(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ベルトストレージ
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20240717BHJP
E21F 13/02 20060101ALI20240717BHJP
B65G 21/14 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/02
B65G21/14 A
(21)【出願番号】P 2020114021
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000228707
【氏名又は名称】日本コンベヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】布村 進
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅文
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017319(JP,A)
【文献】特開平06-329226(JP,A)
【文献】特開平04-269297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0010290(US,A1)
【文献】特開昭56-070207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
E21F 13/02
B65G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削時の掘削ズリを搬送する延伸ベルトコンベヤにおいて、コンベヤベルトの余長部を貯蔵することにより搬送距離を延長するためのベルトストレージであって、
固定状態で設置された固定式プーリーバケットと、移動可能に設けられた移動式プーリーバケットとを含み、前記固定式プーリーバケットと前記移動式プーリーバケットとの間に前記コンベヤベルトが架け渡されることにより前記余長部を操出可能に貯蔵するベルト貯蔵部と、
前記移動式プーリーバケットを、索具を介してウインチ方式で牽引することにより前記コンベヤベルトに張力を付与する牽引機構と、を備え、
前記牽引機構は、前記索具の一方端部が接続され、前記索具を巻き取るウインチドラムと、前記索具の他方端部に接続され、前記索具に作用する力を計測する計測部と、
前記ウインチドラムを回転させる駆動部と、を含
み
前記駆動部は、前記ウインチドラムを回転駆動する電動モータと、前記電動モータを停止状態において冷却する冷却機構と、を有する、ベルトストレージ。
【請求項2】
前記駆動部は、前記計測部の計測結果に基づいて、前記コンベヤベルトに作用する張力が一定範囲内に維持されるように牽引力を発生するように構成されている、請求項1に記載のベルトストレージ。
【請求項3】
前記駆動部は
、前記電動モータと前記ウインチドラムとの間に設けられた減速
機を有する、請求項2に記載のベルトストレージ。
【請求項4】
前記牽引機構は、前記索具を巻き取るウインチドラムと、前記索具が巻き掛けられた1つ以上の動滑車と、前記ウインチドラムから延びる前記索具の方向を前記動滑車に向けて案内する1つ以上の定滑車と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のベルトストレージ。
【請求項5】
前記移動式プーリーバケットは、フレームによって所定の高さ位置に保持されたレール上に移動可能に設置されるとともに、前記動滑車が取り付けられており、
前記ウインチドラムは、前記レールよりも下方に配置され、前記定滑車を介して前記動滑車へ案内される索具が、前記ウインチドラムよりも上方を通過するように設けられている、請求項4に記載のベルトストレージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトストレージに関し、特に、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤに設置されるベルトストレージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削時の掘削ズリ(地山から掘削された岩塊、土砂など)を搬送するための延伸ベルトコンベヤに設置されるベルトストレージが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、フレームに平行に設けた一対のレール、一対のレールに沿って移動する一対の台車、一対の台車をそれぞれ牽引する一対の牽引機構を備えた、連続ベルトコンベヤの延伸用ベルト格納装置(ベルトストレージ)が開示されている。一対の台車の各々には、複数のプーリーが設けられている。連続ベルトコンベヤのコンベヤベルトが、一対の台車のプーリー間で順次折り返されて架け渡されることにより、格納される。一対の台車が牽引機構によりそれぞれ離隔する方向に牽引されて、コンベヤベルトに張力が付与される。
【0004】
