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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/02 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C23F1/02
H01L21/306 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238886
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107567
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 裕次
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-011894(JP,A)
【文献】特開2012-222330(JP,A)
【文献】特開2019-003999(JP,A)
【文献】特開2018-164067(JP,A)
【文献】特開2016-213252(JP,A)
【文献】特開平03-082186(JP,A)
【文献】特表2000-506829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F1/00-3/06
H01L21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のパターンの被処理面を有する基板の凸部の上面をエッチング処理する基板処理方法であって、
少なくとも前記凸部の上面をエッチング可能な第1の液を前記被処理面に供給するステップと、
少なくとも前記凹凸のパターンの凹部に対する前記第1の液のエッチングを阻害する第2の液を前記被処理面に供給するステップと、
を有し、
前記第2の液を供給するステップの後に、前記凹部が前記第2の液で満たされた前記被処理面に前記第1の液を供給するステップを行い、
前記第2の液を供給するステップと、前記第1の液を供給するステップと、を交互に複数回行う、
基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の液を供給するステップでは、
前記第1の液として、オキソ酸構造を有する酸化剤水溶液およびO水溶液の少なくともいずれかを供給し、
前記第2の液を供給するステップでは、
前記第2の液として、NHOH、第二級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンの少なくともいずれかを有する水溶液、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、炭酸エチレン、並びに炭酸プロピレンの少なくともいずれかを供給する、
請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2の液を供給するステップでは、
前記凹凸のパターンの凹部を前記第2の液で満たすとともに前記凸部を前記第2の液で覆い、
前記第1の液を供給するステップでは、
前記凹部を前記第2の液で満たしたまま、前記凸部における前記第2の液を前記第1の液で置換する、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
凹凸のパターンの被処理面を有する基板の凸部の上面をエッチング処理する基板処理装置であって、
少なくとも前記凸部の上面をエッチング可能な第1の液を前記被処理面に供給する第1の液供給部と、
少なくとも前記凹凸のパターンの凹部に対する前記第1の液のエッチングを阻害する第2の液を前記被処理面に供給する第2の液供給部と、
前記基板を支持しつつ回転させる回転部と、
前記第1の液供給部、前記第2の液供給部、及び前記回転部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記回転部を制御して前記基板を回転させながら、前記第2の液供給部を制御して、前記第2の液を前記被処理面に供給させた後に、前記第1の液供給部を制御して前記凹部が前記第2の液で満たされた前記被処理面に前記第1の液を給させ、
前記第2の液の前記被処理面への供給と、前記第1の液の前記被処理面への供給と、を交互に複数回行うよう前記第1の液供給部および前記第2の液供給部を制御する、
基板処理装置。
【請求項5】
前記凸部の上面のエッチング処理が終了したことを検知する終点検出部を備え、
前記制御部は、
前記終点検出部が終点を検出すると、前記第2の液の前記被処理面への供給と、前記第1の液の前記被処理面への供給と、の繰り返しを終了するよう前記第1の液供給部および前記第2の液供給部を制御する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の液は、オキソ酸構造を有する酸化剤水溶液およびO水溶液の少なくともいずれかであり、
前記第2の液は、NHOH、第二級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンの少なくともいずれかを有する水溶液、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、炭酸エチレン、並びに炭酸プロピレンの少なくともいずれかである、
請求項4または5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記被処理面は、W,Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Crの少なくともいずれかを含む金属部材または金属酸化物部材を有する、
請求項6に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置または液晶パネル等の製造工程において、凹凸のパターンを有する基板の凹部にダメージを与えることなく、凸部の上面のみを除去するという要求がある。
【0003】
このような要求に対し、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用い、基板表面を研磨する手法が考えられる。また例えば、高密度のプラズマを用いてエッチング処理する手法が考えられる。また例えば、特許文献1のように、触媒となる白金等の凸面を基板表面に押し当てて、その部分を薬液により腐食させることで、基板凸部の上面を除去する手法が知られている。
【0004】
