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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】バッテリ式扇風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/08 20060101AFI20240717BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F04D25/08 301A
F04D29/42 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020200068
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087924
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 正夫
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194121(JP,A)
【文献】特開2013-241946(JP,A)
【文献】米国特許第02100923(US,A)
【文献】特開2019-143523(JP,A)
【文献】特開2013-241945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/08
F04D 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ式扇風機であって、
電動モータと、
前記電動モータにより回転する羽根と、
前記羽根を収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングを設置面に対して起立させて支持する台座と、
前記羽根の送風上流側である前記台座の後面に設けられ、かつ前記電動モータに電力を供給するバッテリが前記台座の前記後面に沿って着脱可能なバッテリ取付部を有し、
前記台座が前記本体ハウジングより下方に位置する姿勢において、
前記台座は、
前記本体ハウジングを左右方向または上下方向に回転可能に支持する台座本体と、
前記台座本体の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる左右の脚部と、
前記台座本体より下方において前記左右の脚部を連結する連結部を有し、
前記台座本体は、前方視で中央部が左右両側よりも下方に位置する鞍形状であるバッテリ式扇風機。
【請求項2】
バッテリ式扇風機であって、
電動モータと、
前記電動モータにより回転する羽根と、
前記羽根を収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングを設置面に対して起立させて支持する台座と、
前記羽根の送風上流側である前記台座の後面に設けられ、かつ前記電動モータに電力を供給するバッテリが前記台座の前記後面に沿って着脱可能なバッテリ取付部を有し、
前記台座が前記本体ハウジングより下方に位置する姿勢において、
前記台座は、
前記本体ハウジングを左右方向または上下方向に回転可能に支持する台座本体と、
前記台座本体の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる左右の脚部と、
前記台座本体より下方において前記左右の脚部を連結する連結部を有し、
前記台座本体の下面前領域には、凹凸形状からなる取手が設けられるバッテリ式扇風機。
【請求項3】
バッテリ式扇風機であって、
電動モータと、
前記電動モータにより回転する羽根と、
前記羽根を収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングを設置面に対して起立させて支持する台座と、
前記羽根の送風上流側である前記台座の後面に設けられ、かつ前記電動モータに電力を供給するバッテリが前記台座の前記後面に沿って着脱可能なバッテリ取付部を有し、
前記台座が前記本体ハウジングより下方に位置する姿勢において、
前記台座は、
前記本体ハウジングを左右方向または上下方向に回転可能に支持する台座本体と、
前記台座本体の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる左右の脚部と、
前記台座本体より下方において前記左右の脚部を連結する連結部を有し、
前記左右の脚部は、上下方向に延出して前記台座本体を前記設置面から離間させて支持する左右の起立脚部と、各前記起立脚部の下端から前記設置面に沿って前後両方に延出する左右の設置脚部を有し、
前記連結部は、前記左右の設置脚部を連結し、
前記台座本体と前記左右の脚部と前記連結部は、前方視で前記連結部を長辺とする等脚台形状であるバッテリ式扇風機。
【請求項4】
バッテリ式扇風機であって、
電動モータと、
前記電動モータにより回転する羽根と、
前記羽根を収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングを設置面に対して起立させて支持する台座と、
前記羽根の送風上流側である前記台座の後面に設けられ、かつ前記電動モータに電力を供給するバッテリが前記台座の前記後面に沿って着脱可能なバッテリ取付部を有し、
前記台座が前記本体ハウジングより下方に位置する姿勢において、
前記台座は、