上記特許文献1では、牽引機構が、電動モータ等の回転駆動源によってウインチホイールを回転駆動し、台車に取り付けられた多段のイコライザシーブに巻き掛けたワイヤロープを巻き取ることにより、台車を牽引する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、一対の台車を、それぞれワイヤロープにより牽引する構成のため、同等の構成の牽引機構を2組設置する必要がある。また、一対の台車にも、それぞれレール上を移動するための構造が必要である。このため、装置構成が複雑であり、ベルトストレージの全長が大きくなるという課題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置構成を簡素化し全長を抑制することが可能なベルトストレージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明によるベルトストレージは、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送する延伸ベルトコンベヤにおいて、コンベヤベルトの余長部を貯蔵することにより搬送距離を延長するためのベルトストレージであって、固定状態で設置された固定式プーリーバケットと、移動可能に設けられた移動式プーリーバケットとを含み、固定式プーリーバケットと移動式プーリーバケットとの間にコンベヤベルトが架け渡されることにより余長部を操出可能に貯蔵するベルト貯蔵部と、移動式プーリーバケットを、索具を介してウインチ方式で牽引することによりコンベヤベルトに張力を付与する牽引機構と、を備え、牽引機構は、索具の一方端部が接続され、索具を巻き取るウインチドラムと、索具の他方端部に接続され、索具に作用する力を計測する計測部と、ウインチドラムを回転させる駆動部と、を含み、駆動部は、ウインチドラムを回転駆動する電動モータと、電動モータを停止状態において冷却する冷却機構と、を有する。なお、本明細書において「索具」とは、牽引に用いるロープなどの線状部材の総称を意味し、構成材料および構造を問わない広い概念である。たとえば、索具は、ファイバーロープ、ワイヤーロープ、チェーン(鎖)、ローラチェーンを含みうる。
【0009】
この発明によるベルトストレージでは、上記のように、ベルト貯蔵部の一方のプーリーバケットを固定式とし、他方のプーリーバケットを移動式とすることによって、一対のプーリーバケットの両方に移動のための構造を設ける必要がないとともに、牽引機構を移動式プーリーバケットに設けるだけで足り、固定式プーリーバケットには牽引機構を設ける必要がない。このため、両方のプーリーバケットを牽引する構成と比較して、プーリーバケットを移動させるための構造の数と、牽引機構の数とを、それぞれ半減できる。これらの設備数が減少するので、装置構成を簡素化できるとともに、設備の全長も抑制できる。なお、移動式プーリーバケットだけが移動するので、両方のプーリーバケットを移動させる場合と比べて、移動式プーリーバケットの移動距離が単純計算で2倍になる。そこで、索具の巻き取りにより牽引するウインチ方式の牽引機構によれば、牽引距離がシリンダ長さによって決まる油圧シリンダ機構などと異なり、牽引機構を大型化することなく長い牽引距離に対応できる。以上により、装置構成を簡素化し全長を抑制することが可能なベルトストレージを提供することができる。
【0010】
この発明によるベルトストレージにおいて、好ましくは、駆動部は、計測部の計測結果に基づいて、コンベヤベルトに作用する張力が一定範囲内に維持されるように牽引力を発生するように構成されている。ここで、ウインチ方式による牽引では、駆動部と索具との間にウインチドラムなどの動力伝達媒体が介在し摩擦損失などが生じる。そのため、たとえば油圧シリンダ機構などで索具を直接牽引する場合と比べれば、駆動部が発生する牽引力と移動式プーリーバケットに作用する実際の牽引力との間に誤差が生じやすい。そこで、計測部によって得られた索具に作用する力の実測値に基づいて牽引力を制御することにより、ウインチ方式であってもベルト張力を精度良く制御できる。ベルト張力の制御精度が向上することにより、コンベヤベルトへ掘削ズリを積載する時の衝撃や、高負荷搬送時の負荷などに起因するコンベヤベルトへのダメージを抑制できる。その結果、コンベヤベルトの長寿命化を図ることができる。
【0011】
上記構成において、好ましくは、駆動部は、電動モータとウインチドラムとの間に設けられた減速機を有する。このように構成すれば、減速機によって、電動モータを大型化しなくても、所定のベルト張力を付与するのに必要な牽引力を発生することができる。また、電動モータと索具との間に、ウインチドラムに加えて減速機が介在することにより、電動モータの駆動力と索具に作用する引張力との間の誤差が増大し易い。上記の計測部によって引張力を実測できるので、減速機を設けてもベルト張力を高精度に制御できる。
【0012】
この発明によるベルトストレージにおいて、好ましくは、牽引機構は、索具を巻き取るウインチドラムと、索具が巻き掛けられた1つ以上の動滑車と、ウインチドラムから延びる索具の方向を動滑車に向けて案内する1つ以上の定滑車と、を含む。このように構成すれば、動滑車の利用によって、牽引機構が発生させる牽引力を低減することができるので、その分、ウインチドラムを駆動するモータなどを小型化できる。一方、索具の巻き取り量に応じて動滑車が変位するので、ウインチドラムから動滑車に索具が直接巻き掛けられると、距離変化や索具の角度変化が生じてウインチドラムを駆動する際の負荷が不安定化する可能性があるが、ウインチドラムと動滑車との間に定滑車を介在させることによって、ウインチドラムの負荷を安定させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、移動式プーリーバケットは、フレームによって所定の高さ位置に保持されたレール上に移動可能に設置されるとともに、動滑車が取り付けられており、ウインチドラムは、レールよりも下方に配置され、定滑車を介して動滑車へ案内される索具が、ウインチドラムよりも上方を通過するように設けられている。このように構成すれば、移動式プーリーバケットが移動するレールの下側にウインチドラムを配置できる。その結果、ベルトストレージの全長を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、装置構成を簡素化し全長を抑制することが可能なベルトストレージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ベルトストレージが設けられる延伸ベルトコンベヤの全体構成を示した模式図である。