しかしながら、CMP技術を用いた研磨では、研磨パッドを基板に直接接触させて研磨するため、凹部と凸部とを有する基板にダメージを与える恐れがある。研磨剤が凹部内に残り、後の工程に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0005】
また、高密度のプラズマを用いたエッチング処理は、微細加工性に優れ、高アスペクト比の加工形状を得ることができるものの、凹部内にまでエッチングが進行して凹部にダメージを与えてしまう恐れがある。
【0006】
また、特許文献1の技術では、基板表面のうち白金の凸面が当たっていない部分の腐食が進まず、基板凸部の上面全体を均一に除去することが困難である。このため、基板凸部の上面に除去残りが生じてしまう懸念もある。
【0007】
ここで、基板処理装置には、ウェハまたは液晶基板等の基板を薬液により処理し、薬液処理後に基板の被処理面をリンス用の処理液により洗い流し、リンス後に基板を乾燥する装置がある。このような処理では、基板の全面に薬液を行き渡らせることで、基板凸部の上面全体を均一に除去することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-054227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、薬液を用いた基板処理では、薬液が基板の凹部にも浸透するため、凹部へのダメージを抑制することが困難である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、凹凸のパターンを有する基板の凹部に対して凸部の上面を選択的に除去することが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態にかかる基板処理方法は、
凹凸のパターンの被処理面を有する基板の凸部の上面をエッチング処理する基板処理方法であって、
少なくとも前記凸部の上面をエッチング可能な第1の液を前記被処理面に供給するステップと、
少なくとも前記凹凸のパターンの凹部に対する前記第1の液のエッチングを阻害する第2の液を前記被処理面に供給するステップと、
を有し、
前記第2の液を供給するステップの後に、前記凹部が前記第2の液で満たされた前記被処理面に前記第1の液を供給するステップを行い、
前記第2の液を供給するステップと、前記第1の液を供給するステップと、を交互に複数回行う。
【0012】
実施形態にかかる基板処理装置は、
凹凸のパターンの被処理面を有する基板の凸部の上面をエッチング処理する基板処理装置であって、
少なくとも前記凸部の上面をエッチング可能な第1の液を前記被処理面に供給する第1の液供給部と、
少なくとも前記凹凸のパターンの凹部に対する前記第1の液のエッチングを阻害する第2の液を前記被処理面に供給する第2の液供給部と、
前記基板を支持しつつ回転させる回転部と、
前記第1の液供給部、前記第2の液供給部、及び前記回転部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記回転部を制御して前記基板を回転させながら、前記第2の液供給部を制御して、前記第2の液を前記被処理面に供給させた後に、前記第1の液供給部を制御して前記凹部が前記第2の液で満たされた前記被処理面に前記第1の液を給させ、
前記第2の液の前記被処理面への供給と、前記第1の液の前記被処理面への供給と、を交互に複数回行うよう前記第1の液供給部および前記第2の液供給部を制御する。

【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、凹凸のパターンを有する基板の凹部に対して凸部の上面を選択的に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかる基板処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】実施形態にかかる基板処理装置で処理される基板の構成の一例を示す断面図である。
図3】実施形態にかかる基板処理装置における基板の処理の一例を示す断面図である。
図4】実施形態にかかる基板処理方法の手順の一例を示すフロー図である。
図5】実施形態の実施例1にかかる基板処理方法を適用可能な基板の構成の一例を示す断面斜視図である。
図6】実施形態の実施例2にかかる基板処理方法を適用可能な基板の構成の一例を示す断面斜視図である。
図7】実施形態にかかる基板処理方法を適用可能な基板の構成の一例を示す断面図である。
図8】実施形態にかかる基板処理方法を適用可能な基板の構成の一例を示す断面図である。
図9】実施形態の変形例にかかる基板処理方法を適用可能な基板の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
実施形態について図1図9を用いて説明する。
【0016】
(基板処理装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる基板処理装置10の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、基板処理装置10は、処理室20、カップ30、支持部40、回転機構50、処理液供給部61~64、カメラ70、及び制御部80を備える。基板処理装置10は、基板90の被処理面91を処理する装置として構成される。基板90は、被処理面91に例えば凹部と凸部とを有する。
【0017】
処理室20は基板90を処理する容器である。処理室20は、例えば直方体または立方体等の箱型を有しており、カップ30、支持部40、回転機構50、及びカメラ70等を収容している。処理室20の底面には使用後の処理液等を排出する排出管21が接続されている。また、処理室20の底面に、支持部40に支持された基板90を冷却する冷却水を基板90の裏面側へと供給する基板冷却機構(不図示)が配置されていてもよい。処理室20内は、ドライエア(Nガス)等の清浄な気体の垂直層流(ダウンフロー)により清浄に保たれている。処理室20内にはNガス等の不活性ガスが供給され、処理室20内の酸素濃度が抑えられている。
【0018】
カップ30は、円筒形状を有し、処理室20内の略中央に配置されている。カップ30は、その内部に支持部40及び回転機構50を収容するように構成されている。カップ30の上部は内側に向かって傾斜している。また、カップ30の上端部は開口しており、支持部40上に支持された基板90の被処理面91は上方に向かって開放されている。カップ30は、回転する基板90から飛散した処理液および流れ落ちた処理液等を捕捉し、処理室20に接続される排出管21へと導く。
【0019】
