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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/18 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A47C3/18 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068893
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021164563
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】海福 恒太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 友希
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04097016(US,A)
【文献】実開昭60-085233(JP,U)
【文献】特開昭59-014528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、座受けを介して前記脚部に対して回動可能に支持された座部と、前記座受けに配置され且つ前記脚部に対する前記座部の回動を阻止するロック機構と、前記ロック機構を解除操作する操作具とを備えた椅子であって、
前記ロック機構は、前記座受けと一体回動する係合体と、前記係合体の凸部を係脱させ得る被係合体の凹部とで構成されており、
前記係合体における横向きの回動軸は、前記座受けの側板部を貫通して前記側板部に回動可能に軸支されており、前記操作具は、前記係合体を前記回動軸回りに上下回動させて前記凹部に前記凸部を係脱させるように、前記回動軸の突出端側に連動連結されており、さらに、
前記回動軸は前記座受けの後部に設けられており、前記係合体の前部に前記凸部が設けられており、前記凸部は前記座受け内の前部側に位置させている
子。
【請求項2】
前記回動軸は、前記座受けにおける左右両方の側板部を貫通して前記左右両方の側板部に回動可能に軸支されており、
前記操作具は、前記座受けにおける左右の前記側板部に沿って延びる一対のレバー杆を有しており、前記各レバー杆の後端部は、前記回動軸においてそれぞれ対応する突出端側に連結されており、前記両レバー杆の前端部同士は、前記座受け外に位置する左右横長のレバー連結杆によって連結されている、
請求項に記載した椅子。
【請求項3】
脚部と、座受けを介して前記脚部に対して回動可能に支持された座部と、前記座受けに配置され且つ前記脚部に対する前記座部の回動を阻止するロック機構と、前記ロック機構を解除操作する操作具とを備えた椅子であって、
前記ロック機構は、前記座受けと一体回動する係合体と、前記係合体の凸部を係脱させ得る被係合体の凹部とで構成されており、
前記係合体における横向きの回動軸は、前記座受けの側板部を貫通して前記側板部に回動可能に軸支されており、前記操作具は、前記係合体を前記回動軸回りに上下回動させて前記凹部に前記凸部を係脱させるように、前記回動軸の突出端側に連動連結されており、さらに、
前記回動軸は、前記座受けにおける左右両方の側板部を貫通して前記左右両方の側板部に回動可能に軸支されており、
前記操作具は、前記座受けにおける左右の前記側板部に沿って延びる一対のレバー杆を有しており、前記各レバー杆の後端部は、前記回動軸においてそれぞれ対応する突出端側に連結されており、前記両レバー杆の前端部同士は、前記座受け外に位置する左右横長のレバー連結杆によって連結されている、
椅子。
【請求項4】
水平回動不能な脚支柱を有する脚部と、座受けを介して前記脚支柱に水平回動可能に支持された座部と、前記座受けに配置され且つ前記脚支柱に対する前記座部の水平回動を阻止するロック機構と、前記ロック機構を解除操作する操作具とを備えた椅子であって、
前記ロック機構は、前記座受けと一体回動する係合体と、前記係合体の凸部を係脱させ得る被係合体の凹部とで構成されており、
前記係合体は平面視矩形枠状になっていて、平面視では前記係合体によって前記脚支柱の上端側が取り囲まれている、
椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において、水平回動不能なガスシリンダ等の脚支柱に座受けを介して座部を回動可能に支持したもの、いわゆる回転椅子は広く使用されている。この種の椅子において、座部が不用意に回動するのは好ましくない。そこで、脚支柱に対する座部の水平回動を阻止するロック機構を座受け内に設け、ロックを解除しないと座部が水平回動しない構成にしていることが多い。ロック機構には解除レバーが連動連結されていて、人が解除レバーを手で動かすことによってロックが解除される(例えば特許文献1及び2等参照)。
【0003】
特許文献1及び2には、座受け側に係合ピンを設け、脚支柱側に係合穴を形成してなるロック機構の構成が開示されている。係合ピンには、これを解除方向(係合穴から離脱する方向)に移動させる解除レバーが連動連結されている。係合ピン及び解除レバーは、ばねでロック方向(係合ピンとしては係合穴に嵌入する方向)に常時付勢されている。解除レバーは、座受けを貫通して先端側を外部に露出させている。
【0004】
フリー状態の座部を水平回動させて係合ピンと係合穴との回動位相を合致させると(係合ピンを係合穴に対峙させると)、係合ピンがばねの弾性付勢力で自動的に係合穴に嵌入し、脚支柱に対して座部が水平回動不能にロックされる(ロック状態になる)。
【0005】
次いで、解除レバーを解除方向に操作すると、係合ピンがばねの弾性に抗して係合穴から離脱する。そのまま解除レバーから手を離すと、係合ピンがばねの弾性付勢力で自動的に係合穴に嵌入して再びロックされるから、解除レバーを解除方向に操作したままで、座部を少し水平回動させて係合ピンと係合穴の回動位相をずらす。そうすると、係合ピンの係合穴からの離脱状態が維持され、その後に係合ピンが係合穴に嵌入するまで、脚支柱に対して座部が水平回動可能になる。
