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特許7521896注射デバイスに取り付けるためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】注射デバイスに取り付けるためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240717BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61M5/168 540
A61M5/168 514D
A61M5/168 550
A61M5/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019511359
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2017070976
(87)【国際公開番号】W WO2018036938
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】16185805.5
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(10)に解放可能に取り付けられるように構成された補助デバイス(2)であって:
薬物送達デバイスを摺動可能に受けるように構成されたチャネル(33)を有するハウジング(20)と;
薬物送達デバイスに対する該補助デバイスの特定の位置合わせを確実にし、薬物送達デバイス周りの該補助デバイスの回転運動を制限する第1の位置合わせ機能(34)と;
薬物送達デバイスに取り付けられた後の薬物送達デバイスに対する該補助デバイスの摺動運動を防止する第2の位置合わせ機能とを含み;
ここで、該第2の位置合わせ機能は、
薬物送達デバイスの方へ付勢される可動の固定部材(39)と、
固定部材に対して押し付けられるように可動の解放部材(43)とを含み、
解放部材は、固定部材(39)が薬物送達デバイス(10)に係合することが可能にされる静止位置と、該固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように動かされる解放位置との間を回転可能な解放レバー(43)を含み、
解放レバー(43)は、軸(45)と、固定部材(39)に係合するように構成された軸からの径方向突出部(46)と、ハウジング(20)の外側にあるハンドル(44)とを含み、径方向突出部(46)は、軸のハンドル(44)とは反対側の端部で軸から突出し
固定部材と解放部材とは一体形成されておらず、そして、解放部材は、固定部材が薬物送達デバイスに係合することが可能にされる静止位置と、該固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように動かされる解放位置との間を移動可能であって、
解放部材(43)は、固定部材を薬物送達デバイス(10)から係合解除するように固定部材に対して可動である、前記補助デバイス。
【請求項2】
第1の位置合わせ機能(34)は、薬物送達デバイス(10)の協働機能(35)に係合するように構成され、チャネル(33)内での薬物送達デバイスの摺動運動を可能にする、請求項1に記載の補助デバイス(2)。
【請求項3】
第1の位置合わせ機能は、ハウジング(20)内に形成されたスロット(34)を含み、該スロットは、薬物送達デバイス(10)上に形成された突出部(35)を受け入れるように構成される、請求項2に記載の補助デバイス(2)。
【請求項4】
固定部材(39)は、薬物送達デバイス(10)内に形成された凹部(42)内に受け入れられるように構成されたボス(40)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項5】
固定部材(39)を薬物送達デバイス(10)の方へ付勢するように構成された付勢部材(41)をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項6】
固定部材(39)は、ハウジング(20)と一体形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項7】
ロック位置とロック解除位置との間で可動のアクチュエータ(36)を含むロッキング機構をさらに含み、該ロッキング機構は、補助デバイスを薬物送達デバイス(10)に解放可能にロックするように動作可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項8】
アクチュエータ(36)は、アクチュエータがいつロック位置またはロック解除位置のうちの一方にあるかを示す視覚インジケータ(38)を含む、請求項7に記載の補助デバイス(2)。
【請求項9】
アクチュエータ(36)は、ロック位置にあるときは補助デバイスを動作可能にし、ロック解除位置にあるときは動作不能にするように構成される、請求項7または8に記載の補助デバイス(2)。
【請求項10】
アクチュエータ(36)は、ロック位置および/またはロック解除位置へ動かされたときに補助デバイスの機能をトリガするように構成される、請求項7~9のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項11】
解放部材(43)は、固定部材を薬物送達デバイス(10)から係合解除するように固定部材に対して回転可能である、請求項1に記載の補助デバイス(2)。
【請求項12】
解放部材(43)は、固定部材とは別個である、請求項1~11のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項13】
薬物送達デバイス(10)は、補助デバイス(2)の第1および第2の位置合わせ機能とそれぞれ協働するように構成された対応する位置合わせ機能を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の補助デバイス(2)と、薬物送達デバイス(10)とを含むシステム。
【請求項15】
薬物送達デバイスは、液体薬剤のリザーバを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
薬物送達デバイス(10)に補助デバイス(2)を取り付け、取り外しする方法であって、該補助デバイスは、
チャネル(33)を有するハウジング(20)と、
第1の位置合わせ機能(34)と、
薬物送達デバイスの方へ付勢される可動の固定部材(39)および解放部材(43)を含む第2の位置合わせ機能と
を含み、該方法は、
薬物送達デバイスをハウジング内のチャネル内へ摺動させることと、
該補助デバイスを薬物送達デバイスに解放可能に取り付け、第1の位置合わせ機能は、薬物送達デバイスに係合して、薬物送達デバイスに対する該補助デバイスの特定の位置合わせを確実にし、薬物送達デバイス周りの該補助デバイスの回転運動を制限し、第2の位置合わせ機能は、薬物送達デバイスに係合して、薬物送達デバイスに取り付けられた後の薬物送達デバイスに対する該補助デバイスの摺動運動を防止することと、
薬物送達デバイスの使用後、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように解放部材を動かすこととを含み、
解放部材は、固定部材(39)が薬物送達デバイス(10)に係合することが可能にされる静止位置と、該固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように動かされる解放位置との間を回転可能な解放レバー(43)を含み、
解放レバー(43)は、軸(45)と、固定部材(39)に係合するように構成された軸からの径方向突出部(46)と、ハウジング(20)の外側にあるハンドル(44)とを含み、径方向突出部(46)は、軸のハンドル(44)とは反対側の端部で軸から突出する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスまたはシリンジを保持し、薬剤注射が期限になったことを使用者に思い出させるように構成されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在する。そのような注射は、医療従事者または患者自身によって適用される注射デバイスを使用することによって実行することができる。
【0003】
注射デバイス(すなわち、医薬品容器から薬剤を送達することが可能なデバイス)は、典型的には、2つの種類、すなわち手動デバイスおよび自動注射器に分けられる。
【0004】
手動デバイスでは、使用者は、針に流体を通すために、機械的エネルギーを提供しなければならない。これは、典型的には、何らかの形態のボタンおよび/またはニードルカバー(スリーブによってトリガされるデバイス)/プランジャによって行われ、注射中、使用者はこれを連続して押下しなければならない。この手法には使用者にとって多数の欠点がある。使用者がボタン/プランジャを押下するのを止めた場合、注射も止まる。これは、デバイスが適切に使用されなかった場合(すなわち、プランジャがその終了位置まで完全に押下されなかった場合)、使用者が送達する用量が不足する可能性があることを意味する。特に患者が高齢である場合、または器用さに問題がある場合、注射力が使用者にとって大きすぎることがある。
【0005】
ボタン/プランジャの伸長が長くなりすぎることもある。したがって、完全に伸長したボタンに到達することが使用者にとって不便になる可能性がある。注射力とボタンの伸長とが組み合わさると、手の揺れ/震えが生じる可能性があり、挿入された針が動くときに不快さが増大する。
【0006】
自動注射デバイスは、注射治療の自己投与を患者にとってより容易にすることを目的とする。自己投与式の注射によって届けられる現在の治療には、糖尿病(インスリンおよびより新しいGLP-1クラスの薬物の両方)、偏頭痛、アレルギー、ホルモン治療、抗凝血剤などのための薬物が含まれる。自動注射デバイスを使用すると、特定の救命薬物を単回の用量で送達することができる。たとえば、自動注射デバイスは、アナフィラキシーのリスクがある人に処方されることが多い。自動注射デバイスはまた、軍隊において、化学兵器から人員を保護するために使用されることが多い。別法として、自動注射器は、たとえば多発性硬化症、関節リウマチ、貧血を患っている人に対して、処方された治療スケジュールに従って薬剤を投与するために使用される。
【0007】
