(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20240717BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240717BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F27/00 Q
H01F27/29 P
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2020142763
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2022-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克文
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】行武 哲太郎
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130584(JP,A)
【文献】特開2020-53483(JP,A)
【文献】特開平6-120076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00
H01F17/06
H01F27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する素体と、
前記素体内においてターン数が0.5ターン以下で前記主面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記主面に向かう厚さ方向に延び、前記インダクタ配線に接続された垂直配線と、
前記主面に露出している複数の端子部と、を備え、
複数の前記端子部のうちの少なくとも1つは、前記インダクタ配線に電気的に接続された外部端子であり、
複数の前記端子部のうちの前記外部端子を除く他の端子部は、前記インダクタ配線に電気的に接続されていないダミー部であり、
前記厚さ方向から視たときに前記主面は、前記主面の幾何中心に対して2回対称形状となっており、
前記厚さ方向から視たときに、前記主面を、前記端子部の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとき、
前記各仮想領域には、前記端子部が1つずつ配置されており、
前記ダミー部のうちの1つを特定ダミー部とし、前記特定ダミー部が設けられている前記仮想領域に対して前記幾何中心を中心とする2回対称位置の前記仮想領域に設けられている前記端子部を特定端子部としたとき、
前記特定ダミー部の形状は、前記特定端子部の形状と異な
り、
複数の前記端子部は、前記主面の幾何中心に対して2回対称位置に配置されており、
前記ダミー部は、互いに前記主面の幾何中心に対して2回対称位置に配置されている第1ダミー部及び第2ダミー部を含み、
前記特定ダミー部は前記第1ダミー部であり、前記特定端子部は前記第2ダミー部である
インダクタ部品。
【請求項2】
主面を有する素体と、
前記素体内においてターン数が0.5ターン以下で前記主面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記主面に向かう厚さ方向に延び、前記インダクタ配線に接続された垂直配線と、
前記主面に露出している複数の端子部と、を備え、
複数の前記端子部のうちの少なくとも1つは、前記インダクタ配線に電気的に接続された外部端子であり、
複数の前記端子部のうちの前記外部端子を除く他の端子部は、前記インダクタ配線に電気的に接続されていないダミー部であり、
前記厚さ方向から視たときに前記主面は、前記主面の幾何中心に対して2回対称形状となっており、
前記厚さ方向から視たときに、前記主面を、前記端子部の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとき、
前記各仮想領域には、前記端子部が1つずつ配置されており、
前記ダミー部のうちの1つを特定ダミー部とし、前記特定ダミー部が設けられている前記仮想領域に対して前記幾何中心を中心とする2回対称位置の前記仮想領域に設けられている前記端子部を特定端子部としたとき、
前記特定ダミー部の形状は、前記特定端子部の形状と異な
り、
前記外部端子には、前記厚さ方向に向かって窪む凹部が設けられている
インダクタ部品。
【請求項3】
主面を有する素体と、
前記素体内においてターン数が0.5ターン以下で前記主面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記主面に向かう厚さ方向に延び、前記インダクタ配線に接続された垂直配線と、
前記主面に露出している複数の端子部と、を備え、
複数の前記端子部のうちの少なくとも1つは、前記インダクタ配線に電気的に接続された外部端子であり、
複数の前記端子部のうちの前記外部端子を除く他の端子部は、前記インダクタ配線に電気的に接続されていないダミー部であり、
前記厚さ方向から視たときに前記主面は、前記主面の幾何中心に対して2回対称形状となっており、
前記厚さ方向から視たときに、前記主面を、前記端子部の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとき、
前記各仮想領域には、前記端子部が1つずつ配置されており、
前記ダミー部のうちの1つを特定ダミー部とし、前記特定ダミー部が設けられている前記仮想領域に対して前記幾何中心を中心とする2回対称位置の前記仮想領域に設けられている前記端子部を特定端子部としたとき、
前記特定ダミー部の形状は、前記特定端子部の形状と異な
り、
前記垂直配線として第1垂直配線と第2垂直配線とを備えており、
前記インダクタ配線は、線状に延びる配線本体と、前記配線本体の第1端部に設けられ前記第1垂直配線が接続される第1パッドと、前記配線本体の第2端部に設けられ前記第2垂直配線が接続されている第2パッドと、を有し、
前記インダクタ配線は複数設けられており、
前記複数のインダクタ配線のうちの1つを第1インダクタ配線、他のうちの1つを第2インダクタ配線としたとき、
前記第1インダクタ配線における前記第1パッド及び前記第2パッドのうちの1つが、前記第2インダクタ配線における前記第1パッド及び前記第2パッドのうちの1つと同一のパッドである
インダクタ部品。
【請求項4】
複数の前記端子部は、前記主面の幾何中心に対して2回対称位置に配置されており、
前記ダミー部は、前記主面の幾何中心に対して2回対称とならない位置に配置されている
請求項
2又は請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記ダミー部は複数設けられており、前記複数のダミー部のうち少なくとも1つは、他の前記ダミー部と異なる形状である
請求項
4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記主面は四角形状であり、
前記主面の幾何中心を通り前記主面の一辺に平行な仮想直線を引き、前記主面を第1領域と第2領域とに仮想的に分割したとき、
前記第1領域には、前記ダミー部が設けられていない
請求項
2~請求項
5のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第2領域には、前記第2領域における前記外部端子の数以上の数の前記ダミー部が設けられている
請求項
6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記厚さ方向から視たとき、前記ダミー部の面積は、前記外部端子の面積と同じである
請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記厚さ方向から視たときに、前記ダミー部の少なくとも一部は、前記インダクタ配線と重なる位置に配置されている
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記外部端子及び前記ダミー部は複数設けられており、前記ダミー部の数は、前記外部端子よりも少ない
請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記垂直配線として第1垂直配線と第2垂直配線とを備えており、
前記インダクタ配線は、線状に延びる配線本体と、前記配線本体の第1端部に設けられ前記第1垂直配線が接続される第1パッドと、前記配線本体の第2端部に設けられ前記第2垂直配線が接続される第2パッドと、を有し、
前記配線本体は複数設けられており、
前記端子部は4つ以上設けられている
請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記端子部は、導電性を有する複数の層を備えている
請求項1~請求項1
1のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記厚さ方向から視たとき、前記外部端子のうちの半分以上が、前記ダミー部と光学的に同じ色である
請求項1~請求項1
2のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記外部端子の表面は、平滑部と、前記平滑部よりも表面粗さの大きい粗部とで構成されており、
前記ダミー部の表面は、前記平滑部よりも表面粗さが大きくなっている
請求項1~請求項1
3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記平滑部は、前記垂直配線上に配置されている
請求項1
4に記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記凹部は、前記垂直配線上に配置されている
請求項
2に記載のインダクタ部品。
【請求項17】
前記素体は、前記インダクタ配線を覆う磁性層と、前記磁性層に積層された絶縁層とを有し、
前記絶縁層の外面が前記主面を構成しており、
前記ダミー部は、前記磁性層上に配置されており、且つ前記絶縁層に接している
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項18】
前記第1インダクタ配線の前記配線本体は、直線状に延びており、
前記第2インダクタ配線は、互いに異なる方向に延びる2つの直線部と前記直線部同士を繋ぐ接続部とからなる
請求項
3に記載のインダクタ部品。
【請求項19】
前記厚さ方向から視たときに、前記ダミー部の少なくとも一部は、前記接続部と重なる位置に配置されている
請求項
18に記載のインダクタ部品。
【請求項20】
主面を有する素体と、
前記素体内においてターン数が0.5ターン以下で前記主面と平行に延びるインダクタ配線と、
前記インダクタ配線から前記主面に向かう厚さ方向に延び、前記インダクタ配線に接続された垂直配線と、
前記主面に露出している複数の端子部と、を備え、
複数の前記端子部のうちの少なくとも1つは、前記インダクタ配線に電気的に接続された外部端子であり、
複数の前記端子部のうちの前記外部端子を除く他の端子部は、前記インダクタ配線に電気的に接続されていないダミー部であり、
前記厚さ方向から視たときに前記主面は、前記主面の幾何中心に対して2回対称形状となっており、
前記厚さ方向から視たときに、前記主面を、前記端子部の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとき、
前記各仮想領域には、前記端子部が1つずつ配置されており、
前記ダミー部のうちの1つを特定ダミー部とし、前記特定ダミー部が設けられている前記仮想領域に対して前記幾何中心を中心とする2回対称位置の前記仮想領域に設けられている前記端子部を特定端子部としたとき、
前記特定ダミー部の形状は、前記特定端子部の形状と異な
り、
前記素体は、前記インダクタ配線を覆う磁性層と、前記磁性層に積層された絶縁層とを有し、
前記絶縁層の外面が前記主面を構成しており、
前記ダミー部は、前記磁性層が前記絶縁層に露出している部分である
インダクタ部品。
【請求項21】
前記垂直配線として第1垂直配線と第2垂直配線とを備えており、
前記インダクタ配線は、線状に延びる配線本体と、前記配線本体の第1端部に設けられ前記第1垂直配線が接続される第1パッドと、前記配線本体の第2端部に設けられ前記第2垂直配線が接続されている第2パッドと、を有し、
前記インダクタ配線は複数設けられており、
前記複数のインダクタ配線のうちの1つを第1インダクタ配線、他のうちの1つを第2インダクタ配線としたとき、
前記第1インダクタ配線における前記第1パッド及び前記第2パッドのうちの1つが、前記第2インダクタ配線における前記第1パッド及び前記第2パッドのうちの1つと同一のパッドである
