(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】液相収容槽用の開口部閉止装置
(51)【国際特許分類】
B65D 90/22 20060101AFI20240717BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65D90/22 E
B65D90/00 M
(21)【出願番号】P 2020039969
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小南 雅広
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-011300(JP,U)
【文献】実開昭58-149396(JP,U)
【文献】特開2014-020429(JP,A)
【文献】特開2017-165476(JP,A)
【文献】特開2019-042450(JP,A)
【文献】実開昭60-095539(JP,U)
【文献】実開昭58-153950(JP,U)
【文献】特開2001-212017(JP,A)
【文献】特開2012-017551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0136836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00 - 90/24
F17C 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相収容槽用の液相内を移動させて開口部への位置合わせを行って前記開口部を閉止する液相収容槽用の液相内閉止装置であって、
平板状の主板部を有する本体基板と、
前記主板部の一方の面の略中央部に設置されているゴム又はエラストマーからなる閉止栓と、
前記主板部の前記閉止栓の設置面と同一面に前記閉止栓を取り囲んで設置されている複数の吸盤と、
前記主板部の他方の面において前記吸盤に接合されている可撓
性を有する通気管と、
前記通気管を通して前記吸盤の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な態様で前記吸盤に連接されているポンプと、
前記本体基板に接合されていて、前記位置合わせを行う操作棒と、
を備える、
液相収容槽用の開口部閉止装置。
【請求項2】
前記操作棒が伸縮可能である、
請求項1に記載の開口部閉止装置。
【請求項3】
液相収容槽用の液相内を移動させて開口部への位置合わせを行って前記開口部を閉止する液相収容槽用の液相内閉止装置であって、
平板状の主板部を有する本体基板と、
前記主板部の一方の面の略中央部に設置されているゴム又はエラストマーからなる閉止栓と、
前記主板部の前記閉止栓の設置面と同一面に前記閉止栓を取り囲んで設置されている複数の吸盤と、
前記主板部の他方の面に接合されている可撓
性を有する通気管と、
前記通気管を通して前記吸盤の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な態様で前記吸盤に連接されているポンプと、
水中で推進力を発揮するスクリューと進行方向を制御する舵を備えていて、前記本体基板を、水中において任意の方向に向けて移動させることができる、水中移動機構と、
を備える、
液相収容槽用の開口部閉止装置。
【請求項4】
前記本体基板は、前記閉止栓が設置されている主板部と、該主板部に直交する補助板部と、からなり、該補助板部に補助吸盤が設置されている、
請求項1から3の何れかに記載の開口部閉止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相収容槽用の開口部閉止装置に関する。本発明は、詳しくは、槽内に処理液を貯留した状態で所望の反応を進行させる反応槽等の各種の液相収容槽において、槽内の最深部付近に形成されている処理液の排出口等の開口部、又は、その周囲のノズルやバルブ等の各種部材が劣化或いは損傷等に至った場合に、応急処理として当該開口部を一時的に閉止することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
