(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】シミュレーション画像生成方法、コンピュータ、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2020172510
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾上 允敏
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智祐
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-087907(JP,A)
【文献】特開2013-169291(JP,A)
【文献】特開2014-073333(JP,A)
【文献】特開2002-102177(JP,A)
【文献】特開2007-133518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0230712(US,A1)
【文献】国際公開第2018/117020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G16H 10/00-80/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、人の肌のシミュレーション画像生成方法であって、
反応拡散系の数理モデルのパラメータの値を決定し、前記反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す、ステップと、
前記決定されたパラメータの値と前記反応拡散系の数理モデルとに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出するステップと、
前記各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成するステップと
を含
み、
前記パラメータの値は、各時間の前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値を算出するための係数の値、および、時間t=0であるときの前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値である、方法。
【請求項2】
前記人の肌は、シミと、そばかすと、日光黒子と、毛穴周りのシミとのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成された画像の肌にファンデーションを塗布した状態をシミュレーションするステップ、をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
時間t=0であるときの前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値は、ユーザの肌の画像から算出され、
前記ユーザの未来または過去の肌をシミュレーションした画像を生成するステップ、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応拡散系の数理モデルは、
【数1】
であり、
Du=拡散係数、Dv=拡散係数、u=色素生成を活性化する因子、v=色素生成を不活性化する因子、t=時間、x=前記各位置のx座標、r=係数、M=係数、N=係数、d=Du/Dvであ
り、
前記決定されたパラメータの値は、Dv、M、N、r、dの値、時間t=0であるときの前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応拡散系の数理モデルのパラメータの値を決定し、前記反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す、決定部と、
前記決定されたパラメータの値と前記反応拡散系の数理モデルとに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出する算出部と、
前記各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成する生成部と
を備え
、
前記パラメータの値は、各時間の前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値を算出するための係数の値、および、時間t=0であるときの前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値である、コンピュータ。
【請求項7】
コンピュータを、
反応拡散系の数理モデルのパラメータの値を決定し、前記反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す、決定部、
前記決定されたパラメータの値と前記反応拡散系の数理モデルとに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出する算出部、
前記各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成する生成部
として機能させ
、
前記パラメータの値は、各時間の前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値を算出するための係数の値、および、時間t=0であるときの前記色素生成を活性化する因子の値および前記色素生成を不活性化する因子の値である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション画像生成方法、コンピュータ、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーションの評価等において、人の肌を模倣したシミュレーション画像が利用されている(特許文献1)。具体的には、シミュレーション画像が示す肌にファンデーションを塗布した場合に肌の見た目がどのように改善されるかをコンピュータがシミュレーションする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の人の肌のシミュレーション画像の生成では、人の肌に存在するシミ等の肌色の濃淡を表現するには、円等の領域を指定して、それらの領域の濃度を上げるしかなかった。したがって、シミ等の肌色の濃淡を実物のように再現することができず、
