(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光学測定装置および光学測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
(21)【出願番号】P 2020168239
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020006699
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】田口 都一
(72)【発明者】
【氏名】入江 優
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-163105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定装置であって、
複数波長を含む照射光を測定対象物へ照射する照射光学系と、
前記測定対象物への前記照射光の照射により前記測定対象物から生じる透過光または反射光である測定光を受光する受光光学系と、
偏光板とを備え、
前記偏光板が、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方に位置することが可能なように構成さ
れ、
前記光学測定装置は、さらに、
前記照射光の光路または前記測定光の光路に対して交差する平面上における方向であって前記偏光板の吸収軸の方向を調整可能な調整部を備え、
前記測定対象物は、複屈折性を有し、
(a)前記偏光板の吸収軸と前記測定対象物の遅相軸とのなす角度は-10度以上10度以下であり、かつ前記偏光板の吸収軸と前記測定対象物の進相軸とのなす角度は80度以上100度以下であるか、または、(b)前記偏光板の吸収軸と前記測定対象物の遅相軸とのなす角度は80度以上100度以下であり、かつ前記偏光板の吸収軸と前記測定対象物の進相軸とのなす角度は-10度以上10度以下である、光学測定装置。
【請求項2】
前記偏光板は、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方のみに固定的に設けられている、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
照射光学系と、受光光学系とを備える光学測定装置を用いた光学測定方法であって、
前記照射光学系を用いて、複数波長を含む照射光を測定対象物へ照射するステップと、
前記受光光学系を用いて、前記測定対象物への前記照射光の照射により前記測定対象物から生じる透過光または反射光である測定光を受光するステップとを含み、
前記照射光を前記測定対象物へ照射するステップまたは前記測定光を受光するステップにおいて、偏光板を透過した前記照射光を前記測定対象物へ照射するか、または偏光板を透過した前記測定光を受光
し、
前記光学測定方法は、さらに、
前記照射光または前記測定光の光路に対して交差する平面上における方向であって前記偏光板の吸収軸の方向が異なる場合の各々の前記測定光の受光結果に基づいて、前記測定対象物の膜厚を算出するステップを含む、光学測定方法。
【請求項4】
前記偏光板は、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方のみに固定的に設けられている、請求項
3に記載の光学測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定装置および光学測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、測定対象物への光の照射によって測定対象物から生じる透過光または反射光に基づいて、測定対象物の透過率または反射率を測定することにより、たとえば測定対象物の膜厚を測定する技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2015-59750号公報)には、以下のような膜厚測定方法が開示されている。すなわち、膜厚測定方法は、被測定物に連続光を照射して、その反射光または透過光の分光スペクトルを得るステップと、前記分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを得るステップと、前記パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点と最も長波長側のピークについての第2の特性点との中点に基づいて前記被測定物の膜厚を求めるステップと、を有する。
【0004】
また、特許文献2(特開2009-198361号公報)には、以下のような膜厚測定装置が開示されている。すなわち、膜厚測定装置は、被測定対象に白色光を照射して得られる反射光又は透過光を分光して分光スペクトルを測定する測定部と、当該測定部で測定された分光スペクトルに対して所定の演算を施して前記被測定対象の膜厚を測定する演算部とを備える膜厚測定装置において、前記演算部は、前記分光スペクトルのうち予め設定された波長帯域における分光スペクトルを所定の波数間隔に並べ直した波数域分光スペクトルに変換する第1変換部と、前記第1変換部で変換された波数域分光スペクトルをパワースペクトルに変換する第2変換部と、前記第2変換部で変換された前記パワースペクトル中に現れるピークの重心位置を求め、当該重心位置に基づいて前記被測定対象の厚みを求める算出部とを備える。
【0005】
また、特許文献3(特開2011-133428号公報)には、以下のようなリタデーション測定装置が開示されている。すなわち、リタデーション測定装置は、偏光された光を被測定物に照射し、前記被測定物から戻ってきた光を用いて前記被測定部のリタデーションを測定するリタデーション測定装置において、被測定物に照射する白色光を出力する光源と、前記光源の出力光を偏光すると共に、前記被測定物から戻ってきた光が入射される偏光板と、前記被測定物から戻り、かつ前記偏光板を透過した光が入射され、この光の分光スペクトルを生成する分光部と、前記分光部が生成した分光スペクトルが入力され、この分光スペクトルからリタデーションを演算して出力する演算部と、を備える。
【0006】
また、特許文献4(特開2012-112760号公報)には、以下のような膜厚測定方法が開示されている。すなわち、膜厚測定方法は、複屈折性を有する被測定物の膜厚を測定する膜厚測定方法において、偏光された光を被測定物に照射し、この被測定物を透過した光を分光して分光スペクトルを生成して、この分光スペクトルからリタデーションを測定する工程と、前記測定したリタデーション、および被測定物の屈折率差から、この被測定物の膜厚を演算する工程と、を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59750号公報
【文献】特開2009-198361号公報
【文献】特開2011-133428号公報
【文献】特開2012-112760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえば、特許文献1には、測定対象物の反射光または透過光の分光スペクトルのパワースペクトルにおいて、測定対象物における異なる2つの光学膜厚に対応する2つのピークが現れることが開示されている。特許文献1および特許文献2に記載の技術では、このようなパワースペクトルに基づいて、測定対象物の膜厚を正確に決定することができない場合がある。
【0009】
このような特許文献1~4に記載の技術を超えて、より正確に測定対象物の透過率または反射率を測定可能とする技術が望まれる。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、より正確に測定対象物の透過率または反射率を測定することが可能な光学測定装置および光学測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる光学測定装置は、複数波長を含む照射光を測定対象物へ照射する照射光学系と、前記測定対象物への前記照射光の照射により前記測定対象物から生じる透過光または反射光である測定光を受光する受光光学系と、偏光板とを備え、前記偏光板が、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方に位置することが可能なように構成される。
【0012】