槽内に処理液を貯留した状態で各種の反応を進行させて必要な処理を行う反応槽が各種の工場等において広く用いられている。このような反応槽等の各種の液相収容槽において、例えば、排出口等の開口部からの処理液の排出を制御するノズルが故障した場合、当該開口部からの不要な処理液の流出或いは流入を防ぐために、先ずは、一次的に当該開口部を閉止する必要が生じる。しかしながら、この閉止作業を槽内に処理液を貯留したままの状態で行うことは困難であり、この場合には、通常、槽内に貯留している処理液を一旦全て排出する必要が生じる。このように、従来、一般的な反応槽においては、排出口周りの修理や交換等の補修作業が必要となる度に、槽内に貯留している処理液を一旦全て排出する必要があり、その都度、長時間に亘る操業の停止を余儀なくされていた。
【0003】
これに対して、処理液を系外には排出せずに、液相収容槽内の補修を行うことを可能とする手段として、処理液のバイパス経路となる特殊な構造を付加した槽も提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、液相収容槽に特殊な構造を追加的に設置する必要があるため、一般的な既存の槽への適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、処理液のバイパス構造等の特殊構造を有さない一般的な液相収容槽において、排出口等の開口部に故障が生じた場合に、槽内に処理液を貯留したままの状態で、応急処理として当該開口部を閉止することができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下に詳細を説明する液相収容槽用の開口部閉止装置によって、上記課題を解決するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1) 本体基板と、前記本体基板に設置されている閉止栓と、前記閉止栓を取り囲んで前記本体基板に設置されている複数の吸盤と、可撓性を有する通気管を通して前記吸盤の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な態様で前記吸盤に連接されているポンプと、を備える、液相収容槽用の開口部閉止装置。
【0008】
(1)の発明は、液相収容槽の槽内に処理液等が貯留されている状態のままで、槽の最深部やその近傍部分に形成されている開口部を槽外からの遠隔操作によって一時的に閉止することができる。これにより、例えば、バイパス構造等、補修作業のための特殊構造を有さない一般的な液相収容槽においても、開口部周りの補修を行う必要が生じた場合に、槽内に処理液を貯留したままの状態で、例えば、閉止栓の外部側から、ノズル等の修理や交換の作業を行う等の対応が可能となり、処理液の排出による、操業の停止期間を短縮することができる。
【0009】
(2) 前記本体基板は、前記閉止栓が設置されている主板部と、該主板部に直交する補助板部と、からなり、該補助板部に補助吸盤が設置されている、(1)に記載の開口部閉止装置。
【0010】
(2)の発明は、補助板部の形状・大きさを使用対象の液相収容槽に併せて適切に設計することにより、閉止栓の位置合わせを容易に行うことができるようにした。これにより、(1)の発明を用いて行う応急的な開口部の閉止作業の容易性を更に高めることができる。
【0011】
(3) 前記本体基板に接合されている伸縮可能な操作棒を、更に備える、(1)又は(2)に記載の開口部閉止装置。
【0012】
(3)の発明は、閉止栓の位置合わせを容易に行うことができることに加えて、更に、開口部閉止装置の本体基板を所望の方向に向けて任意の力で容易に押し付けることができるようにした。これにより、(1)又は(2)の発明を用いて行う応急的な開口部の閉止作業の容易性、この際の閉止構造の安定性を更に高めることができる。
【0013】
(4) 前記本体基板を、水中において任意の方向に向けて移動させることができる、水中移動機構を、更に備える、(1)から(3)の何れかに記載の開口部閉止装置。
【0014】
(4)の発明は、閉止すべき排出口等の位置が、槽内の何れの場所にある場合であっても、遠隔操作により閉止栓の位置合わせを行うことができる。これにより、(1)から(3)の発明を用いて行う応急的な開口部の閉止作業を、槽の形状や大きさ、開口部の位置に関わらず、様々な条件下において好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理液のバイパス構造等の特殊構造を有さない一般的な液相収容槽においても、排出口等の開口部に故障が生じた場合に槽内に処理液を貯留したままの状態で、応急処理として当該開口部を容易に閉止することができる技術的手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の液相収容槽用の開口部閉止装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の液相収容槽用の開口部閉止装置の主要部分の正面図である。
