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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】撮影システムおよび撮影制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/74 20230101AFI20240717BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240717BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20240717BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20240717BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240717BHJP
   G03B 19/07 20210101ALI20240717BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240717BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240717BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N23/74
G03B15/00 V
G03B15/03 W
G03B15/05
G03B11/00
G03B19/07
H04N23/60 100
H04N23/56
H04N7/18 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020093989
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021190820
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
(72)【発明者】
【氏名】南 良樹
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 広行
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105431(JP,A)
【文献】特開2005-123798(JP,A)
【文献】特開2005-049629(JP,A)
【文献】特開2014-171204(JP,A)
【文献】特開2009-120008(JP,A)
【文献】国際公開第2020/018772(WO,A1)
【文献】特開2019-158393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00
H04N 23/40-23/959
G03B 15/00
G03B 15/03
G03B 15/05
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に設置され、車内の被写体を所定の撮影範囲内で撮影する撮影手段と、
前記所定の撮影範囲を照射可能な複数の照明手段と、
前記所定の撮影範囲内に向けて前記複数の照明手段によって照射される光線の干渉を防ぐ光干渉防止手段と、
少なくとも前記撮影手段および前記照明手段を制御する制御手段と、
を備え
前記複数の照明手段によって照射される光線の波長はそれぞれ同じであり、
前記光干渉防止手段は、前記複数の照明手段を時分割で発光させる発光制御手段を備える撮影システム。
【請求項2】
前記光干渉防止手段は、前記複数の照明手段の各々から射出される光線の帯域が重ならないように分離するバンドパスフィルタを備える請求項に記載の撮影システム。
【請求項3】
複数の前記撮影手段を、各撮影手段が備える諸元と共に登録する諸元登録手段と、
前記各撮影手段が備える諸元に基づいて、前記各撮影手段の撮影順序を設定する撮影スケジューリング手段と、
前記撮影スケジューリング手段で設定された撮影スケジューリング情報に基づいて、前記複数の照明手段および前記撮影手段を制御して撮影を実行する撮影実行手段と、
を備える請求項1または請求項2に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記撮影手段は、車載カメラで構成され、
前記照明手段は、発光タイミングを変更可能なLED照明器具で構成される請求項1から請求項の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項5】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の撮影システムの制御手段で実行され、
複数の撮影手段を、各撮影手段が備える諸元と共に登録する諸元登録過程と、