自動注射器は、標準的なシリンジからの非経口薬物送達に伴う動作を完全または部分的に取って代わるデバイスである。これらの動作には、保護シリンジキャップの取外し、患者の皮膚への針の挿入、薬剤の注射、針の取外し、針の遮蔽、およびデバイスの再利用の防止を含むことができる。これにより、手動デバイスの欠点の多くが克服される。必要とされる使用者の力/ボタンの伸長、手の震え、不完全な用量を送達する可能性が低減される。多数の手段によって、たとえばトリガボタンまたは針がその注射の深さに到達する動作によって、トリガを実行することができる。デバイスの中には、流体を送達するためのエネルギーがばねによって提供されるものもある。
【0008】
自動注射器は、使い捨てまたは単回使用のデバイスとすることができ、1用量の薬剤を送達するためにしか使用することができず、使用後は廃棄しなければならない。他のタイプの自動注射器は、再利用可能とすることもできる。通常、そのような自動注射器は、使用者が標準的なシリンジを装填および除去することができるように配置される。再利用可能な自動注射器を使用すると、複数の非経口薬物送達を実行することができ、シリンジは、使用されて自動注射器から除去された後に廃棄される。シリンジは、追加の機能性を提供するために、追加の部材で包装することができる。
【0009】
典型的なシナリオでは、自動注射器を使用する薬剤用量の注射によって、たとえば毎日、毎週、隔週、または毎月、患者自身が疾病を治療することができる。
【0010】
薬物の適正な投与およびその終了は、薬物の安全性および効果(ファーマコビジランス)にとって重要である。注射デバイスおよび適用時間の監視によって、使用者による投与の失敗を最小限にすることができる。典型的な患者による失敗には、次のものが挙げられる:
1.使用者は、次の注射に対する適正な満期日を忘れることがある。これは特に、医薬品の間隔が1日より長い場合、たとえば週2回、1日おき、隔週、またはたとえば1週目は2回、2週目は1日おき、3週目以降2日、2日、3日の間隔などの治療特有の間隔の場合に当てはまる。
2.使用者は、自動注射器のキャップを取り外してから注射を実行するまでの間に時間をあけすぎて、その結果、針の詰まりおよび/またはデバイスの機能停止が生じることがある。
3.使用者が、注射の終了後に保持時間(「休止時間」としても知られる)を実施しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、注射履歴を記録し、用量投与を監視し、患者が注射を正確かつ時間どおりに実行するのを支援することができる、1ショット自動注射器とともに使用するのに好適な再利用可能な付加式のデバイスについて記載する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けられるように構成された補助デバイスを提供し、補助デバイスは、薬物送達デバイスを摺動可能に受けるように構成されたチャネルを有するハウジングと、薬物送達デバイスに対する補助デバイスの特定の位置合わせを確実にし、薬物送達デバイス周りの補助デバイスの回転運動を制限する第1の位置合わせ機能と、送達デバイスに取り付けられた後の送達デバイスに対する補助デバイスの摺動運動を防止する第2の位置合わせ機能とを含み、ここで、第2の位置合わせ機能は、薬物送達デバイスの方へ付勢される可動の固定部材と、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように動作可能な解放部材とを含む。
【0013】
第1の位置合わせ機能は、薬物送達デバイスの協働機能(突出部)に係合するように構成することができ、チャネル内での薬物送達デバイスの摺動運動を可能にすることができる。
【0014】
第1の位置合わせ機能は、ハウジング内に形成されたスロットを含むことができ、スロットは、薬物送達デバイス上に形成された突出部を受け入れるように構成される。
【0015】
固定部材は、薬物送達デバイス内に形成された凹部内に受け入れられるように構成されたボスを含むことができる。
【0016】
補助デバイスは、固定部材を薬物送達デバイスの方へ付勢するように構成された付勢部材をさらに含むことができる。
【0017】
固定部材は、ハウジングと一体形成することができる。
【0018】
解放部材は、固定部材が薬物送達デバイスに係合することが可能にされる静止位置と、固定部材が薬物送達デバイスから係合解除される解放位置との間で回転可能な解放レバーを含むことができる。
【0019】
解放レバーは、軸と、固定部材に係合するように構成された軸からの径方向突出部とを含むことができる。
【0020】
補助デバイスは、ロック位置とロック解除位置との間で可動のアクチュエータを含むロッキング機構をさらに含むことができ、ロッキング機構は、補助デバイスを薬物送達デバイスに解放可能にロックするように動作可能とすることができる。
【0021】
アクチュエータは、アクチュエータがいつロック位置またはロック解除位置のうちの一方にあるかを示す視覚インジケータを含むことができる。
【0022】
アクチュエータは、ロック位置にあるときは補助デバイスを動作可能にし、ロック解除位置にあるときは動作不能にするように構成することができる。
【0023】
アクチュエータは、ロック位置および/またはロック解除位置へ動かされたときに補助デバイスの機能をトリガするように構成することができる。
【0024】
補助デバイスは、ハウジングのチャネルの内壁上に形成された対向する平坦な基準面を含む第3の位置合わせ機能をさらに含むことができる。平坦な基準面は、補助デバイスを通って延びる中心線から等しく隔置することができる。各基準面は、補助デバイスを通って延びる垂直線の両側に同じ角度だけ傾斜させることができる。
【0025】
一実施形態では、解放部材は、固定部材に押し付けられて固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように動作可能である。解放部材は、固定部材とは別個の構成要素とすることができる。
【0026】
解放部材は、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように固定部材に対して可動とすることができる。一実施形態では、解放部材は、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように固定部材に対して回転可能である。別の実施形態では、解放部材は、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように固定部材に対して摺動可能である。解放部材は、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように固定部材に対して回転可能かつ摺動可能とすることができる。一実施形態では、解放部材は、固定部材とは別個である。
【0027】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、補助デバイスの第1および第2の位置合わせ機能とそれぞれ協働するように構成された対応する位置合わせ機能を含む。
【0028】
本発明の第2の態様は、上述した補助デバイスと、薬物送達デバイスとを含むシステムを提供し、薬物送達デバイスは、補助デバイスの第1および第2の位置合わせ機能とそれぞれ協働するように構成された対応する位置合わせ機能を含む。
【0029】
薬物送達デバイスは、液体薬剤のリザーバを含むことができる。
【0030】
本発明の第3の態様は、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けられるように構成された補助デバイスを動作させる方法を提供し、補助デバイスは、チャネルを有するハウジングと、第1の位置合わせ機能と、薬物送達デバイスの方へ付勢される可動の固定部材および解放部材を含む第2の位置合わせ機能とを含み、この方法は、薬物送達デバイスをハウジング内のチャネル内へ摺動させることと、補助デバイスを薬物送達デバイスに解放可能に取り付け、第1の位置合わせ機能が薬物送達デバイスに係合して、薬物送達デバイスに対する補助デバイスの特定の位置合わせを確実にし、薬物送達デバイス周りの補助デバイスの回転運動を制限し、第2の位置合わせ機能が薬物送達デバイスに係合して、送達デバイスに取り付けられた後の送達デバイスに対する補助デバイスの摺動運動を防止することと、薬物送達デバイスの使用後、固定部材を薬物送達デバイスから係合解除するように解放部材を動作させることとを含む。
【0031】
補助デバイスは、薬物送達デバイス内の可動構成要素の位置を示す信号を出力するように構成された非接触センサと、非接触センサから出力された信号を受信し、信号に基づいて、薬物送達デバイスが起動前状態にあるか、それとも起動後状態にあるかを判定するように構成されたプロセッサとを含むことができる。
【0032】
これにより、補助デバイスがデバイスの動作状態を使用者に通知することを可能にすることができ、補助デバイスは、薬物送達デバイスが行うより明確かつ効果的にこれを行うことができる。非接触センサを使用することで、薬物送達デバイスの機械的構成要素に対する摩擦を増大させることなく、補助デバイスが薬物送達デバイスを監視することが可能になる。薬物送達デバイス内の可動構成要素は、薬物送達デバイスの機構の設計にすでに存在しており、したがって本発明を実施するために、この機構が動作する方法への大幅な修正を必要としない。したがって、薬物送達デバイスの製造の複雑さの増大は軽微である。
【0033】
非接触センサは、容量センサとすることができる。容量センサの構成要素は、補助デバイス内に配置することができ、したがって取り付けられた薬物送達デバイスは、容量センサの誘電体層の少なくとも一部を形成する。容量センサは、少なくとも1つの導電板の対向するセットを含むことができる。
【0034】
非接触センサは、薬物送達デバイス内の可動構成要素によって生じる磁場を測定するように構成されたホールセンサとすることができる。デバイスは、AMR(異方性磁気抵抗)センサをさらに含むことができる。
【0035】
薬物送達デバイスが起動前状態から起動後状態へ変化したと判定したとき、プロセッサは、薬物送達デバイスの休止時間を使用者に知らせる標示を出力させるように構成することができる。補助デバイスは、表示ユニットをさらに含むことができる。標示を出力させることは、表示ユニット上に1つまたはそれ以上のグラフィカル要素を表示させることを含むことができ、グラフィカル要素は、休止時間の進捗を伝える。容量センサは、注射プロセスなどの薬物送達プロセス全体を監視することを有効にするために、プランジャばねの動きを検出することができる。ばねなどの送達機構の機能停止を検出するために、ホールセンサを設けることができる。容量センサは、薬物送達機構のエンドストップ位置を検出することができる。
【0036】