【
図3】本発明の液相収容槽用の開口部閉止装置の主要部分の側面図である。
【
図4】本発明の液相収容槽用の開口部閉止装置の開口部一時閉止動作の説明に供する図面である。
【
図5】本発明の液相収容槽用の開口部閉止装置を好適に用いることができる液相収容槽の一例の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<液相収容槽用の開口部閉止装置>
本発明の「液相収容槽用の開口部閉止装置」は、例えば、
図5に示す液相収容槽6のように処理対象の液体を貯留することができる一般的な構造の槽全般に対して好適に用いることができる。本明細書における「液相収容槽」とは、槽内で特定の反応が進行する反応槽や、特定の処理が行われる処理槽には限定されず、液相を含んでなるあらゆる処理対象物を収容可能な各種の槽を広く含む概念である。
【0018】
より具体的に、本発明の「液相収容槽用の開口部閉止装置」は、液相収容槽6のように排出口等の開口部61が槽内の最深部或いは同部近傍に形成されている槽に対して特に好適に用いることができる。例えば、上記構成からなる液相収容槽6において、処理液の排出を制御するノズル62が損傷した場合に、本発明の「液相収容槽用の開口部閉止装置」を用いることにより、処理液を貯留したままの状態で、開口部61を、遠隔的な操作によって応急処理として閉止することができる。そして、これにより、槽内に処理液を貯留したままの状態で、開口部周りの各部材の修理や交換等の保全作業を行うことも可能となり、開口部周りの補修作業に起因する液相収容槽の稼働効率の低下を少なくすることができる。
【0019】
図1に示す開口部閉止装置10は、本発明の「液相収容槽用の開口部閉止装置」の好ましい実施形態の一例である。開口部閉止装置10は、同図に示す通り、本体基板1、閉止栓2、複数の吸盤3、及びポンプ5を必須の構成要件として備える。又、開口部閉止装置10は、同図に示す通り、本体基板1が、吸盤3の設置されている主板部11及び補助板部12によって構成されていて、補助板部12には補助吸盤4が設置されていることがより好ましい。
【0020】
[本体基板]
本体基板1は、閉止栓2と複数の吸盤3が設置される平板状の主板部11を少なくとも含む部材であればよい。又、本体基板1は、主板部11と直交する補助板部12を更に有する部材であることがより好ましい。補助板部12を有する部材の好ましい一例として、
図1~3に示すような断面L字型のアングル状の金属部材を挙げることができる。
【0021】
本体基板1の材料は、例えば、上述の平板状、或いは、断面L字型の形状等、所望の形状に加工した場合に、必要とされる剛性と耐久性とを有し、且つ、使用対象とする液相収容槽内に貯留される処理液の種類に応じた化学的耐性とを有するものであることが好ましい。このために、具体的には、ステンレスやチタン等の金属材料、或いは、塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂材料を想定される使用条件に応じて適宜選択することができる。
【0022】
但し、例えば、処理液が水である場合、或いは、修理時間が極めて短時間で済む場合等、特段の耐食性が要求されない場合においては、必ずしも、本体基板1の材料を上記のよう化学的耐性に材料に特定することは必須ではない。上記のような場合においては、廉価で入手容易な鉄やアルミニウム等を本体基板1の材料として用いることもできる。又、開口部閉止装置10を1度の使用のみで使い捨てる使用法とする場合にも、本体基板1の材料として上記の廉価な材料を用いることが経済性の面での優位性を向上させることができる。
【0023】
尚、本体基板1には、主板部11又は補助板部12の各幅(長さ)の調整が可能なスライド機構等からなるサイズ調整機構111が備えられていることがより好ましい。例えば、
図4に示すように、補助吸盤4が液相収容槽6の底面に吸着させて開口部閉止装置10を用いる場合において、サイズ調整機構111を適切に伸縮させて主板部11の幅を適切に調整することによって、閉止栓2の位置を開口部81に対して容易に合わせることができるようになる。
【0024】
[閉止栓]
