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特許7521904磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 311
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020030320
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2020138020
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】16/290,574
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミア デーヴ シャルマ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-125703(JP,A)
【文献】特開2000-135206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0247153(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131732(US,A1)
【文献】特開2014-008409(JP,A)
【文献】特開2014-008173(JP,A)
【文献】Brady Quist, et al.,Balanced SSFP Dixon Imaging with Banding-Artifact Rduction at 3 Tsla,Magnetic Resonance in Medicine,2015年,74,706-715
【文献】Junmin Liu, et al.,Method of B0 Mapping With Magnitude-Based Correction for Bipolar Two-Point Dixon Cardiac MRI,Magnetic Resonance in Medicine,2017年,78,1862-1869
【文献】Junmin Liu, et al.,Method for B0 Off-Resonance Mapping by Non-Iterative Correction of Phase-Errors (B0-NICE),Magnetic Resonance in Medicine,2015年,74,1177-1188
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像の対を用い、それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁界マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、前記組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成することを複数の対について行う生成部と、
前記複数の対からそれぞれ生成された前記少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する合成部と
を備え、
前記複数の対は、互いにTEが異なる磁気共鳴信号から得られた少なくとも3以上の磁気共鳴画像から、前記複数の対それぞれが異なる組み合わせとなるように選択され
前記合成部は、前記複数の対からそれぞれが生成した前記少なくとも一つの画像のうち、複数の前記少なくとも一つの画像に基づいて前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかを判定することを含む、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記合成部は、2以上の前記第1画像を合成して前記合成第1画像を生成し、2以上の前記第2画像を合成して前記合成第2画像を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記合成部は、前記生成部が生成した前記少なくとも一つの画像と、前記合成部が生成した前記少なくとも一つの合成画像とに基づいて、少なくとも一つの最終合成画像を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記合成部は、ピクセル単位の非線形適合法を用いて、前記少なくとも一つの最終合成画像として、最終合成B0磁界マップ、最終第1合成画像、最終第2合成画像、及びT2*画像を生成する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記複数の対それぞれは、デュアルエコー法を用いて撮像された前記磁気共鳴信号より得られた磁気共鳴画像の対である、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1の種の信号は水信号であり、前記第2の種の信号は脂肪信号である、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記合成部は、ピクセル位置ごとに、前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかを判定する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記合成部は、前記ピクセル位置ごとに、前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかの度合いを表す信頼度マップを更に生成する、請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記合成部は、前記ピクセル位置の近隣に位置するピクセルの値に基づいて、前記信頼度マップを修正する、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像の対を用い、それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁界マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、前記組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成することを複数の対について行う生成部と、
前記複数の対からそれぞれ生成された前記少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する合成部と
を備え、
前記複数の対は、互いにTEが異なる磁気共鳴信号から得られた少なくとも3以上の磁気共鳴画像から、前記複数の対それぞれが異なる組み合わせとなるように選択され、
前記合成部は、前記それぞれの対について生成された前記少なくとも一つの画像に対して、複数の前記少なくとも一つの画像の間で、多数決処理を行うことにより、前記少なくとも一つの合成画像を生成する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記多数決処理は、ピクセル位置ごとに、前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかを判定する処理である、請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記合成部は、前記ピクセル位置ごとに、前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかの度合いを表す信頼度マップを更に生成する、請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記合成部は、前記ピクセル位置の近隣に位置するピクセルの値に基づいて、前記信頼度マップを修正する、請求項12に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記対の数は、奇数である、請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像の対を用い、それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁界マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、前記組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成することを複数の対について行う生成部と、
前記複数の対からそれぞれ生成された前記少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する合成部と
を備え、
前記複数の対は、互いにTEが異なる磁気共鳴信号から得られた少なくとも3以上の磁気共鳴画像から、前記複数の対それぞれが異なる組み合わせとなるように選択され
前記合成部は、前記複数の対からそれぞれが生成した前記少なくとも一つの画像のうち、複数の前記少なくとも一つの画像に基づいて前記第1の種の信号と前記第2の種の信号のどちらが支配的であるかを判定することを含む、画像処理装置。