前記本体ハウジングを左右方向または上下方向に回転可能に支持する台座本体と、
前記台座本体の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる左右の脚部と、
前記台座本体より下方において前記左右の脚部を連結する連結部を有し、
前記台座本体の前方傾斜面に前記バッテリ取付部と前後方向にオーバーラップする操作部を有するバッテリ式扇風機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のバッテリ式扇風機であって、
前記バッテリ取付部は、前記バッテリが上から下方にスライドすることで装着される構成であり、かつ前記台座本体よりも下方に張出しているバッテリ式扇風機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載したバッテリ式扇風機であって、
前記本体ハウジングは、前後方向に分離可能な前側ハウジングと後側ハウジングと、外周に沿って並設された複数の凹部を有するバッテリ式扇風機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載したバッテリ式扇風機であって、
前記バッテリは、電動工具の電源として利用可能な矩形箱形の充電式バッテリパックであるバッテリ式扇風機。
【請求項8】
請求項1に記載のバッテリ式扇風機であって、
前記左右の脚部は、上下方向に延出して前記台座本体を前記設置面から離間させて支持する左右の起立脚部と、各前記起立脚部の下端から前記設置面に沿って前後両方に延出する左右の設置脚部を有し、
前記連結部は、前記左右の設置脚部を連結し、
前記台座本体と前記左右の脚部と前記連結部は、前方視で前記連結部を長辺とする等脚台形状であり、
前記バッテリは、電動工具の電源として利用可能な矩形箱形の充電式バッテリパックであるバッテリ式扇風機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動工具用の充電式バッテリパックを電源とする扇風機に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式のバッテリパックを用いる扇風機は、例えば交流100Vの家庭用電源等に接続する必要がない。そのため建築工事現場等の様々な場所に持ち運んで使用できる。建築工事現場等では、電動ドリルやねじ締め機等の電動工具の電源として電動工具用のバッテリパックが使用されている。電動工具用のバッテリパックを扇風機に利用できるようにすることで扇風機の利便性が高まる。
【0003】
特許文献1には、電動工具用のバッテリパックを用いる扇風機について開示されている。特許文献1に記載の台座は、設置面に対して起立した脚部を有する。台座の下面に沿って台座と設置面との間のスペースに、例えば出力電圧が14.4V、18V等のバッテリパックが取付けられる。バッテリパックが台座および本体部の下方に位置するため扇風機の重心が設置面に近い下方に位置する。そのため設置面に設置または取付けられた扇風機の姿勢が安定する。
【0004】
近年、例えば出力電圧が36V等のより大型の電動工具用のバッテリパックが提供されている。大きいバッテリパックも使用可能とすることで扇風機の利便性が高くなる。しかしながら特許文献1のバッテリ取付部に大型のバッテリパックを装着させようとすると、脚部を長く設ける必要がある。そのため扇風機の姿勢の安定性が低くなってしまう。また、例えば出力電圧が14.4V、18V等のバッテリパックを長い脚部を具備する扇風機に取付ける。これによりバッテリパックと設置面との間にデッドスペースができてしまう。そのため扇風機をコンパクトにすることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-209001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述するようにバッテリ式扇風機には、大型のバッテリパックを装着可能とするために種々改良を加える余地があった。したがって容量の大きいバッテリを取付け可能なバッテリ式扇風機が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの特徴によるとバッテリ式扇風機は、電動モータと、電動モータにより回転する羽根と、羽根を収容する本体ハウジングを有する。バッテリ式扇風機は、台座とバッテリ取付部を有する。台座は、本体ハウジングを設置面に対して起立させて支持する。バッテリ取付部は、羽根の送風上流側である台座の後面に設けられ、かつ電動モータに電力を供給するバッテリが台座の後面に沿って着脱可能である。
【0008】
したがって設置面に設置または取付けられて姿勢が安定する台座にバッテリ取付部が設けられる。そのためバッテリ式扇風機は、バッテリ取付部にバッテリを取付けて使用する際の姿勢が安定する。バッテリ取付部が台座の後面に設けられかつバッテリを台座の後面に沿って着脱可能であることで、大きいサイズのバッテリを取付けることができる。
【0009】
本開示の他の特徴によると台座は、台座本体と左右の脚部と連結部を有する。台座が本体ハウジングより下方に位置する姿勢において、台座本体は、本体ハウジングを左右方向または上下方向に回転可能に支持する。左右の脚部は、台座本体の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる。連結部は、台座本体より下方において左右の脚部を連結する。したがって左右の脚部は、下方に向かうにしたがって間隔が広くなるいわゆる末広がりの形状を有する。そのため設置面に対する本体ハウジングおよび台座の姿勢をより安定させることができる。さらに左右の脚部を連結部が連結することで台座の強度が高くなる。これにより台座の姿勢の安定性を高めることができる。