図1に示されるような不自然なシミュレーション画像しか生成することができなかった。
【0005】
そこで、本発明では、人の肌の自然なシミュレーション画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る方法は、コンピュータが実行する、人の肌のシミュレーション画像生成方法であって、反応拡散系の数理モデルのパラメータの値を決定し、前記反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す、ステップと、前記決定されたパラメータの値と前記反応拡散系の数理モデルとに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出するステップと、前記各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人の肌の自然なシミュレーション画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来のシミュレーション画像でのシミを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の例である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の違いを説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の変化(時間発展)を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る日光黒子の発生の時間発展を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る太陽光による光ダメージの時間発展を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る変数Nの依存性について説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る毛穴周りのシミのシミュレーション画像である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成処理のフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係るファンデーションシミュレーション処理のフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る過去・未来のシミュレーション画像生成処理のフローチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成装置の機能ブロック図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
まず、
図2~
図8を参照しながら、シミ等の肌色の濃淡(色ムラ)を表現する仕組みについて説明する。
【0011】
本発明では、GiererとMeinhardtにより提唱されたモデル(A.Gierer and H. Meinhardt, "A Theory of Biological Pattern Formation", Kybernetik 12, 30-39(1972))を無次元化して用いる。具体的には、GiererとMeinhardtにより提唱されたモデルでのxをL(単位:長さ)で割ったx'(=x/L)を、本発明の反応拡散系数理モデル(下記の数理モデル(1))におけるxとする。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の例である。本発明の一実施形態では、
図2に示されるようなシミュレーション画像を生成することができる。
図2の(A)と(A')は、そばかすを有する肌のシミュレーション画像であり、(B)は、日光黒子を有する肌のシミュレーション画像であり、(C)と(C')は、毛穴周りのシミを有する肌のシミュレーション画像である。なお、後述するように、パラメータの値を変えることによって、(A)と(A')や(C)と(C')のように、種々のシミュレーション画像を生成することができる。以下、<そばかす>、<日光黒子>、<毛穴周りのシミ>に分けて説明する。
【0013】
<そばかす>
本発明の一実施形態では、反応拡散系の数理モデル
【0014】
【数1】
・・・数理モデル(1)
を用いて、そばかすを有する肌のシミュレーション画像を生成することができる。ここで、Du=拡散係数、Dv=拡散係数、u=色素生成を活性化する因子、v=色素生成を不活性化する因子、t=時間、x=各位置のx座標、r=係数、M=係数、N=係数、d=Du/Dvである。なお、数理モデル(1)を多次元化(例えば、2次元(x、y座標))することができる。
【0015】
そばかすの場合、拡散係数Dvが0.00~0.54のランダムな値であることが好ましい。具体的には、t=0のときの各メッシュ点での拡散係数Dvの値をランダムに決定する。拡散係数Dvをランダムな値にすることによって、各メッシュ点で異なる値(2次元の場合には、x、y共に)を算出することができる。なお、GiererとMeinhardtにより提唱されたモデルでは、拡散係数Dvは一定である(つまり、ランダムな値ではない)。
【0016】
また、上記の数理モデル(1)において、各メッシュ点で拡散係数Dvの値が違うので、拡散項に
【0017】
【数2】
・・・拡散項(1)
を加えるべきである。しかしながら、本発明では、シミ等の非一様性を表現するために、数理モデル(1)に拡散項(1)を加えずに近似している(近似条件とも呼ぶ)。
【0018】
図3を参照しながら、Dvのランダムの有無、および、近似条件の有無によるシミュレーション画像の違いについて説明する。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の違いを説明するための図である。
図3の(A)は、Dvがランダムではない場合のシミュレーション画像である。また、
図3の(C)は、近似条件がない(つまり、拡散項に
【0020】
【数3】
を加えている)場合のシミュレーション画像である。また、
図3の(B)は、Dvがランダムであり、かつ、拡散項に
【0021】
【数4】
を加えずに近似している場合のシミュレーション画像である。このように、
