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  • 特許-電流検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020088100
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181956
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 保
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119315(JP,A)
【文献】特表2003-513596(JP,A)
【文献】実開平07-013040(JP,U)
【文献】特開2017-133928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗器と、前記シャント抵抗器と着脱可能に接続される回路部と、を具備する電流検出装置であって、
前記回路部は、AD変換器と、DA変換器とが絶縁された絶縁アンプと、前記AD変換器に電圧を供給する一次側電源を有する絶縁電源と、オペアンプとを、有し、
前記シャント抵抗器と前記回路部との間には、前記AD変換器に接続される第1グランド端子と、前記絶縁電源の一次側電源のグランドに接続される第2グランド端子とが別々に設けられており、
前記シャント抵抗器と前記回路部との未接続状態では、前記AD変換器の電源が供給されず、前記DA変換器への伝達信号はオフ状態となることを特徴とする電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャント抵抗器を備えた電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パワー半導体装置等の電流を検出するために、シャント抵抗器を備えた電流検出装置が用いられる。
【0003】
特許文献1に示す電流検出装置では、シャント抵抗器と回路部とが、出力端子およびグランド端子を介してコネクタ接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-45152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシャント抵抗器を備えた電流検出装置においては、コネクタが外れていても、未接続状態を判断することができなかった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、コネクタの未接続状態を検知することが可能な電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電流検出装置は、シャント抵抗器と、前記シャント抵抗器と着脱可能に接続される回路部と、を具備する電流検出装置であって、前記回路部は、AD変換器と、DA変換器とが絶縁された絶縁アンプと、前記AD変換器に電圧を供給する一次側電源を有する絶縁電源と、オペアンプとを、有し、前記シャント抵抗器と前記回路部との間には、前記AD変換器に接続される第1グランド端子と、前記絶縁電源の一次側電源のグランドに接続される第2グランド端子とが別々に設けられており、前記シャント抵抗器と前記回路部との未接続状態では、前記AD変換器の電源が供給されず、前記DA変換器への伝達信号はオフ状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電流検出装置によれば、コネクタの未接続状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る電流検出装置(接続時)の一構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電流検出装置(未接続時)の一構成例を示す図である。
図3】比較例に係る電流検出装置(接続時)の一構成例を示す図である。
図4】比較例に係る電流検出装置(未接続時)の一構成例を示す図である。
図5図5aは、本発明の実施の形態において、コネクタの非接続時に検出される電圧信号の波形の一例を示したグラフであり、図5bは、比較例において、コネクタの非接続時に検出される電圧信号の波形の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るシャント抵抗器を備えた電流検出装置について説明する。
【0011】
<本実施の形態の電流検出装置10の回路構成>
図1に示すように、本実施の形態の電流検出装置10は、シャント抵抗器1と、回路部2とを備える。シャント抵抗器1と、回路部2とは、コネクタを介して着脱可能に接続される。
