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特許7522002発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル、及び自発光表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル、及び自発光表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/10 20230101AFI20240717BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240717BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240717BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 59/123 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 85/20 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
H10K85/10
G09F9/00 347Z
G09F9/30 365
H10K30/30
H10K30/50
H10K30/85
H10K30/86
H10K50/12
H10K59/123
H10K85/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020179379
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070358
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 裕紀
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-182333(JP,A)
【文献】国際公開第2006/103863(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0050878(US,A1)
【文献】特表2019-518302(JP,A)
【文献】特表2002-531958(JP,A)
【文献】国際公開第2011/037041(WO,A1)
【文献】特開2019-080064(JP,A)
【文献】特開平9-022778(JP,A)
【文献】特開2017-054601(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0024097(KR,A)
【文献】特開2012-037703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H10K 50/15
G09F 9/30
G09F 9/00
H10K 30/30
H10K 30/50
H10K 30/85
H10K 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配された陽極、及び陰極と、
前記陽極、及び前記陰極に挟まれた、発光材料を含む発光層とを備え、
前記発光層は、所定値以上の密度で前記発光層にホール輸送性材料及び電子輸送性材料とが混合されてなる混合部を有し、
前記陰極から供給される電子と、前記陽極から供給されるホールとの前記発光層中における再結合に基づいて前記発光材料から光が放出される発光動作と、
入射光に基づき、前記発光材料において生成された励起子が電子とホールとに分離されて、電子は前記陰極に供給され、ホールは前記陽極に供給される発電動作とを行う、
発電機能付き自発光素子。
【請求項2】
前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陽極側の境界近傍における密度が最も高い
請求項1に記載の発電機能付き自発光素子。
【請求項3】
前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陰極側の境界近傍における密度が最も高い
請求項1に記載の発電機能付き自発光素子。
【請求項4】
前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陰極側の境界及び前記陰極側の境界から離れた位置における密度が最も高い
請求項1に記載の発電機能付き自発光素子。
【請求項5】
前記発光層における前記混合部は、前記発光層の厚み方向の全域にわたって存在する
請求項1に記載の発電機能付き自発光素子。
【請求項6】
さらに、前記発光層と前記陽極との間に、前記ホール輸送性材料を含むホール輸送層と、
前記発光層と前記陰極との間に、前記電子輸送性材料を含む電子輸送層とを備えた
請求項1~5の何れか1項に記載の発電機能付き自発光素子。
【請求項7】
基板と、前記基板の上方に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の発電機能付き自発光素子を複数、行列状に配列し、行方向に隣接する自発光素子における前記発光層は、列方向に延在するバンクによって仕切られている
発電機能付き自発光表示パネル。
【請求項8】
前記発電機能付き自発光素子が、前記基板上の表示領域全体に配されている
請求項7に記載の発電機能付き自発光表示パネル。
【請求項9】
前記発電機能付き自発光素子が、前記基板上の表示領域の一部に配されている
請求項7に記載の発電機能付き自発光表示パネル。
【請求項10】
請求項7~9の何れか1項に記載の発電機能付き自発光表示パネルと、
さらに、前記陽極、及び前記陰極に接続された電源回路を備え、
前記発光動作時には、電子は前記電源回路から前記陰極を介して前記発光層に供給され、ホールは前記電源回路から前記陽極を介して前記発光層に供給され、
前記発電動作時には、電子は前記電子輸送性材料により前記陰極を介して前記電源回路に供給され、ホールは前記ホール輸送性材料により前記陽極を介して前記電源回路に供給される
発電機能付き自発光表示装置。
【請求項11】
前記表示動作と前記発電動作とは時間選択的に行われ、
表示装置として使用されていない時に、外光により発電した電力を他の機能の駆動に用いる、又は、蓄電する
請求項10に記載の発電機能付き自発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル及び自発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた自発光型のディスプレイとして、基板上に行列方向に沿って有機EL素子を複数配列した有機ELパネルが、電子機器のディスプレイ装置として実用化されている。各有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極対の間に有機発光材料を含む有機発光層を含む、電子輸送層等の各種の機能層が複数積層された基本構造を有し、駆動時に一対の電極対間に電圧を印加し、陽極から有機発光層に注入されるホールと、陰極から有機発光層に注入される電子との再結合に伴って、有機材料固有の波長をもって発光する電流駆動型の発光素子である。
【0003】
そして、このようなディスプレイ装置に発電機能を付加することにより、装置の省電力化に資する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、基板の表裏両面に、有機太陽電池に相当する発電ユニットと有機ELデバイスに相当する発光ユニットをそれぞれ配置し、片面からの光入射で発電し、この電力を有機ELデバイスの駆動に使用する有機ハイブリッドデバイスが提案されている。また、特許文献2では、表示領域に、発光領域を有する発光素子と検出素子を配して、光発電機能を備えた表示装置の大型化を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-140317号公報
