(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240717BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 F
G02B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2019052248
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
(72)【発明者】
【氏名】神崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 忠史
【合議体】
【審判長】秋田 将行
【審判官】後藤 孝平
【審判官】山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-87896(JP,A)
【文献】特開2015-11078(JP,A)
【文献】特開2017-15786(JP,A)
【文献】特開平8-234070(JP,A)
【文献】特開2014-170123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側にかけて光軸に沿って、最も物体側となる第1レンズ、当該第1レンズと像側で隣接する第2レンズ、最も像側となる像側レンズを含む複数のレンズが積層されて鏡筒に対して固定され、前記像側レンズよりも像側にある像面に撮像対象の像を結像させるレンズユニットであって、
前記鏡筒には、前記第1レンズを物体側から像側に向けて収容する第1収容部と、前記第1収容部よりも像側に設けられ前記像側レンズを収容する第2収容部と、が設けられ、
前記第1レンズは、前記鏡筒に形成された第1レンズ係止部によって物体側で係止され、
前記像側レンズは、前記第2収容部の像側の底面である載置面に像側で係止され、
前記第2レンズは、前記光軸方向において、直接的あるいは他の前記レンズを介して間接的に前記像側レンズと当接し、
前記鏡筒は結晶性プラスチックで構成され、
複数の前記レンズの中に、
前記光軸方向において、前記第1レンズと前記像側レンズの間に配され、前記光軸の周りの外周部が前記鏡筒と接することにより前記鏡筒に対する前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まる接触レンズと、
前記光軸方向において、前記第1レンズと前記像側レンズの間に配され、前記外周部が前記鏡筒と非接触とされ、非晶性プラスチックで構成された非接触レンズと、
が設けられ、
前記接触レンズと前記非接触レンズとが前記光軸方向において隣接し、
当該接触レンズの当該非接触レンズ側の面に形成された係合構造と、当該非接触レンズの当該接触レンズ側の面に形成された係合構造とが係合することによって、前記鏡筒に対する当該非接触レンズの前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、
2つの前記非接触レンズが前記光軸方向において隣接し、前記2つの前記非接触レンズにおける対向する面に形成された係合構造同士が係合することにより、前記2つの非接触レンズ同士の前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、かつ前記2つの前記非接触レンズのうちの一方が前記接触レンズと隣接することにより、当該接触レンズに対する前記一方の前記非接触レンズの前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、
前記第1レンズ、前記第2レンズの各々の物体側、像側のそれぞれにおいて、曲面で構成され光路が通過する面であるレンズ面が形成され、かつ、前記第1レンズの像側、及び前記第2レンズの物体側には、前記光軸からみて前記レンズ面よりも外側に形成された平面であり前記光路が通過しない外側面が形成され、
前記光軸方向において、前記第1レンズと前記第2レンズの間には、
前記第1レンズの前記外側面及び前記第2レンズの前記外側面と接し、前記第1レンズの像側における前記レンズ面、前記第2レンズの物体側における前記レンズ面のいずれとも接さない弾性部材が配されたことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記係合構造は、前記光軸と平行な面と前記光軸と交差する面で形成された段差部であることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記接触レンズにおいて、前記外周部における前記鏡筒と接する部分である圧入部と、前記係合構造とは、前記光軸方向、及び前記光軸からみた径方向において、異なる位置に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記接触レンズにおける前記光軸を中心とした外径が物体側から像側に向けて小さくなるように設定された外周面が、前記鏡筒と接することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記接触レンズは、ガラスレンズと、当該ガラスレンズを前記光軸の外側から支持し前記外周面を有する樹脂材料製のレンズホルダと、を具備することを特徴とする請求項4に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記非接触レンズとして、前記第2レンズの像側で前記第2レンズと隣接する第3レンズと、前記接触レンズの物体側で当該接触レンズと隣接し、かつ前記第3レンズの像側で前記第3レンズと隣接する第4レンズを具備し、
前記像側レンズは、前記接触レンズの像側で前記接触レンズと隣接することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記像側レンズは、2つのプラスチックレンズが前記光軸方向で接合された接合レンズであることを特徴とする請求項6に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズと、これらを外側で固定する鏡筒とを具備するレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、監視カメラ等に搭載される撮像装置において使用される光学系として、物体側から像側(撮像素子側)に至るまでの間に複数のレンズを光軸(撮像装置の光軸)方向に配したレンズユニットが使用されている。このレンズユニットは可視光による物体の画像を撮像素子上に良好に結像させるように設計される。このため、各レンズ間の位置関係、各レンズと鏡筒間、レンズユニットと撮像素子間の位置関係が高い精度で固定されることが要求される。
