(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/367 20210101AFI20240717BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240717BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240717BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240717BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240717BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240717BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/204 401D
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/505
H01M50/507
H01M50/55 101
(21)【出願番号】P 2020186401
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】牧野 公利
(72)【発明者】
【氏名】浦上 周平
(72)【発明者】
【氏名】松永 雄太
(72)【発明者】
【氏名】和田 刀貢臣
(72)【発明者】
【氏名】小林 真人
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018740(JP,A)
【文献】特開2019-219173(JP,A)
【文献】特開2016-072181(JP,A)
【文献】特開2017-004803(JP,A)
【文献】特開2018-103841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
H01M 50/50-50/598
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に並ぶように配置された複数の二次電池と、
前記複数の二次電池上に設けられており、前記二次電池から生じたガスを排出するための排煙ダクトと、
前記複数の二次電池上でかつ前記排煙ダクトから離間した位置に設けられており、前記二次電池の温度を検出可能なサーミスタと、
前記複数の二次電池上に配置されたバスバモジュールと、を備え、
前記二次電池は、一対の外部端子を有し、
前記バスバモジュールは、
前記一方向に互いに隣接する外部端子同士を電気的に接続する複数のバスバと、
前記複数のバスバを保持するバスバケースと、を有し、
前記バスバケースは、前記排煙ダクトから流出したガスを前記サーミスタに誘導する誘導部を有する、電池モジュール。
【請求項2】
絶縁材料からなり、前記一方向に互いに隣接する前記二次電池間を仕切る仕切部をさらに備え、
前記排煙ダクトは、前記一方向に互いに連結された複数のダクト要素からなり、
各ダクト要素は、前記仕切部の上部に接続されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-4803号公報には、複数の電池セルを積層して構成される電池スタックと、電池スタックの上面に設けられたバスバーモジュールと、電池セルの温度を検出するサーミスタと、を備える組電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-4803号公報に記載されるような組電池では、二次電池から生じたガス(排煙)を検知するための専用の機構が必要となる。
【0005】
本開示の目的は、専用の排煙検知機構を省略することが可能な電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った電池モジュールは、一方向に並ぶように配置された複数の二次電池と、前記複数の二次電池上に設けられており、前記二次電池から生じたガスを排出するための排煙ダクトと、前記複数の二次電池上でかつ前記排煙ダクトから離間した位置に設けられており、前記二次電池の温度を検出可能なサーミスタと、前記複数の二次電池上に配置されたバスバモジュールと、を備え、前記二次電池は、一対の外部端子を有し、前記バスバモジュールは、前記一方向に互いに隣接する外部端子同士を電気的に接続する複数のバスバと、前記複数のバスバを保持するバスバケースと、を有し、前記バスバケースは、前記排煙ダクトから流出したガスを前記サーミスタに誘導する誘導部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、専用の排煙検知機構を省略することが可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の電池モジュールの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】樹脂枠の係止部とバスバケースの被係止部との関係を示す斜視図である。
【
図6】サーミスタと誘導部との関係を示す斜視図である。
【
図8】バスバモジュール及びFPCの斜視図である。
【
図9】バスバモジュール及びFPCカバーの斜視図である。
【
図10】電池モジュール内に針金が侵入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態の電池モジュールの構成を概略的に示す断面図である。この電池モジュール1は、例えば、車両に搭載される。
