(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】アンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240717BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240717BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240717BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C02F1/44 K
B01D61/58
B01D61/02 500
B01D71/16
(21)【出願番号】P 2020130682
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 優子
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
(72)【発明者】
【氏名】中野 徹
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069124(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071177(WO,A1)
【文献】特開2010-125395(JP,A)
【文献】特開2003-275761(JP,A)
【文献】特許第5839087(JP,B1)
【文献】特開2018-183751(JP,A)
【文献】特開2018-153749(JP,A)
【文献】特開2019-098205(JP,A)
【文献】特開2018-202358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、前記第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程を含み、
前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であり、
前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させることを特徴とするアンモニア濃縮方法。
【請求項2】
酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程を含み、
前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であり、
前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させることを特徴とするアンモニア濃縮方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンモニア濃縮方法であって、
前記希釈水について逆浸透膜処理を行いRO透過水とRO濃縮水とを得る逆浸透膜処理工程をさらに含むことを特徴とするアンモニア濃縮方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア濃縮方法であって、
前記半透膜モジュールの第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度が所定の値になるように前記被処理水中の前記安定化次亜臭素酸組成物の量を調整することを特徴とするアンモニア濃縮方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアンモニア濃縮方法であって、
前記アンモニアを含む被処理水は、硫酸アンモニウム含有排水、フッ化アンモニウム含有排水、塩化アンモニウム含有排水のうちの少なくとも1つであることを特徴とするアンモニア濃縮方法。
【請求項6】
酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、前記第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、
前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、
を備え
、
前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であることを特徴とするアンモニア濃縮装置。
【請求項7】
酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、
前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、
を備え
、
前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であることを特徴とするアンモニア濃縮装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のアンモニア濃縮装置であって、
前記希釈水について逆浸透膜処理を行いRO透過水とRO濃縮水とを得る逆浸透膜処理手段をさらに備えることを特徴とするアンモニア濃縮装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載のアンモニア濃縮装置であって、
前記半透膜モジュールの第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度を測定する全塩素濃度測定手段と、
前記全塩素濃度測定手段により測定された全塩素濃度が所定の値になるように前記添加手段による前記安定化次亜臭素酸組成物の添加量を調整する調整手段と、
をさらに備えることを特徴とするアンモニア濃縮装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のアンモニア濃縮装置であって、
前記アンモニアを含む被処理水は、硫酸アンモニウム含有排水、フッ化アンモニウム含有排水、塩化アンモニウム含有排水のうちの少なくとも1つであることを特徴とするアンモニア濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを含む被処理水の濃縮処理を行うアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを含む排水からアンモニアを分離、濃縮する方法として、逆浸透膜を用いる逆浸透法が知られている(特許文献1参照)。また、半透膜モジュールの半透膜で仕切られた第一空間と第二空間に被処理水またはその濃縮水を通水し、第一空間を加圧することによって、水を濃縮する方法が知られている(特許文献2参照)。このような半透膜を用いる濃縮方法は、一般的な逆浸透法と比較し、第一空間と第二空間との浸透圧差を小さくすることによって、より少ない消費エネルギーで排水を高濃度に濃縮することができる。
【0003】
さらに逆浸透膜を用いる水処理方法において、バイオファウリング対策として殺菌剤を使用することが一般的である。代表的な殺菌剤は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤であり、通常は殺菌目的で逆浸透膜処理の前段において被処理水に添加される(特許文献3参照)。
【0004】
アンモニア含有排水の処理において、殺菌剤として次亜塩素酸等の塩素系酸化剤を用いると、排水中のアンモニアと殺菌剤由来の遊離塩素とが反応し、結合塩素が生成して、殺菌効果が低下する可能性がある。そのため、十分な殺菌効果を発揮するためには、被処理水のアンモニア濃度が高濃度になるほど、塩素系酸化剤の添加量を増やす必要があり、コストの増大につながる。
【0005】
一方で、アンモニア含有排水からアンモニアを回収することを目的とする場合、排水中のアンモニアと遊離塩素とが反応すると、排水中のアンモニア量が減少し、アンモニアの回収率が低下する可能性がある。そのため、アンモニアの回収率を高くするためには、塩素系酸化剤の添加量を抑制する必要がある。
【0006】
また、塩素系酸化剤は半透膜として一般的なポリアミド系の半透膜を酸化劣化させる可能性があり、処理水水質の悪化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-125745号公報
【文献】特開2018-069198号公報
【文献】特許第5978959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、酢酸セルロース系の半透膜を備える半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができるアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、前記第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程を含み、前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であり、前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる、アンモニア濃縮方法である。
【0010】
