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特許7521989脚部継手及び配管構造ならびに脚部継手の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】脚部継手及び配管構造ならびに脚部継手の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240717BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158893
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052474
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】川▲高▼ 俊基
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238011(JP,A)
【文献】特開2020-045921(JP,A)
【文献】特開2011-033055(JP,A)
【文献】特開2015-086612(JP,A)
【文献】国際公開第2002/042678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 - 1/33
F16L 41/00 - 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側受け口部と、
下流側受け口部と、
前記上流側受け口部と前記下流側受け口部とを連結するベンド部と、
を備え、
前記上流側受け口部、前記下流側受け口部および前記ベンド部は樹脂により一体成型され、
前記上流側受け口部における周面上に段差部を有し、
前記段差部は、前記上流側受け口部の軸方向に間隔をあけて2つ設けられ、かつ、前記上流側受け口部の全周にわたって設けられていない脚部継手。
【請求項2】
前記2つの段差部のうち、前記軸方向において下側の段差部は、前記下側の段差部と前記上流側受け口部との間の段差と、前記下側の段差部と前記ベンド部との間の段差と、を有する、
請求項1に記載の脚部継手。
【請求項3】
前記2つの段差部は、前記上流側受け口部の周面から突出して設けられている、
請求項1に記載の脚部継手。
【請求項4】
前記2つの段差部のうち、前記軸方向において下側の段差部は、前記ベンド部から離間して形成され、前記下側の段差部は前記軸方向の下側を向く下面を備える、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脚部継手。
【請求項5】
前記脚部継手の前記ベンド部に遮音カバーが設けられ、
前記遮音カバーは、フェルトまたはポリエステル繊維の吸音材と、
前記吸音材の周囲を覆う軟質塩化ビニルの遮音材と、を備え、
前記遮音カバーは前記脚部継手に巻き付けられている、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の脚部継手。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の脚部継手と、
前記下流側受け口部に挿入された横主管と、
前記上流側受け口部に挿入された連結管と、
前記連結管の上部の集合継手と、
を備え、
前記横主管と前記下流側受け口部とは、接着剤により接続され、
前記連結管と前記上流側受け口部とは、ゴム輪を介して接続されている配管構造。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の脚部継手と横主管とを接続する施工方法であって、
前記上流側受け口部に巻き付けたワイヤーを、前記横主管の軸線方向に沿って前記横主管側に引張りながら、前記下流側受け口部に前記横主管を挿入する、
脚部継手の施工方法。
【請求項8】
前記下流側受け口部または前記横主管あるいはその両方に接着剤が塗布され、
前記下流側受け口部に前記横主管を挿入した後、前記脚部継手と前記横主管とを前記ワイヤーによって保持したまま前記接着剤を硬化させる、
請求項に記載の脚部継手の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部継手の構造及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の排水用として用いられる単管式排水システムにおいて、プラスチック素材の脚部継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-86612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脚部継手の下流側の受け口には、横主管が接続される。なお、脚部継手は一般的に大口径(100A~150A)のものが用いられる。そのため、脚部継手と横主管とを接続するとき、挿入力を確保するために脚部継手にワイヤーを巻き付け、挿入機によって保持する必要がある。またその際は、脚部継手のベンド部にワイヤーを巻き付けることが一般的であった。