【請求項16】
互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像の対を用い、それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁界マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、前記組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成することを複数の対について行う生成部と、
前記複数の対からそれぞれ生成された前記少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する合成部と
を備え、
前記複数の対は、互いにTEが異なる磁気共鳴信号から得られた少なくとも3以上の磁気共鳴画像から、前記複数の対それぞれが異なる組み合わせとなるように選択され、
前記合成部は、前記それぞれの対について生成された前記少なくとも一つの画像に対して、複数の前記少なくとも一つの画像の間で、多数決処理を行うことにより、前記少なくとも一つの合成画像を生成する、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)システムおよび方法は、特に医用イメージングと診断に、幅広く利用されている。MRIシステムは、一般に、被験者の身体の画像を作成する。この画像には、被験者の身体における複数の化学種からの信号が含まれる。例えば、より良い病気診断のために、これら複数の化学種からの信号が分離されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許4720679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、化学種の信号を分離することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、生成部と合成部とを備える。生成部は、複数の対の磁気共鳴画像であって互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁場マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、当該組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成する。合成部は、2以上の、複数の対の磁気共鳴画像それぞれの対について生成された当該少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、本開示の一実施形態による化学種分離を実施する方法180の一例を示す図である。
図1B図1Bは、本開示の一実施形態による方法180に対応する例190を示す図である。
図1C図1Cは、本開示の一実施形態による合成画像の初期セットを生成する一例を示す図である。
図2A図2Aは、本開示の一実施形態による化学種分離を実施する方法280の一例を示す図である。
図2B図2Bは、本開示の一実施形態による方法280に対応する例290を示す図である。
図2C図2Cは、本開示の一実施形態による信頼度マップを生成する一例を示す図である。
図2D図2Dは、本開示の一実施形態による信頼度マップを更新する一例を示す図である。
図3図3は、本開示の一実施形態によるMRIシステム100の限定されない一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面の参照図に例示的実施形態を示す。本明細書に開示する実施形態および図は限定的なものではなく、例示を意図するものである。以下に述べる技術の範囲および特許請求の範囲は、図面に示し、本明細書に記載する実施形態に制限されるものではない。
【0008】
実施形態は主に、特定の実施態様において提示する特定のプロセスおよびシステムに着目して説明される。しかし、これらのプロセスおよびシステムは、他の実施態様においても効果的に機能する。「一実施態様」、「一実施形態」、「ある実施形態」、「別の実施形態」等の語句は、同一または異なる実施形態を指すことがある。実施形態/実施態様は、ある特定の構成要素を有する方法および組成物に関して記載する。しかし、方法および組成物には、示されるよりも多いまたは少ない数の構成要素が含まれ、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、構成要素の構成および種類が変更されうる。
【0009】
例示的実施形態は、ある特定のステップを有する方法に関連して説明される。しかし、方法および組成物は、ステップを追加したり、ステップの順番を変更したりして、例示的実施形態と一致しない場合でも効果的に機能する。したがって、本開示は、示される実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載の原理および特徴と一致する最も広い範囲が許容され、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
【0010】
さらに、ある値の範囲が設けられた場合は、その範囲の上限と下限との間にある各値(および、その指定された範囲における任意の他の指定された値またはその間にある値)は本開示の範囲に含まれる。指定された範囲に上限と下限が含まれる場合、それらの境界値のいずれかを含まない範囲も含まれる。明記されない限り、本明細書で用いる用語は、当業者に明らかな、平易かつ通常の意味を有するものとする。いかなる定義も、読み手による本開示の理解を助けることを意図するものであり、特に記載がない限り、かかる用語の意味を限定するものではない。
【0011】
本明細書に記載の装置および方法には、関連した方法に対して有利な点がいくつかある。有利な点には、医用画像(MRIにより生成される画像等)の画質の改善が含まれる。本明細書に記載の装置および方法は、本開示の限定されない実施態様として提示される。当業者には明らかなように、本開示は、その趣旨または本質的な特徴を逸脱しない範囲で、他の特定の形式において具体化されうる。したがって、以下の実施形態は、例示を意図するものであり、本開示の範囲を限定するものではない。本開示は、本明細書の教示の、容易に識別できる変形も含めて、発明の対象が公共の用に供しないように、前述の特許請求の範囲の用語の範囲を部分的に定義する。
【0012】
まずはじめに、図3を用いて、実施形態に関する磁気共鳴イメージング装置について説明する。図3は、MRIシステム100の限定されない一例を示す。図3に示すMRIシステム100には、架台101(模式断面図で示す)と、架台101と接続される種々の関連したMRIシステム構成要素103とが含まれる。通常、少なくとも架台101はシールドルームに設置される。図3に示すMRIシステムの配列には、静磁場磁石111と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット113と、大型の全身RFコイル(Whole-Body Radio Frequency Coil:WBC)115との略同軸円筒状の配置が含まれる。撮像ボリューム117が、この円筒状の要素アレイの水平軸に沿って、患者テーブル120に支持された患者119の頭部を実質的に取り囲んで示されている。
【0013】
撮像ボリューム117内で、1つまたは複数の小型のアレイ無線周波数(Radio Frequency:RF)コイル121を患者の頭部(本明細書において、例えば、「スキャン対象」または「被検体」と呼ぶ)により接近して連結することができる。当業者には明らかなように、WBCに比べて小型のコイルやアレイ(表面コイル等)が特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設定されることが多い。本明細書において、このような小型のRFコイルを、アレイコイル(Array Coil:AC)またはフェーズドアレイコイル(Phased-Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらのコイルには、RF信号を撮像ボリューム内に送信するように構成される少なくとも1つのコイル、および撮像ボリューム内の被検体(患者の頭部等)からRF信号を受信するように構成される複数の受信コイルが含まれる。
【0014】
MRIシステム100には、ディスプレイ124と、キーボード126と、プリンタ128とに接続された入出力(Input/Output:I/O)ポートを有するMRIシステムコントローラ130が含まれる。明らかなように、ディスプレイ124は、制御入力も与えられる、タッチスクリーン式のものであってもよい。マウスやその他のI/O装置が設けられてもよい。
【0015】