【
図2】最大貯蔵時のベルトストレージ(A)および最小貯蔵時のベルトストレージ(B)を示した側面図である。
【
図3】最小貯蔵時のベルト貯蔵部を側方から示した拡大図である。
【
図4】
図3の400-400線に沿って見た固定式プーリーバケットの模式的な正面図である。
【
図5】
図3の500-500線に沿って見た移動式プーリーバケットの模式的な正面図である。
【
図6】移動式プーリーバケットおよび牽引機構を側方から示した拡大図である。
【
図7】牽引機構の動滑車および定滑車を示した模式的な平面図(A)と、各動滑車および各定滑車に対する索具の巻回順序を説明するための模式図(B)である。
【
図8】牽引機構による牽引力の制御を説明するための模式図である。
【
図9】変形例による牽引機構を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1~
図8を参照して、本実施形態によるベルトストレージ100の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、ベルトストレージ100は、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送する延伸ベルトコンベヤ200において、コンベヤベルト5の余長部を貯蔵することにより搬送距離を延長するための装置である。ベルトストレージ100は、延伸ベルトコンベヤ200に設けられる設備である。ベルトストレージ100の詳細な説明に先立って、まず、延伸ベルトコンベヤ200の概要について説明する。
【0019】
(延伸ベルトコンベヤの概要)
延伸ベルトコンベヤ200は、トンネル掘削時の掘削ズリEMを搬送するための搬送距離を延長可能なコンベヤ装置である。掘削ズリEMは、トンネルの掘削時に地山から掘削された岩塊、土砂などである。
図1は、延伸ベルトコンベヤ200の構成を簡略化した概要図である。
【0020】
延伸ベルトコンベヤ200は、ベルトストレージ100に加えて、テールピース台車110と、ヘッドプーリー装置120と、ベルト駆動部130と、を主として備える。
【0021】
延伸ベルトコンベヤ200は、切羽側に配置されるテールピース台車110と、坑口側に配置されるヘッドプーリー装置120との間で、掘削ズリEMの運搬用のコンベヤベルト5を巻回した運搬システムである。ヘッドプーリー装置120が固定設置されるのに対して、テールピース台車110は移動可能に設けられており、掘進による切羽の前進に伴って移動する。コンベヤベルト5は、環状の無端ベルトである。コンベヤベルト5は、延伸ベルトコンベヤ200の設置初期における搬送長さ(テールピース台車110のテールプーリー114からヘッドプーリー装置120のヘッドプーリー121までの経路長)よりも長く形成されている。本明細書では、コンベヤベルト5の余りの長さ部分を余長部と呼ぶ。この余長部が、ベルトストレージ100に操出可能に貯蔵されている。
【0022】
なお、以下の説明では、上下方向(鉛直方向)をZ方向とし、トンネルの掘進方向に沿った前後方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する方向(トンネルの幅方向)をY方向とする。X方向のうち、切羽側(掘進方向前側)をX1方向とし、坑口側(掘進方向後側)をX2方向とする。
【0023】
図1において、トンネルの切羽側から坑口側に向けて(X2方向に向けて)、テールピース台車110、ベルトストレージ100、ベルト駆動部130およびヘッドプーリー装置120が、この順で並んで配置されている。
【0024】
テールピース台車110は、移動用のクローラ(無限軌道)111、およびクローラ111に搭載された車体フレーム112、テールピース113を含む。テールピース113は、コンベヤベルト5の切羽側端部を規定し、コンベヤベルト5が巻き掛けられたテールプーリー114を回転可能に保持する。テールピース台車110は、後方(坑口側)に向けて、テールプーリー114に巻き掛けられたコンベヤベルト5を支持しつつ案内するベルト支持部115を含む。
【0025】
テールピース台車110は、トンネル掘削時の掘削ズリEMをコンベヤベルト5上に受け容れる。掘削ズリEMは、移動式破砕機(図示せず)などによって、コンベヤベルト5で搬送可能なサイズまで破砕された状態で、テールピース台車110に投入されうる。テールピース台車110とヘッドプーリー装置120との間では、コンベヤベルト5は、コンベヤフレーム50により支持される。コンベヤフレーム50は、トンネル掘進(テールピース台車110の前進)とともに増設される。コンベヤベルト5は、テールピース113から、ベルト支持部115と、ベルト支持部115から後方に延びるコンベヤフレーム50とによって、ヘッドプーリー装置120まで支持および案内されている。
【0026】
ヘッドプーリー装置120は、コンベヤベルト5の坑口側端部を規定するヘッドプーリー121を含む。延伸ベルトコンベヤ200は、テールピース台車110(テールプーリー114)からヘッドプーリー装置120(ヘッドプーリー121)までの間で、掘削ズリEMを搬送する。なお、搬送された掘削ズリEMは、たとえば、ヘッドプーリー121の後方に別途設置される搬送コンベヤ(図示せず)に乗り継いで、延伸ベルトコンベヤ200の外部へ送られる。
【0027】