【0012】
図1に示すシャント抵抗器1の構造を限定するものでなく、既存のシャント抵抗器を適用することができる。
【0013】
図1に示すように、シャント抵抗器1と回路部2とは、ケーブル11を介して電気的に接続されている。ケーブル11は、4本用意され、シャント抵抗器1とケーブル11は、第1信号出力端子(コネクタ)T1、第2信号出力端子(コネクタ)T2、第1グランド端子(コネクタ)T3、及び、第2グランド端子(コネクタ)T4を介して接続される。また、回路部2とケーブル11は、第1信号出力端子(コネクタ)T5、第2信号出力端子(コネクタ)T6、第1グランド端子(コネクタ)T7、及び、第2グランド端子(コネクタ)T8を介して接続される。
【0014】
図1に示すように、回路部2は、絶縁電源5、絶縁アンプ6、及び、オペアンプ9等を備える。絶縁電源5は、絶縁型DC/DCコンバータであり、絶縁電源5の一次側電源は、電源電圧がVcc1であり、二次側電源は、電源電圧がVcc2である。
【0015】
図1に示すように、絶縁アンプ6は、AD変換器7(アナログ/デジタル変換部)とDA変換器8(デジタル/アナログ変換部)によって構成されている。本実施の形態において、AD変換器7とDA変換器8の間は、絶縁構成とされる。絶縁アンプ6には、例えば、フォトカプラ、静電カップリングコンデンサーなどの、ΔΣ方式絶縁アンプを用いるのが好ましい。シャント抵抗器1からは高電圧が回路部2に供給されるため、電圧を降下させて図示しないマイコンを適切に動作させるべく絶縁アンプ6を用いている。
【0016】
図1に示すように、回路部2内では、絶縁電源5の一次側電源から、AD変換器7に、電源電圧Vcc1が供給される経路を備え、絶縁電源5の二次側電源から、DA変換器8に、電源電圧Vcc2が供給される経路を備える。このように、電源5は、絶縁アンプ6のAD変換器7用とDA変換器8用とで分けられる。
【0017】
図1に示すように、AD変換器7の入力部と、第1信号出力端子T5及び第2信号出力端子T6との間は、抵抗R1、R2を介して、電気的に接続される。図1に示すように、シャント抵抗器1と回路部2とが接続された状態では、シャント抵抗器1で検出された電圧が、AD変換器7へ入力され、AD変換器7において、アナログ信号からデジタル信号に変換され、DA変換器8に絶縁伝送される。これにより、AD変換器7を高電圧領域、DA変換器8を低電圧領域にできる。
【0018】
DA変換器8では、絶縁伝送されたデジタル信号がアナログ信号に変換される。DA変換器8の非反転出力部及び反転出力部は、抵抗R3、R4を介して、オペアンプ9の各差動入力部に接続されており、アナログ信号(電圧)はオペアンプ9にて、増幅処理される。そして、電流検出信号がオペアンプ9の出力部から出力される。図1に示すように、DA変換器8の反転出力部と、オペアンプ9の(-)差動入力部との間には、抵抗R8、R9の中点電位が抵抗R6を介して入力されるため、電流検出信号の基準電位(シャント抵抗器1の電位差が0であるときに出力される電圧)を0Vからシフトさせることができる。
【0019】
図1に示す本実施の形態では、シャント抵抗器1と回路部2とが4本の信号線(ケーブル11)で接続され、このうち2本がグランド配線である。回路部2には、各グランド配線に接続される第1グランド端子T7と第2グランド端子T8が設けられ、第1グランド端子T7は、AD変換器7のグランドGND1bに接続され、第2グランド端子T8は、絶縁電源5の一次側電源のグランドGND1aに接続される。このように回路部2内では、AD変換器7のグランドGND1bと、絶縁電源5の一次側電源のグランドGND1aとが別々に分かれている。
【0020】
図1に示すように、シャント抵抗器1と回路部2とが接続された状態では、シャント抵抗器1、絶縁電源5、及び、絶縁アンプ6がそれぞれ電気的に接続される。このため、電源入力により、絶縁電源5の一次側電源からAD変換器7に電源電圧Vcc1が供給され、絶縁電源5の二次側電源からDA変換器8及びオペアンプ9に電源電圧Vcc2が供給される。シャント抵抗器1にて検出された電位差は、絶縁アンプ6及びオペアンプ9を経て、電流検出信号として検出される。
【0021】
<本実施の形態におけるコネクタの未接続状態の検知機能>
図2は、本実施の形態の電流検出装置10において、シャント抵抗器1が回路部2から外れた状態を示す。図2では、各ケーブル11と回路部2の各端子T5~T8間が外れた図とされているが、各ケーブル11とシャント抵抗器1の各端子T1~T4間が外れていてもよい。
【0022】
