(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 15/06 20060101AFI20240717BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20240717BHJP
F04C 14/04 20060101ALI20240717BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F04C15/06 B
F04B53/10 B
F04C14/04
F04C15/06 A
F04C15/00 E
(21)【出願番号】P 2020091698
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019142541
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】新井 和浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸介
(72)【発明者】
【氏名】西岡 専太郎
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159178(WO,A1)
【文献】特開2014-025415(JP,A)
【文献】特開昭64-024189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/00-23/14、
53/00-53/22
F04C 2/08- 2/28、
11/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室が形成されたケースと、
前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、
前記ポンプ室内に収容されるとともに、前記回転軸の回転に伴い前記ポンプ室内でオイルを送り出すポンプ部と、
を備え、
前記ケースは、
前記ポンプ室に連通する第一吸入ポートと、
前記第一吸入ポートに連通する第一吸入流路と、
前記ポンプ室に連通する第一吐出ポートと、
前記第一吐出ポートに連通する第一吐出流路と、
前記ポンプ室に連通する第二吸入ポートと、
前記第二吸入ポートに連通する第二吸入流路と、
前記ポンプ室に連通する第二吐出ポートと、
前記第二吐出ポートに連通する第二吐出流路と、
を有し、
前記ポンプ部が一方の方向に回転した場合、前記第一吸入ポートは前記第一吸入流路から前記ポンプ室に前記オイルを吸入して、前記第一吐出ポートは前記オイルを前記第一吐出流路に吐出し、
前記ポンプ部が他方の方向に回転した場合、前記第二吸入ポートは前記第二吸入流路から前記ポンプ室に前記オイルを吸入して、前記第二吐出ポートは前記オイルを前記第二吐出流路に吐出し、
前記第一吸入流路、前記第一吐出流路、前記第二吸入流路および前記第二吐出流路の少なくとも一つは、前記オイルを搬送する流路に、ボールと前記ボールを着座可能な着座部とを有し、スプリングを使用していない逆止弁を備え、
前記オイルを搬送する流路において、前記ボールに対して前記着座部とは反対側に位置する部分には、前記オイルを流しつつ、前記ボールの移動を規制するピン又はメッシュが前記ケースとは別体で設けられ、
前記ケースには、
前記第一吸入ポートと前記ポンプ室との間を接続するとともに、前記ポンプ室内に開口して前記回転軸の軸線回りに延びる円弧状の吸入溝部と、
前記第一吐出ポートと前記ポンプ室との間を接続するとともに、前記ポンプ室内に開口して前記回転軸の軸線回りに延びる円弧状の吐出溝部と、
が形成され、
前記吸入溝部における前記
回転軸の軸線回りの周方向の角度は、前記吐出溝部における前記周方向の角度よりも大きい、
オイルポンプ。
【請求項2】
前記第一吸入ポートと、前記第一吐出ポートと、前記第二吸入ポートと、前記第二吐出ポートとは、鉛直方向における高さが等しい位置に配置されている、
請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項3】
前記第一吸入ポートと前記第一吐出ポートとは、前記ポンプ室を挟んで両側に形成されており、
前記第二吸入ポートと前記第二吐出ポートとは、前記ポンプ室を挟んで両側に形成されている、
請求項1または請求項2に記載のオイルポンプ。
【請求項4】
前記ケースは、ケース本体とケースカバーとを有し、
前記ポンプ室は、前記ケース本体と前記ケースカバーとの間に形成され、
前記第一吸入ポートと前記第一吐出ポートは前記ケース本体に設けられ、
前記第二吸入ポートと前記第二吐出ポートは前記ケースカバーに設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオイルポンプ。
【請求項5】
前記逆止弁の少なくとも一つは、鉛直方向に前記オイルを搬送する流路に設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオイルポンプ。
【請求項6】
前記逆止弁の少なくとも一つは、前記ボールを前記着座部に案内する傾斜面を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の内燃機関、トランスミッション、デファレンシャルギアユニット、トランスアクスル等に用いられるオイルポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関、トランスミッション、デファレンシャルギアユニット、トランスアクスル等には各潤滑部位を潤滑するためにオイルポンプが設けられている。例えば、トロコイド型(内接型)のオイルポンプは、ポンプ室に収容されたアウターロータとインナーロータとの間に形成された空隙部の容積を増減されることでオイルの吸入と吐出を行う。