支持部40は、カップ30内の略中央に配置され、平板状の上面に基板90を水平状態に支持する。支持部40が有する複数の固定部材41は、支持部40に支持された基板90を固定する。支持部40は、水平面内で周方向に回転可能なように回転機構50上に設置されている。基板90は、基板90上面の被処理面91の中心が支持部40の回転軸上に位置するよう支持部40に支持される。支持部40は、スピンテーブルと呼ばれることがある。
【0020】
回転機構50は、支持部40の下部に接続され、支持部40を水平面内で周方向に回転させるように構成されている。回転機構50は、例えば支持部40の中央に連結されたシャフト及びシャフトを回転させるモータ等を有しており、モータの駆動によりシャフトを介して支持部40を回転させる。
【0021】
主に、支持部40と回転機構50とにより、基板90を支持しつつ周方向に回転させる回転部が構成される。
【0022】
第1の液供給部としての処理液供給部61は、配管61a、バルブ61b、及び吐出口61cを備え、例えば、第1の液としての次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム((CHNClO)水溶液を処理室20内の基板90の被処理面91に供給する。配管61aの一端は第1の液が貯留されるタンク(不図示)に接続され、他端の吐出口61cは処理室20内に挿入されている。配管61aの先端部は、吐出口61cが基板90の被処理面91の略中央部と対向する供給位置と、吐出口61cが基板90の被処理面91とは対向しない待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能に構成される。第1の液の供給時、吐出口61cは供給位置に移動して基板90の被処理面91に第1の液を供給し、それ以外の時には待機位置にて待機する。タンク内の第1の液は、ポンプ等の送液力によって配管61aへと流れる。配管61aには電磁弁等のバルブ61bが設けられている。バルブ61bは、配管61aの上流側と下流側とを連通させる開閉弁として機能するとともに、第1の液の流量を調整する調整弁としても機能する。
【0023】
ここで、第1の液は、W,Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Cr等およびこれらの酸化物をエッチング除去することが可能である。第1の液としては、上記の他、(CHNClO水溶液以外のオキソ酸構造を有する酸化剤の水溶液、及びオゾン(O)水溶液等を用いることができる。第1の液は、水素電極電位が2V以上であることが好ましい。
【0024】
また、処理液供給部61は、第1の液等の処理液を冷却する処理液冷却機構を備えていてもよい。
【0025】
第2の液供給部としての処理液供給部62は、配管62a、バルブ62b、及び吐出口62cを備え、例えば、第2の液としてのアンモニア水溶液(NHOH)を処理室20内の基板90の被処理面91に供給する。配管62aの一端は第2の液が貯留されるタンク(不図示)に接続され、他端の吐出口62cは処理室20内に挿入されている。配管62aの先端部は、吐出口62cが基板90の被処理面91の略中央部と対向する供給位置と、吐出口62cが基板90の被処理面91とは対向しない待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能に構成される。第2の液の供給時、吐出口62cは供給位置に移動して基板90の被処理面91に第2の液を供給し、それ以外の時には待機位置にて待機する。タンク内の第2の液は、ポンプ等の送液力によって配管62aへと流れる。配管62aには電磁弁等のバルブ62bが設けられている。バルブ62bは、配管62aの上流側と下流側とを連通させる開閉弁として機能するとともに、第2の液の流量を調整する調整弁としても機能する。
【0026】
ここで、第2の液は、W,Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Cr等およびこれらの酸化物との反応性を示さない液である。また、第2の液は、上述の第1の液と反応して第1の液を分解する液であることが好ましい。また、第2の液は、粘度が1cP以上で、表面張力が70mN/m以下であることが好ましい。上述のアンモニア水溶液は、上記に挙げた金属およびこれらの酸化物との反応性を示さず、かつ、第1の液を分解する。このような第2の液としては、アンモニア水溶液の他、メチルアミン(CHNH)、ジメチルアミン((CHNH)、及びコリン((CHN(OH)CHCHOH)水溶液等の第二級~第四級アンモニウムカチオンを生成する水溶液等を用いることができる。また、少なくとも上記に挙げた金属およびこれらの酸化物との反応性を示さない第2の液として、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、炭酸エチレン、及び炭酸プロピレン等を用いることができる。
【0027】
また、処理液供給部62は、第2の液等の処理液を冷却する処理液冷却機構を備えていてもよい。
【0028】
第1の洗浄液供給部としての処理液供給部63は、配管63a、バルブ63b、及び吐出口63cを備え、例えば、第1の洗浄液としての純水を処理室20内の基板90の被処理面91に供給する。配管63aの一端は第1の洗浄液が貯留されるタンク(不図示)に接続され、他端の吐出口63cは処理室20内に挿入されている。配管63aの先端部は、吐出口63cが基板90の被処理面91の略中央部と対向する供給位置と、吐出口63cが基板90の被処理面91とは対向しない待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能に構成される。第1の洗浄液の供給時、吐出口63cは供給位置に移動して基板90の被処理面91に第1の洗浄液を供給し、それ以外の時には待機位置にて待機する。タンク内の第1の洗浄液はポンプ等の送液力によって配管63aへと流れる。配管63aには電磁弁等のバルブ63bが設けられている。バルブ63bは、配管63aの上流側と下流側とを連通させる開閉弁として機能するとともに、第1の洗浄液の流量を調整する調整弁としても機能する。
【0029】