このように、照射光学系および受光光学系のいずれか一方に位置することが可能なように構成される偏光板を備え、偏光板を透過した照射光を測定対象物へ照射するか、または偏光板を透過した測定光を受光する構成により、たとえば複屈折性を有する測定対象物の透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定する場合において、うなり成分が低減された透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定することができるとともに、照射光学系および受光光学系の両方に偏光板を設けた構成と比べて、受光光学系における測定光の受光強度の低下を抑制することができる。したがって、より正確に測定対象物の透過率または反射率を測定することができる。
【0013】
(2)好ましくは、前記偏光板は、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方のみに固定的に設けられている。
【0014】
このような構成により、測定対象物の透過率または反射率を測定する際に偏光板の位置を移動する等の操作が不要であるので、簡易な構成および簡易な操作により測定対象物の透過率または反射率の測定を開始することができる。
【0015】
(3)好ましくは、前記光学測定装置は、さらに、前記照射光の光路または前記測定光の光路に対して交差する平面上における方向であって前記偏光板の吸収軸の方向を調整可能な調整部を備える。
【0016】
このような構成により、複屈折性を有する測定対象物の光軸に対する偏光板の吸収軸の方向を調整することができ、生成される透過率スペクトルまたは反射率スペクトルにおけるうなり成分をより低減することができる。
【0017】
(4)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる光学測定方法は、照射光学系と、受光光学系とを備える光学測定装置を用いた光学測定方法であって、前記照射光学系を用いて、複数波長を含む照射光を測定対象物へ照射するステップと、前記受光光学系を用いて、前記測定対象物への前記照射光の照射により前記測定対象物から生じる透過光または反射光である測定光を受光するステップとを含み、前記照射光を前記測定対象物へ照射するステップまたは前記測定光を受光するステップにおいて、偏光板を透過した前記照射光を前記測定対象物へ照射するか、または偏光板を透過した前記測定光を受光する。
【0018】
このように、偏光板を透過した照射光を測定対象物へ照射するか、または偏光板を透過した測定光を受光する方法により、たとえば複屈折性を有する測定対象物の透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定する場合において、うなり成分が低減された透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定することができるとともに、照射光学系および受光光学系の両方に偏光板を設けた構成と比べて、受光光学系における測定光の受光強度の低下を抑制することができる。したがって、より正確に測定対象物の透過率または反射率を測定することができる。
【0019】
(5)好ましくは、前記偏光板は、前記照射光学系および前記受光光学系のいずれか一方のみに固定的に設けられている。
【0020】
このような構成により、測定対象物の透過率または反射率を測定する際に偏光板の位置を移動する等の操作が不要であるので、簡易な構成および簡易な操作により測定対象物の透過率または反射率の測定を開始することができる。
【0021】
(6)好ましくは、前記光学測定方法は、さらに、前記照射光または前記測定光の光路に対して交差する平面上における方向であって前記偏光板の吸収軸の方向が異なる場合の各々の前記測定光の受光結果に基づいて、前記測定対象物の膜厚を算出するステップを含む。
【0022】
このような構成により、たとえば、複屈折性を有する測定対象物の膜厚を測定する場合において、吸収軸の方向が測定対象物の遅相軸と平行となるように偏光板を配置したときの測定光の受光結果と、吸収軸の方向が測定対象物の進相軸と平行となるように偏光板を配置したときの測定光の受光結果とを用いて、測定対象物の膜厚をより正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より正確に測定対象物の透過率または反射率を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における受光光学系の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における処理装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態の比較例1に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態の比較例1に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施の形態の比較例2に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施の形態の比較例2に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施の形態の比較例3に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施の形態の比較例3に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施の形態の比較例4に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第1の実施の形態の比較例4に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における偏光板の吸収軸の方向と測定対象物の遅相軸の方向との関係を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置において測定対象物の膜厚を算出する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図20】
図20は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置において偏光板の吸収軸の方向を調整する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図21】
図21は、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明の第2の実施の形態の変形例1に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る光学測定装置における照射光学系の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0026】
<第1の実施の形態>
[光学測定装置]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0027】
図1を参照して、光学測定装置101は、照射光学系10と、受光光学系20と、処理装置30と、調整部51と、ベース部材4と、支持部材6と、偏光板50とを備える。ベース部材4および支持部材6は、受光光学系20を固定する。なお、光学測定装置101は、ベース部材4および支持部材6を備える構成に限定されず、ベース部材4および支持部材6の代わりに、またはベース部材4および支持部材6に加えて、受光光学系20を固定するための他の部材を備える構成であってもよい。
【0028】
偏光板50は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方に位置することが可能なように構成される。たとえば、偏光板50は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方のみに固定的に設けられている。
図1に示す例において、偏光板50は、受光光学系20のみに固定的に設けられている。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
図2は、光学測定装置101の測定対象である測定対象物Sが配置された状態を示している。
【0030】
図2を参照して、光学測定装置101は、対象領域Rを通る、フィルム等の測定対象物Sの透過率を測定する。
【0031】
たとえば、光学測定装置101は、測定対象物Sの製造ラインにおいて、対象領域Rを通って搬送される測定対象物S上の、複数の測定位置Mにおける透過率スペクトルを自動で測定する。すなわち、光学測定装置101は、測定対象物S上の複数の測定位置Mにおける透過率スペクトルをインラインで測定する。
【0032】