ベルト駆動部130は、コンベヤベルト5を循環駆動するための駆動装置である。ベルト駆動部130は、たとえば、電動機と減速機とを組み合わせて、コンベヤベルト5が巻回されたドライブプーリー131を回転駆動することにより、コンベヤベルト5を循環させるように構成されている。循環駆動されるコンベヤベルト5のうち、テールプーリー114(切羽側)からヘッドプーリー121(坑口側)に向かって掘削ズリEMを搬送する経路を、搬送経路と呼ぶ。コンベヤベルト5のうち、掘削ズリEMの搬送を終えて、ヘッドプーリー121からテールピース113へ戻る経路を、リターン経路と呼ぶ。ベルト駆動部130は、リターン経路においてヘッドプーリー装置120とベルトストレージ100との間に配置されている。なお、ヘッドプーリー装置120にベルト駆動部130を設けてもよい。この場合、ドライブプーリー131を設ける代わりに、ヘッドプーリー121がドライブプーリー131として機能してもよい。
【0028】
コンベヤベルト5の駆動時に滑りが起きないように、ベルト張力を増加してドライブプーリー131とコンベヤベルト5との摩擦力が高められる。ベルト張力を増加する手法には、一般には、例えばテールプーリーとヘッドプーリーとの距離を拡げる方法や、ヘッドプーリーの近傍で重錘により支持されたプーリー(図示せず)によりコンベヤベルトを引っ張る方法等がある。しかし、延伸ベルトコンベヤ200は全長が大きいため、ベルトストレージ100(牽引機構40)により、延伸ベルトコンベヤ200全体のベルト張力が制御される。
【0029】
ベルトストレージ100は、ヘッドプーリー装置120とテールピース台車110との間に配置され、コンベヤベルト5の余長部を貯蔵する。ベルトストレージ100は固定状態で設置された固定式プーリーバケット20と、移動可能に設けられた移動式プーリーバケット30とを含むベルト貯蔵部10を備える。ベルト貯蔵部10は、固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30との間にコンベヤベルト5が架け渡されることにより余長部を操出可能に貯蔵する。また、ベルトストレージ100は、移動式プーリーバケット30を、索具41を介してウインチ方式で牽引することによりコンベヤベルト5に張力を付与する牽引機構40を備える。ベルト貯蔵部10および牽引機構40の詳細な構成は、後述する。
【0030】
ベルトストレージ100は、コンベヤベルト5のリターン経路において、上流側のベルト駆動部130と下流側のテールピース台車110との間に配置されている。ベルトストレージ100は、コンベヤベルト5の搬送経路の下方に配置されている。つまり、掘削ズリEMを搬送するコンベヤベルト5がベルトストレージ100の上方を通過する。コンベヤベルト5は、以下の経路で循環する。テールプーリー114、ヘッドプーリー121、ベルト駆動部130、ベルトストレージ100(固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30との間を多数回往復)、ベルト支持部115、テールプーリー114。このうち、テールプーリー114とヘッドプーリー121との間が搬送経路である。ヘッドプーリー121から、ベルト駆動部130、ベルトストレージ100、ベルト支持部115、テールプーリー114に至る経路がリターン経路である。
【0031】
ベルトストレージ100のベルト貯蔵量(繰り出し可能なベルトの長さ)は、固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30との間隔Dによって変化する。ベルト貯蔵部10では、最大量の余長部を貯蔵した初期状態で、固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30との間隔Dが最大となる。掘進に伴い、テールピース台車110が前進すると、移動式プーリーバケット30が固定式プーリーバケット20に近付くことにより、間隔Dが減少する。この間隔Dの減少分に応じた長さの余長部が繰り出される。この結果、延伸ベルトコンベヤ200の搬送長さが延長される。ベルトストレージ100の牽引機構40は、間隔Dが増大する方向に移動式プーリーバケット30を牽引することにより、移動式プーリーバケット30の位置を保持(間隔Dの大きさを維持)し、循環駆動されるコンベヤベルト5に適切なベルト張力を付与する機能を有する。
【0032】
このような延伸ベルトコンベヤ200において、本実施形態のベルトストレージ100は、装置構成を簡素化し、ベルトストレージ100の全長を抑制することが可能な構造を有している。以下、ベルトストレージ100の構造について詳細に説明する。
【0033】
(ベルトストレージの詳細構造)
〈ベルト貯蔵部〉
図2(A)および
図2(B)に示すように、ベルトストレージ100のベルト貯蔵部10(固定式プーリーバケット20および移動式プーリーバケット30)は、フレーム11上に設置されている。フレーム11は、設置床面に設けた基礎1の上に固定設置されている。フレーム11は、トンネルの掘進方向(X方向)に沿って並ぶ複数の脚部12を有する。フレーム11上には、トンネルの掘進方向に沿って延びる一対のレール13(
図4および
図5参照)が設置されている。レール13は、コンベヤベルト5の幅方向(Y方向)に間隔を隔てて一対設けられている。
【0034】
図3に示すように、固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30とには、それぞれ多段のプーリーが設置されている。多段のプーリーの間をコンベヤベルト5がたすき掛けに掛けられることにより、コンベヤベルト5の余長部が貯蔵される。
【0035】
図3の例では、固定式プーリーバケット20は、プーリー21と、コンベヤベルト5を抑えてベルトピッチを低減するスナブプーリー22とを組み合わせて、5段のプーリー21を有する。同様に、移動式プーリーバケット30は、プーリー31と、スナブプーリー32とを組み合わせて、5段のプーリー31を有する。これらのプーリー21およびプーリー31の間を往復するように、コンベヤベルト5の余長部が掛けられている。