【0003】
特許文献1には、インナーロータを回転させるシャフトが一定方向に回転する場合も逆回転する場合もオイルを吐出して潤滑を充分に行うことができるトロコイド型のオイルポンプが記載されている。特許文献1に記載のオイルポンプは、シャフトが正回転と逆回転のどちらに回転する場合であってもオイルの吸入と吐出を行うことができ、例えば自動車が前進する場合に加えて後退する場合であっても、各潤滑部位にオイルを圧送できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のオイルポンプは、逆止弁においてスプリングを用いる等の理由により、さらなる省スペース化を実現するには難しい構成であった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、シャフトが正回転と逆回転のどちらに回転する場合であってもオイルを圧送することができ、省スペース化を実現可能なオイルポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の第一の態様に係るオイルポンプは、ポンプ室が形成されたケースと、前記ケースに回転可能に支持された回転軸と、前記ポンプ室内に収容されるとともに、前記回転軸の回転に伴い前記ポンプ室内でオイルを送り出すポンプ部と、を備え、前記ケースは、前記ポンプ室に連通する第一吸入ポートと、前記第一吸入ポートに連通する第一吸入流路と、前記ポンプ室に連通する第一吐出ポートと、前記第一吐出ポートに連通する第一吐出流路と、前記ポンプ室に連通する第二吸入ポートと、前記第二吸入ポートに連通する第二吸入流路と、前記ポンプ室に連通する第二吐出ポートと、前記第二吐出ポートに連通する第二吐出流路と、を有し、前記ポンプ部が一方の方向に回転した場合、前記第一吸入ポートは前記第一吸入流路から前記ポンプ室に前記オイルを吸入して、前記第一吐出ポートは前記オイルを前記第一吐出流路に吐出し、前記ポンプ部が他方の方向に回転した場合、前記第二吸入ポートは前記第二吸入流路から前記ポンプ室に前記オイルを吸入して、前記第二吐出ポートは前記オイルを前記第二吐出流路に吐出し、前記第一吸入流路、前記第一吐出流路、前記第二吸入流路および前記第二吐出流路の少なくとも一つは、前記オイルを搬送する流路に、ボールと前記ボールを着座可能な着座部とを有し、スプリングを使用していない逆止弁を備える。
【0008】
本態様によれば、オイルポンプは、回転軸が正回転と逆回転のどちらに回転する場合であってもオイルを圧送することができる。また、オイルの逆止弁として構成が簡易な逆止弁を用いており、スプリング等の所要スペースが大きな部品が不要であり、省スペース化を実現できる。
【0009】
(2)上記(1)の態様において、前記第一吸入ポートと、前記第一吐出ポートと、前記第二吸入ポートと、前記第二吐出ポートとは、前記鉛直方向における高さが等しい位置に配置されていてもよい。
本態様によれば、上記4つのポートの高さが異なる場合と比較して、高さ方向の寸法を短くすることができる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)の態様において、前記第一吸入ポートと前記第一吐出ポートとは、前記ポンプ室を挟んで両側に形成されていてもよく、前記第二吸入ポートと前記第二吐出ポートとは、前記ポンプ室を挟んで両側に形成されていてもよい。
本態様によれば、上記4つのポートをバランスよく配置でき、オイルポンプ全体の寸法を小さくすることができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記ケースは、ケース本体とケースカバーとを有し、前記ポンプ室は、前記ケース本体と前記ケースカバーとの間に形成され、前記第一吸入ポートと前記第一吐出ポートは前記ケース本体に設けられ、前記第二吸入ポートと前記第二吐出ポートは前記ケースカバーに設けられていてもよい。
本態様によれば、上記4つのポート全てがケース本体とケースカバーのいずれか一方にある場合と比較して、省スペース化を実現できる。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記逆止弁の少なくとも一つは、鉛直方向に前記オイルを搬送する流路に設けられていてもよい。
本態様によれば、逆止弁を構成するボールの自重によって、自ずと着座部に移動するため、逆止弁の構成を簡素化できる。
【0013】
(6)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記逆止弁の少なくとも一つは、前記ボールを前記着座部に案内する傾斜面を有していてもよい。
本態様によれば、オイルの油圧又はボールの自重によって、ボールが傾斜面に案内されながら着座部まで移動する。よって、傾斜面により、ボールの移動をスムーズに行うことができる。このため、逆止弁の構成を簡素化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオイルポンプによれば、シャフトが正回転と逆回転のどちらに回転する場合であってもオイルを圧送することができ、かつ省スペース化を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態に係るオイルポンプの分解図である。
【
図3】同オイルポンプのポンプ部側から見たケース本体の正面図および断面図である。
【
図4】同オイルポンプのポンプ部側から見たケースカバーの正面図および断面図である。
【
図6】オイルが通過する第一吐出流路等の逆止弁を示す図である。
【
図8】第二実施形態に係るオイルポンプのポンプ部側から見たケース本体の正面図である。
【
図9】同オイルポンプのポンプ部側から見たケースカバーの正面図である。