図3の(B)の場合のみ、十分な非一様性を得ることができることが分かる。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像の変化(時間発展)を説明するための図である。
図4の(1)(2)(3)の順に時間が進むものとする。
図4の(1)では、明らかなパターンはない。
図4の(2)では、少しパターンが形成される。
図4の(3)では、明らかなパターン(そばかす)が形成される。dの値を大きくした場合(つまり、u、vの拡散係数Du、Dvの値が同じぐらいになった場合)、パターンは形成されずに不活性の状態に戻る。
【0023】
<パラメータの一例>
図2の(A)では、次のようなパラメータの値を用いた。なお、一辺の長さやその時のメッシュ数は、拡散係数(Dv、Du)との関係で決まる。
・メッシュ数:201*201
・一辺の長さ:4.0
・r=1.0
・M=10.0
・N=50.0
・d=Du/Dv=0.02
【0024】
なお、
図2の(A')では、Dvを(A)の場合の4倍とした。
【0025】
<日光黒子>
<日光黒子>の場合も、<そばかす>の場合と同様の数理モデル(1)を用いる。ただし、日光黒子の場合、拡散係数Dvはランダムではない。日光黒子の場合、拡散係数Dvをランダムにすることでは色素(例えば、メラニン)は活性化しない。
【0026】
日光黒子の場合、拡散係数Dvが一定であり、dの値が大きい。この条件では、色素(例えば、メラニン)が一旦活性化しても、時間経過により元の状態に戻る(つまり、不活性化する)。日光黒子の原因の一つは、太陽光による老化である。太陽光によるダメージを示す数値が所定の値を超えると、Mの値を一定の範囲内で減少させる。これにより、uの値が増加し固定化される。減少の度合いは、0.1~0.3倍とランダムである。また、形状が円とならないように範囲をランダムに決めて、その範囲においてのみMを減少させる。中心が、太陽光によるダメージが臨界値を超えた点である。
【0027】
太陽光の照射条件は、ランダムに当たり、光量は時間経過で積もっていくことがある。ガウシアン分布に従い周りにも太陽光の影響を及ぼす太陽光の量でメラニンは活性化する。
【0028】
図5および
図6は、日光黒子の発生の時間発展と太陽光による光ダメージ(老化)の時間発展を説明するための図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る日光黒子の発生の時間発展を説明するための図である。太陽光に当たると、色素(例えば、メラニン)生成を活性化する因子uが増加する。太陽光が蓄積され、臨界値を超えると、日光黒子となる(つまり、この時点でパラメータMが変わると考えられる)。
図5に示されるように、臨界値を超える前は、色素(例えば、メラニン)は活性化して元の状態に戻るというプロセスを繰り返す。そして、臨界値を一旦超えると、日光黒子が発生する。
図6は、本発明の一実施形態に係る太陽光による光ダメージ(老化)の時間発展を説明するための図である。
図6では、光ダメージ(老化)は中心の四角部分に強くなるようにしている。
【0029】
<パラメータの一例>
図2の(B)では、次のようなパラメータの値を用いた。なお、一辺の長さやその時のメッシュ数は、拡散係数(Dv、Du)との関係で決まる。
・メッシュ数:201*201
・一辺の長さ:4.0
・r=1.0
・M=20.0
・N=50.0
・d=Du/Dv=0.1
【0030】
<毛穴周りのシミ>
<毛穴周りのシミ>の場合、毛穴の位置をランダムに決定する。色素(例えば、メラニン)が大きく分布する毛穴をランダムに決定する。色素(例えば、メラニン)の分布を計算する。この色素(例えば、メラニン)の分布を計算するための式は、<そばかす>の場合と同様の数理モデル(1)を用いる。
【0031】
<毛穴周りのシミ>の場合、次のようなパラメータの値を用いた。
・Dv=0.0~7.0
・N=10.0(毛穴外で消える条件)
・選ばれた毛穴で
N=0~100(一辺の長さの範囲は0.15~0.95)
それ以外の毛穴で
N=35(一辺の長さの範囲は0.15)
【0032】
つまり、選ばれた毛穴では、Nの値を0~100の間でランダムに変える。このとき、Nの値を変える範囲を0.15~0.95の間でランダムに変える。それ以外の毛穴では、Nの値を35にする。このとき、毛穴周りの狭い範囲のみに色素(例えば、メラニン)があるという状態を表現するために、範囲を0.15にする。
【0033】
図7は、本発明の一実施形態に係る変数Nの依存性について説明するための図である。Nの値を変えることで(具体的には、
図7の(A)では35、(B)では50、(C)では65、(D)では75)大きくボヤっとしたパターンを作ることができた。この性質を用いて毛穴周りの色ムラを作り出す。具体的には、(D)の枠の範囲内のみでNを変化させて、それ以外の部分でN=10とする(他のパラメータは、Dv=2.5、M=10、d=0.025)。
【0034】
図8は、本発明の一実施形態に係る毛穴周りのシミのシミュレーション画像である。
図8の(A)は実物の肌の画像であり、
図8の(B)はシミュレーション画像である。パラメータを調整することによって、リアルな毛穴周りの色ムラを再現できていることが分かる。
【0035】
<パラメータの一例>
図2の(C)では、次のようなパラメータの値を用いた。なお、一辺の長さやその時のメッシュ数は、拡散係数(Dv、Du)との関係で決まる。
・メッシュ数:101*101
・一辺の長さ:6.0
・r=1.0
・M=10.0
・d=Du/Dv=0.02
【0036】
なお、
図2の(C')では、毛穴周りの境界条件を(C)の場合から変更した。
【0037】
<方法>
以下、
図9を参照しながら、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成処理について説明する。また、
図10を参照しながら、第1の実施形態であるファンデーションシミュレーション処理について説明する。また、
図11を参照しながら、第2の実施形態である過去・未来のシミュレーション画像生成処理について説明する。なお、
図9~
図11の処理は、後述するシミュレーション画像生成装置10によって実行される。
【0038】
図9は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成処理のフローチャートである。
【0039】
ステップ11(S11)において、シミュレーション画像生成装置10は、反応拡散系の数理モデル
【0040】
【数5】
・・・数理モデル(1)
