(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/70 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B65H29/70
(21)【出願番号】P 2020157187
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】内藤 拓
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-162339(JP,A)
【文献】特開2002-249259(JP,A)
【文献】特開2019-18941(JP,A)
【文献】特開2013-103790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する動作を用紙ごとに行う第1ローラ対と、
用紙の搬送方向における前記第1ローラ対の下流側に配置され、前記第1ローラ対の駆動源と同じ駆動源により前記第1ローラ対とともに駆動され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対と、
前記第2ローラ対を、用紙をニップ可能なニップ可能状態と、用紙をニップしないニップ解除状態との間で切り替える切替部と、
用紙先端が前記第2ローラ対に到達するまでに前記第2ローラ対を前記ニップ可能状態とし、用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでに前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするよう前記切替部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、用紙先端が前記第2ローラ対に到達してから用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでの間で前記切替部により前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするタイミングを調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1ローラ対は、用紙の上側に配置されて用紙の上面に画像形成を行う画像形成部へ用紙を搬送するものであり、
前記第2ローラ対は、用紙の搬送方向における前記第1ローラ対と前記画像形成部との間に配置され、上に凸となる方向に用紙をカールさせるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
用紙を搬送する第1ローラ対と、
用紙の搬送方向における前記第1ローラ対の下流側に配置され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対と、
前記第2ローラ対を、用紙をニップ可能なニップ可能状態と、用紙をニップしないニップ解除状態との間で切り替える切替部と、
用紙先端が前記第2ローラ対に到達するまでに前記第2ローラ対を前記ニップ可能状態とし、用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでに前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするよう前記切替部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送しつつインクジェットヘッドからインクを吐出して用紙に印刷を行う印刷部を有する印刷装置が知られている。また、このような印刷装置において、レジストローラ対により用紙の斜行を補正して印刷部へ用紙を搬送する機構が知られている。
【0003】
このような機構では、停止したレジストローラ対に用紙を突き当てて一旦止めることにより用紙にたるみを形成し、用紙の斜行を補正する。その後、レジストローラ対が駆動して用紙を印刷部へと送り出す。用紙がレジストローラ対を抜けると、レジストローラ対は停止する。
【0004】
また、上記のような印刷装置において、用紙のインクジェットヘッドへの接触を低減するために、用紙を上に凸となる方向にカールさせつつ用紙を搬送するデカーラローラ対を設けることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
ここで、給紙台から給紙するための経路や両面印刷のための経路等の複数の搬送経路からレジストローラ対に進入したすべての用紙が通過する位置に、1つのデカーラローラ対を設けることが、装置の小型化のために好ましい。すなわち、デカーラローラ対は、レジストローラ対と印刷部との間に配置されることが好ましい。
【0006】