図3の例では、ベルト貯蔵部10には、往復により合計10枚のコンベヤベルト5(余長部)が貯蔵されている。固定式プーリーバケット20および移動式プーリーバケット30に設けられるプーリーの段数は特に限定されず、1段~4段でもよいし、6段以上でもよい。
【0036】
固定式プーリーバケット20は、フレーム11上に固定されている。固定式プーリーバケット20は、フレーム11の坑口側端部(
図2参照)に固定されている。固定式プーリーバケット20は、フレーム11によって所定の高さ位置で支持されている。つまり、固定式プーリーバケット20は、基礎1から上方に間隔を隔てた高さ位置に配置されている。
図4に示すように、固定式プーリーバケット20は、一対の側板24の間にプーリー21およびスナブプーリー22を回動可能に取り付けた構造を有する。固定式プーリーバケット20は、フレーム11上に設置された一対のレール13の間に配置されている。一対の側板24が、一対のレール13にそれぞれ設置された固定座23を介して固定されている。固定座23と側板24との接続、および固定座23とレール13との接続は、ボルトなどの締結部材により行われている。
【0037】
図3に戻り、移動式プーリーバケット30は、固定式プーリーバケット20に対して切羽側(X1方向側)に配置され、固定式プーリーバケット20と掘進方向(X方向)に対向している。移動式プーリーバケット30は、フレーム11によって所定の高さ位置に保持されたレール13上に移動可能に設置されている。つまり、移動式プーリーバケット30は、基礎1から上方に間隔を隔てた高さ位置に配置されている。移動式プーリーバケット30は、走行車輪33によりレール13上を移動可能に構成されている。
図5に示すように、移動式プーリーバケット30は、一対の側板34の間にプーリー31およびスナブプーリー32を回動可能に取り付けた構造を有する。走行車輪33は、一対の側板34からそれぞれ外側に突出する位置に対で設けられ、走行車輪33の対が一対のレール13上に1つずつ設置されている。このため、移動式プーリーバケット30は、一対のレール13の間において、両側の走行車輪33を介して所定高さに保持されている。なお、
図6に示すように、走行車輪33は、少なくとも、移動式プーリーバケット30のX1方向端部とX2方向端部とに一対ずつ、2対設けられる。
【0038】
図2に示すように、移動式プーリーバケット30は、間隔Dが最大となる最大貯蔵時の第1位置P1(
図2(A)参照)と、間隔Dが最小となる最小貯蔵時の第2位置P2(
図2(B)参照)と、の間でレール13上を移動するように設けられている。間隔Dが大きい状態では、各プーリーバケット間のコンベヤベルト5が重力の作用で下方へ垂れてくる。そのため、固定式プーリーバケット20と移動式プーリーバケット30との間に、コンベヤベルト5を支持するベルトサポート14が設けられている。ベルトサポート14は、1つ、または複数であって、ベルト貯蔵部10の最大貯蔵量(間隔Dの大きさ)に応じた数だけ設けられる。
図2および
図3ではベルトサポート14を3か所設置している例を示す。
【0039】
また、ベルトストレージ100の上方には、コンベヤベルト5を支持するためのベルト架台15が掘進方向に沿って複数配置されている。
図4および
図5に示したように、ベルト架台15は、門型形状を有し、一対のレール13の両外側からベルト貯蔵部10を幅方向に跨ぎ越えるようにして、フレーム11に設置されている。
【0040】
ベルト架台15の上面上に、コンベヤフレーム50と、コンベヤフレーム50に支持されたコンベヤローラセット51とが配置される。コンベヤローラセット51は、コンベヤベルト5の搬送経路の部分を支持する上側のキャリアローラ51aと、コンベヤベルト5のリターン経路の部分を支持する下側のリターンローラ51bと、を含む。
【0041】
〈牽引機構〉
図6に示すように、牽引機構40は、ベルト貯蔵部10に対して切羽側(X1方向側)に配置されている。牽引機構40は、フレーム11が設けられた基礎1の上に固定されている。牽引機構40は、移動式プーリーバケット30を、固定式プーリーバケット20から離れる方向(X1方向)に向けて牽引する。
【0042】
牽引機構40は、索具41と、索具41を巻き取るウインチドラム42と、ウインチドラム42を回転させる駆動部43と、を含む。本実施形態では、索具41には、牽引用ワイヤーロープが採用されている。索具41は、巻取り機等で巻き取り可能であれば、ローラチェーンや鎖等でもよい。
【0043】
ウインチドラム42は、索具41を巻き上げるための円筒体(ドラム)であり、索具41の一端部が固定されている。ウインチドラム42は、索具41を外周面に巻き付けて保持し、Y方向に延びる中心軸線周りに回転することにより索具41を巻き上げる。
【0044】
また、本実施形態では、牽引機構40は、索具41が巻き掛けられた1つ以上の動滑車44と、ウインチドラム42から延びる索具41の方向を動滑車44に向けて案内する1つ以上の定滑車45と、を含む。
【0045】
動滑車44は、移動式プーリーバケット30に取り付けられている。動滑車44は、移動式プーリーバケット30のX1方向端部に、Y方向に延びる中心軸線周りに回転可能に設けられている。本実施形態では、2つの動滑車44aおよび44b(
図7参照)が設けられている。動滑車44は、レール13に沿った移動式プーリーバケット30の移動に伴って、移動式プーリーバケット30と一体的に移動する。
【0046】
定滑車45は、掘進方向(X方向)において動滑車44と対向するように、動滑車44から切羽側に間隔を隔てて配置されている。具体的には、切羽側端部のフレーム11a上に固定された保持体60に、定滑車45が回転可能に取り付けられている。定滑車45は、Y方向に延びる中心軸線周りに回転可能である。
図6および
図7の例では、3つの定滑車45a、45b(