請求項20に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているインダクタ部品は、磁性材料を含んだ直方体状の素体を備えている。素体の内部には、2つのインダクタ配線が配置されている。各インダクタ配線は、渦巻き状に延びている。また、2つのインダクタ配線は、素体内部において並べて配置されている。インダクタ配線の両端部は、素体の外面に露出している。すなわち、インダクタ配線の4つの端部が、素体の外面に露出している。素体の外面には、各インダクタ配線の端部を覆うように4つの外部端子が形成されている。4つの外部端子は、素体の各角部に配置されている。また、4つの外部端子は、すべて同一の形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インダクタ部品において、インダクタ配線の配置や形状等によっては、インダクタ部品の向きを特定したいことがある。しかし、特許文献1のインダクタ部品に設けられた外部端子は、すべて同じ形状である上、素体のそれぞれの角部に配置されている。そのため、特許文献1に開示のインダクタ部品の向きを、外見のみに基づいて正確に特定することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、主面を有する素体と、前記素体内においてターン数が0.5ターン以下で前記主面と平行に延びるインダクタ配線と、前記インダクタ配線から前記主面に向かう厚さ方向に延び、前記インダクタ配線に接続された垂直配線と、前記主面に露出している複数の端子部と、を備え、複数の前記端子部のうちの少なくとも1つは、前記インダクタ配線に電気的に接続された外部端子であり、複数の前記端子部のうちの前記外部端子を除く他の端子部は、前記インダクタ配線に電気的に接続されていないダミー部であり、前記厚さ方向から視たときに前記主面は、前記主面の幾何中心に対して2回対称形状となっており、前記厚さ方向から視たときに、前記主面を、前記端子部の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとき、前記各仮想領域には、前記端子部が1つずつ配置されており、前記ダミー部のうちの1つを特定ダミー部とし、前記特定ダミー部が設けられている前記仮想領域に対して前記幾何中心を中心とする2回対称位置の前記仮想領域に設けられている前記端子部を特定端子部としたとき、前記特定ダミー部の形状は、前記特定端子部の形状と異なるインダクタ部品である。
【0006】
上記構成のインダクタ部品では、特定ダミー部の形状が、特定ダミー部とおよそ対角に位置する特定端子部の形状と異なっている。そのため、特定ダミー部の形状を指標とすることで、インダクタ部品の向きがより正確に特定しやすくなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、インダクタ部品の向きが特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2における3-3線に沿うインダクタ部品の断面図。
【
図4】
図2における4-4線に沿うインダクタ部品の断面図。
【
図5】
図2における5-5線に沿うインダクタ部品の断面図。
【
図21】インダクタ部品の外部端子の一部を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、インダクタ部品について説明する。なお、図面は理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものとは異なる場合がある。
【0010】
図1に示すように、インダクタ部品10は、全体として、厚さ方向Tdに5つの層が積層されたような構造になっている。なお、以下の説明では、厚さ方向Tdの一方側を上側とし、その反対側を下側とする。
【0011】
第1層L1は、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42と、内磁路部51と、外磁路部52と、によって構成されている。
【0012】
第1層L1は、厚さ方向Tdから視ると、長方形状となっている。なお、この長方形状の長辺に沿う方向を長手方向Ld、短辺に沿う方向を短手方向Wdとする。
第1インダクタ配線20Rは、第1配線本体21Rと、第1配線本体21Rの第1端部に設けられた第1パッド22Rと、第1配線本体21Rの第2端部に設けられた第2パッド23Rと、によって構成されている。第1配線本体21Rは、第1層L1の長手方向Ldに直線状に延びている。第1配線本体21Rにおいて長手方向Ldの第1端側の第1端部には、第1パッド22Rが接続されている。第1パッド22Rの短手方向Wdの寸法は、第1配線本体21Rの短手方向Wdの寸法よりも大きくなっている。第1パッド22Rは、厚さ方向Tdから視たときに、略正方形状になっている。また、第1配線本体21Rにおいて長手方向Ldの第2端側の第2端部には第2パッド23Rが接続されている。第2パッド23Rの短手方向Wdの寸法は、第1配線本体21Rの短手方向Wdの寸法よりも大きくなっている。第2パッド23Rは、厚さ方向Tdから視たときに、第1パッド22Rと同じ略正方形状になっている。なお、第1インダクタ配線20Rは、第1層L1の短手方向Wdの第2端側に寄って配置されている。
【0013】
第2インダクタ配線20Lは、第2配線本体21Lと、第2配線本体21Lの第1端部に設けられた第1パッド22Lと、第2配線本体21Lの第2端部に設けられた上述の第2パッド23Rと、によって構成されている。
【0014】
第2配線本体21Lは、2つの直線部とこれらを繋ぐ部分とを有していて、全体としてL字状に延びている。具体的には、第2配線本体21Lは、長手方向Ldに延びる長直線部31と、短手方向Wdに延びる短直線部32と、これらを繋ぐ接続部33とからなる。
【0015】
図2に示すように、第1層L1の短手方向Wdの中央を通り、且つ長手方向Ldに延びる直線を対称軸AXとしたとき、長直線部31は、対称軸AXに対して第1配線本体21Rと線対称の位置に配置されている。また、長直線部31が長手方向Ldに延びる長さは、第1配線本体21Rが長手方向Ldに延びる長さよりもやや長くなっている。また、長直線部31の短手方向Wdの寸法は、第1配線本体21Rの短手方向Wdの寸法と等しくなっている。長直線部31の長手方向Ldの第1端側の第1端は、第1パッド22Lに接続されている。長直線部31の長手方向Ldの第2端側の第2端は、接続部33の第1端に接続されている。
【0016】
接続部33のうち、長直線部31と繋がっていない第2端は、短手方向Wdの第2端側を向いている。すなわち、接続部33は、第2配線本体21Lにおいて、長手方向Ldの第1端側から短手方向Wdの第2端側に向かって90度に湾曲している。
【0017】
接続部33の短手方向Wdの第2端側を向いている第2端は、短直線部32の第1端に接続されている。短直線部32の長手方向Ldの寸法は、長直線部31の短手方向Wdの寸法と等しくなっている。短直線部32のうち、短手方向Wdの第2端側を向く第2端は、第1配線本体21Rに接続された第2パッド23Rに接続されている。すなわち、第1インダクタ配線20Rにおける第2パッド23Rが、第2インダクタ配線20Lにおける第2パッド23Rと同一のパッドである。
【0018】
上記、第2インダクタ配線20Lのターン数は、仮想ベクトルに基づいて定められている。仮想ベクトルの始点は、第2配線本体21Lの配線幅の中央を通って第2配線本体21Lの延設方向に延びる中心軸線C2上に配置されている。そして、仮想ベクトルは、厚さ方向Tdから視たときに第2配線本体21Lの始点を第1端に配置した状態から中心軸線C2の第2端まで移動させたときに、仮想ベクトルの向きが回転した角度が360度のときに、ターン数は1.0ターンとして定められる。ただし、仮想ベクトルの向きが、複数回巻回する場合、連続する同一方向の巻回である場合にターン数が増加するものとする。仮想ベクトルの向きが、1回前に巻回した方向と異なる方向に巻回した場合、ターン数は再度0ターンからカウントする。例えば、時計回りに180度巻回し、その後反時計回りに180度巻回した場合は0.5ターンとなる。本実施形態では、第2配線本体21L上に仮想的に配置された仮想ベクトルの向きは、接続部33で90度回転される。そのため、第2配線本体21Lが巻回されているターン数は、0.25ターンとなっている。なお、第2配線本体21Lの中心軸線C2は、第2配線本体21Lが延びる方向と直交する方向において第2配線本体21Lの中間点を辿った線である。すなわち、第2配線本体21Lの中心軸線C2は、厚さ方向Tdから視たときに、略L字状になっている。
【0019】
図2に示すように、第2配線本体21Lの長直線部31の長手方向Ldの第1端側の第1端には、第1パッド22Lが接続されている。当該第1パッド22Lは、第1配線本体21Rに接続された第1パッド22Rと、同一の形状である。すなわち、第1パッド22Lは、厚さ方向Tdから視たときに、略正方形状である。また、当該第1パッド22Lは対称軸AXに対して、第1配線本体21Rに接続された第1パッド22Rに線対称に配置されている。
【0020】
第1層L1において、第1配線本体21Rに対して第1パッド22Rを挟んだ反対側からは、第1支持配線41が延びている。すなわち、第1支持配線41は、第1パッド22Rにおける長手方向Ldの第1端側の縁から延びている。第1支持配線41は、長手方向Ldと平行に直線状に延びている。第1支持配線41は、第1層L1の長手方向Ldの第1端側の第1側面91まで延びていて、第1側面91に露出している。同様に、第1層L1において、第2配線本体21Lに対して第1パッド22Lを挟んだ反対側からも、第1支持配線41が延びている。
【0021】
第1層L1において、第1配線本体21Rに対して第2パッド23Rを挟んだ反対側からは、第2支持配線42が延びている。すなわち、第2支持配線42は、第2パッド23Rにおける長手方向Ldの第2端側の縁から延びている。第2支持配線42は、長手方向Ldと平行に直線状に延びている。第2支持配線42は、第1層L1の長手方向Ldの第2端側の第2側面92まで延びていて、第2側面92に露出している。なお、本実施形態では、第2配線本体21Lの短直線部32に対して第2パッド23Rを挟んだ反対側には、支持配線は設けられていない。
【0022】
第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lは、導電性材料からなっている。本実施形態において、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの組成は、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%以下とすることができる。
【0023】
第1支持配線41及び第2支持配線42の材質は、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lと同じ導電性材料である。ただし、第1支持配線41のうち、第1側面91に露出している露出面41Aを含む一部分は、Cu酸化物になっている。同様に、第2支持配線42のうち第2側面92に露出している露出面42Aを含む一部分は、Cu酸化物になっている。
【0024】
図1に示すように、第1層L1において、第1インダクタ配線20Rと第2インダクタ配線20Lとの間の領域は、内磁路部51となっている。内磁路部51の材質は、金属磁性粉を含有する有機樹脂となっている。この実施形態では、金属磁性粉は、Fe系合金又はアモルファス合金からなる金属磁性粉である。より具体的には、金属磁性粉は、鉄を含むFeSiCr系金属粉である。また、金属磁性粉の平均粒子径は、約5マイクロメートルとすることができる。
【0025】
なお、この実施形態において、金属磁性粉の粒子径とは、内磁路部51を切断した断面で現れる金属磁性粉の断面形状において、その断面形状の縁から縁までに引ける線分のうち最も長い長さである。そして、平均粒子径とは、内磁路部51を切断した断面で現れる金属磁性粉のうち、ランダムな3点以上の金属磁性粉の粒子径の平均である。
【0026】
第1層L1において、厚さ方向Tdから視たときに、第1インダクタ配線20Rよりも短手方向Wdの第2端側の領域、及び第2インダクタ配線20Lよりも短手方向Wdの第1端側の領域は、外磁路部52となっている。外磁路部52の材質は、内磁路部51と同じ磁性材料となっている。
【0027】
本実施形態において、第1層L1の厚さ方向Tdの寸法、すなわち、第1インダクタ配線20R、第2インダクタ配線20L、第1支持配線41、及び第2支持配線42の厚さ方向Tdの寸法は、およそ40マイクロメートルとすることができる。
【0028】
第1層L1の厚さ方向Tdの下側の面である下面には、厚さ方向Tdから視たときに第1層L1と同じ長方形状の第2層L2が積層されている。第2層L2は、2つの絶縁樹脂61と、絶縁樹脂磁性層53と、によって構成されている。
【0029】
絶縁樹脂61は、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42とを、厚さ方向Tdの下側から覆っている。絶縁樹脂61は、厚さ方向Tdから視ると、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42との外縁より僅かに広い範囲を覆うような形状となっている。その結果、一方の絶縁樹脂61は、直線の帯状となっている。他方の絶縁樹脂61は、略L字状に延びる帯状となっている。絶縁樹脂61の材質は、絶縁性の樹脂であり、この実施形態では、例えばポリイミド系樹脂であるとすることができる。絶縁樹脂61は第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lよりも絶縁性が高くなっている。絶縁樹脂61は、第1インダクタ配線20Rと第2インダクタ配線20Lとの数及び配置に対応して、短手方向Wdに2つ並んで設けられているとともに、端部において互いに接続されている。
【0030】
第2層L2において、2つの絶縁樹脂61を除く部分は、絶縁樹脂磁性層53となっている。絶縁樹脂磁性層53の材質は、上述した内磁路部51や外磁路部52と同じ磁性材料となっている。
【0031】
