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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】サスペンションブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20240717BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240717BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16F1/387 F
F16F1/387 A
F16F15/08 C
F16F15/08 K
F16F7/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019173218
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050762
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】細田 真樹
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/077622(WO,A1)
【文献】特開2001-280386(JP,A)
【文献】特開2002-021931(JP,A)
【文献】実開昭57-062121(JP,U)
【文献】特開2018-034613(JP,A)
【文献】特開2014-162277(JP,A)
【文献】特開2007-132386(JP,A)
【文献】特開2007-139003(JP,A)
【文献】特開2006-329394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
F16F 7/00-7/14
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、外筒と、前記内筒と前記外筒とを連結する弾性体と、前記弾性体から軸方向外側に突出している軸方向ストッパと、を備えており、
前記弾性体には、軸方向に貫通する、2つの空洞部が前記内筒を挟んで互いに向かう合う位置に形成されており、
前記2つの空洞部には、それぞれ、前記外筒から前記内筒に向かう方向に突出する軸直方向ストッパが形成されており、
2つの前記軸直方向ストッパは、それぞれ、軸方向視において、前記空洞部の周方向中央よりも周方向外側のそれぞれに傾斜面を備えており、さらに、当該2つの前記軸直方向ストッパは、それぞれ、軸方向断面視において、2つの前記傾斜面の間に、前記軸方向に対して平行に延在している中間面を備えており、
加えて、当該2つの前記軸直方向ストッパは、それぞれ、前記空洞部の周方向外側に、2つの膨出部を備えており、
前記2つの前記傾斜面は、それぞれ、軸方向断面視において、前記傾斜面の軸方向内側端から当該傾斜面の軸方向外側端に向かうに従い径方向外側に傾斜しており、かつ、前記膨出部の軸方向端部に形成された傾斜面であり、
前記空洞部は、軸方向視において、前記軸方向ストッパに対して周方向で異なる位置に配置されており、
前記傾斜面は、軸方向視において、前記空洞部の周方向中央よりも周方向外側のみに備えられている、サスペンションブッシュ。
【請求項2】
前記サスペンションブッシュは、トレーリングアームブッシュである、請求項に記載のサスペンションブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサスペンションブッシュには、内筒および外筒を結合するゴム弾性体に設けられた空洞部の周方向中央部でのストッパ機能を確保しつつ、耐久性を向上することを目的とする防振装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-132386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の防振装置によれば、前記空洞部の形状に関し、当該空洞部の周方向両側に幅広の空間部を形成するととともに当該空間部の開口端部に形成された傾斜面部の傾きを前記幅広の空間部において大きくしたことにより、かかる幅広の空間部の開口端部周りのゴム弾性体のボリュームを減らして、当該ゴム弾性体の加硫成形後の外筒絞り時における当該開口端部周りの皺の発生を抑制できるとともに、自動車への搭載後の荷重入力時にも、前記幅広の空間部の開口部周りにおける歪集中を防止することができる。
【0005】