図7参照)および45cが配置されている。上側の2つの定滑車45a、45b(
図7参照)は、2つの動滑車44aおよび44b(
図7参照)と略同じ高さ位置で、掘進方向において互いに対向するように設けられている。定滑車45bの下側に、1つの定滑車45cが設けられている。なお、保持体60には、索具41の他端部に設けられた連結具46が回動可能に取り付けられている。
【0047】
また、
図6に示すように、本実施形態では、ウインチドラム42は、レール13よりも下方に配置され、定滑車(45a~45c)を介して動滑車(44a、44b)へ案内される索具41が、ウインチドラム42よりも上方を通過するように設けられている。ウインチドラム42は、連結具46の下方に設置されており、定滑車45a、45bと動滑車44a、44bとの間を往復する索具41がウインチドラム42の上方を通過している。
【0048】
掘進方向(X方向)において、定滑車(45a~45c)と動滑車(44a、44b)との間の位置に、ウインチドラム42が設置されている。ウインチドラム42から定滑車45cへ延びた索具41が、定滑車45cおよび45bでUターンして、ウインチドラム42を越えて動滑車44へ巻き掛けられている。
【0049】
詳細には、
図6において、索具41は、ウインチドラム42から、X1方向へ延び、定滑車45cを介して上方へ案内されて定滑車45bに巻き掛けられる。その後、
図7(A)および
図7(B)に示すように、索具41は、定滑車45bから動滑車44bへ向けてX2方向側へ案内されることによりUターンしている。
図7(B)に模式化して示したように、索具41は、動滑車44b、定滑車45a、動滑車44aの順で往復するように巻き掛けられた後、動滑車44aから延びた他端部の連結具46により保持体60に接続されている。ウインチドラム42の回転による引張力(索具41に作用する張力)は、動滑車44a、44bを介して移動式プーリーバケット30をX1方向へ牽引する牽引力として作用するとともに、索具41の他端部において保持体60に支持される。
【0050】
図6に示すように、駆動部43は、ウインチドラム42を回転駆動することにより、索具41に引張力を付与する。駆動部43は、たとえば、油圧モータ、電動モータ、エンジン(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど)などにより構成されうる。
【0051】
本実施形態では、駆動部43は、ウインチドラム42を回転駆動する電動モータ43a(
図8参照)と、電動モータ43aとウインチドラム42との間に設けられた減速機43b(
図8参照)と、を有する。なお、電動モータ43aおよび減速機43bはウインチドラム42とともにアセンブリ(組立体)となっており、
図6において別個に図示されていない。
図7ではウインチドラム42および駆動部43の図示を省略している。
【0052】
図8に示すように、電動モータ43aは、減速機43bを介してウインチドラム42を回転駆動する。減速機43bは、電動モータ43aの出力トルクを減速比に応じて増大させて、ウインチドラム42に伝達するように構成されている。
【0053】
本実施形態では、牽引機構40は、索具41に作用する力(引張力Fw)を計測する計測部47を含む。そして、駆動部43は、計測部47の計測結果に基づいて、コンベヤベルト5に作用する張力(ベルト張力Ft)が一定範囲内に維持されるように牽引力Fpを発生するように構成されている。
【0054】
図7(A)に示したように、本実施形態では、計測部47は、連結具46に取り付けられている。計測部47は、たとえばロードセルを含む。連結具46は、保持体60に回動可能に取り付けられた第1部材46aと、索具41の他端が取り付けられた第2部材46bと、を含む。計測部47は、第1部材46aに固定されており、第2部材46bと接続されている。駆動部43により索具41が牽引されると、第1部材46aにより保持体60に支持された計測部47に対して、第2部材46bから引張力Fwが作用する。計測部47は、付与された引張力Fwに応じた信号を出力する。
図8に示すように、駆動部43は、制御装置70により、計測部47の出力信号に応じたトルクを発生するように制御される。
【0055】
牽引力Fpにより移動式プーリーバケット30が切羽側(X1方向)に移動すると、固定式プーリーバケット20との間に循環して掛かっているコンベヤベルト5が引っ張られる結果、コンベヤベルト5の全体に張力(ベルト張力Ft)が発生する。
【0056】
図8では、固定式プーリーバケット20の下段81から入線したコンベヤベルト5は、移動式プーリーバケット30のプーリー31と固定式プーリーバケット20のプーリー21をそれぞれ5段往復して移動式プーリーバケット30の上方から入線方向と同じ方向82に出て行く。
【0057】
ベルト貯蔵部10には5段往復により10枚のベルトが貯蔵されるので、要求される移動式プーリーバケット30の牽引力Fpは、ベルト張力Ftの10枚分に相当する値となる。ただし、本実施形態では、牽引機構40が2個の動滑車44aおよび44bを配置しているので、所望の牽引力Fpを得るのに必要な引張力Fwは1/4に軽減される。説明の便宜のため、それぞれの移動体、滑車等の摩擦抵抗値を無視して単純計算すれば、牽引機構40は、設計上のベルト張力Ftの2.5倍の引張力Fwで牽引すれば良いことになる。その反面、2個の動滑車44aおよび44bを介在させることにより、牽引機構40は、移動式プーリーバケット30の移動量(間隔Dの最大値と最小値との差分)の4倍に相当する長さ分の索具41を巻き取る。
【0058】