【0006】
特許文献3には、座受け側に平面視矩形枠状の係止部材を設け、脚支柱側に六角ナット状の外形を有する規制板を設けてなるロック機構の構成が開示されている。係止部材は上下回動する構成である。係止部材の下方には係止部材を上下回動させるカムが配置されている。当該カムのカム軸に操作レバーが連動連結されている。操作レバーは、座受けを貫通して先端側を外部に露出させている。
【0007】
この場合、操作レバーを解除方向に操作すると、係止部材が跳ね上げ回動して係止部材の開口と規制板との係合が解除される。そのまま操作レバーから手を離すと、係止部材が自重で下向き回動して自動的に係止部材の開口に規制板が嵌り込んで再びロックされるから、操作レバーを解除方向に操作したままで、座部を水平回動させて脚支柱に対して座部を水平回動可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6356407号公報
【文献】特許第4268530号公報
【文献】特許第3837615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1及び2の構成では、解除レバーが座受けを貫通して先端側を外部に露出させているから、座受けには、解除レバーの操作(例えば回動操作等)を許容する大きさの開口穴や切り欠き溝を形成しなければならず、座受けの強度が損なわれやすいという問題があった。また、特許文献3の構成では、係止部材の回動軸とカムのカム軸とをそれぞれ別個に設けなければならず、構造の複雑化を招来するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施した椅子を提供することを技術的課題としている。
【0011】
本発明の第1局面は、脚部と、座受けを介して前記脚部に対して回動可能に支持された座部と、前記座受けに配置され且つ前記脚部に対する前記座部の回動を阻止するロック機構と、前記ロック機構を解除操作する操作具とを備えた椅子であって、前記ロック機構は、前記座受けと一体回動する係合体と、前記係合体の凸部を係脱させ得る被係合体の凹部とで構成されており、前記係合体における横向きの回動軸は、前記座受けの側板部を貫通して前記側板部に回動可能に軸支されており、前記操作具は、前記係合体を前記回動軸回りに上下回動させて前記凹部に前記凸部を係脱させるように、前記回動軸の突出端側に連動連結されているというものである。
【0012】
本発明の椅子において、前記回動軸は前記座受けの後部に設けられており、前記係合体の前部に前記凸部が設けられており、前記凸部は前記座受け内の前部側に位置させているようにしてもよい。
【0013】
本発明の椅子において、前記回動軸は、前記座受けにおける左右両方の側板部を貫通して前記左右両方の側板部に回動可能に軸支されており、前記操作具は、前記座受けにおける左右の前記側板部に沿って延びる一対のレバー杆を有しており、前記各レバー杆の後端部は、前記回動軸においてそれぞれ対応する突出端側に連結されており、前記両レバー杆の前端部同士は、前記座受け外に位置する左右横長のレバー連結杆によって連結されているようにしてもよい。
【0014】
本発明の第2局面は、水平回動不能な脚支柱を有する脚部と、座受けを介して前記脚支柱に水平回動可能に支持された座部と、前記座受けに配置され且つ前記脚支柱に対する前記座部の水平回動を阻止するロック機構と、前記ロック機構を解除操作する操作具とを備えた椅子であって、前記ロック機構は、前記座受けと一体回動する係合体と、前記係合体の凸部を係脱させ得る被係合体の凹部とで構成されており、前記係合体は平面視矩形枠状になっていて、平面視では前記係合体によって前記脚支柱の上端側が取り囲まれているというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1局面によると、係合体における横向きの回動軸は、座受けの側板部を貫通して側板部に回動可能に軸支されており、操作具は、係合体を回動軸回りに上下回動させて凹部に凸部を係脱させるように、回動軸の突出端側に連動連結されているから、座受けの側板部には回動軸支持用の穴を形成するだけでよく、例えば座受け内外を見通せるような大きな開口穴や切り欠き溝を形成したりする必要がない。従って、ロック機構と操作具とを連動連結するにおいて、座受けの強度を十分に確保できる。また、操作具と係合体とを1本の回動軸で連動連結するから、部品点数を抑制したシンプルな構造にできる。
【0016】
本発明の第2局面によると、係合体は平面視矩形枠状になっていて、平面視では係合体及び回動軸によって脚支柱の上端側が取り囲まれているから、脚支柱に付属する部品を回避して座受け内に係合体を配置でき、脚支柱に付属する部品の存在が邪魔にならない。係合体の強度確保も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における椅子の全体斜視図である。
図2】椅子の全体正面図である。
図3】椅子の背面図である。
図4】椅子の左側面図である。
図5】椅子の平面図である。
図6】下方から見た椅子の全体斜視図である。
図7】複数の枝アームで支持される椅子を下方から見た全体斜視図である。
図8】クッション材と一体のインナー部材を裏面側から見た斜視図である。
図9】アウター部材を表面側から見た斜視図である。
図10】受け爪と係止爪との係合状態を示す背面断面図である。
図11】横長穴と横長係合爪との係合状態を示す側面断面図である。
図12】係合突起と係合凹部との係合状態を示す側面断面図である。
図13】ロック機構と解除レバーとの平面図である。
図14】ロック機構と解除レバーとを底面側から見た斜視図である。
図15】ロック状態にあるロック機構の側面断面図である。
図16】凸部をスイッチ部材に当接させたフリー状態にあるロック機構の側面断面図である。
図17】ロック状態にあるときのロック機構と解除レバーとの底面図である。
図18】フリー状態で座部を水平回動させたときのロック機構と解除レバーとの底面図である。
