(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】アライメント装置、露光装置およびアライメント方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240717BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20240717BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240717BHJP
G06T 7/32 20170101ALI20240717BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G03F9/00 H
G01B11/00 H
G06T7/32
(21)【出願番号】P 2020144710
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中井 一博
(72)【発明者】
【氏名】波多野 章人
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-036988(JP,A)
【文献】特開2013-115317(JP,A)
【文献】特開2015-023145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメント装置であって、
基板の一の主面にアライメントマークが形成されており、前記主面が保持面と対向した状態で前記保持面により前記基板を保持可能なステージと、
前記ステージ上に前記基板が保持された状態で、前記ステージ上の前記基板の他の主面に向けて、前記基板を透過可能な波長の光を出射するとともに、前記保持面からの前記光の反射光を受光することにより、前記アライメントマークと共に前記保持面の表面模様を示すマーク撮像画像を取得する撮像部と、
前記マーク撮像画像において前記表面模様を低減した処理済み画像を生成する画像処理部と、
前記処理済み画像に基づいて前記基板の位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部と、
を備え
、
前記画像処理部が、前記マーク撮像画像が示す前記保持面の領域の前記表面模様を少なくとも示す参照画像と前記マーク撮像画像とを比較することにより前記処理済み画像を生成する、または、前記表面模様が周期的である場合に前記マーク撮像画像にFFT変換を施すことによりパワースペクトル画像を取得し、前記パワースペクトル画像において前記表面模様の周波数成分に相当する領域にフィルタリングを施して得たパワースペクトル画像に対して逆FFT変換を施すことにより前記処理済み画像を生成することを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアライメント装置であって、
前記参照画像が、前記保持面を撮像した画像であり、
前記処理済み画像が、前記参照画像と前記マーク撮像画像との差を示すことを特徴とするアライメント装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアライメント装置であって、
前記保持面を示す画像を記憶する画像記憶部をさらに備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアライメント装置であって、
前記基板上における前記アライメントマークの位置を示すマーク位置情報に基づいて、前記画像記憶部から、前記アライメントマークの位置に対応する前記保持面の領域を示す画像を前記参照画像として取得する画像検索部をさらに備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアライメント装置であって、
前記ステージを前記撮像部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記撮像部および前記移動機構を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記画像検索部が前記参照画像を取得不能である場合に、前記制御部が、前記撮像部および前記移動機構を制御することにより、前記アライメントマークの位置に対応する前記保持面の領域を示す画像が、前記参照画像として取得されることを特徴とするアライメント装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、
前記保持面に垂直な方向における複数の位置にフォーカス位置を設定しつつ、前記撮像部により前記保持面を撮像した画像群が前記画像記憶部に記憶されており、
前記参照画像が、前記画像群のうち、前記マーク撮像画像の取得時におけるフォーカス位置と最も近似するフォーカス位置にて撮像した画像である、または、前記表面模様のコントラストが前記マーク撮像画像と最も近似する画像であることを特徴とするアライメント装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、
前記参照画像が、前記撮像部により取得される多階調の画像に所定の処理を施した画像であり、
前記マーク撮像画像における前記アライメントマークの周囲の背景領域について、前記参照画像と前記マーク撮像画像との明度及びコントラストの少なくとも一方の差が、前記所定の処理前の画像と前記マーク撮像画像との前記差よりも小さいことを特徴とするアライメント装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、
前記基板上における前記アライメントマークの位置を示すマーク位置情報に基づいて、前記撮像部により前記マーク撮像画像が取得され、
前記マーク撮像画像と前記参照画像との差を示す指標値が所定値よりも大きい場合に、前記画像処理部が、前記マーク撮像画像および前記参照画像に対して所定の位置合わせ処理を行い、相対位置が合わせられた前記マーク撮像画像および前記参照画像から前記処理済み画像を生成することを特徴とするアライメント装置。
【請求項9】
露光装置であって、
請求項1ないし8のいずれか1つに記載のアライメント装置と、
基板にパターンを露光する露光部と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項10】
アライメント方法であって、
a)基板の一の主面にアライメントマークが形成されており、前記主面がステージの保持面と対向した状態で前記保持面により前記基板を保持する工程と、
b)撮像部により前記ステージ上の前記基板の他の主面に向けて、前記基板を透過可能な波長の光を出射するとともに、前記保持面からの前記光の反射光を受光することにより、前記アライメントマークと共に前記保持面の表面模様を示すマーク撮像画像を取得する工程と、
c)前記マーク撮像画像において前記表面模様を低減した処理済み画像を生成する工程と、
d)前記処理済み画像に基づいて前記基板の位置ずれ量を取得する工程と、
を備え
、
前記c)工程において、前記マーク撮像画像が示す前記保持面の領域の前記表面模様を少なくとも示す参照画像と前記マーク撮像画像とを比較することにより前記処理済み画像が生成される、または、前記表面模様が周期的である場合に前記マーク撮像画像にFFT変換を施すことによりパワースペクトル画像を取得し、前記パワースペクトル画像において前記表面模様の周波数成分に相当する領域にフィルタリングを施して得たパワースペクトル画像に対して逆FFT変換を施すことにより前記処理済み画像が生成されることを特徴とするアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント技術および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンや小型IOT機器の台頭により、高性能な半導体デバイスを容積の小さい筐体に格納することへの要望が強くなってきている。このため、デバイスの小サイズ化の一方式として、半導体デバイス製造用の基板(ウエハ)において、集積回路が形成された第1主面とは反対側の第2主面を研磨して基板を薄くし、第2主面から配線を行うことで実装面積を削減するプロセスが提案されている。具体的には、基板において集積回路が形成された第1主面を支持基板に張り合わせ、第1主面とは反対側の第2主面を研磨して基板が薄くされる。その後、露光等により第2主面にパターンを形成し、第1主面上に位置する集積回路の電極に対して第2主面側から配線を行うことによりデバイスの小型化が実現される。
【0003】
上記プロセスでは、第1主面上の集積回路に対して電気的に接続される配線パターンを、第2主面の適切な位置に露光するために、第2主面への露光の際に、第1主面上の集積回路に対して、正しくアライメントを行う技術が必要になる。例えば、特許文献1の装置では、ステージ上の基板の両主面側に撮像部を配置することにより、基板においてアライメントマークが形成された主面が上側および下側のいずれを向く場合でも、位置合わせが可能とされる。また、特許文献2では、Si基板が、赤外光(波長1000nm以上)に対して透過性を有することを利用して、ステージ上の基板の下面側のアライメントマークを基板の上面側から観察する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-312248号公報
