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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】揚重装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/187 20060101AFI20240717BHJP
   B66B 9/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B66B9/187 E
B66B9/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020159110
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052615
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391028889
【氏名又は名称】三成研機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 忍
(72)【発明者】
【氏名】古口 光
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 毅
(72)【発明者】
【氏名】下坪 章光
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 克弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 廣次
(72)【発明者】
【氏名】山 尚史
(72)【発明者】
【氏名】本保 裕文
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095581(JP,A)
【文献】特開2016-013904(JP,A)
【文献】特開2008-094592(JP,A)
【文献】特開2001-106455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自体の駆動力によって昇降する揚重装置であって、
鉛直方向に沿って敷設され、ラックギアが形成されたラックレールと、
前記ラックギアに噛合するピニオンギアを回転駆動する少なくとも1つの駆動部と、
運搬用スペースが設けられ、前記駆動部により駆動されて前記ラックレールを昇降する移動部と、
前記駆動部の出力軸と前記ピニオンギアとを連結する弾性部材により形成された継手部と、を備え
前記継手部は、
円筒状に形成され、前記出力軸に固定されるハブと、
ドーナッツ状に形成され、前記ハブを内包するジョイントディスクと、
前記ジョイントディスクと連結されるフランジハブと、を備え、
前記フランジハブと、前記ピニオンギアとが連結されていることを特徴とする、揚重装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記ラックレールを走行する昇降枠と、
前記昇降枠に設けられ前記運搬用スペースが形成されたケージと、
前記昇降枠と前記ケージとを連結する弾性部材により形成された複数の第1固定部材と、を備える、
請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記昇降枠に設けられ前記駆動部を支持する駆動枠と、
前記昇降枠と前記駆動枠とを連結する弾性部材により形成された複数の第2固定部材と、を備える、
請求項2に記載の揚重装置。
【請求項4】
前記ラックレールと平行に設けられたガイドレールと、
前記昇降枠に設けられ前記ガイドレールを挟持して前記昇降枠を昇降方向に案内して走行させると共に、前記ガイドレールに接触するトレッド面が弾性部材により形成されている複数のガイドローラと、を備える、
請求項2又は3に記載の揚重装置。
【請求項5】
前記ラックレールと設置対象物とを連結する弾性部材により形成された複数の第3固定部材を備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の揚重装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自体の駆動力によって昇降する揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建設現場でにおいて仮設される工事用エレベータ(揚重装置)は、ラックピニオン駆動方式により昇降する機構を採用するものが多い。この駆動方式を備える揚重装置は、作業員や資機材を搭載するケージを備え、ケージは、複数の駆動装置を有する昇降フレームに支持されている。複数の駆動装置の出力軸には各々ピニオンギアが取り付けられている。各ピニオンギアは、ラックギアが形成されたラックレールに噛合している。複数の駆動装置は、各ピニオンギアを回転駆動してケージが支持された昇降フレームを昇降させる。