図19】緩衝体の別例を示す椅子の底面図である。
図20】インナー部材前部とアウター部材前部との連結構造の別例を示す座体の底面図である。
図21】係合突起と係合凹部との係合状態の別例を示す側面断面図である。
図22】ロック機構の別例を示す平面図である。
図23】ロック機構の別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。実施形態は、オフィスに多用される回転椅子に本発明を適用したものである。以下の説明では、方向を特定するために「前後」「左右」等の文言を使用するが、これらは、椅子に普通に腰掛けた人から見た状態を基準として規定している。正面視は、椅子の着座者と向かい合う方向である。もちろん、これらの文言は説明の便宜上用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
図1図5に示すように、実施形態の椅子は、ガスシリンダ等の脚支柱2を有する脚部1と、人が腰掛ける座部4と、上半身支持部としての背もたれ部5及び左右の肘掛け部6とを備えている。脚部1の脚支柱2は、平面視円板状の接地板7で支持されている。脚支柱2のロッド8は、シリンダ部9に対して上下伸縮可能であり且つ水平回動不能に構成されている。ロッド8の上端部には、金属板製の座受け10が水平回動可能に装着されている。当該座受け10によって座部4が水平回動可能に支持されている。
【0020】
背もたれ部5は座部4の後部に立設されている一方、左右の肘掛け部6は座部4の左右側部に立設されている。実施形態では、上半身支持部を構成する背もたれ部5及び肘掛け部6だけでなく座部4まで含めて一体に連設された構造になっている。すなわち、座部4と上半身支持部(背もたれ部5及び肘掛け部6)とで座体3が構成されている。
【0021】
脚部1上に位置する座体3(座部4,背もたれ部5及び肘掛け部6)は、合成樹脂製のインナー部材11と、その表面側に配置されたクッション材12と、インナー部材11の裏面側に配置された合成樹脂製のアウター部材13とで構成されている。
【0022】
座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6のインナー部材11は連続した形態に形成されている。そして同様に、座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6のアウター部材13も連続した形態に形成されている。図4図8及び図9から分かるように、座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6にまで広がるインナー部材11とアウター部材13とは、人の腰を包むように前向き凹のシェル状に形成されている。
【0023】
インナー部材11の表面側にクッション材12が形成されている。実施形態のクッション材12は、コア層14と当該コア層14の表面に形成されるスキン層15とを発泡成形して一体に構成したものである。実施形態では、モールド内にインナー部材11を装入(インサート)してから、例えばインテグラルスキン法等で発泡成形することによって、表面(外面)にスキン層15を有するクッション材12がインナー部材11の表面側に一体に形成されている。
【0024】
インナー部材11の裏面側には、これを覆うようにアウター部材13が着脱可能に取り付けられている。この場合、インナー部材11裏面の座対応部分に座受け10が締結されている。脚支柱2のロッド8はアウター部材13の座対応部分を貫通している。インナー部材11とアウター部材13との間には空間が空いている。当該空間内に座受け10が収容されている。座受け10はアウター部材13で覆い隠されている。従って、脚部1上に位置する座体3は、座受け10と共に、脚支柱2のロッド8を支点として水平回動可能に構成されている。
【0025】
図3及び図11に示すように、背もたれ部5の裏面側には、後ろ向きに開口したハンドル穴16が形成されている。インナー部材11裏面の背もたれ対応部分には、脚支柱2におけるロッド8の伸縮可否を操作する昇降ハンドル17がハンドル穴16に臨むように取り付けられている。昇降ハンドル17は、インナー部材11とアウター部材13との背もたれ対応部分の間に上下動可能に収容されている。
【0026】
昇降ハンドル17には、押し引きの双方向に操作力を伝達可能なプッシュプル式の連結ワイヤー18の一端側が連結されている。ここでは詳細な説明を省略するが、連結ワイヤー18の他端側は、ロッド8上端面から突出した押下ボタンを操作可能な昇降ユニットに連結されている。連結ワイヤー18もアウター部材13で覆い隠されている。
【0027】
背もたれ部5の上端側を掴むようにして指先で、ハンドル穴16内の昇降ハンドル17を引き上げる操作をすると、連結ワイヤー18が昇降ユニットを後方に引っ張り、昇降ユニットがロッド8の押下ボタンを押し下げる結果、脚支柱2が伸縮可能なフリー状態(ロッド8がシリンダ部9に対して昇降可能な状態)になる。
【0028】
昇降ハンドル17の引き上げ操作を解除すると、ロッド8の押下ボタンが上向きに突出して元の状態に復帰し、脚支柱2が伸縮不能なロック状態になる。ここで、昇降ユニットは、元の状態に戻って連結ワイヤー18を前方に引っ張り、昇降ハンドル17を引き下げる。その結果、昇降ハンドル17はハンドル穴16に臨む元の状態に復帰する。
【0029】
図11に詳細に示すように、昇降ハンドル17は、背もたれ部5裏面側のハンドル穴16内の奥のほうに配置されていて、ハンドル穴16の内壁上部16aは、指先を引っ掛け可能な程度の奥行き(広さ)を有している。このため、例えば椅子を持ち運びする場合、ハンドル穴16の内壁上部16aに指先を引っ掛けて、昇降ハンドル17に触らずに背もたれ部5の上端側を掴めば、椅子を簡単に持ち上げできる。つまり、ハンドル穴16は、例えば椅子を持ち運びする際の把手の役割も担っている。
【0030】
なお、脚支柱2を昇降操作する構造自体は本発明と直接的に関係しないので、これ以上の詳述を割愛する(必要であれば、基本構造に関して特開2019-103676号公報を参照されたい)。
