IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社巴川製紙所の特許一覧

<>
  • 特許-静電チャック装置 図1
  • 特許-静電チャック装置 図2
  • 特許-静電チャック装置 図3
  • 特許-静電チャック装置 図4
  • 特許-静電チャック装置 図5
  • 特許-静電チャック装置 図6
  • 特許-静電チャック装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240717BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020028081
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132177
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 知哉
(72)【発明者】
【氏名】栃平 順
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079785(JP,A)
【文献】特開2013-131541(JP,A)
【文献】特開2006-344955(JP,A)
【文献】特開2016-028448(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に積層された内部電極を少なくとも含む積層体と、該積層体の厚さ方向の上面に積層されたセラミックス層と、を備え、
前記基板は、厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴を有し、該貫通穴に絶縁性材料からなるスリーブが挿入され、前記スリーブが、前記基板の厚さ方向の上部にて、接着剤からなる接合手段を介して前記貫通穴に接合され、
前記接合手段を設ける長さは、前記基板の厚さの5%~30%であり、
前記接合手段の設置位置は、前記基板の表面から前記基板の底面に向かって、前記基板の厚さの50%以内であり、
前記貫通穴の内側面に凹部が形成されていることを特徴とする静電チャック装置。
【請求項2】
前記セラミックス層は、下地層と、該下地層の上面に形成され、凹凸を有する表層と、を有することを特徴とする請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記積層体が、前記内部電極の厚さ方向の両面側に設けられた絶縁性有機フィルムを少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを使用して半導体集積回路を製造する場合や、ガラス基板、フィルム等の絶縁性基板を使用した液晶パネルを製造する場合には、半導体ウエハ、ガラス基板、絶縁性基板等の基材を所定部位に吸着保持する必要がある。そのため、それらの基材を吸着保持するために、機械的方法によるメカニカルチャックや真空チャック等が用いられていた。しかしながら、これらの保持方法は、基材(被吸着体)を均一に保持することが困難である、真空中で使用することができない、試料表面の温度が上昇し過ぎる等の問題があった。そこで、近年、被吸着体の保持には、これらの問題を解決することができる静電チャック装置が用いられている。
【0003】
静電チャック装置は、内部電極となる導電性支持部材と、それを被覆する誘電性材料からなる誘電層と、を主要部として備える。この主要部により被吸着体を吸着させることができる。静電チャック装置内の内部電極に電圧を印加して、被吸着体と導電性支持部材との間に電位差を生じさせると、誘電層の間に静電気的な吸着力が発生する。これにより、被吸着体は導電性支持部材に対しほぼ平坦に支持される。
【0004】
従来の静電チャック装置としては、内部電極上に絶縁性有機フィルムを積層して、誘電層を形成した静電チャック装置が知られている。このような静電チャック装置には、セラミックス層をガスで冷却するためのガス供給穴が設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。このような静電チャック装置の一例を図7に示す。図7に示す静電チャック装置500は、基板510と、基板510上に積層され、複数の内部電極520および内部電極520の厚さ方向の両面側に設けられた絶縁性有機フィルム530を少なくとも含む積層体540と、積層体540の厚さ方向の上面に積層されたセラミックス層550と、を備える。内部電極520および絶縁性有機フィルム530は、接着剤層560を介して、基板510上に積層されている。また、セラミックス層550をガスで冷却するためのガス供給穴600が、基板510および積層体540を厚さ方向に貫通して設けられている。ガス供給穴600には、絶縁性材料からなるスリーブ570が挿入されている。スリーブ570は、基板510の厚さ方向の上部および下部にて、接着剤580を介してガス供給穴600の内側面に接合されている。また、セラミックス層550には、その厚さ方向に貫通する貫通穴610が設けられている。貫通穴610の内径(厚さ方向と垂直な径)は、ガス供給穴600の内径(厚さ方向と垂直な径)よりも小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-299425号公報