【0005】
しかしながら、横主管の挿入時に、脚部継手のベンド部にワイヤーを巻きつけると、保持中にワイヤーがずれてしまい、十分な保持力が得られないことがあった。あるいは、外装に傷、変形、割れが発生することがあった。
また、脚部継手のベンド部に遮音カバーが巻かれている場合、遮音カバーの上からワイヤーを巻き付けると、遮音カバーが破れる等のおそれがあった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ワイヤーを巻き付けた際にずれることなく、十分な保持力を加えることができ、更に外装又は遮音カバーに傷をつけるおそれがない脚部継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る脚部継手は、上流側受け口部と、下流側受け口部と、前記上流側受け口部と前記下流側受け口部とを連結するベンド部と、を備え、前記上流側受け口部における周面上に少なくとも1か所の段差部を有している。
【0008】
この発明によれば、上流側受け口部における周面上の下端に少なくとも1か所の段差部を有している。ここで、例えば、上流側受け口部にワイヤーを巻き付けた場合に、ワイヤーが上流側受け口部からベンド部に向けてずれる方向に移動したとき、段差部にワイヤーが引掛かる。すなわち、ワイヤーが上流側受け口部からずれることを防ぐことができる。
これにより、脚部継手と横主管とを接続するとき、上流側受け口部にワイヤーを巻き付けることができる。すなわち、脚部継手の外装又は遮音カバーに傷をつけることを防ぐことができる。
【0009】
また、上流側受け口部にワイヤーを巻き付けた状態で、ワイヤーを横主管の軸線方向に沿って横主管側に引張ると、引張力を横主管の軸線と平行に脚部継手に伝えることができる。ここで、ベンド部にワイヤーを巻き付けると、ワイヤーは横主管の軸線方向に対して斜めに巻き付けられる。この状態で、ワイヤーを横主管の軸線方向に沿って横主管側に引張ると、脚部継手に作用する引張力は横主管の軸線方向に対して斜めになる。すなわち、ワイヤーの引張力が横主管の軸線方向に対して平行に伝わらない。
そのため、ワイヤーの引張力が十分に保持力として作用せず、必要以上に引張力を負荷する必要がある。また、脚部継手に、引張り方向に対して斜めにワイヤーが接することから、上述のようなずれが生じる原因となる。
【0010】
これらのことから、ベンド部にワイヤーを巻き付けるのではなく、段差部を利用して上流側受け口部にワイヤーを巻き付けることで、ワイヤーを巻き付けた際にずれることなく、十分な保持力を加えることができ、更に外装又は遮音カバーに傷をつけるおそれがない脚部継手を提供することができる。
【0011】
また、前記段差部が、前記上流側受け口部における前記ベンド部の曲がりの外側に設けられていてもよい。
【0012】
この発明によれば、段差部が上流側受け口部におけるベンド部の曲がりの外側に設けられている。ここで、上流側受け口部に巻き付けたワイヤーを横主管の軸線方向に沿って横主管側に引張ったとき、ワイヤーは上流側受け口部におけるベンド部の曲がりの外側の面に押し付けられる。
すなわち、段差部がベンド部の曲がりの外側に設けられていることで、より確実にワイヤーがずれることを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る配管構造は、前記脚部継手と、前記下流側受け口部に挿入された横主管と、を備えている。
【0014】
この発明によれば、脚部継手と横主管とは上述の方法により接続されている。すなわち、接続時に脚部継手と横主管とがワイヤーによって保持されることで、十分な挿入代を確保されている。このことによって、配管構造としての強度あるいは耐久性などの性能を十分に確保することができる。あるいは、脚部継手の外層に傷をつけることなく施工されることで、美観性を保つことができる。
【0015】
また、前記脚部継手の前記ベンド部に遮音カバーが設けられていてもよい。
【0016】
この発明によれば、脚部継手のベンド部に遮音カバーが設けられている。ここで、脚部継手と横主管との接続時は、脚部継手の上流側受け口部にワイヤーを巻き付けて保持している。すなわち、接続時に遮音カバーの上にワイヤーを巻き付けずに保持するため、遮音カバーに傷をつけることなく施工することができる。すなわち、排水構造における遮音性を十分に確保することができる。
【0017】
また、本発明に係る脚部継手の施工方法は、前記上流側受け口部に巻き付けたワイヤーを、前記横主管の軸線方向に沿って前記横主管側に引張りながら、前記下流側受け口部に前記横主管を挿入する。