第2層L2の厚さ方向Tdの下側の面である下面には、厚さ方向Tdから視たときに第2層L2と同じ長方形状の第3層L3が積層されている。第3層L3は、第1磁性層54となっている。そのため、第1磁性層54は、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lとよりも下側に配置されている。第1磁性層54の材質は、上述した内磁路部51や外磁路部52、絶縁樹脂磁性層53と同じ金属磁性粉を含有する有機樹脂となっている。
【0032】
一方、第1層L1の厚さ方向Tdの上側の面である上面には、厚さ方向Tdから視たときに第1層L1と同じ長方形状の第4層L4が積層されている。第4層L4は、2つの第1垂直配線71と、1つの第2垂直配線72と、第2磁性層55とによって構成されている。
【0033】
第1垂直配線71は、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lにおける第1パッド22R、22Lの上面に、他の層を介することなく直接接続されている。すなわち、第1パッド22Rには、第1垂直配線71、第1配線本体21Rの第1端部及び第1支持配線41が接続されている。第1パッド22Lには、第1垂直配線71、第2配線本体21Lの第1端部及び第1支持配線41が接続されている。2つの第1垂直配線71は、対称軸AXに対して線対称となる位置に配置されている。第1垂直配線71の材質は、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lと同じ材質になっている。第1垂直配線71は、正四角柱状となっており、正四角柱の軸線方向が厚さ方向Tdと一致している。
【0034】
図2に示すように、厚さ方向Tdから視たときに、正方形状の第1垂直配線71の各辺の寸法は、正方形状の第1パッド22R、22Lの各辺の寸法よりも僅かに小さくなっている。そのため、第1パッド22R、22Lの面積は、第1パッド22R、22Lとの接続箇所における第1垂直配線71の面積よりも大きくなっている。なお、厚さ方向Tdの上側から視たときに、第1垂直配線71の中心軸線CV1は、略正方形状の第1パッド22R、22Lの幾何中心と一致している。第1垂直配線71は、第1パッド22R、22Lの数に対応して2つ設けられている。
【0035】
図1に示すように、第2垂直配線72は、第1インダクタ配線20Rにおける第2パッド23Rの上面に、他の層を介することなく直接接続されている。すなわち、第2パッド23Rには、第2垂直配線72、第1配線本体21Rの第2端部、第2配線本体21Lの第2端部及び第2支持配線42が接続されている。第2垂直配線72の材質は、第1インダクタ配線20Rと同じ材質となっている。第2垂直配線72は、正四角柱状となっており、正四角柱の軸線方向が厚さ方向Tdと一致している。
【0036】
図2に示すように、厚さ方向Tdから視たときに、正方形状の第2垂直配線72の各辺の寸法は、正方形状の第2パッド23Rの各辺の寸法よりも僅かに小さくなっている。そのため、第2パッド23Rの面積は、第2パッド23Rとの接続箇所における第2垂直配線72の面積よりも大きくなっている。なお、厚さ方向Tdの上側から視たときに、第2垂直配線72の中心軸線CV2は、略正方形状の第2パッド23Rの幾何中心と一致している。第2垂直配線72は、第2パッド23Rの数に対応して1つ設けられている。
【0037】
図1に示すように、第4層L4において、2つの第1垂直配線71と1つの第2垂直配線72とを除く部分は、第2磁性層55となっている。そのため、第2磁性層55は、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、各支持配線41、42との上面に積層されている。第2磁性層55の材質は、上述した第1磁性層54と同じ磁性材料となっている。
【0038】
インダクタ部品10において、内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第1磁性層54と、第2磁性層55と、によって、磁性層50が構成されている。内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第1磁性層54と、第2磁性層55とは、接続されており、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lを取り囲んでいる。このように、磁性層50は第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lに対して閉磁路を構成している。そのため、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lは、磁性層50の内部で延びている。なお、内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第1磁性層54と、第2磁性層55と、は、区別して図示しているが、磁性層50として一体化されていて境界が確認できないこともある。
【0039】
第4層L4の厚さ方向Tdの上側の面である上面には、厚さ方向Tdから視たときに第4層L4と同じ長方形状の第5層L5が積層されている。第5層L5は、4つの端子部80と、絶縁層90と、によって構成されている。4つの端子部80のうち2つは、第1垂直配線71に電気的に接続された第1外部端子81である。また、4つの端子部80のうち1つは、第2垂直配線72に電気的に接続された第2外部端子82である。すなわち、第1外部端子81及び第2外部端子82は、各インダクタ配線20R、20Lに電気的に接続されている。4つの端子部80のうち、第1外部端子81及び第2外部端子82を除く残りの1つは、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lのいずれにも電気的に接続されていないダミー部83である。
【0040】
図2に示すように、第5層L5の長手方向Ldの中央を通り、短手方向Wdに平行な仮想直線BXを引いたとき、上述の対称軸AXと仮想直線BXとが交差する第5層L5の上面上の点が第5層L5の幾何中心Gである。4つの端子部80は、厚さ方向Tdから視たときに第5層L5の幾何中心Gに対して2回対称位置に配置されている。
【0041】
第1外部端子81は、第1垂直配線71の上面に、他の層を介することなく直接接続されている。第1外部端子81は、厚さ方向Tdから視たときに、長方形状となっており、第2磁性層55上にも位置している。第1外部端子81が第1垂直配線71と接触している面積は、第1外部端子81の全体の面積に対して半分以下である。第1外部端子81の長方形の長辺は、第5層L5の長手方向Ldと平行に延びており、短辺は、第5層L5の短手方向Wdと平行に延びている。第1外部端子81は、第1垂直配線71の数に対応して2つ設けられている。
【0042】
第2外部端子82は、第2垂直配線72の上面に、他の層を介することなく直接的に接続されている。第2外部端子82が第2垂直配線72と接触している面積は、第2外部端子82の全体の面積に対して半分以下である。第2外部端子82は、厚さ方向Tdから視たときに、長方形状となっており、第2磁性層55上にも位置している。第2外部端子82の長方形の長辺は、第5層L5の長手方向Ldと平行に延びており、短辺は、第5層L5の短手方向Wdと平行に延びている。
【0043】
図3に示すように、ダミー部83は、第4層L4の第2磁性層55の上面に、配置されている。
図2に示すように、ダミー部83は、厚さ方向Tdから視たときに、第1外部端子81及び第2外部端子82と、異なる形状をしている。本実施形態では、ダミー部83は、厚さ方向Tdから視たときに楕円形状になっている。なお、ダミー部83の形状はこれに限らず、例えば、第1外部端子81及び第2外部端子82と異なる形状であるならば、長方形状、円形状等であってもよい。ダミー部83の楕円の長軸は、第5層L5の長手方向Ldと平行に延びており、短軸は第5層L5の短手方向Wdと平行に延びている。
【0044】
厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の大半の部分は、第2インダクタ配線20Lと重なっている。より具体的には、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83は、第2インダクタ配線20Lにおける接続部33と重なる位置に配置されている。また、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の面積は、第1外部端子81及び第2外部端子82の面積と同じである。なお、本実施形態において、「面積が同じ」とは、製造上の誤差を許容するものである。したがって、ダミー部83と第1外部端子81及び第2外部端子82との面積の差が±10%以内であれば、面積が同じであるとみなせる。
【0045】
第5層L5において、端子部80を除く部分は、絶縁層90となっている。換言すると、第4層L4の上面のうち、2つの第1外部端子81と、1つの第2外部端子82と、1つのダミー部83とによって覆われていない範囲は、第5層L5の絶縁層90によって覆われている。絶縁層90は、磁性層50よりも絶縁性が高く、本実施形態では、絶縁層90はソルダーレジストとなっている。絶縁層90の厚さ方向Tdの寸法は、端子部80のいずれの厚さ方向Tdの寸法よりも小さくなっている。
【0046】
本実施形態においては、磁性層50と、絶縁樹脂61と、絶縁層90とによって、素体BDが構成されている。すなわち、素体BDは、厚さ方向Tdから視たとき、長方形状になっている。本実施形態において、素体BDの厚さ方向Tdの寸法は、約0.2ミリメートルとすることができる。
【0047】
素体BDの表面のうち、絶縁層90における厚さ方向Tdの上側の面が主面MFとなっている。したがって、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lは、素体BDの主面MFと平行に延びている。そして、第1インダクタ配線20Rの第1パッド22Rから主面MFに向かって第1垂直配線71が厚さ方向Tdに延びている。第1垂直配線71は主面MFに露出している。第2インダクタ配線20Lの第1パッド22Lから主面MFに向かって第1垂直配線71が厚さ方向Tdに延びている。当該第1垂直配線71は主面MFに露出している。第1インダクタ配線20Rの第2パッド23Rからは主面MFに向かって第2垂直配線72が厚さ方向Tdに延びている。第2垂直配線72は主面MFに露出している。端子部80の上面は、主面MFに露出し、主面MFよりも厚さ方向Tdの上側に位置している。すなわち、ダミー部83を含む各端子部80の外縁は、絶縁層90に接している。なお、本実施形態のように、第1垂直配線71及び第2垂直配線72における主面MFに露出している面の少なくとも一部が、第1外部端子81及び第2外部端子82に覆われていることもある。
【0048】
素体BDは主面MFに垂直な第1側面93を有している。なお、第1層L1の第1側面91は、素体BDの第1側面93の一部である。また、素体BDは主面MFに垂直な側面であって第1側面93と平行な第2側面94を有している。なお、第1層L1の第2側面92は、素体BDの第2側面94の一部である。すなわち、第1支持配線41は、第1インダクタ配線20Rから主面MFと平行に延び、端部が素体BDの第1側面93に露出している。同様に、第2支持配線42は、第1インダクタ配線20Rから主面MFと平行に延び、端部が素体BDの第2側面94に露出している。
【0049】
本実施形態では、第5層L5の幾何中心Gは、主面MFの幾何中心Gと一致する。また、厚さ方向Tdから視たときに、主面MFの幾何中心Gと素体BDの幾何中心Gとは一致している。本実施形態において、主面MFは、主面MFの幾何中心Gに対して2回対称形状になっている。なお、主面MFにおける外縁の形状が幾何中心Gに対して2回対称形状であればよく、主面MFの厚さ方向Tdの形状は考慮されない。例えば、主面MFの端子部80が配置されている開口は、幾何中心Gに対して2回対称形状でなくてもよい。
【0050】
図2に示すように、主面MFの幾何中心Gを通り、主面MFの短手方向Wdの一辺に平行な仮想直線BXにおいて、主面MFを第1領域と第2領域に仮想的に分割したとする。本実施形態では、仮想直線BXよりも長手方向Ldの第1端側を第1領域としたとき、第1領域には、ダミー部83が設けられていない。仮想直線BXよりも長手方向Ldの第2端側を第2領域としたとき、第2領域には、第2領域に設けられた第2外部端子82の数と同じ数のダミー部83が設けられている。なお、主面MFの幾何中心Gを通り、主面MFの長手方向Ldの一辺に平行な位置、すなわち対称軸AXと同じ位置に仮想直線を引き、主面MFを第1領域と第2領域に仮想的に分割したとする。例えば、対称軸AXと同じ位置の仮想直線よりも短手方向Wdの第2端側の領域を第1領域としたとき、第1領域には、ダミー部83が設けられていない。また、対称軸AXと同じ位置の仮想直線よりも短手方向Wdの第1端側の領域を第2領域としたとき、第2領域には、第1外部端子81と同じ数のダミー部83が設けられている。ただし、幾何中心を通り、主面の一辺と平行な仮想直線が複数存在する場合、そのうちの1つの仮想直線で主面を仮想的に分割したときの第1領域でダミー部が設けられておらず、第2領域において第2領域に設けられた外部端子以上のダミー部が設けられていればよい。
【0051】