【0003】
この揚重装置によれば、自体の駆動力により昇降することができ、工事の進捗状況に合わせて鉛直方向にラックレールを継ぎ足せば昇降範囲を延長することができる。更にこの揚重装置によれば、ラックレールを継ぎ足す際に、駆動装置の制動装置を作動させることで任意の位置に昇降フレームを停止させておくことができる。このように上記揚重装置は、簡素且つ安価な構成を備えつつも信頼性が高いことから、主流となりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-284179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の揚重装置によれば、減速機の出力軸に直接ピニオンギアが取付けられて駆動装置が構成されている。駆動装置は、昇降フレームの下部に剛接される。ピニオンギアとラックレールとは、確実に噛合させるために高い精度の位置関係が求められる。そのため、ラックギアの形成面と反対側のラックレールの背部には、ピニオンギアと協働してラックレールを挟持するアジャストローラが配置され、ピニオンギアとラックレールとの間に一定のバックラッシュが確保されるように調整されている。
【0006】
また複数台の駆動装置のピニオンギアがラックレールと適正な形で正対することが必要とされ、揚重装置の上下に設けられたガイドローラアッセンブリにより、芯調整が行われることにより昇降フレームの姿勢が調整し対応されている。ただし、工事進捗に合わせて積み上げられるラックレールの鉛直精度、上記ケージの姿勢精度確保には限界があり、本来ラックピニオンに求められるような数百ミクロンのオーダには収め切れない状況にある。
【0007】
そのためラックピニオン部は、通常以上の大きさの転動音が発生すると共に、加振源となり、駆動軸を介して構成部材を振動させている。昇降機には、乗降用のケージが直結されており、加振源から振動が伝達される。ケージに伝達される振動は乗り心地の悪化に直結すると共に、ケージから振動が放射される。ケージから放射される振動は、ケージの放射面積が大きいため、大きな個体伝搬音を生じさせる。
【0008】
上記要因により、ラックピニオン駆動式の揚重装置は、非常に大きな騒音を発生することが課題となる。大型の工事用揚重装置の場合ではケージ内外近傍で100dBを超える場合があり、騒音を低減することが求められている。ラックピニオン駆動式の揚重装置は、空中伝搬するラックピニオン接触部の転動音、インバータの高調波音、ラックピニオンの振動に起因する駆動装置のうなり音、ケージ等の固体伝搬音等が音源となり大きな騒音を発生することが知られている。駆動装置を防音カバー等により覆い、インバータなどの高調波の騒音を抑制する例はあるものの、大きな防音効果が得られていない状況にある。
【0009】
本発明は、稼働時の騒音を大幅に低減することができるラックピニオン駆動方式を有する揚重装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、本発明は、自体の駆動力によって昇降する揚重装置であって、鉛直方向に沿って敷設され、ラックギアが形成されたラックレールと、前記ラックギアに噛合するピニオンギアを回転駆動する少なくとも1つの駆動部と、運搬用スペースが設けられ、前記駆動部により駆動されて前記ラックレールを昇降する移動部と、前記駆動部の出力軸と前記ピニオンギアとを連結する弾性部材により形成された継手部と、を備え、前記継手部は、円筒状に形成され、前記出力軸に固定されるハブと、ドーナッツ状に形成され、前記ハブを内包するジョイントディスクと、前記ジョイントディスクと連結されるフランジハブと、を備え、前記フランジハブと、前記ピニオンギアとが連結されていることを特徴とする、揚重装置である。
【0011】
