(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】動作モード切替のためのガス処理および管理システム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
(21)【出願番号】P 2019558752
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(86)【国際出願番号】 US2018029260
(87)【国際公開番号】W WO2018200610
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517374085
【氏名又は名称】アトラス コプコ コンプテック, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO COMPTEC, LLC
【住所又は居所原語表記】46 School Road, Voorheesville, New York 12186 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギブス, トッド スティーヴン アボット
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】長馬 望
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-149597(JP,A)
【文献】特開平11-303785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスからエタンガスを後工程の冷凍設備で液化させて回収するために、エタンガスを高圧化して出力する小流量高圧モードと、天然ガスからエタンガスを回収しないために、エタンガスを低圧状態で出力する多流量低圧モードとを切り替えて使用できる多段圧縮機において、
第1の圧縮部と、
第2の圧縮部と、
エタンガスを含むガス流を受け入れるインレットと、
前記インレットに流体接続された第2の導管であって、前記インレットから前記多段圧縮機の前記第1の圧縮部へ延び、さらに、前記第1の圧縮部からアウトレットへ延びる、
第2の導管と、
前記インレットに流体接続された第1の導管であって、前記インレットから前記多段圧縮機の前記第2の圧縮部へ延び、さらに、前記第2の圧縮部から前記アウトレットへ延びる、第1の導管と、
前記多段圧縮機の前記第2の圧縮部への前記ガス流の流れを制御する第1の弁と、
前記第1の導管と前記第2導管との間の前記ガス流の流れを制御する第2の弁と、
前記多段圧縮機の前記第1の圧縮部と前記アウトレットとの間の前記ガス流の流れを制御する第3の弁と、
前記第1導管と前記第2導管とを接続し、前記第1の圧縮部および前記第1の弁の下流、かつ前記第2の圧縮部および前記第3の弁の上流に位置する第3の導管と、
を備え、
前記第2の弁は、前記第3の導管に沿って位置すること、
前記小流量高圧モードでは、前記第1の弁及び前記第3の弁は閉弁位置にあり、前記第2の弁は開弁位置にあることにより、前記第1の圧縮部と前記第2の圧縮部が直列に連結され、前記ガス流は、前記第1の圧縮部と前記第2の圧縮部を通過して前記アウトレットへ出力されること、
前記多流量低圧モードでは、前記第2の弁を閉弁位置にあり、前記第1の弁及び前記第3の弁は開弁位置にあることにより、前記第1の圧縮部と前記第2の圧縮部は並行に稼働され、前記ガス流は、前記第1の圧縮部または前記第2の圧縮部を通過して前記アウトレットへ出力されること、
前記第1の圧縮部および前記第2の圧縮部はそれぞれ1つ以上の圧縮段を含む、
多段圧縮機。
【請求項2】
前記第1の圧縮部および前記第2の圧縮部はそれぞれ複数の圧縮段である、
請求項1に記載の多段圧縮機。
【請求項3】
前記1つ以上の圧縮段は、動的圧縮機および容積式圧縮機のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の多段圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年4月28日出願の米国特許仮出願第62/491,729号、発明の名称「動作モード切替のためのガス処理および管理システム」の優先権および利益を主張するものであり、その全体を参照により本出願に援用する。
【0002】
以下の記載は、動作モードを切替えるためのガス処理および管理システムの実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