これは、使用者が薬物送達デバイスを正確に使用するのを助けることができ、特に薬剤の注射後に薬物送達デバイスの針を取り外すのが早すぎたことにより使用者が実行した用量が不足するリスクを低減させるために有利である。
【0037】
補助デバイスは、少なくとも1つのメモリをさらに含むことができる。プロセッサは、薬物送達デバイスが起動前状態から起動後状態へ変化したと判定したとき、最後に実行された注射動作に関する情報をメモリ内に記憶させるように構成することができる。この情報は、少なくとも最後に実行された注射動作に関連付けられたタイムスタンプを含むことができる。この情報は、薬剤用量および/または薬剤タイプをさらに含むことができる。
【0038】
この情報を電子的に記憶することで、他のデバイスおよび使用者の医師などの人へ容易に通信することを可能にすることができる。また、使用者が医薬品処方計画をさらに監督および制御することを可能にすることができる。
【0039】
プロセッサは、次の注射の時間へのアクセスを有することができ、またはそれを計算するように構成することができ、次の注射の時間がきたときにリマインダ信号(reminder signal)を生成するようにさらに構成することができる。
【0040】
プロセッサは、補助デバイスの使用者に関連する医療処方計画(medical regimen)へのアクセスを有することができ、またはそれを計算するように構成することができる。医療処方計画は、注射動作が実行期限になる少なくとも一連の時間を含むことができる。プロセッサは、医療処方計画に従って、次の注射動作が期限になるときにリマインダ信号を生成するように構成することができる。
【0041】
自動リマインダ信号を生成することは、特に使用者の医療処方計画が用量間に何日もあくことを意味する場合、使用者が医療処方計画を順守することを確実にするのに有利である。
【0042】
補助デバイスは、1つまたはそれ以上の外部デバイスへデータを伝送する無線ユニットをさらに含むことができる。補助デバイスは、1つまたはそれ以上の外部デバイスへリマインダ信号を送信するようにさらに構成することができる。たとえば、記憶されている情報を使用者のコンピュータまたはスマートフォンへ無線で、たとえばBluetooth接続を介して伝送することができる。
【0043】
補助デバイスは、注射デバイスのハウジング上の可視情報を読み取るように構成された光センサをさらに含むことができ、この情報は、薬物送達デバイス内に収容されている薬剤を識別する。これは、補助デバイスが薬物送達デバイス内の医薬品のタイプおよび濃度を注射前に確認することを可能にすることができるために有利である。補助デバイスは、取り付けられた薬物送達デバイス内の医薬品のタイプまたは濃度が誤っている場合、使用者に警告することができる。
【0044】
補助デバイスは、外側ニードルキャップが薬物送達デバイスに取り付けられているかどうかを示す信号を出力するように構成された外側ニードルキャップセンサをさらに含むことができる。プロセッサは、外側ニードルキャップセンサから出力された信号を受信し、外側ニードルキャップが取り付けられているか否かを判定するように構成することができる。プロセッサは、薬物送達デバイスが起動後状態にあり、外側ニードルキャップが取り付けられていないと判定した場合、所定の時間後、警報信号を出力させるように構成することができる。警報信号を出力させることは、補助デバイスに1つもしくはそれ以上の音を放出させること、および/または補助デバイスの表示ユニット上に1つもしくはそれ以上の標示を表示させることを含むことができる。
【0045】
この機能は、外側ニードルキャップが取り付けられていない状態で薬物送達デバイスが収納された場合に生じうる針の詰まりを回避するのを助けることができる。外側ニードルキャップが取り付けられているかどうかを示す信号はまた、使用者のスマートフォンまたは他の携帯デバイスへ送信することができ、その結果、使用者が薬物送達デバイス付近にいない場合でも、使用者に問題を通知することができる。外側ニードルキャップの取外しは、トリガとして使用することもできる。外側ニードルキャップを取り外すことで、補助デバイスをトリガして電源を投入し、その監視プロセスを開始することができる。したがって、使用者は、補助デバイスの使用を開始するために、いかなる追加の動作も実行する必要はない。これにより、使用者にとって補助デバイスの使用が大いに簡略化される。同様に、外側ニードルキャップを元の場所に戻すことで、補助デバイスをトリガしてオフにし、したがって電力を節約することができる。
【0046】
薬物送達デバイスは、動力付きの自動注射器とすることができる。
【0047】
本発明の別の態様は、上記定義した補助デバイスと、薬物送達デバイスとを含むシステムを提供することができる。薬物送達デバイスは、動力付きの自動注射器とすることができる。動力付きの自動注射器の投薬機構は、予圧ばねによって動力供給することができる。
【0048】
薬物送達デバイスは、液体薬剤のカートリッジ、シリンジ、または他のリザーバを含むことができる。
【0049】
本発明の実施形態について、以下の図を参照し、例示のみを目的として次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】注射デバイスの側面図である。
図1B】キャップが取り外された図1Aの注射デバイスの側面図である。
図2】本発明の一態様による図1の注射デバイスに解放可能に取り付けられた補助デバイスの概略図である。
図3】補助デバイスの構成要素を示す注射デバイスに取り付けられた補助デバイスの概略図である。
図4a】注射デバイスおよび注射デバイスの状態の容量感知のための補助デバイスのセンサ構成要素の概略図である。
図4b】注射デバイスの注射処置中の図4aに示すセンサ構成要素の応答を示すグラフである。
図5a】注射デバイスの状態の感知で使用するための内部の磁石およびセンサの可能な位置を示す注射デバイスの切欠図である。
図5b】注射デバイスの状態の感知で使用するための内部の磁石およびセンサの可能な位置を示す注射デバイスの切欠図である。
図6a】本発明の3つの代替実施形態における内部の磁石およびセンサの可能な位置を示す注射デバイスのさらなる切欠図である。
図6b】本発明の3つの代替実施形態における内部の磁石およびセンサの可能な位置を示す注射デバイスのさらなる切欠図である。
図7】本発明の3つの代替実施形態における内部の磁石およびセンサの可能な位置を示す注射デバイスのさらなる切欠図である。
図8】本発明の補助デバイスへの挿入中の注射デバイスの斜視図である。
図9】注射デバイスが完全に挿入された後の図8の注射デバイスおよび補助デバイスを示す図である。
図10】線Y-Yに沿って切り取った図9の注射デバイスおよび補助注射デバイスの概略横断面図である。
図11図10の線Z-Zに沿って切り取った図9および図10の注射デバイスおよび補助注射デバイスの概略横断面図である。
図12】補助デバイスが解放構成にある図11に類似の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態について、自動注射器を参照して説明する。しかし、本発明はそのような応用例に限定されるものではなく、他の薬剤を排出する注射デバイス、またはシリンジ、充填済みシリンジ、針のない注射器、および吸入器などの他のタイプの薬物送達デバイスにも等しく適切に適用することができる。
【0052】
実施形態による注射デバイス10について、図1Aおよび図1Bを参照して次に説明する。いくつかの実施形態では、注射デバイス10は1度だけ使用できる自動注射器10である。自動注射器10は、近位端Pおよび遠位端Dを有する。近位端Pは、注射中の患者の注射部位の方を向いており、遠位端Dは、注射部位から離れる方を向いている。
【0053】
自動注射器10は、本体9およびキャップ12(本明細書では、外側ニードルキャップまたはONC12とも呼ぶ)を含む。本体9は、外側ハウジング11を含む。外側ハウジング11は、細長い管である。外側ハウジング11は、液体薬剤16を収容するカートリッジまたはシリンジ18を支持するカートリッジホルダまたはシリンジホルダ(図示せず)を含む。以下、本説明では、カートリッジホルダ(図示せず)によって支持されたカートリッジ18を参照するものとする。カートリッジ18は、図1Bに破線で示されている。
【0054】
外側ハウジング11はまた、注射中に薬剤16の投薬を引き起こす投薬機構(図示せず)を収納する。
【0055】
中空の針17が、カートリッジ18の内部体積と流体連通しており、注射中に液体薬剤16のための導管として働く。針17およびカートリッジ18は、互いに対して、また本体9に対して固定位置にある。ストッパ、プランジャ、ピストン、または栓14が、投薬機構の作用を受けると針17を介してカートリッジ18内に収容されている薬剤を排出するように、カートリッジ18内で可動である。
【0056】
投薬機構は、カートリッジ18のピストン14に機械的に連結される。投薬機構は、カートリッジ18に沿って近位方向にピストンを軸方向に動かし、針17を介して薬剤16を投薬するように構成される。投薬機構は、使用者によって提供される作動入力に応答してピストン14に力を印加するように協働する構成要素を含む。ここで、ピストン14への力の印加をトリガする作動入力は、自動注射器10の遠位端に位置する用量投薬ボタン13によって受け取られる。投薬機構は、投薬ボタン13に機械的に連結される。本開示の範囲内で想定される自動注射器の代替構成では、投薬機構をトリガするために代替の作動入力を提供することができる。たとえば、投薬機構は、スリーブによってトリガされるアクチュエータを含むことができる。
【0057】
本体9はまた、外側ハウジング11の近位端にキャップ支持体19を含む。キャップ支持体は、外側ハウジング11と同心円状であり、より小さい直径を有することができる。キャップ支持体19は、ハウジング11の近位端から延びる。ONC12は、キャップ支持体19の上に受け取られて、本体9の近位端を閉鎖し、針17を覆う。ONC12は、円筒形の壁22aおよび端壁22bを含む。図1Aに示すように、ONC12が本体9に位置する状態で、円筒形の壁22aの内面は、密着した関係でキャップ支持体19の外面に当接し、したがってONC12は、取付け位置でキャップ支持体19上に保持される。
【0058】
薬剤16を注射するために、ONC12は、使用者によってデバイス10から取り外され、その結果、図1Bに示す配置になる。次に、自動注射器10の近位端は、患者の注射部位に当てられる。患者は使用者であっても別の人物であってもよい。次いで使用者は、投薬ボタン13を作動させる。これにより投薬機構は、ピストン14を動かし、カートリッジ18から針17を介して患者の注射部位内へ薬剤を排出させる。
【0059】