また、本実施形態に設けられたダミー部83は1つであり、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部同士が、主面MFの幾何中心Gに対して2回対称とならない位置に配置されている。
【0052】
ここで、
図2に示すように、厚さ方向Tdから視たときに、仮想直線BXと対称軸AXとによって、主面MFを、端子部80の数と同数で互いに合同な複数の仮想領域に分割したとする。すなわち、仮想直線BXと対称軸AXとによって、主面MFを4つ長方形状の仮想領域に分割したとする。このとき、4つの仮想領域には、端子部80が1つずつ配置されている。
【0053】
具体的には、仮想直線BXよりも長手方向Ldの第1端側、且つ対称軸AXよりも短手方向Wdの第2端側の仮想領域を第1仮想領域VA1とする。第1仮想領域VA1には、端子部80のうちの第1外部端子81が設けられている。仮想直線BXよりも長手方向Ldの第2端側、且つ対称軸AXよりも短手方向Wdの第2端側の仮想領域を第2仮想領域VA2とする。第2仮想領域VA2には、第2外部端子82が設けられている。仮想直線BXよりも長手方向Ldの第1端側、且つ対称軸AXよりも短手方向Wdの第1端側の仮想領域を第3仮想領域VA3とする。第3仮想領域VA3には、第1外部端子81が配置されている。また、仮想直線BXよりも長手方向Ldの第2端側、且つ対称軸AXよりも短手方向Wdの第1端側の仮想領域を第4仮想領域VA4とする。第4仮想領域VA4には、ダミー部83が設けられている。
【0054】
第4仮想領域VA4に設けられたダミー部83を特定ダミー部83Sとし、特定ダミー部83Sが設けられている第4仮想領域VA4に対して主面MFの幾何中心Gを中心とする2回対称位置の仮想領域に設けられている端子部80を特定端子部80Sとする。すなわち、特定端子部80Sは、第1仮想領域VA1に設けられている第1外部端子81である。厚さ方向Tdから視たときに、特定ダミー部83Sの形状は楕円形状であり、特定端子部80Sの形状と異なっている。
【0055】
次に、各配線について詳述する。
図2に示すように、厚さ方向Tdから視たとき、第1配線本体21Rの中心軸線C1は、長手方向Ldに延びている。なお、第1配線本体21Rの中心軸線C1は、第1配線本体21Rが延びる方向と直交する方向、すなわち短手方向Wdにおいて第1配線本体21Rの中間点を辿った線である。
【0056】
上述したように、第2インダクタ配線20Lの第2配線本体21Lの中心軸線C2は略L字状に延びている。ここで、第2配線本体21Lの長直線部31の配線長は、第1配線本体21Rの配線長よりも長くなっている。加えて、第2配線本体21Lは、接続部33および短直線部32を有している。したがって、第2配線本体21Lの配線長の方が、第1配線本体21Rの配線長よりも、長くなっている。具体的には、第2配線本体21Lの配線長は、第1配線本体21Rの配線長の1.2倍以上である。
【0057】
上記の配線長の違いを反映して、第2インダクタ配線20Lのインダクタンス値は、第1インダクタ配線20Rのインダクタンス値の1.1倍以上になっている。また、本実施形態では、第1インダクタ配線20Rのインダクタンス値はおよそ2.5nHとすることができる。
【0058】
第1インダクタ配線20Rの第1配線本体21Rは、素体BDにおける長手方向Ldの外縁の一辺に沿って延びている。第2インダクタ配線20Lの第1パッド22L及び第2パッド23Rは、素体BDの幾何中心Gに対して対称的な位置に配置されている。本実施形態では、第2インダクタ配線20Lの第1パッド22Lと第2パッド23Rとは、幾何中心Gを中心として2回対称の位置に配置されている。
【0059】
第1インダクタ配線20Rは、第2インダクタ配線20Lと互いに平行に延びる平行部分を有している。具体的には、第1配線本体21Rと、第2配線本体21Lの長直線部31とが平行部分に該当する。これら第1配線本体21R及び長直線部31は、第1層L1において短手方向Wdに並設されている。なお、平行部分は、実質的に平行であればよく、製造誤差を許容する。
【0060】
以下の説明では、短手方向Wdにおける第1配線本体21Rの中心軸線C1と、第2配線本体21Lの長直線部31における中心軸線C2との距離を配線本体間のピッチX1とする。すなわち、配線本体間のピッチは、隣り合う平行部分のピッチである。
【0061】
また、隣り合う平行部分の間隔、すなわち、
図2の第1配線本体21Rの短手方向Wdの第1端側と第2配線本体21Lの長直線部31の短手方向Wdの第2端側との間の距離は、例えば、およそ200マイクロメートルになっている。
【0062】
図2に示すように、短手方向Wdの第2端側に位置する平行部分である、第1配線本体21Rの中心軸線C1から、第1配線本体21Rに最も近い短手方向Wdの素体BDの端、すなわち第2端側の端までの距離を第1距離Y1とする。
【0063】
短手方向Wdの第1端側に位置する平行部分である長直線部31の中心軸線C2から、長直線部31に最も近い短手方向Wdの素体BDの端、すなわち第1端側の端までの距離を第2距離Y2とする。本実施形態において、第1距離Y1は、第2距離Y2と同じ寸法である。
【0064】
短手方向Wdにおいて、配線本体間のピッチX1は、第1距離Y1及び第2距離Y2と寸法が異なっている。具体的には、配線本体間のピッチX1は、およそ「250マイクロメートル」とすることができる。第1距離Y1、及び第2距離Y2は、およそ「175マイクロメートル」とすることができる。第1距離Y1、及び第2距離Y2は、ピッチX1の2分の1よりもやや大きいことが好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、ピッチX1、第1距離Y1、第2距離Y2の平均値は、「200マイクロメートル」である。上記平均値に対するピッチX1の割合は「125%」である。また、上記平均値に対する第1距離Y1及び第2距離Y2の割合は、「87.5%」である。したがって、上記平均値に対するピッチX1、第1距離Y1及び第2距離Y2の割合は、いずれも50%以上且つ150%以下である。
【0066】
第1インダクタ配線20Rの第1パッド22Rに接続している第1支持配線41の中心軸線A1は、長手方向Ldに延びている。第1支持配線41の中心軸線A1は、第1支持配線41が延びる方向と直交する方向、すなわち短手方向Wdにおいて第1支持配線41の中間点を辿った線である。
【0067】
第1支持配線41の中心軸線A1は、第1配線本体21Rの中心軸線C1よりも短手方向Wdの外側に位置している。すなわち、第1インダクタ配線20Rに接続している第1支持配線41の中心軸線A1と第1配線本体21Rの中心軸線C1とは異なる直線上に位置する。
【0068】
また、第1支持配線41の中心軸線A1の延長線は、第1垂直配線71の中心軸線CV1を通過する。すなわち、第1支持配線41の中心軸線A1の延長線は、第1垂直配線71と第1パッド22Rとの接続面の中心を通過する。
【0069】
第2インダクタ配線20Lの第1パッド22Lに接続している第1支持配線41の中心軸線A1は、長手方向Ldに延びている。第1支持配線41の中心軸線A1は、第1支持配線41が延びる方向と直交する方向、すなわち短手方向Wdにおいて第1支持配線41の中間点を辿った線である。
【0070】
第1支持配線41の中心軸線A1は、第2配線本体21Lの中心軸線C2よりも短手方向Wdの外側に位置している。すなわち、第2インダクタ配線20Lに接続している第1支持配線41の中心軸線A1の延長線と第2配線本体21Lの中心軸線C2とは異なる直線上に位置する。
【0071】
また、第1支持配線41の中心軸線A1の延長線は、第1垂直配線71の中心軸線CV1を通過する。すなわち、第1支持配線41の中心軸線A1の延長線は、第1垂直配線71と第1パッド22Lとの接続面の中心を通過する。
【0072】
なお、第1インダクタ配線20Rに接続している第1支持配線41と、第2インダクタ配線20Lに接続している第1支持配線41とは、対称軸AXを基準に線対称の位置に配置されている。
【0073】
また、第2支持配線42の中心軸線A2は、長手方向Ldに延びている。第2支持配線42の中心軸線A2は、第2支持配線42が延びる方向と直交する方向、すなわち短手方向Wdにおいて第2支持配線42の中間点を辿った線である。
【0074】
第2支持配線42の中心軸線A2は、第1配線本体21Rの中心軸線C1よりも短手方向Wdの外側に位置している。すなわち、第2支持配線42の中心軸線A2と第1配線本体21Rの中心軸線C1とは異なる直線上に位置する。
【0075】
また、第2支持配線42の中心軸線A2上には、第2垂直配線72が配置されている。そして、第2支持配線42の中心軸線A2の延長線は、第2垂直配線72の中心軸線CV2を通過する。すなわち、第2支持配線42の中心軸線A2の延長線は、第2垂直配線72と第2パッド23Rとの接続面の中心を通過する。
【0076】
第1インダクタ配線20Rから延びている第1支持配線41及び第2支持配線42は、短手方向Wdにおいて同じ位置に配置されている。すなわち、第1支持配線41の中心軸線A1と第2支持配線42の中心軸線A2とは同一直線上に位置している。なお、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの最小線幅を基準に、10%以内のずれであれば、同一直線上にある、とみなす。具体的には、本実施形態における第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの最小線幅は、第1配線本体21R及び第2配線本体21Lの線幅である50マイクロメートルとすることができる。したがって、本実施形態における「同一直線上」とは、2つの軸線の最短距離が5マイクロメートル以内の場合であり、「異なる直線上」とは、2つの軸線の最短距離が5マイクロメートルを超える場合である。
【0077】
上述したように、第1層L1において、各第1支持配線41は、対称軸AXを基準として、線対称に配置されている。したがって、
図2に示すように、素体BDの短手方向Wdの第2端側の端から、第1インダクタ配線20Rから延びる第1支持配線41の中心軸線A1までの距離Q1は、素体BDの短手方向Wdの第1端側の端から、第2インダクタ配線20Lから延びる第1支持配線41の中心軸線A1までの距離Q2と同じである。
【0078】
一方、短手方向Wdにおいて、第1インダクタ配線20Rから延びる第1支持配線41の中心軸線A1から、第2インダクタ配線20Lから延びる第1支持配線41の中心軸線A1までのピッチP1は、上述の距離Q1及び距離Q2よりも大きくなっている。具体的には、ピッチP1は、距離Q1及び距離Q2のおよそ2倍の長さである。
【0079】
図4に示すように、第1配線本体21Rの短手方向Wdの配線幅H1は第2配線本体21Lの短手方向Wdの配線幅H2と等しくなっている。また、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lは同一の第1層L1に配置されているため、第1配線本体21Rと第2配線本体21Lの厚さ方向Tdの寸法も同じである。したがって、第1配線本体21Rの中心軸線C1に直交する断面での第1配線本体21Rの断面積は、第2配線本体21Lの断面積と等しくなっている。なお、本実施形態において、第1配線本体21Rと第2配線本体21Lとの断面積の差が、各配線本体21R、21Lの断面積に対して10%以内であれば、断面積が等しい、とみなす。
【0080】
図4及び
図5に示すように、第1支持配線41の短手方向Wdの配線幅W1は、第1配線本体21Rの短手方向Wdの配線幅H1よりも小さくなっている。ここで、第1支持配線41と第1配線本体21Rとは同一の第1層L1に設けられており、厚さ方向Tdの寸法は略同じである。したがって、配線幅の違いを反映して各第1支持配線41の断面積は、第1配線本体21Rの断面積よりも小さくなっている。
【0081】
同様に、
図2及び
図4に示すように第2支持配線42の短手方向Wdの配線幅W2は、第1配線本体21Rの短手方向Wdの配線幅H1よりも小さくなっている。したがって、配線幅の違いを反映して、第2支持配線42の断面積は、第1配線本体21Rの断面積よりも小さくなっている。
【0082】
図6に示すように、素体BDにおける長手方向Ldの第1端側の第1側面93からは、2つの第1支持配線41の端が露出している。各第1支持配線41において第1側面93に露出している露出面41Aの形状は、中心軸線A1と直交する第1支持配線41の断面形状を若干引き延ばしたような形状になっている。その結果として、第1支持配線41の露出面41Aの面積は、中心軸線A1と直交する断面における、素体BDの内部での第1支持配線41の断面積よりも大きくなっている。同様に、第2支持配線42は、素体BDの長手方向Ldの第2端側の第2側面94に露出している。第2支持配線42において第2側面94に露出している露出面42Aの面積は、中心軸線A2と直交する断面における、素体BDの内部での第2支持配線42の断面積よりも大きくなっている。これにより、第1支持配線41、第2支持配線42と、素体BDの第1側面93及び第2側面94との接触面積が大きくなり、互いの密着性が向上する。なお、あくまで断面積の大小が上記関係を満たせばよく、例えば、露出面41Aは、一方に引き延ばされつつ、他方が素体BDの引き延ばされた部分に覆われた形状であってもよい。
【0083】
なお、第1側面93において露出している第1支持配線41は2つであり、第2側面94において露出している第2支持配線42は1つであり、露出している支持配線の数が異なっている。