【文献】特開2018-045034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL素子は光電変換素子としての特性も有し、外部からの光入射により有機材料内で電荷(電子、ホール)が発生し、発生した電荷を外部に取り出すことができれば電力として利用することができる。しかしながら、従来の自発光表示パネルでは、有機電界発光機能を利用するだけで、この光電変換機能は利用されていない。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであって、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して発電ができる光発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル及び自発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る発電機能付き自発光素子は、対向して配された陽極、及び陰極と、前記陽極、及び前記陰極に挟まれた、発光材料を含む発光層とを備え、前記発光層は、前記発光材料、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料を含む混合部を有し、前記陰極から供給される電子と、前記陽極から供給されるホールとの前記発光層中における再結合に基づいて前記発光材料から光が放出される発光動作と、入射光に基づき、前記発光材料において生成された励起子が電子とホールとに分離されて、電子は前記陰極に供給され、ホールは前記陽極に供給される発電動作とを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記態様に係る発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル及び自発光表示装置によれば、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る有機EL表示パネル10の平面図である。
図2】有機EL表示パネル10の画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。
図3図2のA-A線に沿った有機EL表示パネル10の模式断面図である。
図4】有機EL素子2の積層構造を示す模式図である。
図5】(a)~(d)は、有機EL素子2における発光層に形成された混合部の態様を示す模式図である。
図6】(a)(b)は、有機EL素子2の混合部17aに含まれるホール輸送性材料及び電子輸送性材料を構成する材料の分子構造を示す概略図である。
図7】(a)(b)は、それぞれ、発光動作時及び発電動作時における、有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位が適切にバランスされている状態を示す概略図である。
図8】(a)(b)(c)は、有機EL素子2の有機発光層17における発電動作を説明するための模式図である。
図9】有機EL表示パネル10の製造工程を示すフローチャートである。
図10】(a)~(d)は、有機EL表示パネル10の製造過程を模式的に示す部分断面図である。
図11】(a)~(d)は、図10に続く製造過程を模式的に示す部分断面図である。
図12】(a)、(b)は、図11に続く製造過程を模式的に示す部分断面図である。
図13】(a)~(d)は、図12に続く製造過程を模式的に示す部分断面図である。
図14】実施の形態に係る有機EL表示装置の回路構成を示す模式ブロック図である。
図15】有機EL表示装置に用いる有機EL表示パネル10の各副画素100seにおける回路構成を示す模式回路図である。
図16】(a)(b)は、実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路構成を示す模式図である。
図17】変形例1に係る有機EL表示パネルの概要を説明するための模式図である。
図18】変形例2に係る有機EL表示パネルの概要を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本実施の形態に係る発電機能付き自発光素子は、対向して配された陽極、及び陰極と、前記陽極、及び前記陰極に挟まれた、発光材料を含む発光層とを備え、前記発光層は、前記発光材料、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料を含む混合部を有し、前記陰極から供給される電子と、前記陽極から供給されるホールとの前記発光層中における再結合に基づいて前記発光材料から光が放出される発光動作と、入射光に基づき、前記発光材料において生成された励起子が電子とホールとに分離されて、電子は前記陰極に供給され、ホールは前記陽極に供給される発電動作とを行うことを特徴とする。
【0011】
係る構成により、有機発光層中において、有機発光材料にホール輸送性材料と電子輸送性材料とが混合されている構成では、光入射によって生成した励起子が再結合する前にホールと電子に分離されて、電子は電子輸送層に供給され、ホールはホール輸送層に供給され、それぞれ陰極、陽極から外部に取り出される。
【0012】
そのため、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができ、発電素子を新たにパネルに搭載することなく、発光素子そのものを発電素子として利用するため、装置が大掛かりになることを抑制できる。
【0013】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陽極側の境界近傍における密度が最も高い構成としてもよい。
【0014】
係る構成により、自発光素子の混合部は、光面(受光面)に近いため高い光発電効率が期待できる。
【0015】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陰極側の境界及び前記陰極側の境界から離れた位置における密度が最も高い構成としてもよい。また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記ホール輸送性材料及び前記電子輸送性材料は、前記発光層中における前記陰極側の境界近傍における密度が最も高い構成としてもよい。
【0016】
係る構成により、有機発光層の厚み方向において発光動作時にホールと電子との再結合が起こる位置を避けて、発光動作時における発光効率が最適となる位置に混合部を配置することができる。これにより、ディスプレイとしての発光効率との兼ね合いによって、混合部の位置を変えた自発光素子の態様を実現できる。
【0017】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発光層における前記混合部は、前記発光層の厚み方向の全域にわたって存在する構成としてもよい。
【0018】
係る構成により、有機材料内で電荷(電子、ホール)が発生し、発生した電荷を効率的に外部に取り出すことができる。
【0019】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、さらに、前記発光層と前記陽極との間に、前記ホール輸送性材料を含むホール輸送層と、前記発光層と前記陰極との間に、前記電子輸送性材料を含む電子輸送層とを備えた構成としてもよい。
【0020】
係る構成により、良好なキャリアバランスが保たれて発光層に注入される電子とホールとが量的に均衡することで、電子とホールとが過不足が少なく再結合される。そのため、残余のホール又は電子が発生することが少なく、多くのホール及び電子を発光に寄与させることができ有機EL素子の発光効率を最適化することができる。
