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特許7521915タイヤ内センサーデータの圧縮方法、及び、タイヤ内センサーデータの圧縮装置
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  • 特許-タイヤ内センサーデータの圧縮方法、及び、タイヤ内センサーデータの圧縮装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】タイヤ内センサーデータの圧縮方法、及び、タイヤ内センサーデータの圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/30 20060101AFI20240717BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240717BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H03M7/30 Z
B60C19/00 B
G08C17/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020054842
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021158443
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】西山 健太
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117089(JP,A)
【文献】特開2014-035279(JP,A)
【文献】特開2017-122976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 7/30
B60C 19/00
G08C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内に設置されたセンサーで計測された時系列波形のデータの圧縮方法であって、
前記時系列波形のデータから、タイヤ複数回転分の時系列波形を抽出するステップと、
前記抽出された時系列波形を、タイヤ1回転毎に時間領域の波形から周波数領域の波形に変換するステップと、
前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形から代表波形を生成するステップと、を備え、
前記代表波形を生成するステップでは、
前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形において同じ次数の周波数成分を利用して、各次数の周波数成分の代表値を求め、
前記求められた各次数の周波数成分の代表値を、前記代表波形の周波数成分とする、ことを特徴とするタイヤ内センサーデータの圧縮方法。
【請求項2】
前記代表波形を生成するステップでは、
予め設定された次数以下の周波数成分のみを抽出して、前記代表値を求めることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ内センサーデータの圧縮方法。
【請求項3】
前記代表波形を、周波数領域の波形から時間領域の波形に逆変換する復元ステップを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ内センサーデータの圧縮方法。
【請求項4】
タイヤ内に設置されたセンサーで計測された時系列波形のデータの圧縮装置であって、
前記時系列波形のデータから、タイヤ複数回転分の時系列波形を抽出する加速度波形抽出手段と、
前記抽出された時系列波形を、タイヤ1回転毎に時間領域の波形から周波数領域の波形に変換する波形変換手段と、
前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形から代表波形を生成する代表波形生成手段と、を備え、
前記代表波形生成手段は、前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形において同じ次数の周波数成分を利用して、各次数の周波数成分の代表値を求め、
前記求められた各次数の周波数成分の代表値を、前記代表波形の周波数成分とする、ことを特徴とするタイヤ内センサーデータの圧縮装置。
【請求項5】
前記代表波形を、周波数領域の波形から時間領域の波形に逆変換する復元手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のタイヤ内センサーデータの圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内センサーで計測した時系列波形データを圧縮する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ内に設置された加速度センサーにより計測した、走行中のタイヤ振動の時系列波形のデータを用いて、路面状態を判別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記検出した時系列波形のデータは、通常、増幅された後、所定のサンプリング周波数でA/D変換され、タイヤ内に設けられた送信機から、車体側に搭載された車両制御装置の路面状態判別手段に送られる。路面状態判別手段では、時系列波形のデータから、走行中の路面の状態がDRY路面であるか、WET路面であるかなどの路面判別を行い、車両制御装置では、路面状態判別手段の判別結果に基づいて、ブレーキ装置等の制御方法を変更するなどして、車両の走行状態をより安定化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-35279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ内に設置されたセンサー(以下、タイヤ内センサーという)には、タイヤの高速回転に対応して、サンプリング周波数や量子化分解能を高くするなど、高いセンシング精度が求められるだけでなく、乗り心地への影響を抑えるため、バッテリの軽量化が求められている。しかし、高いセンシング精度を得るためには、送信データが大容量化するため、バッテリの容量を大きくする必要があるだけでなく、安定性、すなわち、バッテリの長寿命化が求められている。