前記各撮影手段が備える諸元に基づいて、前記各撮影手段の撮影順序を設定する撮影スケジューリング過程と、
前記撮影スケジューリング過程で設定された撮影スケジューリング情報に基づいて、複数の照明手段および前記撮影手段を制御して撮影を実行する撮影実行過程と、
を有する撮影制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラ等に適用可能な撮影システムおよび撮影制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラ等によって乗客などの被写体を撮影し、個別認識等を行う技術が提案されている。
【0003】
ここで、車載カメラ等によって車内を撮影する際には、車両の移動に伴って外部からの入射光量、入射方向が刻々と変化し、適切な露出等の撮影条件も変化していく。
そのため、車内等に設置される照明器具により被写体(乗客等)を照射して露出等を調整し、車載カメラ等により適切な撮影タイミングで撮影する必要がある。
そこで、同期信号に基づいてカメラの撮影タイミング等を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の照明器具(照明手段)から被写体に対して同時に光を照射して撮影を行う場合には、光線同士が相互に干渉して、撮影結果に悪影響を及ぼす場合があった。
より具体的には、光干渉の影響により、露出過多や露出不足により撮影画像の劣化を生じる場合がある。
また、光干渉の影響により、撮影画像に干渉縞が現れたり、カラー画像の場合には色味等に変化を生じたりして、撮影画像の劣化を招く虞もあった。
このような撮影画像の劣化は、例えば撮影画像によって精密な個人認証等を行う場合などに、認証率の低下等につながるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の照明手段を用いて撮影を行う場合に画質劣化を抑制することのできる撮影システムおよび撮影制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る撮影システムは、車両内に設置され、車内の被写体を所定の撮影範囲内で撮影する撮影手段と、前記所定の撮影範囲を照射可能な複数の照明手段と、前記所定の撮影範囲内に向けて前記複数の照明手段によって照射される光線の干渉を防ぐ光干渉防止手段と、少なくとも前記撮影手段および前記照明手段を制御する制御手段と、を備える。
前記光干渉防止手段は、前記複数の照明手段を時分割で発光させる発光制御手段を備えることが好ましい。
前記光干渉防止手段は、前記複数の照明手段の各々から射出される光線の帯域が重ならないように分離するバンドパスフィルタを備えることが好ましい。
【0008】
複数の前記撮影手段を、各撮影手段が備える諸元と共に登録する諸元登録手段と、前記各撮影手段が備える諸元に基づいて、前記各撮影手段の撮影順序を設定する撮影スケジューリング手段と、前記撮影スケジューリング手段で設定された撮影スケジューリング情報に基づいて、前記複数の照明手段および前記撮影手段を制御して撮影を実行する撮影実行手段と、を備えることが好ましい。
前記撮影手段は、車載カメラで構成され、前記照明手段は、発光タイミングを変更可能なLED照明器具で構成されることが好ましい。
【0009】
他の態様に係る撮影制御プログラムは、上述の撮影システムの制御手段で実行され、複数の撮影手段を、各撮影手段が備える諸元と共に登録する諸元登録過程と、前記各撮影手段が備える諸元に基づいて、前記各撮影手段の撮影順序を設定する撮影スケジューリング過程と、前記撮影スケジューリング過程で設定された撮影スケジューリング情報に基づいて、複数の照明手段および前記撮影手段を制御して撮影を実行する撮影実行過程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の照明手段を用いて撮影を行う場合に画質劣化を抑制することのできる撮影システムおよび撮影制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る撮影システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係る撮影システムに適用される車載カメラと照明器具の配置例および照射範囲の例を示す説明図である。
図3】比較例に係る照明器具の照射範囲の例を示す概略説明図である。
図4】実施の形態に係る照明器具を時分割で照射した場合の照射範囲の例を示す概略説明図(a)、(b)である。
図5】実施の形態に係る照明器具にバンドパスフィルタを適用して照射した場合の照射範囲の例を示す概略説明図である。
図6】実施の形態に係る撮影システムで実行される撮影処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図6に示す撮影処理のメイン処理における設定情報読込処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図8】車載カメラの登録テーブルリストの例を示す図表である。