【0031】
図5に示すように、座受け10内には、脚支柱2に対する座受け10ひいては座体3の水平回動を阻止するロック機構19が設けられている。インナー部材11とアウター部材13との座対応部分の間に、座受け10内のロック機構19を解除操作する解除レバー20が収容されている。
【0032】
実施形態では、解除レバー20の先端側である操作部21を左右一対で有していて、各操作部21はアウター部材13裏面の座対応部分を左右に貫通している。従って、解除レバー20における左右一対の操作部21は、座部4裏面の左右両側から露出している。左右一対の操作部21は、互いに連動してロック機構19を解除操作するように構成されている。
【0033】
図6に示すように、接地板7の底面側には、接地板7の円周方向に沿って延びる緩衝体32が取り付けられている。実施形態の緩衝体32は、接地板7の円周方向に複数に分割された円弧状緩衝体を組み合わせたものであり、接地板7の底面側にねじで締結されている。緩衝体32を接地板7の円周方向に複数に分割した構成にしているので、金型の小型化が可能でコスト抑制に効果的である。また、緩衝体32サイズが小型な点も例えば在庫管理等のコストダウンに寄与できる。
【0034】
なお、上半身支持部は、背もたれ部5と肘掛け部6との両方を備えるに限らず、背もたれ部5だけでもよいし、肘掛け部6だけでもよい。座部4と上半身支持部とは、一体であるに限らず、別体でもよい(それぞれのクッション材12、インナー部材11及びアウター部材13を各部4~6ごとに構成しても差し支えない)。背もたれ部5と肘掛け部6との両方を備えた場合でも、背もたれ部5と肘掛け部6とを分離構成できる。
【0035】
また、図7に示すように、脚部1の脚支柱2は、接地板7で支持するに限らず、放射状に広がる複数の枝アーム33で支持するようにしてもよい。各枝アーム33の先端側にはキャスター34が取り付けられている。さらに、ロック機構19及び解除レバー20を省略した椅子においては、アウター部材13裏面の座対応部分に形成された各操作部21用の貫通穴35を、スナップ係合式のキャップ36で塞いでおけばよい(図7参照)。
【0036】
さらに、緩衝体32は、実施形態の円弧状のものに限らず、図19に示すような接地板7の円周方向に沿う短冊状のものであっても構わない。図19に示す別例の緩衝体32は、接地板7の底面側に、接地板7の円周方向に沿って適宜間隔を空けて配置され、ねじ58止めされる。この場合、接地板7の底面側に形成されるねじ穴付きのボス部59は、緩衝体32固定用のねじ58が嵌まるものであるが、ねじ穴の深さを確保しやすいように、接地板7の円周縁よりも半径方向内側に形成される。このため、図19に示す別例の緩衝体32は略コ字の短冊状になっていて、当該緩衝体の一対の張り出し部分が各ボス部59にねじ58止めされる。
【0037】
さて、前述した通り、座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6のインナー部材11は連続した形態になっていて、人の腰を包むように前向き凹のシェル状に形成されている。インナー部材11の表面側にクッション材12が一体に形成されている。
【0038】
図11及び図12に示すように、実施形態のクッション材12は、インナー部材11の上端部(背もたれ対応部分及び肘掛け対応部分の上端部)を巻き込むように覆っている。また、クッション部材12の前端部は、インナー部材11の前端部(座対応部分の前端部)をも巻き込むように覆っている。そして、クッション材12の上端面、すなわち、クッション材12における背もたれ対応部分及び肘掛け対応部分の上端面は、人の手のひらを載せ得る平坦面22に形成されている。
【0039】
この場合、インナー部材11の上端部(背もたれ対応部分及び肘掛け対応部分の上端部)には、裏面側に向けて張り出した張り出し部23が形成されている(図11及び図12参照)。クッション材12の上端部が張り出し部23を巻き込むように覆うことによって、背もたれ部5及び肘掛け部6の上端面が平坦面22になっている。当該平坦面22の幅寸法Wは、クッション材12の上端部を例えば大人の手で掴める程度、すなわち、数cm~10数cm程度に設定するのが好ましい。
【0040】
背もたれ部5及び肘掛け部6の上端部を幅広な平坦面22に形成すると、当該平坦面22に手のひらを載せやすくなる(手をかけやすくなる)。このため、椅子から立ち上がったり着座したりするに際して、背もたれ部5及び肘掛け部6の上端部に手をかけて、あまり余計な力をかけずに簡単に身体を支えられ、使い勝手がよい。
【0041】
また、座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6のインナー部材11が連続した形態になっていて、インナー部材11の表面側にクッション材12が一体に形成されているから、部品点数や組立て工数の増加を抑制でき、ひいては製造コストの上昇を抑制できる。
【0042】
さらに、前述した通り、クッション材12はコア層14とスキン層15とを発泡成形して一体に構成したものであり、吸水性の低い表面側のスキン層15の存在によって、クッション材12表面を水や消毒用アルコールで拭き掃除することも簡単に行える。
【0043】
図1及び図4に示すように、実施形態における左右の肘掛け部6は、表面側(内面側)をクッション材12で覆うだけでなく、裏面側(外面側)の前部までクッション材12で覆っている。すなわち、各肘掛け部6における裏面側(外面側)の前部には、クッション材12が左右外向きに露出している。この場合、クッション材12は、インナー部材11における肘掛け対応部分の前部を巻き込むように覆っている。各肘掛け部6における裏面側(外面側)の前部は、クッション材12のスキン層15が左右外向きに露出している。アウター部材13における肘掛け対応部分の前部は、クッション材12を露出させるように切り欠かれている。
【0044】