レジストローラ対と印刷部との間にデカーラローラ対を配置した構成において、レジストローラ対とデカーラローラ対との間で用紙のたるみが発生すると、用紙のしわの原因になる。このため、デカーラローラ対を、レジストローラ対と同期しつつ、レジストローラ対よりもやや速い搬送速度を保つように駆動させることが好ましい。そのためには、デカーラローラ対をレジストローラ対の駆動源と同じ駆動源で駆動させることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、デカーラローラ対をレジストローラ対の駆動源と同じ駆動源で駆動させる構成では、用紙がデカーラローラ対を抜けるまでレジストローラ対を停止させることができない。これにより、用紙がデカーラローラ対を抜けるまでレジストローラ対が次の用紙を受け入れることができないため、連続して搬送される用紙どうしの間隔(紙間)を大きくする必要がある。この結果、生産性の低下を招く。
【0009】
そこで、連続して搬送する用紙どうしの間隔の拡大を抑えつつ、用紙をカールさせることができる技術が要望されていた。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、連続して搬送する用紙どうしの間隔の拡大を抑えつつ、用紙をカールさせることができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の搬送装置は、用紙を搬送する動作を用紙ごとに行う第1ローラ対と、用紙の搬送方向における前記第1ローラ対の下流側に配置され、前記第1ローラ対の駆動源と同じ駆動源により前記第1ローラ対とともに駆動され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対と、前記第2ローラ対を、用紙をニップ可能なニップ可能状態と、用紙をニップしないニップ解除状態との間で切り替える切替部と、用紙先端が前記第2ローラ対に到達するまでに前記第2ローラ対を前記ニップ可能状態とし、用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでに前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするよう前記切替部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送装置によれば、連続して搬送する用紙どうしの間隔の拡大を抑えつつ、用紙をカールさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。
【
図3】
図1に示す印刷装置のレジストローラ対、デカーラローラ対、および切替部の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す印刷装置のレジストモータ近傍を示す平面図である。
【
図5】
図1に示す印刷装置のデカーラローラ対がニップ可能状態であるときのデカーラローラ対近傍を示す正面図である。
【
図6】
図1に示す印刷装置のデカーラローラ対がニップ解除状態であるときのデカーラローラ対近傍を示す正面図である。
【
図7】レジストローラ対およびデカーラローラ対の搬送速度の推移、デカーラローラ対のニップ可能状態とニップ解除状態との間の切り替えタイミング、ならびに、レジストローラ対およびデカーラローラ対における用紙Pの有無を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送装置を備えた印刷装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。
図3は、
図1に示す印刷装置のレジストローラ対、デカーラローラ対、および切替部の概略構成を示す斜視図である。
図4は、
図1に示す印刷装置のレジストモータ近傍を示す平面図である。
図5は、
図1に示す印刷装置のデカーラローラ対がニップ可能状態であるときのデカーラローラ対近傍を示す正面図である。
図6は、
図1に示す印刷装置のデカーラローラ対がニップ解除状態であるときのデカーラローラ対近傍を示す正面図である。以下の説明において、
図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0017】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0018】
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、上面搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、操作パネル7と、制御部8と、各部を収納または保持する筐体9とを備える。なお、給紙部2と制御部8とにより搬送装置が構成される。
【0019】
給紙部2は、印刷部3に用紙Pを給紙する。給紙部2は、外部給紙部11と、内部給紙部12と、レジストローラ対(第1ローラ対に相当)13と、デカーラローラ対(第2ローラ対に相当)14と、レジストモータ(駆動源に相当)15と、切替部16とを備える。
【0020】
外部給紙部11は、外部給紙台21と、外部給紙搬送部22とを備える。
【0021】
外部給紙台21は、一部が筐体9の外部に露出して設置されており、用紙Pが積載されるものである。
【0022】
外部給紙搬送部22は、外部給紙台21に積層された用紙Pを1枚ずつ取り出し、その用紙Pを給紙経路RSに沿ってレジストローラ対13へ向けて搬送する。
【0023】
内部給紙部12は、複数の内部給紙台26と、内部給紙搬送部27とを備える。