しかしながら、上記従来の防振装置によれば、ゴム弾性体のボリュームが減少してしまう分、ストッパ機能を犠牲にしてしまうという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができるとともに、耐久性が向上する、サスペンションブッシュを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るサスペンションブッシュは、内筒と、外筒と、前記内筒と前記外筒とを連結する弾性体と、を備えており、前記弾性体には、軸方向に貫通する空洞部が形成されており、前記空洞部には、前記外筒から前記内筒に向かう方向に突出するストッパが形成されており、前記ストッパは、軸方向視において、前記空洞部の周方向中央よりも周方向外側に傾斜面を備えており、前記傾斜面は、軸方向断面視において、前記傾斜面の軸方向内側端から当該傾斜面の軸方向外側端に向かうに従い径方向外側に傾斜しており、前記空洞部は、前記内筒に対して車両装着時の上下方向のいずれか一方側に配置される。本発明に係るサスペンションブッシュによれば、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができるとともに、耐久性が向上する。
【0008】
本発明に係るサスペンションブッシュにおいて、前記ストッパは、2つの前記傾斜面を備えており、前記軸方向断面視において、2つの前記傾斜面の間に、前記軸方向に対して平行に延在している中間面を備えていることが好ましい。この場合、ストッパ機能をより安定的に発揮させることができる。
【0009】
本発明に係るサスペンションブッシュにおいて、前記傾斜面は、軸方向視において、前記空洞部の周方向中央よりも周方向外側のみに備えられていることが好ましい。この場合、空洞部の周方向外側に生じ得る応力集中が重点的に制限された、サスペンションブッシュとなる。
【0010】
本発明に係るサスペンションブッシュは、トレーリングアームブッシュであることが好ましい。この場合、より効果的な耐久性の向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができるとともに、耐久性が向上する、サスペンションブッシュを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るサスペンションブッシュを軸方向から示す側面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4図2のC-C断面図である。
図5図2のD-D断面図である。
図6図2のE-E断面図である。
図7図1のサスペンションブッシュを採用可能な、車両のサスペンション機構の一例を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るサスペンションブッシュについて、説明をする。
【0014】
図1中、符号1は、本発明の一実施形態に係るサスペンションブッシュである。また、符号Oは、サスペンションブッシュ1の中心を通る軸である。本実施形態では、軸Oが延在する方向を「軸方向」という。また、本実施形態では、軸方向から視た状態を「軸方向視」という。また、本実施形態では、軸Oを含む平面で示す断面を「軸方向断面」という。また、本実施形態では、軸方向断面で視ることを「軸方向断面視」という。また、本実施形態では、軸Oに対して直交する方向を「軸直方向」といい、また、「径方向」ともいう。また、本実施形態では、軸Oに対して直交する平面で示す断面を「径方向断面」という。また、本実施形態では、径方向断面で視ることを「径方向断面視」という。さらに、軸Oを中心に周る方向を「周方向」という。
【0015】
図1に示すように、サスペンションブッシュ1は、内筒2と、外筒3と、内筒2および外筒3を連結する弾性体4と、当該弾性体4から軸方向外側に突出している軸方向ストッパ5と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態では、軸方向視において、内筒2と、外筒3と、は、それぞれ、軸Oを中心とする同心円状に配置されている。本実施形態では、内筒2および外筒3は、炭素鋼、アルミ合金等の金属で形成されている。また、本実施形態では、弾性体4は、ゴムで形成されている。ただし、弾性体4は、ゴム以外の弾性材料で形成することができる。
【0017】