図9図7に示す設定情報読込処理における撮影スケジューリング処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図10】撮影スケジューリングテーブルの一例を示す図表である。
図11】撮影スケジューリングテーブルの他の例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図11を参照して、本発明の実施の形態に係る撮影システムS1等について説明する。
【0013】
(撮影システムの機能構成)
図1の機能ブロック図を参照して、本実施の形態に係る撮影システムS1の機能構成について説明する。
撮影システムS1は、車両V内に設置され、車内の複数の被写体(例えば乗客等)H1などを所定の撮影範囲(A1、A2(図2等参照))内で撮影する車載カメラで構成される撮影手段10(10a、10b…)を備える。
【0014】
また、被写体H1を含む所定の撮影範囲を照射可能な複数の照明手段として発光タイミング等を変更可能なLED照明器具11a、11b…を備える。なお、LED照明器具11a、11b…が発光可能な光線の帯域は、可視光帯域(約360nm~830nm)以外の850nmあるいは950nmの赤外線帯域であってもよい。その際には、LED照明器具11a、11b…には赤外線LEDが用いられ、車載カメラ10a、10b…としては、赤外線帯域を撮影可能な赤外線カメラが用いられる。
【0015】
また、複数のLED照明器具11a、11b…によって、所定の撮影範囲内に向けて照射される光線L1、L2(図2等参照)の干渉を防ぐ光干渉防止手段12を備える。
さらに、車載カメラ10a、10b…およびLED照明器具11a、11b…を制御するマイクロコンピュータ等で構成される制御手段13を備える。
【0016】
ここで、光干渉防止手段12は、複数のLED照明器具11a、11b…を時分割で発光させる発光制御手段120、または複数のLED照明器具11a、11b…の各々から射出される光線の帯域が重ならないように分離するバンドパスフィルタ121の少なくとも一方で構成することができる。なお、発光制御手段120およびバンドパスフィルタ121の詳細については後述する。
【0017】
また、撮影システムS1は、複数の車載カメラ10a、10b…を、各車載カメラ10a、10b…が備える諸元(利用帯域、フレームレート(fps)、露光時間等のデータ等)と共に登録する諸元登録手段14を備える。
【0018】
また、各車載カメラ10a、10b…が備える諸元に基づいて、各車載カメラ10a、10b…の撮影順序を撮影スケジューリングテーブル等に設定する撮影スケジューリング手段15を備える。
【0019】
さらに、撮影スケジューリング手段15で撮影スケジューリングテーブル等に設定された撮影スケジューリング情報に基づいて、複数のLED照明器具11a、11b…および車載カメラ10a、10b…を制御して撮影を実行する撮影実行手段16を備える。
【0020】
また、撮影システムS1は、車載カメラ10a、10b…の撮影画像に所定の画像処を施す画像処理手段17を備える。また、画像処理されたデータに基づいて被写体H1(乗客等)の画像認識を行う画像認識手段18と、画像認識結果等を格納するフラッシュメモリ等で構成されるデータ格納手段19を備える。
なお、各LED照明器具11a、11b…間の発光タイミング信号などの送受信は、有線或いは無線で行ってもよいし、CAN(Controller Area Network)規格等の通信ネットワークを介して行うこともできる。
【0021】
(車載カメラとLED照明器具の配置例等)
図2を参照して、車載カメラとLED照明器具の配置例等について説明する。
なお、図2に示す配置例では、車両Vの車室内の前方側に、2台の車載カメラ10a、10bとLED照明器具11a、11bを設けた構成とした。
【0022】
また、説明の簡略化のため、LED照明器具11aは車載カメラ10aの前面側に設けられる点光源、LED照明器具11bは車載カメラ10bの前面側に設けられる点光源であるものとする。
【0023】
なお、図2に示す例では、LED照明器具11aによる照射範囲と、車載カメラ10aによる撮影範囲は一致しているものとする。同様に、LED照明器具11bによる照射範囲と、車載カメラ10bによる撮影範囲は一致しているものとする。
そして、車両Vの後部座席の左側に着座している乗客を被写体H1とする場合を想定する。
この状態で、LED照明器具11aによって照射される光線L1は、図2に示すような扇状の照射範囲A1となる。
また、LED照明器具11bによって照射される光線L2は、図2に示すような扇状の照射範囲A2となる。
そして、照射範囲A1と照射範囲A2は、一部の領域Bで重なることとなる。
本発明は、この照射範囲の重複領域Bにおける光の干渉を防ぐことを目的として案出されたものである。