MRIシステムコントローラ130はMRIシーケンスコントローラ140に接続しており、さらに、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ132、RF送信機134、および送受信スイッチ136(同じRFコイルが送信および受信の両方に用いられる場合)を制御する。MRIシーケンスコントローラ140には、パラレルイメージング等のMRIイメージング(核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)イメージングとしても知られる)技術の実施に適したプログラムコード構造138が含まれる。MRIシーケンスコントローラ140は、パラレルイメージングを用いるかどうかにかかわらず、MRIの構成となることができる。さらに、MRIシーケンスコントローラ140は、1つまたは複数の予備スキャン(プリスキャン)シーケンス、および本スキャンMR画像(診断画像と呼ばれる)を取得するスキャンシーケンスを実行することができる。MRIシーケンスコントローラ140は、プリスキャンからのMRデータを用いて、例えば、全身RFコイル115や121についての感度マップ(コイル感度マップまたは空間的感度マップと呼ばれることもある)を決定し、パラレルイメージングのための展開マップを決定することができる。
【0016】
MRIシステム構成要素103にはRF受信機141が含まれ、RF受信機141はMRIデータプロセッサ142に入力を与えて、処理画像データを作成する。処理画像データはディスプレイ124に送信される。MRIデータプロセッサ142はまた、これまでに生成したMRデータ、画像、マップ(例えば、コイル感度マップ、パラレル画像展開マップ、歪みマップ等)、システム構成パラメータ(マップ/MRI画像メモリ)146、画像再構成プログラムコード構造144およびプログラム記憶装置150にアクセスするように構成される。
【0017】
ある実施形態において、MRIデータプロセッサ142には、処理回路が含まれる。処理回路には、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit:ASIC)、構成可能な論理デバイス(例えば、単純プログラム可能論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラム可能論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のデバイス、および本開示に記載した作用を実施するように構成されたその他の回路部品が含まれる。一実施形態において、MRIデータプロセッサ142の処理回路は、方法180および方法280の種々のステップを実施するように構成される。MRIデータプロセッサ142の処理回路は、後述する生成機能及び合成機能を備える。
【0018】
MRIデータプロセッサ142は、画像再構成プログラムコード構造144およびプログラム記憶装置150に含まれる1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行する。あるいは、命令は、ハードディスクやリムーバブルメディアドライブ等の、別のコンピュータ可読媒体から読み取られる。
【0019】
すなわち、生成機能及び合成機能にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で画像再構成プログラム構造144やプログラム記憶装置150へ記憶されている。MRIデータプロセッサ142はプログラムを画像再構成プログラム構造144やプログラム記憶装置150から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態のMRIデータプロセッサ142は、各プログラムに対応した機能を有することになる。なお、生成機能及び合成機能は、それぞれ、生成部及び合成部の一例である。
【0020】
なお、多重処理装置における1つまたは複数のプロセッサを用いて、画像再構成プログラムコード構造144およびプログラム記憶装置150に含まれる命令のシーケンスを実行することもできる。代替の実施形態において、ソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、結線で接続された回路が用いられる。よって、開示する実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。一実施形態において、方法180および方法280を参照して説明したような、化学種分離を実施する命令は、画像再構成プログラムコード構造144やプログラム記憶装置150に格納することができる。
【0021】
加えて、本明細書で用いる「コンピュータ可読媒体」という用語は、MRIデータプロセッサ142に命令を与えて実行させることに関係する、あらゆる非一時的な媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発媒体や揮発媒体を含むがこれに限定されない、多くの形をとりうる。不揮発媒体には、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、またはリムーバブルメディアドライブが含まれる。揮発媒体には、ダイナミックメモリが含まれる。
【0022】
また、図3には、プログラム記憶装置(メモリ)150が一般化して示され、格納されたプログラムコード構造が、MRIシステム100の種々のデータ処理構成要素にアクセス可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納される。当業者には明らかなように、プログラム記憶装置150を分割し、少なくとも一部を、通常の動作中に前述の格納されたプログラムコード構造を最も早急に必要とするコンピュータを処理するMRIシステム構成要素103の別々の要素に直接接続することができる(すなわち、共通して格納され、MRIシステムコントローラ130に直接接続されるのではない)。
【0023】
加えて、図3に示すMRIシステム100を用いて、本明細書の以下に記載の例示的実施形態を実施することができる。システム構成要素は、別々の「ボックス」の論理的な集合に分割することができ、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)、マイクロプロセッサ、および特殊用途処理回路(例えば、高速アナログ-デジタル(Analog-to-Digital:A/D)変換、高速フーリエ変換、アレイ処理等)を備える。これらの各プロセッサは通常、クロック制御された「状態機械」であり、各クロックサイクル(または所定数のクロックサイクル)が発生すると、物理的データ処理回路が、ある物理的状態から別の物理的状態に進む。
【0024】
さらに、処理回路(例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、レジスタ、バッファ、演算装置等)の物理的状態が、動作の過程で、あるクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連のデータ記憶媒体(例えば、磁気記憶媒体におけるビット格納サイト)の物理的状態が、かかるシステムの動作中に、ある状態から別の状態に変化する。例えば、画像再構成プロセスや、場合によっては画像再構成マップ(例えば、コイル感度マップ、展開マップ、ゴーストマップ、歪みマップ等)生成プロセスの終わりに、物理的記憶媒体におけるコンピュータ可読かつアクセス可能なデータ値格納サイトのアレイが、以前の状態から新しい状態に変化する。新しい状態では、かかるアレイの物理的サイトにおける物理的状態が最小値と最大値との間で変化して、実際の物理的事象および状態が表される。当業者には明らかなように、前述の格納されたデータ値のアレイは物理的構造を表し、また構成している。これは、コンピュータ制御プログラムコードの特定の構造が、命令レジスタに順次ロードされ、MRIシステム100の1つまたは複数のCPUに実行されると、動作状態の特定のシーケンスを発生させ、MRIシステム100内を通って移行させるのと同様である。
【0025】
続いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明する。
【0026】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)では、様々なエコー時間(Echo Time:TE)を用いて、少なくとも3枚のMR画像を組織から収集できる。ここで、組織には、第1の化学種(すなわち、第1の種)、第2の化学種(すなわち、第2の種)といった複数の化学種が含まれる。また、少なくとも3枚の画像の各々には、第1の種の第1の信号、第2の種の第2の信号等、複数の化学種の信号が含まれる。一般に、第1の画像が第1の種の第1の信号を表し、第2の画像が第2の種の第2の信号を表すように、複数の化学種の信号を分離する化学種の分離を実施することが望ましい。一例として、第1の種の信号は例えば水信号であり、第2の種の信号は脂肪信号である。第1の画像は、第1の種のみの画像と呼ばれ、第2の画像は、第2の種のみの画像と呼ばれる。
【0027】