【文献】国際公開第2004/084298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板510はアルミニウム等の線膨張係数が比較的大きい材料からなり、スリーブ570はアルミナ等の線膨張係数が比較的小さい材料からなる。積層体540上にセラミックス層550を形成する際には、セラミックス層550を構成する材料を積層体540の外面全面に溶射する方法が用いられる。その溶射によって発生した熱が、基板510やスリーブ570に伝わる。すると、その熱によって基板510は伸びるが、スリーブ570は伸びない。スリーブ570を基板510の厚さ方向の上部および下部にてガス供給穴600に接合しておくと、基板510の熱膨張によって、セラミックス層550(特に基板510側のセラミックス層550)に亀裂が生じることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス層を形成する際に発生する熱による基板とスリーブの熱膨張の差に起因して、セラミックス層に亀裂が生じることを抑制した静電チャック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]基板と、該基板上に積層された内部電極を少なくとも含む積層体と、該積層体の厚さ方向の上面に積層されたセラミックス層と、を備え、前記基板は、厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴を有し、該貫通穴に絶縁性材料からなるスリーブが挿入され、前記スリーブが、前記基板の厚さ方向の上部にて、接着剤からなる接合手段を介して前記貫通穴に接合され、
前記接合手段を設ける長さは、前記基板の厚さの5%~30%であり、
前記接合手段の設置位置は、前記基板の表面から前記基板の底面に向かって、前記基板の厚さの50%以内であり、
前記貫通穴の内側面に凹部が形成されていることを特徴とする静電チャック装置。
[2]前記セラミックス層は、下地層と、該下地層の上面に形成され、凹凸を有する表層と、を有することを特徴とする[1]に記載の静電チャック装置。
[3]前記積層体が、前記内部電極の厚さ方向の両面側に設けられた絶縁性有機フィルムを少なくとも含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の静電チャック装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セラミックス層を形成する際に発生する熱による基板とスリーブの熱膨張の差に起因して、セラミックス層に亀裂が生じることを抑制した静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る静電チャック装置の概略構成を示し、静電チャック装置の高さ方向に沿う断面図である。
図2】本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第1の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図3】本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第2の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図4】本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第3の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図5】本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第4の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図6】本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第5の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図7】従来の静電チャック装置の概略構成を示し、静電チャック装置の高さ方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の静電チャック装置について説明する。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
[静電チャック装置]
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の静電チャック装置の概略構成を示し、静電チャック装置の高さ方向に沿う断面図である。図2は、本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第1の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。