【文献】特開2014-85123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の装置では、撮像部の個数が多くなり、これらの位置合わせの調整が煩雑になるとともに、部品数の増加により装置の製造コストが増大する。また、ステージ側(基板の下面側)に設けられる撮像部では、構造上の制約により一定範囲のみが撮像可能であるため、基板上においてアライメントマークが配置可能な位置が大きく制限され、様々な種類のデバイスの製造に対応することが困難となる。
【0006】
一方、特許文献2のように、基板を透過可能な波長の光を利用する場合、ステージ上の基板の下面側のアライメントマークを基板の上面側に設けられた撮像部から観察することが可能となる。しかしながら、基板とステージとの間の支持基板が薄い場合や支持基板を用いない場合等には、撮像部により取得される画像において、ステージの保持面の表面模様が映り込むことがある。このような画像では、表面模様の影響により、アライメントマークの位置(例えば、重心)を正確に特定することが困難となり、基板の位置ずれ量を精度よく取得することができない場合がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、アライメントマークを示す画像において保持面の表面模様が映り込む場合に、基板の位置ずれ量を精度よく取得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、アライメント装置であって、基板の一の主面にアライメントマークが形成されており、前記主面が保持面と対向した状態で前記保持面により前記基板を保持可能なステージと、前記ステージ上に前記基板が保持された状態で、前記ステージ上の前記基板の他の主面に向けて、前記基板を透過可能な波長の光を出射するとともに、前記保持面からの前記光の反射光を受光することにより、前記アライメントマークと共に前記保持面の表面模様を示すマーク撮像画像を取得する撮像部と、前記マーク撮像画像において前記表面模様を低減した処理済み画像を生成する画像処理部と、前記処理済み画像に基づいて前記基板の位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部とを備え、前記画像処理部が、前記マーク撮像画像が示す前記保持面の領域の前記表面模様を少なくとも示す参照画像と前記マーク撮像画像とを比較することにより前記処理済み画像を生成する、または、前記表面模様が周期的である場合に前記マーク撮像画像にFFT変換を施すことによりパワースペクトル画像を取得し、前記パワースペクトル画像において前記表面模様の周波数成分に相当する領域にフィルタリングを施して得たパワースペクトル画像に対して逆FFT変換を施すことにより前記処理済み画像を生成する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアライメント装置であって、前記参照画像が、前記保持面を撮像した画像であり、前記処理済み画像が、前記参照画像と前記マーク撮像画像との差を示す。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のアライメント装置であって、前記保持面を示す画像を記憶する画像記憶部をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアライメント装置であって、前記基板上における前記アライメントマークの位置を示すマーク位置情報に基づいて、前記画像記憶部から、前記アライメントマークの位置に対応する前記保持面の領域を示す画像を前記参照画像として取得する画像検索部をさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のアライメント装置であって、前記ステージを前記撮像部に対して相対的に移動する移動機構と、前記撮像部および前記移動機構を制御する制御部とをさらに備え、前記画像検索部が前記参照画像を取得不能である場合に、前記制御部が、前記撮像部および前記移動機構を制御することにより、前記アライメントマークの位置に対応する前記保持面の領域を示す画像が、前記参照画像として取得される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項3ないし5のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、前記保持面に垂直な方向における複数の位置にフォーカス位置を設定しつつ、前記撮像部により前記保持面を撮像した画像群が前記画像記憶部に記憶されており、前記参照画像が、前記画像群のうち、前記マーク撮像画像の取得時におけるフォーカス位置と最も近似するフォーカス位置にて撮像した画像である、または、前記表面模様のコントラストが前記マーク撮像画像と最も近似する画像である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2ないし6のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、前記参照画像が、前記撮像部により取得される多階調の画像に所定の処理を施した画像であり、前記マーク撮像画像における前記アライメントマークの周囲の背景領域について、前記参照画像と前記マーク撮像画像との明度及びコントラストの少なくとも一方の差が、前記所定の処理前の画像と前記マーク撮像画像との前記差よりも小さい。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のアライメント装置であって、前記基板上における前記アライメントマークの位置を示すマーク位置情報に基づいて、前記撮像部により前記マーク撮像画像が取得され、前記マーク撮像画像と前記参照画像との差を示す指標値が所定値よりも大きい場合に、前記画像処理部が、前記マーク撮像画像および前記参照画像に対して所定の位置合わせ処理を行い、相対位置が合わせられた前記マーク撮像画像および前記参照画像から前記処理済み画像を生成する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、露光装置であって、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のアライメント装置と、基板にパターンを露光する露光部とを備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、アライメント方法であって、a)基板の一の主面にアライメントマークが形成されており、前記主面がステージの保持面と対向した状態で前記保持面により前記基板を保持する工程と、b)撮像部により前記ステージ上の前記基板の他の主面に向けて、前記基板を透過可能な波長の光を出射するとともに、前記保持面からの前記光の反射光を受光することにより、前記アライメントマークと共に前記保持面の表面模様を示すマーク撮像画像を取得する工程と、c)前記マーク撮像画像において前記表面模様を低減した処理済み画像を生成する工程と、d)前記処理済み画像に基づいて前記基板の位置ずれ量を取得する工程とを備え、前記c)工程において、前記マーク撮像画像が示す前記保持面の領域の前記表面模様を少なくとも示す参照画像と前記マーク撮像画像とを比較することにより前記処理済み画像が生成される、または、前記表面模様が周期的である場合に前記マーク撮像画像にFFT変換を施すことによりパワースペクトル画像を取得し、前記パワースペクトル画像において前記表面模様の周波数成分に相当する領域にフィルタリングを施して得たパワースペクトル画像に対して逆FFT変換を施すことにより前記処理済み画像が生成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アライメントマークを示す画像において保持面の表面模様が映り込む場合に、基板の位置ずれ量を精度よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】アライメント装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7A】基板にパターンを露光する動作の流れを示す図である。
【
図7B】基板にパターンを露光する動作の流れを示す図である。
【
図14】保持面画像を取得する動作を説明するための図である。
【
図15C】フィルタリングを施したパワースペクトル画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および
図2は、本発明の一の実施の形態に係る露光装置1の構成を示す図である。
図1は、露光装置1の側面図であり、
図2は、露光装置1の平面図である。
図1および
図2では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している(他の図において同様)。
図1の例では、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。以下の説明では、Z方向を「上下方向」と呼ぶが、露光装置1の設計によっては、Z方向が鉛直方向に対して傾斜した方向等であってもよい。
【0021】