【0021】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、基板と、前記基板の上方に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の発電機能付き自発光素子を複数、行列状に配列し、行方向に隣接する自発光素子における前記発光層は、列方向に延在するバンクによって仕切られている発電機能付き自発光表示パネルとしてもよい。
【0022】
係る構成により、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができる発電機能付き自発光表示装置を構成できる発電機能付き自発光表示パネルを構成できる。
【0023】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発電機能付き自発光素子が、前記基板上の表示領域全体に配されている構成としてもよい。
【0024】
係る構成により、ディスプレイの表示領域に配された自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができ、発光素子そのものを発電素子として利用することができる。そのため、発電素子を新たにパネルに搭載することなく、装置が大掛かりになることを抑制できる。
【0025】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発電機能付き自発光素子が、前記基板上の表示領域の一部に配されている構成としてもよい。
【0026】
係る構成により、基板面内の中央領域には、発電機能を備えていない自発光専用素子を配することができる。
【0027】
また、別の態様では、上記何れかの態様の発電機能付き自発光表示パネルと、さらに、前記陽極、及び前記陰極に接続された電源回路を備え、前記発光動作時には、電子は前記電源回路から前記陰極を介して前記発光層に供給され、ホールは前記電源回路から前記陽極を介して前記発光層に供給され、前記発電動作時には、電子は前記電子輸送性材料により前記陰極を介して前記電源回路に供給され、ホールは前記ホール輸送性材料により前記陽極を介して前記電源回路に供給される発電機能付き自発光表示装置としてもよい。
【0028】
係る構成により、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができる発電機能付き自発光表示装置を構成できる。
【0029】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記表示動作と前記発電動作とは時間選択的に行われ、表示装置として使用されていない時に、外光により発電した電力を他の機能の駆動に用いる、又は、蓄電する自発光表示装置としてもよい。
【0030】
係る構成により、非使用時は環境光により発電し、得られた電力をディスプレイの別機能を駆動させるために用いる、あるいは、蓄電させることで、これまでのディスプレイに発電機能という付加価値を持たせることができる。
【0031】
≪実施の形態≫
<有機EL表示パネル10の概要>
有機ELディスプレイは、構成する有機薄膜に外部から電流を印加することにより得られる発光を利用したものであるが、一方で有機ELに用いられる有機材料は外部から光を受けると発電する光発電機能も一般的に持ち合わせている。この特性を利用し、通常の使用時はディスプレイとして従来通り発光機能のみを利用する一方、非使用時は環境光を受けることにより発電し、得られた電力をディスプレイの別機能を駆動させるために用いる、もしくは蓄電させることで、ディスプレイに発電機能という付加価値を持たせることができる。
【0032】
本開示の一態様に係る有機EL表示パネル10(以後、「表示パネル10」とする場合がある)は、発光動作と発電動作とを選択的に行う機能を有する。
【0033】
以下、本開示の一態様に係る有機EL素子および有機EL表示パネル、有機EL表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は、模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
【0034】
<表示パネル10の全体構成>
有機EL表示パネル10は、本実施の形態では、トップエミッション型の表示パネルであり、画像表示面に沿って複数の有機EL素子(不図示)が配列され、各有機EL素子の発光を組み合わせて画像を表示する。
【0035】
図1は、実施の形態1に係る表示パネル10の平面図である。図2は、図1におけるA部の拡大図である。表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL表示パネルであって、基板11上に配された平坦化層12の上面に、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。同図に示すように表示パネル10は、平面視したとき、基板11面の中央Oを含む所定の範囲に相当する中央領域10a(第1の領域)と、基板11面内の中央領域10aの面外方に位置する周辺領域10b(第2の領域)とに区分される。ここで、基板11における中央領域10aのX方向及びY方向の寸法は、表示パネル10のX方向及びY方向の寸法に対し、それぞれ、例えば、50%以上90%以下としてもよい。また、基板11において、周辺領域10bのX方向及びY方向の寸法は、中心線CLに対しX-Y方向の片側において、表示パネル10のX方向及びY方向の寸法に対し、それぞれ、例えば、5%より大きく25%未満としてもよい。
【0036】
(A)平面構成
図2は、有機EL表示パネル10の画像表示面のA部を拡大した模式平面図である。有機EL表示パネル10では、一例として、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)(以下、単にR、G、Bともいう。)にそれぞれ発光する副画素100R、100G、100Bが行列状に配列されている。副画素100R、100G、100Bは、X方向に交互に並び、X方向に並ぶ一組の副画素100R、100G、100Bが、一つの画素Pを構成している。画素Pでは、階調制御された副画素100R、100G、100Bの発光輝度を組み合わせることにより、フルカラーを表現することが可能である。
【0037】
また、Y方向においては、副画素100R、副画素100G、副画素100Bのいずれかのみが並ぶことでそれぞれ副画素列CR、副画素列CG、副画素列CBが構成されている。これにより、有機EL表示パネル10全体として画素Pが、X方向及びY方向に沿った行列状に並び、この行列状に並ぶ画素Pの発色を組み合わせることにより、画像表示面に画像が表示される。
【0038】
副画素100R、100G、100B(まとめて「副画素100」と表記する場合がある)には、それぞれR、G、Bの色に発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)(図3参照、まとめて「有機EL素子2」と表記する場合がある)が配置されている。
【0039】
また、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、いわゆるラインバンク方式を採用している。すなわち、副画素列CR、CG、CBを1列ごとに仕切る隔壁(バンク)14がX方向に間隔をおいて複数配置され、各副画素列CR、CG、CBでは、副画素100R、100G、100Bが、有機発光層を共有している。
【0040】
ただし、各副画素列CR、CG、CBでは、副画素100R、100G、100B同士を絶縁する画素規制層141がY方向に間隔をおいて複数配置され、各副画素100R、100G、100Bは、独立して発光することができるようになっている。
【0041】
(B)断面構成