【
図10】同オイルポンプのポンプ部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
本発明の一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。本実施形態に係るオイルポンプ100は、例えば車両のエンジンルーム、特にデファレンシャルギアユニット等に搭載される。オイルポンプ100は、エンジンの回転に応じてオイルパンからオイルを汲み上げた後、オイルの供給対象である潤滑部材や冷却部材、油圧デバイス等に送出する。なお、オイルポンプ100は、車両以外に搭載されていてもよい。
【0017】
<オイルポンプ100>
図1は、本実施形態に係るオイルポンプ100の分解図である。
オイルポンプ100は、いわゆるトロコイド型(内接型)のオイルポンプであり、ケース10と、ポンプ部3と、回転軸4と、を備えている。以降の説明では、回転軸4の延在方向をX方向、オイルポンプ100にオイルが汲み上げられる垂直方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する水平方向をY方向として説明する。
【0018】
<回転軸4>
回転軸4は、エンジンのプロペラシャフトに接続されている。プロペラシャフトの回転により、回転軸4はX方向を回転軸方向として回転してインナーロータ31を回転させる。なお、回転軸4は、クランクシャフトの他、カムシャフト等の任意の部材に接続できる。以降の説明において、回転軸4の軸線を「軸線O2」とする。
【0019】
<ケース10>
図2は、オイルポンプ100のX方向の断面図である。
ケース10は、ケース本体1とケースカバー2とを有している。ケース本体1とケースカバー2とは接合固定されており、ケース本体1とケースカバー2との間にはポンプ室POが形成されている。ポンプ室POにはポンプ部3が配置されている。回転軸4はケース本体1およびケースカバー2を貫通している。
【0020】
<ケース本体1>
図3(A)は、ポンプ部3側から見たケース本体1の正面図である。
図3(B)は、
図3(A)に示すケース本体1のI-I断面の断面図である。
図3(C)は、
図3(A)に示すケース本体1のII-II断面の断面図である。
ケース本体1は、箱型に形成されており、本体側回転軸差込孔11と、本体側凹部12と、第一吸入流路13と、第一吸入ポート15と、第一吐出ポート16と、第一吐出流路17と、オイル吸込口1Aと、オイル吹出口1Bと、を有する。
【0021】
本体側回転軸差込孔11(
図2参照)は、ケース本体1をX方向に貫通する孔であり、回転軸4が差し込まれる。回転軸4の外径は本体側回転軸差込孔11の内径よりわずかに小さく、回転軸4は本体側回転軸差込孔11を貫通した状態で回転できる。
【0022】
本体側凹部12は、X方向の第一側(以降、「X1方向」という)に開口する凹部である。本体側凹部12は、ポンプ収容部120と、第一吸入溝部121と、第一吐出溝部122と、を有する。本体側凹部12は後述するカバー側凹部22とともにポンプ室POの外郭を形成する。
【0023】
ポンプ収容部120は、ポンプ部3が収容される領域である。ポンプ収容部120は、内周面がX方向から見て軸線O1を中心とする円形状に形成されることで、筒状の空間とされている。軸線O1は軸線O2と平行である。X方向から見て軸線O1から偏心した軸線O2を中心として本体側回転軸差込孔11が形成されている。
【0024】
第一吸入溝部121は、X方向の第一側と反対側(以降、「X2方向」という)に窪む溝部であり、ポンプ収容部120にオイルを搬送する経路である。第一吸入溝部121は、ポンプ収容部120と比較してX2方向にさらに窪んでいる。第一吸入溝部121は、直線溝部121aと、円弧溝部121bとを有している。
【0025】
直線溝部121aは、
図3に示すように、Y方向に沿って直線状に形成されている。第一直線溝部のY方向の第一側(以降、「Y1方向」という)には本体側回転軸差込孔11が位置している。
円弧溝部121bは、直線溝部121aのY1方向の端部に形成されており、本体側回転軸差込孔11に沿って円弧状に形成されている。X方向から見た場合の円弧溝部121bの溝の幅は、軸線O2時計回りに進むに従って広くなる。
【0026】
第一吐出溝部122は、X2方向に窪む溝部であり、ポンプ収容部120からオイルを搬送する経路である。第一吐出溝部122は、ポンプ収容部120と比較してX2方向にさらに窪んでいる。第一吐出溝部122は、直線溝部122aと、円弧溝部122bとを有している。
【0027】
直線溝部122aは、
図3に示すように、Y方向に沿って直線状に形成されている。直線溝部122aのY方向の第一側と反対側(以降、「Y2方向」という)には本体側回転軸差込孔11が位置している。
円弧溝部122bは、直線溝部122aのY2方向の端部に形成されており、本体側回転軸差込孔11に沿って円弧状に形成されている。X方向から見た場合の円弧溝部122bの溝の幅は、軸線O2反時計回りに進むに従って広くなる。円弧溝部122bの周方向角度βは、円弧溝部121bの周方向角度αよりも小さい。
【0028】
第一吸入流路13は、第一吸入ポート15にオイルを搬送する流路である。第一吸入流路13は、第一吸入口13aと、第一吸入第一流路13bと、第一吸入第二流路13cと、を有する。第一吸入第二流路13cには、第一吸入流路逆止弁14が形成されている。
【0029】
第一吸入口13aは、ケース本体1に形成された開口であり、X1方向に開口している。第一吸入口13aは、オイルパンからオイル吸込口1Aを経由して汲み上げたオイルが進入する開口である。第一吸入口13aは第一吸入第一流路13bに通じている。また、第一吸入口13aは、後述する第二吸入口23aに通じている。オイル吸込口1Aはケース本体1に形成された開口であり、Z2方向に開口している。