一般に、バッテリの軽量化と大容量化(あるいは、長寿命化)とは、互いに相反する性質であるため、機能や要件を低下させることなく、バッテリの長寿命化を図ることが課題となっている。
【0005】
その解決策の1つとして、送信データ量の削減が考えられる。
例えば、タイヤ内に、マイクロコンピュータから成る演算装置を設けて、前記計測した時系列波形のデータから、CTR(Contact
Time Ratio)などの特徴量を抽出し、この抽出された特徴量を車体側に送信する手法を採れば、送信データ量を大幅に削減できることが、期待される。
しかしながら、特徴量は、一般には、時系列波形ではないため、例えば、特徴量に異常値が出力された場合でも、どのような波形が内部ロジックで処理されたのかを、後から追跡することが不可能であった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤ内センサーで計測した時系列波形データのデータ量を削減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤ内に設置されたセンサーで計測された時系列波形のデータの圧縮方法であって、前記時系列波形のデータから、タイヤ複数回転分の時系列波形を抽出するステップと、前記抽出された時系列波形を、タイヤ1回転毎に時間領域の波形から周波数領域の波形に変換するステップと、前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形から代表波形を生成するステップと、を備え、前記代表波形を生成するステップでは、前記周波数領域に変換された複数のタイヤ1回転分の波形において同じ次数の周波数成分を利用して、各次数の周波数成分の代表値を求め、前記求められた各次数の周波数成分の代表値を、前記代表波形の周波数成分とする、ことを特徴とする。
これにより、抽出された複数の時系列波形のデータを効果的に圧縮することができるので、生データ(複数回転分の時系列波形のデータ)をそのまま送信する場合に比較して、送信データ量を大幅に削減することができる。
なお、送信する波形は、上記の代表波形であってもよいし、上記の代表波形を逆変換して復元した時系列波形であってもよい。
【0008】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態を示す機能ブロック図である。
図2】加速度センサーの取付け位置を示す図である。
図3】タイヤ内センサーデータの圧縮方法を示すフローチャートである。
図4】計測されたタイヤ径方向加速度の時系列波形を示す図である。
図5】抽出された径方向加速度波形を示す図である。
図6】時間領域から周波数領域に変換された径方向加速度波形を示す図である。
図7】代表波形と代表波形を復元した径方向加速度波形とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施の形態を示す図で、10は加速度センサー、20は本発明によるタイヤ内センサーデータの処理装置、30は車両制御装置である。
加速度センサー10は、図2に示すように、タイヤ1のインナーライナー部2のタイヤ気室3側のほぼ中央部に配置されたセンサーケース10C内に収納されて、路面からトレッド4に入力する振動を加速度として検出する。本例では、加速度センサー10を、検出方向がタイヤ径方向になるように配置して、路面から入力するタイヤ径方向加速度を検出している。なお、図は省略するが、センサーケース10Cには、加速度センサー10の出力を増幅する増幅器やA/D変換器などが収納されている。
タイヤ内センサーデータの処理装置(以下、データ処理装置20という)は、加速度波形抽出手段21と、波形変換手段22と、代表波形生成手段23と、送信機24とを備え、前記の加速度センサー10とともに、センサーケース10C内に収納される。なお、データ処理装置20は、ホイール5のリム部6などに設置してもよい。
加速度波形抽出手段21~代表波形生成手段23までの各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェア、及び、RAM等のメモリーから構成される。
車両制御装置30は、受信機31と、波形復元手段32と、路面状態判別手段33と、車両制御手段34とを備える。車両制御装置30は車体側に設置される。
【0011】
加速度波形抽出手段21は、加速度センサー10で検出されたタイヤ径方向加速度の時系列波形から、タイヤ複数回転分の時系列波形を抽出する。
なお、抽出する時系列波形としては、生データでもよいし、フィルタリングされたものでもよい。
波形変換手段22は、周波数変換手法の一つである離散コサイン変換(DCT;Discrete Cosine
Transform)を用いて、加速度波形抽出手段21で抽出されたタイヤ複数回転分の時系列波形を、それぞれ、周波数領域の波形に変換する。
代表波形生成手段23は、波形変換手段22で周波数領域に変換された複数の波形の平均値を周波数毎に求め、この求められた周波数成分の平均値を周波数成分とした波形を生成し、これを代表波形とする。なお、平均化する際に、低い次数の周波数成分のみを抽出して平均化すれば、データ量を削減することができる。
送信機24は、代表波形生成手段23で生成された代表波形を車両制御装置30に送信する。
車両制御装置30の受信機31は、データ処理装置20の送信機24から送信された代表波形を受信して波形復元手段32に送る。
波形復元手段32は、受信した代表波形に逆変換処理を施し、周波数領域の波形を時間領域の波形に逆変換することで、タイヤ径方向加速度の時系列波形を復元する。
なお、逆変換には、逆離散コサイン変換(IDCT)を用いる。
路面状態判別手段33は、復元されたタイヤ径方向加速度の時系列波形を用いて、車両の走行している路面の状態を判別する。
車両制御手段34は、判別された路面の状態に応じて、ABSブレーキなどの制御条件を変更することで、車両の走行安全性を向上させる。
【0012】
次に、本実施の形態に係るタイヤ内センサーデータの圧縮方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、タイヤ1のインナーライナー部2に設置された加速度センサー10にて、路面からタイヤ1に入力するタイヤ径方向加速度を検出する(ステップS10)。