カートリッジ18は透明であり、ハウジング11内にはカートリッジ18と一致して窓15が設けられ、その結果、カートリッジ18内に収容されている薬剤16が見えるようになる。それによって自動注射器の使用者は、検査によって、注射中に薬剤16の全量がカートリッジ18から排出されたかどうかを判定することが可能になる。
【0060】
ハウジング11上にはラベルが設けられる。ラベルは、注射デバイス10内に収容されている薬剤に関する情報100を含み、これには薬剤を識別する情報が含まれる。薬剤を識別する情報100は、文字の形態とすることができる。薬剤を識別する情報100はまた、色の形態とすることができる。薬剤を識別する情報100はまた、バーコード、QRコードなどに符号化することができる。薬剤を識別する情報100はまた、白黒パターン、カラーパターン、または陰影の形態とすることができる。
【0061】
図2は、図1の注射デバイス10に解放可能に取り付けられる補助デバイス2の一実施形態の概略図である。本発明の補助デバイス2を注射デバイス10上で定位置に正確に固定して位置付ける機能は、補助デバイス2の他の機能的構成の説明を簡単にするために、図2~7から省略する。そのような機能の固定および位置付けは、図8~12を参照して後述する。補助デバイス2は、図1の注射デバイス10のハウジング11を囲むように構成されたハウジング20を含み、その結果、注射デバイス10は、補助デバイス2内に少なくとも部分的に保持されるが、それにもかかわらず、たとえば注射デバイス10が空になって交換しなければならないとき、補助デバイス2から取外し可能である。注射デバイス10および補助デバイス2は、補助デバイス2が注射デバイス10に対して正確な向きおよび位置になることを確実にするために、協働する位置合わせ機能(より詳細には後述)を含むことができる。
【0062】
補助デバイス2の表示ユニット21(図3に示す)を介して情報が表示される。表示ユニットは、タッチスクリーンとすることができる。補助デバイス2はまた、押しボタンなどの少なくとも1つのハードウェア入力(図示せず)を含むことができる。補助デバイス2は、外側ニードルキャップ(ONC)センサ30を有する。ONCセンサは、ONC12が注射デバイス10に取り付けられているか否かを補助デバイス2が判定することを可能にする任意の好適な形態の近接センサとすることができる。補助デバイス2はまた、薬剤を識別する情報100を読み取る光センサ26を含む。薬剤を識別する情報100は、注射デバイスのハウジング11の色、もしくはハウジングのあるエリアの色、またはハウジングに貼付されたラベルとすることができる。これらの実施形態では、光センサ26は、色を検出するように構成された簡単な光度計とすることができる。いくつかの他の実施形態では、薬剤を識別する情報100は、QRコードまたは他の類似の符号化された情報とすることができ、光センサ26は、カメラまたはQRリーダとすることができる。
【0063】
プロセッサ24は、光センサ26によって読み取られた情報100と事前に記憶されている情報を照らし合わせて、使用者が適正な薬剤を注射していることを検証するように構成することができる。プロセッサ24が情報100を認識しなかった場合、または使用者がその時点で受けているべき薬剤とは異なる薬剤を情報100が示していると認識した場合、補助デバイス2は、警報信号を生成することができる。警報信号は、表示ユニット21上に表示された言葉または図形を含むことができる。別法または追加として、補助デバイス2は、警報信号を外部デバイスへ送信することができる。
【0064】
補助デバイス2は、他の構成要素に動力供給するための電池32を含む。補助デバイス2は、外部デバイスと情報を通信する無線通信モジュール28を含む。いくつかの実施形態では、無線通信モジュール28は、Bluetooth通信モジュール28である。
【0065】
図3は、図1の注射デバイス10に取り付けられた状態にある図2の補助デバイス2の概略図を示す。
【0066】
補助デバイス2のハウジング20内に、複数の構成要素が収容されている。これらは、プロセッサ24によって制御され、プロセッサ24は、たとえばマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などとすることができる。プロセッサ24は、プログラムメモリ240内に記憶されているプログラムコード(たとえば、ソフトウェアまたはファームウェア)を実行し、メインメモリ241を使用して、たとえば中間結果を記憶する。メインメモリ241はまた、実行された排出/注射に関するログブックを記憶するために使用することができる。プログラムメモリ240は、たとえば読取り専用メモリ(ROM)とすることができ、メインメモリは、たとえばランダムアクセスメモリ(RAM)とすることができる。
【0067】
補助デバイス2は、場合により、少なくとも1つの入力トランスデューサをさらに含むことができ、入力トランスデューサは、ボタン22として概略的に示されている。これらの入力トランスデューサ22により、使用者は、補助デバイス2をオン/オフにすること、動作をトリガすること(たとえば、別のデバイスとの接続もしくはペアリングを確立すること、および/または補助デバイス2から別のデバイスへの情報の伝送をトリガすること)、または何かを確認することを可能にする。いくつかの他の実施形態では、補助デバイス2は、ONCセンサ30を介して自動的にオン/オフにされる。
【0068】
プロセッサ24は、表示ユニット21を制御し、表示ユニット21はここでは液晶ディスプレイ(LCD)として実施されている。表示ユニット21は、たとえば注射デバイス1の現在の設定または次の投与予定の注射に関する情報を補助デバイス2の使用者に表示するために使用される。表示ユニット21はまた、たとえば使用者入力を受けるために、タッチスクリーンディスプレイとして実施することができる。
【0069】
プロセッサ24はまた、容量センサ23および/またはホールセンサ25を制御する。いくつかの実施形態では、補助デバイス2は容量センサ23のみを含むが、いくつかの他の実施形態では、補助デバイス2はホールセンサ25のみを含む。いくつかのさらなる実施形態では、補助デバイス2は、容量センサ23およびホールセンサ25の両方を含み、一方は他方に対する冗長/予備システムとして作用することができる。これらのセンサ23、25は、注射デバイス10内での1つまたはそれ以上の構成要素の位置を示す信号を出力するように構成される。これらのセンサ23、25は、センサ23、25と感知される構成要素のうちのいずれかとの間の接触なく、取り付けられた注射デバイス10内での構成要素の絶対的な位置および動きを感知することが可能であるため、集合的に非接触センサと呼ぶことができる。したがって、注射デバイス10に対するこれらのセンサ23、25の位置は、補助デバイス2の適正かつ正確な動作にとって重要であることが理解されよう。プロセッサ24は、これらの信号を受信し、注射デバイス10の動作状態を推測し、注射デバイス10の動作のタイミングに関する情報をメインメモリ241内に記録させ、かつ/または無線ユニット28を介して外部デバイスへ伝送させる。これらのセンサの動作は、図4および図5に関してより詳細に説明する。
【0070】
プロセッサ24は、注射デバイス1のハウジング11の光学的特性、たとえば色もしくは陰影、またはQRコードなどのより複雑なパターンを判定するように構成された光センサ26をさらに制御する。光学的特性は、ハウジング11の特定の部分、たとえばハウジング11に貼付されたラベルにのみ存在することができる。次いで色/パターンに関する情報がプロセッサ24へ提供され、次いでプロセッサ24は、注射デバイス10のタイプおよび/または注射デバイス10内に収容されている薬剤のタイプを判定することができる。光センサ26は、カメラユニットとすることができ、次いでハウジング11の画像をプロセッサ24へ提供し、ハウジング、スリーブ、または薬剤容器の色を画像処理によって判定することができる。さらに、光センサ26の読取りを改善するために、1つまたはそれ以上の光源を設けることができる。光源は、光センサ26による色検出を改善するために、特定の波長またはスペクトルの光を提供することができる。光源は、たとえばハウジング11の湾曲による望ましくない反射が回避または低減されるように配置することができる。例示的な実施形態では、光センサ26は、注射デバイスおよび/または注射デバイス内に収容されている薬剤に関係付けられたコード100(たとえば、バーコード、たとえば1次元または2次元のバーコードとすることができる)を検出するように構成されたカメラユニットとすることができる。このコード100は、いくつかの例を挙げると、たとえばハウジング11上または注射デバイス10内に収容されている薬剤容器上に位置することができる。このコード100は、たとえば、注射デバイスおよび/もしくは薬剤のタイプ、ならびに/またはさらなる特性(たとえば、有効期日)を示すことができる。このコード100は、QRコード100とすることができる。QRコードは一般に白黒であり、したがって光センサ26の部材上に色検出を必要としない。これにより、光センサ26を簡単かつ安価に製造することが可能になる。
【0071】
プロセッサ24は、別のデバイスとの間で情報を無線で伝送および/または受信するように構成された無線ユニット28を制御する。そのような伝送は、たとえば、無線伝送または光伝送に基づくことができる。いくつかの実施形態では、無線ユニット28は、Bluetoothトランシーバである。別法として、無線ユニット28は、結線で、たとえばケーブルまたはファイバ接続を介して、別のデバイスとの間で情報を伝送および/または受信するように構成された有線ユニットによって置換えまたは補完することができる。データが伝送されるとき、伝達されるデータの単位(値)を明示的または暗示的に画成することができる。たとえば、インスリン用量の場合、常に国際単位(IU)を使用することができ、またはそうでない場合、使用されるユニットは、明示的に、たとえばコード形式で伝達することができる。伝送されるデータはまた、注射に関連付けられたタイムスタンプを含むことができる。
【0072】
プロセッサ24は、外側ニードルキャップ12が存在するかどうか、すなわち外側ニードルキャップ12が注射デバイス1に連結されているかどうかを検出するように動作可能なONCセンサ30からの入力を受信する。電池32は、電源31によってプロセッサ24および他の構成要素に動力供給する。ONC12の取外しは、ONCセンサ30によって検出され、ウェイクアップまたはスイッチオントリガとして使用することができる。したがって、補助デバイスは、ONC12が取り外されると自動的にオンになり、その監視プロセスを開始することができる。同様に、ONC12が元の場所に戻されると、補助デバイスは、自動的に電源を切り、したがって電池電力を節約することができる。