【0018】
この発明によれば、上流側受け口部に巻き付けたワイヤーを、横主管の軸線方向に沿って横主管側に引張りながら、下流側受け口部に横主管を挿入する。
ここで、挿入時にワイヤーによって引張らずに挿入すると、十分な挿入力を確保することができない。すなわち、十分な挿入代を確保することができない。
すなわち、ワイヤーによって引張りながら挿入することで、横主管の挿入代を十分に確保することができる。
【0019】
また、前記下流側受け口部または前記横主管あるいはその両方に接着剤が塗布され、前記下流側受け口部に前記横主管を挿入した後、前記脚部継手と前記横主管とを前記ワイヤーによって保持したまま前記接着剤を硬化させてもよい。
【0020】
この発明によれば、下流側受け口部に横主管を挿入した後、脚部継手と横主管とをワイヤーによって保持したまま接着剤を硬化させる。
ここで、接着剤の硬化中に保持を行わないと、硬化中に脚部継手と横主管との位置がずれたり、横主管が下流側受け口部から抜ける方向に移動したまま接着剤が硬化するおそれがある。すなわち、接着剤の硬化中にワイヤーによって保持することで、横主管がずれることなく、接着剤を硬化させることができる。よって、位置がずれることを防ぐだけでなく、挿入代を確保することで、配管構造としての強度あるいは耐久性などの性能を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワイヤーを巻き付けた際にずれることなく、十分な保持力を加えることができ、更に外装又は遮音カバーに傷をつけるおそれがない脚部継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る配管構造の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る脚部継手と横主管との接続手順を示す第1図である。
図3】本発明の一実施形態に係る脚部継手と横主管との接続手順を示す第2図である。
図4】本発明の一実施形態に係る脚部継手の上流側受け口部において、軸方向の両端に段差部が設けられている図である。
図5図4に示す段差部が、上流側受け口部の軸方向の下端側のみに設けられている変形例である。
図6図4に示す段差部が傾斜状になっている変形例である。
図7図5に示す段差部が傾斜状になっている変形例である。
図8】本発明の一実施形態に係る脚部継手の上流側受け口部において、軸方向の中央部に円弧状の窪みを有している変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る脚部継手80を説明する。
配管構造100は、保持具10と、保持板20と、吊り金具30と、縦管40と、横枝管50と、集合継手60と、連結管70と、脚部継手80と、横主管90と、を有する。
配管構造100は、主に建物の排水間に用いられる。なお、具体的な排水の流れは下記の通りである。
【0024】
まず、建物内で生じた排水が、縦管40及び横枝管50を介して集合継手60に集約される。集合継手60に集約された排水は、連結管70を通して脚部継手80に流下する。脚部継手80に流下した排水は横主管90を通して、不図示の排水施設に排水される。なお、集合継手60は床スラブSを貫通するように設けられる。また、床スラブSと集合継手60との隙間はモルタルMによって埋められている。
【0025】
また、脚部継手80及び横主管90は床スラブSの下、つまり建物における床下に位置している。脚部継手80及び横主管90は、それぞれ床スラブSに固定された吊り金具30に保持された保持板20及び保持具10によって保持されている。
保持具10は、床下において横主管90を保持する。保持具10は、吊り金具30aに固定されている。保持具10は、横主管90を外側から保持する。すなわち、保持具10は横主管90の外周に合わせた形状を有する。
【0026】
保持板20は、床下において脚部継手80を保持する。保持板20は、本体部21と突起部(不図示)とを備える。また、保持板20は、床スラブSに対して平行状に設けられる。
なお、保持板20の両端部は吊り金具30bに固定されている。
【0027】
本体部21は、脚部継手80の下に設けられる板状の部材であり、中央部に突起部を有する。突起部は、本体部21の中央部に設けられている。
突起部は、脚部継手80に設けられた位置合わせ部84(後述する)に挿入される。これにより、保持板20と脚部継手80との位置合わせを行う。
【0028】
吊り金具30は、横主管90を保持する金具30a、脚部継手80を保持する30bの総称である。吊り金具30は、棒状の部材である。吊り金具30は、それぞれ一方の端が床スラブSに固定され、他方の端にそれぞれ保持具10又は保持板20が固定されている。
【0029】