【0003】
一方、複数のレンズの中には、ガラス製のものと樹脂材料(プラスチック)製のものが存在する。また、鏡筒は樹脂材料で構成されるが、この材料は樹脂材料製のレンズにおいて用いられたものとは異なる場合もある。この場合、隣接する各レンズの間、各レンズと鏡筒の間には熱膨張率の差が存在する。このため、温度が変動する環境下で上記のような高い位置精度を維持することは容易ではない。このためには、例えば、複数のレンズのうち、選択されたいずれかのレンズのみを鏡筒に直接固定し、隣接するレンズ同士を接触させることにより他のレンズを鏡筒には間接的に固定させる構成が用いられる。
【0004】
一般的に、レンズは、鏡筒に設けられたレンズ収容部に物体側から像側に向けて収容された形態で固定される。このため、最も像側のレンズは、収容部の底面で係止されることによって固定される。また、例えば撮像装置においては、最も物体側(撮像素子から最も遠い側)にある第1レンズとしては、使用されるレンズの中では最も大径のガラス製の魚眼レンズが用いられる場合が多く、この場合、第1レンズが鏡筒に固定される場合が多い。第1レンズの固定は、第1レンズの外周部と鏡筒の間を互いに機械的に係合させるカシメ構造により行うことができる。この場合、隣接するレンズ同士を接触させれば、第1レンズから最も像側のレンズまでが一体化されたレンズ系の物体側への移動はカシメ構造により抑制され、このレンズ系の像側への移動はレンズ収容部の底面で抑制されるため、結局、レンズ系全体を鏡筒に対して固定することができる。
【0005】
しかしながら、この構成の場合には、熱膨張差に起因してレンズ系は物体側に移動することがあるため、物体側のカシメ構造にこの際の負荷が集中する。この場合、特に樹脂材料で構成された鏡筒側のカシメ部が大きな力を受けて塑性変形をする場合があった。塑性変形後は、カシメ構造においてガタが発生し、第1レンズ及びレンズ系全体の位置精度が劣化した。
【0006】
このため、特許文献1に記載の構造においては、上記のカシメ部と同様に、第1レンズの端部付近を物体側で係止する係止部が鏡筒に設けられると共に、最も像側のレンズとレンズ収容部の底面の間には板ばねが設けられる。また、前記と同様に、隣接するレンズ同士が光軸方向で接することによりレンズ系が構成される点は前記と同様である。これにより、レンズ系(第1レンズ)は物体側に板バネにより付勢された状態で物体側の係止部で係止される。一方、上記のような熱膨張差に起因してレンズ系に光軸方向の力が印加された場合(レンズ系が光軸方向で膨張した場合)でも、この力(膨張量)は板バネによって吸収され、第1レンズを係止する係止部に加わる力が低減される。このため、第1レンズは安定して鏡筒に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のレンズユニットにおいては、最も像側のレンズが像側で板バネを介して底面に係止されるため、温度変化に際して、最も像側のレンズの像側の面と撮像素子までの光軸方向の距離が変動する。この際、前記のようにこのレンズ系が物体側の係止部で係止され、かつ隣接するレンズ間の位置関係が固定されていれば、最も像側のレンズの像側の面と撮像素子までの距離の変動量は特に大きくなる。
【0009】
一方、最も像側にある(最も撮像素子に近い)レンズの像側の面と撮像素子までの光軸方向の距離は、レンズ系の結像特性に特に大きな影響を及ぼす。このため、上記の構成においては、各レンズ間の位置関係は維持されるものの、温度変化に際して、結像特性が不安定となり良好な画像が得られない場合があった。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、温度変化がある場合にも良好な結像特性が維持されるレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンズユニットは、物体側から像側にかけて光軸に沿って、最も物体側となる第1レンズ、当該第1レンズと像側で隣接する第2レンズ、最も像側となる像側レンズを含む複数のレンズが積層されて鏡筒に対して固定され、前記像側レンズよりも像側にある像面に撮像対象の像を結像させるレンズユニットであって、前記鏡筒には、前記第1レンズを物体側から像側に向けて収容する第1収容部と、前記第1収容部よりも像側に設けられ前記像側レンズを収容する第2収容部と、が設けられ、前記第1レンズは、前記鏡筒に形成された第1レンズ係止部によって物体側で係止され、前記像側レンズは、前記第2収容部の像側の底面である載置面に像側で係止され、前記第2レンズは、前記光軸方向において、直接的あるいは他の前記レンズを介して間接的に前記像側レンズと当接し、前記鏡筒は結晶性プラスチックで構成され、複数の前記レンズの中に、前記光軸方向において、前記第1レンズと前記像側レンズの間に配され、前記光軸の周りの外周部が前記鏡筒と接することにより前記鏡筒に対する前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まる接触レンズと、前記光軸方向において、前記第1レンズと前記像側レンズの間に配され、前記外周部が前記鏡筒と非接触とされ、非晶性プラスチックで構成された非接触レンズと、が設けられ、前記接触レンズと前記非接触レンズとが前記光軸方向において隣接し、当該接触レンズの当該非接触レンズ側の面に形成された係合構造と、当該非接触レンズの当該接触レンズ側の面に形成された係合構造とが係合することによって、前記鏡筒に対する当該非接触レンズの前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、2つの前記非接触レンズが前記光軸方向において隣接し、前記2つの前記非接触レンズにおける対向する面に形成された係合構造同士が係合することにより、前記2つの非接触レンズ同士の前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、かつ前記2つの前記非接触レンズのうちの一方が前記接触レンズと隣接することにより、当該接触レンズに対する前記一方の前記非接触レンズの前記光軸と垂直な方向における位置関係が定まり、前記第1レンズ、前記第2レンズの各々の物体側、像側のそれぞれにおいて、曲面で構成され光路が通過する面であるレンズ面が形成され、かつ、前記第1レンズの像側、及び前記第2レンズの物体側には、前記光軸からみて前記レンズ面よりも外側に形成された平面であり前記光路が通過しない外側面が形成され、前記光軸方向において、前記第1レンズと前記第2レンズの間には、前記第1レンズの前記外側面及び前記第2レンズの前記外側面と接し、前記第1レンズの像側における前記レンズ面、前記第2レンズの物体側における前記レンズ面のいずれとも接さない弾性部材が配されている。