【0073】
したがって、図3の補助デバイス2は、注射デバイス1の条件および/または使用に関係する情報を判定することが可能である。この情報は、デバイスの使用者によって使用されるようにディスプレイ21上に表示される。情報は、補助デバイス2自体によって処理することができ、または別のデバイス(たとえば、血糖監視システムもしくは計算デバイス)へ少なくとも部分的に提供することができる。
【0074】
プロセッサ24は、ONCセンサ30から信号を受信し、ONC12が注射デバイス10にいつ取り付けられていないかを検出するように構成される。使用者がONC12を取り付けずに注射デバイス10を収納した場合、針17が詰まる可能性がある。したがって、補助デバイス2は、注射動作後に所定の長さの時間にわたってONC12が取り付けられていないことをプロセッサ24が検出した場合、警報信号を生成するように構成される。警報信号は、無線ユニット28を介して外部の使用者デバイスへ送信することができ、したがって使用者が補助デバイス2および注射デバイス10から離れた場合でも、ONC12を元の場所に戻す必要を使用者に警告することができる。別法または追加として、警報信号は、補助デバイス2が表示ユニット21上に言葉および/もしくは図形を表示するまたは音を生成することを含むことができる。警報信号は、使用者によるデバイスの使用の停止および新しいデバイスの使用のための画成された警告時間を提供するために使用することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、補助デバイス2は、容量センサ23を含む。図4aおよび図4bを次に参照して、容量センサ23の動作についてより詳細に説明する。
【0076】
図4aは、注射デバイスが注射前の構成および注射後の構成(起動前および起動後とも呼ぶ)にあるときの注射デバイス10の切欠図を示す。注射デバイス10は駆動ばね400を含み、駆動ばね400は、注射デバイス1の組立て中に予圧される。駆動ばね400は、注射が実行されるまでこの予圧状態で維持される。使用者が用量投薬ボタン13を押下することによって注射動作をトリガすると、投薬機構が解放され、駆動ばねは緩んで、カートリッジ18から薬剤を投薬する。
【0077】
容量センサ23の様々な構成要素が、図4aの下図に概略的に示されている。容量センサ23は、少なくとも1つの導電板の対向するセットを含む。これらの板は、補助デバイス2が取り付けられたときに注射デバイス10に隣接するように補助デバイス2のハウジング20内に支持される。これらの板は、補助デバイスのハウジング20の輪郭により良好に合うように湾曲させることができる。これらの板は、キャパシタを形成するように、回路内で連結される。注射デバイス10は、板間の空間を占め、キャパシタの誘電体層として機能する。容量センサ23は、プロセッサ24へ信号を送信し、プロセッサ24は、これらの信号を介して、実効キャパシタンスを判定することができる。
【0078】
図4aの上図は、注射が実行される前の駆動ばね400のおおよその位置を示す。駆動ばね400は圧縮されており、ばねのコイルまたは巻きは密に隔置されまたは接触している。図4aの下図は、駆動ばね400に蓄積されているエネルギーが注射プロセス中に解放された後の駆動ばね400のおおよその位置を示す。駆動ばねのコイルは、さらに離れて隔置されている。いくつかの実施形態では、駆動ばねは金属性である。
【0079】
例示的な使用方法では、センサ23は、注射前の駆動ばね400の容量に設定される。センサ23によって、注射中の導電性材料の容量変化(駆動ばね400の弛緩)を検出することができる。注射は、電界の変化が検出されなくなったとき(たとえば、5秒の保持時間後など、所定の経過時間後)、完了したと判定される。センサ23は、有利には、環境の影響による電磁インパルスから保護することができる。
【0080】
図4bは、注射プロセス前、注射プロセス中、および注射プロセス後のキャパシタンスと装填との間の例示的な関係を示すグラフである。注射デバイス1が使用される前、キャパシタ板間の領域内に存在する駆動ばね400の量がより大きいため、容量センサ23によって測定されるキャパシタンスは比較的高い。薬剤排出プロセスの開始点および終了点を示す。排出中、駆動ばね400が緩み、したがってキャパシタ板間の領域内に配置される材料が累進的により少なくなる。したがって、容量センサ23によって測定されるキャパシタンスは、注射中に減少する。注射デバイス10が使用された後、容量センサ23によって測定されるキャパシタンスは比較的低い。センサ23は、測定されたキャパシタンスの変化を検出することができ、したがって電子コントローラは、注射が処理中であることを認識する。ディスプレイは、注射が処理中であることを使用者に知らせることができる。本開示の範囲内で、ホールセンサのみを使用して、栓またはピストンの位置を判定し、したがって注射プロセスがいつ開始点および終了点にあるかを判定することができることが意図される。そのような実施形態では、2つのホールセンサを設けて、栓またはピストンの開始位置および終了位置に配置することができる。栓またはピストンは、開始位置および終了位置におけるそれぞれのホールセンサによる検出のために磁石を備えることができる。代替実施形態では、ホールセンサを容量センサと組み合わせて使用して、注射プロセスの開始位置および終了位置の両方を検出し、ならびに開始位置と終了位置との間で注射プロセスの進捗を監視することができる。
【0081】
プロセッサ24は、キャパシタンスが比較的高い値から比較的低い値へ降下し、所定の時間にわたってその値のままであった場合、注射が完了したと判定するように構成することができる。プロセッサ24は、測定されたキャパシタンスの段階的な変化を検出するように構成することができ、したがって補助デバイス2は、注射プロセスと、注射が実行されずに補助デバイス2が注射デバイスから取り外されているときとを区別することができ、後者の場合、キャパシタンスのより急激な降下が予期されるはずである。容量センサ23は、外部の電磁インパルスから保護するために遮蔽することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、補助デバイス2は、ホールセンサ25(ホール効果センサまたは磁気センサとも呼ばれる)を含む。図5aおよび図5bを次に参照して、ホールセンサ25の動作についてより詳細に説明する。これらの実施形態では、注射デバイス10内でプランジャの遠位端または近位端に磁石500が取り付けられる。図5aは、磁石500がプランジャの遠位端に取り付けられている一実施形態を示す。図5aの注射デバイス10は起動前状態にある。ホールセンサ25は、2つのデバイスがともに連結されたときに注射デバイス10のおおよその中間点に重なるように、補助デバイス2内に位置する。これは、磁石500が注射プロセスの終了時に占めるおおよその長手方向位置である。
【0083】
起動前状態では、磁石500とホールセンサ25との間の離隔距離が比較的大きいため、ホールセンサ25は、非常に低いまたはゼロの磁場を検出する。排出プロセス中、ホールセンサ25によって検出される磁場は増大する。注射デバイス10が排出後の状態になったとき、磁石はホールセンサ25に隣接して位置し、検出される磁場は比較的強くなる。
【0084】
図5bは、磁石502がプランジャの近位端に支持されている代替配置を示す。代替実施形態では、磁石502をシリンジ栓またはストッパ上に支持することができる。図5bの注射デバイス10は起動後状態にある。ホールセンサ25は、補助デバイス2の近位端の方へより遠くに位置する。図5aの設計を使用するか、それとも図5bの設計を使用するかの選択は、補助デバイス2のサイズ、および注射デバイス10に取り付けられたときのその位置、または注射デバイス10の構築プロセスに依存することができる。
【0085】
図4aおよび図4bを参照して上述した実施形態と同様に、プロセッサ24は、ホールセンサ25から信号を受信し、注射デバイス10が注射前状態にあるか、それとも注射後状態にあるかを判定することができる。
【0086】
磁石500、502は、永久磁石とすることができ、または別法として強磁性プラスチックとすることができる。プラスチック磁石を使用する利点は、製造中にプランジャロッドに成形することができることである。プラスチック磁石は、注射デバイス10の最終組立て直前に、パルス磁場を使用して磁化することが必要であることがある。
【0087】
プロセッサ24は、容量センサ23および/またはホールセンサ25から信号を受信し、注射デバイス10が注射前状態にあるか、注射後状態にあるか、それとも注射プロセスが進行中であるかを推測するように構成される。プロセッサ24は、デバイスの状態に応じて異なる標示を使用者に表示するように、表示ユニット21を制御することができる。これは、注射デバイス10が使用されたか否かを見分けることが難しいと感じる使用者がいるため、また補助デバイス2の存在がなければ難しいと感じる使用者もいる注射動作自体を支援するため、有利である。
【0088】
図6aおよび図6bは、1つまたはそれ以上のホールセンサが使用される本発明の代替実施形態を示す。どちらの図も、起動前状態にある注射デバイス10を示す。図6aで、補助デバイス2は、第1のホールセンサ25および第2のホールセンサ25’を含む。第1および第2のホールセンサは、注射デバイス10に沿って異なる長手方向位置に隔置されるように、補助デバイス2内に配置される。たとえば、第1のホールセンサ25は、注射デバイス10の中心領域の上に位置するように、補助デバイス2内に位置することができ、第2のホールセンサ25’は、注射デバイス10の遠位端に近接して位置するように、位置することができる。注射デバイス10は、プランジャの遠位端に取り付けられた磁石500を含む。磁石500が第1および第2のホールセンサ25、25’を越えて動くと、センサ内で信号が誘起され、これらの信号を使用して、プランジャの位置を判定することができる。
【0089】
注射デバイス10が起動されたとき、磁石500はまず、第2のホールセンサ25’を越えて動く。第2のホールセンサ25’内で誘起された信号は、プロセッサ24によって受信され、プランジャがその動きを開始したことを判定するために使用される。したがって、プロセッサ24は、排出プロセスが開始したことを判定することが可能である。磁石500が第2のホールセンサ25’から離れる方へ動くと、生成される信号が減少する。磁石500が第1のホールセンサ25に近づくと、このセンサからの信号が増大する。プランジャがその最終位置に到達すると、磁石500は第1のホールセンサ25の下を通る。第1のホールセンサ25は、磁石500がセンサ25の下で止まるように、または完全にセンサを越えるように位置することができる。いずれの場合も、プロセッサ24は、受信した信号から、プランジャがその最終位置にうまく到達したことを判定するように構成される。