制御装置70は、計測部47により取得された値(引張力Fw)と、予め設定された引張力の基準値とを比較し、駆動部43の電動モータ43aのトルクを制御する。これにより、駆動部43は、コンベヤベルト5に作用する張力(ベルト張力Ft)が一定範囲内に維持されるように牽引力Fpを発生する。電動モータ43aは、停止状態でも牽引力Fpを発生させる必要があるため、トルク制御機能に加え、停止状態での継続駆動における出力変動を抑制するために冷却機構を備えることが好ましい。なお、電動モータ43aに代えて油圧モータが駆動部43に設けられる場合は、油圧モータに供給される油圧制御によって、油圧モータのトルクが制御される。
【0059】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、上記のように、ベルト貯蔵部10の一方のプーリーバケット(固定式プーリーバケット20)を固定式とし、他方のプーリーバケット(移動式プーリーバケット30)だけを移動式としている。これにより、一対のプーリーバケットの両方に移動のための構造(走行車輪33など)を設ける必要がないとともに、牽引機構40を移動式プーリーバケット30に設けるだけで足り、固定式プーリーバケット20には牽引機構40を設ける必要がない。このため、両方のプーリーバケットを牽引する構成と比較して、プーリーバケットを移動させるための構造の数と、牽引機構40の数とを、それぞれ半減できる。これらの設備数が減少するので、装置構成を簡素化できるとともに、設備の全長も抑制できる。なお、移動式プーリーバケット30だけが移動するので、両方のプーリーバケットを移動させる場合と比べて、移動式プーリーバケット30の移動距離が単純計算で2倍になる。そこで、索具41の巻き取りにより牽引するウインチ方式の牽引機構40によれば、牽引距離がシリンダ長さによって決まる油圧シリンダ機構などと異なり、牽引機構40を大型化することなく長い牽引距離に対応できる。以上により、装置構成を簡素化し全長を抑制することが可能なベルトストレージ100を提供することができる。
【0061】
本実施形態では、上記のように、牽引機構40は、索具41を巻き取るウインチドラム42と、ウインチドラム42を回転させる駆動部43と、索具41に作用する力を計測する計測部47と、を含み、駆動部43は、計測部47の計測結果に基づいて、コンベヤベルト5に作用する張力が一定範囲内に維持されるように牽引力を発生するように構成されている。ここで、ウインチ方式による牽引では、駆動部43と索具41との間にウインチドラム42などの動力伝達媒体が介在し摩擦損失などが生じる。そのため、たとえば油圧シリンダ機構などで索具を直接牽引する場合と比べれば、駆動部43が発生する牽引力と移動式プーリーバケット30に作用する実際の牽引力との間に誤差が生じやすい。そのため、計測部47によって得られた索具41に作用する力(引張力Fw)の実測値に基づいて牽引力を制御することにより、ウインチ方式であってもベルト張力Ftを精度良く制御できる。ベルト張力Ftの制御精度が向上することにより、コンベヤベルト5へ掘削ズリを積載する時の衝撃や、高負荷搬送時の負荷などに起因するコンベヤベルト5へのダメージを抑制できる。その結果、コンベヤベルト5の長寿命化を図ることができる。
【0062】
本実施形態では、上記のように、駆動部43は、ウインチドラム42を回転駆動する電動モータ43aと、電動モータ43aとウインチドラム42との間に設けられた減速機43bと、を有する。これにより、減速機43bによって、電動モータ43aを大型化しなくても、所定のベルト張力Ftを付与するのに必要な牽引力を発生することができる。また、電動モータ43aと索具41との間に、ウインチドラム42に加えて減速機43bが介在することにより、電動モータ43aの駆動力と索具41に作用する引張力との間の誤差が増大し易い。これに対して、上記の計測部47によって引張力Fwを実測できるので、減速機43bを設けてもベルト張力Ftを高精度で制御できる。
【0063】
本実施形態では、上記のように、牽引機構40は、索具41を巻き取るウインチドラム42と、索具41が巻き掛けられた1つ以上の動滑車44と、ウインチドラム42から延びる索具41の方向を動滑車44に向けて案内する1つ以上の定滑車45と、を含む。これにより、動滑車44の利用によって、牽引機構40が発生させる牽引力を低減することができるので、その分、ウインチドラム42を駆動するモータなどを小型化できる。一方、索具41の巻き取り量に応じて動滑車44が変位するので、ウインチドラム42から動滑車44に索具41が直接巻き掛けられると、距離変化や索具41の角度変化が生じてウインチドラム42を駆動する際の負荷が不安定化する可能性があるが、ウインチドラム42と動滑車44との間に定滑車45を介在させることによって、ウインチドラム42にかかる負荷を安定させることができる。
【0064】
本実施形態では、上記のように、移動式プーリーバケット30は、フレーム11によって所定の高さ位置に保持されたレール13上に移動可能に設置されるとともに、動滑車44が取り付けられており、ウインチドラム42は、レール13よりも下方に配置され、定滑車45を介して動滑車44へ案内される索具41が、ウインチドラム42よりも上方を通過するように設けられている。これにより、移動式プーリーバケット30が移動するレール13の下側にウインチドラム42を配置できる。その結果、ベルトストレージ100の全長を効果的に抑制できる。
【0065】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0066】
たとえば、上記実施形態では、牽引機構40が、動滑車(44a、44b)を介して移動式プーリーバケット30を牽引する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図9に示すように、牽引機構40に動滑車を設けなくてもよい。