このように構成すると、椅子の使用者が把持しやすい各肘掛け部6の前部がクッション材12で覆われているから、椅子から立ち上がったり着座したりするに際して、各肘掛け部6前部の触り心地を向上できる。各肘掛け部6における裏面側(外面側)の前部に吸水性の低いスキン層15が露出するため、当該箇所を水や消毒用アルコールで拭き掃除することも簡単に行える。クッション材のスキン層が分かりやすく露出しているため、水や消毒用アルコールで拭き掃除すべき箇所が判別しやすい。
【0045】
図4及び図9に示すように、実施形態では、座部4、背もたれ部5及び肘掛け部6のアウター部材13が連続した形態になっていて、インナー部材11と同様に、人の腰を包むように前向き凹のシェル状に形成されている。換言すると、アウター部材13は、座対応部分から背もたれ及び肘掛け対応部分にかけて丸みを帯びた形状、すなわち下向き凸の半球状に形成されている。
【0046】
このようにアウター部材13の外形形状に丸みをもたせると、椅子の使用者や周囲の者に視覚的に柔らかな印象を与えられ、リラックスさせる効果が得られる。また、例えば医療施設内で椅子の周囲において、ホースやチューブ等を配管したりコードやケーブル等を配線したりする場合に、これらがアウター部材13に引っ掛かるおそれを抑制できる。
【0047】
図8及び図10に示すように、インナー部材11裏面の前部(座対応部分の裏面前部)には、下向き鉤状の受け爪24の複数個が左右に並べて設けられている。実施形態において、各受け爪24とインナー部材11とは別体に構成されている。各受け爪24は、インナー部材11裏面の前部にねじで締結されている。
【0048】
アウター部材13表面の前部(座対応部分の表面前部)には、インナー部材11側の各受け爪24に下方から嵌まる上向き鉤状の係止爪25の複数個が左右に並べて設けられている。実施形態において、各係止爪25とアウター部材13とは、前述した各受け爪24及びインナー部材11の組合せと同様に別体に構成されている。各係止爪25は、アウター部材13表面の前部にねじで締結されている。各係止爪25は、対応する受け爪24に、弾性に抗しての変形によって嵌まるように構成されている。
【0049】
なお、インナー部材11前部とアウター部材13前部との連結は、実施形態に示した受け爪24と係止爪25との強制嵌合に限るものではなく、図20に示すような下方からのねじ60によって、インナー部材11前部とアウター部材13前部とを共締めする構成であっても構わない。このように構成すると、インナー部材11とアウター部材13との取り外し作業の作業性がよくなる(インナー部材11とアウター部材13とを分離しやすい)。コスト低減にも寄与する。
【0050】
図11に示すように、アウター部材13表面(内面)のうちハンドル穴16の上方には、昇降ハンドル17の基部上端側に設けられた横長穴26に係合する横長係合爪27が形成されている。
【0051】
図8及び図12に示すように、クッション材12における上端側の巻き込み部28(クッション材12においてインナー部材11の上端部(背もたれ対応部分及び肘掛け対応部分の上端部)を巻き込んだ箇所)には、下向き凸状の係合突起29の複数個が左右方向に適宜間隔を空けて並ぶように形成されている。アウター部材13表面の上端部(背もたれ対応部分及び肘掛け対応部分の表面上端部)には、インナー部材11側の各係合突起29が嵌まる上向き凹状の係合凹部30の複数個が左右に並べて形成されている(図9及び図12参照)。
【0052】
実施形態では、各係合突起29の内部に、インナー部材11裏面の上端部に一体形成されたリブ31が収容されている。すなわち、クッション材12の上端部がインナー部材11裏面の上端部に一体形成された各リブ31を覆うことによって、各リブ31を芯材として周囲をクッション材12で覆われた係合突起29が形成されている。
【0053】
クッション材12で覆われた係合突起29と、合成樹脂製のアウター部材13に形成された係合凹部30とを係合させるため、弾性のあるクッション材12によって係合突起29と係合凹部30との係合誤差を吸収できる。その結果、クッション材12、インナー部材11及びアウター部材13からなる三者をガタつきなく連結できる。
【0054】
また、クッション材12で覆われた係合突起29内に、芯材を構成するリブ31を有しているから、弾性のあるクッション材12を用いていても、係合突起29の変形を効果的に抑制でき、係合突起29の強度を確保できる。
【0055】
図12に示すように、係合突起29と係合凹部30とには、係合状態で互いに当接するテーパー面29a,30aが形成されている。クッション材12と一体のインナー部材11とアウター部材13とを連結した状態では、係合突起29と係合凹部30とはテーパー係合している。すなわち、係合突起29と係合凹部30とは、係合状態でお互いのテーパー面29a,30a同士を当接させている。このため、係合突起29と係合凹部30との係合状態でのガタつきをより一層抑制できる。
【0056】
図8図12及び図13に示すように、インナー部材11において各係合突起29の下方には、係合突起29と係合凹部30との係合状態で、係合凹部30を下方から係合支持する補助爪37が突出形成されている。補助爪37の存在によって、係合突起29と係合凹部30との係合状態を安定的に保持している。
【0057】
上記の構成において、クッション材12と一体のインナー部材11裏面の座対応部分に、脚支柱2付きの座受け10を締結し、アウター部材13の座対応部分に脚支柱2を差し入れてから、横長穴26と横長係合爪27とを係合させつつ、係合突起29と係合凹部30とを係合させ、その後、受け爪24と係止爪25とを弾性変形によって強制係合させる。その結果、クッション材12と一体のインナー部材11とアウター部材13とが連結される。
【0058】
なお、実施形態では、クッション材12の巻き込み部28に係合突起29を設け、アウター部材13に係合凹部30を設けているが、これに限らず、クッション材12の巻き込み部28に係合凹部30を設け、アウター部材13に係合突起29を設けるようにしてもよい。実施形態のように、クッション材12の巻き込み部28に係合突起29を設けるほうが、係合凹部30を設けるよりも形成が容易であるという利点がある。