【0084】
次に、端子部80について詳述する。
4つの端子部80は、例えば、導電性を有する複数の層を備えている。本実施形態では、第1外部端子81は、
図21に示すように、第1金属層111と、第2金属層112と、第3金属層113の3層構造となっている。第1金属層111は、第1垂直配線71及び、第2磁性層55の上面の上に積層されている。第1金属層111の厚さ方向Tdの寸法はおよそ5マイクロメートルとすることができる。第1金属層111の材質は銅である。第2金属層112は、第1金属層111の上面の上に積層されている。第2金属層112の厚さ方向Tdの寸法は、およそ5マイクロメートルとすることができる。第2金属層112の材質は、ニッケルである。第3金属層113は第2金属層112の上面に積層されている。第3金属層113の厚さ方向Tdの寸法はおよそ0.1マイクロメートルとすることができる。第3金属層113の材質は金である。なお、第2外部端子82及びダミー部83も第1外部端子81と同じ積層構造である。
【0085】
第1外部端子81において、厚さ方向Tdから視たときに、厚さ方向Tdの下側に存在する第2磁性層55及び第1垂直配線71が透けて見えることがある。したがって、第1外部端子81においては、下側に第2磁性層55が存在しているか第1垂直配線71が存在しているかによって、異なる見え方をする。第1外部端子81から第1垂直配線71が透けて見える領域は、厚さ方向Tdから視たときに、第1外部端子81の半分以下の領域である。
【0086】
同様に、第2外部端子82において、厚さ方向Tdの下側に存在する第2磁性層55及び第2垂直配線72が透けて見えることがある。したがって、第2外部端子82においては、下側に第2磁性層55が存在しているか第2垂直配線72が存在しているかによって、異なる見え方をする。第2外部端子82から第2垂直配線72が透けて見える領域は、厚さ方向Tdから視たときに、第2外部端子82の半分以下の領域である。
【0087】
ダミー部83において、厚さ方向Tdの下側に存在する第2磁性層55が透けて見えることがある。なお、ダミー部83は、垂直配線上には設けられていない。したがって、この実施形態では、ダミー部83はほぼ全体が均一な見え方をする。一方、第1外部端子81から透けて見える第2磁性層55の領域は、第1外部端子81の半分以上の領域である。第2外部端子82から透けて見える第2磁性層55の領域は、第2外部端子82の半分以上の領域である。すなわち、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の全体と、第1外部端子81及び第2外部端子82の半分以上の領域とが、光学的に同じ色である。ここでの同じ色とは、例えば、色差計を用いたときに、RGBを示す数値の差異が、所定の範囲内であるときに同じ色とみなす。なお、所定の範囲は例えば、10%等である。
【0088】
図21に示すように、第1外部端子81において、厚さ方向Tdから視たときの第1垂直配線71上には、厚さ方向Tdの下側に向かって窪む凹部120が設けられている。凹部120は、第1外部端子81の厚さ方向Tdの上側の面から、例えば数マイクロメートルほど窪んでいる。
【0089】
図21に示すように、第1外部端子81の表面は、平滑部121と平滑部121よりも表面粗さの大きい粗部122で構成されている。本実施形態では、粗部122の表面粗さは、平滑部121の表面粗さの1.5倍ほど大きくなっている。表面粗さは、光干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView)を用いて測定することができる。
【0090】
第1外部端子81において平滑部121は、第1垂直配線71における厚さ方向Tdの上側の表面が平坦であることを反映して表面粗さが小さくなっている。したがって、厚さ方向Tdから視たときに、平滑部121は、第1外部端子81の第1垂直配線71上に設けられている。なお、凹部120上はすべて平滑部121となっている。また、第1外部端子81において粗部122は、磁性層50に金属磁性粉が含まれていることに起因して磁性層50の表面に凹凸が生じていることを反映して、表面粗さが大きくなっている。したがって、厚さ方向Tdから視たときに、粗部122は、第1外部端子81における第2磁性層55上に設けられている。
【0091】
第2外部端子82においても、上述した第1外部端子81と同様に、凹部120が窪んでいる。また、第2外部端子82の表面は、平滑部121と、平滑部121よりも表面粗さの大きい粗部122とで構成されている。
【0092】
第2外部端子82において平滑部121は、厚さ方向Tdから視たときに、第2外部端子82の第2垂直配線72上に設けられている。すなわち、凹部120上はすべて平滑部121となっている。また、第2外部端子82において粗部122は、厚さ方向Tdから視たときに、第2外部端子82における第2磁性層55上に設けられている。
【0093】
なお、上述したとおり、ダミー部83の全域は、第2磁性層55上に設けられている。したがって、ダミー部83の表面粗さは、第1外部端子81の粗部122及び第2外部端子82の粗部122と同程度である。したがって、ダミー部83の表面粗さは、第1外部端子81の平滑部121及び第2外部端子82の平滑部121よりも大きくなっている。
【0094】
次に、インダクタ部品10の製造方法を説明する。
図7に示すように、先ず、ベース部材準備工程を行う。具体的には、板状のベース部材101を準備する。ベース部材101の材質は、セラミックスである。ベース部材101は、厚さ方向Tdから視ると、四角形状となっている。各辺の寸法は、インダクタ部品10が複数個収容される寸法となっている。以下の説明では、ベース部材101の面方向に直交する方向を厚さ方向Tdとして説明する。
【0095】
次に、
図8に示すように、ベース部材101の上面全体にダミー絶縁層102を塗布する。次に、厚さ方向Tdから視たときに、第1インダクタ配線20R、第2インダクタ配線20Lが配置される範囲より僅かに広い範囲に、フォトリソグラフィによって、絶縁樹脂61をパターニングする。
【0096】
次に、シード層103を形成するシード層形成工程を行う。具体的には、ベース部材101の上面側から、スパッタリングによって、絶縁樹脂61及びダミー絶縁層102の上面に銅のシード層103を形成する。なお、図面において、シード層103は、太線で図示する。
【0097】
次に、
図9に示すように、シード層103の上面のうち、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42とを形成しない部分を被覆する第1被覆部104を形成する第1被覆工程を行う。具体的には、先ず、シード層103の上面全体に感光性のドライフィルムレジストを塗布する。次に、ダミー絶縁層102の上面の範囲全てと、絶縁樹脂61の上面のうち、絶縁樹脂61が覆う範囲の外縁部の上面とについて、露光することで硬化させる。その後、塗布したドライフィルムレジストのうち硬化していない部分を、薬液により剥離除去する。これにより、塗布したドライフィルムレジストのうち、硬化している部分が、第1被覆部104として形成される。一方で、塗布したドライフィルムレジストのうち、薬液に除去されて第1被覆部104に被覆されていない部分には、シード層103が露出している。第1被覆部104の厚さ方向Tdの寸法である第1被覆部104の厚みは、
図4に示すインダクタ部品10の第1インダクタ配線20Rの第1配線本体21R及び第2インダクタ配線20Lの第2配線本体21Lの厚みよりも僅かに大きくなっている。なお、後述する他の工程におけるフォトリソグラフィも、同様の工程であるので詳細な説明は省略する。
【0098】
次に、
図10に示すように、絶縁樹脂61の上面のうちの、第1被覆部104に被覆されていない部分に、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42と、を電解めっきで形成する配線加工工程を行う。具体的には、電解銅めっきを行い、絶縁樹脂61の上面において、シード層103が露出している部分から、銅を成長させる。これにより、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42と、が形成される。したがって、この実施形態では、複数のインダクタ配線を形成する工程と、異なるインダクタ配線のパッド間を接続する複数の第1支持配線41及び第2支持配線42を形成する工程とが同一工程である。また、第1インダクタ配線20R、第2インダクタ配線20Lと第1支持配線41及び第2支持配線42とは、同一平面上に形成される。なお、
図10では、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lが図示されていて、各支持配線41、42は図示されていない。
【0099】
次に、
図11に示すように、第2被覆部105を形成する第2被覆工程を行う。第2被覆部105を形成する範囲は、第1被覆部104の上面全体と、各支持配線の上面全体と、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの上面のうち第1垂直配線71及び第2垂直配線72を形成しない範囲である。この範囲に、第1被覆部104を形成した方法と同一のフォトリソグラフィによって、第2被覆部105を形成する。また、第2被覆部105の厚さ方向Tdの寸法は、第1被覆部104と同一となっている。
【0100】
次に、各垂直配線71、72を形成する垂直配線加工工程を行う。具体的には、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lのうち、第2被覆部105に被覆されていない部分に、電解銅めっきによって第1垂直配線71と、第2垂直配線72と、を形成する。また、垂直配線加工工程においては、成長する銅の上端が第2被覆部105の上面より僅かに低い位置となるように設定している。具体的には、後述する切削前の各垂直配線71、72の厚さ方向Tdの寸法が、各インダクタ配線20R、20Lの厚さ方向Tdの寸法と同一になるように設定している。
【0101】
次に、
図12に示すように、第1被覆部104及び第2被覆部105を取り除く被覆部除去工程を行う。具体的には、薬品によって第1被覆部104及び第2被覆部105をウェットエッチングすることにより、第1被覆部104及び第2被覆部105を剥離する。なお、
図12においては、第1垂直配線71が図示されていて、第2垂直配線72は図示されていない。
【0102】
次に、シード層103をエッチングするシード層エッチング工程を行う。シード層103についてエッチングを行うことで、露出しているシード層103を除去する。このように、各インダクタ配線と、各支持配線と、はSAP(Semi Additive Process:セミアディティブ工法)で形成される。
【0103】
次に、
図13に示すように、内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第2磁性層55を積層する第2磁性層加工工程を行う。具体的には、先ず、ベース部材101の上面側に、磁性層50の材質である磁性粉を含む樹脂を塗布する。このとき、各垂直配線71、72の上面も覆うように磁性粉を含む樹脂を塗布する。次に、プレス加工して磁性粉を含む樹脂を固めることで、ベース部材101の上面側に内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第2磁性層55を形成する。
【0104】
次に、
図14に示すように、第2磁性層55の上側部分を、各垂直配線71、72の上面が露出するまで削る。このとき、第2磁性層55の上面が、各垂直配線71、72の上面よりも厚さ方向Tdの上側に位置するように、第2磁性層55を削る。なお、内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第2磁性層55とは、一体的に形成されるが、図面においては、内磁路部51と、外磁路部52と、絶縁樹脂磁性層53と、第2磁性層55とも区別して図示している。
【0105】
次に、
図15に示すように、絶縁層加工工程を行う。具体的には、第2磁性層55の上面と、各垂直配線71、72の上面とのうち、端子部80を形成しない部分に、フォトリソグラフィによって、絶縁層90として機能するソルダーレジストをパターニングする。なお、本実施形態において、絶縁層90の上面、すなわち素体BDの主面MFに直交する方向は、厚さ方向Tdとなっている。
【0106】
次に、
図16に示すように、ベース部材切削工程を行う。具体的には、ベース部材101及びダミー絶縁層102を全て切削によって除去する。なお、ダミー絶縁層102を全て切削する結果、各絶縁樹脂の下側部分についても、一部切削により除去されるが、各インダクタ配線20R、20Lは除去されない。
【0107】
次に、
図17に示すように、第1磁性層54を積層する第1磁性層加工工程を行う。具体的には、先ず、ベース部材101の下側面に、第1磁性層54の材質である磁性粉を含む樹脂を塗布する。次に、プレス加工することで、磁性粉を含む樹脂を固めることで、ベース部材101の下側面に第1磁性層54を形成する。
【0108】
次に、第1磁性層54の下端部分を削る。例えば、各外部端子81、82の上面から第1磁性層54の下面までの寸法が、所望の値となるように、第1磁性層54の下端部分を削る。
【0109】
次に、