図1に示すように、本実施形態の静電チャック装置1は、基板10と、複数の内部電極20を少なくとも含む積層体2と、積層体2の厚さ方向の上面2aに積層されたセラミックス層50と、を備える。
本実施形態の静電チャック装置1は、積層体2が、内部電極20の他に、接着剤層30および絶縁性有機フィルム40を含んでいてもよい。接着剤層30は、第1の接着剤層31と第2の接着剤層32からなる。絶縁性有機フィルム40は、第1の絶縁性有機フィルム41と第2の絶縁性有機フィルム42からなる。
【0013】
本実施形態の静電チャック装置1では、基板10の表面(基板10の厚さ方向の上面)10aにて、第1の接着剤層31と、第1の絶縁性有機フィルム41と、内部電極20と、第2の接着剤層32と、第2の絶縁性有機フィルム42と、セラミックス層50とがこの順に積層されている。
【0014】
本実施形態の静電チャック装置1では、図1に示すように、積層体2が、内部電極20の厚さ方向の両面(内部電極20の厚さ方向の上面20a、内部電極20の厚さ方向の下面20b)側にそれぞれ設けられた絶縁性有機フィルム40を少なくとも含んでいてもよい。詳細には、内部電極20の厚さ方向の上面20a側に、第2の絶縁性有機フィルム42が設けられていてもよく、内部電極20の厚さ方向の下面20b側に、第1の絶縁性有機フィルム41が設けられていてもよい。
【0015】
第1の絶縁性有機フィルム41の内部電極20とは反対側の面(第1の絶縁性有機フィルム41の下面41b)に第1の接着剤層31が設けられている。第1の絶縁性有機フィルム41および第1の絶縁性有機フィルム41の厚さ方向の上面41aに設けられた内部電極20と第2の絶縁性有機フィルム42の間に第2の接着剤層32が設けられている。
【0016】
本実施形態の静電チャック装置1では、基板10は、厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴60を有する。詳細には、図1に示すように、貫通穴60は、基板10および積層体2を厚さ方向に貫通して設けられている。貫通穴60には、絶縁性材料からなるスリーブ70が挿入されている。スリーブ70は、基板10の厚さ方向の上部にて、接合手段80を介して貫通穴60の内側面60aに接合されている。また、貫通穴60は、セラミックス層50をガスで冷却するためや、静電チャック装置1に被着される被吸着体をリフトアップするためのリフトピンや、内部電極20に電圧を印加するためのHVピン(直流電圧ピン)を挿入するための穴である。
【0017】
図1に示すように、セラミックス層50は、セラミックス下地層51と、セラミックス下地層51の上面(セラミックス下地層51の厚さ方向の上面)51aに形成され、凹凸を有するセラミックス表層52と、を有することが好ましい。また、セラミックス下地層51には、その厚さ方向に貫通する貫通穴51bが設けられている。貫通穴51bの内径(厚さ方向と垂直な径)は、貫通穴60の内径(厚さ方向と垂直な径)よりも小さい。
【0018】
内部電極20は、第1の絶縁性有機フィルム41または第2の絶縁性有機フィルム42に接していてもよい。また、内部電極20は、図1に示すように、第2の接着剤層32の内部に形成されていてもよい。内部電極20の配置は、適宜設計することができる。
【0019】
複数の内部電極20は、図1に示すように、それぞれ独立している場合、同一極性の電圧を印加するだけではなく、極性の異なる電圧を印加することもできる。内部電極20は、導電体、半導体および絶縁体等の被吸着体を吸着することができれば、その電極パターンや形状は特に限定されない。また、内部電極20は独立していなくてもよい。
【0020】
本実施形態の静電チャック装置1は、基板10上に積層された内部電極20を少なくとも含む積層体2の上面2aにセラミックス層50が積層されていれば、その他の層構成については特に限定されない。
【0021】
基板10としては、特に限定されないが、セラミックス基板、炭化ケイ素基板、アルミニウムやステンレス等からなる金属基板等が挙げられる。
【0022】
内部電極20としては、電圧を印加した際に静電吸着力を発現できる導電性物質からなるものであれば特に限定されない。内部電極20としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、ニッケル、タングステン等の金属からなる薄膜、および前記の金属から選択される少なくとも2種の金属からなる薄膜が好適に用いられる。このような金属の薄膜としては、蒸着、メッキ、スパッタリング等により成膜されたものや、導電性ペーストを塗布乾燥して成膜されたもの、具体的には、銅箔等の金属箔が挙げられる。
【0023】
第2の接着剤層32の厚さが、内部電極20の厚さよりも大きくなっていれば、内部電極20の厚さは特に限定されない。内部電極20の厚さは、20μm以下であることが好ましい。内部電極20の厚さが、20μm以下であれば、第2の絶縁性有機フィルム42を形成する際に、その上面42aに凹凸が生じ難い。その結果、第2の絶縁性有機フィルム42上にセラミックス層50を形成する際や、セラミックス層50を研磨する際に、不良が生じ難い。
【0024】