第2の洗浄液供給部としての処理液供給部64は、配管64a、バルブ64b、及び吐出口64cを備え、例えば、第2の洗浄液としてのイソプロピルアルコール(IPA:Isopropyl Alcohol)を処理室20内の基板90の被処理面91に供給する。配管64aの一端は第2の洗浄液が貯留されるタンク(不図示)に接続され、他端の吐出口64cは処理室20内に挿入されている。配管64aの先端部は、吐出口64cが基板90の被処理面91の略中央部と対向する供給位置と、吐出口64cが基板90の被処理面91とは対向しない待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能に構成される。第2の洗浄液の供給時、吐出口64cは供給位置に移動して基板90の被処理面91に第2の洗浄液を供給し、それ以外の時には待機位置にて待機する。タンク内の第2の洗浄液はポンプ等の送液力によって配管64aへと流れる。配管64aには電磁弁等のバルブ64bが設けられている。バルブ64bは、配管64aの上流側と下流側とを連通させる開閉弁として機能するとともに、第2の洗浄液の流量を調整する調整弁としても機能する。
【0030】
ここで、第2の洗浄液は揮発性を有する有機溶剤等であればよい。第2の洗浄液としては、IPAの他、エタノール等の1価のアルコール類、ジエチルエーテル及びエチルメチルエーテル等のエーテル類、並びに炭酸エチレン等を用いることができる。
【0031】
なお、これらの処理液供給部61~64の配管61a~64aは、それぞれが独立または同期して互いに干渉することなく移動することが可能に構成されている。
【0032】
撮像部としてのカメラ70は、処理室20内の上方に配置される。カメラ70は、支持部40に支持された基板90の被処理面91を撮像可能に構成されている。カメラ70は、撮像した基板90の被処理面91の画像を制御部80へと送信する。制御部80は、色検知機能を備え、基板90の被処理面91の色の変化から基板90に対するエッチング処理の終点を検出する。
【0033】
主に、カメラ70と、制御部80の一部機能とにより、エッチング処理の終点を検出する終点検出部が構成される。
【0034】
制御部80は、マイクロコンピュータ、並びに基板処理に関する基板処理情報及び各種プログラム等を記憶する記憶部等を備え、基板処理情報および各種プログラムに基づいて基板処理装置10の各部を制御する。すなわち、制御部80は、回転機構50により支持部40の回転動作を行わせる。また、制御部80は、処理液供給部61~64のバルブ61b~64b及びポンプ等を駆動させて、処理液供給部61~64により処理液の供給動作を行わせる。また、制御部80は、カメラ70により基板90の被処理面91を撮像させて、得られた画像に基づきエッチング処理の終点検出を行う。また例えば、基板処理装置10においては、基板処理に必要な各種の設定値がレシピによって一元管理される。制御部80は、このようなレシピを管理し、また、レシピにしたがう処理を基板処理装置10に行わせる。つまり、制御部80は、レシピに応じて上記各部の制御を行ってもよい。
【0035】
(基板処理装置の動作)
次に、図2及び図3を用いて、実施形態の基板処理装置10による基板処理動作について説明する。まずは、基板処理装置10の基板処理動作により処理される基板90の構成例について説明する。
【0036】
図2は、実施形態にかかる基板処理装置10で処理される基板90の構成の一例を示す断面図である。図2に示すように、基板90は、被処理面91として、凹部92rと凸部92cとを含むパターン92を有する。パターン92は、例えば基板90上のシリコン酸化層等の絶縁層93に形成されている。凹部92rは、例えば絶縁層93に形成されたホールまたは溝等である。凹部92rの深さはミクロンオーダであり、例えば4μm~5μm程度である。凹部92rの間口、つまり、ホール径または溝幅はナノレベルであり、例えば100nm程度である。凸部92cの上面には、例えばメタルマスク94が配置されている。メタルマスク94は、凹部92rを形成する際に用いられたハードマスクであり、例えばタングステン(W)等の部材から構成される。
【0037】
なお、メタルマスク94は、上記のWに加え、Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Crの少なくともいずれかを含む金属または金属酸化物から構成されていてもよい。
【0038】
基板90は例えばウェハまたは液晶基板等であり、基板90からは、この後、半導体装置または液晶パネル等が製造される。実施形態の基板処理方法においては、半導体装置または液晶パネル等の構成要素の一部となる凹部92rの形状を維持しつつ、不要な構成であるメタルマスク94を除去する。
【0039】
実施形態の基板処理方法では、まず、処理室20内の支持部40上に基板90が搬送される。制御部80は、回転機構50により支持部40を所定の回転数で回転させる。これにより、支持部40上の基板90も所定の回転数で回転する。
【0040】
また、制御部80は、カメラ70により、支持部40上の基板90の被処理面91の撮像を開始させる。
【0041】
次に、基板90に第2の液が供給される。すなわち、制御部80は、第2の液を供給する配管62aの先端部を供給位置に移動させ、バルブ62bを開き、また、ポンプを作動させて、タンク内に貯留される第2の液を配管62aへと流す。配管62a内を流れた第2の液は吐出口62cから吐出される。吐出口62cから吐出された第2の液は、支持部40上の基板90の被処理面91中央付近に供給され、基板90の回転による遠心力によって被処理面91の全体に広がる。その様子を図3に示す。
【0042】
図3は、実施形態にかかる基板処理装置10における基板90の処理の一例を示す断面図である。図3(a)に示すように、第2の液は、凸部92cの上面全体に広がるとともに凹部92r内にも進入し、凹部92r内が第2の液で満たされる。このとき、例えば第2の液を上記の粘度および表面張力を満たす液とすることで、凹部92r内への第2の液の浸透性を高めることができる。なお、このとき、図示しない基板冷却機構により基板90を冷却しつつ、第2の液を基板90に供給してもよい。すなわち、制御部80は、基板冷却機構により冷却水を基板90の裏面側へと供給させる。または、制御部80は、処理液供給部62に設けられた処理液冷却機構により、冷却した第2の液を基板90に供給してもよい。これにより、第2の液が冷却される。このため、第2の液の粘性が増し、より長い時間、第2の液が凹部92r内に留まりやすくなる。
【0043】
所定時間経過後、基板90への第2の液の供給が停止される。すなわち、制御部80は、ポンプを停止させ、また、バルブ62bを閉じる。そして、制御部80は、配管62aの先端部を待機位置に移動させる。
【0044】
次に、基板90に第1の液が供給される。すなわち、制御部80は、第1の液を供給する配管61aの先端部を供給位置に移動させ、バルブ61bを開き、また、ポンプを作動させて、タンク内に貯留される第1の液を配管61aへと流す。配管61a内を流れた第1の液は吐出口61cから吐出される。吐出口61cから吐出された第1の液は、支持部40上の基板90の被処理面91中央付近に供給され、基板90の回転による遠心力によって被処理面91の全体に広がる。