軸方向ストッパ5は、サスペンションブッシュ1が車両のサスペンションメンバ(サスペンションブッシュ1以外の部材)に対して軸方向に移動したとき、当該サスペンションメンバと接触させることができる。これにより、軸方向ストッパ5は、サスペンションブッシュ1と、前記サスペンションメンバとの軸方向に対する相対的な移動を制限することができる。本実施形態では、軸方向ストッパ5は、前記サスペンションメンバと接触可能な接触面5aを有している。接触面5aは、軸方向ストッパ5の軸方向外側の先端を形成している。
【0018】
また、本実施形態では、軸方向ストッパ5は、弾性体4と一体に形成されている。本実施形態では、弾性体4には、2つの軸方向ストッパ5が形成されている。また、本実施形態では、2つの軸方向ストッパ5は、それぞれ、内筒2を挟んで互いに向かい合う位置に形成されている。本実施形態では、軸方向ストッパ5は、弾性体4とともに、ゴムで形成されている。
【0019】
弾性体4には、軸方向に貫通する空洞部(すぐり穴)6が形成されている。
【0020】
図2は、図1のA-A断面図である。A-A断面は、軸Oに対して平行な断面であって、後述する軸直方向ストッパ7の膨出部71が最も膨出(突出)している部分(膨出部61の稜線)を通る断面である。図2に示すように、空洞部6は、軸Oに沿って延在しているとともに弾性体4を貫通している。
【0021】
また、図3は、図1のB-B断面図である。B-B断面は、図1に示すように、軸Oに対して平行な断面であって、当該軸Oを含む断面である。図3に示すように、本実施形態では、弾性体4には、2つの空洞部6が形成されている。2つの空洞部6は、それぞれ、内筒2を挟んで互いに向かい合う位置に形成されている。
【0022】
再び図1を参照すれば、本実施形態において、2つの空洞部6は、弾性体4に、内筒2と外筒3とを連結する脚部4aを形作っている。本実施形態では、内筒2と外筒3とは、内筒2を挟んで互いに向かう位置に形成された2つの脚部4aによって連結されている。
【0023】
空洞部6には、外筒3から内筒2に向かう方向に突出する軸直方向ストッパ7が形成されている。
【0024】
本実施形態では、軸直方向ストッパ7は、弾性体4に形成された空洞部6によって形作られている。本実施形態では、1つの空洞部6に対して1つの軸直方向ストッパ7が形成されている。即ち、本実施形態では、2つの軸直方向ストッパ7は、それぞれ、内筒2を挟んで互いに向かい合う位置に形成されている。本実施形態では、空洞部6は、図1に示すように、軸方向視において、B-B線を基準線として、当該B-B線を挟んで線対称な形状である。即ち、本実施形態では、空洞部6は、軸方向視において、軸Oを通る直径(軸線)を挟んで線対称な形状である。したがって、本実施形態において、軸直方向ストッパ7も、軸方向視において、軸Oを通る直径(軸線)を挟んで線対称な形状である。
【0025】
軸直方向ストッパ7は、図1に示すように、軸方向視において、空洞部6の周方向中央よりも周方向外側に傾斜面7aを備えている。
【0026】
本実施形態では、空洞部6の周方向中央は、B-B線が通る位置である。また、本実施形態では、傾斜面7aは、図1に示すように、軸直方向ストッパ7を形作る空洞部6の開口縁部のうちの、当該空洞部6の周方向外側に位置する、当該空洞部6の開口縁部に形成された傾斜面である。具体的には、本実施形態において、軸直方向ストッパ7は、空洞部6の周方向外側に、2つの膨出部71を備えている。本実施形態では、2つの膨出部71は、図1に示すように、空洞部6の周方向外側に間隔を置いて配置されている。膨出部71は、図1に示すように、脚部4aに向かって膨出している。本実施形態では、2つの膨出部71は、それぞれ、図1に示すように、脚部4aと対向する位置に配置されている。図1に示すように、本実施形態では、傾斜面7aは、膨出部71の軸方向端部に形成された傾斜面である。
【0027】
再び図2を参照すれば、2つの傾斜面7aは、それぞれ、軸方向断面視において、傾斜面7aの軸方向内側端7a1から当該傾斜面7aの軸方向外側端7a2に向かうに従い径方向外側に傾斜している。即ち、軸直方向ストッパ7は、空洞部6の周方向外側のみに傾斜面7aを備えており、空洞部6の周方向中央に傾斜面7aを備えていない。本実施形態では、2つの傾斜面7aの一方は、空洞部6の周方向外側の一方に配置されており、また、2つの傾斜面7aの他方は、空洞部6の周方向外側の一方に配置されている。ただし、傾斜面7aは、軸方向両側の少なくともいずれか一方のみとすることができる。
【0028】
本実施形態において、軸直方向ストッパ7は、2つの傾斜面7aを備えている。さらに、本実施形態では、図2に示すように、軸方向断面視において、2つの傾斜面7aの間に、軸方向に対して平行に延在している中間面7bを備えている。