より詳細には、光学測定装置101は、たとえば周期的に透過率測定を行うことにより、搬送される測定対象物Sの測定位置Mにおける波長ごとの透過率を算出する。
【0033】
[照射光学系]
照射光学系10は、複数波長を含む照射光を測定対象物Sへ直線状に照射する。より詳細には、照射光学系10は、測定対象物Sが通る直線状の領域である対象領域Rへ照射光を照射する。
【0034】
照射光学系10は、光源11と、ラインライトガイド12とを含む。
【0035】
光源11は、複数波長を含む光を出射する。光源11が出射する光のスペクトルは、連続スペクトルであってもよいし、線スペクトルであってもよい。光源11が出射する光の波長は、測定対象物Sから取得すべき波長情報の範囲等に応じて設定される。光源11は、たとえばハロゲンランプである。
【0036】
ラインライトガイド12は、光源11から出射される光を受けて、受けた光をライン状の開口部から出射することにより、対象領域Rへ照射光を直線状に照射する。ラインライトガイド12における照射光の出射面には、たとえば、光量ムラを抑制するための拡散部材等が配置される。ラインライトガイド12は、測定対象物Sが搬送される面の直下に配置される。
【0037】
たとえば、照射光学系10は、測定対象物Sの透過率スペクトルのインライン測定を行う場合、測定タイミングにおいて対象領域Rへ照射光を照射する一方、測定タイミング以外のタイミングにおいて対象領域Rへの照射光の照射を停止する。なお、照射光学系10は、測定タイミングに関わらず、継続的に対象領域Rへ照射光を照射する構成であってもよい。
【0038】
[受光光学系]
受光光学系20は、測定対象物Sへの照射光の照射により測定対象物Sから生じる透過光である測定光を受光する。
【0039】
受光光学系20は、偏光板50と、対物レンズ21と、イメージング分光器22と、撮像部23とを含む。
【0040】
受光光学系20は、測定対象物Sを挟んで、ラインライトガイド12と対向する位置に配置される。
【0041】
受光光学系20は、ラインライトガイド12から出射された照射光のうち、対象領域Rを透過した透過光を測定光として受光する。具体的には、受光光学系20は、ラインライトガイド12から出射された照射光のうち、対象領域Rを通る測定対象物Sの透過光を受光する。
【0042】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における受光光学系の構成を示す図である。
【0043】
図3を参照して、イメージング分光器22は、スリット部221と、第1レンズ222と、回折格子223と、第2レンズ224とを有する。スリット部221、第1レンズ222、回折格子223および第2レンズ224は、対物レンズ21側からこの順に配置される。
【0044】
撮像部23は、2次元の受光面を有する撮像素子231により構成される。このような撮像素子231は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像部23は、イメージング分光器22から受光した測定光に基づいて、2次元画像Pを生成する。撮像部23によって生成される2次元画像Pは、波長情報および位置情報を含む。
【0045】
たとえば、偏光板50は、対象領域Rから対物レンズ21までの測定光の光路上に配置される。偏光板50は、吸収軸を有する。たとえば、偏光板50は、吸収軸の方向を調整可能であり、かつ受光光学系20との相対的な位置が固定されるように、ボルト等の固定部材を用いて当該光路上に固定される。
【0046】
測定光の光路に対して交差する平面上における偏光板50の吸収軸の方向は、たとえば測定対象物Sの透過率スペクトルのインライン測定を開始する前に、調整部51により調整される。なお、当該方向は、ユーザによって手動で調整されてもよい。
【0047】
偏光板50は、対象領域Rからの測定光のうち、吸収軸に平行な方向に振動する光を吸収する。偏光板50を透過する光は、対物レンズ21へ導かれる。
【0048】
対物レンズ21は、対象領域Rからの測定光のうち、偏光板50を透過した光を収束してイメージング分光器22へ導く。
【0049】
イメージング分光器22におけるスリット部221は、スリットを含む。スリット部221は、対物レンズ21を介して自己へ入射した測定光のビーム断面を所定形状に整形する。スリット部221におけるスリットの長手方向の長さは、対象領域Rの長さに応じた長さに設定され、スリットの短手方向の幅は回折格子223の分解能等に応じて設定される。
【0050】
イメージング分光器22における第1レンズ222は、スリット部221を通過した測定光を平行光に変換し、変換後の測定光を回折格子223へ導く。第1レンズ222は、たとえばコリメートレンズである。
【0051】
イメージング分光器22における回折格子223は、測定光を当該測定光の長手方向とは直交する方向に波長展開(Wavelength Expansion)する。より詳細には、回折格子223は、スリット部221を通過してきたライン状の測定光を、ライン方向とは直交する方向に波長展開すなわち分光する。
【0052】
イメージング分光器22における第2レンズ224は、回折格子223によって波長展開された測定光を、波長情報および位置情報を反映した2次元的な光学スペクトルとして撮像部23における撮像素子231の受光面に結像する。
【0053】
撮像部23は、撮像素子231の受光面に結像された2次元画像Pを示す2次元画像データを、受光光学系20における受光結果として処理装置30へ送信する。
【0054】
以下では、2次元画像Pにおける
図3中のD1方向を「位置方向」と称し、位置方向と直交する方向であるD2方向を「波長方向」と称する。位置方向における各点は、対象領域R上の各測定点Xに対応する。波長方向における各点は、対応する測定点Xからの測定光の波長に対応する。また、撮像素子231の受光面は、波長方向の分解能としてmチャネルを有し、位置方向の分解能としてnチャネルを有しているものとする。nは、たとえば1200である。
【0055】
[処理装置]
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における処理装置の構成を示す図である。
【0056】
図4を参照して、処理装置30は、受信部31と、算出部32と、記憶部33と、送信部34とを含む。処理装置30は、たとえばパーソナルコンピュータである。
【0057】
受信部31は、受光光学系20における撮像部23から2次元画像データを受信し、受信した2次元画像データを記憶部33に保存する。
【0058】
算出部32は、受光光学系20における測定光の受光結果に基づいて、対象領域Rにおける波長λと測定光の強度との関係である受光スペクトルS(λ)を生成する。そして、算出部32は、生成した受光スペクトルS(λ)に基づいて、対象領域Rを通る測定対象物Sの波長ごとの透過率を算出する。
【0059】
より詳細には、算出部32は、記憶部33に保存された2次元画像データに基づいて、受光スペクトルS(λ)を生成し、生成した受光スペクトルS(λ)に基づいて、測定対象物Sの波長λごとの透過率を算出する。
【0060】
たとえば、算出部32は、測定対象物Sが存在しないときの対象領域Rから生じる測定光に基づく受光スペクトルS(λ)である基準スペクトルStr(λ)、および測定対象物Sが存在するときの対象領域Rから生じる測定光に基づく受光スペクトルS(λ)である測定スペクトルStm(λ)に基づいて、測定対象物Sにおける波長λと透過率との関係である透過率スペクトルST(λ)を算出する。
【0061】
たとえば、算出部32は、算出した透過率スペクトルST(λ)に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。より詳細には、算出部32は、算出した透過率スペクトルST(λ)にフーリエ変換等の演算処理を施すことにより、パワースペクトルを生成する。そして、算出部32は、生成したパワースペクトルにおけるピーク波長に対応する光学膜厚を測定対象物Sの膜厚として決定する。
【0062】
たとえば、算出部32は、対象領域Rにおける測定点Xごとに、複数の基準スペクトルStr(λ)および複数の測定スペクトルStm(λ)を生成し、生成した各基準スペクトルStr(λ)および各測定スペクトルStm(λ)に基づいて、測定点Xごとの複数の透過率スペクトルST(λ)を算出する。そして、算出部32は、算出した各透過率スペクトルST(λ)に基づいて、測定対象物Sの各測定点Xにおける膜厚を示す膜厚分布を生成する。
【0063】
なお、算出部32は、算出した透過率スペクトルST(λ)に基づいて、測定対象物Sの色相を算出する構成であってもよい。