【0059】
また、図21に示すように、インナー部材11の裏面上端部に一体形成されたリブ31の一部を、係合突起29のテーパー面29aから露出させ、当該リブ31の露出部分が係合凹部30のテーパー面30aに当接(テーパー係合)するように構成してもよい。このように構成すると、係合凹部30に対する係合突起29の位置決め(位置合わせ)をしっかりと行えると共に、係合突起29の変形抑制により一層効果的である。従って、係合突起29と係合凹部30との係合を的確に行える。
【0060】
さて、前述した通り、脚支柱2におけるロッド8の上端部には、金属板製の座受け10が水平回動可能に装着されていて、当該座受け10によって座部4が水平回動可能に支持されている。
【0061】
図15及び図16に示すように、実施形態における脚支柱2のロッド8には、円筒状のロッドホルダー38が被嵌して固定されている。ロッドホルダー38の外周下部には、半径外向きに突出する下フランジ39が形成されている。下フランジ39の上面側には、環状のワッシャー40が被嵌されている。
【0062】
ロッドホルダー38の外周側には、円筒状のガイドホルダー41が被嵌して固定されている。ガイドホルダー41の外周上部には、半径外向きに突出する上フランジ42が形成されている。ガイドホルダー41の外周側には、円筒状の軸受ブッシュ43がガイドホルダー41回り(ロッド8回り又は脚支柱2回りともいってよい)に回動可能に被嵌されている。ワッシャー40を介しての下フランジ39と上フランジ42とによって、軸受ブッシュ43は上下抜け不能に挟持されている。
【0063】
脚支柱2のロッド8は座受け10の底板部を貫通していて、軸受ブッシュ43の外周側に座受け10の底板部が固定されている。座受け10は上向き開口箱状に形成されていて、インナー部材11裏面の座対応部分に座受け10の上向き開口側が締結されている。従って、座受け10ひいては座部4(座体3)は、軸受ブッシュ43を介して、脚支柱2のロッド8に水平回動可能に軸支されている。換言すると、座受け10ひいては座部4(座体3)は、脚支柱2回りに水平回動可能になっている。
【0064】
図5図13及び図15図18に示すように、座受け10内には、脚支柱2に対する座受け10ひいては座体3の水平回動を阻止するロック機構19が設けられている。実施形態のロック機構19は、脚支柱2におけるロッド8の上端側に固定された被係合体としての固定円板44の凹部45に、座受け10と一体回動する係合体としての回動アーム46の凸部47を係脱させ得るように構成されている。
【0065】
この場合、図15及び図16に示すように、座受け10内におけるロッドホルダー38の外周上端部に、環板状の固定円板44が装着されている。ロッドホルダー38の上フランジ42とスナップリング形の止め輪48とによって、固定円板44は上下抜け不能に挟持されている。固定円板44の外周側のうち座受け10の前板部10aと対峙する箇所に、切り欠き状の凹部45が形成されている。
【0066】
係合体としての回動アーム46は金属製であり、平面視矩形枠状に形成されている。回動アーム46の後枠部46cには、左右横向きの回動軸49が嵌挿されて固定されている。回動軸49は、座受け10における左右両方の側板部10bを貫通して左右両方の側板部10bに回動可能に軸支されている。
【0067】
このため、回動アーム46とは、回動軸49回りであり且つ回動軸49と共に一体回動する。実施形態の回動軸49は、座受け10の後部側(後板部10c寄りの箇所)に位置している。なお、回動軸49は必ずしも、座受け10における左右両方の側板部10bを貫通させなくてもよく、左右一方の側板部10bを貫通させる構成でもよい。また、座受け10における前後板部10a,10cの一方又は両方を、回動軸49が貫通するように構成しても差し支えない。
【0068】
回動アーム46の前部、すなわち回動アーム46の前枠部46aには、固定円板44の凹部45に係合可能な下向き凸状の凸部47が設けられている。凸部47は、座受け10内の前部側(前板部10a寄りの箇所)に位置している。回動アーム46の凸部47と固定円板44の凹部45との回動位相が合致した状態(凸部47を凹部45に対峙させた状態)であれば、回動アーム46を回動軸49回りに上下回動させることによって、凹部45に凸部47を係脱させることが可能になっている。
【0069】
回動アーム46における横向きの回動軸49が、座受け10の側板部10bを貫通して側板部10bに回動可能に軸支され、解除レバー20が、回動アーム46を回動軸49回りに上下回動させて凹部45に凸部47を係脱させるように、回動軸49の突出端側に連動連結されていると、座受け10の側板部10bには回動軸49支持用の穴を形成するだけでよく、例えば座受け10内外を見通せるような大きな開口穴や切り欠き溝を形成したりする必要がない。
【0070】
従って、ロック機構19と解除レバー20とを連動連結するにおいて、座受け10の強度を十分に確保できる。また、解除レバー20と係合体である回動アーム46とが1本の回動軸49で連動連結されていて、部品点数を抑制したシンプルな構造になっている。
【0071】
さらに、回動軸49が座受け10の後部に設けられ、回動アーム46の前部(前枠部46a)に凸部47が設けられ、凸部47が座受け10内の前部側に位置されていると、回動アーム46の凸部47と回動軸49との間に距離を設けることができ、回動アーム46(凸部47)の上下回動ストロークを大きく取れる。
【0072】
前述した通り、回動アーム46は平面視矩形枠状の形態であるため、脚支柱2の上端側、すなわち当該箇所にある固定円板44や、脚支柱2を伸縮可能なフリー状態に操作するための昇降ユニット50は、平面視で回動アーム46及び回動軸49によって取り囲まれている。このため、昇降ユニット50(脚支柱2に付属する部品)を回避して座受け10内に回動アーム46を配置でき、昇降ユニット50の存在が邪魔にならない。回動アーム46の強度確保も図れる。
【0073】