【0045】
図3(b)に示すように、基板90に第1の液が供給されると、凸部92cの上面は比較的速やかに、第2の液から第1の液へと置き換えられる。上述のように、第1の液は、タングステン等の金属および金属酸化物に対し反応性を有する。よって、凸部92c表層のメタルマスク94は徐々にエッチングされていく。
【0046】
一方、凹部92r内に進入した第2の液は、例えばごく短い時間では、凸部92cの上面ほど速やかには置換されない。つまり、第2の液は比較的高い粘性を有するため、凹部92r内に留まりやすい。このため、凹部92r内を満たす第2の液により、少なくとも所定時間の間、凹部92r内への第1の液の進入が阻まれる。そして、凹部92r内が第2の液で満たされている間、第1の液は凹部92rの表面と接触できず、第1の液による凹部92rのエッチングは開始されない。このように、凹部92r内の第2の液は、少なくとも所定の期間、第1の液の凹部92rに対するエッチングを阻害する。
【0047】
ところで、第1の液が例えば(CHNClO水溶液であり、第2の液がアンモニア水溶液である場合、凹部92rのとば口付近にある第1の液と第2の液との界面では、第2の液中のNHOHと、第1の液中の(CHNClOとが以下の反応により互いに分解される。
【0048】
NHOH+(CHNClO→NHCl+HO+(CHNOH
NHCl+(CHNClO→NHCl+HO+(CHNOH
NHCl+NHCl→N+3HCl
【0049】
これにより、凹部92r内への第1の液の進入がよりいっそう阻害される。このように、凹部92r内の第2の液による液膜が、あたかも凹部92rを保護する保護膜として機能し、第1の液による凹部92rのエッチングが阻害される。
【0050】
しかしながら、充分な時間をかければ、凹部92r内も第2の液から第1の液へと徐々に置き換わってしまう。
【0051】
そこで、第1の液が凹部92r内へと進入する前に、基板90への第1の液の供給が停止される。すなわち、制御部80は、ポンプを停止させ、また、バルブ61bを閉じる。そして、制御部80は、配管61aの先端部を待機位置に移動させる。
【0052】
次に、基板90に第2の液が再び供給される。第1の液は、主に凸部92cの上面に存在するので、比較的速やかに第2の液へと置き換わる。このとき、凹部92r内へも新たに第2の液が供給され、凹部92r内を保護するのに充分な液量の第2の液が維持される。
【0053】
第1の液の略全部が第2の液へと置き換わった後に、基板90への第2の液の供給が停止され、基板90に第1の液が再び供給される。
【0054】
このように、図3(c)(d)に示すように、基板90への第2の液の供給と第1の液の供給とを交互に複数回繰り返すことで、第1の液による凹部92r内のエッチングを抑制しつつ、メタルマスク94がエッチング除去される。
【0055】
なお、第2の液の供給期間と第1の液の供給期間とは相互に重なり合わないことが好ましい。第2の液の供給中に第1の液を供給してしまうと、第2の液の液膜により凹部92r内が完全に覆われる前に、第1の液が凹部92r内をエッチングしてしまう恐れがある。また、第1の液の供給中に第2の液を供給してしまうと、第1の液によるメタルマスク94のエッチングが阻害され、基板処理が長時間化してしまう恐れがある。
【0056】
メタルマスク94がエッチング除去されると下地の絶縁層93が露出する。これにより、基板90の被処理面91の色がタングステン等の金属または金属酸化物の色からシリコン酸化物等の色に変化する。制御部80は、カメラ70から受信した基板90の被処理面91の画像の色検知により、被処理面91の色の変化をエッチング処理の終点として検出する。これにより、制御部80は、基板90への第2の液の供給と第1の液の供給とを停止する。
【0057】
次に、基板90に第1の洗浄液が供給される。すなわち、制御部80は、第1の洗浄液を供給する配管63aの先端部を供給位置に移動させ、バルブ63bを開き、また、ポンプを作動させて、タンク内に貯留される第1の洗浄液を配管63aへと流す。配管63a内を流れた第1の洗浄液は吐出口63cから吐出される。吐出口63cから吐出された第1の洗浄液は、支持部40上の基板90の被処理面91中央付近に供給され、基板90の回転による遠心力によって被処理面91の全体に広がる。これにより、基板90の凸部92c上面および凹部92r内に残る第2の液および第1の液は第1の洗浄液に置換され、また、基板90の外周から排出されて、基板90が第1の洗浄液により洗浄される。
【0058】
所定時間経過後、基板90への第1の洗浄液の供給が停止される。すなわち、制御部80は、ポンプを停止させ、また、バルブ63bを閉じる。そして、制御部80は、配管63aの先端部を待機位置に移動させる。
【0059】
次に、基板90に第2の洗浄液が供給される。すなわち、制御部80は、第2の洗浄液を供給する配管64aの先端部を供給位置に移動させ、バルブ64bを開き、また、ポンプを作動させて、タンク内に貯留される第2の洗浄液を配管64aへと流す。配管64a内を流れた第2の洗浄液は吐出口64cから吐出される。吐出口64cから吐出された第2の洗浄液は、支持部40上の基板90の被処理面91中央付近に供給され、基板90の回転による遠心力によって被処理面91の全体に広がる。これにより、基板90の被処理面91の第1の洗浄液は第2の洗浄液に置換され、また、基板90の外周から排出されて、基板90が第2の洗浄液により更に洗浄される。
【0060】
所定時間経過後、基板90への第2の洗浄液の供給が停止される。すなわち、制御部80は、ポンプを停止させ、また、バルブ64bを閉じる。そして、制御部80は、配管64aの先端部を待機位置に移動させる。
【0061】
制御部80は、その後も所定時間、回転機構50による基板90の回転を継続する。第2の洗浄液は揮発性の有機溶剤であるので、基板90の外周から排出されるとともに、比較的速やかに揮発して、基板90が回転乾燥される。その後、基板90は処理室20外へと搬出される。
【0062】
以上により、実施形態の基板処理装置10による基板処理動作が終了する。
【0063】
(基板処理方法)
次に、図4図6を用いて、実施形態の基板処理方法の例について説明する。図4は、実施形態にかかる基板処理方法の手順の一例を示すフロー図である。図5は、実施形態の実施例1にかかる基板処理方法を適用可能な基板90の構成の一例を示す断面斜視図である。図6は、実施形態の実施例2にかかる基板処理方法を適用可能な基板90の構成の一例を示す断面斜視図である。実施形態の基板処理方法は、例えば上述の基板処理装置10にて実施されるものとする。
