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特許7521938無線電力伝送システム及び電力波反射方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム及び電力波反射方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240717BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020096936
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021191180
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇気
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-064867(JP,A)
【文献】特開2012-050183(JP,A)
【文献】特開2014-011878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力波を放射する送電機と、
前記電力波を受信するアンテナを備える複数の受電機と、
を備え、
前記受電機は、受信した前記電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態とを切り替え
前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替える無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記受電機は、前記反射状態において前記電力波を受信するアンテナから見た回路のインピーダンスを切り替えることによって、前記第2状態において前記電力波を同位相で反射し、又は、前記第1状態において前記電力波を逆位相で反射する位相変化部と、を備える請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
当該位相変化部は、前記アンテナで受信された電力波を整流する整流部と、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替えるスイッチ部と、を備える請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
当該位相変化部は、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替えるスイッチ部と、前記電力波を前記スイッチ部経由で入力して整流する整流部と、を備える請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
複数の前記受電機の全てのスイッチ部は、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替える請求項3又は4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
複数の前記受電機の一部のスイッチ部は、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替える請求項3又は4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
送電機から放射された電力波を受電機に送信するステップと、
前記受電機のアンテナで受信された電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態と切り替えるステップと、
前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替えるステップと、
前記受電機によって反射された前記電力波を、前記受電機以外の受電機が受信するステップと、
を含む電力波反射方法。
【請求項8】
送電機から放射される電力波を受信するアンテナを備え、
前記電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態とを切り替え、
前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替える受電機。
【請求項9】
送電機から放射された電力波をアンテナで受信するステップと、
前記電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態と切り替えるステップと、
前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替えるステップと、
を含む受電機の電力波反射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線電力伝送システム及び電力波反射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT化が進む中で、センサをはじめとする多数の情報端末を用いて、様々な情報を収集することが求められている。ただしこのような情報端末が増えると、端末への電力供給が困難になる場合がある。特許文献1には、無線電力伝送技術を活用した電源供給システムが開示される。特許文献1の無線電力伝送システムは、無線電力を送電する送電機と、無線電力による給電対象である複数の受電機とを備える。