天然ガス流は、エタン回収およびエタンリジェクションにおいて異なる動作モードで処理される。現在、エタン回収モードとエタンリジェクションモードとを切替えるためには、異なる圧縮機が必要とされる場合がある。リジェクションと回収との切替えを行うためには、2つの独立した圧縮機を使用するか、あるいは、既存の圧縮機を完全にまたは部分的に分解して、回収もしくはリジェクションのために必要な設備を外付けする必要がある。
【0004】
したがって、回収モードとリジェクションモードとを効果的に切替え可能な、単一の圧縮機ユニットが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、圧縮機であって、第1の圧縮機部と、第2の圧縮機部とを備え、前記第1の圧縮機部および前記第2の圧縮機部へのガス流の流れを制御する1つ以上の弁を開閉することにより、ガス処理システムを第1の動作モードから第2の動作モードへ切替えられる圧縮機である。
【0006】
一態様は、ガス処理および管理システムであって、第1の圧縮部と第2の圧縮部とを含む多段圧縮機と、エタンガスを含む天然ガス流を受けるインレットと、前記インレットに流体接続された第1の導管であって、前記インレットから前記多段圧縮機の前記第1の圧縮部へ延びる、第1の導管と、前記インレットに流体接続された第2の導管であって、前記インレットから前記多段圧縮機の前記第2の圧縮部へ延びる第2の導管と、前記多段圧縮機の前記第2の圧縮部への前記天然ガス流の流れを制御する第1の弁と、前記第1の導管と前記第2の導管との間の前記ガス流の流れを制御する第2の弁と、前記第1の圧縮部とアウトレットとの間の前記天然ガス流の流れを制御する第3の弁と、を備える、ガス処理および管理システムである。
【0007】
一態様は、多段圧縮機、第1の弁、第2の弁、および第3の弁を含むガス処理システムにおいて第1の動作モードから第2のリジェクション動作モードへ切替を行う方法であって、ガス流がインレットから前記多段圧縮機の第1の圧縮機部へ流れ、次いで、前記第1の圧縮機部による圧縮の後に直列運転の前記多段圧縮機の第2の圧縮機部へと流れるように、前記第1の弁と前記第3の弁を閉じる工程と、前記天然ガス流が前記インレットから前記第1の圧縮機部と、並列運転の前記第2の圧縮機部とに流れるように、前記第2の弁を閉弁した状態で前記第1の弁と前記第3の弁とを開く工程と、を含む方法である。
【0008】
一態様は、並列/直列圧縮機切替システム及び方法である。
【0009】
一態様は、異なる動作モードで行うガス処理及び管理である。
【0010】
設計及び動作にかかる上記特徴及びその他の特徴は、添付図面と共に以下に示す詳細な開示によって十分に正しく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
いくつかの実施形態を、以下の図面を参照して詳細に説明する。同様の符号は同様の部材を示すものとする。
【
図1】本発明の実施形態に係る、第1の動作モードにおけるガス処理システムの模式図を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る、第2の動作モードにおけるガス処理システムの模式図を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る、第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作する複数の圧縮段を有する圧縮機ユニットの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された装置、方法、およびシステムの以下に記載する実施形態を、図を参照しながら例示として詳細に説明する。ただし、実施形態はこれらの図に限定されない。いくつかの実施形態を示し詳細に説明するが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な変更および変形が可能であることを理解されたい。本開示の範囲は、構成要素の数、その材料、形状、相対的な配置などになんら限定されず、これらは単に本開示の実施形態の一例として開示されるものである。
【0013】
詳細な説明の前に、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」の単数形は、明らかに単数ではないことを内容が示している場合を除き、複数の場合を含むものとする。
【0014】
