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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ノルマルヘプタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20240717BHJP
   C07C 7/13 20060101ALI20240717BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20240717BHJP
   C07C 9/15 20060101ALI20240717BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240717BHJP
   C10G 67/06 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C7/13
C07C7/12
C07C9/15
B01D15/00 101A
C10G67/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020055479
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2020186224
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0055404
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】514020460
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK Geo Centric Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】51, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】カン, スー キル
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1699632(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0081821(KR,A)
【文献】特公昭50-010710(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/04
C07C 7/12
C07C 7/13
C10G 67/06
C07C 9/15
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップと、
前記分離したC7成分を水素化処理装置に投入し、水素化処理するステップと、
前記水素化処理したC7成分を擬似移動層吸着分離装置(SMB)に投入し、ノルマルヘプタンを含むエキストラクトと、その他の成分を含むラフィネートとに分離するステップと、
前記エキストラクトをエキストラクト分離塔で蒸留し、ノルマルヘプタンを分離するステップと、および
前記エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を前記水素化処理装置の後端と前記擬似移動層吸着分離装置の前端との間に再循環するステップをさらに含み、
前記再循環するステップでの再循環率は、30%以上60%以下であり、
製造されるノルマルヘプタンの純度が、99.8重量%以上である、ノルマルヘプタンの製造方法。
【請求項2】
前記C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップは、
第1の蒸留塔で蒸留してC8以上の成分を除去するステップと、
第2の蒸留塔で蒸留してC6以下の成分を除去するステップとを含む、請求項1に記載のノルマルヘプタンの製造方法。
【請求項3】
前記C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップは、
第1の蒸留塔で蒸留してC6以下の成分を除去するステップと、
第2の蒸留塔で蒸留してC8以上の成分を除去するステップとを含む、請求項1に記載のノルマルヘプタンの製造方法。
【請求項4】
前記C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、脱硫ナフサである、請求項1に記載のノルマルヘプタンの製造方法。
【請求項5】
前記C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、総量100重量%に対して、C6以下のノルマルパラフィン3重量%以上10重量%以下、C7ノルマルパラフィン5重量%以上15重量%以下、C8以上のノルマルパラフィン5重量%以上20重量%以下、および残部として、ナフテン、イソパラフィン、および芳香族成分を含む、請求項1に記載のノルマルヘプタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルマルヘプタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
99重量%以上のノルマルヘプタンは、製薬成分抽出剤、OLEDなどのディスプレイのコーティング工程、SBR重合工程などの溶媒として使用される高付加溶媒製品である。
【0003】
また、この中でも純度99.8重量%以上のノルマルヘプタンは、ガソリンのオクタン価測定試験に使用される標準燃料(reference fuel)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などの分析装備、および医薬品製造溶媒などに使用され、99重量%以上のノルマルヘプタン製品とは個別の市場を形成している。