【0090】
図6bで、補助デバイス2は、単一のホールセンサ25を含む。注射デバイス10は、プランジャの近位端に取り付けられた第1の磁石500と、プランジャの遠位端に取り付けられた第2の磁石500’とを含む。ホールセンサ25は、注射デバイス10中心領域の上に位置し、第1の磁石500がセンサ25の下またはその付近に位置するように位置する。注射デバイス10が起動されたとき、第1の磁石500は、ホールセンサ25の下をホールセンサ25から離れる方へ動く。ホールセンサ25内で誘起された信号は、プロセッサ24によって受信され、プランジャがその動きを開始したことを判定するために使用される。したがって、プロセッサ24は、排出プロセスが開始したことを判定することが可能である。プランジャがその最終位置に到達すると、第2の磁石500’はホールセンサ25の下を通る。ホールセンサ25は、第2の磁石500’がセンサ25の下で止まるように、または完全にセンサを越えるように位置することができる。いずれの場合も、プロセッサ24は、受信した信号から、プランジャがその最終位置にうまく到達したことを判定するように構成される。
【0091】
図5aおよび図5bに示す配置では、プロセッサは、プランジャがいつその最終位置に達したかだけを判定することができる。図6aおよび図6bの配置では、プロセッサ24は、排出プロセスがうまく開始したことと、完全に終了したこととの両方を判定することができる。これら両方の判定を行うことで、動作不良のより良好な検出および報告が可能になる。これは、注射デバイス10自体が動作不良を検出する手段を有していないため、有利である。いくつかの注射デバイスは、排出中に赤色から緑色に変わる機械動作式の検査窓を有するが、補助デバイス2の遠隔感知および検出能力は、はるかに有用な情報および動作不良の正確かつ確実な検出を提供する。
【0092】
たとえば、プロセッサは、プランジャがその動きを開始し、その最初の位置から離れる方へ引き続き動いたと判定することができる。注射デバイス10が起動されたとき、この検出が行われなかった場合、プロセッサ24は、プランジャが動いておらず、薬剤がまったく(またはほとんど)排出されていないと判定することができる。プロセッサ24は、プランジャがその動きを開始したことを検出したが、その最終位置に到達したことを検出しなかった場合、全量ではなく一部の薬剤が排出されたと判定することができる。プロセッサ24は、デバイスの動作に関する情報およびあらゆる動作不良の詳細を補助デバイス2のログに書き込むように構成される。次いでこれは、使用者または使用者の医療従事者によって再調査および評価することができる。動作不良が生じたことだけでなく、薬剤が排出されたか否かを判定することが可能であることは、使用者の治療をどのように進めるかを知らせる可能性が高いため、潜在的に重要な情報である。デバイスの動作不良が生じたが、一部の薬剤は注射されたことを使用者に知らせることで、偶発的な過剰投与を防止するのに役立つ。加えて補助デバイス2は、警報を鳴らし、表示ユニット21を介して使用者に情報を提示することができる。たとえば、注射デバイス10の動作不良のため、医師の助言を求めるように使用者に指示することができ、何らかの薬剤がデバイスから排出されかどうかについて使用者に知らせることもできる。
【0093】
いくつかの実施形態では、補助デバイス2は、容量センサ23またはホールセンサ25のいずれかを含むが、いくつかの他の実施形態では、補助デバイス2の異なる部分に両方のセンサを設けることができる。
【0094】
補助デバイスが容量センサおよびホールセンサの両方を含む実施形態では、これら両方からの信号を使用して、薬物送達デバイスの何らかの機械的な障害を検出することができる。図7は、容量センサ23ならびに第1および第2のホールセンサ25、25’の両方を含む補助デバイス2の一実施形態を示す。図7は、起動後状態にある注射デバイス10を示す。注射デバイス10は、プランジャの近位端に配置された磁石500を含む。図6aを参照して上述したように、磁石500は、第2のホールセンサ25’の下またはその付近から開始し、注射デバイス10の起動後、そこから離れて第1のホールセンサ25の方へ動く。プランジャがその最終位置に到達したとき、磁石500は、第1のホールセンサ25の下またはその付近にある。容量センサ23は、図7に示すように、補助デバイス2内の異なる場所に設けることができる。容量センサ23は、図4aおよび図4bを参照して上述したように動作するように構成される。この配置で、磁石500は、その読取りに影響を及ぼさないように、容量センサ23から離れて維持されている。別法として、容量センサ23は、2つのホールセンサ25、25’間に位置することができ、ソフトウェアを使用して、ばね400の緩みおよび磁石500の動きによる信号を区別することができる。
【0095】
容量センサ23およびホールセンサ25、25’の両方を有することで、動作不良のタイプに関するさらなる詳細を判定することが可能になる。たとえば、容量センサ23は駆動ばね400が緩んだことを検出したが、ホールセンサ25、25’はプランジャが動いていないことを検出した場合、製造中または使用中に駆動ばねとプランジャとの間の連結に関係する機械的な障害が生じたと推測することができる。ホールセンサ25、25’はプランジャが動いたことまたは適正な最初の位置にないことを検出したが、容量センサ23は駆動ばね400がまだ完全に圧縮されていることを検出した場合、注射デバイス10が誤って組み立てられたこと、または適正な量の薬剤を収容していないことなどの機械的な障害が生じたと推測することができる。これらの判定に応答して、好適な警報信号および情報を補助デバイス2によって生成および表示することができる。図7のシステムはまた、薬剤が排出されたか否かを検出し、したがって偶発的な過剰投与を防止し、動作不良の場合に使用者の治療をどのように進めるかを知らせることが可能である。
【0096】
プロセッサ24は、使用者の注射履歴を記録するように構成される。注射デバイス10は、1度だけ使用できる自動注射器とすることができるのに対して、補助デバイス2は再利用可能であり、使用済みの注射器10から取り外され、新しい注射器に取り付けられるように構成される。補助デバイス2のプロセッサ24は、注射事象に関連付けられたタイムスタンプを作成するために、内部クロックを有する。クロックは、相対的なクロックであっても絶対的なクロックであってもよい。補助デバイス2は、無線ユニット28を介して外部デバイスと通信するように構成され、外部デバイスは、絶対的な時間を提供することができる。
【0097】
補助デバイス2が最初に新しい注射デバイス10に取り付けられたとき、光センサ26を起動し、情報100を読み取ることができる。補助デバイス2は、ディスプレイスクリーン21を使用して、使用者へ情報を通信することができる。使用者が注射を実行したとき、これは上述したように容量センサ23またはホールセンサ25によって検出される。次いで、その注射に関連付けられたタイムスタンプが、プロセッサ24によって作成される。プロセッサ24はまた、事前に読み取った情報100を使用して、注射された薬剤のタイプを記録し、タイムスタンプに関連付ける。使用者が所有している外部デバイス(図示せず)を登録し、補助デバイス2に関連付けることができる。外部デバイスは、無線ユニット28を介する移動コンピュータまたはスマートフォンとすることができる。移動コンピュータまたはスマートフォンは、コンピュータプログラムを起動し、使用者の医療記録および注射履歴を管理することができる。補助デバイス2は、記録された注射情報を外部デバイスへ通信するように構成される。
【0098】
プロセッサ24には、使用者が注射を実行するべき頻度に関する情報を事前にプログラムすることができる。このプログラムは、補助デバイス2の使用者に関連付けられた注射間の最大時間または医療処方計画の形態とすることができる。たとえば、プロセッサ24には、注射間の最大時間を24時間とするべきであることを指定する情報を事前にプログラムすることができる。いくつかの他の実施形態では、使用者が注射デバイス10を使用して注射動作を実行する特定の時刻を指定するなど、医療処方計画をより詳細にすることができる。別法として、プロセッサ24は、注射履歴に基づいて、使用者が次に注射を実行するべき時間を計算するように構成することができる。たとえば、使用者が次の注射を実行するべき時間は、以前に注射された薬剤の量および以前の注射の頻度に依存することができる。プロセッサは、以前の注射履歴を使用して、使用者に対する医療処方計画を計算することができる。
【0099】
プロセッサ24は、使用者が次の注射を実行する時間であると判定したとき、無線ユニット28を介して関連付けられた外部デバイスへリマインダ信号を送信させる。次いで外部デバイスは、次の注射の期限であることを使用者に通知して思い出させることができる。これは、使用者が注射デバイス10および/または補助デバイス2を携帯したくないと考えているが、いずれにせよスマートフォンまたは類似のデバイスを携帯しているときに有利である。したがって、使用者が携帯している別個のデバイスを介して、次の注射の必要を使用者に思い出させることができる。さらに、注射デバイス10は、冷蔵庫または冷凍庫内などの特定の条件下で維持する必要があることがあり、したがって使用者が注射デバイスを携帯することはできない。したがって使用者は、注射を実行する必要のある時間を忘れやすい。
【0100】
加えて、プロセッサ24は、容量センサ23またはホールセンサ25から受信した信号を使用して、「休止時間」に関して使用者に指示または通知するように構成することができる。使用者がある量の薬剤を皮膚に注射した後、短時間(たとえば、5~20秒)だけ針を定位置に残すことが有利である。これにより、薬剤を注射部位から拡散させることを可能にすることができる。注射後に針を取り外すのが早すぎた場合、薬剤が注射部位からにじみ出る可能性があり、したがって使用者が全用量を受けることができなくなる。前述したように、プロセッサ24は、センサ23、25から受信する信号の変化を使用して、注射が実行されていることを判定することができる。プロセッサ24は、センサ23、25から受信した信号が変化しなくなったとき、注射が完了したと推測することができる。したがってこの検出は、注射デバイス10の針を所定の長さの時間にわたって注射部位内に残すように指示する使用者への標示を表示ユニット21上に表示するためのトリガとして使用することができる。この標示は、任意の好適な形態とすることができ、たとえばカウントアップもしくはカウントダウンするタイマ、またはより大きく/小さくもしくは満杯もしくは空になる図形とすることができる。音などの他の標示方法を使用することもできる。