内部電極20の厚さは、1μm以上であることが好ましい。内部電極20の厚さが1μm以上であれば、内部電極20と、第1の絶縁性有機フィルム41または第2の絶縁性有機フィルム42とを接合する際に、十分な接合強度が得られる。
【0025】
複数の内部電極20のそれぞれに、極性の異なる電圧を印加する場合、隣接する内部電極20の間隔(内部電極20の厚さ方向と垂直な方向の間隔)は、2mm以下であることが好ましい。隣接する内部電極20の間隔が2mm以下であれば、隣接する内部電極20の間に十分な静電力が発生し、十分な吸着力が発生する。
【0026】
内部電極20から被吸着体までの距離、すなわち、内部電極20の上面20aからセラミックス表層52上に吸着される被吸着体までの距離(内部電極20の上面20aに存在する、第2の接着剤層32、第2の絶縁性有機フィルム42、セラミックス下地層51およびセラミックス表層52の厚さの合計)は、50μm~125μmであることが好ましい。内部電極20から被吸着体までの距離が50μm以上であれば、第2の接着剤層32、第2の絶縁性有機フィルム42、セラミックス下地層51およびセラミックス表層52からなる積層体の絶縁性を確保することができる。一方、内部電極20から被吸着体までの距離が125μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
【0027】
接着剤層30を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン系ブロック共重合体、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アミン化合物、ビスマレイミド化合物等から選択される1種または2種以上の樹脂を主成分とする接着剤が用いられる。
【0028】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジグリシジルジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能基または多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、エポキシ樹脂を主成分とする場合、必要に応じて、イミダゾール類、第3アミン類、フェノール類、ジシアンジアミド類、芳香族ジアミン類、有機過酸化物等のエポキシ樹脂用の硬化剤や硬化促進剤を配合することもできる。
【0029】
フェノール樹脂としては、アルキルフェノール樹脂、p-フェニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂等のノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂、ポリフェニルパラフェノール樹脂等が挙げられる。
【0030】
スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0031】
接着剤層30(第1の接着剤層31、第2の接着剤層32)の厚さは、特に限定されないが、5μm~20μmであることが好ましく、10μm~20μmであることがより好ましい。接着剤層30(第1の接着剤層31、第2の接着剤層32)の厚さが5μm以上であれば、接着剤として十分に機能する。一方、接着剤層30(第1の接着剤層31、第2の接着剤層32)の厚さが20μm以下であれば、吸着力を損なうことなく、内部電極20の電極間絶縁を確保することができる。
【0032】
絶縁性有機フィルム40を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン等が用いられる。これらの中でも、絶縁性に優れることから、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリイミド、シリコーンゴム、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリイミドがより好ましい。ポリイミドフィルムとして、例えば、東レ・デュポン社製のカプトン(商品名)、宇部興産社製 のユーピレックス(商品名)等が用いられる。
【0033】
絶縁性有機フィルム40(第1の絶縁性有機フィルム41、第2の絶縁性有機フィルム42)の厚さは、特に限定されないが、10μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましい。絶縁性有機フィルム40(第1の絶縁性有機フィルム41、第2の絶縁性有機フィルム42)の厚さが10μm以上であれば、絶縁性を確保することができる。一方、絶縁性有機フィルム40(第1の絶縁性有機フィルム41、第2の絶縁性有機フィルム42)の厚さが100μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
また、絶縁性有機フィルム40(第1の絶縁性有機フィルム41、第2の絶縁性有機フィルム42)の替わりに、セラミックス材からなるセラミックス板を用いてもよい。
【0034】