本発明によれば、ラックレールに形成されたラックギアに噛合するピニオンギアを駆動する駆動部の出力軸とピニオンギアとが弾性変形する継手部により連結されているため、ピニオンギアが駆動された際にラックギアとの間において発生する振動や衝撃が揚重装置に伝搬することが防止され、揚重装置から発生する騒音を大幅に低減することができる。
【0012】
また、本発明の前記移動部は、前記ラックレールを走行する昇降枠と、前記昇降枠に設けられ前記運搬用スペースが形成されたケージと、前記昇降枠と前記ケージとを連結する弾性部材により形成された複数の第1固定部材と、を備えるように構成されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、昇降枠とケージとの間に弾性変形する第1固定部材が設けられていることにより、昇降枠において発生した振動や衝撃がケージに伝搬することが低減され、騒音の発生を大幅に低減することができる。
【0014】
また、本発明の前記移動部は、前記昇降枠に設けられ前記駆動部を支持する駆動枠と、前記昇降枠と前記駆動枠とを連結する弾性部材により形成された複数の第2固定部材と、を備えるように構成されていてもよい。
【0015】
本発明によれば、駆動枠と昇降枠との間に弾性変形する第2固定部材が設けられていることにより、駆動部において発生した振動や衝撃が昇降枠に伝搬することが低減され、騒音の発生を大幅に低減することができる。
【0016】
また、本発明の前記ラックレールと平行に設けられたガイドレールと、前記昇降枠に設けられ前記ガイドレールを挟持して前記昇降枠を昇降方向に案内して走行させると共に、前記ガイドレールに接触するトレッド面が弾性部材により形成されている複数のガイドローラと、を備えるように構成されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、ガイドローラのトレッド面が弾性部材により形成されていることにより、ガイドレールを走行する際に発生する振動や衝撃が昇降枠に伝搬することが低減され、騒音の発生を大幅に低減することができる。
【0018】
また、本発明の記ラックレールと設置対象物とを連結する弾性部材により形成された複数の第3固定部材を備えるように構成されていてもよい。
【0019】
本発明によれば、揚重装置において発生した振動や衝撃が設置対象物に伝搬することが低減され、騒音の発生を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ラックピニオン駆動方式を有する揚重装置の稼働時の騒音を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る揚重装置の構成の概略を示す側面断面図である。
図2】揚重装置の構成の概略を示す背面図である。
図3】レール用フレームの構成を示す斜視図である。
図4】駆動部の構成を示す断面図である。
図5】継手部の構成を示す斜視図である。
図6】支持部の構成を示す側面図である。
図7】連結部材の構成を示す背面図である。
図8】第1固定部材及び第2固定部材の構成を示す図である。
図9】第3弾性部材の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る揚重装置の実施形態について説明する。実施形態に係る揚重装置は、自体の駆動力によって昇降する。
【0023】
図1から図2に示されるように、揚重装置1は、鉛直方向に沿って敷設されたラックレールRと、ラックレールRに沿って移動する移動部2とを備える。
【0024】
ラックレールRは、構造物の壁面W等に固定されたレール用フレームBに固定されている。以下、便宜上、壁面Wを正対する方向(図の-X方向)から見た面を正面と呼ぶ。レール用フレームBは、例えば、鉛直方向に延在するトラス構造を有する枠体に形成されている。レール用フレームBは、鉛直方向に所定距離の範囲においてモジュールB1化して構成されており、モジュールB1を上部に継ぎ足すことで上方に延長することができる。
【0025】
レール用フレームBの背面側は、壁面Wに固定部材Kを介して固定されている。レール用フレームBの正面側には、ラックレールRが固定されている。レール用フレームBの両側面には、鉛直方向に沿って延在する一対のガイドレールGが固定されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1と同じ長さの単位に分割されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1に固定され、モジュールB1の増設と共に増設され、上方に延長される。