【0064】
上述のように、基板90が被処理面91に有するパターン92は、溝パターンまたはホールパターンなど様々に異なり得る。以下に延べる実施形態の基板処理方法の例では、被処理面91が有し得るパターン92の例として、基板90が溝パターンを有する場合と、ホールパターンを有する場合とに分けて説明を行う。以下に示すように、異なるパターンを処理するにあたっては、例えば第1の液および第2の液の供給時間および基板90の回転数等を適宜、適正化することが好ましい。ただし、パターン92が異なっても、上述した基板処理のメカニズムは共通であると考えられる。また、パターン92の例は、以下に説明する溝およびホールに限られない。
【0065】
以下、パターン92の違いによる基板処理の違いを判りやすく示すため、より詳細な処理条件について記載するが、それらの処理条件はあくまでも一例である。また、以下に記載する以外にも、第1の液の濃度、吐出量、吐出間隔、および温度、各処理液の濃度比、並びに基板温度等を制御することで、メタルマスク94のエッチング速度、及び凹部92rとのエッチング選択比等を種々に制御することが可能である。
【0066】
図5に示すように、実施例1の基板90は、凹部92rが溝状となっているパターン92aを被処理面91aに有する。具体的には、溝は所定方向に細長く延伸した凹部92rであって、スリットパターンなどとも呼ばれる。また、凸部92cと凹部92rとを合わせてラインアンドスペース(L/S)パターンなどとも呼ばれる。図5の例では、凸部92cの幅と凹部92rの幅とが略等しく、1:1のL/Sパターンとなっているが、凸部92cの幅と凹部92rの幅との比率はこれに限られない。
【0067】
図4に示すように、支持部40上に支持した基板90の回転を開始する(ステップS101)。基板90の回転は、例えば基板処理が終了するまで継続する。また、カメラ70による基板90の被処理面91aの撮像を開始する。カメラ70による撮像は、少なくともエッチング処理の終点が検出されるまで継続する。
【0068】
処理液供給部62により、基板90に第2の液としてのアンモニア水溶液を供給する(ステップS102)。第2の液の濃度は例えば1mol%程度とする。また、第2の液の供給開始時、基板90の回転数を例えば500rpmに調整する。そして所定時間経過後、基板90の回転数を例えば50rpmに減速させる。基板90の回転数を減速させた後も、第2の液の供給を例えば5秒間継続する。またこのとき、基板冷却機構および処理液冷却機構の少なくともいずれかにより、基板90の温度および第2の液の液温の少なくともいずれかを室温以下となるように調整してもよい。その後、第2の液の供給を停止する。
【0069】
上述のように、所定方向に延伸する溝状のパターン92aでは、基板90の回転数が速すぎると、溝内に進入した第2の液が遠心力により溝を伝って基板90の外へ流れ出てしまう。そこで、基板90の回転数を低く抑えれば、溝内に第2の液を溜めやすくすることができる。一方で、第2の液の供給開始時には、基板90の表面全体に第2の液を素早く行き渡らせる必要もある。当初、基板90の回転数を500rpmとしているのはこのためである。その後、第1の液の供給開始前後のタイミングにおいては、溝内に第2の液が溜まっていることがより重要になるため、基板90の回転数を50rpmと、更に低速度に落としている。
【0070】
処理液供給部61により、基板90に第1の液としての(CHNClO水溶液を供給する(ステップS103)。第1の液の濃度は例えば1mol%以下とする。また、基板90の回転数を例えば50rpmに維持しておく。第1の液の供給時間は例えば10秒間とする。その後、第1の液の供給を停止する。
【0071】
上記のように、基板90が低速回転している状態で第1の液が供給されると、エッチング対象のメタルマスク94が配置される凸部92cの上面近傍で、第2の液を第1の液に置き換えることができる。このとき、メタルマスク94の下方に位置する凹部92r内では、まだ第2の液が留まっている状態となっている。ただし、時間の経過とともに凹部92r内における第1の液と第2の液との混合が進行していくので、第1の液の1回あたりの供給時間を適度に抑え、第2の液と第1の液との交互供給を行うようにする。
【0072】
また、溝内への第1の液の進入を抑制し、溝内に溜まった第2の液をより長く溝内に留めておく手法として、第2の液の粘性を高めることも有用である。上記のように、基板冷却機構および処理液冷却機構等により、第2の液の液温を低下させることで、第2の液の粘性を高めることができる。粘性が高まることにより、第2の液は溝内に留まりやすくなり、第1の液は溝内へと進入し難くなる。
【0073】
制御部80は、カメラ70から受信した基板90の被処理面91aの色検知により、終点が検出されたか否かを判定する(ステップS104)。終点が検出されていなければ(ステップS104:No)、ステップS102,S103の処理を繰り返す。終点が検出されていたら(ステップS104:Yes)、ステップS102,S103の繰り返しを終了して次のステップに移行する。
【0074】
処理液供給部63により、基板90に第1の洗浄液としての純水を供給する(ステップS105)。所定時間経過後、第1の洗浄液の供給を停止する。
【0075】
処理液供給部64により、基板90に第2の洗浄液としてのIPAを供給する(ステップS106)。このとき、基板90を高速回転させることで、第2の洗浄液を基板90の外周から排出するとともに、第2の洗浄液の気化を促進させて、溝内等のパターン92aも含め、基板90を比較的速やかに乾燥させることができる。所定時間経過後、第2の洗浄液の供給を停止する。
【0076】
第2の洗浄液の供給停止から所定時間後、基板90の回転を停止する(ステップS107)。
【0077】
以上により、実施例1の基板処理が終了する。
【0078】
図6に示すように、実施例2の基板90は、凹部92rがホール形状となっているパターン92bを被処理面91bに有する。具体的には、ホールは、局所的な領域が深く掘り下げられることで生じた凹部92rである。図6の例では、横断面が略円形であるが、ホールの横断面の形状は、楕円形または小判形(Oval)等であってもよい。また、図6の例では、複数のホールの開口が被処理面91bにグリッド状に並んでいるが、ホールの配置はこれに限られない。
【0079】