貫通穴60は、基板10および積層体2を厚さ方向に貫通するが、その平面視の形状(セラミックス下地層51の上面51a側から見た形状)は特に限定されない。貫通穴60の平面視の形状としては、円形状、矩形状等が挙げられる。貫通穴60の内径は、特に限定されないが、例えば、5mm~15mmであることが好ましく、5mm~13mmであることがより好ましい。貫通穴60の内径とは、貫通穴60の平面視の形状が円形状である場合には、貫通穴60の直径のことであり、貫通穴60の平面視の形状が円形状以外である場合には、貫通穴60の最も大きい部分の長さのことである。
【0035】
スリーブ70を構成する絶縁性材料としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、イットリア、ジルコニア等が挙げられる。
【0036】
スリーブ70は柱状の部材であるが、その長手方向と垂直な断面形状は、特に限定されず、貫通穴60の平面視の形状に応じて適宜設定される。スリーブ70の外径は、特に限定されないが、例えば、4.9mm~14.9mmであることが好ましく、4.9mm~13mmであることがより好ましい。スリーブ70の外径とは、スリーブ70の長手方向と垂直な断面形状が円形状である場合には、スリーブ70の長手方向と垂直な断面の直径のことであり、スリーブ70の長手方向と垂直な断面形状が円形状以外である場合には、スリーブ70の長手方向と垂直な断面の最も大きい部分の長さのことである。
また、スリーブ70は、内部が空洞の柱状の部材であり、スリーブ70の内径は、特に限定されないが、例えば、0.5mm~5mmであることが好ましく、0.3mm~3mmであることがより好ましい。
【0037】
貫通穴60の内側面60aとスリーブ70との間隔(貫通穴60の内側面60aとスリーブ70との間の隙間)は、特に限定されないが、例えば、50μm~200μmであることが好ましく、50μm~100μmであることがより好ましい。
【0038】
本実施形態の静電チャック装置1では、接合手段80としては、接着剤が用いられている。
接着剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0039】
接着剤からなる接合手段80を設ける長さは、接着剤を介して貫通穴60の内側面60aにスリーブ70を固定することができれば、特に限定されないが、例えば、基板10の厚さの5%~30%であることが好ましく、5%~10%であることがより好ましい。
また、接合手段80の設置位置は、基板10の表面(基板10の厚さ方向の上面)10aから基板10の底面(基板10の厚さ方向の底面)10bに向かって、該表面10aから基板10の厚さの50%以内に設けることが好ましく、さらに表面10aから基板10の厚さの30%以内に設けることが好ましく、特に表面10aから基板10の厚さの10%以内に設けることが好ましい。なお、下記で述べる第2の実施態様、第3の実施態様、第4の実施態様および第5の実施態様における接合手段について好ましい設置位置は、上記接合手段80と同じである。
【0040】
セラミックス層50を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化インジウム、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、窒化ジルコニウム、酸化チタン等が用いられる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの材料は、平均粒子径が1μm~25μmの粉体であることが好ましい。このような粉体を用いることにより、セラミックス層50の空隙を減少させ、セラミックス層50の耐電圧を向上させることができる。
【0041】
セラミックス下地層51の厚さは、10μm~80μmであることが好ましく、40μm~60μmであることがより好ましい。セラミックス下地層51の厚さが10μm以上であれば、十分な耐プラズマ性および耐電圧性を示す。一方、セラミックス下地層51の厚さが80μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
【0042】
セラミックス表層52の厚さは、5μm~20μmであることが好ましい。セラミックス表層52の厚さが5μm以上であれば、セラミックス表層52の全域にわたって、凹凸を形成できる。一方、セラミックス表層52の厚さが20μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
【0043】
セラミックス表層52は、その表面を研磨することによって、その吸着力を向上することができ、その表面の凹凸を表面粗さRaとして調整することができる。
ここで、表面粗さRaとは、JIS B0601-1994に規定される方法により測定した値を意味する。
【0044】
セラミックス表層52の表面粗さRaは、0.05μm~0.5μmであることが好ましい。セラミックス表層52の表面粗さRaが前記の範囲内であれば、被吸着体を良好に吸着することができる。セラミックス表層52の表面粗さRaが大きくなると、被吸着体とセラミックス表層52との接触面積が小さくなるため、吸着力も小さくなる。
【0045】