【0012】
この構成においては、第1収容部に収容された第1レンズは物体側において第1レンズ係止部に係止される。一方、第2収容部に収容された像側レンズは鏡筒側の載置面により像側で係止され、かつ第2レンズは直接的、あるいは他のレンズを介して間接的に、光軸方向で像側レンズと当接する。このため、第2レンズ及び像側レンズは実質的に像側では載置面で係止されるために、その像側への移動は抑制される。一方、温度変化に際して、第2レンズ、像側レンズを含む複数のレンズが膨張しても、この膨張量が弾性部材で吸収される。このため、温度変化がある場合にもレンズ間にガタが発生することが抑制され、かつ、像面と像側レンズの間の間隔の変動を抑制できるために、良好な結像特性が維持される。
【0014】
この場合、鏡筒と、複数のレンズからなるレンズ系との間には熱膨張差が発生するが、このように接触レンズと非接触レンズをレンズ系において設定することにより、接触レンズの鏡筒に対する光軸に垂直な方向の位置関係を固定することができる一方で、非接触レンズと鏡筒との間の熱膨張差がレンズ系の光軸に垂直な方向の位置関係に及ぼす影響を排除することができる。この際、このように接触レンズと隣接する非接触レンズとの間をこのような係合構造を用いて、非接触レンズの接触レンズあるいは鏡筒に対する光軸に垂直な方向の位置関係を定めることができる。
【0015】
また、この場合には、接触レンズと隣接しない非接触レンズの光軸と垂直な方向における位置が、この非接触レンズと隣接する他の非接触レンズを介して接触レンズによって定まる。このため、レンズ系において、接触レンズの数を少なく、非接触レンズの数を多くすることができ、温度変動がある場合のレンズ系と鏡筒の熱膨張差に起因して、レンズと鏡筒の膨張や収縮の差によりレンズに歪みが発生してしまうことを防ぐことができる。
【0016】
この際、前記係合構造は、前記光軸と平行な面と前記光軸と交差する面で形成された段差部であってもよい。
これにより、組み立ての際に、レンズの係合構造同士を係合させることが容易となる。
この際、前記接触レンズにおいて、前記外周部における前記鏡筒と接する部分である圧入部と、前記係合構造とは、前記光軸方向、及び前記光軸からみた径方向において、異なる位置に設けられていてもよい。
これにより、接触レンズの圧入時や温度変動があった際に圧入部に力が加わっても、圧入部と係合構造が離間しているため、この係合構造を介して固定される非接触レンズと接触レンズの位置関係はこれによる悪影響を受けにくくなる。
【0017】
この際、前記接触レンズにおける前記光軸を中心とした外径が物体側から像側に向けて小さくなるように設定された外周面が、前記鏡筒と接する構成とされていてもよい。
これにより、接触レンズの第2収容部への挿入、装着が特に容易となる。
この際、前記接触レンズは、ガラスレンズと、当該ガラスレンズを前記光軸の外側から支持し前記外周面を有する樹脂材料製のレンズホルダと、を具備してもよい。
この構成により、ガラスレンズを用いた場合でも、このガラスレンズとレンズホルダとが一体化されたレンズ体を、樹脂材料製のレンズ(プラスチックレンズ)と同様に扱うことができ、例えばこのレンズ体を接触レンズとして用いることができる。
【0018】
この際、前記非接触レンズとして、前記第2レンズの像側で前記第2レンズと隣接する第3レンズと、前記接触レンズの物体側で当該接触レンズと隣接し、かつ前記第3レンズの像側で前記第3レンズと隣接する第4レンズを具備し、前記像側レンズは、前記接触レンズの像側で前記接触レンズと隣接してもよい。
また、前記像側レンズは、2つのプラスチックレンズが前記光軸方向で接合された接合レンズであってもよい。
このように第3レンズ、第4レンズ、接合レンズを上記のレンズ系の中で用いることにより、良好な光学特性をもつレンズユニットを形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温度変化がある場合にも良好な結像特性が維持されるレンズユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
【
図2】実施形態に係るレンズユニットで用いられる鏡筒の断面図(a)、斜視図(b)である。
【
図3】実施形態に係るレンズユニットの分解組立図である。
【
図4】実施形態に係るレンズユニットの組立途中の形態(2種類)を示す図である。
【
図5】実施形態に係るレンズユニットにおける、非接触レンズ(第4レンズ)と接触レンズ(第5レンズ体)の端部付近の構造を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るレンズユニット1の、光軸Aに沿った断面図である。ここでは、物体(Ob)側は図中上側であり、像(Im)側は図中下側であり、撮像素子100は図中最下部に位置する。レンズL1~L7の各々は、鏡筒10に対して直接あるいは間接的に固定される。
図1においては、各レンズ間あるいは各レンズと鏡筒10の間を固定するための構成が主に記載されており、実際には撮像素子100と鏡筒10の位置関係を固定するための構造も設けられているが、その記載は省略されている。
【0022】
撮像素子100は2次元CMOSイメージセンサであり、各画素は光軸Aと垂直な面内で2次元に配列されており、実際には撮像素子100はカバーガラス(図示せず)で覆われている。
図1において、第1レンズL1から第7レンズL7を備えるレンズユニット1が構成される。レンズユニット1は、撮像対象の可視光の画像を所望の視野、所望の形態で撮像素子100上(像面)に結像させるように構成される。
【0023】