送電機は、無線通信により複数の受電機の充電状態を確認し、充電電力が不足している受電機に対して無線電力の送電方向を変更することによって、給電を優先的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-512677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、送電機が各受電機に対する送電方向を変更する必要があるため、送電機の構成が複雑になる。従って、従来技術では、送電機の構成を簡素化しながら複数の受電機への給電を実現する上での改善の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、送電機の構成を簡素化しながら複数の受電機へ給電ができる無線電力伝送システム、及び電力波反射方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る無線電力伝送システムは、電力波を放射する送電機と、前記電力波を受信するアンテナを備える複数の受電機と、を備え、前記受電機は、受信した前記電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態とを切り替え、前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替える。
【0007】
本開示の一実施例に係る電力波経路変化方法は、送電機から放射された電力波を受電機に送信するステップと、前記受電機のアンテナで受信された電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態と切り替えるステップと、前記反射状態において、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替えるステップと、前記受電機によって反射された前記電力波を、前記受電機以外の受電機が受信するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施例によれば、送電機の構成を簡素化しながら複数の受電機へ給電ができる無線電力伝送システム、及び電力波反射方法を構築できる。
【0009】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る無線電力伝送システム100の構成例を示す図
図2】送電機201の構成例を示す図
図3】本開示の実施の形態に係る受電機202の構成例を示す図
図4】本開示の実施の形態に係る受電機202の動作を説明するためのフローチャート
図5】本開示の実施の形態に係る受電機202の変形例を示す
図6】受電電力量の変化を評価するための準閉空間102を示す図
図7】受電電力量の評価結果を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
[実施の形態]
<無線電力伝送システム100の構成例>
図1は本開示の実施の形態に係る無線電力伝送システム100の構成例を示す図である。無線電力伝送システム100は、準閉空間に電波(高周波電力)を送電する送電機201と、送電機201から準閉空間に向けて放射された電波204を受信する複数の受電機202とを備える。受電機202は、受信した電波204に基づき電力を生成して負荷に供給する機能と、受信した電波204を反射波205として準閉空間へ放射する機能とを備える。準閉空間と受電機202の詳細については後述する。
【0013】
<送電機201>
次に図2を参照して送電機201の構成例について説明する。図2は送電機201の構成例を示す図である。送電機201は、発振部302、制御部303、アンテナ301及び電源部304を備える。
【0014】
発振部302は、例えば、水晶振動子、位相同期回路、増幅回路などで構成される電気回路を備え、当該電気回路により高周波電力(電力波)を生成する。高周波電力の周波数帯は、例えば900MHz帯、2.45GHz帯、5.8GHz帯などのマイクロ波帯である。これらの周波数帯は、送電機201から受電機202までの距離、送電機201のサイズなどに応じて選択される。
【0015】
制御部303は、例えば、メモリ、CPU(Central Processing Unit)、通信デバイスなどの電気回路を備え、当該電気回路により、発振部302で生成した高周波電力の送電量の制御や、発信される高周波電力の周波数帯の切り替えなどを行う。
【0016】
アンテナ301は、発振部302で生成された高周波電力を電波204として準閉空間へ放射する。アンテナ301の種類は、例えば、指向性アンテナ、無指向性アンテナなどである。特定の方向へ長距離送電したい場合には指向性アンテナが使用され、近距離で広い範囲に送電したい場合には無指向性アンテナが使用される。指向性アンテナには、例えば、誘電体基板をGND板とアンテナで挟んだ平面形状のパッチアンテナが使用される。無指向性アンテナには、電気を流す導線などを直線状に伸ばした線形状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナが使用される。
【0017】
電源部304は、送電機201を動作させるための電源を供給する機能を有し、商用交流電源から直流電力を生成する電力変換回路などで構成される。
【0018】
次に図3を参照して受電機202の構成例について説明する。図3は本開示の実施の形態に係る受電機202の構成例を示す図である。図3に示す受電機202は、アンテナ401、整流部402、制御部403、蓄電部405及びスイッチ部406を備える。
【0019】
アンテナ401は、送電機201から放射された電波204を受信し、受信した電波204を高周波電力として整流部402に入力する機能と、電波204を反射波205として準閉空間へ放射する機能とを有する。アンテナ401の種類は、前述したアンテナ301と同様に、例えば、指向性アンテナ、無指向性アンテナなどである。