図18に示すように、端子部加工工程を行う。具体的には、第2磁性層55の上面と、各垂直配線71、72の上面と、のうち、絶縁層90に覆われていない部分に、第1外部端子81と、第2外部端子82と、ダミー部83とを形成する。この工程では、先ず、第1外部端子81、第2外部端子82、及びダミー部83それぞれについて、銅の無電解めっきによって第1金属層111を形成する。次に、ニッケルの無電解めっきによって第2金属層112を形成する。その後、金の無電解めっきによって第3金属層113を形成する。また、第1金属層111と第2金属層112との間にパラジウムなどの触媒層があってもよい。これらにより3層構造の第1外部端子81と、第2外部端子82と、ダミー部83とが形成される。
【0110】
各垂直配線71、72の上面は第2磁性層55の上面よりも、厚さ方向Tdの下側に位置している。そのため、各垂直配線71、72上の各外部端子81、82には、厚さ方向Tdの下側に向かって窪む凹部120が形成される。また、第1外部端子81及び第2外部端子82には、その下側に位置する垂直配線71、72又は第2磁性層55の表面粗さを反映して、平滑部121及び粗部122が形成される。
【0111】
なお、
図18においては、第1外部端子81が図示されていて、第2外部端子82及びダミー部83は、図示されていない。また、
図18においては、凹部120、平滑部121、及び粗部122の図示は省略している。
【0112】
次に、
図19に示すように、個片化加工工程を行う。具体的には、破断線DLにてダイシングにより個片化する。これにより、インダクタ部品10を得ることができる。
ダイシングする前の状態では、例えば、
図20に示すように、複数のインダクタ部品が、長手方向Ldと短手方向Wdとに並設され、素体BDや第1支持配線41及び、第2支持配線42で個々のインダクタ部品は繋がっている。具体的には、第1支持配線41は、第1支持配線41同士で繋がっており、第2支持配線42は第2支持配線42同士で繋がっている。破断線DL上に含まれる、第1支持配線41及び第2支持配線42が厚さ方向Tdで切断されることで、第1支持配線41の切断面を第1側面93に露出面41Aとして露出させる。また、第2支持配線42の切断面を第2側面94に露出面42Aとして露出させる。
【0113】
なお、個片化加工工程の後、各インダクタ部品10は、酸素存在下で一定期間放置される。これにより、第1支持配線41の露出面41Aを含む一部、及び第2支持配線42の露出面42Aを含む一部が酸化され、Cu酸化物となる。
【0114】
次に、本実施形態の作用について説明する。
第1外部端子81及び第2外部端子82を、低角度から光を照らしたとき、平滑部121と粗部122とでは表面粗さの違いによる光学的な色の違いが生じる。低角度から光を当てたとき、表面粗さが相対的に小さい面の方が、輝度が低く見え、表面粗さが相対的に大きい面の方が、輝度が高く見える。したがって、第1外部端子81及び第2外部端子82において、粗部122の方が平滑部121よりも色が明るく見える。上述した第1外部端子81及び第2外部端子82上における色の違いは、上記のような表面粗さの違いにも起因している。
【0115】
一方で、ダミー部83の表面粗さは、粗部122と同程度の表面粗さである。そのため、上述のように低角度からダミー部83に光を当てた場合でも、ダミー部83は全体的に同じ色で見える。ダミー部83の色は、第1外部端子81及び第2外部端子82における粗部122とおおむね同じである。
【0116】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たとき、ダミー部83の形状は、第1外部端子81及び第2外部端子82とは異なっている。すなわち、特定ダミー部83Sの形状は、特定端子部80Sの形状とは異なっている。また、本実施形態においてインダクタ部品10に設けられたダミー部83は1つであるため、ダミー部83は主面MFの幾何中心Gに対して非対称的に設けられている。したがって、ダミー部83によって、インダクタ部品10の向きを簡便に特定できる。インダクタ部品10の向きが判別できると、例えば、インダクタ部品10を基板に実装する際に正しく設置しやすくなる。
【0117】
また、端子部80は主面MFの幾何中心Gに対して2回対称位置に配置されている。仮に、端子部80が非対称位置に配置されている場合と比較して、インダクタ部品10の重量のバランスがよくなり、実装時に傾きが生じにくくなる。
【0118】
(2)上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の面積は、第1外部端子81及び第2外部端子82と等しくなっている。そのため、第1外部端子81及び第2外部端子82と同じようにダミー部83を、基板等に対してはんだ付けする際に、これら4つの端子部80上に塗布されるはんだの量を均一化できる。したがって、インダクタ部品10が傾いて基板等に実装されることを抑制できる。
【0119】
(3)上記実施形態において、主面MF上において、第1領域にはダミー部83が設けられていない。また、上記実施形態において設けられたダミー部83の数は1つである。すなわち、インダクタ部品10にはダミー部83が最低限の数しか設けられていない。ダミー部83の数を最小限にすることで、インダクタ部品10の重量が増加することを抑制できる。
【0120】
(4)上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の大半の部分は、第2インダクタ配線20Lと重なっている。第2インダクタ配線20Lは、第2インダクタ配線20Lの周囲に配置された磁性層50とは、異なる材質からなる。そのため、第2インダクタ配線20Lと磁性層50とでは線形膨張係数が異なる。したがって、インダクタ部品10に温度変化が生じたときに、第2インダクタ配線20Lと磁性層50との変形量の違いに起因して、インダクタ部品10に反り等が生じることがある。ダミー部83が第2インダクタ配線20Lと重なって配置されることで、このインダクタ部品10の反り等を抑制する補強部として、ダミー部83が機能し得る。
【0121】
(5)上記実施形態において、端子部80はいずれも第1金属層111、第2金属層112、第3金属層113からなる。すなわち、ダミー部83は、第1外部端子81及び第2外部端子82とで同じ工程で形成可能である。したがって、ダミー部83を新たに設けるにあたって、インダクタ部品10の製造工程数の増加を抑制できる。
【0122】
(6)上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83の全体と、第1外部端子81及び第2外部端子82の半分以上の領域とが、光学的に同じ色である。第1外部端子81及び第2外部端子82の検査を行うときに、これらの表面の色を判定して品質を担保することがある。そのため、ダミー部83が第1外部端子81及び第2外部端子82と同じ色を有していると、ダミー部83においても同様の色の判定による検査を適用できる。
【0123】
(7)上記実施形態において、第1外部端子81及び第2外部端子82は、粗部122を備えている。インダクタ部品10を実装するとき、端子部80と基板とをはんだで実装する場合がある。粗部122では、平滑部121に比較して表面積が大きくなっているため、はんだとの接触面積が増える。これにより、はんだでの接続強度が保たれやすい。
【0124】
(8)上記実施形態において、第1外部端子81及び第2外部端子82は、平滑部121を備えている。また、平滑部121は、厚さ方向Tdから視たときに、各垂直配線71、72上に配置されている。上述したように、インダクタ部品10を実装するとき、端子部80と基板とをはんだで実装する場合がある。平滑部121では、粗部122よりも表面粗さが小さいためはんだの濡れ性がよくなる。したがって、はんだ付けの際に、はんだが平滑部121に広がりやすくなり、はんだによる導電性の確保を確実にできる。
【0125】
(9)上記実施形態では、第1外部端子81及び第2外部端子82に凹部120が設けられている。インダクタ部品10を基板等に実装する際に、球状のはんだボールをインダクタ部品に装着した後、はんだを溶かして実装することがある。その際に、凹部120が存在することで、はんだボールを置きやすくなる。また、凹部120は厚さ方向Tdから視たときに、各垂直配線71、72上に形成されている。そのため、上記のようにはんだボールを形成して実装する場合において、はんだボールが溶けたときに、凹部120にはんだが広がりやすく、厚さ方向Tdから視たときに、垂直配線71、72上にはんだが行き渡りやすくなる。
【0126】
(10)上記実施形態において、ダミー部83は第2磁性層55の上面に配置されており、ダミー部83の外縁は、絶縁層90に接している。上述したように、第2磁性層55の上面に絶縁層90をパターニングした後、パターニングされていない箇所に無電解めっきにより端子部80が形成される。そのため、絶縁層90のパターニングの形状によって、簡便にダミー部83を外部端子81、82と異なる形状で形成できる。
【0127】
(11)上記実施形態において、第1インダクタ配線20Rにおける第2パッド23Rが、第2インダクタ配線20Lにおける第2パッド23Rと同一のパッドである。上記実施形態のインダクタ部品10では、各インダクタ配線がそれぞれ異なる2つのパッドを有しているインダクタ部品よりも、1つのパッドと1つの垂直配線の分だけ磁性層50の体積が大きくなる。磁性層50の体積が大きいことで、インダクタンスの取得効率が大きくなりやすい。
【0128】
(12)上記実施形態において、第1配線本体21Rは直線状に延びている。また、第2配線本体21Lは、長手方向Ldに延びる長直線部31と、短手方向Wdに延びる短直線部32と、これらを繋ぐ接続部33とからなり、L字状に延びている。すなわち、第1インダクタ配線20Rにおいても、第2インダクタ配線20Lにおいても接続部が少なく、配線のターン数が小さくなっている。インダクタ配線20R、20Lのターン数が小さく、配線の引き回しが少ないため、各インダクタ配線20R、20Lでの直流抵抗が小さくなり、インダクタンス取得効率が確保されやすい。
【0129】
(13)上記実施形態において、ピッチX1、第1距離Y1、第2距離Y2の平均値は、「200マイクロメートル」である。上記平均値に対するピッチX1の割合は「125%」である。また、上記平均値に対する第1距離Y1及び第2距離Y2の割合は、「87.5%」である。
【0130】
上記の割合に偏りが生じると、素体BD内におけるインダクタ配線20R、20Lの配置が偏った状態となる。素体BD内で、インダクタ配線の配置に偏りがある場合、素体BDの重量バランスにも偏りが生じ、インダクタ部品が傾いて基板に実装されるおそれがある。そのため、各インダクタ配線が素体BD内で大きく偏りがない状態で配置されると好ましい。具体的には、上記の割合が、50%以上且つ150%以下であると好ましく、本実施形態では、各割合の値が上記範囲内に収まっており好ましい状態である。
【0131】
(14)上記実施形態において、第1距離Y1、第2距離Y2よりもピッチX1の方が長くなっている。ピッチX1が第1距離Y1、第2距離Y2よりも長いほうが、第2配線本体21Lの短直線部32の長さが長くなりやすく、第2インダクタ配線20Lの配線長を長く設計しやすい。
【0132】
(15)上記実施形態において、隣り合う平行部分における配線本体間の間隔は、200マイクロメートルである。インダクタ配線間での磁束の乱れを抑制するという観点では、最小の間隔は50マイクロメートル以上であることが好ましく、さらに、およそ100マイクロメートル以上であればなお好適である。
【0133】
(16)上記実施形態において、素体BDの厚さ方向Tdの寸法は、約0.2ミリメートルである。素体BDの厚さ方向Tdの寸法が小さいほど、インダクタ部品10を基板に実装した際に、基板から突出する寸法が小さくなる。したがって、上記実施形態のインダクタ部品10は、厚さ方向Tdの寸法が大きい場合には実装できなかったようなところにも実装が可能である。
【0134】
(17)上記実施形態において、第1層L1に、第1インダクタ配線20Rと、第2インダクタ配線20Lと、第1支持配線41と、第2支持配線42とが存在する。複数のインダクタ部品10が並設された状態、つまりダイシングする前の状態では、複数のインダクタ配線の間を、第1支持配線41及び第2支持配線42で繋ぐ構成を採用できる。複数の第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの間を第1支持配線41及び第2支持配線42で繋いでおけば、インダクタ配線を支持するための絶縁基板等を要さずとも、これらインダクタ配線を支持し、位置決めできる。したがって、インダクタ配線を支持するための絶縁基板等が不要という点で、インダクタ部品10の薄型化に寄与できる。
【0135】
(18)上記実施形態において、第1支持配線41及び第2支持配線42は、磁性層50と密着している。磁性層50と第1支持配線41及び第2支持配線42とが密着することで、磁性層50の体積を確保することができ、インダクタ部品10のインダクタンスの取得効率が確保されやすい。
【0136】
(19)上記実施形態において、第1支持配線41の露出面41Aは、本実施形態ではCu酸化物になっている。露出面41AがCu酸化物であるため、露出面41Aでは導電性が小さくなっている。そのため、仮に、他の電気部品と露出面41Aとが接触した場合でも、露出面41Aを介して電流が流れることを抑制できる。この点、第2支持配線42についても同様である。