のパラメータの値を決定する。ここで、Du=拡散係数、Dv=拡散係数、u=色素生成を活性化する因子、v=色素生成を不活性化する因子、t=時間、x=各位置のx座標、r=係数、M=係数、N=係数、d=Du/Dvである。なお、数理モデル(1)を多次元化(例えば、2次元(x、y座標))することができる。シミュレーション画像生成装置10は、パラメータであるDv、M、N、r、d、u(x,0)、v(x,0)の値を決定する。
【0041】
上述したように、この反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す。
【0042】
ステップ12(S12)において、シミュレーション画像生成装置10は、S11で決定されたパラメータと反応拡散系の数理モデル(1)とに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出する。具体的には、シミュレーション画像生成装置10は、反応拡散系の数理モデル(1)のu(x,t)、v(x,t)を計算して、肌上の各位置の濃度を算出する。
【0043】
ステップ13(S13)において、シミュレーション画像生成装置10は、S12の各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成する。
【0044】
図10は、本発明の一実施形態に係るファンデーションシミュレーション処理のフローチャートである。
【0045】
ステップ21(S21)において、シミュレーション画像生成装置10は、シミュレーション画像生成装置10の操作者によって入力された値を、パラメータの値として決定する。具体的には、シミュレーション画像生成装置10は、反応拡散系の数理モデル
【0046】
【数6】
・・・数理モデル(1)
のパラメータの値の入力を受け付ける。ここで、Du=拡散係数、Dv=拡散係数、u=色素生成を活性化する因子、v=色素生成を不活性化する因子、t=時間、x=各位置のx座標、r=係数、M=係数、N=係数、d=Du/Dvである。なお、数理モデル(1)を多次元化(例えば、2次元(x、y座標))することができる。シミュレーション画像生成装置10は、パラメータであるDv、M、N、r、d、u(x,0)、v(x,0)の値の入力を受け付ける。
【0047】
上述したように、この反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す。
【0048】
ステップ22(S22)において、シミュレーション画像生成装置10は、S21で決定されたパラメータと反応拡散系の数理モデル(1)とに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出する。具体的には、シミュレーション画像生成装置10は、反応拡散系の数理モデル(1)のu(x,t)、v(x,t)を計算して、肌上の各位置の濃度を算出する。
【0049】
具体的には、シミュレーション画像生成装置10の操作者は、tをゼロから正の方向へ動かし、所望のシミュレーション画像が生成されるtを決定する。そうすると、シミュレーション画像生成装置10は、反応拡散系の数理モデル(1)のu(x,t)、v(x,t)を計算して、肌上の各位置の濃度を算出する。
【0050】
ステップ23(S23)において、シミュレーション画像生成装置10は、S22の各位置の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成する。
【0051】
ステップ24(S24)において、シミュレーション画像生成装置10は、S23で生成された画像の肌にファンデーションを塗布した状態をシミュレーションする。
【0052】
このように、ファンデーションシミュレーション処理では、シミュレーション画像が示すシミ等の肌色の濃淡を実物のように再現した肌にファンデーションを塗布した場合、肌の見た目がどのように改善されるかをコンピュータがシミュレーションすることができる。
【0053】
図11は、本発明の一実施形態に係る過去・未来のシミュレーション画像生成処理のフローチャートである。ユーザの過去および未来の肌のシミュレーション画像を生成するものとする。
【0054】
ステップ31(S31)において、シミュレーション画像生成装置10は、ユーザの肌(例えば、顔の肌)を撮影した画像からu(x,0)、v(x,0)の値を算出する。そして、シミュレーション画像生成装置10は、算出したu(x,0)、v(x,0)の値を、反応拡散系の数理モデル
【0055】
【数7】
・・・数理モデル(1)
のパラメータの値として決定する。ここで、Du=拡散係数、Dv=拡散係数、u=色素生成を活性化する因子、v=色素生成を不活性化する因子、t=時間、x=各位置のx座標、r=係数、M=係数、N=係数、d=Du/Dvである。なお、数理モデル(1)を多次元化(例えば、2次元(x、y座標))することができる。さらに、シミュレーション画像生成装置10は、シミュレーション画像生成装置10の操作者によって入力されたDv、M、N、r、dの値を、パラメータの値として決定する。
【0056】
なお、本発明の一実施形態では、シミュレーション画像生成装置10が、u(x,0)、v(x,0)だけでなく、Dv、M、N、r、dのうちの一部または全部の値を、ユーザの肌(例えば、顔の肌)を撮影した画像から算出するようにしてもよい。
【0057】
上述したように、この反応拡散系の数理モデルは、色素生成を活性化する因子および色素生成を不活性化する因子の反応および拡散の経時的な変化を示す。
【0058】
ステップ32(S32)において、シミュレーション画像生成装置10は、S31で決定されたパラメータと反応拡散系の数理モデル(1)とに基づいて、肌上の各位置の濃度を算出する。具体的には、シミュレーション画像生成装置10は、tを正の方向(未来の場合)または負の方向(過去の場合)へ動かし、反応拡散系の数理モデル(1)のu(x,t)、v(x,t)を計算して、肌上の各位置の濃度を算出する。
【0059】
ステップ33(S33)において、シミュレーション画像生成装置10は、S32の各位置の濃度に基づいて、S31の画像のユーザの過去および未来の肌をシミュレーションした画像を生成する。
【0060】
このように、過去・未来のシミュレーション画像生成処理では、現在のユーザの肌の状態に基づいて、そのユーザの過去および未来のシミ等の肌色の濃淡を再現することができる。
【0061】
<シミ形成の過程>