本実施形態の静電チャック装置1では、少なくとも内部電極20および絶縁性有機フィルム40を含む積層体2の厚さ方向の上面2a(第2の絶縁性有機フィルム42の上面42a)に、図示略の中間層を介してセラミックス層50が積層されていてもよい。
【0046】
中間層は、有機絶縁性樹脂および無機絶縁性樹脂の少なくとも一方と、無機充填剤および繊維状充填剤の少なくとも一方と、を含むことが好ましい。
【0047】
有機絶縁性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
無機絶縁性樹脂としては、特に限定されず、例えば、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0048】
中間層には、ポリシラザンを含有させることが好ましい。ポリシラザンとしては、例えば、当該分野で公知のものが挙げられる。ポリシラザンは、有機ポリシラザンであってもよく、無機ポリシラザンであってもよい。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
中間層中の無機充填剤の含有量は、ポリシラザン100質量部に対して100質量部~300質量部であることが好ましく、150質量部~250質量部であることがより好ましい。中間層中の無機充填剤の含有量が前記範囲内であれば、中間層の硬化物である樹脂膜表面に無機充填剤粒子が凹凸を形成することができるため、溶射材の粉末が無機充填剤粒子間に食い込み易く、前記樹脂膜表面に溶射材を強固に接着させることができる。
【0050】
無機充填剤としては、特に限定されないが、アルミナ、シリカおよびイットリアからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
無機充填剤は、球形粉体および不定形粉体の少なくとも一方であることが好ましい。
なお、球形粉体とは、粉体粒子の角部を丸めた球状体のことである。また、不定形粉体とは、破砕状、板状、鱗片状、針状など形状が一定な形を取らないもののことである。
【0051】
無機充填剤の平均粒子径は、1μm~20μmであることが好ましい。無機充填剤が球形粉体の場合、その直径(外径)を粒子径とし、無機充填剤が不定形粉体の場合、その形状の最も長い箇所を粒子径とする。
【0052】
繊維状充填剤は、植物繊維、無機繊維および繊維化された有機樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
植物繊維としては、パルプ等が挙げられる。
無機繊維としては、アルミナからなる繊維等が挙げられる。
繊維化された有機樹脂としては、アラミドやテフロン(登録商標)等からなる繊維が挙げられる。
【0053】
無機充填剤は、繊維状充填剤と併用することが好ましく、中間層全体(100体積%)に対する、無機充填剤と繊維状充填剤の合計含有量は10体積%~80体積%であることが好ましい。中間層における無機充填剤と繊維状充填剤の合計含有量が上記の範囲内であれば、溶射により、中間層上にセラミックス層を均一に形成することができる。
【0054】
中間層の厚さは、1μm~40μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましい。中間層の厚さが1μm以上であれば、局所的に中間層が薄くなることがなく、溶射により、中間層上にセラミックス層50を均一に形成することができる。一方、中間層の厚さが40μm以下であれば、十分な吸着力が発生する。
【0055】
以上説明した本実施形態の静電チャック装置1においては、基板10が厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴60を有し、貫通穴60に挿入されたスリーブ70が、基板10の厚さ方向の上部にて、接合手段80を介して貫通穴60に接合されている。したがって、セラミックス層50を形成する際に発生する熱が静電チャック装置1に伝わった場合に、基板10がその厚さ方向の下部側に伸びることができる。そのため、基板10の熱膨張によって、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。すなわち、基板10とスリーブ70の熱膨張の差に起因して、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。特に基板10がアルミニウム製であり、スリーブ70がセラミックス製である場合に、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。
【0056】
本実施形態の静電チャック装置1において、セラミックス層50が、セラミックス下地層51と、セラミックス下地層51の上面51aに形成され、凹凸を有するセラミックス表層52と、を有することにより、所望の吸着力に制御することができる。
【0057】
本実施形態の静電チャック装置1において、絶縁性有機フィルムが、ポリイミドフィルムであることにより、耐電圧性が向上する。
【0058】
(第2の実施形態)