閉止栓2としては、ドーム状、或いは、円筒状に形成されてなり、可撓性と気密性とを併せ持つ部材を用いることができる。閉止栓2は、その底面の径が閉止対象となる開口部81の径よりも十分に大きいことが必要となる。具体的には、閉止栓2の上記径のサイズは、開口部81の径の少なくとも1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。
【0025】
閉止栓2の材料は、例えば、上述の可撓性と気密性を有する各種のゴム、エラストマー等であればよい。又、使用対象とする液相収容槽6の内部に貯留される処理液の種類に応じた化学的耐性を有するものであることが好ましい。但し、本体基板1の材料と同様、化学的耐性を有することは必ずしも必須ではない。閉止栓2の材料としては、具体的に、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコン樹脂等の各種の樹脂材料を想定される使用条件に応じて適宜選択することができる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、開口部閉止装置10において、閉止栓2は、その底面が主板部11と平行な面となるように本体基板1の主板部11の中央に垂直に設置されている。又、閉止栓2の主板部11への固定手段は特に限定されないが、例えば、
図3に示すように、公知のボルト及びナットを用いた固定手段によることができる。
【0027】
[吸盤]
吸盤3としては、公知の各種吸盤と同様の材料及び形状からなる吸盤を適宜用いることができる。形状については、中空のドーム状の形状からなるものであり、可撓性と気密性とを併せ持つ材料からなるものであればよい。尚、吸盤3の材料については、上述した閉止栓2の材料と同様、使用対象とする液相収容槽6の内部に貯留される処理液の種類に応じた化学的耐性を有するものであることが好ましい。吸盤3の材料としては、上記の閉止栓2の材料と同様、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコン樹脂等、各種のゴム、エラストマーを想定される使用条件に応じて適宜選択することができる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、開口部閉止装置10においては、複数の吸盤3は、閉止栓2を取り囲んで本体基板1に設置されている。複数の吸盤3の配置は、閉止栓2を中心として、これを取り囲む位置であればよい。又、複数の吸盤3の配置は、
図4に示すように液相収容槽6の側壁に吸着させた場合の安定性を高めるために、閉止栓2の位置が、複数の吸盤3の設置位置を結んでなる吸盤3の配置領域中の重心位置となるような配置とすることが好ましい。例えば、
図2及び3に示すように、同一サイズの4つの吸盤3が、閉止栓2の位置が、4つの吸盤3の配置領域中の重心位置となるように設置されている配置例を、吸盤3の好ましい配置の例として挙げることができる。又、吸盤3の主板部11への固定手段は特に限定されないが、例えば、
図3に示すように、公知のボルト及びナットを用いた固定手段によることができる。
【0029】
これらの吸盤3は、可撓性を有する通気管52を通して各々の吸盤3の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な態様でポンプ5と連接されている。
【0030】
[補助吸盤]
又、
図1及び
図2に示すように、開口部閉止装置10においては、本体基板1の補助板部12に、更に、補助吸盤4が設置されていることが好ましい。補助吸盤4としては、吸盤3と同様に公知の各種の吸盤を用いることができる。補助吸盤4は、
図4に示すように、液相収容槽6の底面に吸着することによって、開口部閉止装置10の安定性を高めるために適切な位置に配置される。例えば、補助吸盤4は、補助板部12の中心に1つ設置されている配置態様であってもよいが、補助板部12の重心に対して相互に対称となる位置に複数設置される配置態様であることが好ましい。例えば、
図2及び3に示すように、同一サイズの2つの吸盤3が、補助板部12の重心に対して対称な位置に設置されている配置例を、補助吸盤4の好ましい配置の例として挙げることができる。
【0031】
又、補助吸盤4については、ポンプ5との連接は必須ではないが、吸盤3と同様に、通気管52を通して各々の補助吸盤4の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な態様でポンプ5と連接されている構成としてもよい。
【0032】
[ポンプ]