ところで、アスペクト比が等しい溝とホールとを比較した場合、溝内よりもホール内に第2の液等の処理液が留まりやすい。このため、以下に示すように、凹部92rがホールであるパターン92bを処理する場合には、比較的速い速度で基板90を回転させることができる。
【0080】
図4に示すように、支持部40上に支持した基板90の回転を開始する(ステップS101)。また、カメラ70による基板90の被処理面91bの撮像を開始する。
【0081】
処理液供給部62により、基板90に第2の液としてのアンモニア水溶液を供給する(ステップS102)。第2の液の濃度は例えば1mol%程度とする。またこのとき、基板90の回転数を例えば500rpmに調整する。第2の液の供給時間は、第2の液がホール内に溜まるまでの時間であって、例えば5秒間とする。その後、第2の液の供給を停止する。なお、第2の液を供給するときは、上述したように第2の液の粘性を高めるために、処理液冷却機構等を用いて第2の液を室温以下にして供給してよい。
【0082】
処理液供給部61により、基板90に第1の液としての(CHNClO水溶液を供給する(ステップS103)。第1の液の濃度は例えば1mol%以下とする。このとき、基板90の回転数を例えば1000rpmに調整する。またこのとき、基板冷却機構により基板90の温度を室温以下となるように調整してもよい。第1の液の供給時間は例えば5秒間とする。その後、第1の液の供給を停止する。
【0083】
上述のように、ホール内に溜まった第2の液は、溝内ほど顕著に遠心力の影響を受けることがない。このため、第1の液を供給する際に、基板90の回転数を高めることで、ホール内では第2の液から第1の液への置換を抑制しつつ、エッチング対象のメタルマスク94が配置される凸部92cの上面近傍では、第2の液から第1の液への置換を速めることができる。つまり、第1の液の供給時に基板90を高速で回転させると、第1の液は遠心力によって速やかに基板90の全面に延び広がった後、基板90外へと排出されるため、基板90の被処理面91bでの滞留が抑制される。したがって、少なくとも短い時間内においては、第1の液がホール内へと進入して第2の液が置換されてしまうのを抑制することができる。
【0084】
なお、時間の経過とともに、ホールの上方部分から、第1の液と第2の液との混合が進行していくことは、上述の溝状のパターン92aの場合と同様である。この過程において、基板90の上面に近いホールの上方では、エッチング対象のメタルマスク94の少なくとも一部が第1の液と接触してエッチングされる。したがって、第1の液の1回あたりの供給時間を適度に抑え、第2の液と第1の液との交互供給を行うようにすることで、ホール内でのエッチングを抑制しつつ、徐々に、メタルマスク94が除去されていく。
【0085】
また、上記のように、必要に応じて、基板冷却機構および処理液冷却機構等により、第2の液の粘性を調整することにより、第2の液のホール内への留まりやすさのよりいっそうの適正化が図りやすくなる。
【0086】
制御部80は、カメラ70から受信した基板90の被処理面91bの色検知により、終点が検出されたか否かを判定する(ステップS104)。終点が検出されていなければ(ステップS104:No)、ステップS102,S103の処理を繰り返す。終点が検出されていたら(ステップS104:Yes)、ステップS102,S103の繰り返しを終了して次のステップに移行する。
【0087】
処理液供給部63により、基板90に第1の洗浄液としての純水を供給する(ステップS105)。所定時間経過後、第1の洗浄液の供給を停止する。
【0088】
処理液供給部64により、基板90に第2の洗浄液としてのIPAを供給する(ステップS106)。このとき、基板90を高速回転させることで、第2の洗浄液を基板90の外周から排出するとともに、第2の洗浄液の気化を促進させる。ホール内における第2の洗浄液の除去性を考慮のうえ基板90の回転数を適正化することで、比較的速やかに基板90を乾燥させることが可能となる。所定時間経過後、第2の洗浄液の供給を停止する。
【0089】
第2の洗浄液の供給停止から所定時間後、基板90の回転を停止する(ステップS107)。
【0090】
以上により、実施例2の基板処理が終了する。
【0091】
なお、ここに記載した基板90の回転数、第1の液および第2の液等の処理液の濃度、及び処理液の供給時間、並びに、ここに記載しなかった処理液の供給量等のその他のパラメータは、基板90が有するパターン92、部材の種類、その他の条件によって様々に異なり得る。換言すれば、基板処理の種々のパラメータは、基板90が有するパターン92、部材の種類、その他の条件に合わせて、予め実験等により適正化することができる。そして、実験等で得られた適正値をレシピ上に設定することで、基板処理に必要な各種の設定値が一元管理される。このレシピ上の設定値には、第1の液と第2の液との交互供給回数等が含まれていてもよい。つまり、カメラ70等を用いた終点検出を行わなくとも、予め実験等により取得した適正値に基づき、第1の液および第2の液の1回あたりの供給時間ならびに交互供給回数等をレシピ上に設定し、そのレシピによって基板処理の終了タイミングを管理してもよい。
【0092】
実施形態の基板処理方法によれば、基板90の凸部92c及び凹部92rを共にエッチング可能な第1の液を基板90の被処理面91に供給するステップは、第1の液のエッチングを阻害する第2の液を基板90に供給するステップの後に行われる。
【0093】
これにより、第1の液を供給する際には、基板90の凹部92r内に進入した第2の液の液膜により、凹部92r内が保護された状態となっている。したがって、第1の液による凹部92rのエッチングを抑制しつつ、凸部92cのメタルマスク94を選択的にエッチング除去することができる。
【0094】
実施形態の基板処理方法によれば、第2の液を供給するステップと、第1の液を供給するステップとを交互に複数回行う。
【0095】
これにより、各処理液を初期状態に近い状態に保つことができ、各処理液の効果の低下を抑制できる。つまり、第2の液による凹部92rの保護効果、及び第1の液によるメタルマスク94のエッチング効果を保つことができる。したがって、凹部92rに対するダメージを抑制しつつメタルマスク94を選択的に除去することが容易となる。
【0096】
また、メタルマスク94の材質および厚さ等に合わせ、処理時間を細かく設定することができ、プロセス制御性が向上するとともに、プロセスマージンが広がる。
【0097】