図3は、本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第2の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。なお、図3において、図2に示した第1の実施形態の静電チャック装置と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0059】
本実施形態の静電チャック装置100が、上述の第1の実施形態の静電チャック装置1と異なる点は、次の通りである。基板10の厚さ方向の上部にて、貫通穴60の内側面60aに、基板10の厚さ方向の断面形状が三角形状の凹部11が形成されている。その凹部11内に接着剤からなる接合手段80が充填され、その接合手段80を介して貫通穴60に、スリーブ70が接合されている。
【0060】
なお、凹部11の断面形状は、上記の三角形状に限定されない。凹部11の基板10の厚さ方向における断面形状は、例えば、弧状、矩形状等が挙げられる。
【0061】
本実施形態の静電チャック装置100によれば、基板10の熱膨張によって、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。
【0062】
(第3の実施形態)
図4は、本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第3の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。なお、図4において、図2に示した第1の実施形態の静電チャック装置と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0063】
本実施形態の静電チャック装置200が、上述の第1の実施形態の静電チャック装置1と異なる点は、次の通りである。基板10の厚さ方向の上部にて、貫通穴60の内側面60aに、基板10の厚さ方向の断面形状が弧状の凹部12が形成されている。その凹部12内に、スリーブ70の外側面70aから外方に突出して設けられ、スリーブ70の長手方向(基板10の厚さ方向)の断面形状が弧状の凸部71が係合され、その凸部71を介して貫通穴60に、スリーブ70が接合されている。すなわち、本実施形態の静電チャック装置200では、凸部71が、スリーブ70を貫通穴60に接合するための接合手段である。
【0064】
なお、凹部12の断面形状は、上記の弧状に限定されない。凹部12の基板10の厚さ方向における断面形状は、例えば、三角形状、矩形状等が挙げられる。また、凸部71の断面形状は、上記の弧状に限定されない。凸部71のスリーブ70の長手方向における断面形状は、例えば、三角形状、矩形状等が挙げられる。また、凹部12の断面形状と凸部71の断面形状は同一でなくてもよい。凸部71が凹部12に係合することができれば、それらの形状は異なっていてもよい。
【0065】
本実施形態の静電チャック装置200によれば、基板10の熱膨張によって、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。
【0066】
(第4の実施形態)
図5は、本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第4の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。なお、図5において、図2に示した第1の実施形態の静電チャック装置と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0067】
本実施形態の静電チャック装置300が、上述の第1の実施形態の静電チャック装置1と異なる点は、次の通りである。基板10の厚さ方向の上部にて、貫通穴60の内側面60aに、雌ネジ部13が形成されている。その雌ネジ部13内に、スリーブ70の外側面70aから外方に突出して設けられた雄ネジ部72が螺合され、その雌ネジ部13および雄ネジ部72を介して貫通穴60に、スリーブ70が接合されている。すなわち、本実施形態の静電チャック装置300では、雌ネジ部13および雄ネジ部72が、スリーブ70を貫通穴60に接合するための接合手段である。
【0068】
なお、本実施形態の静電チャック装置300では、貫通穴60の内側面60aに雌ネジ部13が形成され、スリーブ70の外側面70aに雄ネジ部72が形成されている場合を例示したが、本発明の静電チャック装置はこれに限定されない。本発明の静電チャック装置にあっては、貫通穴の内側面に雄ネジ部が形成され、スリーブの外側面に雌ネジ部が形成されていてもよい。
【0069】
本実施形態の静電チャック装置300によれば、基板10の熱膨張によって、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。
【0070】
(第5の実施形態)
図6は、本発明に係る静電チャック装置の概略構成の第5の実施形態を示し、図1に示す領域αを拡大した図である。なお、図6において、図2に示した第1の実施形態の静電チャック装置と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0071】
