(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両用灯具およびキャップ
(51)【国際特許分類】
F21S 45/37 20180101AFI20240717BHJP
F21S 45/50 20180101ALI20240717BHJP
F21V 31/03 20060101ALI20240717BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240717BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20240717BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240717BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20240717BHJP
【FI】
F21S45/37
F21S45/50
F21V31/03
F21W103:00
F21W103:35
F21W103:20
F21W103:45
(21)【出願番号】P 2020121081
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮里 記充
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智也
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207528(JP,A)
【文献】特開2011-198615(JP,A)
【文献】特開2015-207531(JP,A)
【文献】実開昭63-202002(JP,U)
【文献】特開2004-047425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
F21V 23/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具であって、
光源を内部に含む閉空間を形成するランプハウジングを備え、
前記ランプハウジングは、側壁と透過性カバーを含み、
前記ランプハウジングに通気孔が形成されており、
前記ランプハウジングの外面における前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤が塗布されており、
前記通気孔の前記開口は、前記ランプハウジングの外観視で露出しており、
前記通気孔は、前記ランプハウジングの外面から、前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延び
る中空の孔である、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
車両用灯具であって、
光源を内部に含む閉空間を形成するランプハウジングを備え、
前記ランプハウジングは、側壁と透過性カバーを含み、
前記側壁には、キャップ取付孔が形成されており、
前記ランプハウジングは、前記キャップ取付孔に取り付けられたキャップを含み、
前記キャップに通気孔が形成されており、前記キャップの灯具外側における前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤が塗布されており、
前記通気孔の前記開口は、前記ランプハウジングの外観視で露出しており、
前記通気孔は、前記キャップの灯具外側から、前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延び
る中空の孔である、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
光源を内部に含む閉空間を形成し、側壁と透過性カバーを含んでおり、その側壁にキャップ取付孔が形成されたランプハウジングを備える車両用灯具のためのキャップであって、
前記キャップは、爪を有し、その爪により前記側壁の前記キャップ取付孔に取り付けられる構成であり、
前記キャップは、通気孔を有し、
前記キャップは、それが前記キャップ取付孔に取り付けられた状態で、灯具外側に位置することになる前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤を有しており、
前記キャップは、それが前記キャップ取付孔に取り付けられた状態で、前記通気孔の前記開口が前記ランプハウジングの外観視で露出すると共に、前記通気孔が前記キャップの灯具外側から前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延びる
中空の孔である、ように構成される、
ことを特徴とするキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具とそれに用いるキャップに関し、特に、灯具内の通気性を確保しながら灯具内への水の浸入を防ぐ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、光源を内部に含む閉空間を有し、閉空間である灯具内の結露を防止するために通気性と防水性の両方を兼ね備えた構造が必要になる。このような構造としては、ランプハウジングに孔を設けて、その孔に、湿気透過性および防水性を備えた特殊フィルムを付けた構造が知られている。また、
図9のように、貫通孔104と深穴106が形成された、ハウジング108のボス部110に、フィルタ100を内蔵したキャップ102を装着することで、迷路状の通気経路112を形成する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジングの孔に特殊フィルムを付ける構造は、通気抵抗が高く、灯具内の湿気の排出に時間が掛かり、特殊フィルムを用いるのでコストが高くなってしまう。また、