実施形態の基板処理方法によれば、カメラ70及び制御部80によりメタルマスク94が凸部92cから除去されたことを検知する。これにより、第2の液の基板90への供給と、第1の液の基板90への供給と、の繰り返しを終了する。このように、メタルマスク94の材質および厚さ並びに基板処理条件等に合わせ、リアルタイムで終点を検出することができ、プロセス制御性が向上するとともに、プロセスマージンが広がる。
【0098】
実施形態の基板処理装置10によれば、第2の液および基板90の少なくともいずれかを冷却しながら、第2の液を供給する。また、第1の液の供給時に基板90を冷却してもよい。これにより、直接的に、あるいは基板90を介して、第2の液が冷却されて粘性が高まる。このため、凹部92r内の第2の液が、第1の液によって置換されるまでの時間を延ばすことができる。また、第2の液が第1の液を分解する特性を有する場合、第2の液による分解反応を抑制し、第2の液の消費を抑えて、第2の液の凹部92r内における保護効果を持続させることができる。
【0099】
(適用例)
次に、図7及び図8を用いて、実施形態の基板処理装置10及び基板処理方法の適用例について説明する。図7及び図8は、実施形態にかかる基板処理方法を適用可能な基板90の構成の一例を示す断面図である。図7及び図8の構成に対する処理も、例えば上述の基板処理装置10にて実施される。
【0100】
図7に示すように、実施形態の基板処理装置10及び基板処理方法は、例えばホールまたは溝等である凹部92rの側面にメタル配線層95を有する基板90に対して適用することができる。すなわち、図7の例では、被処理面91xのパターン92xは、例えば基板90上に、絶縁層93とメタル配線層95とが複数交互に積層された積層体96に形成されている。したがって、凹部92r内の壁面には、絶縁層93とメタル配線層95とが交互に露出している。
【0101】
メタル配線層95及びメタルマスク94は、例えばW,Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Cr等およびこれらの酸化物の少なくともいずれかから構成されている。メタル配線層95とメタルマスク94とは、同種の部材から構成されていてもよいし、異種部材から構成されていてもよい。
【0102】
このような構成においても、実施形態の基板処理装置10及び基板処理方法を用いることで、凹部92r内に進入した第2の液で凹部92rが保護された状態で、第1の液が基板90の被処理面91に供給される。したがって、凹部92r内に露出したメタル配線層95へのダメージを抑制しつつ、メタルマスク94をエッチング除去することができる。
【0103】
図8に示すように、実施形態の基板処理装置10及び基板処理方法は、例えばホールまたは溝等である凹部92rの底部にメタル配線層97を有する基板90に対して適用することができる。すなわち、図8の例では、被処理面91yのパターン92yは、メタル配線層97上に形成されている。そして、凹部92rはメタル配線層97の深さにまで達しており、凹部92rの底部にはメタル配線層97が露出している。
【0104】
メタル配線層97及びメタルマスク94は、例えばW,Co,Ru,Ni,Fe,Hf,Cu,Cr等およびこれらの酸化物の少なくともいずれかから構成されている。メタル配線層97とメタルマスク94とは、同種の部材から構成されていてもよいし、異種部材から構成されていてもよい。
【0105】
このような構成においても、実施形態の基板処理装置10及び基板処理方法を用いることで、凹部92r内に進入した第2の液で凹部92rが保護された状態で、第1の液が基板90の被処理面91に供給される。したがって、凹部92rの底部に露出したメタル配線層97へのダメージを抑制しつつ、メタルマスク94をエッチング除去することができる。
【0106】
(変形例)
上述の実施形態の基板処理方法では、凹部92r内を保護しつつ、凸部92cに配置されたメタルマスク94をエッチング除去することとしたが、実施形態の基板処理方法が適用可能な基板は他の材質の部材を有していてもよい。
【0107】
図9は、実施形態の変形例にかかる基板処理方法を適用可能な基板90の構成の一例を示す断面図である。実施形態の変形例の基板処理方法は、例えば上述の基板処理装置10にて実施される。
【0108】
図9に示すように、実施形態の変形例にかかる基板処理方法では、例えば、シリコン基板等に直接パターン92zが形成された基板90の被処理面91zに対して、ホールまたは溝等である凹部92r内に露出するシリコンを保護しつつ、凸部92c上面のシリコンをエッチング除去することが可能である。その場合、第1の液として、例えばフッ酸(HF)と硝酸(HNO)との混合溶液を用いることができる。また、第2の液として、例えばアンモニア水溶液(NHOH)等のアルカリ性溶液を用いることができる。
【0109】
[その他の実施形態]
上述の実施形態の基板処理装置10では、処理液供給部61~64の吐出口61c~64cの供給位置は、基板90の被処理面91中央付近の上方としたが、吐出口の供給位置が異なっていてもよい。例えば、吐出口を基板の被処理面の斜め上方に配置し、基板の被処理面に対して斜め方向から各処理液を供給するようにしてもよい。
【0110】
上述の実施形態の基板処理装置10では、カメラ70からの画像に基づき、制御部80が色検知によって終点を検出することとしたが、終点検出の手法はこれ以外であってもよい。例えば、基板処理装置が、光照射機構および反射光検出機構を備え、これらの機構により得られた情報に基づき、制御部が終点検出をしてもよい。すなわち、光照射機構から基板の被処理面に光を照射し、その反射光を反射光検出機構が検知し、検知された反射光の強度に基づき制御部が終点検出をすることができる。また、終点検出の機構を用いずとも、予め実験等で得られた処理時間をレシピにより管理することで、基板処理の終了タイミングを図ることができる。この場合、基板処理装置10はカメラ70を有していなくともよい。
【0111】
上述の実施形態の基板処理装置10では、例えば基板冷却機構により基板90の裏面に冷却水を供給することとしたが、他の液体を供給してもよい。例えば、エッチング処理工程で第1の液が供給されるのに合わせて、第1の液を基板裏面に供給してもよい。
【0112】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
10 基板処理装置
61 第1の液供給部
62 第2の液供給部
40 支持部
50 回転機構
80 制御部
90 基板
91 被処理面
92c 凸部
92r 凹部
94 メタルマスク
95,97 メタル配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9