図3は、図2のA-A線に沿った有機EL表示パネル10の模式断面図である。図4は、有機EL素子2の積層構造を示す模式図である。有機EL表示パネル10において、一つの画素は、R、G、Bをそれぞれ発光する3つの副画素からなり、各副画素は、対応する色を発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)で構成される。各発光色の有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)は、基本的には、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子2として説明する。
【0042】
図3に示すように、有機EL素子2は、基板11、平坦化層12、画素電極(陽極)13、隔壁14、ホール注入層15、ホール輸送層16、有機発光層17、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極(陰極)20、および、封止層21とからなる。このうち、相対する一対の画素電極13及び対向電極20に挟まれた、ホール注入層15、ホール輸送層16、有機発光層17、電子輸送層18、電子注入層19が、発光素子2の機能層を構成する。
【0043】
基板11、平坦化層12、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル10が備える複数の有機EL素子2に共通して形成されている。
【0044】
(基板)
基板11は、基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、副画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0045】
プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0046】
フレキシブルな有機EL表示パネルを製造するためには、基板はプラスチック材料であることが望ましい。
【0047】
(平坦化層)
平坦化層12は、基板11上に形成されている。平坦化層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図3の断面図には示されていないが、平坦化層12には、副画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
【0048】
(画素電極)
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、平坦化層12上に形成されている。画素電極13は、副画素ごとに設けられ、コンタクトホール(不図示)を通じてTFT層112と電気的に接続されている。本実施の形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
【0049】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)などが挙げられる。画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0050】
(隔壁・画素規制層)
隔壁14は、基板11の上方に副画素ごとに配置された複数の画素電極13を、X方向(図2参照)において列毎に仕切るものであって、X方向に並ぶ副画素列CR、CG、CBの間においてY方向に延伸するラインバンク形状である。隔壁14には、電気絶縁性材料が用いられる。電気絶縁性材料の具体例として、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)が用いられる。
【0051】
隔壁14は、有機発光層17を塗布法で形成する場合に塗布された各色のインクが溢れて混色しないようにするための構造物として機能する。なお、樹脂材料を用いる際は、加工性の観点から感光性を有することが好ましい。隔壁14は、有機溶媒や熱に対する耐性を有することが好ましい。また、インクの流出を抑制するために、隔壁14の表面は所定の撥液性を有することが好ましい。
【0052】
画素規制層141は、電気絶縁性材料からなり、各副画素列においてY方向(図2)に隣接する画素電極13の端部を覆い、当該Y方向に隣接する画素電極13同士を仕切っており、各副画素列CR、CG、CBにおける有機発光層17の段切れ抑制、画素電極13と対向電極20との間の電気絶縁性の向上などの役割を有する。
【0053】
画素規制層141の膜厚は、インク状態の有機発光層17の上面までの厚みよりは小さいが、乾燥後の有機発光層17の上面の厚みよりは大きく設定される。これにより、各副画素列CR、CG、CBにおける有機発光層17は、画素規制層141によっては仕切られず、有機発光層17を形成する際のインクの流動が妨げられない。そのため、各副画素列における有機発光層17の厚みを均一に揃えることを容易にする。
【0054】
(ホール注入層)
ホール注入層15は、画素電極13から有機発光層17へのホールの注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。ホール注入層15は、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの酸化物、あるいは、銅フタロシアニン(CuPc)などの低分子量の有機化合物や、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)などの高分子材料が挙げられる。
【0055】
(ホール輸送層)
ホール輸送層16は、ホール注入層15から注入されたホールを有機発光層17へ輸送する機能を有する。また、ホール輸送層16は、後述する有機発光層17に対する下地層として機能し、有機化合物を含む構成を採る。ホール輸送層16は、例えば、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられ、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよく、高分子化合物および/または低分子化合物を溶媒に溶解したインクを用いて塗布法などのウエットプロセスにより形成される。
【0056】
(有機発光層)
有機発光層17は、開口部14a内に形成されており、ホールと電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を発光する機能を有する。なお、特に、発光色を特定して説明する必要があるときには、有機発光層17(R)、17(G)、17(B)と記す。
【0057】
本実施の形態において、有機発光層17は、下地層に有機発光材料と所定の溶媒とを含むインクを塗布した後に乾燥させて成膜される塗布膜からなる構成を採る。有機発光層17に用いられる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2-ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質や、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の燐光物質を用いることができる。
【0058】
また、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。
【0059】
[混合部について]
有機EL素子2において、有機発光層17には、所定値以上の密度で有機発光層17の層中にホール輸送性材料及び電子輸送性材料とが混合されてなる混合部17aが存在する。混合部17aを設けることにより、対向電極20から供給される電子と、画素電極13から供給されるホールとの発光層中における結合に基づいて発光材料から光が放出される発光動作に加え、入射光に基づき、発光材料において生成された励起子が電子とホールとに分離されて、電子は電子輸送性材料により対向電極20に供給され、ホールはホール輸送性材料により画素電極13に供給される発電動作を行うことが可能となる。
【0060】
図5(a)~(d)は、有機EL素子2における有機発光層17に形成された混合部の態様を示す模式図である。図5(a)~(d)において、ホール輸送層とは、ホール注入層15及び/又はホール輸送層16からなる層を表し、電子注入輸送層とは、電子輸送層18及び/又は電子注入層19からなる層を表す。