【0010】
本開示の他の特徴によると台座本体は、前方視で中央部が左右両側よりも下方に位置する鞍形状である。ここで鞍形状は、正面視で下方に向けて凸になっているV字状、U字状等の形状を指す。したがって本体ハウジングは、台座本体の中央部において設置面に近い位置で台座本体に支持される。そのためバッテリ式扇風機の重心の位置が低くなる。これによりバッテリ式扇風機を設置面に設置または取付ける際の安定性を高めることができる。
【0011】
本開示の他の特徴によるとバッテリ取付部は、バッテリが上から下方にスライドすることで装着される構成であり、かつ台座本体よりも下方に張出している。したがってバッテリ式扇風機を設置面に設置または取付けた状態で、バッテリを容易に装着できる。バッテリ取付部を台座本体よりも下方に張出させることで、バッテリ式扇風機の重心の位置が低くなる。これにより大きくて重いバッテリを装着する場合でも、バッテリ式扇風機の設置の安定性を高くすることができる。
【0012】
本開示の他の特徴によると台座本体の下面前領域には、凹凸形状からなる取手が設けられる。したがって使用者が取手を把持してバッテリ式扇風機を持つ際に、バッテリが取手の把持の妨げにならない。しかも取手を把持する際にバッテリが下側に位置する。そのためバッテリを取付けたバッテリ式扇風機の重心が取手の下方近傍に位置する。これによりバッテリの重量に対してバランス良く持つことができる。
【0013】
本開示の他の特徴によると左右の脚部は、上下方向に延出して台座本体を設置面から離間させて支持する左右の起立脚部と、各起立脚部の下端から設置面に沿って前後両方に延出する左右の設置脚部を有する。したがって左右方向のバランス良くできる。さらに前後方向についてもバランス良く安定した姿勢で設置できる。
【0014】
本開示の他の特徴によると連結部は、左右の設置脚部を連結する。台座本体と左右の脚部と連結部は、前方視で連結部を長辺とする等脚台形状である。したがって強度が高くかつ設置面に対して安定した姿勢で設置可能な台座で本体ハウジングを支持できる。
【0015】
本開示の他の特徴によると本体ハウジングは、前後方向に分離可能な前側ハウジングと後側ハウジングと、外周に沿って並設された複数の凹部を有する。したがって前側ハウジングと後側ハウジングを分離させる際に凹部に指を引き掛けることができる。そのため前側ハウジングと後側ハウジングを容易に分離できる。
【0016】
本開示の他の特徴によるとバッテリは、電動工具の電源として利用可能な矩形箱形の充電式バッテリパックである。したがって電動工具用のバッテリをバッテリ式扇風機にも適用できる。また、充電式のバッテリパックであるため、繰り返し使用できる。そのためバッテリ式扇風機の利便性が高くなる。バッテリは、矩形箱形であるためコンパクトに配置できる。そのためバッテリ式扇風機を様々な設置面に設置できる。
【0017】
本開示の他の特徴によると左右の脚部は、上下方向に延出して台座本体を設置面から離間させて支持する左右の起立脚部と、各起立脚部の下端から設置面に沿って前後両方に延出する左右の設置脚部を有する。連結部は、左右の設置脚部を連結する。台座本体と左右の脚部と連結部は、前方視で連結部を長辺とする等脚台形状である。バッテリは、電動工具の電源として利用可能な矩形箱形の充電式バッテリパックである。したがって左右方向および前後方向についてバランス良く安定した姿勢でバッテリ式扇風機を設置できる。また、強度が高くかつ設置面に対して安定した姿勢で設置可能な台座で本体ハウジングを支持できる。充電式で繰り返し利用可能な電動工具用のバッテリをバッテリ式扇風機にも適用できる。また、バッテリは、矩形箱形であるためコンパクトに配置できる。そのためバッテリ式扇風機を様々な設置面に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るバッテリ式扇風機の斜視図である。
図2】バッテリが取付けられた状態のバッテリ式扇風機の正面図である。
図3】バッテリが取付けられた状態のバッテリ式扇風機の後面図である。
図4】バッテリが取外した状態のバッテリ式扇風機の後面図である。
図5】バッテリが取付けられた状態のバッテリ式扇風機の右側面図である。
図6】バッテリが取付けられた状態のバッテリ式扇風機の平面図である。
図7】バッテリが取付けられた状態のバッテリ式扇風機の下面図である。
図8】バッテリが取外された状態のバッテリ式扇風機の下面図である。
図9】後側カバーを除いた状態の着脱ボタンの周囲の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の1つの実施形態を図1~9に基づいて説明する。図1,5に示すように扇風機(バッテリ式扇風機)1は、本体部10と、本体部10を支持する台座20を備えている。本体部10は、電動モータ11と、電動モータ11のモータ軸11aに装着された羽根12を有している。羽根12は、電動モータの駆動によってモータ軸11aの軸回りに回転する。羽根12が回転することで上流側から下流側へ送風される。以下の説明において、台座20に対して本体部10が配置される方向を上方とし、本体部10が初期位置である時の羽根12の送風上流側を後方とし、送風下流側を前方とする。左右方向については本体部10を前方から見た時を基準とする。