【0029】
本実施形態では、中間面7bには、図2に示すように、2つの傾斜面7aが、それぞれ、連なっている。即ち、本実施形態では、膨出部71の表面は、2つの傾斜面7aと中間面7bとによって形成されている。これにより、本実施形態では、膨出部71の中間面7bが、主として脚部4aと接触し、例えば、内筒2のねじれによって副次的に、膨出部71の傾斜面7aを脚部4aと接触させることできる。
【0030】
また、図1を参照すれば、本実施形態において、2つの軸直方向ストッパ7は、それぞれ、軸方向視において、2つの膨出部71の間に、底面7cを備えている。本実施形態では、底面7cは、空洞部6の周方向中央に配置されている。底面7cは、図1に示すように、外筒3に向かって凹んでいる。本実施形態では、底面7cは、図1に示すように、内筒2と対向する位置に配置されている。図3に示すように、本実施形態では、底面7cは、軸方向に対して平行に延在している。ただし、底面7cは、2つの軸直方向ストッパ7の少なくともいずれか一方のみとすることができる。
【0031】
空洞部5は、軸方向視において、軸方向ストッパ5に対して周方向で異なる位置に配置されている。図1に示すように、本実施形態では、空洞部5は、軸方向視において、軸方向ストッパ5の接触面5aに対して周方向で異なる位置に配置されている。即ち、本実施形態において、空洞部5は、軸方向視において、軸方向ストッパ5の接触面5aに対して周方向で、重複しない位置に配置されている。
【0032】
空洞部の開口縁部(開口端部)に傾斜面を有しない、従来のサスペンションブッシュでは、車両装着後の荷重入力時において、弾性体がストッパに接触することによって空洞部6の開口が密着してしまうと、例えば、内筒2がねじれて軸方向一方側に傾いたとき、当該空洞部5の開口縁部周りに歪(応力)を集中させる。このため、上記従来のサスペンションブッシュでは、弾性体に、空洞部6の開口縁部を基点としたクラック(亀裂)が発生してしまう。
【0033】
これに対し、本実施形態に係るサスペンションブッシュ1は、次に説明するような機能を発揮する。
【0034】
図4は、図2のC-C断面図である。図4では、軸直方向ストッパ7に設けられた膨出部71の中間面7b相当部分を径方向断面で示す。また、図5では、図2のD-D断面図である。図5は、軸直方向ストッパ7に設けられた膨出部71の一方の傾斜面7a相当部分を径方向断面で示す。また、図6は、図2のE-E断面図である。図6では、軸直方向ストッパ7に設けられた膨出部71の他方の傾斜面7a相当部分を径方向断面で示す。
【0035】
図4を参照すれば、サスペンションブッシュ1に大きな荷重が入力されることによって、例えば、弾性体4の脚部4aが径方向に変位した場合、軸直方向ストッパ7の中間面7bが弾性体4の脚部4aと接触することによって、過剰な歪(応力)が弾性体4に発生することを抑制する。
【0036】
また、図1に示すように、サスペンションブッシュ1は、軸直方向ストッパ7を形作る空洞部6の周方向外側の開口縁部に傾斜面7aを備えている。図5および図6を参照すれば、軸直方向ストッパ7の中間面7bが弾性体4の脚部4aと接触した状態において、さらに、サスペンションブッシュ1にねじり等の力が入力された場合、弾性体4の脚部4aを形作る空洞部6の開口縁部は、軸直方向ストッパ7の傾斜面7aの分だけ、当該軸直方向ストッパ7に接触することなく、軸Oに対してより大きく変位させることができる。即ち、サスペンションブッシュ1によれば、軸直方向ストッパ7の中間面7bが弾性体4の脚部4aと接触した後も、軸直方向ストッパ7の傾斜面7aの分だけ、弾性体4の脚部4a全体をより大きく伸ばすことができる。したがって、本実施形態によれば、空洞部6の開口縁部周りに生じ得る、局所的な応力集中を回避することができるので、弾性体4の亀裂の発生を遅らせることができる。
【0037】
加えて、図1等に示すように、サスペンションブッシュ1によれば、軸直方向ストッパ7が空洞部6の周方向外側まで拡大するため、弾性体4のボリューム(ゴムボリューム)を大きく確保することができる。このため、本実施形態によれば、従来のサスペンションブッシュのように、弾性体のボリュームが減少してしまう分、ストッパ機能を犠牲してしまうことがないので、様々な方向からの荷重に対してストッパ機能を発揮することができる。したがって、本実施形態によれば、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るサスペンションブッシュ1によれば、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができるとともに、耐久性が向上する。