【0026】
図3に示されるように、ラックレールRは、一側面側に平歯のラックギアR1が形成されている。ラックギアR1には、後述のようにピニオンギアが噛合する。ラックレールRの他側面側は、平坦に形成されている。ラックレールRの他側面側には、後述のようにアジャストローラが走行する。ピニオンギアとアジャストローラは、移動部2を支持すると共に、ラックレールRを挟持しながら上下方向に走行する。
【0027】
ガイドレールGは、ラックレールRと平行に設けられている。ガイドレールGは、複数のガイドローラDにより挟持されている。複数のガイドローラDは、後述のように移動部2に設けられ、移動部2を支持すると共に、上下方向の移動を案内する。
【0028】
移動部2は、運搬用スペースが設けられ、後述の駆動部により駆動されてラックレールRを昇降する。移動部2は、ラックレールRに沿って走行する昇降枠3を備える。昇降枠3は、正面視して矩形の枠体に形成されている。昇降枠3の四隅は、複数のガイドローラDを介してガイドレールGに支持される4個の支持部4を備える。
【0029】
支持部4は、例えば、ガイドレールGの正面側を支持する1個のガイドローラDと、ガイドレールGの背面側を支持する2個のガイドローラDと、ガイドレールGの側面側を支持する1個のガイドローラDと、を備える。支持部4は、4個のガイドローラDにより昇降枠3を支持すると共に、ガイドレールGを挟持しながら昇降枠3の上下方向の移動を案内する。
【0030】
昇降枠3には、運搬用スペースが形成されたケージ10が固定されている。昇降枠3とケージとの間は、弾性部材により形成された複数の第1固定部材E1により連結されている。これにより、昇降枠3に発生した振動がケージ10に伝搬することが防止される。第1固定部材E1の構成については後述する。
【0031】
ケージ10は、箱型の枠体に形成されている。ケージ10は、軽量化を図るため壁面、床、天井、扉がグレーティングにより形成されている。昇降枠3において、ケージ10の下部は、支持枠3Aの上部に支持されている。
【0032】
支持枠3Aは、昇降枠3の正面方向に突出した箱形の枠体に形成されている。ケージ10と支持枠3Aとの間は、後述の複数の第1固定部材E1により連結されている。これにより、昇降枠3に発生した振動がケージ10に伝搬することが防止される。支持枠3Aの下方には、昇降枠3を昇降させる駆動部20を支持する駆動枠5が設けられている。
【0033】
駆動枠5は、昇降枠3の正面において支持枠3Aの枠内に固定されている。駆動枠5は、箱形の枠体に形成されている。駆動枠5と昇降枠3とは、後述の複数の連結部材Cにより支持されている。連結部材Cは、駆動枠5を昇降枠3に対して上下方向の所定範囲内に移動自在に支持する。駆動枠5と支持枠3Aとは、弾性部材により形成された複数の第2固定部材E2により連結されている。駆動枠5の上部と支持枠3Aの上部との間は、複数の第2固定部材E2により連結されている。駆動枠5の下部と支持枠3Aの下部との間は、複数の第2固定部材E2により連結されている。
【0034】
駆動枠5の内部には、少なくとも1つの駆動部20が固定されている。駆動部20は、駆動枠5に設けられた板状部6に固定されている。板状部6は、昇降枠3に正対する面に平行に取り付けられている。板状部6には、鉛直方向に沿って3個の円形の穴6Hが形成されている。駆動部20は、穴6Hから出力軸が突出するように板状部6に固定されている。
【0035】
駆動枠5において、例えば、3個の駆動部20が鉛直方向に沿って配置されている。駆動部20は、例えば、駆動源のモータ21を備える。モータ21の出力軸(不図示)には、回転数を低減すると共に、トルクを増大させて出力する減速機22が接続されている。減速機22の出力軸23には、ラックレールRのラックギアR1に噛合するピニオンギアPが接続されている。減速機22の出力軸とピニオンギアPとの間は、弾性部材により形成された継手部30により連結されている。継手部30については後述する。
【0036】
ピニオンギアPは、ラックレールRの一側面側のラックギアR1に噛合している。ラックレールRにおいて、ラックギアR1と反対側の他側面側には、ピニオンギアPに隣接してアジャストローラJが設けられている。
【0037】