【0064】
(偏光板の吸収軸方向の調整処理)
調整部51は、測定光の光路に対して交差する平面上における方向であって偏光板50の吸収軸の方向を調整可能である。より詳細には、調整部51は、測定光の光路に対して直交する平面上における方向であって偏光板50の吸収軸の方向を調整可能である。調整部51は、たとえば、電気式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、化学式アクチュエータ、磁性流体アクチュエータ、または電気粘性流体アクチュエータである。一例として、調整部51は、偏光板50の吸収軸と、測定対象物Sの光学軸とのなす角度が-10度以上10度以下または80度以上100度以下となるように偏光板50の吸収軸の方向を調整する。
【0065】
たとえば、調整部51は、測定対象物Sの透過率スペクトルにフーリエ変換等の演算処理を施すことにより生成されるパワースペクトルにおいて、バックグランドに埋もれない単一のピークが現れるように、偏光板50の吸収軸の方向を調整する。
【0066】
たとえば、調整部51は、測定対象物Sの透過率スペクトルのインライン測定を開始する前に、処理装置30からの制御信号に従って、偏光板50の吸収軸の方向を調整する。
【0067】
より詳細には、算出部32は、測定対象物Sの透過率スペクトルのインライン測定を開始する前に、測定光の光路に対して直交する平面上における所定の基準方向と、当該平面上における方向であって偏光板50の吸収軸の方向とのなす角度θaを初期値である角度θasに調整するための制御信号を送信部34へ出力する。
【0068】
送信部34は、算出部32から制御信号を受けると、受けた制御信号を調整部51へ送信する。
【0069】
たとえば、調整部51は、送信部34から制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って、偏光板50を回転させることにより角度θaを角度θasに調整する。
【0070】
算出部32は、調整部51によって角度θaが調整されると、測定対象物Sにおけるある測定位置Mにおける透過率スペクトルST(λ)を算出する。たとえば、算出部32は、測定位置Mにおいて、対象領域Rの長手方向の端部に位置する部分における透過率スペクトルST(λ)を算出する。次に、算出部32は、算出した透過率スペクトルST(λ)にフーリエ変換等の演算処理を施すことにより、パワースペクトルを生成する。そして、算出部32は、生成したパワースペクトルにおける、最も大きなピークの強度と、2番目に大きなピークの強度との差分Dを算出する。算出部32は、算出した差分Dを記憶部33に保存する。
【0071】
また、算出部32は、差分Dを記憶部33に保存すると、角度θaをたとえば時計回りに3度回転させた角度に変更するための制御信号を送信部34経由で調整部51へ送信する。
【0072】
調整部51は、送信部34経由で算出部32から制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って、再び角度θaを調整する。
【0073】
算出部32は、調整部51によって角度θaが調整されると、再び測定対象物Sにおける測定位置Mにおける透過率スペクトルST(λ)を算出するとともにパワースペクトルを生成し、当該パワースペクトルにおける差分Dを算出する。
【0074】
上述のように、算出部32は、角度θaの変更およびパワースペクトルにおける差分Dの算出を所定回数たとえば60回繰り返し、角度θaごとの差分Dを算出する。そして、算出部32は、差分Dが最大となるときの角度θaである角度θmaxを検出する。
【0075】
算出部32は、角度θmaxを検出すると、角度θaを角度θmaxに設定するための制御信号を送信部34経由で調整部51へ送信する。なお、算出部32は、差分Dが所定のしきい値以上となるときの角度θaである角度θthを1または複数検出し、角度θaをいずれかの角度θthに設定するための制御信号を送信部34経由で調整部51へ送信する構成であってもよい。また、算出部32は、パワースペクトルにおいて現れるピークの鋭さを示す指標に基づいて、最も鋭い単一ピークが現れるときの角度θaを角度θmaxとして検出し、検出した角度θmaxに設定するための制御信号を送信部34経由で調整部51へ送信する構成であってもよい。
【0076】
調整部51は、送信部34経由で算出部32から制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って、角度θaが角度θmaxとなるように偏光板50を回転させる。
【0077】
光学測定装置101は、角度θaが角度θmaxに設定された状態において、測定対象物Sの透過率スペクトルST(λ)のインライン測定を開始する。
【0078】
たとえば、光学測定装置101は、複屈折性を有する測定対象物Sの膜厚測定に用いられる。具体的には、測定対象物Sは、たとえばPET(Polyethylene Terephthalate)の延伸フィルムである。PETの延伸フィルムは、延伸方向および延伸倍率に応じて、光軸たとえば遅相軸Nxおよび進相軸Nyを有する。遅相軸Nxおよび進相軸Nyは、たとえば直交する。測定対象物Sの遅相軸Nxおよび進相軸Nyは、測定対象物Sの光学軸の一例である。
【0079】
また、たとえば、光学測定装置101は、偏光特性を有する測定対象物Sの膜厚測定に用いられる。具体的には、測定対象物Sは、たとえば長尺状の偏光フィルムである。偏光フィルムは、製造工程において延伸され、延伸方向に応じた方向に吸収軸を有する。測定対象物Sの吸収軸は、測定対象物Sの光学軸の一例である。
【0080】
従来の光学測定方法では、複屈折性または偏光特性を有する測定対象物Sの膜厚を測定する場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定できない場合がある。具体的には、たとえば、従来の光学測定方法では、測定対象物Sが有する複屈折性の影響により、算出される透過率スペクトルにうなり成分が含まれており、当該透過率スペクトルをフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルにおいて、測定対象物Sの膜厚に対応するピークとして、異なる位置に複数のピークが生じる場合があり、この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することが困難である。また、たとえば、従来の光学測定方法では、測定対象物Sが有する複屈折性の影響により、パワースペクトルにおいて、測定対象物Sの膜厚に対応するピークがバックグラウンドに埋もれる場合があり、この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することが困難である。また、たとえば、従来の光学測定方法では、測定対象物Sが有する偏光折性の影響により、パワースペクトルにおいて、測定対象物Sの膜厚に対応するピークがバックグラウンドに埋もれる場合があり、この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することが困難である。
【0081】
また、特許文献3および特許文献4に記載の技術では、測定対象物のリタデーションを測定するために、測定対象物へ照射される光および測定対象物から出力される光の両方が偏光板を通るように偏光板が配置される構成である。したがって、測定対象物へ照射される光および測定対象物から出力される光の両方が偏光板によって減衰されるので、限られた測定時間内において膜厚を正確に測定できない場合がある。
【0082】
(測定例1)
図5は、本発明の第1の実施の形態の比較例1に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図5において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図5は、偏光板50を備えない光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルSTc1(λ)を示している。
【0083】
図6は、本発明の第1の実施の形態の比較例1に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図6において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図6は、
図5に示す透過率スペクトルSTc1(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPwc1を示している。
【0084】