図1において、最も物体側(図中上側)に設けられた第1レンズL1は、魚眼レンズであり、主にこれによって、撮像装置の視野等が定まる。これよりも撮像素子100側(像側)に、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6、第7レンズL7が順次配置されている。各レンズは、光軸Aの周りで略対称な形状を具備する。また、実際には光束を制限するための絞り、不要な光を除去するための遮光板も第1レンズL1~第7レンズL7までの間に適宜設けられるが、その記載は
図1では省略されている。
【0024】
また、
図2(a)は、鏡筒10のみの光軸Aに沿った断面図、
図2(b)は、鏡筒10を
図1における斜め上側(物体側)からみた斜視図である。この鏡筒10の物体側(図中上側)には、内面が略円筒形状の空洞部である第1収容部10Aが設けられ、第1収容部10Aの底面は第1レンズL1と当接する第1載置部11である。また、第1載置部11よりも像側(図中下側)には、第1収容部10Aと同軸とされ、第1収容部10Aより小径とされた略円筒形状の空洞部である第2収容部10Bが設けられ、第2収容部10Bの底面は像側レンズである後述の接合レンズL60と当接する第2載置部(載置面)12である。第1収容部10A、第2収容部10Bの中心軸は共通とされ、光軸Aと等しい。また、
図2(a)に示されるように、実際には第2収容部10Bの内面は物体側から像側に向かって徐々に小さくされる。
【0025】
図1において、各レンズにおける物体側、像側のレンズ面(画像を形成する光が通過する面)は、レンズユニット1が所望の結像特性をもたらすように、適宜曲面(凸曲面、凹曲面)加工されている。以下では、各レンズにおける物体側のレンズ面を第1表面R1、像側のレンズ面を第2表面R2と呼称する。また、レンズ面の形状(凸曲面又は凹曲面)としては、第1表面R1の形状については物体側からみた形状、第2表面R2の形状については像側からみた形状を、それぞれ意味するものとする。
【0026】
一般的に、このような小型の撮像装置におけるレンズを構成する材料としては、ガラスと樹脂材料の2種類がある。前者は機械的強度が高いが高価であり、後者は機械的強度は低いが安価である。また、ガラスの熱膨張係数は樹脂材料より小さいため、高温時における熱膨張に起因する形状や位置の微細な変化が結像特性(焦点位置の変化)に与える影響が大きくなるレンズは、ガラス製のレンズとすることが好ましい。このため、レンズユニット1を高性能かつ安価とするためには、ガラス製のものが好ましいレンズのみガラス製とし、他のレンズを樹脂材料製とすることが好ましい。
【0027】
この観点において、本実施の形態では、最も物体側に配置された第1レンズL1は、撮像装置1の最表面に位置するために、傷が付きにくいガラス製のものが好ましく用いられる。また、また、絞り20と隣接するレンズ(第4レンズL4及び第5レンズL5)は、温度変化に起因する焦点距離の変化が顕著に表れるため、いずれか一方(本実施の形態では第5レンズL5)がガラス製とされる。他のレンズとしては、安価な樹脂材料製のものが用いられる。
【0028】
第1レンズL1は、その物体側のレンズ面L1R1が凸曲面、その像側のレンズ面L1R2が凹曲面とされた負レンズである。第1レンズL1の上面側では、レンズ面L1R1がほぼ全体を占めている。第1レンズL1の下面側(像側)において、レンズ面L1R2の外側には、光軸Aと垂直な平面で構成された第1レンズ第1下面L1Aを備えている。第1レンズ第1下面L1Aの更に外側には、第1レンズ第1下面L1Aと平行かつ第1下面L1Aよりも物体側(図中上側)に位置する第1レンズ第2下面L1Bが設けられる。また、第1レンズL1の最外周部は、光軸Aを中心軸とする円筒形状の第1レンズ外周面L1Cを構成する。これらの面のうち、光学的に使用されるのは、レンズ面L1R1、L1R2であり、他の面は、第1レンズL1を鏡筒10に対して固定するために用いられる。
【0029】
図1において、鏡筒10の上端側は、第1レンズL1の物体側への移動を規制するように光軸A(中心)側に向かって屈曲した第1レンズ係止部13となっている。また、第1レンズ第1下面L1Aは、鏡筒10側の第1載置面11と当接する。このため、第1レンズL1の鏡筒10に対する光軸A方向における位置関係は、物体側(図中上側)では第1レンズ係止部13によって定まり、像側(図中下側)では第1載置面11により定まる。この際、第1レンズ第1下面L1Aよりも外側においては、第1レンズ第2下面L1Bと第1載置面11との隙間に、光軸A方向と垂直な方向で圧縮されて弾性変形したリング状のOリング20が配されることにより、鏡筒10内部における防水機能が得られる。なお、上記のような第1レンズ係止部13の形状は、第1レンズl1を鏡筒10に固定するために加工した後の形状であり、固定前における鏡筒10の上端部側の形状は、
図2(a)に示されるように、上側から第1レンズL1を
図1に示されるように鏡筒10内に挿入可能な形状とされる。
【0030】
また、第1レンズ外周面L1Cは、鏡筒10における第1収容部10Aの内周面と当接する。これによって、第1レンズL1と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まる。すなわち、上記の構成により、第1レンズL1は鏡筒10に対して固定される。
【0031】
第2レンズL2は、その物体側のレンズ面L2R1が凸曲面、その像側のレンズ面L2R2が凹曲面とされた負レンズである。第2レンズL2の物体側(図中上側)において、レンズ面L2R1よりも外側には、光軸Aと垂直でありレンズ面L1R1よりも像側(図中下側)に位置する平面である第2レンズ第1上面L2Aが設けられる。また、第2レンズL2の像側(図中下側)において、レンズ面L2R2よりも外側には、光軸Aと平行な面及び垂直な面で構成された段差部(係合構造)L2Bが設けられる。第2レンズL2の最外周を構成する面である第2レンズ外周面L2Cは、第2収容部10Bの内面と当接する。第2レンズ外周面L2Cは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。これにより、第2レンズL2と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は定まる。
【0032】
また、第1載置面11よりも内側(光軸Aに近い側)かつレンズ面L1R2及びレンズ面L2R1よりも外側の領域において、第2レンズ第1上面L2Aと第1レンズ第1下面L1Aの間には、弾性体で構成され、かつ光軸A方向で薄い弾性部材30が配されている。すなわち、第1レンズL1と第2レンズL2は光軸Aに沿った方向では直接接さず、これらの間には弾性部材30が設けられている。