【0020】
整流部402は、アンテナ401が受信した電波204を直流電力へ変換する。整流部402は、例えば、整流ダイオード、インピーダンス整合回路、フィルタ回路などによって構成される。
【0021】
制御部403は、アンテナ401で受信された電波204の負荷404への供給制御と、当該電波204による蓄電部405への充電制御と、蓄電部405の放電制御と、スイッチ部406の切り替え制御とを行う。
【0022】
負荷404は、例えばIoT(Internet of Things)で活用されるセンサなどである。なお、負荷404はこれに限定されるものではない。
【0023】
蓄電部405は、制御部403を駆動させるのに必要な電力を蓄える蓄電手段である。蓄電部405は、例えば二次電池である。蓄電部405は、制御部403による充電制御により、整流部402から出力される直流電力を蓄える。また蓄電部405は、負荷404の消費電力が整流部402から出力される直流電力を超過する場合、制御部403による放電制御により、蓄電電力を負荷404へ供給する。
【0024】
スイッチ部406は、反射モードのとき、アンテナ401を開放又は接地の状態に切り替え、給電モードのとき、アンテナ401を負荷404に接続するための切り替え手段である。
【0025】
反射モードは、アンテナ401から見た回路側のインピーダンスを切替えることによって、アンテナ401が受信した電波204を同位相で全反射し、又は、受信した電波204を逆位相で全反射するモードである。
【0026】
給電モードは、スイッチ部406を介して整流部402が負荷404に接続された状態で、整流部402の直流電力を負荷404に供給するモードである。
【0027】
開放とは、アンテナ401がGND407と負荷404の何れにも接続しないことで、アンテナ401に接続される回路のインピーダンスが無限大となる状態である。
【0028】
接地とは、アンテナ401をGND407に接続することで、アンテナ401に接続される回路のインピーダンスがゼロとなる状態である。
【0029】
整流部402、制御部403、蓄電部405及びスイッチ部406は、位相変化部610を構成する。位相変化部610は、アンテナ401に受信された電力波の位相を変化させ、位相変化後の電力波を反射波205としてアンテナ401から放射する。
【0030】
なお、受電機202では、整流部402の出力側にスイッチ部406が設けられているため、アンテナ401と整流部402との間にスイッチ部406が設けられる場合に比べて電力損失を低減できる。
【0031】
次に図4を参照して受電機202の動作について説明する。図4は本開示の実施の形態に係る受電機202の動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず制御部403は、蓄電部405に蓄えられた電力により、スイッチ部406の接続先を負荷404側へ切り替えることで、給電モードの状態にする(ステップS1)。これにより、アンテナ601で受信された電波204は、整流部402で直流電力へ変換され、負荷404へ供給される。なお、制御部403は、給電モードにおいて、負荷404への電力の供給と同時に蓄電部405への充電も実施する。
【0033】
制御部403は、給電モードにより、負荷404に十分な電力供給が行われているか否かを判定する(ステップS2)。
【0034】
例えば、負荷404の消費電力が整流部402で変換される電力を超える場合、制御部403は、負荷404に十分な電力供給が行われていないと判定し(ステップS2、NO)、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0035】
例えば、負荷404の消費電力が整流部402で変換される電力未満の場合、制御部403は、負荷404に十分な電力供給が行われていると判定し(ステップS2、YES)、ステップS3の処理を実行する。
【0036】
次に、制御部403は、蓄電部405に蓄えられた電力により、スイッチ部406を反射モードの状態にする(ステップS3)。
【0037】
制御部403は、スイッチ部406を制御することによって、アンテナ401を開放又は接地の状態に交互に切り替える(ステップS4)。この切り替え動作によって、開放時に受信された電波204が同位相で全反射され、接地時に受信された電波204が逆位相で全反射される。全反射された電波204は反射波205として、準閉空間に向けて放射される。準閉空間に放射された反射波205は、受電機202の周囲に存在する1又は複数の受電機202で受信される。1又は複数の受電機202は、反射波205と送電機201から放射された電波204とを受信して、これらを整流部402で整流することで、負荷404への電力供給と蓄電部405への給電を行う。
【0038】
なお、制御部403は、開放と接地を一定周期又はランダムな周期で交互に切り替えるように、スイッチ部406を制御してもよい。これにより、経時的に位相が変化(位相変調)する反射波205を送信することができ、1又は複数の受電機202で受信される反射波205の位相が経時的に変化する。例えば受電機202の位置が変化した場合でも、反射波205を放射する受電機202と、反射波205を受信する受電機202との間のインピーダンスを調整することなく、効率よく電力供給が可能になる。
【0039】
スイッチ部406の切り替え動作によって、蓄電部405の蓄電電力が低下するため、制御部403は、蓄電部405が充電を要する状態であるか否かをモニタする(ステップS5)。
【0040】