【0024】
(照射範囲における光の干渉について)
比較例に係るLED照明器具511a、511bの照射範囲の例を示す概略説明図としての図3を参照して、照射範囲における光の干渉について説明する。
ここで、LED照明器具511a、511bは、所定距離だけ離間された車載カメラ510a、510bの前面側に設けられているものとする。また、LED照明器具511a、511bの照射範囲A11、A12と、車載カメラ510a、510bの撮影範囲は一致しているものとする。
また、LED照明器具511a、511bから照射される光線L11、L12の波長は同じとする。
このような状態で、LED照明器具511a、511bが同時に発光されると、光線L11、L12は、照射範囲A11、A12の一部の領域Cで重なり合う。
【0025】
そして、重複領域Cでは光線L11、L12の波長が同じであるため光干渉を生じ、露出の過多や干渉縞等が発生する。また、カラー画像の場合には色味等に変化を生じて、撮影画像の劣化を招く虞もある。
このように、この重複領域Cを含む撮影画像では、光干渉の影響により、画像劣化を生じる。
このような画像劣化は、例えば撮影画像によって被写体H1(図2参照)としての乗客について、精密な個人認証等を行う場合などに、認証率の低下等につながるという問題を生じる。
【0026】
(時分割発光による干渉防止について)
図4を参照して、時分割発光による干渉防止について説明する。
図4(a)、(b)は、実施の形態に係るLED照明器具11a、11bを時分割で照射した場合の照射範囲の例を示す概略説明図である。
【0027】
ここで、LED照明器具11a、11bは、所定距離だけ離間された車載カメラ10a、10bの前面側に設けられているものとする。また、LED照明器具11a、11bの照射範囲A1、A2と、車載カメラ10a、10bの撮影範囲は一致しているものとする。
また、LED照明器具11a、11bから照射される光線L1、L2の波長は同じとする。
このような状態で、LED照明器具11a→11bの順で照射タイミングをずらして発光させて撮影を行う。
即ち、まず、図4(a)に示すように、LED照明器具11aのみを発光させて、照射範囲(撮影範囲)A1について、車載カメラ10aによる撮影を行う。
【0028】
次いで、所定時間の経過後に、図4(b)に示すように、LED照明器具11bのみを発光させて、照射範囲(撮影範囲)A2について、車載カメラ10bによる撮影を行う。
このような時分割の光照射の制御は、光干渉防止手段12としての発光制御手段120によって行われる。
これにより、照射範囲A1、A2の重複領域Bにおける光干渉の発生を回避することができる。
したがって、車載カメラ10a、10bの撮影画像は、光干渉の影響を受けることがなく、個人認証等にも適した高品質の画像データを得ることができる。
【0029】
(バンドパスフィルタによる干渉防止について)
図5を参照して、バンドパスフィルタによる干渉防止について説明する。
図5は、実施の形態に係るLED照明器具11a、11bにバンドパスフィルタ121a、121bを適用して照射した場合の照射範囲の例を示す概略説明図である。
ここで、LED照明器具11a、11bは、所定距離だけ離間された車載カメラ10a、10bの前面側に設けられているものとする。
また、LED照明器具11aの前面側には、850nm帯のバンドパスフィルタ121aが設けられている。
さらに、LED照明器具11aの前面側には、950nm帯のバンドパスフィルタ121bが設けられている。
【0030】
なお、バンドパスフィルタ121a、121bは、特定波長を透過可能な蒸着膜等を用いた光学式のバンドパスフィルタ、或いは透過する波長、帯域幅を可変可能な電気式のバンドパスフィルタで構成することができる。
【0031】
このような構成により、LED照明器具11a、11bを同時に発光されると、光線L10、L20は、照射範囲A1、A2の一部の領域Bで重なり合うが、それぞれの光線L10、L20の波長が異なるため、光干渉は発生しない。
したがって、車載カメラ10a、10bの撮影画像には、光干渉の影響は生じないので、画像品質を保つことができる。
なお、図4に示す時分割による干渉防止法と、図5にバンドパスフィルタによる干渉防止法とを組み合わせて、より確実な光干渉の防止を図る構成としてもよい。
【0032】
(撮影処理について)
図6を参照して、本実施の形態に係る撮影システムS1で実行される撮影処理について説明する。
ここで、図6は、撮影システムS1で実行される撮影処理の処理手順を示すフローチャートである。
この処理が開始されると、まず、設定情報読込処理のサブルーチンSB1が実行される。
なお、設定情報読込処理のサブルーチンSB1の処理手順については後述する。
【0033】
次いで、ステップS10に移行して、LED照明器具11a、11b…による照射範囲(例えば、図4図5における照射範囲A1、A2等)の認識処理を行ってステップS11に移行する。