【0033】
第3レンズL3は、その物体側のレンズ面L3R1が凹曲面、その像側のレンズ面L3R2が凸曲面とされた正レンズである。第3レンズL3の物体側(図中上側)において、レンズ面L3R1の外側に、第2レンズL2における段差部L2Bと係合するように形成された段差部(係合構造)L3Aが設けられる。また、第3レンズL3の像側(図中下側)において、レンズ面L3R2よりも外側には、光軸Aと平行な面及び垂直な面で構成された段差部(係合構造)L3Bが設けられる。また、第3レンズL3の最外周を構成する略円筒形状の面である第3レンズ外周面L3Cは、第2収容部10Bの内面とは非接触とされる。
【0034】
第4レンズL4は、その物体側の面L4R1が凹曲面、その像側の面L4R2が凸曲面とされた正レンズである。第4レンズL4の物体側(図中上側)において、レンズ面L4R1の外側には、第3レンズL3における段差部L3Bと係合するように形成された段差部(係合構造)L4Aが設けられる。また、第4レンズL4の像側(図中下側)において、レンズ面L4R2よりも外側には、光軸Aと平行な面及び垂直な面で構成された段差部(係合構造)L4Bが設けられる。また、第4レンズL4の最外周を構成する略円筒形状の面である第4レンズ外周面L4Cは、第2収容部10Bの内面とは非接触とされる。すなわち、第3レンズL3、第4レンズL4は鏡筒10とは非接触とされる。
【0035】
前記の通り、第5レンズL5はガラス製であり、その物体側の面L5R1が凸曲面、その像側の面L5R2が凸曲面とされた正レンズである。ただし、第5レンズL5は、他のレンズとは異なり、樹脂材料製のレンズホルダ51に圧入固定されて一体化された第5レンズ体L50とされた状態で鏡筒10に収容される。すなわち、第5レンズL5は、第5レンズ体L50となった状態で、樹脂材料製である第3レンズL3、第4レンズL4と同様にレンズとして扱われる。
【0036】
第5レンズ体L50の物体側(図中上側)において、第5レンズL5の外側のレンズホルダ51には、第4レンズL4における段差部L4Bと係合するように形成された段差部(係合構造)L50Aが設けられる。また、第5レンズ体L50の像側(図中下側)において、第5レンズL5よりも外側には、周囲よりも像側(図中下側)に向かって局所的に突出した突出部L50Bが設けられる。また、第5レンズ体L50の最外周を構成する面である第5レンズ体外周面L50Cは、第2収容部10Bの内面と当接する。第5レンズ体外周面L50Cは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。これにより、第5レンズ体L50(第5レンズL5)と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は定まる。
【0037】
第6レンズL6は、その物体側の面L6R1が凹曲面、その像側の面L6R2が凹曲面とされた負レンズである。第7レンズL7は、外径が第6レンズL6よりも小さく、その物体側の面L7R1が凸曲面、その像側の面L7R2が凸曲面とされた正レンズである。また、第6レンズL6、第7レンズL7は対向するレンズ面が嵌合して接合されることにより、最も像側にある接合レンズ(像側レンズ)L60を構成するように設定される。つまり、実質的に最も像側のレンズとなる像側レンズは、第6レンズL6の像側のレンズ面L6R2と第7レンズL7の物体側のレンズ面L7R1とが嵌合して接合された接合レンズL60となる。
【0038】
接合レンズL60(第6レンズL6)の物体側(図中上側)において、レンズ面L6R1の外側には、第5レンズ体L50における突出部L50Bと当接する平面である接合レンズ上面L6Aが設けられる。また、接合レンズL6(第6レンズL6)の像側(図中下側)において、レンズ面L7R2よりも外側には、光軸Aと垂直な平面である接合レンズ下面L6Bが設けられる。接合レンズ下面L6Bは、第2載置部(載置面)12と当接する。接合レンズL60(第6レンズL6)の最外周を構成する面である第6レンズ外周面L6Cは、第2収容部10Bの内面と当接する。第6レンズ外周面L6Cは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。このため、接合レンズL60の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では鏡筒10(第2載置部12)によって制限される。
【0039】
この場合、第5レンズ体L50(突出部L50B)は像側で接合レンズL60に係止されるため、第5レンズ体L50の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では接合レンズL60を介して第2載置部12(鏡筒10)によって制限される。
【0040】
また、前記の構成により、第4レンズL4の光軸Aに沿った方向における位置は、段差部L4Bと段差部L50Aが係合することによって、像側では第5レンズ体L50、接合レンズL60を介して鏡筒10によって制限される。一方、第4レンズL4の光軸Aと垂直な方向における位置は、段差部L4Bと段差部L50Aが係合することによって、第5レンズ体L50を介して第2収容部10Bの内周面により定まる。同様に、第3レンズL3の光軸Aに沿った方向における位置は、段差部L3Bと段差部L4Aが係合することによって、像側では第4レンズL4、第5レンズ体L50、接合レンズL60を介して鏡筒10によって制限される。一方、第3レンズL3の光軸Aと垂直な方向における位置は、段差部L3Bと段差部L4Aが係合することによって、第4レンズL4、第5レンズ体L50を介して第2収容部10Bの内面により定まる。
【0041】
また、前記の構成により、第2レンズL2の光軸Aに沿った方向における位置は、段差部L2Bと段差部L3Aが係合することによって、像側では第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズ体L50、接合レンズL60を介して鏡筒10によって制限される。一方、第2レンズL2の光軸Aと垂直な方向における位置は、前記の通り、第2収容部10Bの内面により定まる。
【0042】