露光装置1は、半導体基板等の基板9において、感光材料が設けられた一の主面に対して、空間変調された光を照射してパターンを描画する描画装置である。本実施の形態における基板9は、Si(ケイ素)により形成された円形の半導体基板であり、集積回路が形成された第1主面91と、第1主面91とは反対側の第2主面92とを備える。後述するように、露光装置1では、第2主面92が上方((+Z)方向)を向いた状態で、基板9が保持される。第2主面92には感光材料が設けられており、露光装置1により第2主面92にパターンが描画(露光)される。
【0022】
露光装置1は、本体部100と、基板収納カセット90と、制御ユニット60とを備える。本体部100では、本体フレーム101により形成される空間の内部に露光装置1の主たる構成が配置される。基板収納カセット90は、本体フレーム101よりも(+Y)側において本体部100に近接して配置される。制御ユニット60は、例えば、CPU、ROM、RAM、記憶装置等がバスラインを介して相互に接続された一般的なコンピュータを含む。制御ユニット60は、本体フレーム101の外側に配置され、本体部100の各構成と電気的に接続される。制御ユニット60には、露光装置1の外部装置であるパターン設計装置(図示省略)も電気的に接続される。制御ユニット60は、本体部100の各構成およびパターン設計装置と通信可能である。制御ユニット60は、露光装置1の全体制御を担う。
【0023】
本体部100は、基板9にパターンを露光する露光部110と、基板9の搬送を行う搬送ロボット120とを備える。搬送ロボット120は、露光部110よりも(+Y)側に配置され、露光部110と基板収納カセット90との間で基板9の受け渡しを行う。具体的には、搬送ロボット120は、基板収納カセット90に収納される未処理の基板9を基板収納カセット90から取り出し、露光部110に渡す。未処理の基板9とは、第2主面92に対する露光装置1による露光が未実施の基板9である。また、搬送ロボット120は、露光部110において露光が施された処理済みの基板9を露光部110から受け取り、基板収納カセット90に戻す。
図2の例では、基板収納カセット90は、未処理の基板9を収納する第1の収納部と、処理済みの基板9を収納する第2の収納部とを有する。
【0024】
露光部110は、基台130により支持される。露光部110は、ステージ10と、ステージ移動機構20と、位置計測部30と、撮像部(アライメントカメラ)40と、光学ヘッド部50とを備える。ステージ10は、基板9を水平姿勢にて保持可能な保持面11を有する。保持面11は、ステージ10の上面である。保持面11には、例えば複数の吸引溝(図示省略)が形成されている。ステージ10上に載置される基板9は、複数の吸引溝にて吸引されて保持面11上に吸着保持される。ステージ10上の基板9では、集積回路が形成された第1主面91が下方を向き、感光材料が設けられた第2主面92が上方を向く。このように、第1主面91が保持面11と対向した状態で保持面11により基板9が保持される。ステージ10は、例えばセラミックや金属により形成される。ステージ10上の基板9は、静電吸着やメカニカルチャック等により保持面11上に保持されてもよい。
【0025】
ステージ移動機構20は、基台130上に設けられ、回転機構21と、支持プレート22と、副走査機構23と、ベースプレート24と、主走査機構25とを備える。回転機構21は、ステージ10の内部に設けられたモータを有し、Z方向に平行な回転軸を中心としてステージ10を回転させる。支持プレート22は、ステージ10を回転可能に支持する。副走査機構23は、例えばリニアモータとガイドレールとを有し、支持プレート22を副走査方向であるX方向に移動させる。ベースプレート24は、副走査機構23を介して支持プレート22を支持する。主走査機構25は、例えばリニアモータとガイドレールとを有し、ベースプレート24を主走査方向であるY方向に移動させる。回転機構21、副走査機構23および主走査機構25では、他の種類の駆動源が利用されてもよい。
【0026】
位置計測部30は、基台130や光学ヘッド部50に対して固定された位置に設けられる。位置計測部30は、レーザ光出射部、ビームスプリッタ、干渉計等を有し、レーザ光の干渉を利用してステージ10の位置を計測する。位置計測部30による計測結果(ステージ10の位置)は、制御ユニット60に出力される。制御ユニット60では、当該計測結果を用いて、ステージ移動機構20の制御等が行われる。
【0027】
基台130上には、ヘッド支持部140が設けられる。ヘッド支持部140は、2本の脚部材141と、2本の脚部材142と、1本の梁部材143と、1本の梁部材144とを備える。脚部材141,142は、基台130から上方に向かって延びる。2本の脚部材141は、Y方向における基台130の中央近傍において、X方向における基台130の両端部にそれぞれ配置される。2本の脚部材142は、基台130の(-Y)側の端部において、X方向における基台130の両端部にそれぞれ配置される。梁部材143,144は、X方向に延びる。梁部材143は、2本の脚部材141の頂部の間を接続する。梁部材144は、2本の脚部材142の頂部の間を接続する。梁部材143の(-Y)側には、撮像部40が撮像部昇降機構46を介して取り付けられる。撮像部昇降機構46により、撮像部40が上下方向(Z方向)に移動可能である。撮像部40の詳細については後述する。
【0028】
光学ヘッド部50は、梁部材143の(+Y)側に取り付けられる。光学ヘッド部50は、基板9の第2主面92に向かって露光用のパルス光を照射する光照射部である。光学ヘッド部50は、照明光学系53を介して1つのレーザ発振器54に接続される。また、レーザ発振器54には、レーザ駆動部55が接続される。レーザ駆動部55を駆動させると、レーザ発振器54からパルス光が出射され、当該パルス光が照明光学系53を介して光学ヘッド部50の内部に導入される。
【0029】
光学ヘッド部50には、光学系および空間光変調器等が設けられる。空間光変調器では、複数の変調素子が配列される。光学ヘッド部50の内部に導入されたパルス光は、空間光変調器により空間変調され、第2主面92上の感光材料(レジスト層)に照射される。空間光変調器としては、例えば、回折格子型の空間光変調器であるグレーティングライトバルブ(GLV)等が例示される。露光用のパルス光は、第2主面92上の感光材料を感光させるものであればよく、例えば紫外線である。光学ヘッド部50では、露光用の光として連続光が利用されてもよい。
【0030】
露光装置1では、ステージ10を主走査方向に連続的に移動しつつ、制御ユニット60が描画データに従って空間光変調器を制御することにより、第2主面92上においてY方向に延びる帯状領域にパターンが露光される。X方向における帯状領域の幅だけ基板9を副走査方向に移動した後、上記と同様にしてY方向に延びる帯状領域にパターンが露光される。このようにして、基板9を副走査方向に間欠的に移動しつつ、主走査方向への連続移動(帯状領域へのパターンの露光)を繰り返すことにより、第2主面92のおよそ全体にパターンが露光される。
【0031】
図3は、撮像部40およびステージ10を示す図である。
図3に示すように、撮像部40は、照明部41と、光学系42と、撮像デバイス43とを備える。照明部41は、基板9を透過可能な波長の照明光を出射する。照明光は、例えば赤外線(IR)であり、第2主面92上の感光材料を感光させない。照明光は、基板9を透過可能な他の波長の光であってもよい。光学系42は、対物レンズを有し、照明光は対物レンズを介して下方に向けて出射される。対物レンズの光軸J1は、例えばZ方向に平行である。撮像部40の下方にステージ10が配置された状態では、照明光は基板9を透過してステージ10の保持面11に照射され、保持面11おいて反射する。保持面11からの照明光の反射光は、対物レンズに入射し、光学系42により撮像デバイス43に導かれる。撮像デバイス43では、CCDまたはCMOS等の撮像素子が配列されており、当該反射光を受光することにより、画像が取得される。当該画像のデータは、制御ユニット60に出力される。撮像部40の構造は適宜変更されてよい。
【0032】
図4は、ステージ10上の基板9を示す図である。既述のように、基板9の第1主面91(
図3参照)には集積回路が形成されており、当該第1主面91が保持面11に対向する。第1主面91には、集積回路と共に複数のアライメントマーク911が形成されており、複数のアライメントマーク911も保持面11に対向する。
図4では、複数のアライメントマーク911を破線の矩形にて示している。各アライメントマーク911の形状は、十字型等、任意に変更されてよく、第1主面91上のアライメントマーク911の個数も適宜変更されてよい。
【0033】
本実施の形態では、複数のアライメントマーク911が、基板9の本体とは異なる材料(例えば、基板9よりも照明光を透過させない材料)により形成される。アライメントマーク911は、基板9の表面を削ることにより形成されてもよい。後述の処理では、複数のアライメントマーク911が撮像部40の下方に順に配置される。換言すると、撮像部40による撮像領域R1(
図4中に細線の矩形にて示す。)が、各アライメントマーク911と重ねられる。これにより、
図5に示すように、当該アライメントマーク911を示すマーク撮像画像81が取得される。例えば、マーク撮像画像81は、多階調の画像である。マーク撮像画像81には、保持面11の表面模様861が映り込む。保持面11の表面模様861は、保持面11の凹凸や、ステージ10を形成する材料の結晶粒等に起因する。