例えば、蓄電部405の充電率が所定値(例えば30%)以上のとき、又は、蓄電部405の放電開始時点から一定時間経過していないとき、制御部403は、蓄電部405が充電を要する状態ではないと判定し(ステップS5、NO)、ステップS3以降の処理を繰り返す。
【0041】
例えば、蓄電部405の充電率が所定値(例えば30%)未満になるまで低下し、又は、蓄電部405の放電開始時点から一定時間経過したとき、制御部403は、蓄電部405が充電を要する状態であると判定する(ステップS5、YES)。この場合、制御部403は、給電モードの状態にするため、ステップS1の処理を実行する。
【0042】
なお、これらの処理は、複数の受電機202の全てにおいて実行されてもよいし、複数の受電機202の一部(1又は複数)において実行されてもよい。
【0043】
複数の受電機202の全てにおいてこれらの処理が実行されることで、準閉空間内の何れの箇所においても安定した強度の電波204を受信し得る。
【0044】
複数の受電機202の一部においてこれらの処理が実行されることで、スイッチ部406の切り替え動作などにより消費される電力が抑制されるため、無線電力伝送システム100全体での電力消費量を抑えながら、これらの処理が実行されない場合に比べて安定した強度の電波204を受信し得る。
【0045】
なお、これらの処理は、複数の受電機202の全部又は一部が、互いに同期しながら実行してもよいし、非同期で実行しても良い。
【0046】
複数の受電機202の全部又は一部が、互いに同期しながらこれらの処理を実行することで、これらの処理が実行されない場合に比べて安定した強度の電波204を受信し得る。
【0047】
複数の受電機202の全部又は一部が、非同期でこれらの処理を実行することで、同期を行うための回路及び制御が不要になるため、受電機202の構成が簡素化され、信頼性を向上させつつ、準閉空間内の何れの箇所においても安定した強度の電波204を受信し得る。
【0048】
複数の受電機202の全部又は一部が、例えば、スイッチ部406の切り替えクロックをランダムに発生する乱数発生器を備えることで、スイッチ部406の切り替えタイミングを非同期にさせることができる。これにより、複数の受電機202を統括して制御する必要がなく、簡易な構成で、安定した強度の電波環境を構築できる。
【0049】
図5は本開示の実施の形態に係る受電機202の変形例を示す図である。図5に示される受電機202では、スイッチ部406と整流部402が逆に配置されている。整流部402の入力側にスイッチ部406を配置することにより、アンテナ401に接続されるスイッチ部406により切り替え動作が行われるため、反射波205の伝達効率が向上する。
【0050】
なお、本実施の形態に係る位相変化部610は、スイッチ部406の代わりに、インピーダンス変化部を備えるように構成してもよい。インピーダンス変化部は、例えば、可変コンデンサ、可変コイル、可変抵抗、移相器などにより構成されており、アンテナ401が接続される回路の複素インピーダンスを経時的に変化させる。アンテナ401とGND407との間のインピーダンスを変化させることにより、アンテナ401をGND407に接続する第1状態とアンテナ401をGND407から開放する第2状態とを交互に切り替えることができる。
【0051】
次に図6及び図7を参照して、受電電力のシミュレーション結果について説明する。
【0052】
図6は受電電力量の変化を評価するための準閉空間102を示す図である。図6において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する。X軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。Y軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面は、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面を表す。XZ平面は、X軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面を表す。YZ平面は、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0053】
準閉空間102は、例えば、2つのXY平面と2つのXZ平面とを電波反射面(電波204が反射する面)として、かつ、2つのYZ面を電波無反射面(電波204が反射しない面)とする空間である。準閉空間102には、本実施の形態に係る送電機201及び2つの受電機202(第1受電機202-1及び第2受電機202-2)が配置される。
【0054】
準閉空間102のX軸方向の幅Aは3[m]、準閉空間102のZ軸方向の高さBは1[m]、準閉空間102のY軸方向の奥行きCは1[m]である。送電機201から2つの受電機202(第1受電機202-1及び第2受電機202-2)までのX軸方向の距離Xは2[m]である。第1受電機202-1から第2受電機202-2までのY軸方向の距離Yは0.325[m]である。第1受電機202-1及び第2受電機202-2のそれぞれのアンテナ401には、920MHzを中心周波数として動作するダイポールアンテナが利用される。
【0055】
受電電力のシミュレーションでは、接地(GND接続)と短絡(負荷接続)を切り替えるスイッチ部406を備えた回路を試作し、第2受電機202-2のスイッチ部406を切り替えたときの、第1受電機202-1のSパラメータをシミュレーションにより求め、受電電力量の変化を評価した。
【0056】
図7は受電電力量の評価結果を説明するための図である。図7には、図6の準閉空間102において第2受電機202-2が電力反射動作を実行した場合における、第1受電機202-1における受電電力量の評価結果が示される。図7の縦軸はSパラメータを表し、図7の横軸は周波数を表す。