【0137】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・素体BDの内部におけるインダクタ配線は、3つ以上設けられていてもよい。
【0138】
図22に示す例では、第1インダクタ配線20R、及び第2インダクタ配線20Lに加えて、第3インダクタ配線20X、第4インダクタ配線20Yが素体BD内に延びている。第3インダクタ配線20Xの第3配線本体21Xは、第1インダクタ配線20Rの第1配線本体21Rと平行に延びている。第3配線本体21Xは、第1配線本体21Rと、第2配線本体21Lの長直線部31との間に配置されている。第3配線本体21Xの第1端は、第2配線本体21Lの短直線部32に接続されている。すなわち、第3インダクタ配線20Xは、配線の一部を第2インダクタ配線20Lと共有している。第3配線本体21Xの第2端には、第1パッド22Xが接続されている。
【0139】
第4インダクタ配線20Yの第4配線本体21Yは、第1インダクタ配線20Rの第1配線本体21Rと平行に延びている。第4配線本体21Yは、第1配線本体21Rと、第3配線本体21Xとの間に配置されている。第4配線本体21Yの第1端は、第2配線本体21Lの短直線部32に接続されている。すなわち、第4インダクタ配線20Yは、配線の一部を第2インダクタ配線20Lと共有している。第4配線本体21Yの第2端には、第1パッド22Yが接続されている。
【0140】
なお、第1インダクタ配線20Rの第1配線本体21Rは、素体BDの外縁の一辺に平行に延びている。第1インダクタ配線20Rの第2パッド23Rと、第2インダクタ配線20Lの第2パッド23Rとは、同一のパッドである。第2インダクタ配線20Lの第1パッド22L及び第2パッド23Rは、幾何中心Gを挟んで、対称的な位置に配置されている。すなわち、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lは、素体BDの四角形状の3辺に沿って配置され、素体BDの広範囲で延びている。したがって、インダクタ部品のインダクタンスの取得範囲を大きく確保しやすい。
【0141】
図22に示す例において、第3インダクタ配線20Xの第3配線本体21Xと第4インダクタ配線20Yの第4配線本体21Yは、第1配線本体21Rと平行に延びる、平行部分である。平行部分における第1配線本体21Rの中心軸線C1から第4配線本体21Yの中心軸線C4までの距離で、平行部分の延びる方向と直交する方向における距離をピッチX1とする。平行部分における第2配線本体21Lの中心軸線C2から第3配線本体21Xの中心軸線C3までの距離で、平行部分の延びる方向と直交する方向における距離をピッチX2とする。また、第3配線本体21Xの中心軸線C3から第4配線本体21Yの中心軸線C4までの距離で、平行部分の延びる方向と直交する方向における距離をピッチX3とする。このとき、ピッチX1とピッチX2は等しくなっており、ピッチX3はピッチX1、X2よりも大きくなっている。
【0142】
この変更例のように、異なるピッチで各配線本体が配置されていてもよい。すなわち、各配線本体が、等間隔に配置されていなくてもよい。インダクタ配線の配線本体間のピッチが異なっている場合、各インダクタ配線から取得されるインダクタンス値の大小をつけやすく、インダクタ部品10の使用条件に好適なインダクタンス値が得られるように設計しやすい。
【0143】
インダクタ配線が3つ以上存在し、且つこれらが互いに平行に延びる平行部分を有している場合、各ピッチに大きな差が生じると、素体内において各インダクタ配線が不均等に配置されることになる。そのため、外部端子の配置に偏りが生じたり、インダクタ部品の重量バランスが偏ったりする。したがって、ピッチの平均値に対する各ピッチの割合は、85%以上且つ115%以下であることが好ましい。
【0144】
なお、
図22に示す例において、ピッチX1を「250マイクロメートル」とし、ピッチX2は「250マイクロメートル」、ピッチX3は「310マイクロメートル」とすることができる。したがって、上記ピッチの平均値はおよそ「270マイクロメートル」である。そして、ピッチの平均値に対する各ピッチの割合は、ピッチX1に関してはおよそ「93%」、ピッチX2に関してはおよそ「93%」、ピッチX3に関してはおよそ「115%」である。したがって、
図21に示す例では、すべてのピッチに関して、ピッチの平均値に対する各ピッチの割合は、85%以上且つ115%以下である。
【0145】
・上記実施形態及び
図22に示す例において、ピッチの平均値に対する各ピッチの割合が85%未満でもかまわないし、115%より大きくてもよい。
・
図22に示す例のように、ダミー部83が複数設けられていてもよいし、ダミー部83は異なる形状であってもよい。
図22に示す例では、厚さ方向Tdから視たときに、端子部80が8つ設けられている。厚さ方向Tdから視たときに、第1インダクタ配線20Rの第1パッド22R上には、第1外部端子81Aが設けられている。第2インダクタ配線20Lの第1パッド22L上には、第1外部端子81Bが設けられている。第3インダクタ配線20Xの第1パッド22X上には、第1外部端子81Cが設けられている。第4インダクタ配線20Yの第1パッド22Y上には、第1外部端子81Dが設けられている。第1インダクタ配線20Rの第2パッド23R上には、第2外部端子82が設けられている。上記の外部端子は厚さ方向Tdから視たときに、長方形状であり、長辺が長手方向Ldと平行に延びている。
【0146】
また、第2配線本体21Lの接続部33の上には、ダミー部83Aが設けられている。第3配線本体21Xと第2配線本体21Lの短直線部32とが接続されている箇所には、ダミー部83Bが設けられている。第4配線本体21Yと第2配線本体21Lの短直線部32とが接続されている箇所には、ダミー部83Cが設けられている。すなわち、ダミー部の数は、外部端子よりも少なくなっている。
【0147】
上記8つの端子部80は、厚さ方向Tdから視たときに、主面MFの幾何中心Gに対して、2回対称位置に配置されている。
素体BDにおける長手方向Ldの中央から幾何中心Gをとおり、短手方向Wdに平行な仮想直線BXを引いたとする。仮想直線BXよりも長手方向Ldの第1端側を第1領域としたとき、第1領域にはダミー部が設けられていない。仮想直線BXよりも長手方向Ldの第2端側を第2領域としたとき、第2領域には、3つのダミー部が設けられており、外部端子部の数以上のダミー部が設けられている。
【0148】
ダミー部のうち、接続部33上に形成されたダミー部83Aは、他のダミー部と異なる形状をしている。具体的には、ダミー部83Aは、厚さ方向Tdから視たときに、楕円形状であり、他のダミー部83B、83Cは、外部端子と同じ長方形状である。なお、ダミー部83Aの形状は楕円形状に限定されるわけではなく、例えば、外部端子と異なる長方形状、円形状であってもよい。
【0149】
図22に示すように、ダミー部が複数設けられている場合において、複数のダミー部のうちの1つでも形状が外部端子と異なっていれば、インダクタ部品の方向を特定できる。また、
図22に示す例では、第2領域において、ダミー部の方が外部端子よりも数が多くなっている。インダクタ部品を、基板にはんだ付けする場合、端子部80をはんだ付けするため、端子部80が多いほどインダクタ部品の固着力が向上する。しかしながら、端子部80の数を反映し、端子部80の数と同じ数の垂直配線をインダクタ部品に備えると、磁性層50の体積が減少し、インダクタンスの取得効率が悪くなる。したがって、
図22に示す例のインダクタ部品では、ダミー部の数を多くすることで、磁性層50の体積を減少させず、インダクタ部品の固着を保持しやすくなる。
【0150】
図23に示す例では、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lに加えて、第3インダクタ配線20V、第4インダクタ配線20Wが素体BD内に延びている。第3インダクタ配線20Vは、第1インダクタ配線20Rと同じ形状である。第4インダクタ配線20Wは、第2インダクタ配線20Lと同じ形状である。すなわち、第3配線本体21Vは、直線状に延びており、第4配線本体21Wは長直線部31、短直線部32、接続部33を備えていて略L字状に延びている。
【0151】
第3配線本体21Vの第1端は、第1パッド22Vに接続され、第2端は第2パッド23Vに接続されている。第4配線本体21Wの第1端は、第1パッド22Wに接続され、第2端は第2パッド23Vに接続されている。厚さ方向Tdから視たときに、第1パッド22V上には第3外部端子81Eが設けられている。第1パッド22W上には、第3外部端子81Eが設けられている。第2パッド23V上には第4外部端子82Eが設けられている。第4配線本体21Wの接続部33上には、ダミー部83Eが設けられている。厚さ方向Tdから視たときの第3外部端子81E及び第4外部端子82Eの形状は長方形状で、第1外部端子81及び第2外部端子82と同じである。ダミー部83Eの形状は楕円形状で、ダミー部83と同じである。
図23に示す例では、4つの第1外部端子と、2つの第2外部端子と、2つのダミー部83とが設けられ、8つの端子部80が備えられている。
【0152】
図23に示す例においても、8つの端子部は、素体BDの幾何中心Gに対して2回対称に設けられている。
・
図23に示す例のように、インダクタ配線が複数繋げられたパッドが素体BD内に複数設けられていてもよい。
【0153】
・
図23に示す例のように、ダミー部83が複数設けられ、厚さ方向Tdから視たときのダミー部83の形状がすべてのダミー部83で一致していてもよい。
・
図24に示すように、主面MFの幾何中心Gに対してダミー部83が2回対称位置に配置されていてもよい。
図24に示す例では、厚さ方向Tdから視たときに、4つの端子部80が設けられている。4つの端子部80は、主面MFの4隅に配置されており、主面MFの幾何中心Gに対して2回対称位置に配置されている。4つの端子部80のうち、長手方向Ldの第1端側且つ短手方向Wdの第1端側の隅には、第1外部端子81が配置されている。長手方向Ldの第2端側且つ短手方向Wdの第2端側の隅には、第2外部端子82が配置されている。なお、図示は省略するが、第1外部端子81及び第2外部端子82は、それぞれ素体BDの内部で延びるインダクタ配線の端部に、垂直配線を介して接続されている。第1外部端子81及び第2外部端子82は厚さ方向Tdから視たときに、長方形状で、同じ形状である。
【0154】
4つの端子部80のうち、長手方向Ldの第2端側且つ短手方向Wdの第1端側の隅には、第1ダミー部83が設けられている。第1ダミー部83は、厚さ方向Tdから視たときに、楕円形状である。長手方向Ldの第1端側且つ短手方向Wdの第2端側の隅には、第2ダミー部84が設けられている。第2ダミー部84は、厚さ方向Tdから視たときに、第1外部端子81及び第2外部端子82と同じ長方形状である。
【0155】
第1ダミー部83及び第2ダミー部84は、主面MFの幾何中心Gに対して2回対称位置に配置されている。第1ダミー部83の形状は、第1外部端子81、第2外部端子82、及び第2ダミー部84と異なっている。
【0156】
また、
図24に示す例において、主面MFの長手方向Ldの中央を通り、短手方向Wdに平行な第1仮想直線VL1と、主面MFの短手方向Wdの中央を通り、長手方向Ldに平行な第2仮想直線VL2とで、主面MFを4つの仮想領域に分割したとする。4つの仮想領域には、1つずつ端子部80が設けられている。
【0157】
具体的には、第1仮想直線VL1よりも長手方向Ldの第1端側、且つ第2仮想直線VL2よりも短手方向Wdの第2端側の仮想領域を第1仮想領域VA1とする。第1仮想領域VA1には、第2ダミー部84が設けられている。第1仮想直線VL1よりも長手方向の第2端側且つ、第2仮想直線VL2よりも短手方向Wdの第2端側の仮想領域を第2仮想領域VA2とする。第2仮想領域VA2には、第2外部端子82が設けられている。第1仮想直線VL1よりも長手方向Ldの第1端側、且つ第2仮想直線VL2よりも短手方向Wdの第1端側の仮想領域を第3仮想領域VA3とする。第3仮想領域VA3には、第1外部端子81が設けられている。また、第1仮想直線VL1よりも長手方向Ldの第2端側、且つ第2仮想直線VL2よりも短手方向Wdの第1端側の仮想領域を第4仮想領域VA4とする。第4仮想領域VA4には、第4仮想領域VA4には、第1ダミー部83が設けられている。すなわち、
図24に示す例では、特定ダミー部83Sは、第1ダミー部83であり、特定端子部80Sは第2ダミー部84である。
【0158】
図24に示す例のように、第1ダミー部83と第2ダミー部84とが対称的に配置されていても、第1ダミー部83の形状が他の端子部80の形状と異なっていれば、インダクタ部品の向きを特定しやすい。
【0159】
・
図24に示す例において、特定ダミー部83Sの形状は、特定端子部80Sの形状と異なっていれば、どのような形状であってもよい。なお、特定ダミー部83Sの形状及び特定端子部80Sの形状が何れも四角形状であった場合でも、どちらかが正方形でどちらかが長方形であれば、特定ダミー部83Sの形状は、特定端子部80Sの形状とは異なっている。また、特定ダミー部83Sの形状及び特定端子部80Sの形状が相似関係であっても、外見上で区別できる程度に寸法が異なっていれば、特定ダミー部83Sの形状は、特定端子部80Sの形状とは異なっている。
【0160】