化学種の分離を実施するために、組織における磁界強度B0の空間的不均一性を主に表すB0磁界マップを推定する必要がある。一般に、B0磁界マップをより正確に推定すると、化学種の分離がより正確になる。実施形態によると、少なくとも3枚のMR画像からデュアルエコー法による複数の対を選択することができ、デュアルエコー法による複数の対それぞれを個別に処理することで、B0磁界マップを推定し、複数の化学種を分離することができる。後述のとおり、デュアルエコー法による単一の対ではなくデュアルエコー法による複数の対を採用し、少なくとも3枚のMR画像を一緒に処理するのではなくデュアルエコー法による複数の対を個別に処理することで、B0磁界マップの推定がより正確になるため、複数の化学種をより正確に分離できるようになる。
【0028】
ここで図面を参照する。それぞれの図において、同様の参照符号は同一または対応する要素を示す。図1Aは、本開示の一実施形態による化学種分離を実施する方法180の一例を示す。図1Bは、本開示の一実施形態による方法180に対応する例190を示す。方法180は、ステップS181から開始し、ステップS182へ進む。
【0029】
ステップS182において、様々なエコー時間(TE)に対応する少なくとも3枚の磁気共鳴画像が組織から取得される。前述の説明と同様に、組織は、第1の種、第2の種等を含む複数の化学種を有する。少なくとも3枚の磁気共鳴画像の各々は、複数の化学種からの信号を表し、信号には、第1の種の第1の信号、第2の種の第2の信号等が含まれる。一例として、MRIシーケンスコントローラ140は、デュアルエコー法を用いて撮像を行い、互いにTEが異なるパルスシーケンスの実行により磁気共鳴信号を取得する。MRIデータプロセッサ142は、生成機能により、取得した磁気共鳴信号に基づいて、複数の対の磁気共鳴画像であって互いにTEが異なる磁気共鳴画像の対を生成する。
【0030】
図1Bにおける例190に示されているように、MRIの種々の実施形態において、第1の種が水、第2の種が脂肪である場合、水および脂肪が信号の主な要因である。よって、第1の信号が水信号、第2の信号が脂肪信号である。脂肪信号(すなわち、脂肪の存在)は、水信号と脂肪信号の両方が含まれるMR画像において、病変または癌領域の判定等を行う上で、MR画像の評価を妨げる恐れがある。したがって、水や脂肪等、複数の化学種を分離することが有利である。一実施形態において、1つまたは複数の周波数偏移に基づいた、化学種符号化(Chemical Species Encoded:CSE)イメージングが化学種分離に用いられる。周波数偏移とは、2つの化学種間の共鳴振動数(すなわち、ラーモア振動数)の差を指し、2つの化学種の磁気特性の差を表す。例えば、1.5テスラ(T)における脂肪と水との間の周波数偏移は、1.5Tにおける水のラーモア振動数に対して、約220ヘルツ(Hz)すなわち3.5ppmである。様々なTEで複数のMR画像が収集されると、複数のMR画像における水信号と脂肪信号とのコントラストは、水と脂肪との間の周波数偏移により変化するため、水信号と脂肪信号は複数のMR画像の後処理で分離可能である。
【0031】
図1Aの例では、少なくとも3枚のMR画像におけるMR画像の数は、2より大きい任意の好適な整数(例えば、3、4、5、または6)である。少なくとも3枚のMR画像は、MRIパルスシーケンスに応じて、昇順に、様々なTE(第1のTE TE1、第2のTE TE2、第3のTE TE3等)で収集される。様々なTEは、0ミリ秒(ms)の時間t0を基準にして指定することができる。時間t0は、MRIパルスシーケンス(例えば、グラディエントリコールドエコー法)の励起の時間である。様々なTEは任意の好適な時間である。一実施形態において、隣接するTE間の時間差は、1ms~数msである。少なくとも3枚のMR画像は、例えば、3次元(Three-Dimensional:3D)画像や2次元(Two-Dimensional:2D)画像である。3D画像におけるピクセルは、ボクセル(すなわち、ボリュームピクセルの略)とも呼ばれ、組織の単位体積に対応するのに対して、2D画像におけるピクセルは、組織の単位面積に対応する。
【0032】
図1Bに示されているように、例190における少なくとも3枚のMR画像192は、図3に示すMRIシステムを用いて収集することができる。少なくとも3枚のMR画像192には、6つの別々のTE TE1~TE6で収集される6枚のMR画像192(1)~(6)が含まれる。組織には、水および脂肪が含まれる。6枚のMR画像192(1)~(6)の各々には、分離されるべき水信号と脂肪信号が含まれる。
【0033】
ステップS183において、少なくとも3枚のMR画像からデュアルエコー法による複数の対を選択することができる。デュアルエコー法による複数の対には、少なくとも3枚のMR画像の任意の好適な組み合わせが含まれ、デュアルエコー法による複数の対の1つはデュアルエコー法による複数の対の別のものとは異なる。少なくとも3枚のMR画像の各々は、デュアルエコー法による複数の対において、任意の好適な数(0、1、2等)だけ出現しうる。
【0034】
図1Bにおける例190に示されているように、デュアルエコー法による複数の対には、デュアルエコー法による3つの対193(1)~(3)が含まれる。デュアルエコー法による対193(1)にはMR画像192(1)~(2)が含まれ、デュアルエコー法による対193(2)にはMR画像192(3)~(4)が含まれ、デュアルエコー法による対193(3)にはMR画像192(5)~(6)が含まれる。
【0035】
別の実施形態において、デュアルエコー法による複数の対には、デュアルエコー法による対のMR画像192(1)~(2)、デュアルエコー法による対のMR画像192(2)~(3)、デュアルエコー法による対のMR画像192(3)~(4)、デュアルエコー法による対のMR画像192(4)~(5)、デュアルエコー法による対のMR画像192(5)~(6)といった、デュアルエコー法による5つの対が含まれる。
【0036】
第3の実施形態において、デュアルエコー法による複数の対には、デュアルエコー法による対のMR画像192(1)および192(3)、デュアルエコー法による対のMR画像192(2)および192(4)、デュアルエコー法による対のMR画像192(3)および192(5)といった、デュアルエコー法による3つの対が含まれる。
【0037】
デュアルエコー法による複数の対には、任意の好適な数のデュアルエコー法による対が含まれ、その数は1より大きい。例えば、デュアルエコー法による複数の対の数は、後述する採決方法を円滑化するために、3、5等の奇数であってよい。デュアルエコー法による複数の対の1つにおける2つのTE間の時間差は、任意の好適な期間であってよい。一実施形態において、時間差は、ある限界値(数ms)未満に制限される。
【0038】
ステップS184において、MRIデータプロセッサ142の生成機能により、デュアルエコー法による複数の対の各対について、画像のセット(すなわち、デュアルエコー法による分離画像のセット)が推定され、複数の化学種の信号が画像のセットで分離される。画像のセットには、第1の種の第1の信号を表す第1の画像が含まれる。また、画像のセットには、第2の種の第2の信号を表す第2の画像が含まれ、B0磁界マップは、磁界強度の空間的不均一性等を主に表す。デュアルエコー法による対応する対に基づいて画像のセットを取得するために、任意の好適な化学種の分離方法を用いることができる。
【0039】
図1Bにおける例190に示されているように、デュアルエコー法による対193(i)については、画像のセット194(i)には、B0磁界マップi、水画像i、および脂肪画像iが含まれる。iは整数であり、1≦i≦3である。わかりやすくするために、以下では、MR画像192(1)~(2)が含まれるデュアルエコー法による対193(1)に基づく画像のセット194(1)の取得について説明する。一実施形態において、MR画像192(1)~(2)は複素画像である。よって、MR画像192(1)~(2)における組織の同一の位置でのピクセルの対の値は、それぞれ、2つの複素値SおよびSである。言い換えれば、あるピクセル位置に関して、Sは、MR画像192(1)におけるピクセルの複素値であり、Sは、MR画像192(2)におけるピクセルの複素値である。この2つの複素値SおよびSは、次の式(1)~(2)により、W、F、φ1およびΔφの4つのパラメータと関連付けられる。
【数1】
【数2】
【0040】
式(1)~(2)において、4つのパラメータは実数値であり、これには、t0での水信号W、t0での脂肪信号F、TE1での水信号の位相を表す位相φ1、および時間差ΔTE=TE2-TE1における位相累積を表す差分位相Δφが含まれる。言い換えれば、ΔTEは、第2のTEであるTE2と第1のTEであるTE1との間の時間差である。差分位相Δφは、磁界強度B0の空間的不均一性が主な原因であり、差分位相Δφのマップは、B0磁界マップと呼ばれる。関数fは、複素値Sと、4つのパラメータのうちの3つである、W、F、およびφ1との第1の関係を表す。関数fは、複素値Sと、4つのパラメータ、W、F、φ1およびΔφとの第2の関係を表す。関数fおよびfは既知であり、複素値SおよびSはMR画像192(1)~(2)からわかる。よって、4つのパラメータW、F、φ1およびΔφは、式(1)および(2)を解くことで求められる。種々の実施形態において、デュアルエコー法による分離法を用いて、式(1)~(2)を解くことで4つのパラメータを求められる。したがって、B0磁界マップ1、t0での水信号の水画像1(すなわち、水のみの画像1)W、t0での脂肪信号の脂肪画像1(すなわち、脂肪のみの画像1)Fを含む画像のセット194(1)を取得することができる。このようにして、MRIデータプロセッサ142は、生成機能により、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁場マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、組織に含まれる複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成する。