【0039】
ところで、ゴム等の弾性材料に用いて弾性体4を射出成形する場合を考慮すると、空洞部6が、軸方向視において、軸方向ストッパ5に対して周方向で、ほぼ同じ位置(例えば、重複する位置)となる場合、前記弾性材料の流れ(流動性)が悪くなり、当該弾性材料が成形型の細部にまで充填できないことが懸念される。
【0040】
これに対し、本実施形態に係るサスペンションブッシュ1によれば、空洞部6は、軸方向視において、軸方向ストッパ7に対して周方向で異なる位置に配置されている。この場合、脚部4aと軸方向ストッパ5が周方向で、ほぼ同じ位置となるため、前記弾性材料の流動性を確保することができる。即ち、本実施形態によれば、前記弾性材料の流動性が良好なものとなり、当該弾性材料を成形型の細部にまで、より効率的に充填させることができる。したがって、本実施形態に係るサスペンションブッシュ1は、成形性に優れたサスペンションブッシュとなる。
【0041】
また、図2に示すように、本実施形態において、軸直方向ストッパ7は、軸方向断面視において、2つの傾斜面7aの間に中間面7bを備えている。この場合、軸直方向ストッパ7の中間面7bが主として脚部4aと接触し、副次的に、膨出部71の傾斜面7aが脚部4aと接触させることできる。このため、本実施形態によれば、ストッパ機能をより安定的に発揮させることができる。
【0042】
また、図1に示すように、本実施形態では、軸直方向ストッパ7の傾斜面7aは、軸方向視において、空洞部6の周方向中央よりも周方向外側のみに備えられている。この場合、空洞部6の周方向外側に生じ得る応力集中、本実施形態では、弾性体4の脚部4aに生じ得る応力集中が重点的に制限された、サスペンションブッシュとなる。
【0043】
上述のように、本実施形態によれば、より広い使用条件でストッパ機能を発揮することができるとともに、耐久性が向上する、サスペンションブッシュ1を提供することができる。
【0044】
図7は、サスペンションブッシュ1を採用可能なサスペンション機構100の一例を概略的に示す平面図である。
【0045】
本例のサスペンション機構100は、車両後側に配置されたトーションビーム式のサスペンション機構である。本例では、サスペンション機構100は、車幅方向に間隔を置いて配置された2つのトレーリングアーム110と、車幅方向に延在している1つのトーションビーム120と、を備えている。本例では、2つのトレーリングアーム110は、それぞれ、車両前後方向に延在している。また、2つのトレーリングアーム110は、それぞれ、トーションビーム120によって一体に連結されている。本例では、トレーリングアーム110の前端部110aには、サスペンションブッシュ1の外筒3が装着されている。また、この例では、サスペンションブッシュ1の内筒2は、車体側に設けられた固定部130に連結されている。即ち、トレーリングアーム110は、サスペンションブッシュ1を介して車両側に接続されている。また、トレーリングアーム110の後端部110bには、後輪140が回転可能に接続されている。本例では、サスペンションブッシュ1は、主として、コンプライアンスブッシュとして機能する。
【0046】
また、本実施形態に係るサスペンションブッシュ1は、上述のようなサスペンション機構を構成するトレーリングアーム110に装着されるトレーリングアームブッシュであることが好ましい。この場合、荷重が複雑に入力されるトレーリングアーム110のブッシュとして使用されるため、より効果的な耐久性の向上を実現することができる。
【0047】
上述したところは、本発明の一実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上述の各実施形態において、サスペンション装置100(車両)に対してサスペンションブッシュ1を組み付けたときの、空洞部5の配置は、上述の実施形態の配置に限定されるものではない。即ち、空洞部5の配置は、サスペンションブッシュ1が受ける加速及び制動(減速)の向きに応じて変更され得る。
【符号の説明】
【0048】
1:サスペンションブッシュ, 2:内筒, 3:外筒, 4:弾性体, 4a:弾性体の脚部, 5:軸方向ストッパ, 5a:接触面, 6:空洞部, 7:軸直方向ストッパ, 71:膨出部, 7a:傾斜面, 7a1:傾斜面の軸方向内側端, 7a2:傾斜面の軸方向外側端, 7b:中間面, 7c:底面, O:軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7