【0034】
図6は、アライメント装置7の機能構成を示すブロック図である。アライメント装置7は、露光装置1の一部である。アライメント装置7は、既述のステージ10と、ステージ移動機構20と、撮像部40と、撮像部昇降機構46とを備える。ステージ10、ステージ移動機構20、撮像部40および撮像部昇降機構46は、露光部110およびアライメント装置7により共有されている。アライメント装置7は、制御部71と、画像検索部72と、画像処理部73と、位置ずれ量取得部74と、画像記憶部75とをさらに備える。制御部71、画像検索部72、画像処理部73および位置ずれ量取得部74は、制御ユニット60のコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。これらの機能の一部または全部が、専用の電気回路により実現されてもよい。画像記憶部75は、当該コンピュータのメモリまたは記憶装置により実現される。
図6では、制御ユニット60が有するレシピ記憶部61も示している。
【0035】
アライメント装置7による後述の処理では、複数のマーク撮像画像81が取得され、各マーク撮像画像81において表面模様861(
図5参照)を低減した処理済み画像が生成される。そして、複数の処理済み画像に基づいて基板9の位置情報および形状情報が取得される。基板9の位置情報は、ステージ10の保持面11上の所定の基準位置に対する基板9のX方向およびY方向の位置ずれ量、並びに、保持面11に沿う所定の基準方向に対する基板9の傾き角度を含む。基板9の形状情報は、基板9のひずみ等の変形情報を含む。以下、アライメント装置7による処理を含む、露光装置1の動作について説明する。
【0036】
図7Aおよび
図7Bは、露光装置1が基板9にパターンを露光する動作の流れを示す図である。
図1および
図2の露光装置1が基板9にパターンを露光する際には、まず、未処理の基板9を収容した基板収納カセット90が準備されて、露光装置1に取り付けられる。続いて、制御ユニット60に設けられた操作部(例えば、マウスまたはキーボード等の入力部)を用いて、
図6のレシピ記憶部61に記憶された複数のレシピ611から、未処理の基板9に対して実行すべきパターンの露光を示すレシピ611が作業者により選択される(ステップS10)。本実施の形態におけるレシピ611は、アライメント情報と、光学ヘッド部50によるパターンの露光時に利用される各種情報とを含む。アライメント情報は、およそアライメントマーク911のみを示すマーク登録画像と、撮像部40によりマーク撮像画像81を取得する際に利用されるオフセット量と、基板9の第1主面91における複数のアライメントマーク911の位置(例えば、重心座標)を示すマーク位置情報とを含む。
【0037】
続いて、アライメント装置7の制御部71では、選択されたレシピ611のマーク位置情報が示す複数のアライメントマーク911の位置のうち、一のアライメントマーク911の位置が選択され、画像検索部72に入力される。すなわち、複数のアライメントマーク911から一のアライメントマーク911が選択アライメントマーク911として選択され、選択アライメントマーク911の位置が画像検索部72に入力される(ステップS11)。このようにして、選択アライメントマーク911の位置をキーとして、画像検索部72への問い合わせが行われる。画像検索部72では、選択アライメントマーク911の位置に基づいて、画像記憶部75に対して画像の検索が行われる。
【0038】
アライメント装置7では、ステージ10の保持面11上の複数の位置が撮像部40により予め撮像され、各画像が保持面画像751として画像記憶部75に記憶されている。各保持面画像751は、保持面11の表面模様861を示す多階調の画像データであり、当該保持面画像751が示す保持面11上の位置も当該保持面画像751に関連付けられている。ここで、ステージ10に対する基板9の位置ずれおよび傾きが生じておらず、かつ、基板9の変形が生じていない状態で、基板9がステージ10上に保持されていると仮定した場合に、当該基板9のアライメントマーク911と重なる保持面11上の位置(座標)を、「アライメントマーク911の保持面11上の設計位置」と呼ぶ。各保持面画像751が示す保持面11上の位置は、いずれかのレシピ611のマーク位置情報が示すアライメントマーク911の位置に対応し、当該アライメントマーク911の保持面11上の設計位置である。例えば、当該保持面画像751の中央が、当該アライメントマーク911の保持面11上の設計位置を示す。
【0039】
画像検索部72では、画像記憶部75に含まれる複数の保持面画像751において、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置と略同じ位置(当該設計位置から所定の微小範囲内の位置を含む。)を撮像した保持面画像751が検索される。当該保持面画像751が存在する場合(ステップS12)、当該保持面画像751が選択アライメントマーク911に対する参照画像として特定され、画像処理部73に出力される(ステップS13)。
【0040】
選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置と略同じ位置を撮像した保持面画像751が画像記憶部75に存在しない場合には(ステップS12)、画像検索部72から制御部71に対して選択アライメントマーク911に対する参照画像が取得不能である旨の信号が出力される。この場合、制御部71の制御により、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置が撮像される。
【0041】
詳細には、まず、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置が撮像部40の下方に配置される。このとき、ステージ10上に基板9は載置されていない。また、図示省略の高さ測定部が、上下方向における保持面11の高さを測定し、撮像部昇降機構46が撮像部40を昇降することにより、撮像部40のフォーカス位置が保持面11に配置される。撮像部40のフォーカス位置は、対物レンズの光軸J1(
図3参照)上において撮像デバイス43の撮像面と光学的に共役な位置である。そして、撮像部40により保持面11が撮像され、保持面11を示す画像が取得される。当該画像は、選択アライメントマーク911に対する参照画像として画像処理部73に出力される(ステップS14)。また、当該画像は、当該画像が示す保持面11上の位置を関連付けた状態で、新たな保持面画像751として画像記憶部75に記憶される。なお、画像記憶部75に既に記憶されている保持面画像751も、撮像部40のフォーカス位置を保持面11に配置した状態で取得された画像である。
【0042】
上記ステップS11~S14の処理は、選択されたレシピ611のマーク位置情報が示す全てのアライメントマーク911を選択アライメントマーク911として順次選択しつつ繰り返される(ステップS15)。これにより、画像処理部73において、全てのアライメントマーク911に対して参照画像が準備される。
【0043】
続いて、
図1および
図2の搬送ロボット120により、基板収納カセット90から未処理の基板9が取り出され、搬送ロボット120の近傍に配置されたステージ10上に載置される。このとき、基板9の外縁に設けられた切り欠き部(例えば、ノッチ、オリエンテーションフラット等)を用いて、基板9が保持面11上の基準位置にて基準方向に沿うように配置される。これにより、ステージ10上の基板9の位置ずれおよび傾きが過度に大きくなることが防止される。ステージ10では、アライメントマーク911が形成された第1主面91が保持面11と直接的に対向する(接触する)。基板9は保持面11により吸着保持される(ステップS16)。
【0044】
保持面11により基板9が保持されると、制御部71では、選択されたレシピ611のマーク位置情報が示す複数のアライメントマーク911のうち、一のアライメントマーク911が、位置ずれ量の取得対象のアライメントマーク911(以下、「対象アライメントマーク911」という。)として選択される(ステップS17)。そして、対象アライメントマーク911の位置が取得され、画像処理部73に出力される。
【0045】
また、対象アライメントマーク911の保持面11上の設計位置が撮像部40の下方に配置され、
図3の撮像部40によりステージ10上の基板9が撮像される(ステップS18)。詳細には、撮像部40による基板9の撮像では、まず、図示省略の高さ測定部が、上下方向における基板9の第2主面92(
図3の上方を向く主面)の高さを測定し、撮像部昇降機構46が撮像部40を昇降することにより、撮像部40のフォーカス位置が第2主面92上の位置P10(以下、「上面位置P10」という。)に配置される。
図3では、フォーカス位置が上面位置P10に配置された状態の撮像部40を実線にて示している。
【0046】
レシピ611に含まれる既述のオフセット量は、アライメントマーク911を撮像する際にフォーカス位置を上面位置P10からステージ10側にずらすべき距離であり、典型的には、基板9の厚さに近似する。撮像部40のフォーカス位置が上面位置P10に配置された後、撮像部昇降機構46が撮像部40をオフセット量だけ下降することにより、撮像部40のフォーカス位置が第1主面91近傍の位置P11に配置される。