【0041】
一部の実施形態において、式(1)~(2)により説明したものとは異なる他の関係により、複素値SおよびSを、4つのパラメータのうちの1つまたは複数と関連付けることができるため、当該他の関係に基づいて、水信号と脂肪信号を分離することも可能である。
【0042】
一部の実施形態において、t0での水信号Wおよびt0での脂肪信号Fとは異なる、別のTEでの水信号および脂肪信号を、それぞれ水画像1および脂肪画像1に用いてもよい。
【0043】
同様に、前述の方法をデュアルエコー法による対193(2)に好適に適用して、B0磁界マップ2、水画像2、および脂肪画像2を含む画像のセット194(2)を取得することができる。同様に、前述の方法をデュアルエコー法による対193(3)に好適に適用して、B0磁界マップ3、水画像3、および脂肪画像3を含む画像のセット194(3)を取得することができる。t0とは異なる同一のTEでの水信号および脂肪信号を、それぞれ水画像1~3および脂肪画像1~3に用いてもよい。
【0044】
ステップS185において、デュアルエコー法による複数の対について、画像の複数のセットにおける複数の画像に基づいて、合成画像の初期セットが生成され、合成画像の初期セットにおいて、複数の化学種の信号が分離される。任意の好適な複数の画像を用いて、合成画像の初期セットを生成することができるが、この複数の画像は、デュアルエコー法による複数の対のうちの少なくとも2つについて、画像の複数のセットのうちの少なくとも2つの異なるセットに由来する。合成画像の初期セットには、初期の第1の合成画像、初期の第2の合成画像、および初期の合成B0磁界マップのうちの少なくとも1つが含まれる。すなわち、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、2以上の、複数の対の磁気共鳴画像それぞれの対について生成された少なくとも1つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも1つの合成画像を生成する。
【0045】
図1Bに示されているように、合成画像の初期セット195には、初期の合成B0磁界マップ195A、初期の合成水画像195B、および初期の合成脂肪画像195Cが含まれる。任意の好適な方法を用いて、画像の複数のセット194(1)~(3)の中の任意の好適な複数の画像に基づいて、合成画像の初期セット195を生成することができる。例えば、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、2以上の第1画像、例えば画像のセット194(1)のうちの水画像1と、画像のセット194(2)のうちの水画像2とを合成して、合成第1画像である合成水画像195Bを生成し、2以上の第2画像、例えば画像のセット194(1)のうちの脂肪画像1と、画像のセット194(2)のうちの脂肪画像2とを合成して、合成第2画像である合成脂肪画像195Cを生成する。
【0046】
実施形態において、合成画像の初期セットは、デュアルエコー法による複数の奇数の対から取得される画像に基づいて、採決方法を用いて生成することができる。換言すると、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、磁気共鳴画像それぞれの対について生成された少なくとも一つの画像に対して、複数の当該少なくとも一つの画像の間で、多数決処理を行うことにより、少なくとも一つの合成画像を生成する。ここで、当該多数決処理は、例えば、ピクセル位置ごとに、第1の種の信号、例えば水信号と、第2の種の信号、例えば脂肪信号のどちらが支配的であるかを判定する処理である。図1Cは、本開示の実施形態による採決方法を用いて合成画像の初期セット195の少なくとも1つを生成する一例を示す。採決方法は、デュアルエコー法による3つの対193(1)~(3)から取得される水画像1~3および脂肪画像1~3に基づく。図1Cに示す例において、水画像1~3および脂肪画像1~3は、3x4の2D画像であり、初期の合成水画像195Bも3x4の2D画像である。採決方法は、3D画像等にも好適に適用可能である。初期の合成水画像195BにおけるピクセルW(2,3)等、組織のある位置でのピクセルの値を判定するために、水画像1~3における同一の位置での対応するピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)の値を用いることができる。
【0047】
図1Cの採決方法において、水がピクセルの大多数を占めているか否かを判定することができる。続いて、大多数を占めるピクセルの値に基づいて、初期の合成水画像195BにおけるピクセルW(2,3)の値が算出される。
【0048】
種の画像の対(すなわち、{W,F}、{W,F}、および{W,F})に関して、ピクセル位置(2,3)において水が優勢か否かの大多数の判定には、以下の例を用いることができる。画像の対1に関して、ピクセル位置(2,3)が水優勢の位置に対応するか否かは、ピクセルの対W(2,3)およびF(2,3)の2つの値に基づいて判定することができる。例えば、ピクセルW(2,3)の値がピクセルF(2,3)の値よりも大きい場合、第1の画像の対に関して、ピクセル位置(2,3)において水が優勢であると判定される。あるいは、ピクセルW(2,3)の値がピクセルF(2,3)の値よりも小さい場合は、ピクセル位置(2,3)において脂肪が優勢であると判定される。同数の場合は、同数に決着をつける規則を選択してもよい。例えば、ピクセルW(2,3)の値がピクセルF(2,3)の値と等しい場合、ピクセルW(2,3)において水が優勢であると判定される。あるいは、同数の規則は、ピクセルW(2,3)の値がピクセルF(2,3)の値と等しい場合、ピクセルW(2,3)において脂肪が優勢であると判定されるものであってもよい。
【0049】
同様に、水画像2のピクセルW(2,3)において水が優勢か否か、および脂肪画像2のピクセルF(2,3)において脂肪が優勢か否かは、ピクセルの対W(2,3)およびF(2,3)の2つの値に基づいて判定することができる。さらに、水画像3のピクセルW(2,3)において水が優勢か否か、および脂肪画像3のピクセルF(2,3)において脂肪が優勢か否かは、ピクセルの対W(2,3)およびF(2,3)の2つの値に基づいて判定することができる。
【0050】
水画像の大半のピクセル位置(2,3)において水が優勢であると判定される場合、水がピクセルの大多数を占めている。言い換えれば、水がピクセルの大多数を占めているか否かは、水が優勢であると判定されるピクセルの数を、ピクセル位置(2,3)の判定に用いられるピクセルの数の50%である閾値と比較して判定することができる。ピクセルの数が閾値よりも多い場合、水がピクセルの大多数を占めている。そうでない場合は、水がピクセルの大多数を占めていないため、脂肪がピクセルの大多数を占めている。
【0051】
一実施形態において、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)では水が優勢であると判定され、ピクセルW(2,3)では水が優勢でないと判定されると、ピクセル位置(2,3)において3つのピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)が存在することから、50%の閾値は1.5である。したがって、水がピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)の大多数を占めていると判定され、大多数には、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)が含まれる。したがって、初期の合成水画像195BにおけるピクセルW(2,3)では、水が優勢であると判定される。W(2,3)の値は、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)の値を合わせて生成され、F(2,3)の値は、ピクセルF(2,3)およびF(2,3)の値を合わせて生成される。ある実施形態において、大多数を占めるピクセルの値は、値を平均して合わせる。
【0052】