次に、加速度波形抽出手段21にて、加速度センサー10で検出されたタイヤ径方向加速度の時系列波形から、タイヤ1回転毎に時系列波形を順次して、波形変換手段22に送る(ステップS11)。抽出処理は、タイヤM周分の波形が得られるまで継続する(ステップS12)。
図5(a)~(c)は、抽出された時系列波形ai(t)の一例を示す図で、図では、i=0,1,2の3個の波形を示す(i=0~M-1)。ここで、時系列波形ai(t)のデータ数をNiとすると、t=0~Ni-1である。
ところで、M個の時系列波形a0(t)~aNi-1(t)を平均した波形を求め、この平均した波形を送信データとすれは、データ量を圧縮できるので、M個の時系列波形a0(t)~aNi-1(t)をそのまま送信する場合に比較して、送信データ量を大幅に低減することができる。
しかしながら、時系列のデータをそのまま平均することは困難である。
これは、一般には、データ数Niが、全ての時系列波形ai(t)について同じになることがないので、単純な算術演算のみでは、時系列波形a0(t)~aNi-1(t)を平均した波形を求めることができないからである。
そこで、本発明では、以下のステップS13~S14に示すように、加速度波形抽出手段21で抽出された時系列波形a0(t)~aNi-1(t)を、それぞれ、時間領域の波形から周波数領域の波形b0(k)~bNi-1(k)に変換することで平均化を可能とした。
【0013】
ステップS13では、離散コサイン変換(DCT)の手法を用いて、時系列波形a0(t)~aNi-1(t)の、それぞれを、周波数領域の波形b0(k)~bNi-1(k)に変換する。但し、k=0~Ni-1であり、データ数は、周波数変換前と同じである。
図6(a)~(c)は、周波数領域の波形bi(k)の一例を示す図で、図では、i=0,1,2の3個の波形を示す。但し、0次成分は平均なので省略する。
ステップS14では、周波数領域の波形bi(k)を平均化した波形bave(k)を算出し、これを周波数領域の代表波形とする。
DCTでは、低周波成分に情報量が圧縮される特性があるため、高周波成分を使わないことによる損失が小さく、かつ、高精度な波形の再現が可能であることから、本例では、低周波成分のみを抽出し平均化する。
具体的には、まず、平均する成分の次数の最大値Kを決定する。次数の最大値Kは、K≦min(Ni)を満たす値に設定される(但し、i=0~M-1)。
次に、周波数領域の波形bi(k)の次数kが0~K-1までの各成分bi,kを、それぞれ、以下の式(1)を用いて平均することで、周波数領域の代表波形bave(k)を生成する。
【数1】
なお、k=0~K-1であるので、周波数領域の代表波形bave(k)の成分bavv,kの個数はK個である。
図7(a)に、250次までの周波数成分を平均化して生成した周波数領域の代表波形bave(k)の例を示す。但し、0次成分は省略した。
このように、時系列波形ai(t)では、データ数Niのバラつきにより、時間領域での波形の平均が困難であったが、本手法を導入することで、タイヤ複数回転分の波形を平均した代表波形bave(k)を生成することが可能となった。
生成した周波数領域の代表波形bave(k)は、波形復元手段32に送られる(ステップS15)。
このように、周波数領域の代表波形bave(k)、すなわち、K個のパラメータbavv,kを車体側に送信すれば、M個の時系列波形ai(t)を送信する場合に比較して、送信データ量を大幅に低減できる。すなわち、送信データ量は平均することで、1/M倍となることに加えて、高周波成分を除外することで、送信データ量を更に低減できる。
なお、本例では、送信する波形を、上記の周波数領域の代表波形bave(k)としたが、後述する、復元された時間領域の代表波形aave(t)であってもよい。
ステップS16では、逆離散コサイン変換(IDCT)を用いて、周波数領域の代表波形bave(k)を時間領域の波形に逆変換することで、タイヤ径方向加速度の時系列波形を復元する。図7(b)に、復元された時間領域の代表波形aave(t)を示す。
復元された時間領域の代表波形aave(t)は、路面状態の判別だけでなく、タイヤの摩耗や荷重などの検知に利用可能であることはいうまでもない。
【0014】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0015】
例えば、前記実施の形態では、タイヤ内センサーを加速度センサー10とし、タイヤ径方向加速度ai(t)を検出したが、必要に応じて、センサーの検出方向を変更し、タイヤ周方向加速度波形やタイヤ幅方向加速度波形を検出してもよい。また、圧縮する波形としては、タイヤ径方向加速度を微分した加速度微分波形などのように、加速度波形に演算を施した波形であってもよい。
また、タイヤ内センサーとしては、加速度センサー10に限るものではなく、角速度センサーや歪みセンサーなどの、タイヤ内に設置されて、走行時のタイヤの変形に関わる物理量を計測するセンサーであればよい。
また、前記実施の形態では、変換手法として離散コサイン変換(DCT)を用いたが、離散フーリエ変換(DFT)、離散ウエーブレット変換(DWT;マザーウエーブレットは任意に選択可)など、他の変換手法を用いてもよい。
また、前記実施の形態では、複数の周波数領域の波形bi(k)の振幅bi,kを、次数k毎に平均した平均値を周波数領域の代表波形bave(k)の振幅bave,kとしたが、平均値に代えて、中央値や最頻値などの他の統計値を用いてもよい。
また、前記実施の形態では、加速度センサー10で検出されたタイヤ径方向加速度の時系列波形から、タイヤ1回転毎に時系列波形を抽出したが、タイヤ1回転毎に時系列波形としては、必ずしも、タイヤ1回転分である必要はなく、時系列波形のうちの、走行時におけるタイヤの変形に関する情報を含む領域、具体的には、タイヤ接地端、または、タイヤ膨出点接地面外において、タイヤが最も膨れる点)の一方もしくは両方を含む領域であればよい。
【符号の説明】
【0016】
1 タイヤ、2 インナーライナー部、3 タイヤ気室、4 トレッド、
5 ホイール、6 リム部、10 加速度センサー、10C センサーケース、
20 タイヤ内センサーデータの処理装置、21 加速度波形抽出手段、
22 波形変換手段、23 代表波形生成手段、24 送信機、
30 車両制御装置、31 受信機、32 波形復元手段、33 路面状態判別手段、
34 車両制御手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7