図3では、フォーカス位置が位置P11に配置された状態の撮像部40を二点鎖線にて示している。
【0047】
その後、撮像部40から基板9の第2主面92に向けて照明光が出射される。基板9を透過して保持面11に到達した照明光は、保持面11おいて反射する。本実施の形態では、照明光は、アライメントマーク911で反射しない(吸収される)。保持面11からの照明光の反射光は撮像デバイス43により受光される。これにより、
図5に示すように、対象アライメントマーク911のマーク撮像画像81が取得される。このとき、保持面11が撮像部40の被写界深度に含まれる、または、被写界深度の外側極近傍に位置する。したがって、マーク撮像画像81では、対象アライメントマーク911の周囲の領域860(以下、「背景領域860」という。)に保持面11の表面模様861が現れる。マーク撮像画像81は、画像処理部73に出力される。
【0048】
図8は、対象アライメントマーク911に対する参照画像82を示す図である。既述のように、ステップS13またはステップS14により、対象アライメントマーク911に対する参照画像82が既に準備されている。画像処理部73では、対象アライメントマーク911のマーク撮像画像81と、対象アライメントマーク911に対する参照画像82との差分画像が処理済み画像として生成される(ステップS19)。本実施の形態では、マーク撮像画像81および参照画像82の双方が、アライメントマーク911の保持面11上の設計位置を撮像部40により撮像したものであり、両画像が示す保持面11の領域は略同じである。
【0049】
図9は、対象アライメントマーク911に対する処理済み画像83を示す図である。
図9では、
図5のマーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、
図8の参照画像82が示す保持面11の領域とが完全に一致する場合に得られる、理想的な処理済み画像83を示している。
図9の処理済み画像83は、マーク撮像画像81の各画素の画素値から参照画像82の同じ位置の画素値を引いて得た符号付きの差分画像を、マーク撮像画像81および参照画像82と同じ階調数にて示す画像である。差分画像において、背景領域860に相当する部分の画素値は、マーク撮像画像81の背景領域860と参照画像82の背景領域860の差分から得られるが、理想的には差分が小さいため、画素値は限りなく0に近くなる。また、差分画像において、対象アライメントマーク911に相当する部分では、基本的に、マーク撮像画像81におけるアライメントマーク911の明るさとステージ画像の明るさとの差分に依存した値が画素値として得られる。本実施の形態では、照明光がアライメントマーク911で反射しない(吸収される)ため、マーク撮像画像81においてアライメントマーク911は黒く見えることになり、差分画像における対象アライメントマーク911に相当する部分の多くの画素値は負の値を取ることになる。この差分画像をマーク撮像画像81及び参照画像82と同じ階調数で表示すると、差分画像における対象アライメントマーク911に相当する部分の画素値に対して、差分画像における背景領域860に相当する部分の画素値は相対的に大きな値であるため、処理済み画像83上では、マーク部分(マーク撮像画像81と参照画像82を重ねた際に、対象アライメントマーク911と重なる領域であり、以下、「マーク対応領域836」という。)が黒に近い色で表現され、背景部分が白く表現される。その結果、
図9に示すような、マーク撮像画像81における表面模様861が除去された画像を得ることができる。
【0050】
実際には、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とが、縦方向および横方向に僅かに(例えば数μm)ずれる場合がある。
図10Aおよび
図10Bに示す例では、
図10Aのマーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、
図10Bの参照画像82が示す保持面11の領域とが僅かにずれており、この場合、
図10Cに示すように、処理済み画像83では、背景領域860の明度(画素値の平均)が
図9の処理済み画像83に比べて小さく(暗く)なる。
【0051】
しかしながら、処理済み画像83の背景領域860では、マーク対応領域836と同程度に画素値が小さい領域(黒い領域)がほとんど存在せず、
図10Aのマーク撮像画像81に比べて、背景領域860における画素値のばらつきが小さい。したがって、
図10Cの処理済み画像83では、マーク撮像画像81における表面模様861が低減されている。例えば、処理済み画像83およびマーク撮像画像81のそれぞれを、画素値の最小値が0となり、最大値が1となるように正規化した場合に、処理済み画像83における背景領域860の画素値のばらつき(例えば、標準偏差)、または、背景領域860のコントラスト(例えば、最大画素値と最小画素値との差や、Michelsonコントラスト等)が、マーク撮像画像81よりも小さくなっていれば、マーク撮像画像81において表面模様861を低減した処理済み画像83が生成されているといえる。
【0052】
図11Aないし
図11Cは、マーク撮像画像81、参照画像82および処理済み画像83の他の例を示す図である。
図11Aに示すマーク撮像画像81では、アライメントマーク911および表面模様861の双方にフォーカスが合った状態であるのに対し、
図11Bに示す参照画像82では、表面模様861がぼけた状態である。この場合、
図11Cに示す処理済み画像83では、背景領域860の明度が
図9の処理済み画像83に比べて小さく(暗く)なる。しかしながら、処理済み画像83の背景領域860では、マーク対応領域836と同程度に画素値が小さい領域がほとんど存在せず、
図11Aのマーク撮像画像81に比べて、背景領域860における画素値のばらつきが小さい。したがって、
図11Cの処理済み画像83では、マーク撮像画像81における表面模様861が低減されている。
【0053】
図12は、処理済み画像83のさらに他の例を示す図である。
図12では、
図10Aおよび
図10Bに示す例と同様に、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とがずれており、さらに、
図11Bの例と同様に、参照画像82の表面模様861がぼけた状態である場合に得られる処理済み画像83を示している。処理済み画像83の背景領域860では、マーク対応領域836と同程度に画素値が小さい領域がほとんど存在せず、背景領域860における画素値のばらつきが小さい。
図12の処理済み画像83においても、マーク撮像画像81における表面模様861が低減されている。
【0054】
処理済み画像83は、符号付きの差分画像以外に、マーク撮像画像81の各画素の画素値と参照画像82の同じ位置の画素値との差の絶対値を示す画像であってもよい。また、処理済み画像83は、マーク撮像画像81の各画素の画素値と参照画像82の同じ位置の画素値との比を示す画像であってもよい。処理済み画像83は、マーク撮像画像81と参照画像82とを比較する様々な手法により生成されてよい。
【0055】
処理済み画像83は、画像処理部73から位置ずれ量取得部74に出力される。位置ずれ量取得部74では、ステージ10上の基板9の対象アライメントマーク911について、保持面11上の設計位置に対するX方向およびY方向の位置ずれ量が、処理済み画像83に基づいて取得される(ステップS20)。位置ずれ量の取得では、例えば、選択されたレシピ611に含まれるマーク登録画像が利用される。マーク登録画像は、およそ対象アライメントマーク911のみを示す画像であり、パターンマッチング等の手法を用いて処理済み画像83中の対象アライメントマーク911の位置(例えば、重心)が特定される。そして、処理済み画像83において、対象アライメントマーク911の位置と、対象アライメントマーク911の保持面11上の設計位置に相当する位置との間の位置ずれ量が取得される。
【0056】
上記ステップS17~S20の処理は、選択されたレシピ611のマーク位置情報が示す複数のアライメントマーク911を対象アライメントマーク911として順次選択しつつ繰り返される(ステップS21)。全てのアライメントマーク911の位置ずれ量が取得されると、位置ずれ量取得部74では、これらのアライメントマーク911の位置ずれ量を用いて、基板9の位置情報および形状情報が取得される(ステップS22)。既述のように、基板9の位置情報は、ステージ10に対する基板9の位置ずれ量および傾き角度を含む。基板9の形状情報は、基板9のひずみ等の変形情報を含む。なお、基板9の位置ずれ量のみを求める場合には、1つのアライメントマーク911の位置ずれ量がそのまま基板9の位置ずれ量とされてもよい。
【0057】