吊り金具30aは、横主管90を保持する。吊り金具30a及び保持具10は、横主管90の長さに合わせ、適宜間隔をあけて設けられる。
吊り金具30bは、保持板20の脚部継手80側の端部を保持する。
【0030】
縦管40は、複数階を有する建物において、上層階に設けられた集合継手60と、下層階に設けられた集合継手60との間を接続する。すなわち、図1に示すように、縦管40は、最下階における集合継手60の上部に接続されている。横枝管50は、集合継手60が設けられた階において発生した排水を集合継手60に運搬する。すなわち、図1に示すように、縦管40は、集合継手60の側部に接続されている。
【0031】
集合継手60は、複数階を有する建物の各階に設けられ、各階において生じた排水を集約する。上層階において生じた排水は、集合継手60の下部に接続された縦管40によって、下層階に設けられた集合継手60に運搬される。縦管40から流下した排水は、下層階に設けられた集合継手60によって、横枝管50から流下した排水と合流する。
これを繰り返し、最下階に設けられた集合継手60に流下した排水は、下部に接続された連結管70を介して脚部継手80に流下する。
【0032】
連結管70は、最下階に設けられた集合継手60と脚部継手80との間を連結する。すなわち、連結管70の上端は最下階に設けられた集合継手60の下部に接続され、下端は脚部継手80の上流側受け口部81に接続される。
横主管90は、脚部継手80から流下した排水を、不図示の排水施設に運搬する。横主管90の上流側の端部は、下流側受け口部83に挿入される。すなわち、横主管90の径は、下流側受け口部83に合わせて100Aから200Aのものが適宜選択される。また、横主管90は、長手方向において間隔をあけて設けられた保持具10によって、排水をより効率よく排水施設に運搬するため、脚部継手80側を最上部として、排水施設に向かうにつれて下降していくように傾斜状に支持されていている。
【0033】
脚部継手80は、連結管70を介して流下した排水を、横主管90へ運搬する。脚部継手80は、上流側受け口部81と、ベンド部82と、下流側受け口部83と、位置合わせ部84とを備える。なお、脚部継手80は、樹脂による一体成型が好適に用いられる。
また、脚部継手80のベンド部82の周囲には、排水音を周囲に伝播させないために遮音カバーを設けてもよい。ここで、遮音カバーは、ベンド部82に接する吸音材と、吸音材の周囲を覆う遮音材からなる。あるいは、遮音材のみからなっていてもよい。
【0034】
吸音材は、主にフェルト、ポリエステル繊維、ウレタン発泡体が好適に用いられ、5mm~10mmの厚さで適宜選択される。
また、遮音材は、軟質塩化ビニル、ポリスチレンのシート材からなり、0.8mm~3mmの厚さで適宜選択される。
なお、脚部継手80に遮音カバーを設ける場合は、工場出荷時点で巻き付けられ、施工場所にそのまま施工されることが好ましい。
【0035】
上流側受け口部81には、連結管70の下流側の端部が挿入される。すなわち、上流側受け口部81の内径は、連結管70の外径に等しい。上流側受け口部81に挿入された連結管70は、ゴム輪による固定あるいは接着による固定が好適に用いられる。また、上流側受け口部81の外側の周面上には、段差部81aが設けられている。
【0036】
段差部81aは、脚部継手80を横主管90に接続する(後述する)際、上流側受け口部81にワイヤーWを引掛け易くするために設けられる。
ここで、ワイヤーWは、図2に示すように、直径5mm程度のものを2周程度巻き付ける方法が好適に用いられる。
段差部81aは、上流側受け口部81の軸方向において、上流側受け口部81の外周面の一部の範囲を外周側に押し出したように設けられた形状である。言い換えると、段差部81aは、上流側受け口部81の外周面において、径方向の外側に張り出す凸部である。
なお、段差部81aは、上流側受け口部81の全周にわたって設けられていても、設けられていなくてもよい。
すなわち、例えば、段差部81aは、上流側受け口部81にワイヤーWを引掛けることができれば、ベンド部82の曲がりの外側のみに設けられていてもよい。
【0037】
図4に示すように、段差部81aは、上流側受け口部81の外周面における上端側と下端側に設けられている。段差部81aは、軸方向に間隔をあけて2つ設けられている。これにより、上流側受け口部81の外周面は、段差部81aによって、軸方向の中央部に凹型の形状を有している。
このことにより、施工時にワイヤーWを引掛けた際は、ワイヤーWが前述の凹型の形状を有する部位(2つの段差部81aの間)に収まる。よって、この状態でワイヤーWを引張ったとき、ワイヤーWが上流側受け口部81から外れることを防ぐ。例えば、ワイヤーWが上流側受け口部81からベンド部82に向けてずれる方向に移動したとき、下側の段差部81aにワイヤーWが引掛かる。すなわち、ワイヤーWが脚部継手80の外装又は遮音カバーに傷をつけることを防ぐ。