本実施形態の静電チャック装置400が、上述の第1の実施形態の静電チャック装置1と異なる点は、次の通りである。基板10の厚さ方向の上部に形成された積層体2には貫通穴60が形成されておらず、スリーブ70の先端が第1の接着剤層31までで固定されている。積層体2には、その厚さ方向に貫通し、貫通穴60よりも小径の貫通穴2bが形成されている。
【0072】
また、本実施形態の静電チャック装置400においても、貫通穴60に挿入されたスリーブ70が、基板10の厚さ方向の上部にて、接合手段80を介して貫通穴60に接合されている。したがって、セラミックス層50を形成する際に発生する熱が静電チャック装置400に伝わった場合に、基板10がその厚さ方向の下部側に伸びることができる。そのため、基板10の熱膨張によって、セラミックス層50(特にセラミックス下地層51)に亀裂が生じることを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の静電チャック装置400において、貫通穴60が内部電極に電圧を印加するためのHVピン(直流電圧ピン)を挿入するための穴である場合は、積層体2における貫通穴60よりも小径の貫通穴2bを形成しないで、貫通穴60を、第1の接着剤層31および第1の絶縁性有機フィルム41に設けることによって、貫通穴60の内部に接合されたスリーブ70の内径にHVピンを通し、該HVピンと内部電極20とを接触するようにしてもよい。
【0074】
[静電チャックの製造方法]
図1を参照して、本実施形態の静電チャック装置1の製造方法を説明する。
第1の絶縁性有機フィルム41の表面(第1の絶縁性有機フィルム41の厚さ方向の上面)41aに、銅等の金属を蒸着して、金属の薄膜を形成する。その後、エッチングを行って、金属の薄膜を所定の形状にパターニングして、内部電極20を形成する。
【0075】
次いで、内部電極20の上面20aに、第2の接着剤層32を介して、第2の絶縁性有機フィルム42を貼着し積層体2を得る。
【0076】
次いで、上記積層体2の表面上からレーザ光を照射して、積層体2に基板10における貫通穴60に合わせて穴を形成する。
【0077】
一方、基板10には、ドリル等により貫通穴60を形成した後、貫通穴60内にスリーブ70を挿入し、接合手段80を介して貫通穴60にスリーブ70を接合する。
【0078】
次いで、穴を有する積層体2における第1の絶縁性有機フィルム41の下面41bが基板10の表面10a側となるように、第1の接着剤層31を介して、積層体2の穴と基板10の貫通穴60が合うように基板10の表面10aに接合する。
【0079】
次いで、積層体2の外面全面を覆うように、セラミックス下地層51を形成する。
セラミックス下地層51を形成する方法は、例えば、セラミックス下地層51を構成する材料を含むスラリーを積層体2の外面全面に塗布し、焼結してセラミックス下地層51を形成する方法、セラミックス下地層51を構成する材料を積層体2の外面全面に溶射してセラミックス下地層51を形成する方法等が挙げられる。
ここで、溶射とは、被膜(本実施形態では、セラミックス下地層51)となる材料を加熱溶融後、圧縮ガスを用いて被処理体へ射出することにより成膜する方法のことである。
【0080】
次いで、セラミックス下地層51の上面51aに、セラミックス表層52を形成する。
セラミックス表層52を形成する方法は、例えば、セラミックス下地層51の上面51aに、所定の形状のマスキングを施した後、セラミックス表層52を構成する材料をセラミックス下地層51の上面51aに溶射してセラミックス表層52を形成する方法、セラミックス表層52を構成する材料をセラミックス下地層51の上面51a全面に溶射してセラミックス表層52を形成した後、そのセラミックス表層52を、ブラスト処理により削って、セラミックス表層52を凹凸形状に形成する方法等が挙げられる。
【0081】
以上の工程により、本実施形態の静電チャック装置1を作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の静電チャック装置によれば、基板が厚さ方向に貫通して設けられた貫通穴を有し、その貫通穴にスリーブが挿入され、スリーブが基板の厚さ方向の上部にて、接合手段を介して貫通穴に接合されているため、セラミックス層を形成する際に発生する熱が静電チャック装置に伝わった場合に、基板がその厚さ方向の下部側に伸びることができる。したがって、基板の熱膨張によって、セラミックス層に亀裂が生じることを抑制できる。すなわち、基板とスリーブの熱膨張の差に起因して、セラミックス層に亀裂が生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0083】
1,100,200,300,400 静電チャック装置
2 積層体
10 基板
11,12 凹部
13 雌ネジ部
20 内部電極
30 接着剤層
31 第1の接着剤層
32 第2の接着剤層
40 絶縁性有機フィルム
41 第1の絶縁性有機フィルム
42 第2の絶縁性有機フィルム
50 セラミックス層
51 セラミックス下地層
52 セラミックス表層
60 貫通穴
70 スリーブ
71 凸部
72 雄ネジ部
80 接合手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7