すなわち、上記の構成において、第2レンズL2~接合レンズL60(第7レンズL7)のうち、第2レンズL2、第5レンズL5(第5レンズ体L50)、接合レンズL60は、その外周部が鏡筒10における第2収容部10Bの内周面と当接する接触レンズとなる。これらの接触レンズは、これにより、光軸Aと垂直な方向における鏡筒10との間の位置関係が固定される。一方、第3レンズL3、第4レンズL4は、第2収容部10Bの内周面とは直接接触しない非接触レンズとなる。非接触レンズは、上記のような段差部(係合構造)を介してその物体側、像側の接触レンズと直接あるいは間接的に係合することによって接触レンズとの間の光軸Aと垂直な方向における位置関係が固定されることによって、この方向での鏡筒10との間の位置関係が固定される。これにより、第2レンズL2~接合レンズL60(第7レンズL7)の全ての、光軸Aと垂直な方向における鏡筒10との間の位置関係が固定される。
【0043】
一方、上記の構成においては、第2レンズL2~接合レンズL60(第7レンズL7)のうち、鏡筒10に対して、光軸Aに沿った方向での移動が直接制限されるのは、接合レンズL60のみであり、かつその像側への移動のみが制限される。一方、第5レンズ体L50、第4レンズL4、第3レンズL3、第2レンズL5は、光軸Aの方向において隣接するレンズと当接し、かつ第2レンズL2が弾性部材30により像側に付勢されていれば、その光軸Aに沿った方向での位置は、接合レンズL60及び第2載置部12により定まる。
【0044】
上記のレンズユニット1においては、このように第2レンズL2から接合レンズ(第7レンズL7)までを光軸Aに沿った方向で一体化しているため、これらの各レンズ間の光軸Aに沿った位置関係は、温度変動がある場合においても固定される。一方、温度変動による熱膨張差に起因した光軸Aに沿った方向の力がこのように一体化された複数のレンズに加わり、かつこのように一体化された構造が像側で第2載置部(載置面)12で係止された場合、上記の構成においては、弾性部材30がこの膨張量(力)を吸収することができる。
【0045】
この場合、第2レンズL2の物体側の面L2R1と第1レンズL1の像側の面L1R2の間隔が変動するが、この間隔の変動がレンズユニット1の結像特性に与える影響は、最も像側にある接合レンズ(像側レンズ)L60と撮像素子100(像面)の間の間隔の変動が結像特性に与える影響よりも小さい。一方、接合レンズL60の鏡筒10に対する位置は、第2載置部12で定まるため、変化を抑えられる。このため、このレンズユニット1において、熱膨張差に起因してレンズ系に力が加わった場合には、この弾性部材30で吸収されることによって、レンズ系が安定して鏡筒10に対して固定される。この際、特に結像特性に大きな影響を及ぼす接合レンズL60の位置は変動を抑制できるため、良好な結像特性を維持することができる。また、接合レンズL60の光軸A方向における位置は、第2載置部12のみによって定まるため、接合レンズL60と撮像素子100までの間隔の製造によるばらつきも低減することができる。
【0046】
また、このレンズユニット1において、第1レンズL1の光軸A方向の位置は、像側で第1載置面11により物体側で第1レンズ係止部13により定まることにより、鏡筒10に対して固定される。このため、温度変動に際して、全てのレンズは安定して鏡筒10に対して固定される。
【0047】
図3は、このレンズユニット1の分解斜視図であり、ここでは、
図1で記載が省略された絞り60、遮光板61も記載されている。ここでは、接合レンズL60、第5レンズ体L50、絞り60、第4レンズL4、第3レンズL3、遮光板61、第2レンズL2、弾性部材30、Oリング20、第1レンズL1が図中上側(物体側)から鏡筒10に対して順次装着される。図示されるように、弾性部材30、Oリング20は、環状に形成される。また、絞り60は、第5レンズ体L50と第4レンズL4の位置関係を前記の通りとした状態で第5レンズ体L50と第4レンズL4の間に配され、遮光板61は、第3レンズL3と第2レンズL2の位置関係を前記の通りとした状態で第3レンズL3と第2レンズL2の間に配される。
【0048】
図4は、レンズユニット1を製造する際の途中の状態を示す斜視図であり、
図4(a)は、鏡筒10に対して接合レンズL60を設置する際の状況を示す斜視図である。ここでは、前記の通り、接合レンズL60は、第2載置部12の上に載置される。その上に、第5レンズ体L50、絞り60、第4レンズL4、第3レンズL3、遮光板61、第2レンズL2、弾性部材30が順次載置される。
【0049】
その後、
図4(b)に示されるように、Oリング20を介して、第1載置面11に第1レンズL1が、弾性部材30と当接するように載置される。その後、鏡筒10における第1収容部10Aの上端部側が加工されて第1レンズ係止部13とされ、第1レンズL1が固定される。
【0050】
また、前記のように、第2収容部10Bの内面と当接する接合レンズL60(第6レンズL6)、第5レンズ体L50(レンズホルダ51)、第2レンズL2の外周面(第6レンズ外周面L6B、第5レンズ体外周面L50C、第2レンズ外周面L2C)は、いずれも、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。これにより、これらを第2収容部10B内に挿入、設置する作業が容易となる。また、各段差部(係合構造)を、光軸Aと平行な面と光軸Aと垂直な(交差する)面で構成することにより、各レンズを装着する際に段差部同士を係合させることが容易となる。
【0051】
この際、前記のように、第5レンズ体50においては、第5レンズ体外周面L50Cの最も像側の部分が第2収容部10Bの内面に圧入される圧入部となる。このため、第5レンズ体50を第2収容部10Bに圧入するに際しては、第5レンズ体50(レンズホルダ51)に対してこの圧入部から力が加わる。前記のように、第5レンズ体50の圧入後に第4レンズL4が第2収容部10Bの内面に設置され、この際に段差部L4Bと段差部L50Aとが係合することによって、第4レンズL4の第5レンズ体50に対する光軸Aと垂直な方向の位置関係が定まる。この際、段差部L50Aにこの圧入の際の力が及ぶと、この位置精度に悪影響が及ぶ可能性がある。また、温度変化に際しての熱膨張差が発生した場合においても、同様に圧入部に力が加わるため、同様の問題が発生する可能性がある。
【0052】
図5は、