【0011】
図1~
図4に示されるように、電池モジュール1は、複数の二次電池100と、複数の樹脂枠200と、サーミスタ300と、バスバモジュール400と、FPC510と、FPCカバー520と、絶縁カバー530と、ダンパ部材610と、押付部材620と、ロアケース710と、アッパーケース720と、を備えている。
【0012】
複数の二次電池100は、一方向(
図2において紙面と直交する方向)に並ぶように配置されている。二次電池100として、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。各二次電池100は、ケース110と、一対の外部端子120と、を有している。
【0013】
ケース110は、矩形状に形成されている。
図4に示されるように、ケース110の上面における中央部には、安全弁Vが設けられている。
【0014】
一対の外部端子120は、ケース110の上面から上方に向かって突出している。一対の外部端子120の一方は、正極端子であり、他方は、負極端子である。正極端子は、幅方向(一方向及び上下方向の双方に直交する方向)における安全弁Vの一方側に設けられている。負極端子は、幅方向における安全弁Vの他方側に設けられている。
【0015】
樹脂枠200は、一方向に二次電池100に隣接するように配置されている。各樹脂枠200は、仕切部210と、ダクト要素220と、タブ230と、を有している。
【0016】
仕切部210は、絶縁材料(樹脂)からなる。仕切部210は、一方向に互いに隣接する二次電池100間を仕切っている。
【0017】
図4に示されるように、ダクト要素220は、仕切部210の上部に接続されている。ダクト要素220は、各二次電池100の安全弁Vを覆う形状を有している。各ダクト要素220は、一方向に隣接するダクト要素220と連結されている。複数のダクト要素220は、互いに連結されることによって排煙ダクト220Aを構成している。排煙ダクト220Aは、複数の二次電池100上に設けられており、二次電池100から生じたガスを排出するための排煙経路C(
図4及び
図7を参照)を形成している。なお、
図4では、説明のため、樹脂枠200が一つ省略されている。
【0018】
タブ230は、幅方向における仕切部210の両端部に設けられている。
図4及び
図5に示されるように、タブ230は、突出片232と、係止部234と、を有している。
【0019】
突出片232は、仕切部210から上方に突出する形状を有している。突出片232は、幅方向と直交する平板状に形成されている。
【0020】
係止部234は、突出片232から幅方向における外側に突出する形状を有している。係止部234は、下方に向かうにしたがって突出片232からの突出量が増大する形状を有している。
【0021】
サーミスタ300は、二次電池100の温度を検出可能である。サーミスタ300は、複数の二次電池100上で、かつ、排煙ダクト220Aから離間した位置に設けられている。サーミスタ300は、ケース110の上面に接するように設けられている。
【0022】
バスバモジュール400は、複数の二次電池100上に配置されている。バスバモジュール400は、複数のバスバ410と、バスバケース420と、を有している。
【0023】
各バスバ410は、一方向に互いに隣接する外部端子同士を電気的に接続している。本実施形態では、各バスバ410は、一の二次電池の正極端子と、一の二次電池に隣接する二次電池の負極端子と、を電気的に接続している。すなわち、複数の二次電池100は、各バスバ410によって直列接続されている。
【0024】
バスバケース420は、各バスバ410を保持している。バスバケース420は、樹脂からなる。バスバケース420は、複数の被係止部422と、サーミスタ保持部424と、誘導部426と、複数の柱部428と、を有している。
【0025】
各被係止部422は、幅方向における各バスバ410の外側に設けられている。被係止部422は、タブ230を取り囲む形状を有している。被係止部422は、タブ230の係止部234と係合可能である。
図5に示されるように、被係止部422には、スリットSが設けられている。被係止部422は、タブ230に対して上方から接続される際、幅方向における外向きに広がりながら係止部234を乗り越える。
【0026】
サーミスタ保持部424は、サーミスタ300を保持している。
図6及び
図7に示されるように、サーミスタ保持部424は、幅方向に排煙ダクト220A(排煙経路C)から離間した位置に設けられている。サーミスタ保持部424は、サーミスタ300の下面が二次電池100のケース110の上面に接するようにサーミスタ300を保持している。
【0027】
誘導部426は、排煙ダクト220Aから流出したガスG(
図7を参照)をサーミスタ300に誘導する。
図6に示されるように、誘導部426は、一対の誘導片426aを有している。一対の誘導片426aは、一方向に互いに離間している。各誘導片426aは、幅方向と平行な方向に延びる形状を有している。各誘導片426aは、平板状に形成されている。一対の誘導片426a間の距離は、一方向におけるサーミスタ300の寸法よりも大きく設定されている。
【0028】
各柱部428は、樹脂枠200の上面に接している。柱部428は、樹脂枠200の上面から上方に向かって延びる形状を有している。柱部428の上面は、平坦に形成されている。柱部428は、被係止部422とサーミスタ保持部424との間に設けられている。複数の柱部428は、一方向に等間隔で並ぶように配置されている。