本発明は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理工程を含み、前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲であり、前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる、アンモニア濃縮方法である。
【0011】
前記アンモニア濃縮方法において、前記希釈水について逆浸透膜処理を行いRO透過水とRO濃縮水とを得る逆浸透膜処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0012】
前記アンモニア濃縮方法において、前記半透膜モジュールの第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度が所定の値になるように前記被処理水中の前記安定化次亜臭素酸組成物の量を調整することが好ましい。
【0013】
前記アンモニア濃縮方法において、前記アンモニアを含む被処理水は、硫酸アンモニウム含有排水、フッ化アンモニウム含有排水、塩化アンモニウム含有排水のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
本発明は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を前記第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、前記第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、を備え、前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲である、アンモニア濃縮装置である。
【0015】
本発明は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間と第二空間とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、前記第一空間を加圧して前記被処理水に含まれる水を前記半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、前記被処理水の一部または前記アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段と、前記被処理水中に、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、を備え、前記被処理水中のアンモニア濃度は、200~10000mg/Lの範囲である、アンモニア濃縮装置である。
【0016】
前記アンモニア濃縮装置において、前記希釈水について逆浸透膜処理を行いRO透過水とRO濃縮水とを得る逆浸透膜処理手段をさらに備えることが好ましい。
【0017】
前記アンモニア濃縮装置において、前記半透膜モジュールの第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度を測定する全塩素濃度測定手段と、前記全塩素濃度測定手段により測定された全塩素濃度が所定の値になるように前記添加手段による前記安定化次亜臭素酸組成物の添加量を調整する調整手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
前記アンモニア濃縮装置において、前記アンモニアを含む被処理水は、硫酸アンモニウム含有排水、フッ化アンモニウム含有排水、塩化アンモニウム含有排水のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、酢酸セルロース系の半透膜を備える半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができるアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図9】実施例で用いたアンモニア濃縮装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<アンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置>
本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。なお、本明細書において、アンモニア(NH
3)、アンモニウムイオン(NH
4
+)を総称して「アンモニア」と呼ぶ。
【0023】
図1に示すアンモニア濃縮装置1は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第一空間に通水し、第一空間を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、第二空間に、被処理水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段として、例えば、膜モジュール12を備える。膜モジュール12は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。アンモニア濃縮装置1は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。
【0024】
図1に示すアンモニア濃縮装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と膜モジュール12の第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続され、配管24におけるポンプ20の下流側で配管24から分岐した配管28が膜モジュール12の第二空間入口に接続されている。膜モジュール12の第一空間出口には配管26が接続され、膜モジュール12の第二空間出口には配管30が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0025】
図1のアンモニア濃縮装置1は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する膜モジュール12を用い、被処理水を膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16と第二空間入口から第二空間18とに通水し、第一空間16を加圧することによって、その第一空間16の被処理水に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて被処理水を濃縮する装置である。すなわち、アンモニア濃縮装置1において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮される。アンモニア濃縮装置1は、膜モジュール12の第一空間16と第二空間18の両方に被処理水を供給して濃縮処理を行う装置である。
【0026】
アンモニア濃縮装置1において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管24において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16へ加圧送液され、通水される。また、被処理水は、配管24から分岐した配管28を通して、膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18へ送液され、通水される。加圧された被処理水に含まれる水の一部は半透膜14を介して第一空間16から第二空間18に向かって透過する。このとき、アンモニアの大部分は半透膜14を透過することができないので、半透膜14を透過しなかった第一空間16内のアンモニアが濃縮される。一方、第二空間18では、配管28を通して通水された被処理水の一部と、半透膜14を透過したアンモニア濃度の低い透過水とが合流するため、希釈効果が働く。第一空間16で得られたアンモニア濃縮水は、第一空間出口から配管26を通して排出され、第二空間18で得られた希釈水は、第二空間出口から配管30を通して排出される。ここで、膜モジュール12において、第一空間16が加圧されてその第一空間16の被処理水に含まれる水が半透膜14を介して第二空間18に透過され、第一空間16でアンモニア濃縮水が得られる(アンモニア濃縮工程)とともに、第二空間18で希釈水が得られる(希釈工程)。
【0027】
ここで、ポンプ20、配管24,28等が、半透膜モジュール12の第一空間16と第二空間18の両方に被処理水を供給する供給手段として機能する。
【0028】
第一空間16で得られたアンモニア濃縮水は、回収して再利用されてもよい。第一空間16で得られたアンモニア濃縮水について、さらに蒸留処理や電気透析処理を行ってもよい。
【0029】
第二空間18で得られた希釈水は、配管30を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。後述するように、希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。
【0030】
以上のようにして、処理対象である、アンモニアを含む被処理水から、アンモニアが濃縮された処理水(アンモニア濃縮水)と、希釈水とが得られ、アンモニアを含む被処理水の濃縮が行われる。