【0034】
ステップS11では、撮影実行手段16により、車載カメラ10a、10b…およびLED照明器具11a、11b…を用いて、前出の図4に示す時分割による干渉防止、或いは前出の図5にバンドパスフィルタによる干渉防止を用いて被写体の撮影を実行する。
【0035】
ステップS12では、画像処理手段17によって車載カメラ10a、10で撮影された撮影画像について画像の鮮明化処理等を行った上で、画像認識手段18により被写体の個人認証等の画像認識を行ってステップS13に移行する。
ステップS13では、画像認識結果等のデータをデータ格納手段19に格納して処理を終了する。
【0036】
(設定情報読込処理について)
図7のフローチャートおよび図8を参照して、図6に示す撮影処理のメイン処理における設定情報読込処理のサブルーチンSB1の処理手順について説明する。
ステップS101では、諸元登録手段14に格納されている車載カメラ10a、10b…の諸元データ(利用帯域、フレームレート(fps)、露光時間等のデータ等)を取得してステップS102に移行する。
ここで、諸元データは、図8に例示するような車載カメラの登録テーブルリストのような形式で格納することができる。
【0037】
図8に示す登録テーブルリストの例では、各車載カメラ10a、10b…に、カメラNo.1、2…を付与し、諸元データとして、利用帯域(例えば、850nm、950nm等)、撮影レート(フレームレート)fps(Frames per Second)として例えば5、30、60等、露光時間(例えば、5ms、4ms、3ms等)、割当状況(TRUEまたはFALS)が登録される。
なお、フレームレート(fps)とは、1秒間に使用するフレーム数(コマ数)の静止画が記録されているかを示す数値である。
ステップS102では、LED照明器具11a、11b…に関する照度等のデータを取得してステップS103に移行する。
ステップS103では、車載カメラ10a、10b…およびLED照明器具11a、11b…は正常か否かが判定される。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS104に移行して、再起動等を試行する故障対応処理を行ってからステップS105に移行する。
【0038】
ステップS105では、車載カメラ10a、10b…およびLED照明器具11a、11b…は使用可能か否かが判定され、「Yes」の場合にはステップSSB2に移行し、「No」の場合にはステップS106に移行する。
ステップS106では、車載カメラ10a、10b…またはLED照明器具11a、11b…の異常を記録してステップS107に移行する。
【0039】
一方、ステップS103で「Yes」と判定された場合にはステップSB2の撮影スケジューリング処理のサブルーチンSB2を実行する。なお、撮影スケジューリング処理SB1の処理手順については後述する。
ステップS107では、車載カメラ10a、10b…の全設定が完了したか否かが判定され、「No」の場合にはステップS103に戻る。
また、「Yes」の場合にはステップS108に移行して、撮影設定情報を格納してメイン処理に戻る。
【0040】
(撮影スケジューリング処理について)
図9のフローチャートを参照して、図8に示す設定情報読込処理における撮影スケジューリング処理のサブルーチンSB2の処理手順について説明する。
ステップS201では、車載カメラ10a、10b…の諸元データおよびLED照明器具11a、11b…に関するデータに基づいて、撮影順序に関わる優先順位付けを行う。
【0041】
より具体的には、スケジューリングテーブルの優先順位は、例えば、撮影レートの高さ、露光時間長の長さ等により、各車載カメラ10a、10b…に重み付けを行うことにより設定することができる。
【0042】
これは、撮影タイミングに規則性が有る場合に対応させたり、或いは他のカメラに必要な枠を確保されないようにするためである。なお、同一レートについては同列に扱うようにしてもよい。
【0043】
ステップS202では、優先順位付けは終了したか否かが判定され、「No」の場合にはステップS201に戻り、「Yes」の場合にはステップS203に移行する。
ステップS203では、優先順位等に基づいて撮影スケジューリングテーブルを作成する。
撮影スケジューリングテーブルは、例えば図10図11に示すような構成とすることができる。
【0044】
図10に示す撮影スケジューリングテーブルでは、利用帯域:950nm、露光時間:5msのカメラNo.6(図8参照)について、枠数が180に設定され、実行順序を示す実行No.1、2…が付与されている。そして、各実行No.毎に、実時間が格納されている。
【0045】
図11に示す撮影スケジューリングテーブルでは、利用帯域:850nmのカメラNo.1~5(図8参照)について、枠数が180に設定され、実行順序を示す実行No.1、2…が付与されている。そして、各実行No.毎に、実時間が格納されている。