現在のエタン回収およびエタンリジェクションの方法およびシステムは、異なる動作モード(すなわち、回収モードおよびリジェクションモード)を必要とする。現在、回収モードでは、天然ガス流からエタンを圧縮して回収するために天然ガスを受け入れる2段圧縮機が使用される。一方、リジェクションモードは、異なるタイプの圧縮機、例えば、エタンガスの圧縮およびリジェクション、すなわち非回収のために天然ガスを受け入れる単段圧縮機などがある。動作モード切替(回収とリジェクションの切替)のためには、2つの独立した圧縮機、またはシステムにおける単一の既存の圧縮機を大幅に改造する必要がある。単一圧縮機システムの改造は、一般に、サービス技術者が機械を分解していくつかの構成部品を変更しなければならず、時間と高い費用を要する。したがって、既存の圧縮機を大幅に改造することなく動作モードを切替える必要性がある。
【0015】
図1は、ガス処理システム100の第1の動作モードのためのシステム100を示す。例示の実施形態において、ガス処理システム100の第1の動作モードは、エタン回収動作モードである。システム100の実施形態は、天然ガス流を収容する、もしくは受け入れるインレット5と、第1のラインまたは導管11と、第2のラインまたは導管12と、第3のラインまたは導管13と、第1の弁21と、第2の弁22と、第3の弁23と、第1の圧縮機部31と、第2の圧縮機部32と、処理済み流からエタンを回収するために天然ガス流を引き続き処理/運搬するためのアウトレット6と、を含むとよい。第1の圧縮機部31および第2の圧縮機部32の実施形態は、それぞれ、単段圧縮機でも、多段圧縮機の段であってもよい。各圧縮部は、インレットガイドベーンもしくはインレットスロットルバルブ、または他の流れ制御装置を有してよい。処理が充分に安定していれば、第2の圧縮部は追加の絞り装置を必要としない。更に、弁21、22、23は、手動式でも自動式でもよく、ブラインドフランジもまた、適切な隔離を行うのに好適である。弁21、22、23の実施形態は、例えばゲート弁、ちょう形弁、ボール弁、グローブ弁などの隔離弁でもよく、ブラインドフランジでもよい。
【0016】
システム100の第1の動作モードにおいて、第1の弁21は、天然ガスがインレット5からライン12を介して第1の圧縮機部31へと流れるように、閉弁位置にあってもよい。第1の圧縮機部31は、例えば、第1の圧縮段として、天然ガス流を圧縮してもよい。更に、第3の弁23の実施形態は、圧縮流が第1の圧縮機部31からライン12を介してライン13へと流れるように、閉弁位置にあってもよい。ライン13はライン11および12を接続してもよい。例えば、第2の弁22はライン13に沿って位置してもよく、第1の圧縮機部31の下流かつ第2の圧縮機部32の上流に位置してもよい。圧縮流は、ライン13を通り、次いでライン11の一部を介して第2の圧縮機部32へと流れてよい。第2の圧縮機部32は、例えば第2の圧縮段として、天然ガス流を更に圧縮してもよい。更に圧縮された天然ガス流は、エタンの回収などの更なる処理のために、アウトレット6を介して導出されてもよい。システム100のこの構成によれば、アウトレット6から出るガス流からエタンをより多く回収できる低流高圧力比が達成される。更に、回収モードは、圧縮機ユニットの圧縮機部31、32を改造せずに達成できる。回収モードを実現するシステム100の実施形態は、直列運転を行う第1の圧縮機部31および第2の圧縮機部32を含んでよい。ライン11、12、13の実施形態は、パイプ、ライン、接続、流体接続などであってよい。
【0017】
図2は第2の動作モードのためのガス処理システム101を示す。例示の実施形態において、第2の動作モードは、エタンリジェクション動作モードである。システム101の実施形態は、システム100のものと同様の圧縮機または圧縮機ユニットを含んでよい。例えば、システム
101の実施形態は、天然ガス流を収容するインレット5と、第1のラインまたは導管11と、第2のラインまたは導管12と、第3のラインまたは導管13と、第1の弁21と、第2の弁22と、第3の弁23と、第1の圧縮機部31と、第2の圧縮機部32と、天然ガス流を引き続き処理/運搬するためのアウトレット6と、を含んでよい。第1の圧縮機部31および第2の圧縮機部32の実施形態は、それぞれ、単段圧縮機または多段圧縮機の圧縮段であってよい。各圧縮部は、インレットガイドベーンもしくはインレットスロットルバルブ、または他の流れ制御装置を有してよい。処理が充分に安定していれば、第2の圧縮部は追加の絞り装置を必要としない。更に、弁21、22、23は手動式でも自動式でもよく、ブラインドフランジもまた、適切な隔離を行うのに好適である。システム101の第2の動作モードにおいては、第1の弁21は、天然ガス流が分流されるかもしくは分配されてインレット5からライン12を介して第1の圧縮機部31へ、および第2の圧縮機部32へと流れるように、開弁位置にあってもよい。第2の弁22は閉弁位置にあってよい。第2の弁22が閉弁位置にあることにより、圧縮されたガスが第1の圧縮機部31から出てライン11へ入り、更に第2の圧縮部32へと入ることを防ぐ。第3の弁23は、圧縮流が第1の圧縮機部31からアウトレット6へと流れるように、開弁位置にあってもよい。第2の圧縮機部32からの圧縮流は、ライン11を介してアウトレット6へと流れる。システム101のこの構成によって、流量が増加し圧力比が下がる。これはエタンリジェクションにとって理想的である。更に、回収動作モードからリジェクション動作モードへの切替えは、圧縮機部31、32または圧縮機ユニットを改造せずに達成される。リジェクションモードを表すシステム101の実施形態は、並列運転の第1の圧縮機部31および第2の圧縮機部32を含んでよい。