アジャストローラJは、ピニオンギアPとラックギアR1との噛合におけるバックラッシュを確保するために設けられている。アジャストローラJとピニオンギアPとによりラックレールRを挟持する。ピニオンギアPが駆動部20により回転駆動され、ラックレールRのラックギアR1と噛合してラックレールRに沿って走行する際に、アジャストローラJは、ピニオンギアPとの間隔を保持してピニオンギアPがラックギアR1から逸脱することを防止する。
【0038】
ピニオンギアP及びアジャストローラJは、昇降枠3の上部にも設けられている。昇降枠3の上部に設けられたピニオンギアP及びアジャストローラJは、駆動部20により駆動されるものではなく、フリー回転するように設けられている。昇降枠3の上部におけるピニオンギアP及びアジャストローラJは、駆動部20により駆動されたピニオンギアPの駆動トルクにより発生する昇降枠3の回転を規制する。
【0039】
これにより、ガイドレールGに沿って走行する複数のガイドローラDにピニオンギアPの駆動トルクにより発生する昇降枠3の回転が伝達せず、移動部2の昇降が円滑に行われる。上記構成により、駆動部20は、ピニオンギアPを回転駆動することでラックレールRに沿って昇降することができる。
【0040】
次に、揚重装置1の振動、防音対策について説明する。
【0041】
図4及び図5に示されるように、駆動部20において減速機22の出力軸23は、継手部30を介してピニオンギアPに接続されている。継手部30は、弾性変形する自在継手である。継手部30は、円筒状に形成されたハブ31と、ドーナッツ状に形成されたジョイントディスク32と、円板状に形成されたフランジハブ33とを備える。ハブ31は、軸方向に貫通孔31Hが形成されている。貫通孔31Hには、減速機22の出力軸23が挿入される。
【0042】
ハブ31の径方向の周囲には、側面に沿って複数のピン穴31P及び複数のネジ穴31Nが形成されている。出力軸23には、ピン穴31Pの位置に対応して複数の穴(不図示)又はDカット面(不図示)等の平坦面が形成されている。ピン穴31Pには、ピン31Qが出力軸23に形成された平坦面まで嵌入され、ハブ31を出力軸23に固定すると共に、出力軸23の空転を防止する。
【0043】
ジョイントディスク32は、例えば、ゴム等の弾性部材により形成されている。ジョイントディスク32は、軸方向に沿って貫通孔32Hが形成されている。ジョイントディスク32の径方向の側面には、周方向に沿って複数のボルト穴32Nが等間隔に形成されている。複数のボルト穴32Nは、ハブ31の複数のネジ穴31Nの位置に対応して形成されている。ジョイントディスク32の貫通孔32Hの周囲には、軸方向に沿って複数のボルト穴32Vが形成されている。ボルト穴32N,32Vは、ボルト32Tの頂部が埋没するように段差が形成されている。ハブ31は、ジョイントディスク32の一端面側から他端面側に向かって貫通孔32Hに挿入される。
【0044】
ハブ31のネジ穴31Nとジョイントディスク32のボルト穴32Nとが位置合わせされる。ボルト32Tにより、ボルト穴32Nとネジ穴31Nとが共締めされ、ハブ31とジョイントディスク32とが連結される。ジョイントディスク32の他端面側において、貫通孔32Hの周囲には複数のピン穴32Pが形成されている。ジョイントディスク32の他端面側には、フランジハブ33が取り付けられる。
【0045】
フランジハブ33は、円板状に形成された円板部34と、円板部34と同心をなす円筒状に形成されたハブ35とが形成されている。円板部34は、一端面側にフランジハブ33が取り付けられる。円板部34は、軸方向に沿って中心に貫通孔34Hが形成されている。貫通孔34Hは、後述の理由によりD形の穴に形成されている。
【0046】
貫通孔34Hの周囲には軸方向に沿って複数のネジ穴34Nが形成されている。複数のネジ穴34Nは、フランジハブ33の複数のボルト穴32Vの位置に対応して形成されている。貫通孔34Hの周囲には軸方向に沿って複数のピン穴34Pが形成されている。複数のピン穴34Pは、ジョイントディスク32のピン穴32Pの位置に対応して形成されている。円板部34の他端面側には、ハブ35が形成されている。ハブ35は、ベアリング35Bを介して支持部35Mにより回転自在に駆動枠5に支持されている。
【0047】
ハブ35は、軸方向に沿って中心に貫通孔35Hが形成されている。貫通孔35Hは、貫通孔34Hに連通して形成されている。貫通孔35Hは、例えば、平坦面を有するD形の穴に形成されている。貫通孔35Hには、平坦面を有するDカット形状に形成されたピニオンギアPのシャフトP1が嵌入される。円板部34の複数のピン穴34Pには、複数のピン34Qが一端面側に突出した状態で嵌入される。