回動アーム46において前枠部46aと左右の側枠部46bとのコーナー部には、座受け10における左右の側板部10bの内壁に摺接して回動アーム46のガタつきを抑制する合成樹脂製のガイド片51が取り付けられている。各ガイド片51には、回動アーム46の凸部47が固定円板44の凹部45に係合した状態で、座受け10の内底面に当接して回動アーム46の水平な姿勢を維持する当接脚52が下向きに突出するように形成されている。
【0074】
操作具としての解除レバー20は、回動アーム46を回動軸49回りに上下回動させて凹部45に凸部47を係脱させるように、回動軸49における左右の突出端側に連動連結されている。
【0075】
すなわち、解除レバー20は、座受け10における左右の側板部10bに沿って延びる一対のレバー杆53を有している。各レバー杆53の後端部は、回動軸49においてそれぞれ対応する左右の突出端側に連結されている。両レバー杆53の前端部同士は、座受け10外に位置する左右横長のレバー連結杆54によって連結されている。座受け10の前板部10a及び左右両側板部10bは、解除レバー20を構成する左右一対のレバー杆53とレバー連結杆54とによって、平面視で取り囲まれている。
【0076】
座受け10における左右の側板部10bに沿って延びる一対のレバー杆53の後端部を、回動軸49においてそれぞれ対応する突出端側に連結する構成を採用すると、各レバー杆53の前端部(レバー連結杆54ひいては操作部21)と回動軸49との間に距離を設けることができ、各レバー杆53の前端部に対する小さな操作力で、回動アーム46を上下回動させられる。
【0077】
また、両レバー杆53の前端部同士を、座受け10外に位置する左右横長のレバー連結杆54によって連結しているので、回動軸49を含めて解除レバー20を平面視矩形枠状に構成して、解除レバー20の強度確保を図れる。
【0078】
レバー連結杆54における左右両方の先端側には、操作部21が設けられている。前述した通り、各操作部21はアウター部材13裏面の座対応部分を左右に貫通している。従って、解除レバー20における左右一対の操作部21は、座部4裏面の左右両側から露出している。このように、レバー連結杆54における左右両方の先端側に操作部21を設けると、左右の操作部21を簡単な構造で連動させられるという利点がある。
【0079】
レバー連結杆54はアウター部材13内に位置していて、座部4裏面の左右両側からは露出しない。このため、例えば医療施設内で椅子の周囲において、ホースやチューブ等を配管したりコードやケーブル等を配線したりする場合に、これらが解除レバー20に引っ掛かるおそれを抑制できる。
【0080】
また、各操作部21はアウター部材から露出しているが、各操作部21における解除レバー20寄りの端部はアウター部材13内に位置して露出していない。そして、図2及び図3から分かるように、アウター部材13が下向き凸の半球状であることによって、正面視又は背面視で、アウター部材13外形と操作部21下面のなす夾角は鈍角になっているし、アウター部材13外形と操作部21外側面のなす夾角も鈍角になっている。このため、例えばホースやコード等を引き回した際に、アウター部材13の外形形状の丸みと相俟って、各操作部21の露出部分にもホースやコード等が引っ掛かりにくい。
【0081】
実施形態では、操作部21を上方に移動させる解除操作をすると、レバー連結杆54及び左右一対のレバー杆53が回動軸49を支点にして上向き回動するのに連動して、回動アーム46が回動軸49回りに上向き回動する。操作部21から手を離すと、レバー連結杆54及び左右一対のレバー杆53が回動軸49を支点にして自重で下向き回動するのに連動して、回動アーム46が回動軸49回りに下向き回動する。
【0082】
図13及び図15図18に示すように、ロック機構19には、凸部47が凹部45から離脱しても座部4を水平回動させなければ凸部47の凹部45への係合を阻止し、凸部47が凹部45から離脱してから座部4が水平回動した後は凸部47の凹部45への係合を許容するスイッチ部材55を備えている。
【0083】
実施形態のスイッチ部材55は、固定円板44上面のうち凹部45に対峙する箇所に配置されている。スイッチ部材55は、当該箇所に上方から取り付けられたスイッチカバー56で覆われている。
【0084】
スイッチカバー56には、凹部45に向かう開口が形成されていて、当該開口からスイッチ部材55が出没動するように構成されている。換言すると、スイッチ部材55は、凹部45の少なくとも一部を塞ぐ阻止位置(図16及び図18参照)と、凹部45から退避した退避位置(図15及び図17参照)との間で移動可能に構成されている。
【0085】
スイッチ部材55の出没端側は、平面視山形の形態に形成されている。スイッチ部材55のうち平面視山形の部分がスイッチカバー56から出たり入ったりする。スイッチ部材55は、スイッチカバー56内に収容したばね57で、凹部45に向けて常時付勢されている。
【0086】
図16及び図18から分かるように、スイッチ部材55の阻止位置は、ばね57の弾性付勢力によって平面視山形の部分をスイッチカバー56から突出させた状態であり、退避位置は、ばね57の弾性に抗して平面視山形の部分をスイッチカバー56内に収容した状態である。スイッチ部材55は、回動アーム46の凸部47でばね57の弾性に抗してスイッチカバー56内に押し込まれることによって、退避位置におかれる。
【0087】
図17及び図18に示すように、スイッチ部材55における平面視山形の部分には、これが阻止位置にある状態で、座部4を一方方向に水平回動させると凸部47に当たる第1傾斜辺部55aと、座部4を他方方向に水平回動させると凸部47に当たる第2傾斜辺部55bとを有している。
【0088】
そして、各傾斜辺部55a,55bの作用によって、座部4をいずれの方向に水平回動させても、凸部47はスイッチ部材55を退避位置に移動させて、凸部47を凹部45に係合させるように構成されている。
【0089】
すなわち、凸部47が凹部45から離脱してから座部4を一方方向に水平回動させていくと、阻止位置にあるスイッチ部材55の第1傾斜辺部55aに回動アーム46の凸部47が突き当たる。