図6を参照して、比較例1に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc1では、測定対象物Sの膜厚に応じて現れるはずのピークがバックグラウンドに埋もれており、最も大きなピークを一意に検出することができない。このため、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することは困難である。
【0085】
図7は、本発明の第1の実施の形態の比較例2に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図7において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図7は、偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が45度である光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルSTc2(λ)を示している。
【0086】
図8は、本発明の第1の実施の形態の比較例2に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図8において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図8は、
図7に示す透過率スペクトルSTc2(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPwc2を示している。
【0087】
図8を参照して、比較例2に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc2では、パワースペクトルPwc1と同様に、測定対象物Sの膜厚に応じて現れるはずのピークがバックグラウンドに埋もれており、最も大きなピークを一意に検出することができない場合がある。この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することは困難である。
【0088】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図9において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図9は、偏光板50の吸収軸の方向が、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向に対して平行となるように調整された光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルST(λ)を示している。
【0089】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図10において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図10は、
図9に示す透過率スペクトルST(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPwを示している。
【0090】
図10を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwでは、最も大きなピークpkを一意に検出することができ、ピークpkに対応する測定対象物Sの膜厚Fを正確に測定することができる。
【0091】
(測定例2)
図11は、本発明の第1の実施の形態の比較例3に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図11において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図11は、偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が45度である光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルSTc3(λ)を示している。
【0092】
図12は、本発明の第1の実施の形態の比較例3に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図12において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図12は、
図11に示す透過率スペクトルSTc3(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPwc3を示している。
【0093】
図12を参照して、比較例3に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc3では、ピークpk1,pk2が生じ、最も大きなピークを一意に検出することができない場合がある。この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することは困難である。
【0094】
図13は、本発明の第1の実施の形態の比較例4に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図13において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図13は、偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が75度である光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルSTc4(λ)を示している。
【0095】
図14は、本発明の第1の実施の形態の比較例4に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図14において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図14は、
図13に示す透過率スペクトルSTc4(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPwc4を示している。
【0096】
図14を参照して、比較例4に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc4では、パワースペクトルPwc3と同様に、ピークpk1,pk2が生じる。パワースペクトルPwc4におけるピークpk2は、パワースペクトルPwc3におけるピークpk2よりも小さい。しかしながら、パワースペクトルPwc4では、測定条件等によっては、最も大きなピークを一意に検出することができない場合がある。この場合、測定対象物Sの膜厚を正確に測定することは困難である。
【0097】
図15は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルを示す図である。
図15において、縦軸は透過率であり、横軸は波長である。
図15は、偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が90度である光学測定装置101により生成される、複屈折性を有する測定対象物S上のある測定点における透過率スペクトルST2(λ)を示している。
【0098】
図16は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置により生成される透過率スペクトルのパワースペクトルを示す図である。
図16において、縦軸は強度であり、横軸は膜厚である。
図16は、
図15に示す透過率スペクトルST2(λ)をフーリエ変換することにより得られるパワースペクトルPw2を示している。
【0099】
図16を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPw2では、最も大きなピークpk1を一意に検出することができ、ピークpk1に対応する測定対象物Sの膜厚Fを正確に測定することができる。
【0100】
図17は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置における偏光板の吸収軸の方向と測定対象物の遅相軸の方向との関係を示す図である。
【0101】
図17を参照して、照射光学系10は、自然光である照射光を測定対象物Sへ照射する。測定対象物Sを透過する透過光は、測定対象物Sの遅相軸Nxと平行な方向に振動する光Lxと、測定対象物Sの進相軸Nyと平行な方向に振動する光Lyとを含む。
【0102】