図9に示す変形例では、動滑車が設けられておらず、ウインチドラム42から延びる索具41が、2つの定滑車245a、245bを介して方向を変えて、移動式プーリーバケット30の切羽側端部に連結されている。この変形例では、牽引機構40に動滑車を設けないため、牽引機構40の構成を簡素化できる。この場合、動滑車を設ける上記実施形態と比べて駆動部43に要求されるトルクが大きくなるので、ウインチドラム42、電動モータ43a、減速機43bなどの仕様は上記実施形態と異なるものとなる。
図9に示す変形例において、さらに定滑車245a、245bを除去して、ウインチドラム42から延びる索具41を、滑車(動滑車、定滑車)を介在することなく移動式プーリーバケット30に連結してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、2つの動滑車44a、44bを設けた例を示したが、動滑車の数は、1つでも、3つ以上でもよい。同様に、上記実施形態(
図8参照)では3つの定滑車45a~45cを設け、
図9の変形例では2つの定滑車245a、245bを設けた例を示したが、定滑車の数は、1つでも、4つ以上でもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、牽引機構40に、計測部47を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、計測部47を設けなくてもよい。この場合、ウインチドラム42や減速機43bなどの動力伝達媒体に起因する牽引力の誤差要因を予め実測するか、またはシミュレーションなどの解析的手法により求めておき、得られた誤差要因を補償するように駆動部43の牽引力制御(トルク制御)を行ってもよい。また、コンベヤベルト5の張力Ftを計測するか、または、コンベヤベルト5のたるみ量などを計測し、この計測値に基づいて張力(たるみ量)が一定範囲内に維持されるように駆動部43の牽引力制御(トルク制御)を行ってもよい。また、索具41に作用する力(引張力Fw)の計測に代えて、移動式プーリーバケット30に作用する牽引力Fpを計測し、この計測値に基づいて駆動部43の牽引力制御(トルク制御)を行ってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、駆動部43が電動モータ43aと減速機43bとを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。減速機43bを除去して、電動モータ43aによりウインチドラム42を直接駆動してもよい。上述した通り、電動モータ43aに代えて油圧モータ、エンジンなどを駆動部43に設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、移動式プーリーバケット30が走行するレール13を、フレーム11によって所定の高さ位置に保持した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フレーム11を設けなくてもよい。レール13は、基礎1上に直接敷設されてもよい。また、移動式プーリーバケット30にタイヤ付き車輪や履帯(無限軌道)などを設けて、レール13を介さずに移動可能としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、ウインチドラム42を、所定の高さ位置に保持されたレール13よりも下方に設置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ウインチドラム42をレール13と同じ高さかまたは上方となる位置に配置してもよい。特に、レール13を基礎1上に直接敷設した場合、ウインチドラム42もレール13と同じ基礎1上に設置してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、ウインチドラム42を、掘進方向において動滑車と定滑車との間の位置に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。
図6において、ウインチドラム42は定滑車45よりも切羽側(X1方向側)に配置されてもよい。ウインチドラム42は動滑車44よりも坑口側(X2方向側)に配置されてもよい。索具41の長さと滑車による経路変更とによって、ウインチドラム42は任意の位置に設置することができる。たとえば、
図2において、ウインチドラム42を固定式プーリーバケット20よりも坑口側(X2方向側)に設置し、索具41が固定式プーリーバケット20および移動式プーリーバケット30の下方を通って切羽側の定滑車45へ巻き掛けられるように牽引機構40を構成してもよい。一般に、延伸ベルトコンベヤ200における牽引機構40などの各種設備の設置スペースは、坑口側の位置ほど確保しやすく、切羽側(トンネルの奥側)に向かうほど確保しにくい。そのため、ウインチドラム42および駆動部43を固定式プーリーバケット20よりも坑口側に設置する場合、ベルトストレージ100の切羽側のスペースを低減できるので好都合である。
【0073】
また、上記実施形態では、固定式プーリーバケット20を坑口側(X2方向側)に配置し、移動式プーリーバケット30を切羽側(X1方向側)に配置した例を示したが、固定式プーリーバケット20を切羽側に配置し、移動式プーリーバケット30を坑口側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
5 コンベヤベルト
10 ベルト貯蔵部
11 フレーム
11a フレーム
13 レール
20 固定式プーリーバケット
30 移動式プーリーバケット
40 牽引機構
41 索具
42 ウインチドラム
43 駆動部
43a 電動モータ
43b 減速機
44、44a、44b 動滑車
45、45a、45b、45c、245a、245b 定滑車
47 計測部
100 ベルトストレージ
200 延伸ベルトコンベヤ
EM 掘削ズリ