ポンプ5としては、可撓性を有する通気管52を通して吸盤3の吸着面の内部側の空気を外部側に吸引可能な公知の各種のポンプを適宜用いることができる。
【0033】
ポンプ5は、例えば、シリンダーとピストンとからなる吸排気機構等を有するポンプ本体51と、可撓性を有する中空のチューブからなる通気管52とを含んで構成されるものであればよい。
図1には手動タイプのポンプが例示されているが、電気駆動タイプのポンプを用いることもできる。又、通気管52の材料は、使用対象とする液相収容槽6の内部に貯留される処理液の種類に応じた化学的耐性を有するものであることが好ましい。但し、本体基板1、閉止栓2、吸盤3等の各材料と同様、化学的耐性を有することは必ずしも必須ではない。
【0034】
[その他の機構]
開口部閉止装置10には、更に以下に説明する各種の追加機構を備えるものとすることができる。
【0035】
(操作棒)
開口部閉止装置10は、操作棒(図示せず)を更に備えるものであることがより好ましい。操作棒は、本体基板1に接合されていることが好ましい。又、閉止栓2の位置合わせ、及び、開口部閉止装置10の本体基板1を所望の方向に向けて任意の力で容易に押し付ける操作を行うことができる棒状の部材であればよい。そして、操作棒は、必要に応じて伸縮可能な構造を有する部材であることがより好ましい。
【0036】
(水中移動機構)
又、開口部閉止装置10は、水中移動機構(図示せず)を更に備えるものであることがより好ましい。水中移動機構は、処理液中、即ち、水中において、任意の方向に向けて開口部閉止装置10を自動的に移動させることができる機構であればよいが、一例として、水中で推進力を発揮するスクリューと進行方向を制御する舵によって構成することができる。
【0037】
(水中観察機構)
又、開口部閉止装置10は、本体基板1における閉止栓2の設置面から視た液相収容槽内の状態、特には、閉止すべき対象とする開口部周辺の状態を、液相収容槽の外から使用者が視認することができる水中観察機構(図示せず)を備えるものとすることができる。水中観察機構としては、公知のファイバースコープ等を用いることができる。使用対象とする液相収容槽内に貯留されることが想定される処理液の種類に応じた化学的耐性を有する材料で被覆されているものであることは求められるが、その他の限定は受けることなく従来公知の各種の遠隔観察装置を適宜用いることができる。
【0038】
<液相収容槽用の開口部一時閉止方法>
例えば、
図5に示す液相収容槽6において、開口部61において処理液の流入と流出を制御するノズルに不具合が生じた場合、本発明の開口部閉止装置10を用いることにより、
図4に示すような態様で応急処理として、開口部61を速やかに閉止することができる。
【0039】
開口部閉止装置10を用いた開口部の閉止作業においては、先ず、閉止栓2の中心と開口部の中心との位置が正確に重なる位置となるように開口部閉止装置を配置する。
【0040】
そして、この配置状態において、ポンプ5によって各吸盤3から内部の空気を吸引して、各吸盤3と吸着面との間の空間を十分に減圧することによって、各吸盤3の吸着力を高めて十分に大きな固定力で、閉止栓2を、開口部81を被覆した状態で固定することができる。又、吸引前に操作棒によって吸盤3を液相収容槽6の内壁に向けて適切に押圧することによっても、更に上記固定の安定性を高めることができる。
【0041】
閉止栓2を開口部81から外す場合は、上記の減圧状態を開放して各吸盤3と吸着面との間の空間に空気を戻すことによって、吸盤3の液相収容槽6の壁面への吸着力を低減させればよい。
【0042】
<液相収容槽の開口部ノズルの修理・交換作業への適用例>
例えば、
図5に示す液相収容槽6において、開口部61において処理液の流入と流出を制御するノズル62に不具合が生じた場合、本発明の開口部閉止装置10を用いることにより、
図4に示すような態様で応急処理として、開口部61を速やかに閉止することにより、その状態を維持したまま、液相収容槽6の外側からノズル62の交換作業を行うことも可能である。これにより、槽内に貯留している処理液を排出することなく、排出口周りの修理や交換を行い、長時間に亘る操業の停止を回避することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 本体基板
11 主板部
12 補助板部
111 サイズ調整機構
2 閉止栓
3 吸盤
4 補助吸盤
5 ポンプ
51 ポンプ本体
52 通気管
6 液相収容槽
61 開口部
62 ノズル
10 液相収容槽用の開口部閉止装置