【0030】
第一吸入第一流路13bは、オイル吸込口1Aから供給されたオイルがY2方向に搬送される流路である。第一吸入第一流路13bは第一吸入第二流路13cに通じている。
【0031】
第一吸入第二流路13cは、第一吸入第一流路13bから供給されたオイルを、Z方向の上側である第一側(以降、「Z1方向」という)に搬送する流路である。第一吸入第二流路13cは、第一吸入ポート15に通じている。第一吸入第二流路13cには、第一吸入流路逆止弁14が形成されている。
【0032】
第一吸入流路逆止弁14は、Z1方向へオイルを流すことができ、Z1方向の反対側(以降、「Z2方向」という)への逆流を制限する逆止弁である。第一吸入流路逆止弁14は、ボールBと、着座部Sと、ピンPと、を有する。
【0033】
着座部Sは、第一吸入第二流路13cの内周面に設けられた円環部である。着座部Sの内径は、ボールBの外径よりも小さく、ボールBは着座部Sの内側を通過できない。ボールBが着座部Sの内周縁に接触した場合、ボールBと着座部Sは隙間なく接触するため、オイルはZ2方向に流れない。オイルがZ1方向に流れる場合は、ボールBは着座部Sより浮き上がり、オイルはZ1方向に流れる。
【0034】
ピンPは、小円柱形状に形成されており、第一吸入第二流路13cにおいて、着座部SよりZ1方向に設けられている。ピンPは、第一吸入第二流路13cにおいて、オイルの流路の一部を塞いでいる。ピンPは、オイルがZ1方向に流れる場合において、浮上したボールBと接触してボールBがピンPを超えてZ1方向に流されることを防止(抑制)する。なお、ボールBの移動を規制する部材としては、ピンPの他にメッシュ等であってもよい。
【0035】
第一吸入ポート15は、ポンプ室POに対してY2方向に配置されている。第一吸入ポート15は、第一吸入流路13からポンプ室POにオイルが吸入される開口であり、直線溝部121aの底面上においてX1方向に開口している。第一吸入ポート15から吐出されたオイルは、第一吸入溝部121を経由してポンプ収容部120に送られる。
【0036】
第一吐出ポート16は、ポンプ室POに対してY1方向に配置されている。第一吐出ポート16は、ポンプ室POからオイルが吐出される開口であり、直線溝部122aの底面上においてX1方向に開口している。ポンプ収容部120から吐出されたオイルは第一吐出溝部122を経由して第一吐出ポート16から第一吐出流路17に吐出される。
【0037】
第一吐出流路17は、第一吐出ポート16からオイルを搬送する流路である。第一吐出流路17は、第一吸入流路13に対して軸線O1回りで点対称となる位置に配置されている。第一吐出流路17は、第一吐出第一流路17aと、第一吐出第二流路17bと、第一吐出口17cと、を有する。
【0038】
第一吐出第一流路17aは、第一吐出ポート16から吐出されたオイルが、Z1方向に搬送される流路である。第一吐出第一流路17aは第一吐出第二流路17bに通じている。第一吐出第一流路17aには第一吐出流路逆止弁18が形成されている。
【0039】
第一吐出流路逆止弁18は、第一吐出第一流路17aに設けられている点を除いて、第一吸入流路逆止弁14と同様の構成であり、ボールBと、着座部Sと、ピンPと、を有する。
【0040】
第一吐出第二流路17bは、第一吐出第一流路17aから供給されたオイルを、Y2方向に搬送する流路である。第一吐出第二流路17bから吐出されたオイルは、オイル吹出口1Bからデファレンシャルギアなどの潤滑部材に圧送される。オイル吹出口1Bはケース本体1に形成された開口であり、Z1方向に開口している。第一吐出第二流路17bは、第一吐出口17cに通じている。第一吐出口17cは、ケース本体1に形成された開口であり、X1方向に開口している。
【0041】
<ケースカバー2>
図4(A)は、ポンプ部3側から見たケースカバー2の正面図である。
図4(B)は、
図4(A)に示すケースカバー2のIII-III断面の断面図である。
図4(C)は、
図4(A)に示すケースカバー2のIV-IV断面の断面図である。
ケースカバー2は、箱型に形成されており、カバー側回転軸差込孔21と、カバー側凹部22と、第二吸入流路23と、第二吸入ポート25と、第二吐出ポート26と、第二吐出流路27と、を有する。
【0042】
カバー側回転軸差込孔21は、ケースカバー2をX方向に貫通する孔であり、回転軸4が差し込まれる。回転軸4の外径はカバー側回転軸差込孔21の内径よりわずかに小さく、回転軸4はカバー側回転軸差込孔21を貫通した状態で回転できる。
【0043】
カバー側凹部22は、X2方向に開口する凹部である。カバー側凹部22は、第二吸入溝部221と、第二吐出溝部222と、を有する。カバー側凹部22は本体側凹部12とともにポンプ室POの外郭を形成する。
【0044】
第二吸入溝部221は、X1方向に窪む溝部であり、ポンプ収容部120にオイルを搬送する経路である。第二吸入溝部221は、カバー側回転軸差込孔21に沿って円弧状に形成されている。X方向から見た場合の第二吸入溝部221の溝の幅は、軸線O2時計回りに進むに従って広くなる。
【0045】
第二吐出溝部222は、X1方向に窪む溝部であり、ポンプ収容部120からオイルを搬送する経路である。第二吐出溝部222は、カバー側回転軸差込孔21に沿って円弧状に形成されている。X方向から見た場合の第二吐出溝部222の溝の幅は、軸線O2反時計回りに進むに従って広くなる。
【0046】
第二吸入流路23は、第二吸入ポート25にオイルを搬送する流路である。第二吸入流路23は、直線溝部122aに対して第一吐出流路17とは反対側(Z2方向)に延びている。第二吸入流路23は、第二吸入口23aと、第二吸入第一流路23bと、を有する。第二吸入第一流路23bには、第二吸入流路逆止弁24が形成されている。