【0031】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置1では、アンモニアを含む被処理水中に、殺菌剤として臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させ、被処理水を膜モジュール12の第一空間16および第二空間18に通水する。これによって、酢酸セルロース系の半透膜を備える半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができる。
【0032】
本発明の実施形態に係るアンモニア濃縮装置の他の例の概略を
図2に示し、その構成について説明する。
【0033】
図2に示すアンモニア濃縮装置2は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第一空間に通水し、第一空間を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得るとともに、第二空間に、アンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段として、例えば、膜モジュール12を備える。膜モジュール12は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。アンモニア濃縮装置2は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。
【0034】
図2のアンモニア濃縮装置2において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と膜モジュール12の第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。膜モジュール12の第一空間出口には配管26が接続されている。配管26から分岐した配管34が膜モジュール12の第二空間入口に接続されている。膜モジュール12の第二空間出口には配管36が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0035】
図2のアンモニア濃縮装置2は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する膜モジュール12を用い、被処理水を膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16に通水するとともに、膜モジュール12の第一空間16の第一空間出口から排出されたアンモニア濃縮水の少なくとも一部を膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18に通水し、第一空間16を加圧することによって、その第一空間16の被処理水に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて被処理水を濃縮する装置である。すなわち、アンモニア濃縮装置2において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮される。アンモニア濃縮装置2は、膜モジュール12の第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られたアンモニア濃縮水の少なくとも一部を膜モジュール12の第二空間18に供給して濃縮処理を行う装置である。
【0036】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置2の動作について説明する。
【0037】
アンモニア濃縮装置2において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管24において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、膜モジュール12の第一空間入口から第一空間16へ加圧送液され、通水される。加圧された被処理水に含まれる水の一部は半透膜14を介して第一空間16から第二空間18に向かって透過する。このとき、アンモニアの大部分は半透膜14を透過することができないので、半透膜14を透過しなかった第一空間16内のアンモニアが濃縮される。一方、第二空間18では、配管34を通して通水されたアンモニア濃縮水の少なくとも一部と、半透膜14を透過したアンモニア濃度の低い透過水とが合流するため、希釈効果が働く。第一空間16で得られたアンモニア濃縮水は、第一空間出口から配管26を通して排出され、アンモニア濃縮水の少なくとも一部は、配管26から分岐した配管34を通して、膜モジュール12の第二空間入口から第二空間18へ送液され、通水される。第二空間18で得られた希釈水は、第二空間出口から配管36を通して排出される。ここで、膜モジュール12において、第一空間16が加圧されてその第一空間16の被処理水に含まれる水が半透膜14を介して第二空間18に透過され、第一空間16でアンモニア濃縮水が得られる(アンモニア濃縮工程)とともに、第二空間18で希釈水が得られる(希釈工程)。
【0038】
ここで、ポンプ20、配管24,26,34等が、半透膜モジュール12の第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られたアンモニア濃縮水の少なくとも一部を半透膜モジュール12の第二空間18に供給する供給手段として機能する。
【0039】
第一空間16で得られたアンモニア濃縮水は、回収して再利用されてもよい。第一空間16で得られたアンモニア濃縮水について、さらに蒸留処理や電気透析処理を行ってもよい。
【0040】
第二空間18で得られた希釈水は、配管36を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。後述するように、希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。
【0041】
以上のようにして、処理対象である、アンモニアを含む被処理水から、アンモニアが濃縮された処理水(アンモニア濃縮水)と、希釈水とが得られ、アンモニアを含む被処理水の濃縮が行われる。
【0042】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置2では、アンモニアを含む被処理水中に、殺菌剤として臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させ、被処理水を膜モジュール12の第一空間16に通水し、得られたアンモニア濃縮水を第二空間18に通水する。これによって、酢酸セルロース系の半透膜を備える半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができる。
【0043】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、直列に接続された多段式の半透膜モジュールを用いてもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図3に示す。
【0044】
図3に示すアンモニア濃縮装置3は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、第一空間を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、被処理水の一部またはアンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段として、例えば、1段目膜モジュール12a、2段目膜モジュール12bを備える。それぞれの膜モジュールは、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。アンモニア濃縮装置3は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。アンモニア濃縮装置3は、第1段の膜モジュールの第一空間に被処理水を供給し、そのアンモニア濃縮水を順次次段の膜モジュールの第一空間に供給し、アンモニア濃縮水が最終段の半透膜モジュールの第一空間を通過した後に最終段のアンモニア濃縮水の少なくとも一部を最終段の半透膜モジュールの第二空間に供給し、その希釈水を順次前段の膜モジュールの第二空間に供給して濃縮処理を行う装置である。アンモニア濃縮装置3において、第1段の膜モジュールの第一空間および第二空間に被処理水をそれぞれ供給し、そのアンモニア濃縮水および希釈水を順次次段の膜モジュールの第一空間および第二空間にそれぞれ供給して濃縮処理を行う装置としてもよい。
【0045】
図3に示すアンモニア濃縮装置3において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と1段目膜モジュール12aの第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。1段目膜モジュール12aの第一空間出口と2段目膜モジュール12bの第一空間入口とは、配管38により接続されている。2段目膜モジュール12bの第一空間出口には配管40が接続されている。配管40から分岐した配管42が2段目膜モジュール12bの第二空間入口に接続されている。2段目膜モジュール12bの第二空間出口と1段目膜モジュール12aの第二空間入口とは、配管44により接続されている。1段目膜モジュール12aの第二空間出口には配管46が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0046】