別の場合において、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)では水が優勢でないと判定され、ピクセルW(2,3)では水が優勢であると判定される場合を考える。この場合、水がピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)の大多数を占めていないと判定され、大多数には、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)が含まれる。同様に、ピクセルW(2,3)では水が優勢でないと判定される。したがって、初期の合成脂肪画像195CにおけるピクセルF(2,3)では、脂肪が優勢であると判定される。W(2,3)の値は、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)の値を合わせて生成され、F(2,3)の値は、ピクセルF(2,3)およびF(2,3)の値を合わせて生成される。
【0053】
したがって、ピクセルW(2,3)の値は、ピクセルの大多数の値、すなわち、W(2,3)およびW(2,3)に基づいて算出される。例えば、ピクセルW(2,3)の値は、ピクセルW(2,3)およびW(2,3)の値の平均である。同様に、初期の合成脂肪画像195Cにおける同一の位置でのピクセルF(2,3)の値は、ピクセルF(2,3)およびF(2,3)の値に基づいて求められる。加えて、初期の合成B0磁界マップ195Aにおける同一の位置でのピクセルの値は、B0磁界マップ1および3における同一の位置でのピクセルの値に基づいて求められる。
【0054】
前述の説明において、W(2,3)、W(2,3)、W(2,3)等の奇数のピクセルを用いて、水がピクセルの大多数を占めているか否かが判定され、ピクセルの大多数には、W(2,3)、W(2,3)等、半数を超えるピクセルが含まれる。
【0055】
ステップS186において、ステップS185からの合成画像の初期セットおよびS182で取得した少なくとも3枚のMR画像に基づいて、化学種分離が実施される。したがって、複数の化学種からの信号が分離された合成画像の最終セットが取得される。すなわち、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、ステップS182において生成機能により生成された少なくとも一つの画像と、ステップS185において合成機能により生成された少なくとも一つの合成画像とに基づいて、少なくとも一つの最終合成画像を生成する。合成画像の最終セットには、第1の種の第1の信号を表す最終の第1の合成画像および第2の種の第2の信号を表す最終の第2の合成画像のうちの少なくとも1つが含まれる。合成画像の最終セットには、最終の合成B0磁界マップおよびT2*マップも含まれる。T2*は、複数の化学種の影響を含む、実効横緩和時間である。
【0056】
図1Bに示されているように、合成画像の最終セット196には、最終の合成B0磁界マップ196A、最終の合成水画像196B、最終の合成脂肪画像196C、およびT2*マップ196Dが含まれる。実効横緩和時間T2*には、水および脂肪の影響が含まれる。最終の合成B0磁界マップ196A、最終の合成水画像196B、最終の合成脂肪画像196C、およびT2*マップ196Dは、合成画像の初期セット195および少なくとも3枚のMR画像192に基づいた、ピクセル単位の非線形適合法等、任意の好適な方法を用いて取得することができる。すなわち、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、ピクセル単位の非線形適合法等を用いて、少なくとも一つの最終合成画像として、最終合成B0磁界マップ、最終第1合成画像、最終第2合成画像、またはT2*画像を生成する。一実施形態において、合成画像の最終セット196に3D画像が含まれる場合、ピクセル単位の非線形適合法はボクセル単位の非線形適合法と呼ばれる。方法180は、ステップS189へ進み、終了する。
【0057】
最終の合成水画像196Bは、組織の水信号を示す水のみの画像であり、最終の合成脂肪画像196Cは、組織の脂肪信号を示す脂肪のみの画像である。したがって、水信号と脂肪信号とは、別々の画像に分離される。
【0058】
図1Bに示されているように、2つのTEは、デュアルエコー法による対それぞれと関連する。例えば、2つのTE TE1およびTE2は、デュアルエコー法による対193(1)と関連する。2つのTEを組み合わせると、すなわち単一の対のTEのみを用いると、B0磁界マップの不正解な推定、ひいては、水や脂肪等の複数の化学種の不正解な分離を招き、水と脂肪とが入れ替えられることがある。その結果、水が優勢であるピクセルは、脂肪が優勢であると判定され、脂肪が優勢であるピクセルは、水が優勢であると判定される。したがって、実施形態によると、デュアルエコー法による単一の対から推定される水画像および脂肪画像を用いる代わりに、前述のとおり、デュアルエコー法による複数の対から推定される複数の水画像および脂肪画像を用いるので、複数の化学種がより良く分離される。
【0059】
図1Aおよび1Bに示されているように、複数の化学種の信号の分離に複数のステップが用いられる。例えば、ステップS184において、別々の水画像および脂肪画像を形成するために、デュアルエコー法による各対について信号が分離される。例えば、デュアルエコー法による対193(1)については、水画像1および脂肪画像1が分離される。ステップS185において、デュアルエコー法による複数の対と関連する初期の合成水画像195Bおよび初期の合成脂肪画像195Cが、デュアルエコー法による個々の対から取得される水画像および脂肪画像に基づいて生成される。したがって、初期の合成水画像195Bおよび初期の合成脂肪画像195Cは、デュアルエコー法による単一の対から推定される水画像および脂肪画像よりも正確となる。図1Cに示す例において、デュアルエコー法による単一の対193(2)から推定される水画像2および脂肪画像2における、ある特定のピクセル(例えば、(2,3)に位置するピクセル)について、水と脂肪との入れ替えが生じると、不正確な結果がもたらされる。しかし、水画像2および脂肪画像2における、ある特定のピクセルと共に、水と脂肪とが入れ替えられていない、追加のデュアルエコー法による対193(1)および193(3)における対応するピクセルが用いられると、正確な結果がもたらされる。したがって、初期の合成水画像および脂肪画像195B~195CにおけるピクセルW(2,3)およびF(2,3)は、水と脂肪とが入れ替えられていないため、正確な結果がもたらされる。同様に、初期の合成B0磁界マップ195Aは、デュアルエコー法による単一の対193(i)から取得されるB0磁界マップiよりも正確となる。
【0060】
ステップS186において、合成画像の初期セットおよび少なくとも3枚のMR画像に基づいて、合成画像の最終セットが生成される。合成画像の初期セットがより正確であれば、合成画像の最終セットも正確となる。
【0061】
実施形態に係る方法と比較される関連した方法においては、ステップS183~S185を用いる代わりに、6枚すべてのMR画像192(1)~(6)等、少なくとも3枚のMR画像を一緒に処理することで、合成画像の初期セットを取得することもできる。MR画像192(1)~(6)それぞれにおいて、差分位相Δφは、TE TE1~TE6と共に直線的に変化すると想定される。しかし、種々の実施形態において、差分位相Δφは、実際にはTE TE1~TE6と共に直線的に変化しないため、前述の想定をしてしまうと、水と脂肪との入れ替えといった、不正確な化学種分離や、B0磁界マップの不正解な推定が起こってしまうこともある。実施形態に係る方法においては、前述のステップS184~S185において、デュアルエコー法による各対における2枚のMR画像が一緒に処理され、差分位相ΔφはTEと共に直線的に変化すると想定されないため、化学種の分離がより正確になる。したがって、本明細書に記載のとおり、本明細書に記載の方法は、少なくとも3枚のMR画像の各対に対してデュアルエコー法による分離を実施することなく、差分位相ΔφとTEとの間の直線関係を想定することにより少なくとも3枚のMR画像を一緒に処理する関連した方法よりも正確で、安定している。
【0062】
図2Aは、本開示の一実施形態による化学種分離を実施する方法280の一例を示す。図2Bは、本開示の一実施形態による方法280に対応する例290を示す。方法280には、図1Aに記載した方法180と同様のステップが含まれる。図2Aにおける参照符号2xxは、図1Aにおける参照符号1xxと同一または同様のステップを示す。ここで、xxは81~84の数字である。よって、図1Aのステップと同一の、図2Aにおけるステップの詳細な説明は、簡潔にするために省略される。例290には、図1Bに記載した例190と同様の要素が含まれる。方法280は、ステップS281から開始し、ステップS282へ進む。
【0063】
ステップS282において、様々なエコー時間(TE)に対応する少なくとも3枚のMR画像が組織から取得される。前述の説明と同様に、組織は、第1の種、第2の種等を含む複数の化学種を有する。少なくとも3枚のMR画像の各々は、複数の化学種からの信号を表し、信号には、第1の種の第1の信号、第2の種の第2の信号等が含まれる。図1Bにおける例290のような、MRIの種々の実施形態において、第1の種が水、第2の種が脂肪である場合、水および脂肪が信号の主な要因である。よって、第1の信号が水信号、第2の信号が脂肪信号である。