【0047】
第二吸入口23aは、ケースカバー2に形成された開口であり、X2方向に開口している。第二吸入口23aは、オイルパンからオイル吸込口1Aを経由して汲み上げたオイルが進入する開口である。第一吸入口13aは第一吸入第一流路13bに通じている。また、第二吸入口23aは第一吸入口13aと対向して連通可能に配置される。
【0048】
第二吸入第一流路23bは、第二吸入口23aから供給されたオイルを、Z1方向に搬送する流路である。第二吸入第一流路23bは、第二吸入ポート25に通じている。第二吸入第一流路23bには、第二吸入流路逆止弁24が形成されている。
【0049】
第二吸入流路逆止弁24は、第二吸入第一流路23bに設けられている点を除いて、第一吸入流路逆止弁14と同様の構成であり、ボールBと、着座部Sと、ピンPと、を有する。
【0050】
第二吸入ポート25は、ポンプ室POに対してY1方向に配置されている。第二吸入ポート25は、第二吸入流路23からポンプ室POにオイルが吸入される開口であり、ケースカバー2のうち直線溝部122aと対向する位置にX2方向に開口している。第二吸入ポート25から吐出されたオイルは、第二吸入溝部221を経由してポンプ収容部120に送られる。また、第二吸入ポート25は第一吐出ポート16とX方向で対向して配置される。但し、第一吐出ポート16及び第二吸入ポート25は、直線溝部122a内に連通していればよい。
【0051】
第二吐出ポート26は、ポンプ室POに対してY2方向に配置されている。第二吐出ポート26は、ポンプ室POからオイルが吐出される開口であり、ケースカバー2のうち直線溝部121aと対向する位置にX2方向に開口している。ポンプ収容部120から吐出されたオイルは第二吐出溝部222を経由して第二吐出流路27に吐出される。また、第二吐出ポート26は第一吸入ポート15とX方向で対向して配置される。但し、第一吸入ポート15及び第二吐出ポート26は、直線溝部121a内に連通していればよい。
【0052】
第二吐出流路27は、第二吐出ポート26からオイルを搬送する流路である。第二吐出流路27は、直線溝部121aに対して第一吸入流路13とは反対側(Z1方向)に延びている。第二吐出流路27は、第二吐出第一流路27aと、第二吐出第二流路27bと、第二吐出口27cと、を有する。
【0053】
第二吐出第一流路27aは、第二吐出ポート26から吐出されたオイルが、Z1方向に搬送される流路である。第二吐出第一流路27aは第二吐出第二流路27bに通じている。第二吐出第一流路27aには第二吐出流路逆止弁28が形成されている。
【0054】
第二吐出流路逆止弁28は、第二吐出第一流路27aに設けられている点を除いて、第一吸入流路逆止弁14と同様の構成であり、ボールBと、着座部Sと、ピンPと、を有する。
【0055】
第二吐出第二流路27bは、第二吐出第一流路27aから供給されたオイルを、Y1方向に搬送する流路である。第二吐出第二流路27bは、第二吐出口27cに通じている。
【0056】
第二吐出口27cは、ケースカバー2に形成された開口であり、X2方向に開口している。第二吐出口27cから吐出されたオイルは、オイル吹出口1Bからデファレンシャルギアなどの潤滑部材に圧送される。また、第二吐出口27cは第一吐出口17cと対向して連通可能に配置される。
【0057】
第一吸入ポート15と、第一吐出ポート16と、第二吸入ポート25と、第二吐出ポート26は、高さ(Z方向に位置)が等しい。本実施形態では、第一吸入ポート15と、第一吐出ポート16と、第二吸入ポート25と、第二吐出ポート26と、のそれぞれの中心がZ方向で一致している。但し、第一吸入ポート15と、第一吐出ポート16と、第二吸入ポート25と、第二吐出ポート26は、少なくとも一部がZ方向で重なり合う高さに配置されていればよい。
【0058】
<ポンプ部3>
図5はポンプ部3の正面図である。
ポンプ部3は、ポンプ室POのポンプ収容部120に収容されている。ポンプ部3は、回転軸4の回転に伴いポンプ室PO内を回転することでオイルを送り出す。ポンプ部3は、インナーロータ31と、アウターロータ32と、を有している。ポンプ収容部120に収容されたインナーロータ31とアウターロータ32とは、いわゆるトロコイド型(内接型)ポンプを構成する。
【0059】
インナーロータ31は、回転軸4の中心軸である軸線O2と同軸に配置された筒状に形成されている。インナーロータ31は、インナー筒部33と、外歯34と、を備えている。インナー筒部33は、ポンプ収容部120内において、アウターロータ32の内側に配置されている。外歯34は、インナー筒部33の外周面に形成されている。外歯34は、例えばトロコイド曲線に沿って、又は楕円の組み合わせにて形成されている。
【0060】
アウターロータ32は、軸線O1と同軸に配置された筒状に形成されている。アウターロータ32は、アウター筒部35と、内歯36と、を備えている。アウター筒部35は、ポンプ収容部120内に収容されている。アウター筒部35は、ポンプ収容部120の内周面よりわずかに小さく摺動可能に構成されている。すなわち、アウターロータ32は、軸線O1回りに回転可能に、ポンプ収容部120の内周面に支持されている。内歯36は、アウター筒部35の内周面に形成されている。内歯36は、例えばトロコイド曲線に沿って、又はトロコイド曲線等の包絡線にて形成されている。外歯34の歯数は、内歯36の歯数よりも1つ少なくなっている。
【0061】
<オイルポンプ100の作用>
次にオイルポンプ100の作用を説明する。
プロペラシャフトの回転に伴い、X2方向に見て軸線O2時計回りに回転軸4が回転すると、インナーロータ31が回転軸4と共に軸線O2時計回りに回転する。すると、アウターロータ32がインナーロータ31に噛み合いながらX2方向に見て軸線O1時計回りに回転する。