【0090】
第1傾斜辺部55aは凸部47の進行方向(回動方向)に対して交差するように傾斜しているため、凸部47は第1傾斜辺部55a上を相対的に滑るように進行方向に移動し、スイッチ部材55は凸部47によってばね57の弾性に抗してスイッチカバー56内に押し込まれていく。その結果、スイッチ部材55は退避位置まで没入動し、遮るもののない凹部45に凸部47が係合する。
【0091】
同様にして、凸部47が凹部45から離脱してから座部4を他方方向に水平回動させていくと、阻止位置にあるスイッチ部材55の第2傾斜辺部55bに回動アーム46の凸部47が突き当たる。
【0092】
第2傾斜辺部55bも、第1傾斜辺部55aと同様に、凸部47の進行方向(回動方向)に対して交差するように傾斜しているため、凸部47は第2傾斜辺部55b上を相対的に滑るように進行方向に移動し、スイッチ部材55は凸部47によってばね57の弾性に抗してスイッチカバー56内に押し込まれていく。その結果、スイッチ部材55は退避位置まで没入動し、遮るもののない凹部45に凸部47が係合する。
【0093】
このように、2つの傾斜辺部55a,55bでスイッチ部材55を出没動させる構造を採用すると、構造を簡単化できる利点がある。また、座部4の水平回動を進めていくだけで座部4をロック状態にでき、操作性がよい。なお、スイッチ部材55としては、実施形態のような出没動するタイプに限らず、水平回動するタイプにすることも可能である。
【0094】
上記の構成において、操作部21を上方に移動させる解除操作をすると、レバー連結杆54及び左右一対のレバー杆53が回動軸49を支点にして上向き回動するのに連動して、回動アーム46が回動軸49回りに上向き回動して、固定円板44の凹部45から回動アーム46の凸部47が離脱する。そうすると、押さえのなくなったスイッチ部材55が、ばね57の弾性付勢力によってスイッチカバー56から凹部45の少なくとも一部を塞ぐ阻止位置まで突出する。
【0095】
ここで、座部4を全く水平回動させずに(凹部47と凸部45との回動位相を合致させたままで)そのまま操作部21から手を離すと、レバー連結杆54及び左右一対のレバー杆53が回動軸49を支点にして自重で下向き回動するのに連動して、回動アーム46が回動軸49回りに下向き回動する。しかし、凹部47の上側が阻止位置にあるスイッチ部材55で塞がれているため、凸部47はスイッチ部材55に当接し、凹部45に係合できない。
【0096】
つまり、スイッチ部材55で凸部47の凹部45への係合が阻止され、座部4が再びロックされることがないから、解除レバー20を解除方向に一旦操作するだけで、凸部47の凹部45からの離脱状態を維持でき、その後に凸部47が凹部45に係合するまで、脚支柱2に対して座部4が水平回動可能になる(フリー状態になる)。
【0097】
従って、座部4の水平回動(向き変更)を手早くスムーズに行える。また、ユーザーフレンドリー性にも優れる。脚支柱2に対して座部4が水平回動可能な状態では、回動アーム46の凸部47は固定円板44の上面に当接していて、固定円板44上を摺動することになる。
【0098】
その後、座部4をいずれかの方向に水平回動させていくと、阻止位置にあるスイッチ部材55の各傾斜辺部55a(又は55b)に回動アーム46の凸部47が突き当たり、スイッチ部材55が凸部47によってばね57の弾性に抗してスイッチカバー56内に押し込まれていく。その結果、スイッチ部材55は退避位置まで没入動し、遮るもののない凹部45に凸部47が係合し、脚支柱2に対して座部4が水平回動不能にロックされる(ロック状態になる)。
【0099】
なお、実施形態の回動アーム46は金属製であったが、これに限らず、合成樹脂製に構成してもよい。図22及び図23に示すように、合成樹脂製の回動アーム46にガイド片51を一体形成することが可能になる。この場合、ガイド片51の当接脚52も回動アーム46に一体形成されてよい。回動アーム46の前枠部46aに位置する凸部47はその機能上、高い強度を要するため、別体に構成するのが好ましい。図22及び図23では、回動アーム46の前枠部46aに金属製の凸部47がねじ止めされている。
【0100】
また、実施形態では、操作部21から手を離すと回動アーム46が回動軸49回りに自重で下向き回動する構成であったが、これに限らず、図23に示すような自重に加えて回動アーム46を下向き付勢する付勢ばね61を備えるようにしてもよい。回動アーム46の前枠部46aにアーム側ばね受け62aが前向きに突出形成されている。座受け10における前板部10aの内面側には、アーム側ばね受け62aの上方に、座受け側ばね受け62bが取り付けられている。両ばね受け62a,62bの間に付勢ばね61が挟持されている。この場合、操作部21を上方に移動させる解除操作をすると、回動アーム46が付勢ばね61の弾性に抗して回動軸49回りに上向き回動する。操作部21から手を離すと、回動アーム46が自重と付勢ばね61の弾性復元力とによって回動軸49回りに下向き回動する。
【0101】
本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば解除レバー20の各操作部21自体を上下回動するフリップ式に構成し、操作部21のフリップ動作に連動して、係合体の凸部47が被係合体の凹部45に係脱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 脚部
2 脚支柱
4 座部
5 背もたれ部(上半身支持部)
6 肘掛け部(上半身支持部)
10 座受け
11 インナー部材
12 クッション材
13 アウター部材
14 コア層
15 スキン層
19 ロック機構
20 解除レバー
21 操作部
22 平坦面
28 巻き込み部
29 係合突起
30 係合凹部
44 固定円板
45 凹部
46 回動アーム
47 凸部
49 回動軸
53 レバー杆
54 レバー連結杆
55 スイッチ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23