たとえば、パワースペクトルPwc3,Pwc4におけるピークpk1は、光Lxに対応するピークであり、パワースペクトルPwc3,Pwc4におけるピークpk2は、光Lyに対応するピークである。
【0103】
比較例3に係る光学測定装置101は、偏光板50により減衰された光Lxおよび偏光板50により減衰された光Lyを受光する。ここで、比較例3に係る光学測定装置101における偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が45度であるので、偏光板50による光Lxの減衰量と、偏光板50による光Lyの減衰量とは略同一である。したがって、比較例3に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc3では、光Lxに対応するピークpk1と、光Lyに対応する、ピークpk1と略同一の大きさのピークpk2とが生じてしまう。
【0104】
また、比較例4に係る光学測定装置101は、偏光板50により減衰された光Lxおよび偏光板50により減衰された光Lyを受光する。ここで、比較例4に係る光学測定装置101における偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が75度であるので、偏光板50による光Lyの減衰量は、偏光板50による光Lxの減衰量よりも大きい。したがって、比較例4に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPwc4では、光Lxに対応するピークpk1と、光Lyに対応する、ピークpk1よりも小さいピークpk2とが生じてしまう。
【0105】
これに対して、第1の実施の形態に係る光学測定装置101における偏光板50の吸収軸の方向と、測定対象物Sの遅相軸Nxの方向とのなす角度が90度であるので、
図17に示すように、光Lxは偏光板50により減衰されることなく偏光板50を透過する一方で、光Lyは偏光板50により吸収される。したがって、第1の実施の形態に係る光学測定装置101により生成されるパワースペクトルPw2では、光Lxに対応するピークpk1が生じる一方で、光Lyに対応するピークが生じないので、最も大きなピークpk1を一意に検出することができ、ピークpk1に対応する測定対象物Sの膜厚Fを正確に測定することができる。
【0106】
[変形例1]
算出部32は、照射光の光路に対して直交する平面上における偏光板の吸収軸の方向が異なる場合の各々の測定光の受光結果に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。
【0107】
たとえば、算出部32は、角度θaが角度θmaxに設定された状態において、測定位置Mから生じる測定光の受光光学系20による受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax1と、角度θaが角度(θmax+90°)に設定された状態において、測定位置Mから生じる測定光の受光光学系20による受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax2との平均値を、測定対象物Sの膜厚として決定する。
【0108】
たとえば、角度θaが角度θmaxに設定された状態における偏光板50の吸収軸の方向Daは、測定対象物Sの遅相軸Nxに平行な方向であり、角度θaが角度(θmax+90°)に設定された状態における偏光板50の吸収軸の方向Dbは、測定対象物Sの進相軸Nyに平行な方向である。
【0109】
より詳細には、光学測定装置101は、測定対象物Sの搬送方向に沿って並ぶ照射光学系10aおよび照射光学系10bと、測定対象物Sの搬送方向に沿って並ぶ受光光学系20aおよび受光光学系20bとを備える。
【0110】
照射光学系10aおよび照射光学系10bは、測定対象物Sにおける測定位置Mへ照射光を照射する。
【0111】
受光光学系20aは、照射光学系10aによる測定位置Mへの照射光の照射により測定位置Mから生じる測定光を受光する。受光光学系20bは、照射光学系10bによる測定位置Mへの照射光の照射により測定位置Mから生じる測定光を受光する。
【0112】
受光光学系20aにおける偏光板50の吸収軸の方向Daと、受光光学系20bにおける偏光板50の吸収軸の方向Dbとは、互いに直交する。より詳細には、受光光学系20aにおける偏光板50の吸収軸は、角度θaが角度θmaxに設定されており、受光光学系20bにおける偏光板50の吸収軸は、角度θaが角度(θmax+90°)に設定されている。
【0113】
算出部32は、測定位置Mから生じる測定光の受光光学系20aによる受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax1と、測定位置Mから生じる測定光の受光光学系20bによる受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax2との平均値を、測定対象物Sの膜厚として決定する。
【0114】
[変形例2]
なお、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101では、偏光板50は受光光学系20のみに固定的に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。偏光板50は、照射光学系10のみに固定的に設けられる構成であってもよい。
【0115】
図18は、本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0116】
図18を参照して、光学測定装置101では、受光光学系20が偏光板50を含まない一方で、照射光学系10が偏光板50を含む。
【0117】
より詳細には、たとえば、偏光板50は、ラインライトガイド12から対象領域Rまでの照射光の光路上に配置される。たとえば、偏光板50は、吸収軸の方向を調整可能であり、かつ照射光学系10との相対的な位置が固定されるように、ボルト等の固定部材を用いて当該光路上に固定される。
【0118】
調整部51は、照射光の光路に対して直交する平面上における偏光板50の吸収軸の方向を調整する。
【0119】
変形例2に係る光学測定装置101では、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101と同様に、生成したパワースペクトルPwにおいて、最も大きなピークpkを一意に検出することができ、ピークpkに対応する測定対象物Sの膜厚Fを正確に測定することができる。
【0120】
[動作の流れ]
本発明の実施の形態に係る光学測定装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0121】
図19は、本発明の第1の実施の形態の変形例1に係る光学測定装置において測定対象物の膜厚を算出する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0122】
図19を参照して、まず、光学測定装置101は、測定対象物Sの透過率分布のインライン測定を開始する前に、測定対象物Sの透過率スペクトルにフーリエ変換等の演算処理を施すことにより生成されるパワースペクトルにおいて、バックグランドに埋もれない単一のピークが現れるように、受光光学系20a,20bの各々の偏光板50の吸収軸の方向を調整する。具体的には、光学測定装置101は、測定光の光路に対して直交する平面上における、所定の基準方向と、受光光学系20aにおける偏光板50の吸収軸の方向とのなす角度θaを角度θmaxに設定する。また、光学測定装置101は、測定光の光路に対して直交する平面上における、所定の基準方向と、受光光学系20bにおける偏光板50の吸収軸の方向とのなす角度θaを角度(θmax+90°)に設定する(ステップS102)。
【0123】
次に、光学測定装置101は、インライン測定の開始後、測定を行うべきタイミングである測定タイミングを待ち受け(ステップS104でNO)、測定タイミングにおいて(ステップS104でYES)、測定対象物Sへ照射光を直線状に照射する。具体的には、光学測定装置101は、照射光学系10a,10bを用いて、測定対象物Sにおける測定位置Mへ照射光を直線状に照射する(ステップS106)。
【0124】
次に、光学測定装置101は、測定対象物Sへの照射光の照射による測定対象物Sから生じ、かつ偏光板50を透過した測定光すなわち透過光を受光する。具体的には、光学測定装置101は、受光光学系20a,20bを用いて、測定対象物Sを透過する透過光を受光する(ステップS108)。
【0125】