【0061】
図5(a)は、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、有機発光層17における対向電極20側の境界近傍における密度が最も高い状態で有機発光層17中に分布している態様である。混合部17aは、図5(a)に示すように、有機発光層17における対向電極20側の境界近傍にのみ存在してもよいが、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、対向電極20側の境界近傍以外にも、有機発光層17の厚み方向の全域にわたって存在してもよい。図5(a)の態様では、混合部17aは、発光面(受光面)に近いため高い光発電効率を得ることができる。
【0062】
あるいは、有機発光層17の厚み方向において発光動作時にホールと電子との再結合が生じる位置を避けて、発光動作時における発光効率が最適となる位置に混合部17aを配置してもよい。これにより、ディスプレイとしての発光効率との兼ね合いによって、混合部17aの位置を変えた以下の態様としてもよい。
【0063】
図5(b)は、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、有機発光層17における画素電極13側の境界近傍における密度が最も高い状態で有機発光層17中に分布している態様である。混合部17aは、図5(b)に示すように、有機発光層17における画素電極13側の境界近傍にのみ存在してもよい。あるいは、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、画素電極13側の境界近傍以外にも、有機発光層17の厚み方向の全域にわたって存在してもよい。
【0064】
図5(c)は、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、有機発光層17における画素電極13側の境界及び対向電極20側の境界から離れた位置における密度が最も高い状態で有機発光層17中に分布している態様である。この場合も、混合部17aは、図5(c)に示すように、有機発光層17における画素電極13側の境界及び対向電極20側の境界から離れた位置にのみ存在してもよいが、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、対向電極20側の境界近傍以外にも、有機発光層17の厚み方向の全域にわたって存在してもよい。
【0065】
図5(d)は、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、有機発光層17における画素電極13側の境界及び対向電極20側の境界まで所定値以上の密度で有機発光層17の層中に分布している態様である。この場合、混合部17aは、有機発光層17の厚み方向の全域にわたって存在していると定義できる。図5(d)の態様では、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料は、画素電極13側の境界及び対向電極20側の境界まで所定値以上の密度で有機発光層17中に分布している構成としてもよい。
【0066】
有機EL素子2の混合部17aに含まれるホール輸送性材料及び電子輸送性材料の構成材料としては、一般的に太陽電池パネルに使用されているホール輸送性材料、電子輸送性材料、及びこれらの有機材料の派生物や、その他の有機材料を混合部に含める材料として用いることができる。例えば、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料には、図6(a)(b)に示す分子構造を示す有機材料、すなわち、ホール輸送性材料としてP3HT又はPTB7、電子輸送性材料としてPCBM又はICBMを用いることができる。
【0067】
また、上記以外に、製造時にホール輸送層16、電子輸送層18の構成材料をそのまま有機発光層17に混合させて混合部17aを構成してもよい。
【0068】
(電子輸送層)
電子輸送層18は、対向電極20からの電子を有機発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層18は、電子輸送性が高い有機材料、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
【0069】
(電子注入層)
電子注入層19は、対向電極20から供給される電子を有機発光層17側へと注入する機能を有する。電子注入層19は、例えば、電子輸送性が高い有機材料に、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)やカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)など、アルカリ金属やアルカリ土類金属から選択された金属がドープされて形成されている。
【0070】
電子注入層19に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
【0071】
(対向電極)
対向電極20は、透光性の導電性材料からなり、電子注入層19上に形成されている。対向電極20は、陰極として機能する。
【0072】
対向電極20の材料としては、例えば、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を用いてもよい。この場合、対向電極20は透光性を有する必要があるため、膜厚は、10nm~50nmが望ましい。
【0073】
(封止層)
封止層21は、ホール輸送層16、有機発光層17、電子輸送層18、電子注入層19などの有機層が外部の水分に晒されたり、空気に晒されたりして劣化するのを防止するために設けられるものである。
【0074】
封止層21は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用いて形成される。
【0075】
(その他)
なお、図3には示されてないが、封止層21上に透明な接着剤を介して防眩用の偏光板や上部基板を貼り合せてもよい。また、各有機EL素子2により発光される光の色度を補正するためのカラーフィルターを貼り合わせてもよい。これらにより、ホール輸送層16、有機発光層17、電子注入層19などを外部の水分および空気などからさらに保護できる。
【0076】
<有機EL素子の発電機能について>
以下、本開示の一態様に係る有機EL素子の発電機能について、図面を参照しながら説明する。有機EL素子2は、外部から電流を印加した場合は発光素子として働くが、逆に光を照射した時は発電素子として機能する。
【0077】
有機EL素子2では、発光動作時おいては、各機能層の最低空軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と最高被占軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)とを適切に配列することにより、発光層のホールと電子とのキャリアバランスを向上させて、発光素子の高効率化を図ることが求められる。
【0078】
図7(a)は、発光動作時における、有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位が適切にバランスされている状態を示す概略図である。図において、ホール輸送層とは、ホール注入層15及び/又はホール輸送層16からなる層を表し、電子注入輸送層とは、電子輸送層18及び/又は電子注入層19からなる層を表す。
【0079】
発光動作時おいては、図7(a)に示すように、画素電極(陽極)と対向電極(陰極)との間に電圧が印加された状態において、画素電極からホール輸送層を介して発光層の最高被占軌道(HOMO)にホールが供給されると共に、対向電極から電子輸送層介して発光層の最低空軌道(LUMO)に電子が供給される。そして、発光層に対しホール輸送層側から供給されたホールと電子輸送層側から供給された電子とが発光層内で再結合し励起状態を生成して発光する。