【0024】
内部給紙台26は、筐体9の内部に設置されており、用紙Pが積載されるものである。
【0025】
内部給紙搬送部27は、内部給紙台26から用紙Pを1枚ずつ取り出し、その用紙Pを給紙経路RSに沿ってレジストローラ対13へ向けて搬送する。
【0026】
レジストローラ対13は、外部給紙部11、内部給紙部12、および反転部6のいずれかから搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、用紙Pをニップしつつ印刷部3へ向けて搬送する。レジストローラ対13は、用紙Pを搬送する動作を、印刷部3へ給紙する用紙Pごとに間欠的に行う。レジストローラ対13は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。レジストローラ対13は、複数のレジスト駆動ローラ13aと、複数のレジスト従動ローラ13bとを備える。
【0027】
複数のレジスト駆動ローラ13aは、
図3に示すように、前後方向に沿って延びる駆動軸13cに、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。レジスト駆動ローラ13aは、レジストモータ15が発生する駆動力により、回転駆動される。
【0028】
複数のレジスト従動ローラ13bは、前後方向に沿って延びる回転軸13d(
図5参照)に、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。レジスト駆動ローラ13aと同じ数のレジスト従動ローラ13bが、各レジスト駆動ローラ13aに1つずつ接するように、各レジスト駆動ローラ13aの下側に設置されている。レジスト従動ローラ13bは、レジスト駆動ローラ13aに従動回転する。
【0029】
デカーラローラ対14は、用紙Pをニップして搬送しつつ、後述のインクジェットヘッド48に接触しない方向に用紙Pをカールさせる。具体的には、デカーラローラ対14は、用紙Pをニップして搬送しつつ、上に凸となる方向に用紙Pをカールさせる。デカーラローラ対14は、通常経路RC上におけるレジストローラ対13の下流側において、レジストローラ対13と印刷部3との間に配置されている。デカーラローラ対14は、複数のデカーラ従動ローラ14aと、デカーラ駆動ローラ14bとを備える。
【0030】
複数のデカーラ従動ローラ14aは、
図3に示すように、前後方向に沿って延びる回転軸14cに、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。デカーラ従動ローラ14aは、前後方向において、レジスト駆動ローラ13aがない位置に配置されている。これにより、通常経路RC上におけるレジストローラ対13とデカーラローラ対14との間隔を小さく抑えることができるので、印刷装置1の大型化が抑えられる。デカーラ従動ローラ14aは、弾性変形可能な材質で形成されている。デカーラ従動ローラ14aは、切替部16によりデカーラ駆動ローラ14bに対して接離可能になっている。
【0031】
デカーラ駆動ローラ14bは、前後方向に細長い単一のローラである。デカーラ駆動ローラ14bは、前後方向に沿って延びる駆動軸14d(
図4参照)に取り付けられている。デカーラ駆動ローラ14bは、デカーラ従動ローラ14aの下側に設けられている。デカーラ駆動ローラ14bは、金属等の剛体で形成されている。デカーラ駆動ローラ14bは、レジストモータ15が発生する駆動力により、回転駆動される。すなわち、デカーラローラ対14の駆動源は、レジストローラ対13の駆動源(レジストモータ15)と同じになっている。
【0032】
レジストモータ15は、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14を駆動させる。
図4に示すように、レジストモータ15の出力軸15aには、ギア31が取り付けられている。ギア31は、レジスト駆動ローラ13aの駆動軸13cに取り付けられたギア32と噛合され、ギア32は、デカーラ駆動ローラ14bの駆動軸14dに取り付けられたギア33と噛合されている。これにより、レジストモータ15の出力軸15aが回転すすることで、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14が駆動されるようになっている。
【0033】
ここで、デカーラローラ対14の搬送速度がレジストローラ対13の搬送速度よりもやや速くなるように、ギア32とギア33とのギア比が設定されている。これにより、レジストローラ対13とデカーラローラ対14との間で用紙Pのたるみが発生して用紙Pにしわが生じることが抑えられる。
【0034】
切替部16は、デカーラローラ対14をニップ可能状態とニップ解除状態との間で切り替える。
【0035】
ニップ可能状態は、デカーラローラ対14が用紙Pをニップ可能な状態であり、
図5に示すように、デカーラ従動ローラ14aにデカーラ駆動ローラ14bが圧接した状態である。ニップ可能状態では、デカーラ従動ローラ14aがデカーラ駆動ローラ14bに押されて変形することで、デカーラ従動ローラ14aとデカーラ駆動ローラ14bとの間に上に凸のニップ部が形成される。これにより、ニップ可能状態では、デカーラローラ対14が、用紙Pをニップして搬送しつつ、上に凸となる方向に用紙Pをカールさせることができるようになっている。