アンモニア濃縮装置3は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する多段式の膜モジュールを用い、被処理水を多段式の膜モジュールの第一空間16に直列的に通水し、最終段の膜モジュール(
図3の例では、2段目膜モジュール12b)の第二空間18にその最終段の膜モジュールのアンモニア濃縮水の少なくとも一部を送液し、最終段の膜モジュールの希釈水をその前段の膜モジュールの第二空間18に直列的に通水し、第一空間16を加圧することによってその第一空間16に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて被処理水を濃縮する装置である。すなわち、アンモニア濃縮装置3において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮され、そのアンモニア濃縮水がさらに次の段の半透膜14を用いて濃縮される。そして、最終段の膜モジュールの第一空間16を通過したアンモニア濃縮水を、各段の膜モジュールの第二空間18に直列的に通水し、各段の膜モジュールの第一空間16を加圧してその第一空間16に含まれる水を第二空間18に透過させる。
【0047】
アンモニア濃縮装置3において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管24において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、1段目膜モジュール12aの第一空間入口から第一空間16aへ加圧送液され、通水される。一方、後述する2段目膜モジュール12bの第二空間18bを経由して送液された希釈水が配管44を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18aへ送液される。1段目膜モジュール12aにおいて、第一空間16aが加圧されてその第一空間16aに含まれる水が第二空間18aに透過される(アンモニア濃縮工程(1段目))とともに、第二空間18aで希釈水が得られる(希釈工程(1段目))。第二空間18aで得られた希釈水は、第二空間出口から配管46を通して排出される。
【0048】
1段目膜モジュール12aの第一空間16aで得られたアンモニア濃縮水は、配管38を通して、2段目膜モジュール12bの第一空間16bへ送液される。第一空間16bで得られたアンモニア濃縮水は、第一空間出口から配管40を通して排出され、アンモニア濃縮水の少なくとも一部は、配管40から分岐した配管42を通して、2段目膜モジュール12bの第二空間入口から第二空間18bへ送液され、通水される。1段目と同様にして、2段目膜モジュール12bにおいて、第一空間16bが加圧されてその第一空間16bに含まれる水が第二空間18bに透過される(アンモニア濃縮工程(2段目))とともに、第二空間18bで希釈水が得られる(希釈工程(2段目))。第二空間18bで得られた希釈水は、第二空間出口から配管44を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18aへ送液される。
【0049】
ここで、ポンプ20、配管24,38,40,42,44等が、半透膜モジュール12の第一空間16に被処理水を供給し、第一空間16の出口から得られたアンモニア濃縮水の少なくとも一部を半透膜モジュール12の第二空間18に供給する供給手段として機能する。
【0050】
第一空間16で得られたアンモニア濃縮水は、回収して再利用されてもよい。第一空間16で得られたアンモニア濃縮水について、さらに蒸留処理や電気透析処理を行ってもよい。
【0051】
第二空間18で得られた希釈水は、配管46を通して系外へ排出されてもよいし、必要に応じて希釈水槽へ送液されて貯留された後、系外へ排出されてもよい。希釈水の少なくとも一部は、被処理水槽10に送液され、被処理水槽10において被処理水と混合されてもよい。後述するように、希釈水の少なくとも一部は、さらに逆浸透膜処理装置へ送液され、逆浸透膜処理装置において、逆浸透膜処理が行われてもよい(逆浸透膜処理工程)。
【0052】
以上のようにして、処理対象である、アンモニアを含む被処理水から、アンモニアが濃縮された処理水(アンモニア濃縮水)と、希釈水とが得られ、アンモニアを含む被処理水の濃縮が行われる。
【0053】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置3では、アンモニアを含む被処理水中に、殺菌剤として臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させ、被処理水を多段式の第1段の膜モジュール12aの第一空間16aに通水し、得られたアンモニア濃縮水をさらに次段の膜モジュール12b以降の第一空間16に通水してアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の膜モジュール12の第二空間18に、得られたアンモニア濃縮水を通水して希釈水を得る。これによって、酢酸セルロース系の半透膜を備える複数段に接続された多段式の半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができる。
【0054】
上記の通り、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、希釈水の少なくとも一部について、さらに逆浸透膜処理を行ってもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図4に示す。
【0055】
図4に示すアンモニア濃縮装置4は、
図3の構成に加えて、希釈水の少なくとも一部について逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置48をさらに備える。
図1または
図2の構成に加えて、希釈水の少なくとも一部について逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置48をさらに備える構成としてもよい。
【0056】
アンモニア濃縮装置4において、1段目膜モジュール12aの第二空間出口と逆浸透膜処理装置48の入口とは、配管46により接続されている。逆浸透膜処理装置48のRO透過水出口には、RO透過水配管50が接続され、RO濃縮水出口には、RO濃縮水配管52が接続されている。
【0057】
アンモニア濃縮装置4において、
図3のアンモニア濃縮装置3と同様にして半透膜処理が行われて第二空間18aで得られた希釈水は、第二空間出口から配管46を通して逆浸透膜処理装置48へ送液される。逆浸透膜処理装置48において逆浸透膜処理が行われ、RO透過水とRO濃縮水とが得られる(逆浸透膜処理工程)。RO透過水は、RO透過水配管50を通して排出され、RO濃縮水は、RO濃縮水配管52を通して排出される。RO濃縮水は、被処理水槽10へ送液して、さらに半透膜処理を行って濃縮してもよい。
【0058】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置4では、半透膜処理で得られた希釈水についてさらに逆浸透膜処理を行うことによって、さらにアンモニアを濃縮することができる。
【0059】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、半透膜モジュールの前段に除濁膜を設けてもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図5に示す。
【0060】
図5に示すアンモニア濃縮装置5は、
図3の構成に加えて、被処理水について除濁膜処理を行う除濁膜処理手段として、除濁膜処理装置56をさらに備える。
図1、
図2または
図4の構成に加えて、被処理水について除濁膜処理を行う除濁膜処理手段として、除濁膜処理装置56をさらに備える構成としてもよい。
【0061】
アンモニア濃縮装置5において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と除濁膜処理装置56の入口とは、ポンプ60を介して配管64により接続されている。除濁膜処理装置56の除濁膜透過水出口と除濁膜透過水槽58の入口とは、配管66により接続されている。除濁膜処理装置56の除濁膜濃縮水出口には、配管68が接続されている。除濁膜透過水槽58の出口と1段目膜モジュール12aの第一空間入口とは、ポンプ62を介して配管70により接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0062】
アンモニア濃縮装置5において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管64において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ60により配管64を通して、除濁膜処理装置56へ送液される。除濁膜処理装置56において除濁膜処理が行われ、除濁膜透過水と除濁膜濃縮水とが得られる(除濁膜処理工程)。除濁膜透過水は、配管66を通して、必要に応じて除濁膜透過水槽58に貯留される。除濁膜濃縮水は、配管68を通して排出される。除濁膜透過水は、半透膜処理の被処理水として、除濁膜透過水槽58からポンプ62により配管70を通して、1段目膜モジュール12aの第一空間入口から第一空間16aへ加圧送液、通水され、以降、