次に、光学測定装置101は、測定光の受光結果に基づいて、透過率スペクトルST(λ)を算出する。具体的には、光学測定装置101は、受光光学系20aによる受光結果に基づく透過率スペクトルST(λ)と、受光光学系20bによる受光結果に基づく透過率スペクトルST(λ)とを算出する(ステップS110)。
【0126】
次に、光学測定装置101は、算出した各透過率スペクトルST(λ)に基づいて、測定対象物Sの測定位置Mの膜厚を算出する。具体的には、光学測定装置101は、受光光学系20aによる受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax1と、受光光学系20bによる受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax2との平均値を、測定対象物Sの測定位置Mの膜厚として決定する(ステップS112)。
【0127】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101において、1組の照射光学系10aおよび受光光学系20aを用いて測定対象物の膜厚を算出する場合には、受光光学系20bにおける偏光板50の吸収軸の方向の設定(ステップS102)、照射光学系10bを用いた照射光の照射(ステップS106)、受光光学系20bを用いた透過光の受光(ステップS108)、および受光光学系20bによる受光結果に基づく透過率スペクトルST(λ)の算出(ステップS110)を行う必要はなく、受光光学系20aによる受光結果に基づいて算出される膜厚Fmax1を測定対象物Sの測定位置Mの膜厚として決定すればよい(ステップS112)。また、本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る光学測定装置101を用いて測定対象物の膜厚を算出する場合、光学測定装置101は、ステップS106において、測定対象物Sへ偏光板50を透過した照射光を直線状に照射し、ステップS108において、偏光板50を透過していない測定光を受光する。
【0128】
図20は、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置において偏光板の吸収軸の方向を調整する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図20は、
図19におけるステップS102の詳細を示している。
【0129】
図20を参照して、まず、光学測定装置101は、偏光板50を回転させることにより角度θaを初期値である角度θasに調整する(ステップS202)。
【0130】
次に、光学測定装置101は、測定対象物Sにおけるある測定位置Mにおける透過率スペクトルST(λ)を算出し、算出した透過率スペクトルST(λ)にフーリエ変換等の演算処理を施すことにより、パワースペクトルを生成する(ステップS204)。
【0131】
次に、光学測定装置101は、生成したパワースペクトルにおける、最も大きなピークの強度と、2番目に大きなピークの強度との差分Dを算出し、算出した差分Dを記憶部33に保存する(ステップS206)。
【0132】
次に、光学測定装置101は、ステップS204およびステップS206の処理回数が所定回数未満である場合(ステップS208でNO)、偏光板50を回転させることにより角度θaを時計回りに3度回転させた角度に調整し(ステップS210)、ステップS204およびステップS206を繰り返す。
【0133】
次に、光学測定装置101は、ステップS204およびステップS206の処理回数が所定回数に到達すると(ステップS208でYES)、差分Dが最大となるときの角度θaである角度θmaxを検出する(ステップS212)。
【0134】
次に、光学測定装置101は、角度θaが角度θmaxとなるように偏光板50を回転させる(ステップS212)。
【0135】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101では、照射光学系10は、測定対象物Sが通る直線状の領域である対象領域Rへ照射光を照射する構成であるとしたが、これに限定するものではない。照射光学系10は、点状の対象位置へ照射光を照射する構成であってもよい。
【0136】
また、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101は、調整部51を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。光学測定装置101は調整部51を備えない構成であってもよい。この場合、偏光板50の吸収軸の方向は、一例として、予め、測定光の光路に対して直交する平面上において、測定対象物Sの遅相軸Nxまたは進相軸Nyの方向に対して平行となるように固定される。
【0137】
また、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101では、調整部51は、送信部34から受信した制御信号に従って、偏光板50の吸収軸の方向を調整する構成であるとしたが、これに限定するものではない。調整部51は、自動調整に限らず、手動で偏光板50の吸収軸の方向を調整可能な機構を有する構成であってもよい。この場合、ユーザは、
図20のステップS202およびステップS210において、角度θaの調整を手動で行う。
【0138】
また、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101では、偏光板50は、対象領域Rから対物レンズ21までの測定光の光路上に配置される構成であるとしたが、これに限定するものではない。偏光板50は、対物レンズ21とスリット部221との間、スリット部221と第1レンズ222との間、または第1レンズ222と回折格子223との間に配置される構成であってもよい。
【0139】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0140】
また、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101では、偏光板50は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方のみに固定的に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。
【0141】
たとえば、光学測定装置101は、照射光学系10に設けられる偏光板50である偏光板50Aと、受光光学系20に設けられる偏光板50である偏光板50Bとを備える構成であってもよい。より詳細には、偏光板50Aは、たとえば支持クランプを有するスタンドS1により、ラインライトガイド12から対象領域Rまでの照射光の光路OP1上に配置され、偏光板50Bは、たとえば支持クランプを有するスタンドS2により、対象領域Rから対物レンズ21までの測定光の光路OP2上に配置される。この場合、測定対象物Sの膜厚測定を開始する際に、たとえば測定対象物Sの種類等に応じて、ユーザにより、偏光板50Aが光路OP1から外れた位置に移動されるか、または偏光板50Bが光路OP2から外れた位置に移動される。なお、偏光板50Aまたは偏光板50Bは、処理装置30からの制御信号を受信する図示しないアクチュエータに搭載され、当該アクチュエータの動作に伴って自動的に移動される構成であってもよい。
【0142】
また、たとえば、光学測定装置101は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方に設けられる、移動可能な偏光板50である偏光板50Cを備える構成であってもよい。より詳細には、偏光板50Cは、処理装置30からの制御信号を受信する図示しないアクチュエータに搭載され、当該アクチュエータの動作に伴って、光路OP1と光路OP2との間を自動的に移動されることにより、光路OP1上または光路OP2上に配置される。なお、偏光板50Cは、当該アクチュエータの動作に伴って、光路OP1と光路OP1から外れた所定位置との間を自動的に移動されることにより、光路OP1上または当該所定位置に配置される構成であってもよい。あるいは、偏光板50Cは、当該アクチュエータの動作に伴って、光路OP2と光路OP2から外れた所定位置との間を自動的に移動されることにより、光路OP2上または当該所定位置に配置される構成であってもよい。
【0143】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る光学測定装置101と比べて、対象領域Rから生じる反射光を用いる光学測定装置102に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る光学測定装置101と同様である。