【0080】
この再結合において、良好なキャリアバランスが保たれて発光層に注入される電子とホールとが量的に均衡していると、電子とホールとが過不足が少なく再結合される。そのため、残余のホール又は電子が発生することが少なく、多くのホール及び電子を発光に寄与させることができ有機EL素子の発光効率を最適化することができる。
【0081】
一方、図7(b)は、発電動作時における、有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位が適切にバランスされている状態を示す概略図である。
【0082】
発光動作時おいては、図7(b)に示すように、光照射を受けた時に有機発光層17中で発生した電荷は、ホールと電子がお互い相互作用し合った状態(励起子)を構成する。この励起子を、エネルギー状態の異なる材料界面(エネルギー界面:HOMO及びLUMO)に励起子の再結合時間内に移動させることにより、効率良く励起子をホールと電子に分離する。そして、画素電極(陽極)と対向電極(陰極)との間に電圧が印加されていない状態において、発光層の最高被占軌道(HOMO)からホール輸送層を介して画素電極にホールが供給されると共に、発光層の最低空軌道(LUMO)から電子注入輸送層を介して対向電極に電子が供給される。画素電極(陽極)と対向電極(陰極)から電荷が外部に取り出されて、電源回路等に供給される。
【0083】
このため、発電層として機能するためには有機発光層17はできる限り薄くするか、有機発光材料にホール輸送性材料と電子輸送性材料が混合されたもの(BHJ)を有機発光層17発電層に用いることが、効率良く電荷を外部に取り出して発電効率を高めるために効果的である。
【0084】
図8(a)(b)(c)は、有機EL素子2の有機発光層17における発電動作を説明するための模式図である。
【0085】
例えば、図8(a)に示すように、有機発光層17中において、有機発光材料にホール輸送性材料と電子輸送性材料が混合されていない構成では、光入射によって生成した励起子が外部に取り出されるまでに再結合により消滅するため、電荷を外部に取り出すことができない。
【0086】
これに対し、図8(b)に示すように、有機発光層17中において、有機発光材料にホール輸送性材料と電子輸送性材料とが混合されている構成では、光入射によって生成した励起子が再結合する前にホールと電子に分離されて、電子は電子注入輸送層に供給され、ホールはホール輸送層に供給され、それぞれ陰極、陽極から外部に取り出される。
【0087】
本実施の形態に係る有機EL素子2では、図5(a)~(d)に示すように、有機発光層17には、所定値以上の密度で有機発光層17の層中にホール輸送性材料及び電子輸送性材料とが混合されてなる混合部17aが存在する態様を採ることにより、図8(c)に示すように、ホール輸送層側から供給されたホールと電子輸送層側から供給された電子とが有機発光層17内で再結合して発光する発光動作と、光照射に伴い有機発光層17中で発生した励起子を、励起子の再結合時間内に移動させることにより、効率良く励起子をホールと電子に分離し、陽極陰極から電荷を外部に取り出す発電動作とを時間選択的に行うことができる。
【0088】
<有機EL素子の製造方法>
以下、本開示の一態様に係る機能層形成用インクを使用したトップエミッション型の有機EL素子および当該有機EL素子を使用した有機EL表示パネルおよびその製造方法について、以下図9図13を用いて説明する。図9は、有機EL素子2の製造過程を示すフローチャートであり、図10図13は、有機EL素子2の製造過程を模式的に示す断面図である。なお、図面は模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
【0089】
(基板準備工程)
まず、図10(a)に示すように、基材111上にTFT層112を形成して基板11を準備する(図9のステップS1)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により形成することができる。
【0090】
(平坦化層形成工程)
次に、図10(b)に示すように、基板11上に、平坦化層12を形成する(図9のステップS2)。
【0091】
具体的には、一定の流動性を有する樹脂材料を、例えば、ダイコート法により、基板11の上面に沿って、TFT層112による基板11上の凹凸を埋めるように塗布する。これにより、平坦化層12の上面は、基材111の上面に沿って平坦化した形状となる。
【0092】
平坦化層12における、TFT素子の例えばソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホール(不図示)を形成し、その後、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いて金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウエットエッチング法を用いてパターニングすればよい。
【0093】
(画素電極形成工程)
次に、図10(c)に示すように、平坦化層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。そして、図10(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、副画素ごとに区画された複数の画素電極13を形成する(図9のステップS3)。
【0094】
(隔壁・画素規制層形成工程)
次に、隔壁14および画素規制層141を形成する(図9のステップS4)。
【0095】
本実施の形態では、画素規制層141と隔壁14を別工程で形成している。
【0096】
[画素規制層形成]
まず、Y方向(図2)における画素電極列を副画素毎に仕切るため、X方向に伸びる画素規制層141を形成する。
【0097】
図11(a)に示すように、画素電極13が形成された平坦化層12上に、画素規制層141の材料となる感光性の樹脂材料を一様に塗布して、画素規制層材料層1410を形成する。このときの樹脂材料の塗布量は、乾燥後に狙いの画素規制層141の膜厚となるように予め求められている。
【0098】
具体的な塗布方法として、例えばダイコート法やスリットコート法、スピンコート法などのウエットプロセスを用いることができる。塗布後には、例えば、真空乾燥及び60℃~120℃程度の低温加熱乾燥(プリベーク)などを行って不要な溶媒を除去するとともに、画素規制層材料層1410を平坦化層12に定着させることが好ましい。
【0099】
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、画素規制層材料層1410をパターニングする。例えば、画素規制層材料層1410がポジ型の感光性を有する場合は、画素規制層141として残す箇所を遮光し、除去する部分が透明なフォトマスク(不図示)を介して画素規制層材料層1410を露光する。
【0100】
次に、現像を行い、画素規制層材料層1410の露光領域を除去することにより、画素規制層141を形成することができる。具体的な現像方法としては、例えば、基板11全体を、画素規制層材料層1410の露光により感光した部分を溶解させる有機溶媒やアルカリ液などの現像液に浸した後、純水などのリンス液で基板11を洗浄すればよい。
【0101】
その後、所定温度で焼成(ポストベーク)することにより、平坦化層12上に、X方向に延伸する画素規制層141を形成することができる(図11(b))。
【0102】
[隔壁形成]
次に、Y方向に伸びる隔壁14を上記画素規制層141と同様にして形成する。
【0103】