図9のような迷路構造は、迷路構造を形成するボス部を含んだハウジング設計が必要になり、ハウジング外方にボス部とキャップが突き出るので、スペース上、設けることができない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、簡素な構造により車両用灯具内の通気性と防水性を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用灯具は、光源を内部に含む閉空間を形成するランプハウジングを備え、前記ランプハウジングは、側壁と透過性カバーを含み、前記ランプハウジングに通気孔が形成されており、前記ランプハウジングの外面における前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤が塗布されており、前記通気孔の前記開口は、前記ランプハウジングの外観視で露出しており、前記通気孔は、前記ランプハウジングの外面から、前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延びる中空の孔である、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用灯具において、前記側壁には、キャップ取付孔が形成されており、前記ランプハウジングは、前記キャップ取付孔に取り付けられたキャップを含み、前記通気孔は、前記キャップに形成されており、前記キャップの灯具外側における前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤が塗布されており、前記通気孔の前記開口は、前記ランプハウジングの外観視で露出しており、前記通気孔は、前記キャップの灯具外側から、前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延びる中空の孔である、としてもよい。
【0008】
本発明の車両用灯具において、前記通気孔は、前記側壁に形成されており、前記側壁の外面における前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤が塗布されており、前記通気孔の前記開口は、前記ランプハウジングの外観視で露出しており、前記通気孔は、前記側壁の外面から、前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延びる中空の孔である、としてもよい。
【0009】
本発明のキャップは、光源を内部に含む閉空間を形成し、側壁と透過性カバーを含んでおり、その側壁にキャップ取付孔が形成されたランプハウジングを備える車両用灯具のためのキャップであって、前記キャップは、爪を有し、その爪により前記側壁の前記キャップ取付孔に取り付けられる構成であり、前記キャップは、通気孔を有し、前記キャップは、それが前記キャップ取付孔に取り付けられた状態で、灯具外側に位置することになる前記通気孔の開口の周り及び/又は前記通気孔の内面に撥水剤を有しており、前記キャップは、それが前記キャップ取付孔に取り付けられた状態で、前記通気孔の前記開口が前記ランプハウジングの外観視で露出すると共に、前記通気孔が前記キャップの灯具外側から前記ランプハウジングの内部空間まで真っ直ぐに延びる中空の孔である、ように構成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ランプハウジングの通気孔の付近に水滴が付着した場合でも、水滴が撥水剤によりはじかれるので、水滴が通気孔を通って閉空間内へ入り込むことを防ぐことができる。防水のために、通気孔に特殊フィルムを付けたり、迷路構造を採用する必要が無くなるため、通気性能を高めることができ、灯具の壁構造を簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】他の実施形態における車両用灯具の概略断面図である。
【
図9】従来技術である迷路状の通気経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、車両用灯具の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態における車両用灯具10の概略断面図である。
図1には、図示の都合上、キャップ24が誇張して大きめに描かれている。車両用灯具10(以下、単に灯具10とも言う)は、リヤ・コンビネーション・ランプと呼ばれる車両後方用灯具であり、テール・アンド・ストップランプ、ターンシグナルランプ、バックアップランプ等を含み、
図1には、これらのランプの光源11の一部が示されている。なお、灯具10は、車両前方用、車両側方用などであってもよく、光源11の数は限定されない。
【0014】
灯具10は、支持体18に支持された光源11と、光源11からの光を受ける導光材20と、光源11を取り囲むランプハウジング12(以下、単にハウジング12とも言う)を備える。ランプハウジング12は、側壁16と透過性カバー14を含む。側壁16と透過性カバー14は断面コ字状を有し、互いの開口が向かい合うように結合されて、光源11を内部に含む閉空間が形成されている。側壁16には、キャップ24が取り付けられており、側壁16の一部とキャップ24により、ハウジング12の基体が形成されている。
【0015】
図2は、
図1のキャップ24部分の拡大断面図であり、
図3は、キャップ24の側面図であり、
図4は、
図1のキャップ24部分の背面図である。
図3に示すように、キャップ24は、側壁16に取り付けられた際にハウジング12の内側に位置する内側支持部40と、外側に位置する外側支持部42と、内側支持部40と外側支持部42の間に位置する溝44を含む。
【0016】
内側支持部40は、ハウジング12の内側に向かって径が小さくなる円錐台形状部46を有し、外側支持部42は、ハウジング12の外側に向かって径が小さくなる円錐台形状部48と、円錐台形状部48のハウジング外側に隣接する円筒状部50を有する。