図1における段差部L50A、圧入部PP(第5レンズ体外周面L50C)付近を拡大した図である。
図5に示されるように、段差部L50Aは、光軸Aからみた径方向において圧入部PPから離間している。また、段差部L50Aにおける段差部L4Bと係合する部分は、光軸A方向においても前記の圧入部PPよりも物体側にあり、圧入部PPから離間している。これにより、圧入部PPに力が加わった場合でも、第4レンズL4の光軸Aと垂直な方向の位置精度に及ぼす悪影響を低減することができる。
【0053】
なお、上記の例においては、第2レンズ外周面L2Cが第2収容部10Bの内面と当接することにより、光軸Aと垂直な方向における第2レンズL2の鏡筒10に対する位置関係が定められるものとした。しかしながら、この方向における位置が他のレンズ(第3レンズL3、第4レンズL4を介した第5レンズ体L50等)によって、前記と同様の係合構造を用いて定められていれば、第3レンズL3等の場合と同様に、第2レンズ外周面L2Cと第2収容部10Bの内面との間を非接触としてもよい。
【0054】
この点については、第5レンズ体L50についても、同様である。第5レンズ体L50の光軸Aと垂直な方向における鏡筒10に対する位置関係が、他のレンズ(接合レンズL60)によって定められていれば、第5レンズ体外周面L50Cと第2収容部10Bの内面との間を非接触としてもよい。
【0055】
前記のような熱膨張差によるレンズ系に対する影響は、各レンズ(レンズホルダ51を含む)や、鏡筒10を構成する材料に依存する。ここで、鏡筒10の材料としては、結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)が好ましく用いられる。一方、特に鏡筒10と非接触とされ光軸Aの方向で隣接するレンズと当接することによって位置が定まる第3レンズL3、第4レンズL4は、レンズとしての性能(光透過性や成形性)に優れる非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)で構成される。また、第5レンズ体L50におけるレンズホルダ51も、同様の非晶性プラスチックで構成することが好ましい。この場合、鏡筒10と、これらのレンズとの間には熱膨張差が発生する。また、第1レンズL1、第5レンズL5を構成するガラスの熱膨張係数はこれらのプラスチック材料よりも小さい。このため、こうした場合に上記の構成は特に有効である。
【0056】
なお、上記の例においては、第2収容部10Bの内面と当接する第6レンズ外周面L6B、第5レンズ体外周面L50C、第2レンズ外周面L2Cは、いずれも、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状であるものとした。しかしながら、これらの外周面の形状は、各レンズの光軸Aと垂直な方向における位置が鏡筒に対して固定可能な限りにおいて、任意である。例えば、各レンズの外周における3か所以上で第2収容部の内面と当接するように、各レンズの外周、あるいは第2収容部の内面の形状を設定することもできる。この際、各レンズの第2収容部への設置が容易となるような形状を適宜設定することができる。
【0057】
なお、上記の例では、弾性部材30がOリング20と同様の環状とされたが、同様に第1レンズL1と第2レンズの間に介在可能となる限りにおいて、その形状は任意であり、例えば周方向で弾性部材が一体化されている必要はない。しかしながら、上記のように弾性部材30を環状とすることによって、組み立て、装着が特に容易となる。また、前記の例においては、弾性部材30が第1レンズL1と第2レンズL2の間に設けられたが、他のレンズ間に弾性部材を設けることもできる。この場合、前記の第1レンズL1・第2レンズL2間のように、間隔の変動が結像特性に与える影響が小さなレンズ間に弾性部材を設けることが好ましい。この際、レンズ面の外側における物体側に弾性部材が載置可能なスペースがあるレンズに弾性部材が載置される。
【0058】
(本形態の主な特徴)
本実施形態の特徴を簡単に纏めると次の通りである。
(1)このレンズユニット1においては、物体側から像側にかけて光軸Aに沿って、最も物体側となる第1レンズL1、第1レンズL1と像側で隣接する第2レンズL2、最も像側となる接合レンズ(像側レンズ)L60を含む複数のレンズが積層されて鏡筒10に対して固定され、鏡筒10には、第1レンズL1を物体側から像側に向けて収容する第1収容部10Aと、第1収容部10Aよりも像側に設けられ像側レンズL60を収容する第2収容部10Bと、が設けられ、第1レンズL1は、鏡筒10に形成された第1レンズ係止部13によって物体側で係止され、像側レンズL60は、第2収容部10Bの像側の底面である載置面12に像側で係止され、第2レンズL2は、光軸A方向において、直接的あるいは他のレンズを介して間接的に像側レンズL60と当接し、光軸A方向において、第1レンズL1と第2レンズL2の間には第1レンズL1及び第2レンズL2と接する弾性部材30が配されている。
【0059】
この構成においては、第1収容部10Aに収容された第1レンズL1は物体側において第1レンズ係止部13に係止される。一方、第2収容部10Bに収容された像側レンズL60は鏡筒10側の載置面12により像側で係止され、かつ第2レンズL2は直接的、あるいは他のレンズを介して間接的に、光軸A方向で像側レンズL60と当接する。このため、第2レンズL2及び像側レンズL60は実質的に像側では載置面12で係止され、その像側への移動は抑制される。一方、温度変化に際して、第2レンズL2、像側レンズL60を含む複数のレンズが膨張しても、この膨張量が弾性部材30で吸収される。このため、温度変化がある場合にもレンズ間にガタが発生することが抑制され、かつ、像面(撮像素子100)と像側レンズL60の間の間隔の変動を抑制できるために、良好な結像特性が維持される。
【0060】
(2)鏡筒10は結晶性プラスチックで構成され、複数の前記レンズの中に、光軸A方向において、第1レンズL1と像側レンズL60の間に配され、光軸Aの周りの外周部が鏡筒10と接することにより鏡筒に対する光軸Aと垂直な方向における位置が定まる接触レンズと、光軸A方向において、第1レンズL1と像側レンズL60の間に配され、外周部が鏡筒10と非接触とされ、非晶性プラスチックで構成された非接触レンズと、が設けられ、接触レンズと非接触レンズとが光軸A方向において隣接し、この接触レンズのこの非接触レンズ側の面に形成された係合構造と、この非接触レンズのこの接触レンズ側の面に形成された係合構造とが係合することによって、鏡筒10に対するこの非接触レンズの光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まる構成とされている。