なお、「実時間」とは、1回の撮影までにかかる実際の時間を表している。
即ち、例えば、1撮影あたりの割り当て時間を5.5ms(1s間に180回撮影)と仮定した場合に、実行回数が1回増えるごとに5.5msずつ増えていくことになる。
ここで、図11における優先順位は、撮影レートの高さと、露光時間長の長さに基づいて設定されている。
即ち、図8に示す登録テーブルリストに基づいて、リスト中でフレームレートが最も高い60fpsであるカメラNo.3を実行No.1に設定している。
次に、2番目にフレームレートが高い30fpsであるカメラNo.2を実行No.2に設定している。
【0046】
次いで、フレームレート30fpsについては、カメラNo.1、No.2およびNo.4が挙げられるが、露光時間が5msとより長いカメラNo.1を実行No.3に設定している。
【0047】
なお、実行No.5、6については、1000ms÷180=5.555…msであるため、露光時間がこれを超える6msの場合には、カメラNo.4を連続した2枠に割り当てている。
ここで、例えば、30fpsを基準とした設定可能撮影周期を、1、5、10、15、30、60、120fpsとした場合を考える。
この場合に、1撮影当たりの割り当て時間を5.5msとすると、1秒当たり180回の撮影が可能となる。
なお、1秒当たりの撮影回数は基準撮影レートの整数倍とする必要がある。
以降同様にして、各実行No.に所定のカメラNo.を割り当てていく。
また、より精細な割り当てを行う場合には、基準レート30fpsの場合に、240枠、300枠というような設定を行うようにしてもよい。
【0048】
ここで、図11に示すスケジューリングテーブルでは、高撮影fpsの撮影カメラ、或いは露光時間が比較的長い撮影カメラを優先して設定している。そのため、このような条件を満たす撮影カメラが優先的に入れ込まれる。
例えば、図8に示すような登録テーブルリストによれば、枠数180のうちの3枠に1回は、最も高撮影fps(図8では、60fps)であるNo.3の撮影カメラが設定される。そのため、図11に示す例では,実行No.4において、No.3の撮影カメラが優先的に割り当てられている。
なお、フレームレート120fpsの車載カメラを利用している場合に、残りの撮影回数は60回となるので、フレームレート60fpsの車載カメラ1台、若しくはフレームレート30fpsの車載カメラ2台を同時に利用することができる。
【0049】
このように、車載カメラの照明による相互の干渉を無くすために、カメラ単位で撮影期間を時分割制御しているので、他のカメラの照明の光干渉の影響を受けないようにできる。
【0050】
また、同期動作を始めた後に、各カメラは自ユニット内の基準クロックに準じて撮影を行うため、撮影周期がずれてしまう場合がある。このような場合には、全体での同期が取れるように、定周期の同期信号を撮影システムS1全体で受信し、撮影周期ずれを防止するようにしてもよい。
【0051】
また、撮影システムS1における撮影スケジュールの共有は、撮影システムS1を構成するユニット間の通信機能を利用して行うようにできる。なお、この際の通信は、電源ライン、映像信号ライン、専用通信線、無線等の通信手段を利用することができる。
【0052】
以上述べたように、本実施の形態に係る撮影システムS1によれば、同一領域内において、複数のLED照明器具11a、11b…と、車載カメラ10a、10b…を用いて撮影する被写体H1の露光条件などを安定させることができ、画質を向上させ、画像認識性能を向上させることができる。
また、大電流を利用する照明の発光タイミングを分散化することで、瞬間最大消費電流値を抑えることができる。
また、撮影範囲内に他のカメラの照明装置が有る環境であっても正常な撮影を行うことが可能となる。
【0053】
さらに、フレームレート30fpsの車載カメラを使用した場合に、1撮影当たりの割り当て時間を5.5sとすると、1バンドあたり、6台のカメラを運用することが可能となる。
【0054】
また、近赤外帯域では、850nm帯、950nm帯の帯域を利用可能であり、上記条件の場合には、単一領域で最大12台の車載カメラを運用することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の撮影システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0056】
S1 撮影システム
H1 被写体
V 車両
10(10a、10b…) 撮影手段(車載カメラ)
11(11a、11b…) 照明手段(LED照明器具)
12 光干渉防止手段
13 制御手段
14 諸元登録手段
15 撮影スケジューリング手段
16 撮影実行手段
120 発光制御手段
121 バンドパスフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11