【0101】
上述した構成要素に加えて、補助デバイス2は、周囲光センサ242を含むことができる。場合により、注射デバイス10は、一定期間にわたって薬剤の劣化を防止するために、冷蔵庫または冷凍庫内に収納する必要がある。使用者は、以前の注射後に未使用の注射デバイス10に補助デバイス2を取り付け、その結果得られる組み合わせたシステムを冷蔵庫/冷凍庫内に収納することができる。補助デバイス2の周囲光センサ242は、冷蔵庫/冷凍庫が開かれたことを検出するために使用することができる。これは、次の注射の期限時間を使用者に思い出させる警報を開始するためのトリガとして使用することができる。上述したように、この警報は、補助デバイス2によって放出される音、表示ユニット21上に表示される文字/図形、および/または無線ユニット28を介して使用者のスマートフォンもしくは他の外部デバイスへ送信されるリマインダの形態をとることができる。
【0102】
上記の説明から、補助デバイス2が注射デバイス10上に正確に位置し固定されることが、補助デバイス2の適正かつ正確な機能にとって重要であることが理解されよう。たとえば、ONCセンサ、光センサ26、ホールセンサ25、および/または容量センサ23などの様々なセンサは、これらのセンサが監視、検出、または他の方法で相互作用するように構成された注射デバイス10の構成要素に対して正確に位置することが重要である。
【0103】
補助デバイス2が注射デバイス10上に正確かつ確実に位置決めされることを有効にするために、補助デバイスは、1つまたはそれ以上の特定の位置決め機能(positioning feature)を含むことができる。注射デバイス10はまた、補助デバイス2のそれらの位置決め機能に係合するように構成された相補的な機能を含むことができる。
【0104】
図8および図9は、補助デバイス2およびそのような位置決め機能を示す。図8は、注射デバイス10の挿入中であるが注射デバイス10が完全に挿入される前の補助デバイス2を示す。図9は、補助デバイス2内に完全に挿入および固定された注射デバイス10を示す。図10は、図9の線Y-Yに沿って切り取った横断面図を示し、注射デバイス10は、補助デバイス2内に完全に挿入および固定されている。図11は、図10の線Z-Zに沿って切り取った横断面図を示す。図12は、図11の横断面図に類似しているが補助デバイス2が解放構成にある横断面図を示す。
【0105】
補助デバイス2のハウジング20は、チャネルを画成する。本発明の範囲内で、チャネルは、一方の側もしくはその一部に沿って開くことができ、またはその周囲もしくは円周全体に壁を有することができる。例示的な実施形態では、チャネルは、注射デバイス10を受け入れるように構成された略円筒形のアパーチャ33を含む。注射デバイス10は、図8に示すように長手方向軸X-Xを有する実質上円筒形の細長い本体である。注射デバイス10は、図8に矢印「A」で示す軸方向に注射デバイス10を摺動させることによって、ハウジング20の円筒形のアパーチャ33内へ挿入される。
【0106】
ハウジング20は、ハウジング20の上側で円筒形のアパーチャ33の内壁に形成された細長いスロット34を構成する第1の位置合わせ機能を含む。スロット34は、注射デバイス10の近位端Pを向いているハウジング20の前端で開いている。これはまた、図11および図12の横断面図に見ることができる。注射デバイス10の外側ハウジング11は、その上側に突出部35を含む。注射デバイス10が補助デバイス2内へ挿入されるとき、突出部35はスロット34内へ摺動する。第1の位置合わせ機能によって、注射デバイス10は、スロット34および突出部35が位置合わせされたときのみ補助デバイス2内へ挿入することができ、軸X-X周りの補助デバイス2に対する注射デバイス10の適正な回転位置を確実にすることができることが理解されよう。また、注射デバイス10が補助デバイス2内へ挿入された後、第1の位置合わせ機能によって、補助デバイス2に対する注射デバイス10の相対的な回転運動が防止される。それによって第1の位置合わせ機能は、「アンチロール」機能として働く。
【0107】
ハウジング20内のチャネルについて、注射デバイス10を受け入れるように構成された略円筒形のアパーチャ33を含むと上述したが、本発明は、全体的に円形または円筒形のアパーチャ33であるこの構成に限定されることを意図するものではない。代替実施形態では、ハウジングによって画成されるチャネルまたはアパーチャ33は、注射デバイス10の細長い本体に当たる平坦な部分を含むことができる。そのような実施形態のこれらの機能を、対向する傾斜した平坦面49として図10に示す。各表面は、有利には、補助デバイス2の中心線(図10の線Z-Zで示す)から等しく隔置される。各表面は、有利には、補助デバイスを通る垂直線(この場合も、図10に線Z-Zで示す)の両側から同じ角度だけ傾斜している。そのような平坦面は、第3の位置合わせ機能として、注射デバイス10の細長い本体が当接する基準面を提供することができる。これらは、有利には、補助デバイス2内で中心に位置合わせされるように注射デバイス10の細長い本体を案内することができる。これにより、有利には、注射デバイス10の外側ハウジング11および補助デバイス2のアパーチャ33の両方が全体的に円形である場合に製造公差によって普通なら生じうる注射デバイス10および補助デバイス2の軸方向の位置合わせ不良を防止することができる。
【0108】
ハウジング20は、第2の位置合わせ機能をさらに含む。図示の実施形態では、第2の位置合わせ機能は、完全に挿入されてハウジング20に対して軸方向に適正な位置にきた後に注射デバイス10をハウジング20内で定位置に固定する軸方向位置付け機構を含む。この位置付け機構は、ハウジングの下側で、実質上第1の位置合わせ機能の反対側に配置され、図10~12に示されている。この位置付け機構は固定部材を含み、例示的な実施形態では、固定部材はばね付き板39を含む。ばね付き板39は、板39から上方へ延びるボス40を有する。ばね付き板39の下面とハウジング20の内壁との間に、ばね41が配置される。ばね41は、ハウジング20の隣接する壁から離れて注射デバイス10に向かう方向にばね付き板39を付勢する。図11および図12に示すように、ばね付き板39は湾曲アームを構成し、湾曲アームは、ハウジング20と一体形成することができ、または機械的な締結もしくは接合によって、ハウジングに連結することができる。湾曲アーム39は、湾曲アームの撓みおよび材料の弾性によって、注射デバイス10に向かう方向に付勢することができる。そのような実施形態では、ばね付き板39に追加の付勢力を提供するようにばね41を設けることができる。別法として、ばね41を省略することができる。
【0109】
注射デバイス10の外側ハウジング11は、凹部42をその下側に含む。凹部42は、ばね付き板39のボス40に面して配置されており、ボス40を受け入れるように構成される。注射デバイス10がハウジング20内へ完全に挿入されており、ハウジング20に対して軸方向に適正な位置にあるとき、ボス40は凹部42内に位置し、ばね41の力および/またはアーム39の弾性によって凹部内に保持される。したがって、第2の位置合わせ機能によって、注射デバイス10が注射デバイスの軸X-Xの方向に動くことが防止される。本発明の図示の実施形態では、第2の位置合わせ機能はまた、軸X-X周りのハウジング20に対する注射デバイス10の回転を防止する働きをし、したがって2次回転防止機能として作用することが理解されよう。また、図10に示す本発明の実施形態では、ばね41の力および/またはアーム39の弾性は、中心に内方へ傾斜している平坦な基準面49に対して注射デバイス10を上方へ付勢し、したがって補助デバイス2内で注射デバイス10を中心に位置合わせするのを助けることが理解されよう。
【0110】
軸方向位置付け機構は、解放部材を含む。例示的な実施形態では、解放部材は、解放レバー43を含む。解放レバー43は、解放レバー43の回転により、ばね付き板39が注射デバイス10から離れる方へ撓んでボス40を凹部42から係合解除するように構成される。解放レバー43は、ハウジング20の外側に位置するハンドル44と、軸45と、ハンドル44とは反対側の端部で軸から径方向に突出するパドル46とを含む。解放レバー43は、図11に示す静止位置と、図12に示す解放位置との間で回転可能である。静止位置で、パドル46は、ばね付き板39内の空洞47内に位置し、その結果、ばね付き板39は、ボス40が凹部42内に受け入れられるように配置される。ハンドル44が解放位置内へ90度回されたとき、パドル46はばね付き板39を下方へ押し、その結果、ボス40は凹部42から係合解除される。解放部材43の例示的な構成について、解放レバー43として図示および説明するが、本発明はこの特定の構成に限定されるものではなく、解放部材または他の解放機構の他の構成も本発明の範囲内で意図される。たとえば、解放部材は、ばね付き板39に係合する突出部を備えた摺動部を構成することができる。
【0111】
ハウジング20は、ハウジング20内に完全に受け入れられた後に注射デバイス10を定位置にロックするロッキング機構をさらに含む。ロッキング機構は、図8に示すロック解除位置と図9に示すロック位置との間で旋回可能なロッキングレバー36を含む。レバー36は、レバー36の内面から突出するピン37を含み、ピン37は、レバー36がロック位置にあるとき、注射デバイス10の外側ハウジング11内の対応する孔(図示せず)内に受け入れられる。
【0112】
図示の実施形態では、レバー36は、レバー36がロック位置で完全に係合されているかどうかを使用者に示すための状態インジケータ38を含む。これにより、注射デバイス10が正確に組み立てられて使用する準備ができているときのみ使用者が注射デバイス10を使用することを確実にするのを助けることができる。状態インジケータ38の異なる実施形態も、本発明の範囲内で想定される。インジケータ38は、ロッキングレバー内のLEDとすることができる。たとえば、LEDは、ロック解除されているときは赤色を照明し、ロックされているときは緑色を照明することができる。別法として、ロック解除されているときはLEDをオフにし、ロックされているときはオンにすることができ、または逆も同様である。LEDは、ロック位置にあるときはハウジング20との電気接触によって、オンもしくはオフに、または色間で起動することができる。そのような接触は、ピン37を介して、またはレバー36の別の部材との接触によって行うことができる。別法として、レバー36がロック位置とロック解除位置との間で動かされたとき、インジケータを機械的に作動させることができる。たとえば、色付きの板をインジケータ38の表示窓の視界の内外へ動かすことができる。