【0061】
鏡筒10と、複数のレンズからなるレンズ系との間には熱膨張差が発生するが、このように接触レンズと非接触レンズをレンズ系において設定することにより、接触レンズの鏡筒10に対する光軸Aに垂直な方向の位置関係を固定することができる一方で、非接触レンズと鏡筒10との間の熱膨張差がレンズ系の光軸Aに垂直な方向の位置関係に及ぼす影響を排除することができる。この際、このように接触レンズと隣接する非接触レンズとの間をこのような係合構造を用いて、非接触レンズの接触レンズあるいは鏡筒10に対する光軸Aに垂直な方向の位置関係を定めることができる。
【0062】
(3)2つの非接触レンズ(第3レンズL3、第4レンズL4)が光軸A方向において隣接し、これらの非接触レンズにおける対向する面に形成された係合構造(L3B、L4A)同士が係合することにより、これらの非接触レンズ同士の光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まり、かつこれらの非接触レンズのうちの一方(第4レンズL4)が接触レンズ(第5レンズ体L50)と隣接することにより、接触レンズ(第5レンズ体L50)に対する非接触レンズ(第4レンズL4)の光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まる構成とされている。
この場合には、接触レンズ(第5レンズ体L50)と隣接しない非接触レンズ(第3レンズL3)の光軸Aと垂直な方向における位置が、この非接触レンズ(第3レンズL3)と隣接する他の非接触レンズ(第4レンズL4)を介して接触レンズ(第5レンズ体L50)によって定まる。このため、レンズ系において、接触レンズの数を少なく、非接触レンズの数を多くすることができ、温度変動がある場合のレンズ系と鏡筒の熱膨張差に起因して、レンズと鏡筒10の膨張や収縮の差によりレンズに歪みが発生してしまうことを防ぐことができる。
【0063】
(4)係合構造は、光軸Aと平行な面と光軸Aと交差する面で形成された段差部L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L50Aである。
これにより、組み立ての際に、レンズの係合構造同士を係合させることが容易となる。
(5)接触レンズ(第5レンズ体L50)において、外周部(第5レンズ体外周面L50C)における鏡筒10と接する部分である圧入部PPと、係合構造(段差部L50A)とは、光軸A方向、及び光軸Aからみた径方向において、異なる位置に設けられている。
これにより、接触レンズ(第5レンズ体L50)の圧入時や温度変動があった際に圧入部PPに力が加わっても、圧入部PPと段差部L50Aが離間しているため、段差部L50Aを介して固定される非接触レンズ(第4レンズL4)と接触レンズ(第5レンズ体L50)の位置関係はこれによる悪影響を受けにくくなる。
【0064】
(6)接触レンズ(第5レンズ体L50)における光軸Aを中心とした外径が物体側から像側に向けて小さくなるように設定された外周面L50Cが、鏡筒10と接する。
これにより、接触レンズ(第5レンズ体L50)の第2収容部10Bへの挿入、装着が特に容易となる。
(7)接触レンズ(第5レンズ体L50)は、ガラスレンズ(第5レンズL5)と、これを光軸Aの外側から支持し外周面(第5レンズ体外周面L50C)を有する樹脂材料製のレンズホルダ51と、を具備する。
これにより、ガラス製の(第5レンズL5)を用いた場合でも、第5レンズL5とレンズホルダ51とが一体化されたレンズ体(第5レンズ体L50)を、他の樹脂材料製のレンズ(プラスチックレンズ)と同様に扱うことができ、例えばこのレンズ体(第5レンズ体L50)を接触レンズとして用いることができる。
【0065】
(8)非接触レンズとして、第2レンズL2の像側で第2レンズL2と隣接する第3レンズL3と、接触レンズ(第5レンズ体L50)の物体側で接触レンズ(第5レンズ体L50)と隣接し、かつ第3レンズL3の像側で第3レンズL3と隣接する第4レンズL4を具備し、像側レンズL60は、接触レンズ(第5レンズ体L50)の像側で接触レンズ(第5レンズ体L50)と隣接する。
(9)像側レンズL60は、2つのプラスチックレンズ(第6レンズL6、第7レンズL7)が光軸A方向で接合された接合レンズである。
このように第3レンズL3、第4レンズL4、接合レンズL60を上記のレンズ系の中で用いることにより、良好な光学特性をもつレンズユニット1を形成することができる。
【0066】
なお、上記の例以外でも、上記のような弾性部材、あるいは接触レンズ、非接触レンズを含むレンズ系を構成することが可能である。この際、レンズ系における接触レンズや非接触レンズの数は任意である。
【0067】
本発明を、実施形態及びその変形例をもとに説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0068】
1 レンズユニット
10 鏡筒
10A 第1収容部
10B 第2収容部
11 第1載置部
12 第2載置部(載置面)
13 第1レンズ係止部
20 Oリング
30 弾性部材
51 レンズホルダ
60 絞り
61 遮光板
100 撮像素子
A 光軸
Im 像(側)
L1 第1レンズ
L1A 第1レンズ第1下面
L1B 第1レンズ第2下面
L1C 第1レンズ外周面
L2 第2レンズ
L2A 第2レンズ第1上面
L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L50A 段差部(係合構造)
L2C 第2レンズ外周面
L3 第3レンズ
L3C 第3レンズ外周面
L4 第4レンズ
L4C 第4レンズ外周面
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
L6A 接合レンズ上面
L6B 接合レンズ下面
L6C 第6レンズ外周面
L7 第7レンズ
L50 第5レンズ体
L50B 突出部
L50C 第5レンズ体外周面
L60 接合レンズ(像側レンズ)
Ob 物体(側)
PP 圧入部
R1 第1表面
R2 第2表面