【0036】
ニップ解除状態は、デカーラローラ対14が用紙Pをニップしない状態であり、
図6に示すように、デカーラ従動ローラ14aとデカーラ駆動ローラ14bとが互いに離間した状態である。
【0037】
切替部16は、カム41と、カムフォロア42と、カムモータ43とを備える。
【0038】
カム41は、デカーラローラ対14をニップ可能状態とニップ解除状態との間で切り替えるために、デカーラ従動ローラ14aの高さ位置を変更するための部材である。カム41は、前後方向に延びるカム軸41aに取り付けられている。
【0039】
カムフォロア42は、カム41の外周に当接する部材である。カムフォロア42は、デカーラ従動ローラ14aの回転軸14cに取り付けられている。デカーラ従動ローラ14aの回転軸14cは、バネ(図示せず)によりカム41側に付勢されている。これにより、カムフォロア42がカム41に当接した状態を維持し、カム41の回動に応じて回転軸14cの高さ位置が調整されるようになっている。
【0040】
カムモータ43は、カム軸41aを回動させることにより、カム41を回動させる。
【0041】
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pにインクを吐出して印刷する。印刷部3は、ベルトプラテン部46と、2つの押さえローラ47と、複数のインクジェットヘッド(画像形成部に相当)48とを備える。
【0042】
ベルトプラテン部46は、給紙部2または反転部6により搬送されてきた用紙Pを、エア吸引により吸着保持しつつ搬送する。ベルトプラテン部46は、搬送ベルト51と、ファン52とを備える。
【0043】
搬送ベルト51は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト51には、エア吸引用の貫通穴である多数のベルト穴が形成されている。搬送ベルト51は、ファン52の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト51は、
図1における時計回り方向に回転(無端移動)することで、吸着保持した用紙Pを左から右へ向かう方向に搬送する。
【0044】
ファン52は、搬送ベルト51のベルト穴を介して空気を吸引してベルト穴に負圧を発生させ、搬送ベルト51上に用紙Pを吸着保持させる。
【0045】
押さえローラ47は、用紙Pを搬送ベルト51に押さえるためのローラである。押さえローラ47は、回転する搬送ベルト51に従動回転する。押さえローラ47は、ベルトプラテン部の上流側端部、下流側端部に1つずつ配置されている。
【0046】
インクジェットヘッド48は、前後方向に沿って配置された複数のノズルを有し、ベルトプラテン部46により搬送される用紙Pの上面にノズルからインクを吐出して印刷(画像形成)を行う。複数のインクジェットヘッド48は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。複数のインクジェットヘッド48は、ベルトプラテン部46により搬送される用紙Pの上側において、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿って並列配置されている。
【0047】
上面搬送部4は、ベルトプラテン部46により搬送されてきた用紙Pを、通常経路RCに沿って排紙部5または反転部6へ搬送する。
【0048】
排紙部5は、排紙台56を有し、上面搬送部4により搬送されてきた印刷済みの用紙Pを排紙台56へ排紙する。
【0049】
反転部6は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ対13へ搬送する。
【0050】
操作パネル7は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル7は、液晶表示パネル等を有する表示部(図示せず)と、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部(図示せず)とを備える。
【0051】
制御部8は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部8は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0052】
制御部8は、印刷動作中において、用紙先端がデカーラローラ対14に到達するまでにデカーラローラ対14をニップ可能状態とし、用紙後端がレジストローラ対13を抜けるまでにデカーラローラ対14をニップ解除状態とするよう切替部16を制御する。
【0053】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0054】
印刷ジョブが入力されると、制御部8は、印刷動作を実行する。ここで、制御部8は、印刷ジョブに含まれる印刷設定情報を取得し、その内容に応じて、片面印刷または両面印刷を実行する。
【0055】