露光装置1では、基板9の位置情報および形状情報を用いて、基板9の第2主面92にパターンが露光される(ステップS23)。パターンの露光では、光学ヘッド部50の空間光変調器の制御に利用される描画データが生成される。描画データの生成では、例えば、基板9の位置情報および形状情報を用いてベクトル形式の設計データが補正される。すなわち、ステージ10に対する基板9の位置ずれ量および傾き角度、並びに、基板9の変形に合わせて、設計データが示すパターンの位置、傾きおよび形状が調整される。そして、補正済みの設計データに対してRIP処理を行うことにより、ラスタ形式の描画データが生成される。このようにして、ステージ10上の基板9の位置ずれ量および傾き角度、および、基板9の変形に合わせて生成(補正)された描画データが準備される。パターンの露光では、例えば、ステージ10を主走査方向に連続的に移動する主走査と、ステージ10を副走査方向に間欠的に移動する副走査とが繰り返される。また、主走査では、描画データに従って光学ヘッド部50の空間光変調器が制御される。なお、描画データの生成においては、ベクトル形式の設計データを補正する代わりに、ラスタ形式の描画データを補正してもよいし、露光処理の際に、ステージ10の走査や光学ヘッド部50の空間変調器の制御タイミングに対して、基板9の位置情報及び形状情報に基づき調整を加えてもよい。
【0058】
第2主面92に対するパターンの露光が完了すると、搬送ロボット120により、処理済みの基板9がステージ10から取り出され、基板収納カセット90に収容される(ステップS24)。これにより、当該基板9にパターンを露光する動作が完了する。実際には、基板収納カセット90に収容される他の未処理の基板9に対してステップS16~S24の処理が繰り返される。上記動作では、ステップS11~S22における基板9の位置情報等の取得に係る処理、および、ステップS23における設計データの補正(描画データの生成)が、アライメント処理となる。
図7Aおよび
図7Bの処理は、支持基板96が設けられた基板9(後述の
図13参照)に対して行われてもよい。
【0059】
保持面画像751は、基板9に対してパターンの露光を行わない待機時間に取得され、画像記憶部75に記憶されてもよい。例えば、待機時間において、レシピ記憶部61に記憶された各レシピ611のマーク位置情報が制御部71により取得される。続いて、上記ステップS12と同様に、マーク位置情報が示す各アライメントマーク911の保持面11上の設計位置と略同じ位置を撮像した保持面画像751が、画像記憶部75に存在するか否かが画像検索部72により確認される。このような保持面画像751が画像記憶部75に存在しない場合には、ステップS14と同様に、当該アライメントマーク911の保持面11上の設計位置が撮像部40により撮像され、新たな保持面画像751として画像記憶部75に記憶される。これにより、
図7Aおよび
図7Bの動作において、ステップS14における保持面11の撮像が行われることを回避することができ、パターンの露光に係る上記動作を効率よく行うことが可能となる。
【0060】
以上に説明したように、アライメント装置7のステージ10では、アライメントマーク911が形成された第1主面91が保持面11と対向した状態で基板9が保持面11により保持される。また、撮像部40では、ステージ10上の基板9の第2主面92に向けて、基板9を透過可能な波長の光を出射するとともに、保持面11からの当該光の反射光を受光することにより、アライメントマーク911と共に保持面11の表面模様861を示すマーク撮像画像81が取得される。
【0061】
ここで、マーク撮像画像81に基づいて位置ずれ量を取得する比較例の処理を想定する。
図5、
図10Aおよび
図11Aのマーク撮像画像81では、アライメントマーク911の周囲の背景領域860における画素値のばらつきが大きく、アライメントマーク911と同様に画素値が小さい領域(黒い領域)が、表面模様861の一部として多数存在している。このようなマーク撮像画像81では、表面模様861の影響により、位置ずれ量取得部74においてアライメントマーク911の位置(例えば、重心)を正確に特定することが困難となる場合がある。この場合、基板9の位置ずれ量を精度よく取得することができず、第1主面91の集積回路に合わせて、第2主面92にパターンを精度よく露光することができなくなる。
【0062】
これに対し、
図6のアライメント装置7、並びに、
図7Aおよび
図7Bのアライメント方法では、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域の表面模様861を示す参照画像82とマーク撮像画像81とを比較することにより、マーク撮像画像81において表面模様861を低減した処理済み画像83が生成される。そして、処理済み画像83に基づいて基板9の位置ずれ量が取得される。その結果、アライメントマーク911を示す画像において保持面11の表面模様861が映り込む場合であっても、基板9の位置ずれ量を精度よく取得することができる。また、上記アライメント装置7と、露光部110とを有する露光装置1では、基板9の位置ずれ量を用いてパターンを精度よく露光することができる。
【0063】
アライメント装置7では、保持面11を示す画像(保持面画像751)を記憶する画像記憶部75が設けられることにより、参照画像82を迅速に準備することができる。画像検索部72では、アライメントマーク911の位置を示すマーク位置情報に基づいて、画像記憶部75から、当該アライメントマーク911の位置に対応する保持面11の領域を示す画像が参照画像82として取得される。これにより、参照画像82を容易に準備することができる。
【0064】
また、画像検索部72が画像記憶部75から参照画像82を取得不能である場合に、制御部71が、撮像部40およびステージ移動機構20を制御することにより、アライメントマーク911の位置に対応する保持面11の領域を示す画像が、参照画像82として取得される。これにより、参照画像82を確実に準備することができる。画像処理部73では、マーク撮像画像81と、保持面11を撮像した参照画像82との差を示す画像が、処理済み画像83として生成される。このように、画像処理部73では、処理済み画像83を容易に生成することができる。
【0065】
アライメント処理では、既述のように、各アライメントマーク911の保持面11上の設計位置を撮像することによりマーク撮像画像81および参照画像82が取得されるため、典型的には、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とがほぼ一致する。しかしながら、ステージ移動機構20によるステージ10の移動の誤差等により、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とのずれが大きくなる場合がある。このような場合には、処理済み画像83の生成前に、所定の位置合わせ処理が行われることが好ましい。
【0066】
例えば、画像処理部73により、処理済み画像83を生成する際に、マーク撮像画像81の各画素の画素値と参照画像82の同じ位置の画素値との差の絶対値が求められ、全ての画素における当該差の絶対値の和が、マーク撮像画像81と参照画像82との差を示す指標値として取得される。当該指標値は、全ての画素における当該差の絶対値の平均値等であってもよく、マーク撮像画像81と参照画像82との差を示す他の種類の値であってもよい。
【0067】
当該指標値が所定値以下である場合には、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とのずれが小さいと判定され、上述のステップS19の処理と同様にして(すなわち、位置合わせ処理を行うことなく)、処理済み画像83が生成される。当該指標値が所定値よりも大きい場合には、当該ずれが大きいと判定され、マーク撮像画像81および参照画像82に対して所定の位置合わせ処理が行われる。
【0068】
位置合わせ処理の一例では、参照画像82をマーク撮像画像81に対して上下方向および左右方向にずらして、両画像を複数の相対位置に配置しつつ上記指標値が取得される。各方向にずらす量(画素数)の上限は適宜決定される。そして、複数の相対位置における複数の指標値のうち、最小となる指標値が得られた相対位置にマーク撮像画像81および参照画像82が配置される。これにより、マーク撮像画像81および参照画像82の相対位置が合わせられる。その後、相対位置が合わせられたマーク撮像画像81および参照画像82から、上述のステップS19の処理と同様にして処理済み画像83が生成される。位置合わせ処理では、上下方向および左右方向のみならず、両画像を回転方向にもずらして、上記指標値が取得されてもよい。また、位置合わせ処理では、マーク撮像画像81を参照画像82に対して上下方向及び左右方向にずらすことで、マーク撮像画像81と参照画像82の相対位置を合わせてもよい。この場合は、処理済み画像83を作成後、マーク撮像画像81をずらした分が相殺されるようにマーク対応領域836の位置を補正すればよい。他の公知の手法が用いられてもよい。
【0069】
以上のように、好ましいアライメント処理では、マーク撮像画像81と参照画像82との差を示す指標値が所定値よりも大きい場合に、マーク撮像画像81および参照画像82に対して所定の位置合わせ処理が行われる。そして、相対位置が合わせられたマーク撮像画像81および参照画像82から処理済み画像83が生成される。このように、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域と、参照画像82が示す保持面11の領域とのずれが大きい場合に、位置合わせ処理を行うことにより、適切な処理済み画像83を生成することができる。その結果、基板9の位置ずれ量を精度よく取得することができる。
【0070】