【0062】
インナーロータ31とアウターロータ32の間に形成された空隙部の体積が第一吸入ポート15位相において徐々に大きくなり負圧が発生して、第一吸入ポート15からポンプ室POにオイルOが吸入される。第一吸入口13aから汲み上げられたオイルOは、第一吸入流路逆止弁14をZ1方向に通過して第一吸入ポート15まで搬送される。
【0063】
また、空隙部の体積が第一吐出ポート16位相において徐々に小さくなり、ポンプ室POから第一吐出ポート16を経由してオイルOが吐出される。第一吐出ポート16から吐出されたオイルOは、第一吐出流路逆止弁18をZ1方向に通過して第一吐出口17cまで搬送される。
【0064】
この時、第二吸入流路23及び第二吐出流路27に作用する油圧の向きは、第一吸入流路13及び第一吐出流路17に作用する油圧の向きと反対になる。そのため、第二吸入流路逆止弁24および第二吐出流路逆止弁28は、オイルOの油圧やボールBの自重によって閉じられた状態を維持する。すなわち、第二吸入ポート25からオイルOは吸入されず、第二吐出ポート26からオイルOは吐出されない。
【0065】
一方、X2方向に見て軸線O2反時計回りに回転軸4が回転すると、インナーロータ31が回転軸4と共に軸線O2反時計回りに回転する。すると、アウターロータ32がインナーロータ31に噛み合いながらX2方向に見て軸線O1反時計回りに回転する。
【0066】
空隙部の体積が第二吸入ポート25位相において徐々に大きくなり負圧が発生して、第二吸入ポート25から直線溝部121aを介してポンプ室POにオイルOが吸入される。第二吸入口23aから汲み上げられたオイルOは、第二吸入流路逆止弁24をZ1方向に通過して第二吸入ポート25まで搬送される。
【0067】
また、空隙部の体積が第二吐出ポート26位相において徐々に小さくなり、ポンプ室POから第二吐出ポート26を経由してオイルOが吐出される。第二吐出ポート26から吐出されたオイルOは、第二吐出流路逆止弁28をZ1方向に通過して第二吐出口27cまで搬送される。
【0068】
この時、第一吸入流路13及び第一吐出流路17に作用する油圧の向きは、第二吸入流路23及び第二吐出流路27に作用する油圧の向きと反対になる。そのため、第一吸入流路逆止弁14および第一吐出流路逆止弁18は、オイルOの油圧やボールBの自重によって閉じられた状態を維持する。すなわち、第一吸入ポート15からオイルOは吸入されず、第一吐出ポート16からオイルOは吐出されない。
【0069】
図6は、Z1方向にオイルが通過する第一吐出流路逆止弁18等を示す図である。
ポンプ部3が時計回りする際、第一吐出流路逆止弁18等をZ1方向に通過するオイルOは、着座部Sに接触するボールBを上側に浮上させることで、オイルOが上方に汲み上げられる経路Rが確保される。一方、オイルOが流れない場合、もしくはポンプ部3が反時計回りする際にオイルOがZ2方向に流れようとする場合は、ボールBの自重もしくはZ2方向の油圧によりボールBは着座部Sに接触し、オイルOがZ2方向に流れる逆流が防止(抑制)される。
【0070】
図3に示すように、円弧溝部121bの周方向角度αは、円弧溝部122bの周方向角度βよりも大きい。そのため、X2方向に見て軸線O2時計回りに回転軸4が回転した時の方が、軸線O2反時計回りに回転軸4が回転した時と比較して、吐出性能が高い。すなわち、回転軸4が正回転する場合と逆回転する場合において吐出性能が異なる。例えば、自動車の通常走行時におけるオイルポンプ100の吐出性能を高く設定し、バック走行時の吐出性能を低く設定してもよい。
【0071】
本実施形態に係るオイルポンプ100によれば、オイルポンプ100は、回転軸4が正回転と逆回転のどちらに回転する場合であってもオイルを圧送することができる。また、オイルの逆止弁として鉛直方向に沿うオイルの経路において構成が簡易な第一吐出流路逆止弁18等を用いており、スプリング等の所要スペースが大きな部品が不要であり、省スペース化を実現できる。
【0072】
本実施形態に係るオイルポンプ100によれば、第一吸入ポート15と、第一吐出ポート16と、第二吸入ポート25と、第二吐出ポート26は、高さ(Z方向に位置)が等しい。そのため、オイルポンプ100は、上記4つのポートの高さが異なる場合と比較して、高さ方向(Z方向)の寸法を短くすることができる。
【0073】
本実施形態に係るオイルポンプ100によれば、第一吸入ポート15と第一吐出ポート16とは、ポンプ室POを挟んで両側に形成されており、第二吸入ポート25と第二吐出ポート26とは、ポンプ室POを挟んで両側に形成されている。そのため、オイルポンプ100は、上記4つのポートをバランスよく配置でき、全体の寸法を小さくすることができる。
【0074】
本実施形態に係るオイルポンプ100によれば、第一吸入ポート15と第一吐出ポート16はケース本体1に設けられ、第二吸入ポート25と第二吐出ポート26はケースカバー2に設けられている。そのため、オイルポンプ100は、上記4つのポート全てがケース本体1とケースカバー2のいずれか一方にある場合と比較して、省スペース化を実現できる。
【0075】
本実施形態に係るオイルポンプ100によれば、第一吸入流路逆止弁14,第一吐出流路逆止弁18,第二吸入流路逆止弁24,または第二吐出流路逆止弁28の少なくとも一つは、鉛直方向にオイルOを搬送する流路に設けられていている。そのため、逆止弁を構成するボールBの自重によって、自ずと着座部Sに移動するため、逆止弁の構成を簡素化できる。
【0076】
(第二実施形態)
次に、
図8、
図9、