【0144】
[光学測定装置]
図21は、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0145】
図21を参照して、光学測定装置102は、照射光学系10と、受光光学系20と、処理装置30と、調整部51と、ベース部材4と、支持部材6、偏光板50ととを備える。ベース部材4および支持部材6は、受光光学系20を固定する。なお、光学測定装置102は、ベース部材4および支持部材6を備える構成に限定されず、ベース部材4および支持部材6の代わりに、またはベース部材4および支持部材6に加えて、受光光学系20を固定するための他の部材を備える構成であってもよい。
【0146】
偏光板50は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方に位置することが可能なように構成される。たとえば、偏光板50は、照射光学系10および受光光学系20のいずれか一方のみに固定的に設けられている。
図21に示す例において、偏光板50は、受光光学系20のみに固定的に設けられている。
【0147】
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
図22は、光学測定装置102の測定対象である測定対象物Sが配置された状態を示している。
【0148】
図22を参照して、光学測定装置102は、対象領域Rを通る測定対象物Sの反射率スペクトルを測定する。
【0149】
たとえば、光学測定装置102は、測定対象物Sの製造ラインにおいて、対象領域Rを通って搬送される測定対象物S上の、複数の測定位置Mにおける反射率スペクトルを自動で測定する。すなわち、光学測定装置102は、測定対象物S上の複数の測定位置Mにおける反射率スペクトルをインラインで測定する。
【0150】
より詳細には、光学測定装置102は、たとえば周期的に反射率測定を行うことにより、搬送される測定対象物Sの測定位置Mにおける波長ごとの反射率を算出する。
【0151】
[照射光学系]
照射光学系10は、複数波長を含む照射光を測定対象物Sへ直線状に照射する。より詳細には、照射光学系10は、測定対象物Sが通る直線状の領域である対象領域Rへ照射光を照射する。
【0152】
照射光学系10のラインライトガイド12は、対象領域Rを通る測定対象物Sへの照射光の入射角がθとなるように配置される。
【0153】
[受光光学系]
受光光学系20は、測定対象物Sへの照射光の照射により測定対象物Sから生じる反射光である測定光を受光する。
【0154】
受光光学系20は、測定対象物Sに関してラインライトガイド12と同じ側であって、かつ、測定対象物Sにおける反射角がθの反射光を受光可能な位置に配置される。
【0155】
受光光学系20は、偏光板50と、対物レンズ21と、イメージング分光器22と、撮像部23とを含む。
【0156】
偏光板50は、対象領域Rから対物レンズ21までの測定光の光路上に配置される。偏光板50は、吸収軸を有する。
【0157】
受光光学系20は、ラインライトガイド12から出射された照射光のうち、測定対象物Sにおいて反射した反射光を測定光として受光する。具体的には、受光光学系20は、ラインライトガイド12から出射された照射光のうち、対象領域Rを通る測定対象物Sの反射光を受光する。
【0158】
[処理装置]
処理装置30における算出部32は、受光光学系20における測定光の受光結果に基づいて、対象領域Rにおける波長λと測定光の強度との関係である受光スペクトルS(λ)を生成する。そして、算出部32は、生成した受光スペクトルS(λ)に基づいて、対象領域Rを通る測定対象物Sの波長ごとの反射率を算出する。
【0159】
より詳細には、算出部32は、記憶部33に保存された2次元画像データに基づいて、受光スペクトルS(λ)を生成し、生成した受光スペクトルS(λ)に基づいて、測定対象物Sの波長λごとの反射率を算出する。
【0160】
たとえば、算出部32は、対象領域Rに反射板が配置された状態において、対象領域Rに配置された反射板から生じる測定光に基づく受光スペクトルS(λ)である基準スペクトルSrr(λ)、および測定対象物Sが存在するときの対象領域Rから生じる測定光に基づく受光スペクトルS(λ)である測定スペクトルSrm(λ)に基づいて、測定対象物Sの反射率スペクトルSR(λ)を算出する。
【0161】
たとえば、算出部32は、算出した反射率スペクトルSR(λ)に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する。より詳細には、算出部32は、算出した反射率スペクトルSR(λ)にフーリエ変換等の演算処理を施すことにより、パワースペクトルを生成する。そして、算出部32は、生成したパワースペクトルにおけるピーク波長に対応する光学膜厚を測定対象物Sの膜厚として決定する。
【0162】
たとえば、算出部32は、対象領域Rにおける測定点Xごとに、複数の基準スペクトルSrr(λ)および複数の測定スペクトルSrm(λ)を生成し、生成した各基準スペクトルSrr(λ)および各測定スペクトルSrm(λ)に基づいて、測定点Xごとの複数の反射率スペクトルSR(λ)を算出する。そして、算出部32は、算出した各反射率スペクトルSR(λ)に基づいて、測定対象物Sの各測定点Xにおける膜厚を示す膜厚分布を生成する。
【0163】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置102では、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る光学測定装置101と同様に、処理装置30における算出部32が、照射光の光路に対して交差する平面上における偏光板の吸収軸の方向が異なる場合の各々の測定光の受光結果に基づいて、測定対象物Sの膜厚を算出する構成であってもよい。
【0164】
[変形例1]
図23は、本発明の第2の実施の形態の変形例1に係る光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0165】
図23を参照して、ラインライトガイド12は、ハーフミラー121を有する。ラインライトガイド12は、ハーフミラー121において反射された照射光を対象領域Rに照射する。この場合、たとえば、ラインライトガイド12は、対象領域Rを通る測定対象物Sへの照射光の入射角が0°となるように、測定対象物Sが搬送される面の直上に配置される。すなわち、光学測定装置102の照射光学系10は、同軸落射照明である。
【0166】
受光光学系20は、測定対象物Sへの照射光の照射により測定対象物Sから生じる反射光を、ハーフミラー121を介して受光する。この場合、たとえば、受光光学系20は、測定対象物Sにおける反射角が0°の反射光を受光可能な位置、すなわちラインライトガイド12を挟んで対象領域Rと対向する位置に配置される。
【0167】
[変形例2]
なお、本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置102では、偏光板50は受光光学系20のみに固定的に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。偏光板50は、照射光学系10のみに固定的に設けられる構成であってもよい。
【0168】
図24は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る光学測定装置における照射光学系の構成の一例を示す図である。
【0169】
図24を参照して、光学測定装置102では、受光光学系20が偏光板50を含まない一方で、照射光学系10が偏光板50を含む。
【0170】
より詳細には、偏光板50は、ラインライトガイド12から対象領域Rまでの照射光の光路上に配置される。
【0171】
本発明の第2の実施の形態に係る光学測定装置102、変形例1に係る光学測定装置102および変形例2に係る光学測定装置102では、本発明の第1の実施の形態に係る光学測定装置101と同様に、生成したパワースペクトルPwにおいて、最も大きなピークpkを一意に検出することができ、ピークpkに対応する測定対象物Sの膜厚Fを正確に測定することができる。
【0172】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0173】
10 照射光学系
20 受光光学系
30 処理装置
31 受信部
32 算出部
33 記憶部
34 送信部
50 偏光板
51 調整部
101,102 光学測定装置