上記位置合わせ処理を行う場合に、マーク撮像画像81が示す領域の大きさよりも十分に大きい領域を示す保持面画像751が準備されてもよい。この場合、例えば、各アライメントマーク911の保持面11上の設計位置を中心とする領域が撮像部40により撮像され、続いて、当該領域の周辺領域が撮像される。その後、これらの画像が互いに連結され、1つの保持面画像751として画像記憶部75に記憶される。これにより、位置合わせ処理において、マーク撮像画像81および参照画像82(保持面画像751)を複数の相対位置に配置した際に、マーク撮像画像81の全体を参照画像82に重ねて、上記指標値を取得することが可能となる。処理済み画像83の生成では、参照画像82において、位置合わせ後のマーク撮像画像81と重なる部分が切り出されて利用される。
【0071】
なお、マーク撮像画像81が示す領域の大きさと、参照画像82が示す領域の大きさとが同じである場合でも、位置合わせ処理において、例えば、両画像が重ならない領域を無視することにより、上記指標値を適切に取得することが可能である。また、位置合わせ処理は、マーク撮像画像81および参照画像82の一部の領域のみを利用して行われてもよい。
【0072】
次に、露光装置1におけるアライメント処理の他の例について説明する。本処理例では、
図13に示すように、アライメントマーク911が形成された第1主面91に支持基板96が貼り合わされた基板9が、ステージ10上に載置される。第1主面91は、支持基板96を介して間接的に保持面11と対向する。この場合も、第1主面91が保持面11に対向した状態で、保持面11により基板9が保持されていると捉えられる。支持基板96は、例えば基板9と同様の材料により形成されるため、撮像部40の照明部41から出射される照明光は、基板9および支持基板96を透過する。支持基板96は、撮像部40からの照明光を透過させるものであるならば、基板9とは異なる材料にて形成されてもよい。
【0073】
既述のように、マーク撮像画像81を取得する際には、撮像部40のフォーカス位置が上面位置P10(第2主面92上の位置)に配置された後、レシピ611に含まれる既述のオフセット量だけ撮像部昇降機構46が撮像部40を下降することにより、撮像部40のフォーカス位置が第1主面91近傍の位置P11に配置される。そして、撮像部40により撮像が行われ、マーク撮像画像81が取得される。このとき、基板9に貼り合わされた支持基板96は比較的薄く、保持面11が撮像部40の被写界深度の外側近傍に位置するため、マーク撮像画像81の背景領域860では、表面模様861がぼけた状態となる。本処理例では、後述するように、ぼけた状態の表面模様861に適した参照画像82が利用される。
【0074】
図14は、保持面画像751を取得する動作を説明するための図である。本処理例では、アライメントマーク911の保持面11上の設計位置に対して、複数の保持面画像751が取得される。具体的には、高さ測定部が、上下方向における保持面11の位置を測定し、撮像部昇降機構46が撮像部40を昇降することにより、撮像部40のフォーカス位置が保持面11上の位置P20に配置される。この状態において、撮像部40により保持面11を示す保持面画像751が取得される。続いて、撮像部昇降機構46が撮像部40を上昇することにより、フォーカス位置が保持面11から上方に所定距離だけ離れた位置P21に配置される。そして、撮像部40により保持面11を示す保持面画像751が取得される。
【0075】
このように、アライメントマーク911の保持面11上の設計位置に対して、保持面11に垂直な上下方向における複数の位置P20~P23にフォーカス位置を設定しつつ、撮像部40により複数の保持面画像751が取得される。保持面11から複数の位置P21~P23までの距離は互いに相違する。各設計位置に対して取得される複数の保持面画像751は、画像群として画像記憶部75に記憶される。当該複数の保持面画像751には、画像取得時におけるフォーカス位置の高さがそれぞれ関連付けられる。
【0076】
本処理例では、一のアライメントマーク911が選択アライメントマーク911として選択された後(
図7A:ステップS11)、画像検索部72により、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置と略同じ位置を撮像した画像群が、画像記憶部75において検索される。当該画像群が存在する場合(ステップS12)、当該画像群が選択アライメントマーク911に対する参照画像の候補として特定され、画像処理部73に出力される(ステップS13)。
【0077】
選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置と略同じ位置を撮像した画像群が画像記憶部75に存在しない場合には(ステップS12)、画像検索部72から制御部71に対して、選択アライメントマーク911に対する参照画像の候補が取得不能である旨が出力される。この場合、制御部71がステージ移動機構20および撮像部40を制御することにより、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置が撮像部40の下方に配置され、保持面11が撮像される。このとき、上述の画像群を取得する動作と同様に、保持面11に垂直な上下方向における複数の位置にフォーカス位置を設定しつつ、撮像部40により複数の画像が取得される。当該複数の画像は、画像群として扱われ、画像取得時におけるフォーカス位置の高さがそれぞれ関連付けられる。当該画像群は、選択アライメントマーク911に対する参照画像の候補として画像処理部73に出力される(ステップS14)。また、当該画像群は、画像記憶部75に記憶(登録)される。
【0078】
全てのアライメントマーク911に対して参照画像の候補が特定されると(ステップS15)、基板9が保持面11により保持される(
図7B:ステップS16)。対象アライメントマーク911が選択された後(ステップS17)、対象アライメントマーク911が撮像されてマーク撮像画像81が取得される(ステップS18)。対象アライメントマーク911の撮像では、
図13を参照して説明したように、撮像部40のフォーカス位置が第1主面91近傍の位置P11に配置され、保持面11から上方に離れる。その結果、マーク撮像画像81の背景領域860では、表面模様861がぼけた状態となる。
【0079】
画像処理部73では、対象アライメントマーク911に対して特定された参照画像の候補(画像群)のうち、マーク撮像画像81の取得時におけるフォーカス位置と最も近似するフォーカス位置にて撮像した画像が参照画像82として選択される。これにより、マーク撮像画像81の背景領域860における表面模様861のぼけの状態と、参照画像82における表面模様861のぼけの状態とが近似する。そして、マーク撮像画像81と参照画像82とを比較することにより、処理済み画像83が生成される(ステップS19)。処理済み画像83では、マーク撮像画像81における表面模様861が低減される。
【0080】
処理済み画像83が生成されると、位置ずれ量取得部74では、処理済み画像83に基づいて対象アライメントマーク911の位置ずれ量が取得される(ステップS20)。上記ステップS17~S20の処理が繰り返され、全てのアライメントマーク911の位置ずれ量が取得されると(ステップS21)、これらのアライメントマーク911の位置ずれ量を用いて、基板9の位置情報および形状情報が取得される(ステップS22)。露光装置1では、基板9の位置情報および形状情報を用いて、基板9の第2主面92にパターンが露光される(ステップS23)。
【0081】
以上に説明したように、
図6のアライメント装置7、並びに、
図7Aおよび
図7Bのアライメント方法では、保持面11に垂直な方向における複数の位置にフォーカス位置を設定しつつ、撮像部40により保持面11を撮像した画像群が画像記憶部75に記憶される。また、処理済み画像83を生成する際に、画像群のうち、マーク撮像画像81の取得時におけるフォーカス位置と最も近似するフォーカス位置にて撮像した画像が参照画像82として利用される。これにより、マーク撮像画像81における表面模様861とぼけの状態が近似した適切な参照画像82を用いて、処理済み画像83を精度よく生成することができる。その結果、基板9の位置ずれ量を精度よく取得することができる。
【0082】
支持基板96または基板9の屈折率等によっては、画像群のうち、マーク撮像画像81の取得時におけるフォーカス位置と最も近似するフォーカス位置にて撮像した画像と、表面模様861のぼけの状態がマーク撮像画像81の背景領域860と最も近似する画像とが相違する場合がある。このような場合、表面模様861のぼけの状態を表面模様861のコントラスト(例えば、最大画素値と最小画素値との差や、Michelsonコントラスト等)で数値化し、画像群のうち表面模様861のコントラストがマーク撮像画像81と最も近似する画像が、参照画像82として選択されることが好ましい。これにより、マーク撮像画像81における表面模様861とぼけの状態が近似した適切な参照画像82を用いて、表面模様861を低減した処理済み画像83を精度よく生成することができる。
【0083】