図3のアンモニア濃縮装置3と同様にして半透膜処理が行われる。
【0063】
アンモニア濃縮装置5では、除濁膜の前段に殺菌剤添加工程を設けることによって、除濁膜処理装置56と膜モジュール12をともに殺菌することができ、除濁膜および半透膜のバイオファウリングをともに抑制することができる。
【0064】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、半透膜モジュールの第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度が所定の値になるように被処理水中の安定化次亜臭素酸組成物の量を調整してもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図6に示す。
【0065】
図6に示すアンモニア濃縮装置6は、
図1の構成に加えて、膜モジュール12の第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度を測定する全塩素濃度測定手段として、全塩素濃度測定装置80をさらに備える。アンモニア濃縮装置6は、被処理水への安定化次亜臭素酸組成物の添加を制御する制御手段として、制御装置82をさらに備えてもよい。
図2、
図3、
図4または
図5の構成に加えて、膜モジュール12の第一空間入口および第一空間出口の少なくとも1つにおける全塩素濃度を測定する全塩素濃度測定手段として、全塩素濃度測定装置80をさらに備える構成としてもよい。
【0066】
アンモニア濃縮装置6において、配管26には、全塩素濃度測定装置80が設置されている。制御装置82は、全塩素濃度測定装置80と、殺菌剤添加配管32に設置された殺菌剤の添加量を調整する調整手段(図示せず)と、それぞれ電気的接続等によって接続されていてもよい。
【0067】
アンモニア濃縮装置6において、
図1のアンモニア濃縮装置1と同様にして半透膜処理が行われる。ここで、配管26において、全塩素濃度測定装置80によって、膜モジュール12の第一空間出口における全塩素濃度が測定される(全塩素濃度測定工程)。全塩素濃度測定装置80によって測定されたアンモニア濃縮水中の全塩素濃度が所定の値になるように、例えば、制御装置82によって、殺菌剤添加配管32に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等が調整され、被処理水への殺菌剤の添加量が調整されればよい(調整工程)。殺菌剤の添加量は、制御装置82によって自動で調整してもよいし、手動で調整してもよい。
【0068】
配管24に全塩素濃度測定装置80を設置し、配管24において、全塩素濃度測定装置80によって、膜モジュール12の第一空間入口における全塩素濃度が測定され、全塩素濃度測定装置80によって測定された被処理水中の全塩素濃度が所定の値になるように、例えば、制御装置82によって、殺菌剤添加配管32に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等が調整され、被処理水への殺菌剤の添加量が調整されてもよい。また、配管24および配管26に全塩素濃度測定装置80をそれぞれ設置し、配管24および配管26において、全塩素濃度測定装置80によって、膜モジュール12の第一空間入口および第一空間出口における全塩素濃度が測定され、全塩素濃度測定装置80によって測定された被処理水中およびアンモニア濃縮水中の全塩素濃度が所定の値になるように、例えば、制御装置82によって、殺菌剤添加配管32に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等が調整され、被処理水への殺菌剤の添加量が調整されてもよい。殺菌剤による殺菌能力の確認のため、少なくとも膜モジュール12の第一空間出口における全塩素濃度が測定され、第一空間出口におけるアンモニア濃縮水中の全塩素濃度が所定の値になるように、被処理水への殺菌剤の添加量が調整されることが好ましい。例えば、第一空間出口の全塩素濃度が所定の値より低い場合、殺菌剤の量が不足し、ファウリングのリスクが高いことが示唆されるため、被処理水への殺菌剤の添加量を増やせばよい。一方、第一空間出口の全塩素濃度が所定の値より高い場合、過剰に殺菌剤が添加され、薬剤コストが高く、膜劣化リスクが高いことが示唆されるため、被処理水への殺菌剤の添加量を減らせばよい。なお、
図3~5のように直列に接続された多段式の半透膜モジュールを用いる場合は、最終段の膜モジュール12の第一空間出口における全塩素濃度が測定され、最終段の膜モジュール12の第一空間出口におけるアンモニア濃縮水中の全塩素濃度が所定の値になるように、被処理水への殺菌剤の添加量が調整されることが好ましい。
【0069】
全塩素濃度測定装置80としては、全塩素濃度を測定することができるものであればよく、特に制限はない。全塩素濃度の測定方法としては、DPD法等が挙げられる。
【0070】
被処理水中およびアンモニア濃縮水中の全塩素濃度は、全塩素濃度測定装置80によって、自動で測定してもよいし、手動で測定してもよい。
【0071】
制御装置82は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、全塩素濃度測定装置80により測定された全塩素濃度に基づいて、殺菌剤添加配管32に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への殺菌剤の添加量を制御する機能を有するものである。
【0072】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、直列に接続された多段式の半透膜モジュールを用いる場合、第一空間および第二空間に被処理水または前段の膜モジュールのアンモニア濃縮水を通水してもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図7に示す。また、膜モジュールの第一空間で得られるアンモニア濃縮水を自身の第二空間に通水してもよい。このような構成のアンモニア濃縮装置の一例を
図8に示す。
【0073】
図7に示すアンモニア濃縮装置7は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、第一空間を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、各段の半透膜モジュールの第二空間に、被処理水の一部またはアンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段として、例えば、1段目膜モジュール12a、2段目膜モジュール12bを備える。それぞれの膜モジュールは、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。アンモニア濃縮装置7は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。アンモニア濃縮装置7は、第1段の膜モジュールの第一空間および第二空間に被処理水を供給し、そのアンモニア濃縮水を順次次段の膜モジュールの第一空間および第二空間に供給して濃縮処理を行う装置である。
【0074】
図7に示すアンモニア濃縮装置7において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と1段目膜モジュール12aの第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。配管24におけるポンプ20の下流側で配管24から分岐した配管28が1段目膜モジュール12aの第二空間入口に接続されている。1段目膜モジュール12aの第一空間出口と2段目膜モジュール12bの第一空間入口とは、配管86により接続されている。配管86から分岐した配管88が2段目膜モジュール12bの第二空間入口に接続されている。1段目膜モジュール12aの第二空間出口には配管84が接続されている。2段目膜モジュール12bの第一空間出口には配管90が接続されている。2段目膜モジュール12bの第二空間出口には配管92が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0075】
アンモニア濃縮装置7は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する多段式の膜モジュールを用い、被処理水を多段式の膜モジュールの第一空間16に直列的に通水し、各段の膜モジュールの第二空間18に被処理水またはその前段の膜モジュールのアンモニア濃縮水の少なくとも一部を通水し、第一空間16を加圧することによってその第一空間16に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて被処理水を濃縮する装置である。すなわち、アンモニア濃縮装置7において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮され、そのアンモニア濃縮水がさらに次の段の半透膜14を用いて濃縮される。そして、各段の膜モジュールの第一空間16を通過したアンモニア濃縮水を、次段の膜モジュールの第二空間18に通水し、各段の膜モジュールの第一空間16を加圧してその第一空間16に含まれる水を第二空間18に透過させる。