図10に基づいて第二実施形態について説明する。なお、以下で説明する第二実施形態において、第一実施形態と対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図8は、第二実施形態に係るオイルポンプのポンプ部側(X1方向)から見たケース本体の正面図である。
図9は、同オイルポンプのポンプ部側(X2方向)から見たケースカバーの正面図である。
図10は、同オイルポンプのポンプ部の正面図である。
図10に示すように、第二実施形態に係るオイルポンプ200は、ベーン型のオイルポンプである。具体的に、本第二実施形態と前述の第一実施形態との相違点は、第二実施形態におけるポンプ部103の構成と、第一実施形態におけるポンプ部3の構成とが異なる点にある。
【0077】
本実施形態において、ポンプ部103は、ロータ81と、複数のベーン82と、ガイドリング83と、を備えている。
【0078】
ロータ81は、軸線O2と同軸に配置された筒状に形成されている。ロータ81は、外径がポンプ収容部120の内径よりも小さい。ロータ81の内側には、ポンプ収容部120内において回転軸4が固定されている。すなわち、ロータ81は、回転軸4の回転に伴いポンプ室PO内を軸線O2回りに回転する。ロータ81には、軸線O2に対して放射状に延びる複数のスリット87が形成されている。各スリット87は、ロータ81の外周面でそれぞれ開口している。
【0079】
ベーン82は、上述した各スリット87内に各別に収容されている。ベーン82は、軸線O2に直交するポンプ径方向にそれぞれスライド移動可能に構成されている。ベーン82の先端面(ポンプ径方向の外側端面)は、ロータ81の回転に伴いポンプ収容部120の内周面を摺動可能に構成されている。
【0080】
ガイドリング83は、ポンプ室PO内において、例えばロータ81に対してX方向の両側に配置されている(
図10では一方のガイドリング83のみを示す)。ガイドリング83は、軸線O1と同軸に配置されている。ガイドリング83は、外径がロータ81の外径よりも小さく、内径が回転軸4の外径よりも大きくなっている。ガイドリング83には、回転軸4におけるX方向の両端部(ロータ81よりも外側に位置する部分)が挿入されている。各ガイドリング83の外周面には、各ベーン82におけるポンプ径方向の内側端面が摺動可能に当接している。したがって、ロータ81及びポンプ収容部120の内周面の間には、各ベーン82によって仕切られた扇状の移送室S1が複数画成される。なお、ガイドリング83に代えて、ベーン82をポンプ径方向の外側に向けて付勢する付勢部材を各スリット87内に設けてもよく、背圧によってベーン82をポンプ径方向の外側に付勢してもよい。
【0081】
図8に示すように、本実施形態において、第一吸入ポート15は、円弧溝部121bの底面上でX1方向に開口している。また、第一吸入流路13は、第一吸入ポート15と第一吸入第二流路13cとを接続する第一接続流路13dを備えている。第一接続流路13dは、ケース本体1の内部に、Y方向に沿って直線状に形成されている。
本実施形態において、第一吐出ポート16は、円弧溝部122bの底面上でX1方向に開口している。また、第一吐出流路17は、第一吐出ポート16と第一吐出第一流路17aとを接続する第二接続流路17dを備えている。第二接続流路17dは、ケース本体1の内部に、Y方向に沿って直線状に形成されている。
【0082】
図9に示すように、本実施形態において、第二吸入ポート25は、第二吸入溝部221の底面上でX2方向に開口している。また、第二吸入流路23は、第二吸入ポート25と第二吸入第一流路23bとを接続する第三接続流路23dを備えている。第三接続流路23dは、ケースカバー2の内部に、Y方向に沿って直線状に形成されている。
本実施形態において、第二吐出ポート26は、第二吐出溝部222の底面上でX2方向に開口している。また、第二吐出流路27は、第二吐出ポート26と第二吐出第一流路27aとを接続する第四接続流路27dを備えている。第四接続流路27dは、ケースカバー2の内部に、Y方向に沿って直線状に形成されている。
【0083】
<オイルポンプ200の作用>
次にオイルポンプ200の作用を説明する。
X2方向に見て、軸線O2時計回りに、回転軸4が回転すると、ロータ81が回転軸4とともに軸線O2時計回りに回転する。すると、各ベーン82がポンプ収容部120の内周面に摺動しながら、スリット87内をポンプ径方向にスライド移動する。これにより、ロータ81の回転に伴い、各移送室S1の容積(体積)は、膨張と圧縮を連続して繰返す。
【0084】
移送室S1の容積は、ロータ81が第一吸入溝部121(第一吸入ポート15)上において、周方向に(軸線O2時計回りに)回転移動するに従い、徐々に大きくなる。移送室S1が大きくなる過程で、移送室S1には負圧が発生する。これにより、第一吸入流路13内のオイルOが第一吸入ポート15を通じて移送室S1(ポンプ室PO)にオイルOが吸引される。
【0085】
移送室S1の容積は、ロータ81が第一吐出溝部122(第一吐出ポート16)上において、周方向に(軸線O2時計回りに)回転移動するに従い徐々に小さくなる。移送室S1が小さくなる過程で、移送室S1内のオイルOが押し出され、ポンプ室POから第一吐出ポート16を経由して第一吐出流路17にオイルOが吐出される。
この時、第二吸入流路逆止弁24および第二吐出流路逆止弁28は閉じられた状態であり、第二吸入ポート25からオイルOは吸入されず、第二吐出ポート26からオイルOは吐出されない。
【0086】
一方、X2方向に見て軸線O2反時計回りに回転軸4が回転すると、回転軸4と共に、ロータ81が軸線O2反時計回りに回転する。すると、第二吸入ポート25からオイルOは吸入され、第二吐出ポート26からオイルOは吐出される。
この時、第一吸入流路逆止弁14および第一吐出流路逆止弁18は閉じられた状態であり、第一吸入ポート15からオイルOは吸入されず、第一吐出ポート16からオイルOは吐出されない。