片面印刷の場合、制御部8は、外部給紙台21および複数の内部給紙台26のいずれかから未印刷の用紙Pを順次取り出し、印刷部3に給紙するよう給紙部2を制御する。
【0056】
ここで、制御部8は、ベルトプラテン部46において所定の紙間で各用紙Pが搬送されるように各用紙Pを送り出すようレジストローラ対13を制御する。また、制御部8は、用紙先端がデカーラローラ対14に到達するまでにデカーラローラ対14をニップ可能状態とし、用紙後端がレジストローラ対13を抜けるまでにデカーラローラ対14をニップ解除状態とするよう切替部16を制御する。レジストローラ対13、デカーラローラ対14、および切替部16の動作の詳細は後述する。
【0057】
印刷部3に給紙された用紙Pは、ベルトプラテン部46により搬送されつつ、インクジェットヘッド48から吐出されるインクにより印刷される。印刷された用紙Pは、ベルトプラテン部46から上面搬送部4へ搬送され、上面搬送部4により排紙部5へ搬送される。そして、用紙Pは、排紙部5において排紙台56へ排紙される。
【0058】
両面印刷の場合、制御部8は、片面印刷時の給紙タイミングに対して、各用紙Pの給紙タイミング間の時間が2倍となるタイミングで未印刷の用紙Pを印刷部3に順次給紙するよう給紙部2を制御する。この際、制御部8は、上述した片面印刷時と同様に切替部16の制御を行う。
【0059】
印刷部3に給紙された用紙Pは、片面印刷時と同様に、ベルトプラテン部46により搬送されつつ、インクジェットヘッド48から吐出されるインクにより印刷される。片面印刷後の用紙Pは、ベルトプラテン部46から上面搬送部4へ搬送され、上面搬送部4により搬送された後、反転部6へ導かれる。反転部6へ導かれた用紙Pは、反転部6において表裏反転された後、レジストローラ対13により印刷部3へ再給紙される。この再給紙時においても、制御部8は、上述した片面印刷時と同様の切替部16の制御を行う。
【0060】
ここで、片面印刷後の用紙Pは、順次給紙される未印刷の用紙Pと交互にベルトプラテン部46へ送られるようなタイミングで再給紙される。上述のように、両面印刷では、片面印刷の場合の給紙タイミングに対して、各用紙Pの給紙タイミング間の時間が2倍である。このため、未印刷の用紙Pの間に片面印刷後の用紙Pを挿入し、未印刷の用紙Pの給紙と交互に片面印刷後の用紙Pを再給紙することが可能になっている。
【0061】
片面印刷後の用紙Pは、反転部6により表裏反転されたため、未印刷面を上向きにしてベルトプラテン部46へ送られる。そして、用紙Pは、ベルトプラテン部46により搬送されつつ、インクジェットヘッド48から吐出されるインクにより未印刷面が印刷される。両面印刷された用紙Pは、上面搬送部4により排紙部5へ搬送され、排紙部5において排紙台56へ排紙される。
【0062】
次に、上述した印刷動作中におけるレジストローラ対13、デカーラローラ対14、および切替部16の動作について説明する。
【0063】
図7は、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14の搬送速度の推移、デカーラローラ対14のニップ可能状態とニップ解除状態との間の切り替えタイミング、ならびに、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14における用紙Pの有無を示す図である。
【0064】
ここで、レジストローラ対13に用紙先端が到達してから用紙後端が抜けるまでの期間が、レジストローラ対13に用紙ありの期間であり、それ以外の期間が、レジストローラ対13に用紙なしの期間である。デカーラローラ対14における用紙Pの有無についても同様である。
【0065】
図7の時刻t1において、用紙先端がレジストローラ対13に到達する。この時刻t1の時点では、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14は停止している。用紙Pが停止しているレジストローラ対13に突き当てられて用紙Pにたるみが形成され、用紙Pの斜行が補正される。また、時刻t1の時点では、デカーラローラ対14はニップ解除状態である。
【0066】
この後、制御部8は、レジストモータ15の駆動を開始させることで、レジストローラ対13の駆動を開始させる。これにより、用紙Pがレジストローラ対13により搬送され始める。レジストモータ15の駆動が開始されることで、レジストローラ対13の駆動開始とともにデカーラローラ対14の駆動も同時に開始される。
【0067】
レジストローラ対13およびデカーラローラ対14の駆動開始後、制御部8は、用紙Pがデカーラローラ対14に到達する時刻t2より前にデカーラローラ対14をニップ可能状態に切り替えるよう切替部16を制御する。ここで、用紙Pがデカーラローラ対14に到達するタイミング(時刻t2)は、レジストローラ対13とデカーラローラ対14との間の搬送経路上の距離、およびレジストローラ対13の駆動開始から後述のトップ速度Vtに達するまでの所定の加速度によって決まるものである。
【0068】
デカーラローラ対14に用紙Pが到達すると、用紙Pは、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14にニップされつつ、ベルトプラテン部46へ搬送される。