ところで、シャント抵抗器1と回路部2との間のコネクタの接続状態と未接続状態とが適切に判別される必要がある。しかしながら、図3に示す比較例の電流検出装置20の回路構成では、コネクタの未接続状態を適切に検知することができない問題が生じた。図3図4に示す比較例の電流検出装置20の回路構成について、主に、本実施の形態の電流検出装置10との相違点を中心に説明する。なお、図3図4の比較例において、本実施の形態と同じ個所には同じ符号を付した。
【0023】
図3に示す比較例では、シャント抵抗器1と回路部2との間の信号線は3本であり、うち2本が出力配線であり、1本がグランド配線である。図3に示すように、回路部2内では、絶縁電源5の一次側電源のグランドGND1と、絶縁アンプ6のAD変換器7のグランドGND1は、共通のグランド電位である。したがって、比較例では、第1グランド端子T7は1つのみ設けられる。
【0024】
このため、図4に示すように、シャント抵抗器1と回路部2のコネクタが未接続状態であっても、回路部2内では、絶縁電源5の一次側電源と、絶縁アンプ6のAD変換器7とは電気的に接続された状態にある。よって、電源入力により、AD変換器7には電源電圧Vcc1が供給される。
【0025】
これにより、コネクタの未接続状態でも、図5bに示すように、基準電圧である電流検出信号が出力される。すなわち、AD変換器7には、第1信号出力端子T5、第2信号出力端子T6から電位差0と同じ信号が入ることで、基準電圧が出力されてしまう。例えば、出力範囲が0V~5Vであるとき、基準電圧は中間電位である2.5Vであり、シャント抵抗器1が回路部2から外れていても、基準電位としての2.5Vが出力される。以上により、比較例の電流検出装置20では、コネクタの接続状態及び未接続状態を適切に判別することができない。
【0026】
これに対して、本実施の形態の電流検出装置10では、図1に示すように、シャント抵抗器1と回路部2との間の信号線は4本であり、うち2本が出力配線であり、2本がグランド配線である。これらグランド配線は、AD変換器7のグランドGND1bと、絶縁電源5の一次側電源のグランドGND1aとを別々に分けている。このため、図2のように、シャント抵抗器1と回路部2のコネクタの未接続状態では、絶縁電源5の一次側電源と、絶縁アンプ6のAD変換器7とが電気的に接続されない。したがって、電源入力によっても、AD変換器7に電源電圧Vcc1が供給されない。一方、電源入力によって、絶縁電源5の二次電源側では、DA変換器8に電源電圧Vcc2が供給される。
【0027】
この結果、図2に示す本実施の形態における電流検出装置10において、シャント抵抗器1が回路部2から外れた状態にあると、AD変換器7の電源が供給されない為、DA変換器8への伝達信号はオフ状態となり、+側もしくは-側の最大値と同等となり、図5aの検出波形となる。図5aでは、出力範囲が0~5Vのうち5V以上の異常電圧を示している。この結果、コネクタの未接続状態であることを検知することができる。コネクタの未接続状態をマイコンにて確認することができ、例えば、未接続状態の場合には、警報や光の点滅等により作業者に即座に報知することができる。
【0028】
図1図2に示す本実施の形態では、シャント抵抗器1側と、回路部2側との間にケーブル11を配置し、シャント抵抗器1とケーブル11の間、及び、回路部2とケーブル11の間で、それぞれ、着脱可能な構造としたが、どちらか一方のみ着脱可能な構造であってもよい。また、ケーブル11を用いずに、シャント抵抗器1と回路部2とが直接、端子を介して接続される構造であってもよい。
【0029】
また、回路部2内には、AD変換器7とDA変換器8との間を絶縁した絶縁アンプ6を配置することが好ましいが、抵抗器との組み合わせなどにより、AD変換器7側を高電圧領域、DA変換器8側を低電圧領域に制御できる構成であってもよい。ただし、電流検出の安定性を確保するうえで、絶縁アンプ6を用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、シャント抵抗器と回路部とが着脱可能な電流検出装置において、コネクタの未接続状態を適切に判断することができる。これにより、接続状態の確認、接続作業を早急に行うことができ、安定した電流検出を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1 :シャント抵抗器
2 :回路部
5 :絶縁電源
6 :絶縁アンプ
7 :AD変換器
8 :DA変換器
9 :オペアンプ
10 :電流検出装置
11 :ケーブル
20 :電流検出装置
Vcc1、2:電源電圧
GND1、1a、1b、2:グランド
R1-R9 :抵抗
T1、T5 :第1信号出力端子
T2、T6 :第2信号出力端子
T3、T7 :第1グランド端子
T4、T8 :第2グランド端子
図1
図2
図3
図4
図5