【0038】
更に、ワイヤーWが上流側受け口部81の上側にずれる方向、つまりワイヤーWが上流側受け口部81から外れる方向に移動したときも、上側の段差部81aにワイヤーWが引掛る。これにより、ワイヤーWを引張って脚部継手80に横主管90を挿入する際、ワイヤーWがずれることを確実に防ぐことができる。
【0039】
また、図5に示すように、上流側受け口部81において、段差部81aが下端側の一か所のみ設けられていてもよい。このように、少なくとも下端側に1箇所段差部81aが設けられていれば、ワイヤーWがベンド部82に向かってずれる方向に移動することを防ぐことができる。すなわち、ワイヤーWによって脚部継手80の外装又は遮音カバーに傷をつけることを防ぐことができる。
【0040】
また、図6に示すように、段差部81bは、上流側受け口部81において傾斜状(テーパ状)になっていてもよい。
また、図7に示すように、傾斜状の段差部81bが、上流側受け口部81の軸方向の中央部が凹部になるように、軸方向の両側に設けられていてもよい。
また、図8に示すように、上流側受け口部81の上端側と下端側に段差部81aを有するとともに、中央部の凹型となる部位に、円弧形状Cを有していてもよい。
図4から図8に示す段差部81a、81bは、施工時の条件や成型のしやすさ等によって適宜選択される。その場合、図4図7図8に示すように、上流側受け口部81の軸方向の中央部が凹型になっていると(段差部81aが間隔をあけて2つ設けられていると、又は段差部81bが上流側受け口部81の軸方向の両側に設けられていると)、ワイヤーWが設置しやすくなり、より好ましい。
【0041】
ベンド部82は、上流側受け口部81と下流側受け口部83とを連結する。ベンド部82は、上流側受け口部81の軸線と下流側受け口部83の軸線との方向を変換する。なお、本実施形態において、ベンド部82の曲げ角度は90°である。
下流側受け口部83には、横主管90が挿入される。すなわち、下流側受け口部83の内径は、横主管90の外径と等しい。なお、上述の通り、下流側受け口部83の内径は、100Aから200Aのものが適宜選択される。ここで、下流側受け口部83と横主管90とは、接着接続が好適に用いられる。
【0042】
位置合わせ部84は、横主管90を下流側受け口部83へ挿入した後に保持板20を取付ける際、保持板20の有する突起部を挿入する部位である。これによって、施工後に脚部継手80と保持板20とがずれることを防ぎ、保持板20によって脚部継手80を確実に保持できるようにする。
【0043】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態に係る脚部継手80と横主管90とを接続する施工方法について説明する。
まず、図2に示すように、横主管90を施工位置に配置し、保持具10によって固定する。このとき、接続後の脚部継手80が所定の位置になるよう、あらかじめ横主管90端部の位置を調整する。
【0044】
次に、横主管90の端部に、脚部継手80の下流側受け口部83を位置合わせする。このとき、上流側受け口部81にワイヤーWを引掛ける。その後、上流側受け口部81に引掛けたワイヤーWを、不図示の挿入機を用いて、横主管90の軸線方向に沿って、脚部継手80側から横主管90側に向けて引張る。それにより、脚部継手80を横主管90の側に引き寄せることで、脚部継手80の下流側受け口部83に、横主管90の端部を挿入する。
【0045】
なお、挿入機を用いることで、高い挿入力を要する作業を確実に行い、下流側受け口部83と横主管90との挿入代を確保する。また、このとき、下流側受け口部83の内側と横主管90の端部の外側の両方に接着剤を塗布し、下流側受け口部83と横主管90とを接着固定してもよい。この場合は、接着剤が硬化するまで、挿入機によってワイヤーWを引張ったままの状態とする。
【0046】
これにより、接着剤の硬化中に脚部継手80と横主管90との位置がずれたり、横主管90が下流側受け口部83から抜ける方向に移動したまま接着剤が硬化することを防ぐ。
すなわち、挿入代を確保した状態で接着剤を硬化させ、配管構造100としての強度あるいは耐久性などの性能を十分に確保する。その後、脚部継手80の上流側受け口部81に対して、連結管70及び集合継手60等が組付けられる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る脚部継手80によれば、上流側受け口部81における周面上の下端に少なくとも1か所の段差部を有している。ここで、例えば、上流側受け口部81にワイヤーWを巻き付けた場合に、ワイヤーWが上流側受け口部81からベンド部82に向けてずれる方向に移動したとき、段差部にワイヤーWが引掛かる。すなわち、ワイヤーWが上流側受け口部81からずれることを防ぐことができる。