【0069】
この際、用紙Pは、
図5のように、デカーラローラ対14のデカーラ従動ローラ14aとデカーラ駆動ローラ14bとの間に形成された上に凸のニップ部を通過することにより、上に凸となる方向にカールする。これにより、印刷部3において用紙Pの先端がベルトプラテン部46から浮き上がってインクジェットヘッド48に接触することが抑えられる。
【0070】
ここで、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14の駆動開始後、制御部8は、レジストローラ対13の搬送速度が所定のトップ速度Vtに到達すると、トップ速度Vtを所定時間だけ維持させる。この後、制御部8は、レジストローラ対13の搬送速度を所定のレジスト搬送速度Vrまで減速させ、レジスト搬送速度Vrでの定速搬送に移行させる。
【0071】
レジスト搬送速度Vrは、レジストローラ対13がベルトプラテン部46へ用紙Pを受け渡す際の搬送速度であり、ベルトプラテン部46による用紙Pの搬送速度よりやや速い速度に設定されている。トップ速度Vtは、所定の紙間で用紙Pを順次搬送するためのレジストローラ対13の搬送速度の最高速度として設定されたものである。レジストローラ対13がトップ速度Vtまで一時的に加速するのは、紙間を短くして生産性を向上させるためである。
【0072】
レジストローラ対13の駆動中は、
図7のように、デカーラローラ対14もレジストローラ対13と同期して駆動され、デカーラローラ対14の搬送速度がレジストローラ対13の搬送速度よりもやや速くなる。前述のように、デカーラローラ対14の搬送速度がレジストローラ対13の搬送速度よりもやや速くなるように、ギア32とギア33とのギア比が設定されているためである。これにより、レジストローラ対13とデカーラローラ対14との間で用紙Pのたるみが発生して用紙Pにしわが生じることが抑えられる。
【0073】
時刻t2より前にデカーラローラ対14をニップ可能状態に切り替えた後、制御部8は、用紙後端がレジストローラ対13を抜ける時刻t3より前の所定のタイミングでデカーラローラ対14をニップ解除状態とするよう切替部16を制御する。ここで、用紙後端がレジストローラ対13を抜けるタイミング(時刻t3)は、用紙長さに応じて予め決まっているものである。
【0074】
用紙後端がレジストローラ対13を抜けた時刻t3の直後のタイミングにおいて、制御部8は、レジストモータ15を停止させることで、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14を停止させる。用紙後端がレジストローラ対13を抜ける時点(時刻t3)でデカーラローラ対14がニップ解除状態であるため、用紙後端がデカーラローラ対14を抜けるタイミング(時刻t4)を待つことなく、時刻t3の直後にレジストモータ15を停止させることができる。
【0075】
レジストローラ対13およびデカーラローラ対14が停止すると、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14による用紙1枚分を搬送する動作が終了となる。制御部8は、この動作を、レジストローラ対13およびデカーラローラ対14が印刷部3へ向けて搬送する用紙Pごとに間欠的に行うよう制御する。また、制御部8は、それに応じて、上述のようなデカーラローラ対14を切替部16によりニップ可能状態とニップ解除状態との間で切り替える動作を用紙Pごとに行うよう制御する。
【0076】
以上説明したように、印刷装置1では、制御部8は、印刷動作中において、用紙先端がデカーラローラ対14に到達するまでにデカーラローラ対14をニップ可能状態とし、用紙後端がレジストローラ対13を抜けるまでにデカーラローラ対14をニップ解除状態とするよう切替部16を制御する。
【0077】
これにより、用紙後端がレジストローラ対13を抜ける時点でデカーラローラ対14がニップ解除状態であるため、用紙後端がデカーラローラ対14を抜けるのを待つことなくレジストモータ15を停止させることができる。このため、印刷部3へ連続的に給紙する用紙Pの紙間の拡大が抑えられる。
【0078】
したがって、印刷装置1によれば、連続して搬送する用紙Pの紙間の拡大を抑えつつ、デカーラローラ対14により用紙Pをカールさせることができる。ここで、連続して搬送する用紙Pの紙間の拡大が抑えられるので、生産性の低下が抑えられる。
【0079】
また、デカーラローラ対14は、用紙Pを上に凸にカールさせるので、用紙Pのインクジェットヘッド48への接触を低減できる。
【0080】
したがって、印刷装置1によれば、生産性の低下を抑えつつ、用紙Pのインクジェットヘッド48への接触を低減できる。
【0081】
なお、用紙先端がデカーラローラ対14に到達してから用紙後端がレジストローラ対13を抜けるまでの間で切替部16によりデカーラローラ対14をニップ解除状態とするタイミングを調整可能としてもよい。
【0082】