【0048】
フランジハブ33は、円板部34の一端面側にジョイントディスク32の他端面側が取り付けられる。円板部34の一端面から突出した複数のピン34Qは、ジョイントディスク32の複数のピン穴32Pに圧入される。この状態において、円板部34のネジ穴34Nとジョイントディスク32のボルト穴32Vとの位置が一致する。ボルト穴32Vには、ボルト32Tが挿入され、ネジ穴34Nと共締めされる。これにより、ジョイントディスク32とフランジハブ33とが連結される。
【0049】
上記構成により、駆動部20の出力軸23と、ピニオンギアPとが継手部30を介して連結される。継手部30は、ハブ31とフランジハブ33とをジョイントディスク32を介して連結されているため、出力軸23とピニオンギアPとの間に伝搬する振動はジョイントディスク32が変形することにより低減される。
【0050】
これにより、ピニオンギアPとラックギアR1において、発生した振動は、移動部2に伝搬しにくくなり、移動部2において発散される騒音が低減される。継手部30の構成は一例であり、ピニオンギアPとラックギアR1の振動を低減できるのであれば他の構成が用いられてもよい。
【0051】
次に移動部2の昇降を案内するガイドレールGとガイドローラDにおける振動対策について説明する。
【0052】
図6に示されるように、支持部4は、ガイドレールGを挟持して昇降枠3を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラDを備える。図示された支持部4は、正面視して右上に配置されたものが代表して例示されている。正面視して右下に配置された支持部4も上下対象に同じ構成を有する。正面視して左側に配置された上下の支持部4は、右側の上下の支持部4と左右対称に構成されている。
【0053】
支持部4は、複数のガイドローラDと、複数のガイドローラDを支持する支持板4Aとを備える。支持板4Aにおいて、ガイドレールGの正面側を走行する1個のガイドローラD1が回転自在に支持されている。支持板4Aにおいて、ガイドレールGの背面側を走行する2個のガイドローラD2,D3が回転自在に支持されている。正面視して2個のガイドローラD2,D3の間にガイドローラD1が回転自在に支持されている。
【0054】
ガイドローラD1と2個のガイドローラD2,D3によりガイドレールGを挟持している。ガイドローラD2の上方には、ガイドレールGの右側面側を走行するガイドローラD4が回転自在に支持されている。ガイドローラD4は、移動部2が右方向に逸脱することを防止する。ガイドローラDにおいて、ガイドレールGに接触するトレッド面Uは、ガイドレールGの断面形状に合致するようにU形の溝状に形成されている。
【0055】
トレッド面Uは、例えば、ウレタン等の弾性部材により形成されている。これにより、複数のガイドローラDと、ガイドレールGとの間に発生する振動や、ガイドレールGの継ぎ目を走行する際の衝撃が移動部2に伝搬することが低減される。
【0056】
次に、支持枠3Aと駆動枠5との間を伝搬する振動の低減方法について説明する。
【0057】
図7に示されるように、駆動枠5と昇降枠3とは、複数の連結部材Cにより支持されている。連結部材Cは、矩形の板状に形成された第1基板C1を備える。第1基板C1は、例えば、駆動枠5側にボルト及びナットにより固定されている。第1基板C1は、支持枠3A側に固定されていてもよい。
【0058】
第1基板C1は、溶接により固定されてもよい。第1基板C1には、水平方向に突出した一対の支持板C2が形成されている。一対の支持板C2は、上下方向に沿って配置されている。一対の支持板C2は、円柱状に形成されたシャフトC3を上下方向から挟持して固定している。シャフトC3には、板状に形成されたスライド板C4が挿通されている。
【0059】
スライド板C4には、シャフトC3の外形に合致する貫通孔CHが形成されている。スライド板C4の基端は、矩形の板状に形成された第2基板C5に固定されている。第2基板C5は、例えば、支持枠3A側に固定されている。第2基板は、駆動枠5側に固定されていてもよい。
【0060】