これにより、脚部継手80と横主管90とを接続するとき、上流側受け口部81にワイヤーWを巻き付けることができる。すなわち、脚部継手80の外装又は遮音カバーに傷をつけることを防ぐことができる。
【0048】
また、上流側受け口部81にワイヤーWを巻き付けた状態で、ワイヤーWを横主管90の軸線方向に沿って横主管90側に引張ると、引張力を横主管90の軸線と平行に脚部継手80に伝えることができる。ここで、ベンド部82にワイヤーWを巻き付けると、ワイヤーWは横主管90の軸線方向に対して斜めに巻き付けられる。この状態で、ワイヤーWを横主管90の軸線方向に沿って横主管90側に引張ると、脚部継手80に作用する引張力は横主管90の軸線方向に対して斜めになる。すなわち、ワイヤーWの引張力が横主管90の軸線方向に対して平行に伝わらない。
そのため、ワイヤーWの引張力が十分に保持力として作用せず、必要以上に引張力を負荷する必要がある。また、脚部継手80に、引張り方向に対して斜めにワイヤーWが接することから、上述のようなずれが生じる原因となる。
【0049】
これらのことから、ベンド部82にワイヤーWを巻き付けるのではなく、段差部を利用して上流側受け口部81にワイヤーWを巻き付けることで、ワイヤーWを巻き付けた際にずれることなく、十分な保持力を加えることができ、更に外装又は遮音カバーに傷をつけるおそれがない脚部継手80を提供することができる。
【0050】
また、段差部が上流側受け口部81におけるベンド部82の曲がりの外側に設けられている。ここで、上流側受け口部81に巻き付けたワイヤーWを横主管90の軸線方向に沿って横主管90側に引張ったとき、ワイヤーWは上流側受け口部81におけるベンド部82の曲がりの外側の面に押し付けられる。
すなわち、段差部がベンド部82の曲がりの外側に設けられていることで、より確実にワイヤーWがずれることを防ぐことができる。
【0051】
また、脚部継手80と横主管90とは上述の方法により接続されている。すなわち、接続時に脚部継手80と横主管90とがワイヤーWによって保持されることで、十分な挿入代を確保されている。このことによって、配管構造としての強度あるいは耐久性などの性能を十分に確保することができる。あるいは、脚部継手80の外層に傷をつけることなく施工されることで、美観性を保つことができる。
【0052】
また、脚部継手80のベンド部82に遮音カバーが設けられている。ここで、脚部継手80と横主管90との接続時は、脚部継手80の上流側受け口部81にワイヤーWを巻き付けて保持している。すなわち、接続時に遮音カバーの上にワイヤーWを巻き付けずに保持するため、遮音カバーに傷をつけることなく施工することができる。すなわち、排水構造における遮音性を十分に確保することができる。
【0053】
また、本発明に係る脚部継手80の施工方法は、前記上流側受け口部81に巻き付けたワイヤーWを、前記横主管90の軸線方向に沿って前記横主管90側に引張りながら、前記下流側受け口部83に前記横主管90を挿入する。
【0054】
また、上流側受け口部81に巻き付けたワイヤーWを、横主管90の軸線方向に沿って横主管90側に引張りながら、下流側受け口部83に横主管90を挿入する。
ここで、挿入時にワイヤーWによって引張らずに挿入すると、十分な挿入力を確保することができない。すなわち、十分な挿入代を確保することができない。
すなわち、ワイヤーWによって引張りながら挿入することで、横主管90の挿入代を十分に確保することができる。
【0055】
また、下流側受け口部83に横主管90を挿入した後、脚部継手80と横主管90とをワイヤーWによって保持したまま接着剤を硬化させる。
ここで、接着剤の硬化中に保持を行わないと、硬化中に脚部継手80と横主管90との位置がずれたり、横主管90が下流側受け口部83から抜ける方向に移動したまま接着剤が硬化するおそれがある。すなわち、接着剤の硬化中にワイヤーWによって保持することで、横主管90がずれることなく、接着剤を硬化させることができる。よって、位置がずれることを防ぐだけでなく、挿入代を確保することで、配管構造としての強度あるいは耐久性などの性能を十分に確保することができる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、段差部81a、81bは、ベンド部82の曲がりの外側において、突起状のものが設けられるのみからなっていてもよい。
また、脚部継手80の曲げ角度は、90°でなくてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
80 脚部継手
81 上流側受け口部
81a 段差部
81b 段差部
82 ベンド部
83 下流側受け口部
90 横主管
100 配管構造
W ワイヤー
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8