【0064】
図2Bに示されているように、例290における少なくとも3枚のMR画像292は、図3に示すMRIシステムを用いて収集することができる。少なくとも3枚のMR画像292には、時間t0を基準にして6つの別々のTE TE1~TE6で収集される6枚のMR画像292(1)~(6)が含まれる。組織には、水および脂肪が含まれる。6枚のMR画像292(1)~(6)は、図1Bにおける6枚のMR画像192(1)~(6)と同一または同様である。よって、6枚のMR画像292(1)~(6)の詳細な説明は、簡潔にするために省略される。
【0065】
ステップS283において、少なくとも3枚のMR画像からデュアルエコー法による複数の対を選択することができる。図2Bにおける例290に示されているように、デュアルエコー法による複数の対には、図1Bにおけるデュアルエコー法による3つの対193(1)~(3)と同一または同様である、デュアルエコー法による3つの対293(1)~(3)が含まれる。よって、デュアルエコー法による3つの対293(1)~(3)の詳細な説明は、簡潔にするために省略される。
【0066】
ステップS284において、デュアルエコー法による複数の対の各対について、画像のセット(すなわち、デュアルエコー法による分離画像のセット)が推定され、複数の化学種の信号が画像のセットで分離される。画像のセットは、図1Bに記載したものと同一または同様であってもよい。図2Bにおける例290に示されているように、デュアルエコー法による対293(i)については、画像のセット294(i)には、B0磁界マップi、水画像i、および脂肪画像iが含まれる。iは整数であり、1≦i≦3である。B0磁界マップi、水画像i、および脂肪画像iを含む画像のセット294(i)は、図1Bにおける画像のセット194(i)と同一または同様である。よって、詳細な説明は、簡潔にするために省略される。
【0067】
ステップS285Aにおいて、デュアルエコー法による複数の対について、画像の複数のセットにおける複数の画像に基づいて、合成画像の初期セットが生成され、合成画像の初期セットにおいて、複数の化学種の信号が分離される。ステップS285Aには、ステップS185に記載したものと同一または同様の実施形態が含まれる。よって、図1Aのものと同一または同様であるステップS285Aの実施形態の詳細な説明は、簡潔にするために省略される。図2Bに示されているように、合成画像の初期セット295には、初期の合成B0磁界マップ295A、初期の合成水画像295B、および初期の合成脂肪画像295Cが含まれる。合成画像の初期セット295は、図1Bにおける合成画像の初期セット195と同一または同様である。よって、合成画像の初期セット295の詳細な説明は、簡潔にするために省略される。
【0068】
ステップS285Aにおいて、例えば、デュアルエコー法による複数の対についての画像の複数のセットにおける複数の画像に基づいて、信頼度マップをさらに生成することができる。図2B~2Cに示されているように、水画像1~3および脂肪画像1~3を含む複数の画像に基づいて、信頼度マップ295Eを生成することができる。信頼度マップ295Eのピクセルの値(すなわち、信頼度値)は、B0磁界マップ295A、水画像295B、および脂肪画像295Cにおけるそれぞれのピクセルの信頼水準(すなわち、信頼性の度合い)を示す。
【0069】
信頼度マップ295Eは、採決方法での大多数の規模を表す。一方では、あるピクセル位置において水が優勢か脂肪が優勢かに関して、3つのピクセルのうちの2つだけが一致している場合、その信頼度値は2/3である。他方では、あるピクセル位置において水が優勢か脂肪が優勢かに関して、3つのピクセルのうちの3つ一致している場合、その信頼度値は1である。3枚の画像ではなく5枚の画像の場合、信頼度値の範囲は、5つのうちの3、5つのうちの4、および5つのうちの5の多数に対応して、それぞれ3/5、4/5、および1となる。
【0070】
図2Cにおける水画像1~3および脂肪画像1~3は、図1Cにおける水画像1~3および脂肪画像1~3と同一である。同様に、信頼度マップ295Eは、3x4の2D画像である。採決方法を用いて、信頼度マップ295Eを生成することができる。一実施形態において、信頼度マップ295EにおけるピクセルC(2,3)等、組織のある位置でのピクセルの値を判定するために、水画像1~3および脂肪画像1~3における同一の位置での対応するピクセルの値が用いられる。
【0071】
図2Cの採決方法において、ピクセルの大多数を占めているのが水か脂肪かは、図1Cを参照して説明したのと同じように判定することができる。第1の例において、同一の位置にあるピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)を用いて、ピクセルC(2,3)を判定することができる。ピクセルW1(2,3)およびW3(2,3)では水が優勢であると判定され、ピクセルW2(2,3)では水が優勢でないと判定されると、第1の閾値は1.5である。この例において、ピクセルC(2,3)を判定するのに用いられるピクセルW(2,3)、W(2,3)、およびW(2,3)の第1の数字は3であり、ピクセルの大多数であり、水が優勢であると判定されるピクセルW1(2,3)およびW3(2,3)の第2の数字は2である。したがって、初期の合成水画像295BにおけるピクセルW(2,3)では、水が優勢であると判定され、初期の合成脂肪画像295CにおけるピクセルF(2,3)では、脂肪が優勢でないと判定される。さらに、ピクセルC(2,3)の値は、第2の数字と第1の数字との比率、すなわち、2/3であると判定することができる。
【0072】
第2の例において、ピクセルW1(2,3)およびW3(2,3)では水が優勢でないと判定され、ピクセルW2(2,3)では水が優勢であると判定される。よって、ピクセルF1(2,3)およびF3(2,3)では脂肪が優勢であると判定され、ピクセルF2(2,3)では脂肪が優勢でないと判定される。したがって、初期の合成脂肪画像295CにおけるピクセルF(2,3)では、脂肪が優勢であると判定される。同様に、ピクセルの大多数であり、脂肪が優勢であると判定されるピクセルの第2の数字は2である。ピクセルC(2,3)を判定するのに用いられるピクセルの第1の数字は3であるため、ピクセルC(2,3)の値は、第2の数字と第1の数字との比率、すなわち、2/3であると判定することができる。
【0073】
前述の例において、ピクセルC(2,3)の値は2/3である。第1の例において、ピクセルC(2,3)の値は、水が優勢であるピクセル位置(2,3)の信頼水準を示す。第2の例において、ピクセルC(2,3)の値は、脂肪が優勢であるピクセル位置(2,3)の信頼水準を示す。
【0074】
第3の例において、ピクセルW(3,3)、W(3,3)、およびW(3,3)を用いてピクセルC(3,3)を判定することができ、ピクセルW(3,3)、W(3,3)、およびW(3,3)では水が優勢であると判定される。したがって、初期の合成水画像295BにおけるピクセルW(3,3)では、水が優勢であると判定されるため、ピクセルC(3,3)の値は1(すなわち、3/3)であると判定することができる。一実施形態において、ピクセルW(2,3)およびW(3,3)の両方で水が優勢であると判定されても、ピクセルC(2,3)およびC(3,3)の値に基づいて、ピクセルW(3,3)ではピクセルW(2,3)よりも実際に水が優勢であると考えられる。
【0075】
このように、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、例えばピクセル位置ごとに、第1の種の信号と第2の種の信号とのどちらが支配的であるかの度合いを表す信頼度マップを生成する。
【0076】
一実施形態において、偶数個の水画像と偶数個の脂肪画像が用いられる場合、同数に決着をつける規則を規定してもよい。例えば、ピクセルの半数で水が優勢である場合、初期の合成水画像における対応するピクセルで水が優勢であると判定可能であるため、信頼度マップのピクセルの値は0.5であると判定することができる。
【0077】
ステップS285Bにおいて、信頼度マップをさらに更新することができる。一実施形態において、信頼度マップにおけるピクセルの値が比較的小さい場合、信頼度マップにおける、かかるピクセルの近隣のピクセルの値に基づいて、かかる値を引き上げることができる。すなわち、MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、ピクセル位置の近隣に位置するピクセルの値に基づいて、信頼度マップを修正してもよい。
【0078】