【0087】
本実施形態のように、ベーン型のポンプ部103を用いた場合においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。ベーン型のポンプ部103は、低速回転でもオイルOを高圧力で移送することができるので、油圧を適正にコントロールすることができる。また、ベーン型のポンプ部103は、脈動低減に優れている。
なお、本実施形態において、ロータ81の軸線O2が、ポンプ室POの軸線O1に対して移動可能な可変容量型の構成であってもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0089】
(変形例1)
例えば、上記第一実施形態ではトロコイド型(内接歯車)のオイルポンプを採用し、上記第二実施形態では、ベーン型オイルポンプを採用した場合について説明したが、ポンプ部の態様はこれに限定されない。ポンプ部には、ギアポンプ(外接歯車)、ピストンポンプ等を使用することができ、どの態様であっても本発明は同等の効果を奏する。すなわち、ポンプ部は、例えばトロコイド型やベーン型のように、回転軸4に固定された回転部(例えば、インナーロータ31やロータ81)を備え、回転部の回転に伴い回転部に対して外側の領域の容積が増減することで、オイルOを送り出すものであればよい。
また、ポンプ部は、ギアポンプのように、ポンプ室内を互いに平行に横断する複数の回転軸と、回転軸にそれぞれ固定されたギアと、を備え、各回転軸の回転に伴いギア同士の噛み合いによってオイルOを送り出す構成であってもよい。
さらに、ポンプ部は、ピストンポンプのように、ポンプ室とは異なる位置に設けられた回転軸と、回転軸の回転に伴いポンプ室内を移動するピストンと、を備える構成であってもよい。
【0090】
(変形例2)
例えば、上記実施形態では、第一吸入流路13、第一吐出流路17、第二吸入流路23および第二吐出流路27のいずれもが、ボールBと着座部SとピンPとを有する逆止弁を備えていたが、オイルポンプが備える逆止弁の態様はこれに限定されない。第一吸入流路、第一吐出流路、第二吸入流路および第二吐出流路の少なくとも一つが、ボールBと着座部SとピンPとを有する逆止弁を備えていればよい。上記4流路のうち当該逆止弁を有さない流路には、スプリング等で構成された別の構造を有する逆止弁が設けられていてもよい。
【0091】
(変形例3)
例えば、上記実施形態では、ボールBと着座部SとピンPとを有する逆止弁は、鉛直方向にオイルを搬送する流路に設けられていたが、オイルポンプが備える逆止弁の態様はこれに限定されない。
図7は、逆止弁の変形例である逆止弁Vを示す図である。逆止弁Vは鉛直方向から傾いた方向にオイルを搬送する流路Fに設けられている。逆止弁Vは、ボールBと着座部SとピンPと傾斜面SLとを有する。傾斜面SLは、円錐形状の内周面と同様の傾斜面であり、着座部SとピンPの間に設けられている。傾斜面SLは、ボールBを着座部Sに案内する。X2方向において、傾斜面SLの下端部より低い位置に着座部Sが位置するため、ボールBは重力により自ずと着座部Sに移動する。逆止弁Vを上方向に通過するオイルOは、着座部Sに接触するボールBを上側に浮上させることで、オイルOが上方に汲み上げられる経路Rが確保される。一方、オイルOが流れない場合もしくは下方向に流れようとする場合は、ボールBの自重や油圧により、ボールBは傾斜面SLにより案内され、着座部Sに接触し、オイルOが下方向に流れる逆流が防止(抑制)される。一番下側の傾斜面SLであっても傾斜面SLより着座部Sの方が低いため、ボールBは自ずと着座部Sに移動する。オイルOの油圧又はボールBの自重によって、ボールBが傾斜面SLに案内されながら着座部Sまで移動する。よって、傾斜面SLにより、ボールBの移動をスムーズに行うことができる。このため、逆止弁Vの構成を簡素化できる。
【0092】
このように、逆止弁Vは、オイルの搬送方向(流路の延在方向)に少なくとも鉛直方向の成分を有する流路に、適宜設けることが可能である。また、逆止弁Vは、オイルOの油圧のみによって動作する構成であれば、水平方向に延びる流路に設けられていてもよい。
【0093】
(変形例4)
例えば、上記実施形態では、円弧溝部121bの周方向角度αは円弧溝部122bの周方向角度βよりも大きく、回転軸4が正回転する場合と逆回転する場合において吐出性能が異なっていたが、ポンプ部の態様はこれに限定されない。円弧溝部121bの周方向角度αと円弧溝部122bの周方向角度βとを一致させ、回転軸4が正回転する場合と逆回転する場合において吐出性能が一致するように構成してもよい。
【0094】
(変形例5)
例えば、上記実施形態では、外歯34および内歯36は山形状と谷形状が周方向に対称な左右対称歯形に形成されていたが、ポンプ部の外歯および内歯の態様はこれに限定されない。ポンプ部の外歯および内歯は左右非対称歯形であってもいい。外歯および内歯に左右非対称歯形を含ませることで、回転軸4が正回転する場合と逆回転する場合において、それぞれ異なる特定の回転数等の条件で、振動や騒音を低減できる。
【符号の説明】
【0095】
100、200…オイルポンプ
120…ポンプ収容部
10…ケース
1…ケース本体
2…ケースカバー
3…ポンプ部
4…回転軸
13…第一吸入流路
14…第一吸入流路逆止弁
15…第一吸入ポート
16…第一吐出ポート
17…第一吐出流路
18…第一吐出流路逆止弁
23…第二吸入流路
24…第二吸入流路逆止弁
25…第二吸入ポート
26…第二吐出ポート
27…第二吐出流路
28…第二吐出流路逆止弁
31…インナーロータ
32…アウターロータ
81…ロータ
82…ベーン
83…ガイドリングPO…ポンプ室
B…ボール
S…着座部
P…ピン