本発明の一実施形態では、tをゼロから正の方向へ動かすことによって、シミ等の肌色の濃淡(色ムラ)が形成されていく過程をシミュレーションすることができる。具体的には、tをゼロから正の方向へ動かしたときの各tにおけるシミュレーション画像の変化により、シミ等の肌色の濃淡(色ムラ)が形成されていく過程を表現することができる。
【0062】
<機能ブロック>
図12は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成装置10の機能ブロック図である。シミュレーション画像生成装置10は、パラメータ受付部101と、パラメータ算出部102と、パラメータ決定部103と、シミュレーション画像生成部104と、ファンデーションシミュレーション部105とを備える。また、シミュレーション画像生成装置10は、プログラムを実行することで、パラメータ受付部101、パラメータ算出部102、パラメータ決定部103、シミュレーション画像生成部104、ファンデーションシミュレーション部105として機能する。
【0063】
パラメータ受付部101は、パラメータの値を受け付ける。具体的には、パラメータ受付部101は、シミュレーション画像生成装置10の操作者によって入力されたパラメータの値を受け付ける。
【0064】
パラメータ算出部102は、パラメータの値を算出する。具体的には、パラメータ算出部102は、ユーザの肌(例えば、顔の肌)を撮影した画像からu(x,0)、v(x,0)の値(1次元の場合。なお、上述したように、数理モデル(1)を多次元化(例えば、2次元(x、y座標))することができる)を算出する。
【0065】
パラメータ決定部103は、パラメータの値を決定する。具体的には、パラメータ決定部103は、パラメータ受付部101が受け付けた値およびパラメータ算出部102が算出した値をパラメータの値として決定する。
【0066】
シミュレーション画像生成部104は、人の肌のシミュレーション画像を生成する。具体的には、シミュレーション画像生成部104は、パラメータ決定部103が決定したパラメータと反応拡散系の数理モデル
【0067】
【数8】
・・・数理モデル(1)
とに基づいて、肌上の各位置(例えば、2次元(x、y座標))の濃度を算出する。また、シミュレーション画像生成部104は、各位置(例えば、2次元(x、y座標))の濃度に基づいて、人の肌をシミュレーションした画像を生成する。
【0068】
ファンデーションシミュレーション部105は、シミュレーション画像生成部104が生成した画像の肌にファンデーションを塗布した状態をシミュレーションする。
【0069】
<ハードウェア構成>
図13は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション画像生成装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。シミュレーション画像生成装置10は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0070】
また、シミュレーション画像生成装置10は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007、ドライブ装置1008を有することができる。なお、シミュレーション画像生成装置10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0071】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0072】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムをCPU1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0073】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0074】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0075】
表示装置1005は、シミュレーション画像生成装置10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0076】
操作装置1006は、シミュレーション画像生成装置10の管理者がシミュレーション画像生成装置10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0077】
I/F装置1007は、ネットワークに接続し、他の機器と通信を行うための通信デバイスである。
【0078】
ドライブ装置1008は記憶媒体1009をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体1009には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体1009には、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0079】
なお、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体1009がドライブ装置1008にセットされ、該記憶媒体1009に記録された各種プログラムがドライブ装置1008により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、I/F装置1007を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0080】
<効果>
このように、本発明の一実施形態では、人の肌の自然なシミュレーション画像を生成することができる。例えば、本発明の一実施形態では、人の肌に存在するシミと、そばかすと、日光黒子と、毛穴周りのシミとのうちの少なくとも1つを本物のように再現することができる。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 シミュレーション画像生成装置
101 パラメータ受付部
102 パラメータ算出部
103 パラメータ決定部
104 シミュレーション画像生成部
105 ファンデーションシミュレーション部
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 ドライブ装置
1009 記憶媒体