上記の連結部材Cの構成により、駆動枠5は、昇降枠3に対して上下方向の所定範囲内に移動自在に支持される。駆動枠5と支持枠3Aとの間には、複数の第2固定部材E2(図1及び図2参照)が固定され、昇降枠3に対して駆動枠5が上下方向の所定範囲内に移動することが規制されている。複数の第2固定部材E2により、駆動部20から昇降枠3に振動が伝搬することが低減される。同様に昇降枠3とケージ10との間には、複数の第1固定部材E1(図1及び図2参照)が固定され、昇降枠3からケージ10に振動が伝搬することが低減される。
【0061】
図8に示されるように、第1固定部材E1は、防振ゴム等の弾性部材により形成された弾性部Xと、弾性部Xを貫通する棒ボルトYとを備える。棒ボルトYは、異なる固定対象の部材を貫通した穴にそれぞれ挿入され、異なる固定対象にナットにより固定される。異なる固定対象の間に相対的な変位が生じた場合に、弾性部Xが変形することにより、異なる固定対象に振動や衝撃が伝搬することを防止する。
【0062】
第2固定部材E2も第1固定部材E1と同様の構成により形成されている。第1固定部材E1及び第2固定部材E2は、支持対象の位置や荷重に応じて適宜大きさや数が変更される。第1固定部材E1及び第2固定部材E2により、移動部2に発生する振動や衝撃を低減することができる。
【0063】
上記以外の振動対策として、ラックレールRと設置対象物(壁面W等)とを連結する複数の固定部材Kにおいて、弾性部材により形成された複数の第3固定部材を設けてもよい。
【0064】
図9に示されるように、レール用フレームBと壁面Wとの間を連結する固定部材Kに第3固定部材E3が設けられている。第3固定部材E3は、第1固定部材E1と同様の構成を備える。第3固定部材E3が設けられていることにより、揚重装置1において発生した振動や衝撃が壁面Wに伝搬することが低減される。
【0065】
上述したように、揚重装置1によれば、ピニオンギアPと駆動部20の出力軸23とを連結する継手部30が設けられていることにより、継手部30が弾性変形してピニオンギアPと噛合するラックギアR1との間において発生する振動や衝撃を駆動部20側に伝搬することを低減することができる。揚重装置1によれば、移動部2において、昇降枠3とケージ10との間において複数の第1固定部材E1が連結されていることにより、昇降枠3の昇降中に発生する振動や衝撃がケージ10に伝搬することが低減される。
【0066】
揚重装置1によれば、駆動枠5と支持枠3Aとが複数の連結部材Cにより相対的に上下方向に移動自在に連結されると共に、複数の第2固定部材E2に連結されていることにより、駆動部20により発生した振動や衝撃が昇降枠3に伝搬することが防止される。揚重装置1によれば、レール用フレームBと壁面Wとの間に第3固定部材E3が設けられていることにより、揚重装置1において発生した振動や衝撃が壁面Wに伝搬することが防止される。揚重装置1によれば、稼働時に発生する振動や衝撃に起因する騒音を大幅に低減できる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態においては、工事用の揚重装置を例示したがこれに限らず、工事用以外の揚重装置や、人以外の物を運搬する揚重装置に適用してもよい。また、上述した構成は、水平方向、斜め方向に移動するラックピニオンを利用した移動体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…揚重装置、2…移動部、3…昇降枠、3A…支持枠、4…支持部、4A…支持板、5…駆動枠、6…板状部、6H…穴、10…ケージ、20…駆動部、21…モータ、22…減速機、23…出力軸、30…継手部、31…ハブ、31H…貫通孔、31N…ネジ穴、31P…ピン穴、31Q…ピン、32…ジョイントディスク、32H…貫通孔、32N…ボルト穴、32P…ピン穴、32T…ボルト、32V…ボルト穴、33…フランジハブ、34…円板部、34H…貫通孔、34N…ネジ穴、34P…ピン穴、34Q…ピン、35…ハブ、35B…ベアリング、35H…貫通孔、35M…支持部、B…レール用フレーム、B1…モジュール、C…連結部材、C1…第1基板、C2…支持板、C3…シャフト、C4…スライド板、C5…第2基板、CH…貫通孔、D…ガイドローラ、D1-D4…ガイドローラ、E1…第1固定部材、E2…第2固定部材、E3…第3固定部材、G…ガイドレール、J…アジャストローラ、K…固定部材、P…ピニオンギア、P1…シャフト、R…ラックレール、R1…ラックギア、U…トレッド面、W…壁面、X…弾性部、Y…棒ボルト
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9