異なるフォーカス位置にて取得された画像群から参照画像を選択する上記処理は、支持基板96が設けられない基板9に対して行われてもよい。例えば、第1主面91に形成されるパターンの高さが大きい場合等には、マーク撮像画像81を取得する際に、保持面11が撮像部40の被写界深度の外側近傍に位置し、マーク撮像画像81の背景領域860において表面模様861がぼけた状態となることがある。この場合も、上記処理により、適切な参照画像82を用いて、処理済み画像83を精度よく生成することができる。
【0084】
上記処理例では、異なるフォーカス位置にて取得された画像群から、マーク撮像画像81における表面模様861とぼけの状態が近似した参照画像82が選択されるが、参照画像82は、保持面11を示す1つの画像に対して所定の処理を施すことにより生成されてもよい。
【0085】
例えば、撮像部40のフォーカス位置を一の位置(例えば、保持面11上の位置P20)に配置した状態で、撮像部40により保持面11を示す多階調の画像が取得される。そして、当該画像に対して、マーク撮像画像81における表面模様861のぼけの状態に合わせた度合いのぼかし処理(例えば、平滑化処理)を施すことにより、参照画像82が生成される。この場合、背景領域860について、当該参照画像82とマーク撮像画像81とのコントラストの差の絶対値が、ぼかし処理前の画像とマーク撮像画像81とのコントラストの差の絶対値よりも小さくなる。すなわち、ぼかし処理前の画像と比較して、参照画像82における表面模様861のぼけの状態が、マーク撮像画像81に近似する。
【0086】
また、ステップS13において特定される画像や、ステップS14において取得される画像は、ステージ10にいずれの基板も保持されていない状態において撮像部40により保持面11を撮像した画像である。一方、マーク撮像画像81は、撮像部40から出射される照明光が、基板9、または、基板9および支持基板96を透過することにより取得される画像である。したがって、照明光の基板9または支持基板96における透過率によっては、マーク撮像画像81の背景領域860における明度が、ステップS13,S14における上記画像よりも大幅に小さくなる(暗くなる)ことがある。
【0087】
この場合には、基板9が保持されていない保持面11を撮像した上記画像に対して、マーク撮像画像81における表面模様861の明度に合わせた明度補正(変換)処理を施すことにより、参照画像82が生成される。これにより、背景領域860について、当該参照画像82とマーク撮像画像81との明度の差の絶対値が、明度補正前の画像とマーク撮像画像81との明度の差の絶対値よりも小さくなる。すなわち、明度補正前の画像と比較して、参照画像82における表面模様861の明度が、マーク撮像画像81に近似する。なお、当該画像に対して、明度補正と共に、ぼかし処理が施されてもよい。また、異なるフォーカス位置にて取得された画像群に対して、明度補正等が施されてもよい。
【0088】
以上のように、
図6のアライメント装置7、並びに、
図7Aおよび
図7Bのアライメント方法では、参照画像82が、撮像部40により取得される多階調の画像に所定の処理を施した画像であってもよい。この場合、当該処理により、背景領域860について、参照画像82とマーク撮像画像81との明度及びコントラストの少なくとも一方の差が、当該処理前の画像とマーク撮像画像81との当該差よりも小さくされる。これにより、マーク撮像画像81における表面模様861と、ぼけの状態または明るさが近似した適切な参照画像82を用いて、表面模様861を低減した処理済み画像83を精度よく生成することが可能となる。
【0089】
アライメント装置7では、例えば、アライメントマーク911が形成されていない基板をステージ10上に載置し、当該基板を介して撮像部40により保持面11を撮像した画像(または、当該画像に所定の処理を施した画像)が、参照画像82として利用されてもよい。この場合も、背景領域860について、参照画像82とマーク撮像画像81との明度の差を小さくすることが可能である。
【0090】
上記アライメント装置7、露光装置1、および、アライメント方法では様々な変形が可能である。
【0091】
アライメント装置7では、保持面11のおよそ全体を分割した複数の領域をそれぞれ示す複数の保持面画像751(または複数の画像群)が画像記憶部75に記憶されてもよい。この場合、各保持面画像751が示す領域の範囲を示す情報が、当該保持面画像751に対して関連付けられる。ステップS12,S13において参照画像82を取得する際には、選択アライメントマーク911の保持面11上の設計位置を中心とし、かつ、撮像部40の撮像領域R1(マーク撮像画像81)と略同じ大きさの領域の範囲が求められる。続いて、当該領域と重なる全ての保持面画像751が特定され、これらの保持面画像751を互いに連結した1つの画像が生成される。そして、当該画像において当該領域の部分が切り出され、参照画像82として扱われる。このように、参照画像82は複数の保持面画像751から生成されてもよい。
【0092】
撮像部40において、基板9を透過可能な複数種類の波長の照明光を出射する照明部が設けられてもよい。このような撮像部40により、異なる波長の照明光を用いて取得した2つの画像(アライメントマーク911と共に表面模様861を示す2つの画像)において、アライメントマーク911と背景領域860との見え方(例えば、明度の差)が互いに相違するときには、当該2つの画像を比較する(例えば、差分画像を生成する)ことにより、表面模様861を低減した処理済み画像83が生成可能である。この場合、当該2つの画像の一方がマーク撮像画像81であり、他方が参照画像82であるといえる。
【0093】
以上のように、参照画像82は、アライメントマーク911を含んでいてもよい。換言すると、参照画像82は、マーク撮像画像81が示す保持面11の領域の表面模様861を少なくとも示す画像であればよい。アライメントマーク911と背景領域860との見え方が互いに相違する2つの画像は、撮像部40において、照明光の出射方向(基板9に対する入射角)が異なる複数の照明部を設けることにより取得されてもよく、また、異なる2つの撮像部により取得されてもよい。
【0094】
保持面11の表面模様861が周期的である場合には、マーク撮像画像81のみを用いて処理済み画像83が生成されてもよい。例えば、
図15Aに示すマーク撮像画像81のように、アライメントマーク911の周囲の背景領域860において、互いに略平行な多数の直線が一定の間隔を空けて配列される表面模様861が形成されている場合、当該マーク撮像画像81にFFT変換を施すことにより、
図15Bに示すパワースペクトル画像84が取得される。
【0095】
続いて、
図15Bのパワースペクトル画像84において、表面模様861の周波数成分に相当する領域にフィルタリングを施すことにより、
図15Cに示すパワースペクトル画像85が得られる。そして、
図15Cのパワースペクトル画像85に対して逆FFT変換を施すことにより、
図15Dに示す処理済み画像83が得られる。
図15Dの処理済み画像83では、マーク撮像画像81における表面模様861が低減されている。以上のように、保持面11の表面模様861が周期的である場合には、マーク撮像画像81において表面模様861の周波数成分を除去することにより、表面模様861を低減した処理済み画像83を生成することも可能である。これにより、基板9の位置ずれ量を精度よく取得することができる。
【0096】
アライメント装置7の設計によっては、画像記憶部75が省略されてもよい。この場合、アライメント処理において、各アライメントマーク911に対して
図7AのステップS14の処理が行われ(保持面11が撮像され)、参照画像82が取得される。
【0097】
上記実施の形態では、マーク位置情報に基づいて撮像部40によりマーク撮像画像81が取得されるが、操作者がステージ10の移動量を入力する等、マーク位置情報を用いることなくマーク撮像画像81が取得されてもよい。
【0098】
露光装置1では、ステージ10を昇降する昇降機構を設けることにより、保持面11に対する撮像部40のフォーカス位置が変更されてもよい。また、撮像部40および光学ヘッド部50をX方向およびY方向に移動する移動機構が設けられてもよく、ステージ10は、移動機構により、撮像部40および光学ヘッド部50に対してX方向およびY方向に相対的に移動すればよい。
【0099】
上記実施の形態では、露光装置1が直接描画装置である場合について説明したが、露光装置1の露光部110は、マスク等に形成されたパターンを基板9に投影して、パターンを露光するものであってもよい。
【0100】
パターンが露光される基板9は、半導体基板以外であってよく、例えばガラス基板やプリント基板等であってもよい。基板9を透過可能な照明光の波長は、基板9の種類に合わせて適宜変更されてよい。
【0101】
上記アライメント装置7は、露光装置1から独立して利用されてもよい。
【0102】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0103】
1 露光装置
7 アライメント装置
9 基板
10 ステージ
11 保持面
20 ステージ移動機構
40 撮像部
71 制御部
72 画像検索部
73 画像処理部
74 位置ずれ量取得部
75 画像記憶部
81 マーク撮像画像
82 参照画像
83 処理済み画像
91 第1主面
92 第2主面
110 露光部
751 保持面画像
860 背景領域
861 表面模様
911 アライメントマーク
S10~S24 ステップ