すなわち、上記画素電極13、画素規制層141が形成された平坦化層12上に、隔壁用の樹脂材料を、ダイコート法などを用いて塗布して、隔壁材料層140を形成する(図11(c))。このときの樹脂材料の塗布量は、乾燥後に狙いの隔壁14の高さとなるように予め求められている。そして、フォトリソグラフィ法により隔壁材料層140にY方向に延在する隔壁14をパターニングした後、所定の温度で焼成して隔壁14を形成する(図11(d))。
【0104】
なお、上記では、画素規制層141と隔壁14のそれぞれの材料層をウエットプロセスで形成した後にパターニングするようにしたが、いずれか一方または双方の材料層をドライプロセスで形成して、フォトリソグラフィ法とエッチング法により、パターニングするようにしてもよい。
【0105】
(ホール注入層・ホール輸送層形成工程)
次に、ホール注入層15およびホール輸送層16を形成する(図9のステップS5)。
【0106】
まず、ホール注入層15は、上述したホール注入特性を有する低分子材料を、混合溶媒に溶解、もしくは分散させたインクを印刷装置の塗布ヘッド301のノズル3011から吐出して、開口部14a内に塗布し、溶媒を揮発除去させ、および/または焼成することにより形成される。
【0107】
ホール輸送層16は、上記ホール注入層15上に、上述したホール輸送特性を有する低分子材料を混合溶媒に溶解、もしくは分散させたインクを用いて、上記ホール注入層15と同じ塗布法により、形成される。ホール注入層15、ホール輸送層16形成用のインクの塗布方法としては、インクジェット法、スクリーン印刷等の各種印刷法、スピンコート法、ディスペンサ法等の、湿式製膜法を用いることができる。
【0108】
また、ホール注入層15、ホール輸送層16は、真空蒸着法、スパッタチング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の気相成長法によって形成されてもよい。
【0109】
なお、図12(a)は、ホール注入層15形成後にホール輸送層16を形成している際における表示パネル10の模式断面図を示している。
【0110】
(有機発光層形成工程)
次に、上記ホール輸送層16の上方に、有機発光層17を形成する(図9のステップS6)。
【0111】
具体的には、上記発光材料のうち低分子材料からなる発光材料を例えば、を図12(b)に示すように、各開口部14aに対応する発光色の有機発光層の構成材料である有機発光材料、ホール輸送性材料、及び電子輸送性材料を所定の比率で混合させて溶媒で溶解したインクを、印刷装置の塗布ヘッド301のノズル3011から順次吐出して開口部14a内のホール輸送層16上に塗布し、インク塗布後の基板11を真空乾燥室内に搬入して真空環境下で加熱することにより、インク中の有機溶媒を蒸発させて形成する。
【0112】
また、ここでも、有機発光層17形成用のインクの塗布方法としては、インクジェット法、スクリーン印刷等の各種印刷法、スピンコート法、ディスペンサ法等の、湿式製膜法を用いることができる。
【0113】
(電子輸送層形成工程)
次に、図13(a)に示すように、有機発光材料層170および隔壁14の上に、電子輸送性材料を溶媒で溶解したインクを、印刷装置の塗布ヘッド301のノズル3011から吐出して開口部14a内の有機発光層17上に塗布し、インク中の有機溶媒を蒸発させて、電子輸送層18を形成する(図9のステップS7)。
【0114】
(電子注入層形成工程)
続いて、図13(b)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入性の材料を真空蒸着して電子注入層19を成膜する(図9のステップS8)。
【0115】
(対向電極形成工程)
次に、機能層19上に対向電極20を形成する(図9のステップS9)
対向電極形成工程は、まず、機能層19上に銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜して形成する(図13(c))。
【0116】
(封止層形成工程)
次に、図13(d)に示すように、対向電極20上に、封止層21を形成する(図9のステップS10)。封止層21は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。
【0117】
以上により図3に示す表示パネル10が製造される。なお、上記の製造方法は、あくまで例示であり、趣旨に応じて適宜変更可能である。
【0118】
<発電機能付き有機EL表示装置1の回路構成>
以下では、実施の形態に係る表示パネル10を用いた有機EL表示装置1(以後、「表示装置1」と称する場合がある)の回路構成について、図14を用い説明する。表示パネル10は、上述のとおり、発光動作と発電動作とを選択的に行う機能を有する。
【0119】
図14は、有機EL表示装置1の全体構成を示すブロック図である。有機EL表示装置1は、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、その他の電子機器の表示部として用いられる。図14に示すように、表示装置1は、表示パネル10と、これに接続された駆動制御回路部200とを有して構成されている。
【0120】
表示パネル10は、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部200は、4つの駆動回路210と制御回路220とにより構成されている。なお、表示パネル10は、一例として、アクティブマトリクス方式を採用している。
【0121】
駆動制御部200は、表示パネル10に接続された駆動回路210と、計算機などの外部装置又はTVチューナーなどの受信装置に接続された制御回路220とを有する。
【0122】
駆動回路210は、発光動作において、各有機EL素子に電力を供給する電源回路、各有機EL素子への供給電力を制御する電圧信号を印加する信号回路、一定の間隔ごとに電圧信号を印加する箇所を切り替える走査回路などを有する。
【0123】
また、駆動回路210は、発電動作において、光入射に基づき各有機EL素子に発生した電荷を発光動作とは反対方向の電流として電源回路に返還させる制御を行う。
【0124】
制御回路220は、外部装置や受信装置から入力された画像情報を含むデータに応じて、駆動回路210の動作を制御する。
【0125】
表示パネル10においては、複数の単位画素100eが行列状に配されて表示領域を構成している。各単位画素100eは、3個の有機EL素子、つまり、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に発光する3個の副画素100seから構成される。各副画素100seの回路構成について、図15を用い説明する。
【0126】
図15は、表示装置1に用いる表示パネル10の各副画素100seに対応する発光素子100における回路構成を示す回路図である。
【0127】
図15に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、各副画素100seが2つのトランジスタTr1、Tr2と一つのキャパシタC、及び発光部としての有機EL素子部ELとを有し構成されている。トランジスタTr1は、駆動トランジスタであり、トランジスタTr2は、スイッチングトランジスタである。
【0128】
スイッチングトランジスタTr2のゲートG2は、走査ラインVscnに接続され、ソースS2 は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタTr2 のドレインD2は、駆動トランジスタTr1のゲートG1に接続されている。
【0129】
駆動トランジスタTr1のドレインD1は、電源ラインVaに接続されており、ソースS1 は、スイッチSwにより、発光動作時には有機EL素子部ELの画素電極(アノード)Amに接続されている。有機EL素子部ELにおける対向電極(カソード)Caは、接地ラインVcatに接続される。これより、発光動作時には、ソースS1 から有機EL素子部ELを介して接地ラインVcatに電流Iが流れる。
【0130】