例えば、ユーザが操作パネル7に対する入力操作により、デカーラローラ対14をニップ解除状態とするタイミングを指定し、制御部8が指定されたタイミングでデカーラローラ対14をニップ解除状態とするよう切替部16を制御してもよい。デカーラローラ対14をニップ解除状態とするタイミングは、例えば、用紙Pの全長に対するデカーラローラ対14を通過した部分の長さの割合により指定することができる。
【0083】
これにより、例えば、デカーラローラ対14のニップによるシワを軽減したい場合に、早いタイミングでデカーラローラ対14をニップ解除状態とするようにユーザが指定することができる。この結果、用紙Pのシワを軽減することが可能になる。
【0084】
ここで、デカーラローラ対14のニップによる用紙Pのシワの発生のしやすさに影響する因子として、用紙種類、湿度等がある。用紙種類については、例えば、薄い用紙ほどシワが発生しやすい。また、湿度が高いほど、用紙Pのコシが弱くなり、シワが発生しやすい。制御部8が、上記のような、用紙Pのシワの発生のしやすさに影響する因子の少なくともいずれかに基づき、デカーラローラ対14をニップ解除状態とするタイミングを判断して調整するようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施の形態では、デカーラローラ対14の搬送速度がレジストローラ対13の搬送速度よりもやや速くなるようにしたが、デカーラローラ対14の搬送速度がレジストローラ対13の搬送速度と同じであってもよい。
【0086】
また、上述した実施の形態では、インクジェットヘッドにより用紙に画像形成を行う構成を示したが、画像形成を行う機構はインクジェットヘッドに限らない。
【0087】
また、上述した実施の形態では、インクジェット印刷装置について説明したが、これに限らず、用紙を搬送する動作を用紙ごとに行う第1ローラ対と、第1ローラ対の下流側に配置され、第1ローラ対の駆動源と同じ駆動源により第1ローラ対とともに駆動され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対とを備える搬送装置に本発明は適用可能である。
【0088】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0089】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0090】
(付記1)
用紙を搬送する動作を用紙ごとに行う第1ローラ対と、
用紙の搬送方向における前記第1ローラ対の下流側に配置され、前記第1ローラ対の駆動源と同じ駆動源により前記第1ローラ対とともに駆動され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対と、
前記第2ローラ対を、用紙をニップ可能なニップ可能状態と、用紙をニップしないニップ解除状態との間で切り替える切替部と、
用紙先端が前記第2ローラ対に到達するまでに前記第2ローラ対を前記ニップ可能状態とし、用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでに前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするよう前記切替部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【0091】
(付記2)
前記制御部は、用紙先端が前記第2ローラ対に到達してから用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでの間で前記切替部により前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするタイミングを調整可能であることを特徴とする付記1に記載の搬送装置。
【0092】
(付記3)
前記第1ローラ対は、用紙の上側に配置されて用紙の上面に画像形成を行う画像形成部へ用紙を搬送するものであり、
前記第2ローラ対は、用紙の搬送方向における前記第1ローラ対と前記画像形成部との間に配置され、上に凸となる方向に用紙をカールさせるものであることを特徴とする付記1または2に記載の搬送装置。
【0093】
(付記4)
用紙を搬送する第1ローラ対と、
用紙の搬送方向における前記第1ローラ対の下流側に配置され、用紙をニップして搬送しつつ用紙をカールさせる第2ローラ対と、
前記第2ローラ対を、用紙をニップ可能なニップ可能状態と、用紙をニップしないニップ解除状態との間で切り替える切替部と、
用紙先端が前記第2ローラ対に到達するまでに前記第2ローラ対を前記ニップ可能状態とし、用紙後端が前記第1ローラ対を抜けるまでに前記第2ローラ対を前記ニップ解除状態とするよう前記切替部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【符号の説明】
【0094】
1 印刷装置
2 給紙部
3 印刷部
4 上面搬送部
5 排紙部
6 反転部
7 操作パネル
8 制御部
9 筐体
11 外部給紙部
12 内部給紙部
13 レジストローラ対
14 デカーラローラ対
15 レジストモータ
16 切替部
41 カム
42 カムフォロア
43 カムモータ
46 ベルトプラテン部
48 インクジェットヘッド