
【0043】
図4~
図6は、前述したプラスチックビットの変形例である。この変形例に係るプラスチックビット3は、主として、突出部32の構成において、前述した実施形態のプラスチックビットと相違する。
本変形例では、プラスチックビット3は、(
図1(a)に示すように単に突き出るだけでなく)その突出部32がケーシングパイプ2の先端を覆うような形状となっている。
図4(a)を参照。したがって、
図4(b)に示す底面視で、ケーシングパイプ2の先端がほとんど露出しないように、突出部32がその先端を覆っている。
このような構成を採用することで、埋設管5とケーシングパイプ2との直接的な接触を確実に回避することができる。
図6を参照。
【0044】
(削孔方法)
次に、
図7に基づいて、上記構成の地盤削孔装置1を用いた削孔方法ついて説明する。必要に応じて
図1~
図3を参照する。
【0045】
はじめに、ケーシングパイプ2の先端部にプラスチックビット3を装着してなる地盤削孔装置1を、ボーリングマシン7にセットする。
【0046】
次に、地盤削孔装置1(先端部にプラスチックビット3を装着したケーシングパイプ2)を回転圧入して、撤去対象の埋設管5に向かって地盤を削孔する。その際、必要に応じて削孔水を吐出しながら、ボーリングマシン7により地盤削孔装置を前進させてかぶせ掘りを行う。すなわち、ケーシングパイプ2が撤去対象の埋設管5を包囲するように、ケーシングパイプ2を地盤に貫入する。なお、削孔水を吐出することなくかぶせ掘りを行ってもよい。
【0047】
削孔の初期段階では、撤去対象の埋設管5の上端がプラスチックビット3のガイドホール34に入り込むように、地盤削孔装置1の位置決め(地盤削孔装置1の先端の位置の調整)を行う。その後、地盤削孔装置1を地中で前進させることで、埋設管5がプラスチックビット3によってセンタリングされつつ、ケーシングパイプ2内に入り込む。そして、埋設管5の上端がひとたびプラスチックビット3のガイドホール34に入り込めば、あとは、地盤削孔装置1を前進させれば、仮に埋設管5が地中で曲がっていてもその曲がり具合に地盤削孔装置1(ケーシングパイプ2およびプラスチックビット3)が追従する。そして、埋設管5の曲がり具合に応じてケーシングパイプ2を弾性変形させながら、かぶせ掘りが進行する。地盤削孔装置1を前進させる過程では、地盤削孔装置1の先端が二重管状になっているため、埋設管5とケーシングパイプ2の先端部が直接に接することがない。
【0048】
なお、地盤削孔装置1を地中で前進させる過程で、ケーシングパイプ2内に埋設管5が入りやすくなるように、プラスチックビット3(特にガイドホール34を取り囲む内周面やプラスチックビット3の先端)には、例えば予め界面活性剤を塗布してもよい。あるいは、削孔水に界面活性剤を混練しておき、地盤削孔装置1を地中で前進させる過程でプラスチックビット3の先端から吐出してもよい。また、これらの手段を併用してもよい。
【0049】
地盤削孔装置1を前進させるの過程では、必要に応じてケーシングパイプ2を継ぎ足し、撤去対象の埋設管5の全体がケーシングパイプ2によって包囲されるまで削孔する。
【0050】
また、地盤削孔装置1によるかぶせ掘りの過程では、プラスチックビット3のガイドホール34を介して、埋設管5をセンタリングしつつケーシングパイプ2内に収容する。
【0051】
そして、撤去対象の埋設管5がほぼ全長にわたってケーシングパイプ2内に収容されると、当該埋設管5が周囲の地盤から縁切りされる。次に、埋設管5を包囲するケーシングパイプ2によって孔壁が保護された状態で、当該ケーシングパイプ2内の埋設管5を上から引き抜いて撤去する。最後に、ケーシングパイプ2を地中から引き抜いて作業が完了する。
【0052】
なお、上述した実施形態では、ケーシングパイプ2内に入り込む埋設管5をセンタリングする機能を持ったプラスチックビット3を用いているが、これとともに、センタリング機能を持ったプラスチック製のスペーサを併用することもできる。このスペーサについて、
図8に基づいて説明する。
【0053】
センタリング機能を持ったスペーサ9は、略円筒状のプラスチック部材で構成することができる。
図8に例示するスペーサ9は、センタリング機能を持ったガイドホール91を有している。スペーサ9の外周面は、ケーシングパイプ2の内周面に固定可能なサイズに設定されている。スペーサ9のガイドホール91は、プラスチックビット3のガイドホール34と同じ径に設定されている。このスペーサ9には、前述したプラスチックビット3の場合と同様に、予め界面活性剤を塗布してもよい。
【0054】
このようなスペーサ9を、
図8に示すように、例えばケーシングパイプ2の逆側の端部の内周面に装着してもよい。また、複数本のケーシングパイプを継ぎ足す場合には、いずれか一または二以上のケーシングパイプの基端側の内周面に装着してもよい。スペーサ9をケーシングパイプ2の内周面に固定する方法は特に限定されるものではなく、例えばピン止めやネジ留めなどの方法で固定することができる。
プラスチックビット3と上述したスペーサ9を併用することで、前述したかぶせ掘りの際に、二か所以上でセンタリングを行うことができる。これにより、更にケーシングパイプ内の中央に寄せる事が可能で、センタリングの精度が向上するので、埋設管の撤去のしやすさが更に向上する。
【0055】
また、上述した実施形態では、縦方向に埋設された埋設管を撤去する場合について例示したが、本発明を実施する場合の削孔方向は特に限定されるものではなく、縦方向(鉛直方向を含む)、横方向(水平方向を含む)、斜め方向など、あらゆる方向に削孔することが可能である。同様に撤去対象の埋設管の埋設方向も特に限定されるものではない。
【0056】
また、上述した実施形態では、撤去対象の地中埋設物の具体例として、地盤改良の施工時に埋設した計測管などの埋設管を挙げたが、本発明を利用して撤去可能な地中埋設物は、このような埋設管に限定されるものではなく、杭などの撤去を目的として本発明を利用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 地盤削孔装置
2 ケーシングパイプ
3 プラスチックビット
5 埋設管(地中埋設物の一例)
7 ボーリングマシン
9 スペーサ
31 埋没部
32 突出部
34 ガイドホール
36 吐出口
38 削孔水ガイド部(流路)
41 段差部
43 掘削刃
91 ガイドホール
【要約】
【課題】地盤内に埋設された管や杭などの地中埋設物を、途中で切断したり残置することなく、また再削孔などをせずに撤去・縁切りを可能とする地盤削孔装置を提供する。
【解決手段】地盤削孔装置1は、埋設管などの地中埋設物の撤去に用いる装置であって、撤去対象の地中埋設物の周囲の地盤を縁切りするケーシングパイプ2と、その先端部に装着するプラスチックビット3を有する。プラスチックビット3は、撤去対象の地中埋設物をセンタリングしつつケーシングパイプ2内にガイドするガイドホール34を具備する。プラスチックビット3のガイドホール34は、地中埋設物と同程度の径に設定されている。ケーシングパイプ2の先端にプラスチックビット3を装着した状態では、プラスチックビット3の突出部32が突き出ていて、ケーシングパイプ先端とプラスチックビット先端との間に段差がある。
【選択図】
図1