図3は、本発明の実施形態に係る、エタンまたは他のガスの回収モードおよびリジェクションモードなどの、2つの異なる動作モードで動作する複数の圧縮段を有する圧縮機ユニット200の斜視図を示す。圧縮機ユニット200の実施形態は、天然ガスを圧縮可能で、かつエタン回収モードおよびエタンリジェクションモードを実行可能な、圧縮機、圧縮機ユニット、多段圧縮機などであってよい。ある例示の実施形態において、圧縮機200は遠心圧縮機であってよい。他の例示の実施形態において、圧縮機200は、例えば遠心圧縮機や軸流圧縮機などの動的圧縮機、往復圧縮機やねじ圧縮機などの容積式圧縮機などであってよい。圧縮機200の実施形態は、第1の圧縮部31および第2の圧縮部32を含む、複数の圧縮段を含んでよい。圧縮機200の圧縮部31、32および追加され得る圧縮段が、配管または他の流路構造を介して接続されてもよい。更に、圧縮部31、32の実施形態は、それぞれ、1つ以上の圧縮段を含んでよく、当該1つ以上の圧縮段は、動的圧縮機および容積式圧縮機のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
したがって、圧縮機200の実施形態は、1つ以上の弁21、22、23を制御することにより、動作モード(例えば、第1の動作モードおよび第2の動作モード)を切替えてもよい。例示の実施形態において、圧縮機200は、1つ以上の弁21、22、23を制御することにより、システム100に示すようなエタン回収モードからシステム101に示すようなエタンリジェクションモードへ切替えてもよい。上述した開閉弁21、22、23は、既存の圧縮機を分解して圧縮機の主要構成要素を取り換えなければならない場合と比較して、はるかに手間がかからない。システム100、101に合わせた圧縮機200を使用して、他の動作モードを利用してもよい。例えば、システム100、101における圧縮機200を使用し、他のガスをリジェクトおよび回収してもよい。
【0019】
図1~3を参照し、多段圧縮機200、第1の弁21、第2の弁22、および第3の弁23を含むガス処理システム100、101において第1の動作モードと第2の動作モード(例えば、エタン回収モードからエタンリジェクションモードへ)の切替えを行う方法は、天然ガス流がインレット5から多段圧縮機200の第1の圧縮機部31へ流れ、次いで、第1の圧縮機部31による圧縮の後に直列運転の多段圧縮機200の第2の圧縮機部32へと流れるように、第1の弁21と第3の弁23とを閉じる工程を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の弁21と第3の弁23とを閉じることにより、天然ガス流に含まれるエタンが、システム100を含むガス処理システムによって回収されてもよい。この工程において、第2の弁22は開弁していてもよい。本方法は、天然ガス流がインレット5から第1の圧縮機部31と、並列運転の第2の圧縮機部32とに流れるように、第1の弁21と第3の弁23とを開弁する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の弁21と第3の弁23とを開くことにより、天然ガス流に含まれるエタンが、システム101を含むガス処理システムによってリジェクトされてもよい。この工程において、第2の弁22を閉弁してもよい。弁の開閉などの弁21、22、23の動作は、コンピュータシステム、制御システム、制御部などによって自動的に行われてもよい。別の実施形態において、弁21、22、23は手動で開閉してもよい。
【0020】
上記で概要を示した特定の実施形態とともに本開示を説明したが、多くの代替形態、変形例、および変更例が当業者には明らかとなることは言うまでもない。したがって、上述した本開示の好ましい実施形態は、例示を意図したものであり、本開示を限定するものではない。以下の特許請求の範囲に求められるように、本発明の精神および範囲を逸脱せずに様々な変更を行い得る。特許請求の範囲は、本発明の範囲を提供するものであり、本明細書に記載した特定の例に限定されるべきではない。