【0004】
石油化学工程である芳香族処理工程(BTX process)は、脱硫工程を経たナフサからベンゼン、トルエン、およびキシレンを製造する工程であるが、ここで使用される原料である脱硫ナフサには、ノルマルパラフィンが混合されている。
【0005】
かかるノルマルパラフィンは、それ自体で上述の用途などでの商業的価値があり、芳香族処理工程においても、ノルマルパラフィン成分が除去されると、芳香族成分の収率が増加するという利点がある。
【0006】
したがって、脱硫ナフサからノルマルパラフィンを除去するか、脱硫ナフサに含まれた成分を付加価置の高いノルマルパラフィン成分に転換し、このように処理された脱硫ナフサを芳香族処理工程の原料として使用する場合、工程全体の収益性が非常に向上し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一様態は、脱硫ナフサから高純度ノルマルヘプタンを製造することができ、さらには、99.8重量%以上の超高純度ノルマルヘプタンの製造が可能であり、且つ純度の向上によるトレードオフとして生産量が減少する問題が発生しないノルマルヘプタンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態は、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップと、分離したC7成分を水素化処理装置に投入し、水素化処理するステップと、水素化処理したC7成分を擬似移動層吸着分離装置(SMB)に投入し、ノルマルヘプタンを含むエキストラクトと、その他の成分を含むラフィネートとに分離するステップと、エキストラクトをエキストラクト分離塔(extract column)で蒸留し、ノルマルヘプタンを分離するステップとを含み、製造されるノルマルヘプタンの純度が、98重量%以上であるノルマルヘプタンの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を擬似移動層吸着分離装置の前端に再循環するステップをさらに含んでもよい。
【0010】
より具体的には、エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を水素化処理装置の後端と擬似移動層吸着分離装置の前端との間に再循環するステップをさらに含んでもよい。
【0011】
再循環するステップでの再循環率は、30%以上60%以下であってもよい。
【0012】
製造されるノルマルヘプタンの純度は、より具体的には99.8重量%以上であってもよい。
【0013】
C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップは、第1の蒸留塔で蒸留してC8以上の成分を除去するステップと、第2の蒸留塔で蒸留してC6以下の成分を除去するステップとを含んでもよい。
【0014】
または、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップは、第1の蒸留塔で蒸留してC6以下の成分を除去するステップと、第2の蒸留塔で蒸留してC8以上の成分を除去するステップとを含んでもよい。
【0015】
C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、脱硫ナフサであってもよい。
【0016】
C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、総量100重量%に対して、C6以下のノルマルパラフィン3重量%以上10重量%以下、C7ノルマルパラフィン5重量%以上15重量%以下、C8以上のノルマルパラフィン5重量%以上20重量%以下、および残部として、ナフテン、イソパラフィン、および芳香族成分を含んでもよい。
【0017】
本発明の一様態は、上述の本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法により製造されたノルマルヘプタンを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一様態は、脱硫ナフサから高純度ノルマルヘプタンを製造することができ、さらには、99.8重量%以上の超高純度ノルマルヘプタンの製造が可能であり、且つ純度の向上によるトレードオフとして生産量が減少する問題が発生しないノルマルヘプタンの製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法によると、芳香族処理工程(BTX工程)の原料である脱硫ナフサからノルマルヘプタン製品を製造することで、BTX工程の収益性が向上するだけでなく、本発明の製造方法により、ノルマルパラフィンが除去された脱硫ナフサをBTX工程の原料として使用する場合、BTX工程の収率も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法の工程図である。
図2】本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法の工程図である。
図3】比較例1のノルマルヘプタンの製造方法の工程図である。
図4】比較例2のノルマルヘプタンの製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解可能な意味に使用され得る。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とした場合、これは、特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数型は、文章で特に断らない限り、複数型をも含む。
【0022】