【0113】
注射デバイス10および/または補助デバイス2は、レバー36がロック位置へ動かされるまで動作不能になるように構成することができる。たとえば、ピン37は、注射デバイス10および/または補助デバイス2の制御回路またはスイッチとの電気接触を提供することができ、その結果、レバー36がロック位置についた後のみ動作が可能になる。加えて、補助デバイス2は、ロック位置またはロック解除位置へのレバー36の動きにより、前述した補助デバイス2の動作のうちの1つまたはそれ以上をトリガすることができるように構成することができる。たとえば、レバー36をロック位置へ動かすことで、補助デバイス2をオンにすることができる。逆に、レバー36をロック解除位置へ動かすことで、補助デバイス2をオフにすることができる。また、レバー36をロック位置またはロック解除位置へ動かすことで、ペアリングもしくは接続機能をトリガし、または情報の伝送を開始することができる。
【0114】
ロッキングレバー36は、ロック位置に固定して位置付けられたとき、可聴フィードバックを提供するように構成することができる。たとえば、ロッキングレバー36は、クリック音またはカチッという音とともに係合することができる。これにより、ロッキング機構が適切に係合されており、したがって注射プロセスを開始することができるという触覚および可聴両方のフィードバックを、使用者に与えることができる。
【0115】
注射デバイス10の使用者による動作を有効にする補助デバイス2の様々な構成が、本発明の範囲内で想定されることが理解されよう。たとえば、一実施形態では、図2に概略的に示すように、用量投薬ボタン13は、開口部を通ってハウジング20の端部内へ突出する。代替実施形態では、図8~12、特に図11および図12に示すように、ハウジング20の端壁48を撓ませることができ、したがって使用者は、端壁を押して用量投薬ボタンを押し下げることができる。さらなる代替実施形態(図示せず)では、ハウジング20の端壁48は、用量投薬ボタン13に当接する摺動ボタンを含むことができる。したがって、ハウジング20の摺動ボタンを押し下げて、用量投薬ボタン13を押し下げることができる。
【0116】
注射デバイス10および補助デバイス2の係合および係合解除について、次に説明する。使用者は、注射デバイス10をハウジング20のアパーチャ33内へ図8の矢印Aの方向に挿入する。使用者は、突出部35をスロット34と位置合わせし、注射デバイス10をハウジング20内へ引き続き挿入し、したがって突出部35はスロット34内に受け入れられる。
【0117】
使用者は、図9~11に示すように、ハウジング20内に完全に受け入れられるまで、注射デバイス10をハウジング20内へ引き続き押し込む。この位置で、ボス40は、凹部42内に位置し、注射デバイス10を完全に挿入された位置で固定する。次いで使用者は、ロッキングレバー36をロック解除位置からロック位置へ動かして、注射デバイス10をハウジング20内で定位置にロックする。上記で論じたように、ロック位置へのこの動きにより、注射デバイスを作動もしくはプライミングし、または注射デバイスを動作可能な状態にすることもできる。ロック位置についた後、状態インジケータ38は、注射デバイス10および補助デバイス2を使用する準備ができたことを使用者に示す。次いで使用者は、薬剤用量を投与するように注射デバイスを動作させることができる。
【0118】
薬剤送達プロセスが完了した後、補助デバイス2を注射デバイス10から取り外すとき、使用者はロッキングレバー36をロック位置からロック解除位置へ動かす。状態インジケータは、補助デバイス2が注射デバイス10からロック解除されたことを使用者に示すことができる。次いで使用者は、解放レバー43のハンドル44を回し、それによりパドル46は、ばね付き板39を注射デバイス10から離れる方へ下方に押し込む。これにより、ボス40が凹部42から係合解除される。次いで注射デバイス10は、ハウジング20内でアパーチャ33から自由に摺動する。次いで注射デバイス10は、好適な形で、再利用のために収納、リサイクル、または処分することができる。次いで補助デバイス2は、後に別の注射デバイス10とともに再利用するために収納することができる。
【0119】
図示および上述した例示的な実施形態に対する様々な代替手段は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に入ることが意図されることが理解されよう。1つのそのような実施形態では、第1の位置合わせ機能は、上記で示した細長いスロット34および突出部35に対する代替の構成とすることができる。たとえば、ハウジング内のアパーチャ33を円形以外の形状とすることができ、注射デバイス10の外側ハウジング11を対応する形状とすることができる。したがって、注射デバイス10は、軸X-Xに対して特定の回転位置のみでハウジング20内に受け入れ可能とすることができる。別法として、ハウジングは、1つまたはそれ以上の平坦なまたは成形された位置合わせ表面を有することができ、外側ハウジング11は、ハウジング20の位置合わせ表面に当接するようにそれに対応して成形された位置合わせ表面を有することができる。この場合も、ハウジング20のそのような構成は、注射デバイス10が軸X-Xに対して特定の回転位置のみでハウジング20内に受け入れ可能であることを確実にするはずである。また、第1の位置合わせ機能のそのような代替実施形態はすべて、軸X-X周りの補助デバイス2に対する注射デバイス10の回転運動を防止し、それによって「アンチロール」機能として働くはずである。
【0120】
第1の位置合わせ機能について、注射デバイス10上の突出部35を受けるように構成されたハウジング20内のスロット34として示したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、これらの機能を逆にすることもできる。たとえば、第1の位置合わせ機能は、ハウジング20のアパーチャ33の内面に形成された突出部を構成することができる。そのような突出部は、注射デバイス10の外側ハウジング11内に形成されたスロットに係合するように構成することができる。
【0121】
第2の位置合わせ機能について、注射デバイスの外側ハウジング11内の凹部42に受け入れられるばね付き板39上のスロットボス40として示したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、これらの機能を逆にすることもできる。たとえば、第2の位置合わせ機能は、ばね付き板内に形成された凹部を構成することができる。そのような凹部は、注射デバイス10の外側ハウジング11上に形成されたボスを受け入れるように構成することができる。
【0122】
さらに、図示の実施形態は、第1および第2の位置合わせ機能の両方を含むが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、補助デバイスは、別法として、1つの位置合わせ機能のみを含むこともできる。そのような単一の位置合わせ機能は、好ましくは、注射デバイスに対する補助デバイスの回転運動および軸方向運動を防止するように構成することができる。
【0123】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0124】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0125】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0126】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0127】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0128】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0129】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0130】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0131】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0132】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0133】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0134】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0135】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0136】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0137】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0138】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0139】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0140】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0141】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、物質、配合、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
図1A
図1B
図2
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図4a
図4b
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図5b
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図6b
図7
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