また、発電動作時には、有機EL素子部ELのアノードAmは、スイッチSwにより、電流出力端子Voutに接続された出力端子Loに接続される。これより、発電動作時には、有機EL素子部ELで発生した電荷に基づき、接地ラインVcatから有機EL素子部ELを介して電流出力端子Voutに電流Iと反対方向に電流I´が流れる。
【0131】
なお、キャパシタCの第1端は、スイッチングトランジスタTr2のドレインD2及び駆動トランジスタTr1のゲートG1と接続され、キャパシタCの第2端は、電源ラインVaと接続されている。
【0132】
表示パネル10においては、隣接する複数の副画素100se(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つの副画素100se)を組み合せて1つの単位画素100eを構成し、各単位画素100eが分布するように配されて画素領域を構成している。そして、各副画素100seのゲートG2からゲートラインが各々引き出され、表示パネル10の外部から接続される走査ラインVscnに接続されている。同様に、各副画素100seのソースS2からソースラインが各々引き出され表示パネル10の外部から接続されるデータラインVdatに接続されている。
【0133】
また、各副画素100seの電源ラインVa及び各副画素100seの接地ラインVcatは集約されて、表示装置1の電源ライン及び接地ラインに接続されている。
【0134】
図16(a)(b)は、実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路構成の一例を示す模式図である。発電機能付き自発光素子2は、各素子を直列に接続することにより、図16(a)に示すように電圧が1素子の電圧のn倍になり、各素子を並列に接続することにより、図16(b)に示すように電流がn倍になる。発電される電力は何れの場合にもnabとなる。
【0135】
<小 括>
以上説明したとおり、本実施の形態に係る発電機能付き自発光素子2は、対向して配された画素電極13(陽極)、及び対向電極20(陰極)と、画素電極13及び対向電極20に挟まれた、発光材料を含む有機発光層17とを備え、有機発光層17は、発光材料、ホール輸送性材料及び電子輸送性材料を含む混合部17aを有し、対向電極20から供給される電子と、画素電極13から供給されるホールとの有機発光層17中における結合に基づいて発光材料から光が放出される発光動作と、入射光に基づき、発光材料において生成された励起子が電子とホールとに分離されて、電子は電子輸送性材料により対向電極20に供給され、ホールはホール輸送性材料により対向電極20に供給される発電動作とを行うことを特徴とする。
【0136】
係る構成により、自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができる。
【0137】
そのため、ディスプレイの表示領域に配された自発光素子の発光層における有機発光材料の光電変換機能を利用して非発光時に外光を利用して光発電を行うことができ、発光素子そのものを発電素子として利用することができる。
【0138】
その結果、非使用時は環境光により発電し、得られた電力をディスプレイの別機能を駆動させるために用いる、あるいは、蓄電させることで、これまでのディスプレイに発電機能という付加価値を持たせることができる。
【0139】
また、発電素子を新たにパネルに搭載することなく、装置が大掛かりになることを抑制できる。
【0140】
≪変形例≫
以上、実施の形態に係る有機EL素子2等を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、有機EL素子、有機EL表示パネルの変形例を説明する。
【0141】
(1)上記実施の形態では、図17(a)に示すように、発電機能付き自発光素子2が、表示パネル10における基板11面内の中央領域10a全体に配されている構成とした。図17(b)は、変形例1に係る表示パネルの概要を説明するための模式図である。図17(b)に示すように、変形例1に係る表示パネルでは、発電機能付き自発光素子2が、表示パネル10における基板11面内の中央領域10aの面外方に位置する周辺領域10bに配されている構成としてもよい。係る構成により、基板11面内の中央領域10aには、発電機能を備えていない自発光専用素子2´を配することができる。
【0142】
(2)簡易的にテストセル(TEG)を作製し、これに光を入射させた時に陽極/陰極間に流れる電流、もしくは発生する電圧を測定することによって発電特性を容易に確認してもよい。室内光の照度を0.7mW/cm2(500lx)としたとき、発電効率0.1%とすると、パネル面積が1500cm2(50cm×30cm)として、発電量は約100mWとなり、各種センサ等の駆動や待機時の電力として利用することができる。
【0143】
(3)上記実施の形態では、発電機能付き自発光素子2が、表示パネル10における基板11面内の中央領域10a全体に配されている構成とした。図18は、変形例2に係る表示パネルの概要を説明するための模式図である。図18に示すように、変形例2に係る表示パネルでは、発電機能付き自発光素子2が、表示パネル10における副画素100の面外方に位置する非画素領域に配されている構成としてもよい。係る構成により、副画素100には、発電機能を備えていない自発光専用素子2´を配することができる。
【0144】
(4)上記実施の形態においては、陰極が対向電極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL素子であるとした。しかしながら、例えば、陽極が対向電極であり、陰極が画素電極であってもよい。また、例えば、ボトムエミッション型の有機EL素子であってもよい。
【0145】
(5)また、上記実施の形態においては、有機EL素子2は、電子輸送層18や電子注入層19、ホール注入層15やホール輸送層16を有する構成であるとしたが、これに限られない。例えば、電子輸送層18を有しない有機EL素子や、ホール輸送層16を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、ホール注入層15とホール輸送層16とに代えて、単一層のホール注入輸送層を有していてもよい。
【0146】
(6)上記実施の形態では、列状に隔壁を形成するラインバンク方式の有機EL表示パネルについて説明したが、格子状に隔壁を形成して副画素ごとに周囲を隔壁で囲む、いわゆるピクセルバンク方式の有機EL表示パネルであっても構わない。
【0147】
(7)上記実施の形態では、自発光素子として有機EL素子を使用した有機EL表示パネルについて説明したが、その他、量子ドット発光素子(QLED:Quantum dot Light Emitting Diode)を使用した量子ドット表示パネル(例えば、特開2010-199067号公報参照)などの表示パネルについても、発光層の構造や種類が異なるだけで、画素電極と対向電極との間に発光層やその他の機能層を介在させるという構成において有機EL表示パネルと同じであり、本発明を適用することができる。
【0148】
≪補足≫
以上、本開示の一態様に係る光発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル及び自発光表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示の一態様に係る光発電機能を備えた自発光素子、自発光表示パネル及び自発光表示装置は、光発電機能が付加されたディスプレイ装置として広く活用することができる。
【符号の説明】
【0150】
2 有機EL素子
11 基板
12 平坦化層
13 画素電極
14 隔壁
14a 開口部
15 ホール注入層
16 ホール輸送層
17 有機発光層
17a 混合部
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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