【0076】
アンモニア濃縮装置7において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管24において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、1段目膜モジュール12aの第一空間入口から第一空間16aへ加圧送液され、通水される。一方、殺菌剤が添加された被処理水は配管24から分岐した配管28を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18aへ送液される。1段目膜モジュール12aにおいて、第一空間16aが加圧されてその第一空間16aに含まれる水が第二空間18aに透過される(アンモニア濃縮工程(1段目))とともに、第二空間18aで希釈水が得られる(希釈工程(1段目))。第二空間18aで得られた希釈水は、第二空間出口から配管84を通して排出される。
【0077】
1段目膜モジュール12aの第一空間16aで得られたアンモニア濃縮水は、配管86を通して、2段目膜モジュール12bの第一空間16bへ送液される。第一空間16aで得られたアンモニア濃縮水の一部は、配管86から分岐した配管88を通して、2段目膜モジュール12bの第二空間入口から第二空間18bへ送液され、通水される。1段目と同様にして、2段目膜モジュール12bにおいて、第一空間16bが加圧されてその第一空間16bに含まれる水が第二空間18bに透過される(アンモニア濃縮工程(2段目))とともに、第二空間18bで希釈水が得られる(希釈工程(2段目))。第一空間16bで得られたアンモニア濃縮水は、第一空間出口から配管90を通して排出される。第二空間18bで得られた希釈水は、第二空間出口から配管92を通して排出される。
【0078】
ここで、ポンプ20、配管24,28,86,88等が、半透膜モジュール12の第一空間16および第二空間18に被処理水またはアンモニア濃縮水の一部を供給する供給手段として機能する。
【0079】
以上のようにして、処理対象である、アンモニアを含む被処理水から、アンモニアが濃縮された処理水(アンモニア濃縮水)と、希釈水とが得られ、アンモニアを含む被処理水の濃縮が行われる。
【0080】
図8に示すアンモニア濃縮装置8は、酢酸セルロース系の半透膜で仕切られた第一空間(濃縮側)と第二空間(透過側)とを有する、複数段に接続された半透膜モジュールを用いて、アンモニアを含む被処理水を第1段の半透膜モジュールの第一空間に通水し、第一空間を加圧して被処理水に含まれる水を半透膜を透過させることによってアンモニア濃縮水を得て、そのアンモニア濃縮水をさらに次段以降の半透膜モジュールを用いてアンモニア濃縮水を得るとともに、自身の半透膜モジュールの第二空間にアンモニア濃縮水の一部を通水して希釈水を得る半透膜処理手段として、例えば、1段目膜モジュール12a、2段目膜モジュール12bを備える。それぞれの膜モジュールは、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する。アンモニア濃縮装置8は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。アンモニア濃縮装置8は、第1段の膜モジュールの第一空間に被処理水を供給し、そのアンモニア濃縮水を順次次段の膜モジュールの第一空間に供給し、自身のアンモニア濃縮水の一部を第二空間に供給して濃縮処理を行う装置である。
【0081】
図8に示すアンモニア濃縮装置8において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管22が接続されている。被処理水槽10の出口と1段目膜モジュール12aの第一空間入口とは、ポンプ20を介して配管24により接続されている。1段目膜モジュール12aの第一空間出口と2段目膜モジュール12bの第一空間入口とは、配管38により接続されている。配管38から分岐した配管94が1段目膜モジュール12aの第二空間入口に接続されている。1段目膜モジュール12aの第二空間出口には配管46が接続されている。2段目膜モジュール12bの第一空間出口には配管40が接続されている。配管40から分岐した配管42が2段目膜モジュール12bの第二空間入口に接続されている。2段目膜モジュール12bの第二空間出口には配管96が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管32が接続されている。
【0082】
アンモニア濃縮装置8は、半透膜14で仕切られた第一空間16および第二空間18を有する多段式の膜モジュールを用い、被処理水を多段式の膜モジュールの第一空間16に直列的に通水し、自身の第二空間18にアンモニア濃縮水の一部を通水し、第一空間16を加圧することによってその第一空間16に含まれる水を半透膜14を介して第二空間18に透過させて被処理水を濃縮する装置である。すなわち、アンモニア濃縮装置8において、半透膜14を用いて被処理水が濃縮され、そのアンモニア濃縮水がさらに次の段の半透膜14を用いて濃縮される。そして、膜モジュールの第一空間16を通過したアンモニア濃縮水を、自身の膜モジュールの第二空間18に通水し、各段の膜モジュールの第一空間16を加圧してその第一空間16に含まれる水を第二空間18に透過させる。
【0083】
アンモニア濃縮装置8において、アンモニアを含む被処理水は、配管22を通して、必要に応じて被処理水槽10に貯留される。ここで、殺菌剤として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物が殺菌剤添加配管32を通して被処理水に添加される。殺菌剤は、配管22において添加されてもよいし、配管24において添加されてもよい。殺菌剤が添加された被処理水は、被処理水槽10からポンプ20により配管24を通して、1段目膜モジュール12aの第一空間入口から第一空間16aへ加圧送液され、通水される。一方、1段目膜モジュール12aの第一空間16aで得られたアンモニア濃縮水が配管38から分岐した配管94を通して、1段目膜モジュール12aの第二空間18aへ送液される。1段目膜モジュール12aにおいて、第一空間16aが加圧されてその第一空間16aに含まれる水が第二空間18aに透過される(アンモニア濃縮工程(1段目))とともに、第二空間18aで希釈水が得られる(希釈工程(1段目))。第二空間18aで得られた希釈水は、第二空間出口から配管46を通して排出される。
【0084】
1段目膜モジュール12aの第一空間16aで得られたアンモニア濃縮水は、配管38を通して、2段目膜モジュール12bの第一空間16bへ送液される。第一空間16bで得られたアンモニア濃縮水は、第一空間出口から配管40を通して排出され、アンモニア濃縮水の少なくとも一部は、配管40から分岐した配管42を通して、2段目膜モジュール12bの第二空間入口から第二空間18bへ送液され、通水される。1段目と同様にして、2段目膜モジュール12bにおいて、第一空間16bが加圧されてその第一空間16bに含まれる水が第二空間18bに透過される(アンモニア濃縮工程(2段目))とともに、第二空間18bで希釈水が得られる(希釈工程(2段目))。第二空間18bで得られた希釈水は、配管96を通して排出される。
【0085】
ここで、ポンプ20、配管24,38,40,42,94等が、半透膜モジュール12の第一空間16に被処理水またはアンモニア濃縮水を供給し、第一空間16の出口から得られたアンモニア濃縮水の少なくとも一部を半透膜モジュール12の第二空間18に供給する供給手段として機能する。
【0086】
以上のようにして、処理対象である、アンモニアを含む被処理水から、アンモニアが濃縮された処理水(アンモニア濃縮水)と、希釈水とが得られ、アンモニアを含む被処理水の濃縮が行われる。
【0087】
アンモニア濃縮装置3,4,5,7,8のように多段式の膜モジュールを用いる場合、膜モジュールの段数は、目的の処理水のアンモニア濃度等によって決めればよい。例えば、より薄いアンモニア濃度の被処理水からより濃いアンモニア濃度の処理水を得たい場合には、膜モジュールユニットの段数を増やせばよい。
【0088】
各段の膜モジュールとして、並列的に接続された複数本の膜モジュールを備える膜モジュールユニットを用いてもよい。各膜モジュールユニットにおける膜モジュールの本数は、被処理水の流量等によって決めればよい。
【0089】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置において、各段の膜モジュール12の後段にアンモニア濃縮水槽を設けてもよい。また、各段の膜モジュール12の後段に希釈水槽を設けてもよい。
【0090】
半透膜に接触する全塩素濃度は、有効塩素濃度換算で0.01~100mg/Lの範囲であることが好ましく、0.2~1.0mg/Lの範囲であることがより好ましい。半透膜に接触する全塩素濃度が有効塩素濃度換算で0.01mg/L未満であると、十分な殺菌効果を得ることができない可能性があり、100mg/Lより多いと、酢酸セルロース系の半透膜の劣化、配管等の腐食が起きる可能性がある。