本明細書において特に他の定義がない限り、「高純度ノルマルヘプタン」とは、98%重量以上、より具体的には99重量%以上の純度のノルマルヘプタンを意味し得る。
【0023】
本明細書において特に他の定義がない限り、「超高純度ノルマルヘプタン」とは、99.8重量%以上の純度のノルマルヘプタンを意味し得る。
【0024】
本発明は、脱硫ナフサからノルマルヘプタンを製造することができる製造方法に関する。
【0025】
具体的には、本発明の一様態の製造方法によると、製薬成分抽出剤、OLEDなどのディスプレイのコーティング工程、SBR重合工程などの溶媒として使用される高純度ノルマルヘプタンを製造することができる。
【0026】
さらに、本発明の一様態の製造方法によると、オクタン価測定試験に使用される標準燃料、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などの分析装備、および医薬品製造溶媒などに使用され得る99.8重量%以上の超高純度ノルマルヘプタンを高い生産量で製造することができる。
【0027】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップと、分離したC7成分を水素化処理装置に投入し、水素化処理するステップと、水素化処理したC7成分を擬似移動層吸着分離装置(SMB)に投入し、ノルマルヘプタンを含むエキストラクトと、その他の成分を含むラフィネートとに分離するステップと、エキストラクトをエキストラクト分離塔で蒸留し、ノルマルヘプタンを分離するステップとを含む。
【0028】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードからノルマルヘプタンを製造する方法であり、C7成分のみを分離した後、これに対して、水素化反応およびSMB工程を順に行うことができる。
【0029】
フィードに対して、水素化反応およびSMB工程を順に行うことで、高い生産量で98重量%以上、より具体的には99重量%以上の純度の高純度ノルマルヘプタンを製造することができる。
【0030】
また、先に水素化反応により芳香族成分などを除去し、非芳香族成分に対してのみSMB工程によりノルマルヘプタンを製造することで、芳香族成分固有の性状などを考慮する必要がなく、SMB工程の細部条件を変更しながらノルマルヘプタンを製造することができ、SMB工程の後、さらなる蒸留工程なしに高純度ノルマルヘプタンを製造することができる。
【0031】
これにより、工程運転と管理が非常に容易になるだけでなく、工程が簡素化し、全体の工程費用を削減することができる。
【0032】
具体的には、SMB工程の後、水素化反応を行う場合、目的とする生成物であるノルマルヘプタンを多量含有するSMB工程のエキストラクトにやむを得ず芳香族成分が混合されるしかないため、SMB工程の運転効率を低下させる。そのため、これらを最小化するためのSMB工程の条件設定が必要になるだけでなく、水素化反応の後にもノルマルヘプタン以外の成分が多量残り、ノルマルヘプタンの純度が十分に上がらず、ノルマルヘプタンと相違する性状を有する芳香族化合物の水素添加物の除去が必ずしも伴われなければならないため、さらなる蒸留工程などの分離工程の付加が必要となる。
【0033】
一方、先に水素化反応を行う場合、芳香族成分が予め除去され、後続のSMB工程のエキストラクトに芳香族成分が存在しないため、SMB工程の運転が容易になるだけでなく、水素化反応の後に、さらなる分離工程がなくても高純度ノルマルヘプタンの製造が可能になる。
【0034】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を、前記擬似移動層吸着分離装置の前端に再循環するステップをさらに含んでもよい。
【0035】
かかる再循環するステップをさらに含むことで、99.8重量%以上の超高純度ノルマルヘプタンを高い生産量で製造することができる。
【0036】
具体的には、上述の本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、99.8重量%以上にノルマルヘプタンの純度を高めるためには、SMB工程に投入されるフィード内のノルマルヘプタンの純度を高める必要がある。
【0037】
しかし、再循環なしにSMB工程に投入されるフィード内のノルマルヘプタンの純度を高めるためには、前端工程の処理容量を必ずしも減少させなければならず、SMB工程の処理量が減少し、実際の商業的な適用が不可能になるほど、99.8重量%以上のノルマルヘプタンの生産量が減少する。
【0038】
すなわち、SMB工程に投入されるフィード内のノルマルヘプタンの純度と、SMB工程の処理容量は、互いにトレードオフ関係にあり、かかるトレードオフ関係を解消するための解決策が必要である。
【0039】
このために、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を擬似移動層吸着分離装置の前端の間に再循環するステップをさらに含んでもよい。
【0040】
すなわち、SMB工程の後のエキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部をSMB装置の前端に再循環することで、SMB工程に投入されるフィード内のノルマルヘプタンの純度を向上させることができ、結果、全体的な工程の処理容量の低下なしに最終製品のノルマルヘプタンの純度を向上させることができる。
【0041】
より具体的には、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法は、エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を水素化処理装置の後端と、擬似移動層吸着分離装置の前端との間に再循環するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
エキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部を水素化処理装置の後端と擬似移動層吸着分離装置の前端との間に再循環することが、より有利であり得る。
【0043】
これは、仮に水素化処理装置の前端に再循環する場合、水素化工程とSMB工程との間の処理量が増加して、水素化工程とSMB工程との間に蒸留など分離工程とストリッピング工程で処理すべき量が増加し、無駄な工程費用が増加し得るためである。
【0044】
一方、再循環するステップでの再循環率は、30%以上60%以下であり得る。より具体的には、35%以上55%以下であり得る。工程の所定水準以上の処理量を維持しながら製品を生産するためには、適正水準の再循環率を維持しなければならない。再循環率が低い場合、工程の処理容量が減少することで、生産量が低下し得る。
【0045】
かかる範囲でエキストラクト分離塔で分離したノルマルヘプタンのうち一部をSMB装置の前端に再循環することで、全体工程の処理容量の低下なしに99.8重量%以上の純度の超高純度ノルマルヘプタンを製造することができる。
【0046】
ここで、再循環率とは、エキストラクト分離塔から排出されるノルマルヘプタンを含む排出物の総量100重量%に対して再循環される量を意味し得る。
【0047】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、脱硫ナフサであってもよい。
【0048】
すなわち、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードは、原油から分離したナフサに対して脱硫工程を行った後の脱硫ナフサであってもよい。
【0049】
かかる脱硫ナフサは、総量100重量%に対して、C6以下のノルマルパラフィン3重量%以上10重量%以下、C7ノルマルパラフィン5重量%以上15重量%以下、C8以上のノルマルパラフィン5重量%以上20重量%以下、および残部として、ナフテン、イソパラフィン、および芳香族成分を含むことができる。
【0050】
より具体的には、脱硫ナフサの総量100重量%に対して、C6以下のノルマルパラフィン3重量%以上10重量%以下、C7ノルマルパラフィン5重量%以上15重量%以下、C8以上のノルマルパラフィン5重量%以上20重量%以下、ナフテン20重量%以上35重量%以下、イソパラフィン25重量%以上40重量%以下、および芳香族成分5重量%以上15重量%以下を含むことができる。
【0051】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードを蒸留してC8以上の成分およびC6以下の成分を除去し、C7成分を分離するステップは、第1の蒸留塔で蒸留してC8以上の成分を除去するステップと、第2の蒸留塔で蒸留してC6以下の成分を除去するステップとを含むことができる。
【0052】
C6以下、C7、およびC8以上の炭化水素成分を含むフィードから、蒸留により、C6以下およびC8以上の成分を除去することができ、この際、C6以下の成分とC8以上の成分を除去する順序は、特定の順序に限定されない。
【0053】
すなわち、ここで、第1の蒸留塔および第2の蒸留塔は、便宜上命名したものであって、数字が順序を意味するものではなく、先ずC6以下成分を除去した後、以降、C8以上成分を除去してもよく、もしくは、先ずC8以上成分を除去した後、以降、C6以下成分を除去してもよい。
【0054】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、蒸留は、通常知られている蒸留方法により行われ得、蒸留塔の段数は、必要に応じて調節され得る。非限定的な一例を挙げると、ボトムリボイラおよびオーバヘッドコンデンサを含み、段数が10段以上100段以下の単数または複数の蒸留塔を用いることができる。
【0055】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、水素化処理するステップは、芳香族成分およびオレフィンなどの不飽和炭化水素を飽和炭化水素に水素化する工程により行われ得、反応器に注入されるときには、水添反応の際に発生する反応熱によって反応器と出口の温度が過熱される可能性があるため、水素化反応器に投入される反応物の温度を下げて注入した方が好ましい。具体的な水素化方法は、当業係において知られている公知の方法によってもよく、特定の方法に限定されない。
【0056】
本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において、擬似移動層吸着分離装置(SMB)を用いたSMB工程は、ゼオライト系吸着剤で満たされた吸着床とオン‐オフ弁を含む装置を用いて、吸着剤に対する選択度が高い成分は吸着剤に吸着されてエキストラクトとして抽出され、残りの成分は、ラフィネートとして排出される方法で行われ得る。ただし、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
図1および図2は、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法の工程図である。
【0058】
以下、図1および図2を参照して、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法の実施様態について説明する。
【0059】
先ず、図1のように、脱硫ナフサを第1の蒸留塔10に投入して、蒸留塔の下部にC8以上の炭化水素成分を除去し、上部にC7以下の炭化水素成分を分離する。
【0060】