【0057】
点線は、第1受電機202-1及び第2受電機202-2のそれぞれのスイッチ部406が短絡状態(負荷接続)となっている場合における第1受電機202-1のSパラメータ1202を表す。
【0058】
実線は、第1受電機202-1のスイッチ部406が短絡状態(負荷接続)であり、かつ、第2受電機202-2のスイッチ部406が接地状態(GND接続)となっている場合における第1受電機202-1のSパラメータ1203を示す。
【0059】
第2受電機202-2が電力反射動作を実行した場合における、第1受電機202-1の受電電力量は、Sパラメータ1202とSパラメータ1203との差分によって計算できる。
【0060】
例えば、Sパラメータ1203が最大となる周波数における、Sパラメータ1203とSパラメータ1202との差分は、2.1[dB]である。これは、第1受電機202-1の受電電力が、第2受電機202-2が電力反射動作を開始する前の受電電力の約1.9倍になることを示す。図7によれば、準閉空間102において電力反射機能を有する受電機202を用いることによって、受電電力が向上することが分かる。
【0061】
以上に説明したように本実施の形態に係る受電機202は、負荷に対して電力を供給する給電状態から電力波を反射する反射状態へ切り替えることにより、周囲の受電機202に対して反射波205を放射できるため、周囲の受電機202への電力供給量を高めることができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る無線電力伝送システム100によれば、送電機201が複数の受電機202のそれぞれに対して電波204の放射方向を絞り込む制御が不要になる。このため、電波204の指向性が高くなることによって、周辺機器との電波干渉が生じたり、人体への影響が生じたりすることを抑制しながら、周囲の受電機202への電力供給量を高めることができる。
【0063】
また、電波204の放射方向を絞り込む制御が不要になることによって、周辺機器と電波干渉を回避するための機能が不要になるため、送電機201の構成が簡素化されて、送電機201の製造コストの上昇を抑制できると共に、信頼性を向上させることができる。
【0064】
また、電波204の放射方向を絞り込む制御が不要になることによって、電波204の放射方向における電力密度の上昇を抑制できるため、電波法などの規制に制限されることなく、無線電力伝送システム100を構築できる。
【0065】
また、特定の受電機202が周囲の受電機202に対して、反射波205を放射することにより、壁などで電波204が反射してしまい特定の受電機202に電波204が到達しないということを防止できる。また、建物の窓ガラスを電波204が透過してしまい、特定の受電機202に電波204が到達しないということも防止できる。
【0066】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0067】
(1)無線電力伝送システムは、電力波を放射する送電機と、前記電力波を受信する複数の受電機と、を備え、前記受電機は、受信した前記電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態とを切り替える。
【0068】
(2)前記受電機は、前記電力波を受信するアンテナと、前記反射状態において前記電力波を受信するアンテナから見た回路のインピーダンスを切り替えることによって、前記電力波を同位相で反射し、又は、前記電力波を逆位相で反射する位相変化部と、を備える。
【0069】
(3)当該位相変化部は、前記アンテナで受信された電力波を整流する整流部と、当該整流部の出力側に接続され前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替えるスイッチ部と、を備える。
【0070】
(4)当該位相変化部は、前記アンテナをグランドに接続する第1状態と前記アンテナを当該グランドから開放する第2状態とを交互に切り替えるスイッチ部と、前記アンテナで受信された電力波を当該スイッチ部経由で入力して整流する整流部と、を備える。
【0071】
(5)複数の前記受電機の全てのスイッチ部は、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替える。
【0072】
(6)複数の前記受電機の一部のスイッチ部は、前記第1状態と前記第2状態とを交互に切り替える。
【0073】
(7)電力波反射方法は、送電機から放射された電力波を受電機に送信するステップと、前記受電機で受信された電力波に基づき負荷に対して電力を供給する給電状態と受信した前記電力波を反射する反射状態と切り替えるステップと、前記受電機によって反射された前記電力波を、前記受電機以外の受電機が受信するステップと、を含む。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の一実施例は、無線電力伝送システムに好適である。
【符号の説明】
【0075】
100 :無線電力伝送システム
102 :準閉空間
201 :送電機
202 :受電機
202-1 :第1受電機
202-2 :第2受電機
204 :電波
205 :反射波
301 :アンテナ
302 :発振部
303 :制御部
304 :電源部
401 :アンテナ
402 :整流部
403 :制御部
404 :負荷
405 :蓄電部
406 :スイッチ部
407 :GND
601 :アンテナ
610 :位相変化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7