図2Bおよび2Dに示されているように、信頼度マップ295Eが更新され、その結果、更新版信頼度マップ295E’が生成される。一実施形態において、例えば、ピクセルの値を信頼度の閾値(4/5等)と比較することで、信頼度マップ295Eにおけるピクセルの値が大きいか否かを判定することができる。ピクセルの値が信頼度の閾値よりも大きい場合、ピクセルの値は大きいと判定され、更新されない。したがって、更新版信頼度マップ295E’の対応するピクセルで同じ値が用いられる。そうでなく、ピクセルの値が信頼度の閾値以下である場合、ピクセルの値は小さいと判定される。図2Dに示されているように、信頼度マップ295Eにおけるピクセルの値が、各ピクセルに示されている。信頼度マップ295Eおよび更新版信頼度マップ295E’において下線が引かれたピクセルは、水が優勢であると判定されるピクセルに対応する。信頼度マップ295Eおよび更新版信頼度マップ295E’における残りのピクセルは、脂肪が優勢であると判定されるピクセルに対応する。信頼度マップ295EにおけるピクセルC(1,3)の値が1であることから、この値は大きいと判定され、更新版信頼度マップ295E’の対応するピクセルC’(1,3)で同じ値(すなわち、1)が用いられる。これに対して、信頼度マップ295EにおけるピクセルC(2,3)の値が2/3であることから、ピクセルC(2,3)の値は小さいと判定される。
【0079】
ピクセルC(2,3)の値が小さいと判定される場合、ピクセルC(2,3)の近隣のピクセルを判定することができる。近隣のピクセルには、空間的にピクセルC(2,3)と近い、任意の好適なピクセルが含まれる。近隣のピクセルには、ピクセルC(2,3)に隣接している1つまたは複数のピクセルや、ピクセルC(2,3)に隣接していない1つまたは複数のピクセルが含まれる。実施形態において、近隣のピクセルには、水および脂肪が優勢であるピクセルが含まれる。実施形態において、近隣のピクセルには、水および脂肪のうちの1つが優勢であるピクセルが含まれる。実施形態において、初期の合成水画像295BにおけるピクセルW(2,3)で水が優勢である場合、初期の合成水画像295Bにおいて、近隣のピクセルに対応するピクセルでも水が優勢である。実施形態において、ピクセルC(1,2)、C(1,3)、C(1,4)、C(2,2)、C(2,4)、C(3,2)、C(3,3)、およびC(3,4)は、ピクセルC(2,3)に隣接する。初期の合成水画像295BにおいてピクセルC(1,3)、C(1,4)、C(2,2)、C(2,4)、およびC(3,3)に対応するピクセルW(1,3)、W(1,4)、W(2,2)、W(2,4)、およびW(3,3)では、水が優勢であると判定され、初期の合成水画像295BにおいてピクセルC(1,2)、C(3,2)、およびC(3,4)に対応するピクセルW(1,2)、W(3,2)、およびW(3,4)では、水が優勢でないと判定される。したがって、実施形態において、ピクセルC(2,3)の近隣のピクセルには、ピクセルC(1,3)、C(1,4)、C(2,2)、C(2,4)、およびC(3,3)が含まれ、ピクセルC(1,2)、C(3,2)、およびC(3,4)は含まれない。任意の好適な方法や基準を用いて、ピクセルC(2,3)の更新のために、ピクセルC(2,3)の近隣のピクセルの値を利用可能か否かを判定することができる。実施形態において、近隣のピクセルの各値の平均が判定され、ピクセルC(2,3)の値と比較される。近隣のピクセルの平均値が第2の信頼度の閾値よりも大きい場合、更新版信頼度マップ295E’における対応するピクセルC’(2,3)は、平均値等、近隣のピクセルの値に基づいて判定することができる。図2Dに示されているように、平均値は1であることから、対応するピクセルC’(2,3)の値は1であると判定される。ピクセルC’(2,3)の値は、2/3、すなわちピクセルC(2,3)の値から引き上げられる。
【0080】
別の実施形態において、ピクセルC(2,1)の値は2/3であり、初期の合成脂肪画像295Cにおける対応するピクセルF(2,1)では、脂肪が優勢である。ピクセルC(1,1)、C(1,2)、C(2,2)、C(3,1)、およびC(3,2)は、ピクセルC(2,1)に隣接する。初期の合成水画像295BにおいてピクセルC(2,2)およびC(3,1)に対応するピクセルW(2,2)およびW(3,1)では、水が優勢であると判定され、初期の合成脂肪画像295CにおいてピクセルC(1,1)、C(1,2)、およびC(3,2)に対応するピクセルF(1,1)、F(1,2)、およびF(3,2)では、脂肪が優勢であると判定される。したがって、一実施形態において、ピクセルC(2,1)の近隣のピクセルには、ピクセルC(1,1)、C(1,2)、およびC(3,2)が含まれ、ピクセルC(2,2)およびC(3,1)は含まれない。ピクセルC(2,1)の近隣のピクセルC(1,1)、C(1,2)、およびC(3,2)の平均値は2/3であることから、この平均値は、ピクセルC(2,1)の値(すなわち、3/5)よりも大きくない。したがって、ピクセルC(2,1)は更新されず、更新版信頼度マップ295E’において同じままである。
【0081】
一部の実施形態において、近隣のピクセルの平均値は、信頼度マップ295Eのピクセルの値以下であるため信頼度マップ295Eのピクセルの値は同じままである。
【0082】
前述の説明を信頼度マップ295Eの各ピクセルに適用し、更新版信頼度マップ295E’を生成することができる。前述の説明は、好適に適用可能である。
【0083】
ステップS286において、ステップS285Aからの合成画像の初期セットおよびステップS282で取得した少なくとも3枚のMR画像に基づいて、化学種分離が実施される。したがって、複数の化学種からの信号が分離された合成画像の最終セットが取得される。合成画像の最終セットには、第1の種の第1の信号を表す最終の第1の合成画像および第2の種の第2の信号を表す最終の第2の合成画像のうちの少なくとも1つが含まれる。合成画像の最終セットには、最終の合成B0磁界マップおよびT2*マップも含まれる。T2*は、複数の化学種の影響を含む、実効横緩和時間である。
【0084】
図2Bに示されているように、合成画像の最終セット296には、最終の合成B0磁界マップ296A、最終の合成水画像296B、最終の合成脂肪画像296C、およびT2*マップ296Dが含まれる。実効横緩和時間T2*には、水および脂肪の影響が含まれる。合成画像の最終セット296は、図1BおよびステップS186において前述したように取得することができる。
【0085】
実施形態において、信頼度マップ296Eは、更新版信頼度マップ295E’と同一である。実施形態において、信頼度マップ296Eは、更新版信頼度マップ295E’および合成画像の最終セット296(最終の合成水画像296Bや最終の合成脂肪画像296C等)に基づいて取得することができる。
【0086】
最終の合成水画像296Bは、組織の水信号を示す水のみの画像であり、最終の合成脂肪画像296Cは、組織の脂肪信号を示す脂肪のみの画像である。したがって、水信号と脂肪信号とは、別々の画像に分離される。さらに、信頼度マップ296Eは、合成画像の最終セット296の各々の信頼水準を示す。実施形態において、信頼度マップ296Eは、対応するボクセルの信頼水準を示すために、合成画像の最終セット296の各々の上に重ねて表示することができる。方法280は、ステップS289へ進み、終了する。
【0087】
以上、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100について説明したが、実施形態は上述に限られず、架台101及びMRIシーケンスコントローラ140、傾斜磁場コイルドライバ132等と独立した画像処理装置が、上述した処理を行ってもよい。かかる画像処理装置は、例えば上述したMRIデータプロセッサ142、プログラム記憶装置150、プログラムコード構造138、マップ/MRI画像メモリ146、画像再構成プログラムコード構造144、ディスプレイ124、キーボード126、プリンタ128等と同様の構成を備える。かかる画像処理装置のMRIデータプロセッサ142は、生成機能と合成機能とを備える。MRIデータプロセッサ142は、生成機能により、複数の対の磁気共鳴画像であって互いにTE(Echo Time)が異なる磁気共鳴信号から得られた磁気共鳴画像それぞれの対について、磁場強度の空間的不均一性を表すB0磁場マップ、組織に含まれる複数の化学種のうち第1の種の信号を表す第1画像、当該組織に含まれる前記複数の化学種のうち第2の種の信号を表す第2画像のうち少なくとも一つの画像を生成する。MRIデータプロセッサ142は、合成機能により、2以上の、複数の対の磁気共鳴画像それぞれの対について生成された当該少なくとも一つの画像を合成することで、合成B0磁界マップ、合成第1画像、合成第2画像のうち少なくとも一つの合成画像を生成する。
【0088】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、化学種の信号を分離することができる。
【0089】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
130 MRIシステムコントローラ
140 MRIシーケンスコントローラ
142 MRIデータプロセッサ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3