次に、C7以下の炭化水素成分を第2の蒸留塔11に投入して、上部にC6以下の炭化水素成分を除去し、下部にC7炭化水素成分を分離する。
【0061】
分離したC7炭化水素成分は、水素化処理装置20に投入され、水素化反応により、芳香族およびオレフィン成分などの不飽和炭化水素成分を飽和炭化水素成分に転換する。
【0062】
もしくは、図2のように、脱硫ナフサを第1の蒸留塔10に投入して、蒸留塔の上部にC6以下の炭化水素成分を除去し、下部にC7以上の炭化水素成分を分離する。
【0063】
次に、C7以上の炭化水素成分を第2の蒸留塔11に投入して、下部にC8以上の炭化水素成分を除去し、上部にC7炭化水素成分を分離する。
【0064】
分離したC7炭化水素成分は、水素化処理装置20に投入され、水素化反応により芳香族およびオレフィン成分などの不飽和炭化水素成分を飽和炭化水素成分に転換する。
【0065】
次に、水素化処理した排出物に対して、必要に応じて、さらなる第3の蒸留塔30による蒸留工程および/またはストリッピング装置40によるストリッピング工程により液状の低沸点成分をさらに除去するための工程が行われ得る。ただし、これは、必要に応じて付加され得、本発明の一様態のノルマルヘプタンの製造方法において必ずしも行われなければならないことではない。
【0066】
次に、水素化処理した排出物を擬似移動層吸着分離装置50に投入して、上部にノルマルヘプタンをエキストラクトとして分離し、下部にそれ以外の成分でラフィネートとして分離する。この際、エキストラクトおよびラフィネートには、脱着剤が混合され得る。
【0067】
ここで、ラフィネートは、ラフィネート分離塔52で脱着剤(分離塔上部)とラフィネート(分離塔下部)とに分離され得、分離されたラフィネートは、芳香族処理工程の原料として使用されるか、ガソリンブレンディング用の油分として使用され得る。
【0068】
上部から排出された脱着剤は、脱着剤貯蔵槽53を経て、また擬似移動層分離装置50に再投入され得る。
【0069】
擬似移動層吸着分離装置50の上部から排出されたエキストラクトは、分離されたノルマルヘプタンを含み、かかるエキストラクトは、エキストラクト分離塔51で脱着剤(分離塔上部)とノルマルヘプタンを含むエキストラクト(分離塔下部)とに分離することができる。
【0070】
上部から排出された脱着剤は、脱着剤貯蔵槽53を経て、また擬似移動層分離装置50に再投入され得る。
【0071】
エキストラクト分離塔の下部から排出されたノルマルヘプタンは、最終生成物として取得され得る。
【0072】
一方、ここで、最終のノルマルヘプタン製品の純度を99.8重量%以上に上げるために、エキストラクト分離塔51の下部から排出されたノルマルヘプタンをエキストラクト分離塔の下部の排出管と連通した再循環管101を通して、水素化処理装置20の後端と、擬似移動層吸着分離装置50の前端との間に再循環することができる。
【0073】
これにより、上述のように、全工程の処理容量の低下なしに99.8重量%以上の超高純度ノルマルヘプタンの製造が可能になり得る。
【0074】
図1において、エキストラクト分離塔51の下部から排出されたノルマルヘプタンが再循環される位置は例示的に図示しており、排出されたノルマルヘプタンが再循環される位置は、水素化処理装置20の後端と、擬似移動層吸着分離装置50の前端との間であれば、特に制限されない。
【0075】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
脱硫工程を経た脱硫ナフサを原料として、図1のような工程によってノルマルヘプタンを製造した。エキストラクト分離塔から排出されるノルマルヘプタンを含む排出液がSMB装置の前端に再循環される再循環率は45%とした。
【0077】
ここで使用された脱硫ナフサの組成は、表1のとおりである。
【0078】
【表1】
最終的に得られたノルマルヘプタンの純度は、99.86重量%であった。
【0079】
[実施例2]
図2のような工程によってノルマルヘプタンを製造した点以外は、実施例1と同様にノルマルヘプタンを製造した。
【0080】
最終的に得られたノルマルヘプタンの純度は、99.85重量%であった。
【0081】
[実施例3]
表1の組成を有する脱硫ナフサを原料として、実施例1と同様にノルマルヘプタンを製造し、且つエキストラクト分離塔から排出されるノルマルヘプタンを含む排出液を再循環せず、実施例1と同じ生産量でノルマルヘプタンを製造した。
【0082】
最終的に得られたノルマルヘプタンの純度は、99.36重量%であった
【0083】
[比較例1]
表1の組成を有する脱硫ナフサを原料として、図3のような工程で実施例1と同じ生産量でノルマルヘプタンを製造した。
【0084】
最終的に得られたノルマルヘプタンの純度は、99.51重量%であった。
【0085】
図3のように、SMB工程‐水添工程による場合、99重量%以上のノルマルヘプタンを製造するためには、最後端の蒸留工程12が必須であった。
【0086】
[比較例2]
表1の組成を有する脱硫ナフサを原料として、図4のような工程で実施例1と同じ生産量でノルマルヘプタンを製造した。
【0087】
最終的に得られたノルマルヘプタンの純度は、95.12重量%であった。
【0088】
図4のように、SMB工程‐水添工程による場合、最後端のさらなる蒸留工程なしには、98重量%以上、より具体的には99重量%以上のノルマルヘプタンを製造することができなかった。
【符号の説明】
【0089】
10 第1の蒸留塔
11 第2の蒸留塔
20 水素化処理装置
30 第3の蒸留塔
40 ストリッピング装置
50 擬似移動層吸着分離装置
51 エキストラクト分離塔
52 ラフィネート分離塔
53 脱着剤貯蔵槽
60 乾燥器
101 再循環管
図1
図2
図3
図4