図2に示すように、内側支持部40の円錐台形状部46は、径方向内方が空洞となっており、径方向外方には環状の爪54が形成されている。外側支持部42の円錐台形状部48は、径方向内方に貫通孔としての通気孔26が形成されており、径方向外方には環状の張り出し部56が形成されている。円筒状部50内側の底面52は、平坦状に形成されており、撥水剤30が塗布されている。
図4に示すように、円錐台形状部48は、4つの通気孔26を有し、円筒状部50内側の底面52全体に、撥水剤30が塗布されている。
【0017】
通気孔26は、例えば直径1mm程度の大きさである。撥水剤30としては、例えばシリコーン系の撥水剤や、フッ素系の撥水剤等を用いることができる。本実施形態では、キャップ24の円筒状部50の底面52に、超撥水性の撥水剤30が塗布されている。
【0018】
側壁16には、円形のキャップ取付孔が形成されており、
図2に示すように、側壁16の外側から、キャップ24の内側支持部40の爪54を撓ませて、内側支持部40をキャップ取付孔22に押し入れることで、キャップ24がキャップ取付孔22に取り付けられている。側壁16の板が、キャップ24の溝44に入り込み、キャップ24の内側支持部40の爪54の端面と、外側支持部42の張り出し部56の端面との間で保持されて、キャップ24が側壁16に固定されている。キャップ24の円筒状部50の底面52は、灯具10の外面の一部を構成している。
【0019】
次に、本実施形態の車両用灯具10の作用効果について説明する。
【0020】
図2には、実線矢印で通気孔26を通る空気の流れが示されており、破線矢印で水の流れが示されている。
図5は、
図2のA部分の拡大端面図である。本実施形態の車両用灯具10によれば、キャップ24の底面52の通気孔26の周りに撥水剤30が塗布されているため、ハウジング12の外側に水が降りかかった場合に、
図5に示すように、底面52の水32が撥水剤30によりはじかれて、球状になり、下へ転がり落ちていく。従って、水32が通気孔26を通って灯具10内へ入り込むことを防ぐことができる。防水のために、迷路構造などを設ける必要がなく、側壁16の構造を簡素にでき、防水構造のためのスペースを節約することができる。
【0021】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、従来技術の特殊フィルムなどを通気孔26に付ける必要が無くなるので、通気抵抗を低くすることができる。例えば、直径1mmの1個の通気孔26で、特殊フィルムを設けた通気孔に比べて、何十倍もの通気性能を得ることができる。フィルム等により塞がれない通気孔26により、灯具10内の湿気が短時間で排出され、灯具10内の結露を効果的に抑制することができる。また、特殊フィルムを設けないので、コストを削減することもできる。
【0022】
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、側壁16のキャップ取付孔の位置を変更することにより、車両の開発、設計途中において灯具10の通気孔26の設定を容易に変更することができる。通気孔26の数、断面積、形状等が異なる複数種類のキャップ24を用意しておけば、その中から最適なキャップ24を選んで、キャップ取付孔22に取り付けることで、通気孔26の細かな形態も容易に変更することができる。
【0023】
なお、以上説明した実施形態では、キャップ24の円筒状部50の底面52全体に撥水剤30を塗布していたが、底面52の通気孔26の周りのみに撥水剤30を塗布してもよい。また、通気孔26の内面28(
図2参照)に、撥水剤30をさらに塗布してもよい。
【0024】
次に、別の実施形態の車両用灯具10Aについて説明する。
図6は、別の実施形態における車両用灯具10Aの概略断面図である。灯具10Aは、キャップの代わりに、側壁16に直接、通気孔26を形成した構造である。
【0025】
図7は、
図6の通気孔26付近の拡大断面図であり、
図8は、
図6の通気孔26付近の背面図である。
図8に示すように、側壁16の背面(外面とも言う)には、環状の盛り上がり部60が形成されており、その内側に、4つの通気孔26が形成されている。盛り上がり部60内側の外面62には、超撥水性の撥水剤30が塗布されている。
【0026】
この実施形態においても、側壁16の外面62の通気孔26の周りに撥水剤30が塗布されているため、
図7に示すように、側壁16の外側に水(
図7の破線)が降りかかった場合に、外面62の水は撥水剤30によりはじかれて、球状になり、下へ転がり落ちていく。従って、水が通気孔26を通って灯具10内へ入り込むことを防ぐことができる。また、通気孔26と撥水剤30により防水性を確保する構成なので、防水構造のためのスペースおよびコストを削減することができる。また、この実施形態においても、通気孔26が特殊フィルム等によって塞がれないので、通気性能を高めることができる。
【0027】
なお、以上説明した実施形態では、盛り上がり部60内側の外面62全体に撥水剤30を塗布しているが、外面62の通気孔26の周りのみに撥水剤30を塗布してもよい。また、通気孔26の内面28(
図7参照)に、撥水剤30をさらに塗布してもよい。
【0028】
以上説明した各実施形態では、キャップ24の底面52、または、側壁16の外面62に、超撥水性の撥水剤30を塗布していたが、超撥水性の撥水剤に限らず、水をはじく種々の撥水剤30を塗布することができる。また、通気孔26の数、断面積、形状は、適宜変更することができ、例えば、灯具10、10Aの閉空間の体積が大きくなるほど、通気孔26の数を多くしたり、通気孔26の断面積を大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10,10A 車両用灯具、11 光源、12 ランプハウジング、14 透過性カバー、16 側壁、18 支持体、20 導光材、22 キャップ取付孔、24 キャップ、26 通気孔、28 内面、30 撥水剤、32 水、40 内側支持部、42 外側支持部、44 溝、46,48 円錐台形状部、50 円筒状部、52 底面、54 爪、56 張り出し部、60 盛り上がり部、62 外面。