・上記実施形態において、第2インダクタ配線20Lに接続部33が設けられていなくてもよい。また、接続部33は長直線部31と短直線部32とが直角に接続して、屈曲したような形状であってもよい。
【0161】
・第2インダクタ配線20Lの2つのパッドは、素体BDの幾何中心Gに対称的な位置に配置されていなくてもよい。第1インダクタ配線20Rと第2インダクタ配線20Lとが一列に並び、各パッドも一列に並んだ場合、一方向に長いインダクタ部品となる。実装時に好適なインダクタ部品の形状となるように、上記実施形態の例における各パッドの位置を変更してもよい。
【0162】
・上記実施形態において、第1支持配線41の中心軸線A1と第2支持配線42の中心軸線A2とが一致していなくてもよい。第1パッド22R、22L及び第2パッド23Rの形状等に合わせて、各支持配線の配置は適宜変更できる。
【0163】
・上記実施形態において、第1配線本体21Rと第2配線本体21Lとで断面積が異なっていてもよく、第1配線本体21Rと第2配線本体21Lとで配線幅及び厚さ方向Tdの寸法が異なっていてもよい。第1配線本体21Rと第2配線本体21Lとで断面積が異なっていれば、両者の配線長が同じであっても、インダクタンス値が異なり得る。
【0164】
・上記実施形態において、第1配線本体21R及び第2配線本体21Lのインダクタンス値は上記実施形態の例に限定されない。例えば、第1配線本体21R及び第2配線本体21Lが同じ配線長で第1インダクタ配線20Rと第2インダクタ配線20Lとが同じインダクタンス比であってもよい。
【0165】
・上記実施形態において、第1支持配線41の位置は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1支持配線41の中心軸線A1の短手方向Wdの位置が、接続されている配線本体の中心軸線の短手方向Wdの位置と同じであってもよい。なお、配線本体が接続している部分を備えている場合、配線本体のパッド側の端部が直線状であれば、当該直線状の部分の中心軸線に対して、第1支持配線41の中心軸線A1がずれていてもよい。
【0166】
・上記実施形態において、第1側面91及び第2側面92に露出している支持配線の数は、インダクタ配線の数に伴って、3つ以上になってもよいし、全て省略してもよい。
・上記実施形態において、磁性層50に含まれる金属磁性粉の平均粒子径は、上記実施形態の例に限定されない。ただし、比透磁率を確保するためには、金属磁性粉の平均粒子径が、1マイクロメートル以上且つ、10マイクロメートル以下であると好ましい。
【0167】
・上記実施形態において、第1磁性層54及び第2磁性層55に含まれる金属磁性粉は、Feを含む金属磁性粉でなくてもよい。また、金属磁性粉は、FeNiやFeSiCrを含む金属磁性粉粉であってもよい。
【0168】
・上記実施形態において、平行部分の間隔は、配線間で生じる磁束の乱れを抑制するという観点では、50マイクロメートル以上が好ましい。また、50マイクロメートル未満の場合は、絶縁樹脂や絶縁無機物をインダクタ配線間に配置することが上記観点で好ましい。
【0169】
・上記実施形態において、ピッチX1と第1距離Y1と第2距離Y2とが等しくてもよいし、第1距離Y1、及び第2距離Y2の方が、ピッチX1よりも大きくてもよい。また、第1距離Y1と第2距離Y2とが異なっていてもよい。
【0170】
・上記実施形態において、各ピッチ、第1距離Y1、及び第2距離Y2の平均値に対する各ピッチ、第1距離Y1、及び第2距離の割合が、50%より小さくてもよいし、150%よりも大きくてもよい。
【0171】
・第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lにおける配線本体21R、21Lの形状は、ターン数が0.5ターン以下であれば、上記実施形態の例に限らない。例えば、配線本体21R、21Lは、波形状やミアンダ形状であってもよい。なお、配線本体21R、21Lがミアンダ形状の場合、異なる2つの配線本体21R、21Lのうち、第1パッド22R、22Lから直線状に延びる部分同士のピッチが、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lのピッチである。
【0172】
・上記実施形態において、素体BDの厚さ方向Tdの寸法は、上記実施形態の例に限定されない。ただし、上述のように素体BDの厚さ方向Tdの寸法が小さいほど、インダクタ部品10を基板に実装した際に、基板から突出する寸法が小さくなり好ましい。具体的には、0.25ミリメートル以下であるとよい。
【0173】
・上記実施形態において、第1層L1すなわち第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの厚さ方向Tdの寸法は、上記実施形態の例に限定されない。ただし、上述のように素体BDの厚さ方向Tdの寸法に対して、10分の1以上、且つ3分の1以下であることが好ましい。
【0174】
・上記実施形態において、第1インダクタ配線20Rから延びる第1支持配線41の中心軸線A1から、第2インダクタ配線20Lから延びる第1支持配線41の中心軸線A1までのピッチP1は上記実施形態の例に限定されない。例えば、ピッチP1と距離Q1と距離Q2が等しくなるように配置してもよい。
【0175】
・上記実施形態において、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lの組成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、銀や金であってもよい。
・上記実施形態において、磁性層50の組成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、磁性層50の材質は、フェライト粉であってもよいし、フェライト粉と金属磁性粉との混合物であってもよい。
【0176】
・上記実施形態において、各支持配線41、42と磁性層50との間に別の層が介在していてもよい。例えば、各支持配線41、42と磁性層50との間に絶縁層が介在していてもよい。
【0177】
・上記実施形態において、素体BD内に延びるインダクタ配線は、1つであってもよい。
・上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、第1パッド22R、22L及び第2パッド23Rの面積が第1垂直配線71及び第2垂直配線72の面積と等しくてもよい。また、配線本体21R、21Lの延伸方向と直交する方向における第1パッド22R、22L及び第2パッド23Rの長さ寸法が、各配線本体21R、21Lと同じであってもよい。
【0178】
・上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、各端子部80が各仮想領域に1つずつ配置されていればよく、端子部80が幾何中心Gに対して2回対称位置に配置されてなくてもよい。特定端子部80Sと特定ダミー部83Sとが2回対称位置になくても、特定端子部80Sと特定ダミー部83Sとが2回対称位置にある仮想領域に配置されていれば、特定端子部80Sと特定ダミー部83Sとは概ね対称的に配置されているといえる。したがって、この例でも、インダクタ部品10の向きを特定しにくいという課題は生じ得る。そこで、上述した特定ダミー部83Sの形状に関する構成を採用することで、インダクタ部品10の向きを特定しやすくなる。
【0179】
・素体BDの主面MFを仮想領域に分割する際の分割の仕方は、適宜に変更できる。例えば、端子部80の配置によっては、主面MFを、二つの対角線で4つの仮想領域に分割してもよいし、長手方向Ldに4つの仮想領域が並ぶように等分してもよい。つまり、各仮想領域が合同であり、且つ1つの仮想領域に1つの端子部80が配置されるような分割の仕方であればよい。
【0180】
・上記実施形態において、外部端子81、82の金属層が省略され、第1垂直配線71及び第2垂直配線72が主面MFに露出している部分が外部端子81、82として機能していてもよい。その場合でも、第1垂直配線71及び第2垂直配線72から直接的に第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lに電流を流すことができる。
【0181】
・上記実施形態において、第1外部端子81及び第2外部端子82の外面が絶縁層によって覆われていてもよい。この場合、基板等に実装する前のインダクタ部品10を保管している状態で、インダクタ部品10の内部に各外部端子を介して意図せず電流が流れることを抑制できる。なお、この変更例の場合、インダクタ部品10を基板等に実装する前に、洗浄等を行って第1外部端子81及び第2外部端子82を覆う絶縁層を取り除けばよい。
【0182】
・上記実施形態において、端子部80の金属層は上記実施形態の第1金属層111、第2金属層112、第3金属層113に限定されない。また、触媒層を必要に応じて設けてよい。例えば、金やスズははんだの濡れ性を確保したり、ニッケルはエレクトロマイグレーションを抑制したり、外部端子81、82の金属層を各機能に応じて適切に設定することができる。また、ダミー部83と第1外部端子81及び第2外部端子82とで異なる積層構造であってもよい。
【0183】
・さらに、ダミー部83の材質は導電性を有する材質でなくてもよい。例えば、第2磁性層55が絶縁層90に露出している部分をダミー部83としてもよい。このように、ダミー部83が導電性を有する材質でなくても、ダミー部83そのものは各インダクタ配線に電気的に接続されていないので、特に差し支えない。
【0184】
・上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときのダミー部83の面積が、第1外部端子81及び第2外部端子82の面積と異なっていてもよい。
・上記実施形態において、第1領域にダミー部が設けられていてもよい。上記実施形態の例において、第1領域にダミー部を追加した場合、第2領域にもダミー部を追加する等で、各仮想領域に1つずつ端子部80が配置されていればよい。また、その場合、仮想直線BXにおける第2領域においてダミー部の数が、外部端子の数よりも多くなってもよい。また、仮想直線BXは、長手方向Ldに平行に引いてもよい。
【0185】
・上記実施形態において、厚さ方向Tdから視たときに、ダミー部83がインダクタ配線上になくてもよい。端子部80が各仮想領域に1つずつ配置されていれば、仮想領域をはみ出すことがないようにダミー部83の配置は適宜変更してよい。
【0186】
・上記実施形態において、ダミー部83において外部端子と同じ色の領域が、半分未満でもよいし、ダミー部83の全域で、外部端子と色が異なっていてもよい。
・上記実施形態において、第1外部端子81及び第2外部端子82の表面粗さが、全域に亘って略一定であってもよい。
【0187】
・上記実施形態において、平滑部121が、第1外部端子81及び第2外部端子82における垂直配線71、72上に設けられていなくてもよい。すなわち、厚さ方向Tdから視たときに、平滑部121が垂直配線上からずれていてもよい。第1外部端子81及び第2外部端子82のうち垂直配線上に位置していない箇所であっても、これら第1外部端子81及び第2外部端子82の表面を平滑化する処理を行えばよい。
【0188】
・上記実施形態において、第1外部端子81及び第2外部端子82において、凹部120が設けられていなくてもよい。また、第1外部端子81及び第2外部端子82に設けられた凹部120が、厚さ方向Tdから視たときに、垂直配線71、72から外れた位置に設けられていてもよい。
【0189】
・上記実施形態において、第1支持配線41の露出面41Aを含む一部及び第2支持配線42の露出面42Aを含む一部の材質が、Cu酸化物でなくてもよい。第1支持配線41及び第2支持配線42としてCu合金を用いた場合には、各露出面を含む一部分の材質として、Cu合金酸化物を採用するのが好適である。さらに、第1支持配線41の露出面41A及び第2支持配線42の露出面42Aに、樹脂製の絶縁層を積層してもよい。
【0190】
・上記実施形態において、第1支持配線41及び第2支持配線42を構成する材質がそのまま各露出面41Aにおいて露出していてもよい。
・ダイシングの方法や、ダイシングの後の処理によって、第1支持配線41の露出面41Aの面積が素体BDの内部での第1支持配線41の断面積と等しくなることもあり得る。例えば、ダイシングの後に、露出面41Aを含む第1側面91を研磨すると、露出面41Aの形状が素体BDの内部での第1支持配線41の断面形状と同じになるため、両者の断面積も同じになる。この点、第2支持配線42についても同様である。
【0191】
・上記実施形態において、インダクタ部品10の製造方法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20L形成する工程と第1支持配線41及び第2支持配線とが形成する工程とが別の工程でもよい。例えば、第1インダクタ配線20R及び第2インダクタ配線20Lを形成した後に、第1インダクタ配線20Rと異なる材質で各支持配線41、42を形成してもよい。
【符号の説明】
【0192】
10…インダクタ部品
20R…第1インダクタ配線
20L…第2インダクタ配線
21R…第1配線本体
21L…第2配線本体
22R…第1パッド
22L…第1パッド
23R…第2パッド
50…磁性層
71…第1垂直配線
72…第2垂直配線
80…端子部
80S…特定端子部
81…第1外部端子
82…第2外部端子
83…ダミー部
83S…特定ダミー部
BD…素体
MF…主面