【0091】
被処理水としては、アンモニアを含む水であればよく、特に制限はないが、例えば、半導体工場の排水、化学工場の排水、生活排水等が挙げられる。被処理水の種類としては、硫酸アンモニウム含有排水、フッ化アンモニウム含有排水、塩化アンモニウム含有排水等が挙げられる。本実施形態に係るアンモニア濃縮方法は、例えば、硫酸アンモニウム含有排水を処理し、硫酸アンモニウムを濃縮する方法である。
【0092】
被処理水中のアンモニア濃度は、特に制限はないが、0.1mg/L以上であることが好ましく、200mg/L以上であることがより好ましく、5000~10000mg/Lの範囲であることがさらに好ましい。被処理水中のアンモニア濃度が0.1mg/L未満であると、殺菌剤によりアンモニアが分解され、十分なアンモニア回収率を維持できない可能性がある。アンモニア濃度が200mg/L以上であると、いずれの殺菌剤添加量でもアンモニアはほとんど分解されずに、回収することができる。
【0093】
被処理中のアンモニアのモル濃度に対する全塩素のモル濃度の比は、全塩素濃度がアンモニア濃度と同等量以上ではアンモニアの回収率が低くなる場合があるため、全塩素のモル濃度がアンモニアのモル濃度に対して0.1倍以下であることが好ましく、0.01倍以下であることがより好ましい。
【0094】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法およびアンモニア濃縮装置によって、アンモニア濃縮水中のアンモニア濃度を、例えば、10000mg/L以上、好ましくは20000~40000mg/Lの範囲にまで濃縮することができる。
【0095】
被処理水のpHは、例えば、3~8の範囲であり、4~7の範囲であることが好ましい。被処理水のpHの下限は、5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましく、6.5以上であることがさらに好ましい。被処理水のpHの上限は、8.0以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましい。
【0096】
安定化次亜臭素酸組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものである。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。
【0097】
すなわち、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法では、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる。これにより、被処理水中で、安定化次亜臭素酸組成物が生成すると考えられる。
【0098】
また、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法では、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させる。
【0099】
具体的には本実施形態に係るアンモニア濃縮方法では、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる。
【0100】
また、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法では、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させる。
【0101】
安定化次亜臭素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等の殺菌剤と同等以上の殺菌効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤等の殺菌剤と比較すると、アンモニアと反応しにくく、より少ない添加量でバイオファウリングを抑制することができる。また、安定化次亜臭素酸組成物は塩素系酸化剤等の殺菌剤と比較すると、酢酸セルロース系の半透膜の劣化傾向が小さいと考えられる。このため、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、酢酸セルロース系の半透膜を用いて半透膜処理を行うアンモニア濃縮で用いる殺菌剤としては好適である。
【0102】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法のうち、「臭素系酸化剤」が臭素である場合、塩素系酸化剤が存在しないため、酢酸セルロース系の半透膜への劣化影響が著しく低い。
【0103】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法では、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入すればよい。「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。
【0104】
また、半透膜処理におけるアンモニアを含む被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。
【0105】
殺菌剤は、被処理水に連続的に添加されてもよいし、間欠的に添加されてもよい。
【0106】
安定化次亜臭素酸組成物において、「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、酢酸セルロース系の半透膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
【0107】
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の殺菌剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の殺菌剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の殺菌剤等に比べて、臭素酸の副生が少なく、殺菌剤としてはより好ましい。
【0108】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭素化合物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
【0109】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
【0110】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
R2NSO3H (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。)
【0111】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6~10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0112】
アンモニアを含む被処理水中に、安定化次亜臭素酸組成物にさらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0113】
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法は、半透膜として酢酸セルロース系高分子膜に好適に適用することができる。酢酸セルロース系高分子膜は、塩素系酸化剤に対してある程度の耐性を示すが、遊離塩素等を酢酸セルロース系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の低下が起こる場合がある。しかしながら、殺菌剤として安定化次亜臭素酸組成物を用いると、酢酸セルロース系高分子膜においても、このような膜性能の低下はほとんど起こらないと考えられる。
【0114】
<半透膜処理用殺菌剤>
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法で用いられる半透膜処理用殺菌剤は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有し、さらにアルカリを含有してもよい。
【0115】
また、本実施形態に係るアンモニア濃縮方法で用いられる半透膜処理用殺菌剤は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有し、さらにアルカリを含有してもよい。
【0116】
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
【0117】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物としては、酢酸セルロース系の半透膜をより劣化させないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