【0029】
FPC510は、各バスバ410を電気的に接続している。FPC510は、一方向に延びる形状を有している。FPC510は、複数の二次電池100上に配置されている。
【0030】
FPCカバー520は、FPC510を被覆する形状を有している。
図3、
図5及び
図9に示されるように、FPCカバー520は、遮蔽部522を有している。
【0031】
遮蔽部522は、バスバ410と外部端子120との溶接部からFPC510を遮蔽する。具体的に、遮蔽部522は、バスバ410を外部端子120に溶接する際に生じるスパッタがFPC510に向けて飛散するのを遮蔽する。
【0032】
絶縁カバー530は、FPCカバー520上に設けられている。絶縁カバー530は、バスバケース420とともにFPCカバー520を挟み込んでいる。絶縁カバー530は、凹部532を有している。
図3に示されるように、凹部532は、一方向に延びる形状を有している。凹部532の下面は、柱部428の上面に接している。
【0033】
ダンパ部材610は、弾性変形可能な材料からなる。
図2に示されるように、ダンパ部材610は、凹部532に配置されている。
【0034】
押付部材620は、ダンパ部材610、絶縁カバー530及びバスバケース420を介して複数の二次電池100を下方に押し付ける部材である。押付部材620は、板状に形成されている。押付部材620は、例えば、金属からなる。
【0035】
図10に示されるように、押付部材620は、ワイヤーハーネスの締結部付近からの針金10の進入を防止する防止リブ622を有している。防止リブ622は、針金10の先端を受けることにより、針金10が活電部20に到達するのを防止する。
【0036】
ロアケース710は、複数の二次電池100を収容している。本実施形態では、
図2に示されるように、ロアケース710は、第1電池スタック151と、幅方向に第1電池スタック151に隣接するように配置された第2電池スタック152と、を収容している。各電池スタックは、複数の二次電池100と、複数の樹脂枠200と、を含んでいる。本実施形態では、ロアケース710と各電池スタックとの間にダンパ部材612が設けられている。
【0037】
アッパーケース720は、ロアケース710に固定されている。
図2に示されるように、アッパーケース720は、各電池スタックをまとめて覆う形状を有している。アッパーケース720は、押付部材620の上方に配置されている。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態の電池モジュール1は、排煙ダクト220Aから流出したガスGをサーミスタ300に誘導する誘導部426を有しているため、二次電池100の温度を検出するサーミスタ300によって排煙が生じたことを検知することが可能となる。このため、排煙を検知するための専用の機構が不要となる。
【0039】
また、樹脂枠200がタブ230を有しており、バスバケース420が被係止部422を有しているため、二次電池100とバスバ410との位置決めが容易になる。
【0040】
また、被係止部422にはスリットSが設けられているため、専用の工具を用いることなくバスバケース420を樹脂枠200から取り外すことが可能となる。
【0041】
また、押付部材620は、ダンパ部材610等を介して複数の二次電池100を下方(ロアケース710)に向けて押し付けているため、ロアケース710からの各二次電池100の浮き上がりが抑制される。
【0042】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0043】
上記実施形態における電池モジュールは、一方向に並ぶように配置された複数の二次電池と、前記複数の二次電池上に設けられており、前記二次電池から生じたガスを排出するための排煙ダクトと、前記複数の二次電池上でかつ前記排煙ダクトから離間した位置に設けられており、前記二次電池の温度を検出可能なサーミスタと、前記複数の二次電池上に配置されたバスバモジュールと、を備え、前記二次電池は、一対の外部端子を有し、前記バスバモジュールは、前記一方向に互いに隣接する外部端子同士を電気的に接続する複数のバスバと、前記複数のバスバを保持するバスバケースと、を有し、前記バスバケースは、前記排煙ダクトから流出したガスを前記サーミスタに誘導する誘導部を有する。
【0044】
また、前記電池モジュールにおいて、絶縁材料からなり、前記一方向に互いに隣接する前記二次電池間を仕切る仕切部をさらに備え、前記排煙ダクトは、前記一方向に互いに連結された複数のダクト要素からなり、各ダクト要素は、前記仕切部の上部に接続されていることが好ましい。
【0045】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 電池モジュール、100 二次電池、110 ケース、120 外部端子、200 樹脂枠、210 仕切部、220 ダクト要素、220A 排煙ダクト、230 タブ、232 突出片、234 係止部、300 サーミスタ、400 バスバモジュール、410 バスバ、420 バスバケース、422 被係止部、424 サーミスタ保持部、426 誘導部、426a 誘導片、428 柱部、510 FPC、520 FPCカバー、522 遮蔽部、530 絶縁カバー、532 凹部、610 ダンパ部材、620 押付部材、710 ロアケース、720 アッパーケース、C 排煙経路、S スリット、V 安全弁。