【0118】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物、特に臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と比較すると、アンモニアと反応しにくく、バイオファウリング抑制効果を有しながらも、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤のような著しい酢酸セルロース系の半透膜の膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、半透膜処理を行うアンモニア濃縮で用いる殺菌剤としては最適である。
【0119】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
【0120】
安定化次亜臭素酸組成物のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。安定化次亜臭素酸組成物のpHが13.0以下であると安定化次亜臭素酸組成物中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
【0121】
安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、処理水の臭素酸イオン濃度が高くなる場合がある。
【0122】
<半透膜処理用殺菌剤の製造方法>
本実施形態に係るアンモニア濃縮方法で用いられる半透膜処理用殺菌剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
【0123】
臭素とスルファミン酸化合物とを含む半透膜処理用殺菌剤の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0124】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0125】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0126】
臭素の添加率は、安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
【0127】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【実施例】
【0128】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl2/L)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0130】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0131】
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0132】
[安定化次亜塩素酸組成物の調製]
12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、全塩素濃度は6重量%であった。
【0133】
<実施例1>
図9に示すフローで半透膜処理を実施した。
図9に示すアンモニア濃縮装置9では、配管26および配管30を被処理水槽10に接続し、アンモニア濃縮水および希釈水を被処理水槽に循環させた。半透膜モジュールは、酢酸セルロース系の半透膜を備える東洋紡社製の「HP5255S3SI」を使用した。
【0134】
被処理水として、純水に硫酸アンモニウムを添加してアンモニア濃度が10質量%の試験水を調製した。ポンプを起動し、被処理水を半透膜モジュールの第一空間に5L/min、第二空間に1.5L/min通水し、第一空間を加圧した。このときの被処理水とアンモニア濃縮水、希釈水のアンモニア濃度を下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0135】
【0136】
被処理水に対するアンモニア濃縮水のアンモニア濃度は1.25倍となった。このように半透膜モジュールにアンモニア含有水を通水し加圧することで、アンモニアを濃縮することができた。
【0137】
<実施例2>
[殺菌試験]
被処理水として、ブイヨン溶液に、アンモニア濃度が0mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L、100mg/Lとなるように、塩化アンモニウムを添加して試験水を調製した。さらに全塩素濃度が1mg/Lとなるように、殺菌剤として上記安定化次亜臭素酸組成物を添加した。アンモニアのモル濃度に対する全塩素のモル濃度の比は、それぞれ0、2.5、0.25、0.025、0.0025である。調製した溶液を25℃で3時間静置した。試験前と試験後の生菌数とアンモニア濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0138】
全塩素濃度は、HACH社のポケット残留塩素計および全塩素試薬(HACH0582)を用いて、有効塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した。
【0139】
生菌数測定は、ペトリフィルム生菌数測定用プレート(スリーエムヘルスケア社製)を使用した。フィルムにサンプルを1mL接種し、35℃で48時間培養した。48時間経過後にフィルム上に生えたコロニーの数を測定した。
【0140】
アンモニア濃度は、イオンクロマトグラフ(ThermoFisher製、IntegrionRFIC)を使用して、イオンクロマトグラフ法により測定した。
【0141】
<比較例1>
被処理水として、ブイヨン溶液に、アンモニア濃度が0mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L、100mg/Lとなるように、塩化アンモニウムを添加して試験水を調製した。さらに全塩素濃度が1mg/Lとなるように、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加した。アンモニアのモル濃度に対する全塩素のモル濃度の比は、それぞれ0、2.5、0.25、0.025、0.0025である。調製した溶液を25℃で3時間静置した。試験前と試験後の生菌数とアンモニア濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0142】
<比較例2>
被処理水として、ブイヨン溶液に、アンモニア濃度が0mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L、100mg/Lとなるように、塩化アンモニウムを添加して試験水を調製した。さらに全塩素濃度が1mg/Lとなるように、殺菌剤として塩素系酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)とスルファミン酸化合物とを含む上記安定化次亜塩素酸組成物を添加した。アンモニアのモル濃度に対する全塩素のモル濃度の比は、それぞれ0、2.5、0.25、0.025、0.0025である。調製した溶液を25℃で3時間静置した。試験前と試験後の生菌数とアンモニア濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0143】
【0144】
表2は、各条件での試験前後の生菌数とアンモニア濃度を示したものである。このように臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤の場合、アンモニア濃度が増加しても生菌数はほとんど増加せず、殺菌能力を維持することができた。また、アンモニア濃度が1mg/L以上のとき、アンモニアの残存率は80%以上であり、高い値となった。
【0145】
一方、次亜塩素酸ナトリウムの場合、アンモニア濃度が1mg/Lのとき、高いアンモニア残存率を示したが、アンモニア濃度が0mg/Lのときと比較して、100mg/Lのときは生菌数が約1.6倍に増加し、殺菌力が低下した。
【0146】
また、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤の場合、アンモニア濃度は保持されたが、殺菌力が弱く、サンプル水中の菌がほとんど殺菌されなかった。
【0147】
実施例2と比較例1,2の結果から、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤が、同じ殺菌剤添加量の場合、アンモニアを残存させつつ、最も高い殺菌能力を示した。
【0148】
このように、酢酸セルロース系の半透膜を備える半透膜モジュールを用いるアンモニアを含む被処理水の濃縮処理において、被処理水中に安定化次亜臭素酸組成物を存在させることによって、アンモニアの回収率を維持しながらバイオファウリングを抑制することができることがわかった。
【符号の説明】
【0149】
1,2,3,4,5,6,7,8,9 アンモニア濃縮装置、10 被処理水槽、12 膜モジュール、12a 1段目膜モジュール、12b 2段目膜モジュール、14,14a,14b 半透膜、16,16a,16b 第一空間、18,18a,18b 第二空間、20,60,62 ポンプ、22,24,26,28,30,34,36,38,40,42,44,46,64,66,68,70,84,86,88,90,92,94,96 配管、32 殺菌剤添加配管、48 逆浸透膜処理装置、50 RO透過水配管、52 RO濃縮水配管、56 除濁膜処理装置、58 除濁膜透過水槽、80 全塩素濃度測定装置、82 制御装置。