【0020】
図2,5に示すように羽根12は、正面視で円形の中央部12aと、中央部12aから径方向に延びる複数の翼12bを備えている。羽根12は、例えば3枚羽根形式であって、3枚の翼12bを備えている。羽根12は、モータ軸11aが中央部12aの中心を通るようにして電動モータ11に装着されている。
【0021】
図2,5に示すように本体部10は、電動モータ11と羽根12を収容する本体ハウジング13を有している。本体ハウジング13は、円形椀状の前側ハウジング13aと後側ハウジング13bを前後方向に相互に接続することで形成されている。前側ハウジング13aと後側ハウジング13bは、羽根12の前後両側に位置する網目部13eを有している。網目部13eは、径方向から周方向に傾いて延びる放射枠13fと、周方向に延びる同心円状の周方向枠13gを備えている。網目部13eによって羽根12が前後両側から保護される。
【0022】
図1,5,6に示すように前側ハウジング13aは、外周に円筒状の前側外周部13cを有している。前側外周部13cの前端には、前側ハウジング13aの径方向に凹みを有する複数の凹部13hと、前側ハウジング13aの径方向に張出した複数の凸部13iが設けられている。凹部13hは、前後方向の略中央に谷部を有するV字状の溝に形成されている。凸部13iの外周面は、前側外周部13cの外周面に倣って円弧状に延びている。複数の凹部13hと複数の凸部13iは、前側ハウジング13aの周方向に交互に並んで配置されている。周方向に隣接する凹部13hと凸部13iは、傾斜面13kによって連結されている。傾斜面13kは、正面視で前側ハウジング13aの外周面の接線方向に対して傾斜した三角形状の平面である。後側ハウジング13bは、外周に円筒状の後側外周部13dを有している。後側外周部13dにも、前側外周部13cと同様に、後側ハウジング13bの周方向に交互に並んだ複数の凹部13hと複数の凸部13iが設けられている。周方向に隣接する凹部13hと凸部13iの間には、傾斜面13kが設けられている。
【0023】
図3,5に示すように電動モータ11は、後側ハウジング13bの中央部に支持されている。電動モータ11に装着された羽根12も後側ハウジング13bに支持されている。後側ハウジング13bの上部には、左右方向に延びるループ形状のループハンドル13jが設けられている。ループハンドル13jは、使用者が扇風機1を把持する把持部や、例えば壁に設けられたフック等に引き掛ける引掛部として用いることができる。
【0024】
図5,9に示すように後側外周部13dの後面には、取外しボタン14が設けられている。取外しボタン14は、後方から前方に向けて押すことができる。取外しボタン14は、後側ハウジング13bの内部に設けられた圧縮ばね14aによって後方に向けて付勢されている。取外しボタン14の前部には、前後方向に延びる係合ピン14bが設けられている。係合ピン14bは、後側外周部13dの前面から前方に突出している。前側外周部13cの後面には、係合ピン14bと対向する位置に長孔14cが設けられている。長孔14cは、前側ハウジング13aの周方向に弧状に延びている。
【0025】
図9に示すように係合ピン14bは、長孔14cに進入可能である。長孔14cは、周方向の一端(上端)に孔径が小さい縮径部を有する。係合ピン14bの先端は、縮径部と係合可能に一部が径方向に膨出または径方向に溝が設けられている。長孔14cの縮径部と係合ピン14bが係合することで、前側ハウジング13aと後側ハウジング13bが前後方向に結合される。取外しボタン14を圧縮ばね14aの付勢力に抗して後方に押すと、係合ピン14bが前方に突出して長孔14cの縮径部との係合が解除される。この状態で前側ハウジング13aを後側ハウジング13bに対して周方向(図9において時計回り)に回転させる。これにより係合ピン14bを長孔14cの下端から外すことができる。かくして前側ハウジング13aを後側ハウジング13bから取外すことができる。
【0026】
図1,2に示すように本体部10は、本体ハウジング13を上下方向および左右方向に回転可能に支持する本体支持部15を有している。本体支持部15は、左右回転支持部15cと左右の支持アーム15aを有している。左右回転支持部15cは、水平に延びる円板形状である。左右回転支持部15cは、上下方向に延びる左右回転軸15eを中心に回転可能に台座20の上部に取付けられている。左右の支持アーム15aは、左右回転支持部15cから左右両側に向けて前側外周部13cと後側外周部13dの外周に沿って円弧状に延びている。支持アーム15aの上端には、本体ハウジング13を左右両側から支持する上下傾動支持部15bが設けられている。上下傾動支持部15bは、水平に延出する上下傾動軸15dを中心に傾動可能に本体ハウジング13を支持する。
【0027】
図2に示すように台座20は、本体部10の下方に設けられている。台座20は、水平方向(左右方向)に長手方向を有する箱形の台座本体21と、台座本体21の左右両側から下方に延出する左右の脚部22を有している。台座本体21には、左右回転支持部15cを左右回転軸回りに所定角度(例えば約90°)で揺動運動(左右首振り運動)させる首振り機構28が設けられている。首振り機構28によって本体ハウジング13が左右首振り運動する。これにより羽根12の送風方向が左右方向に周期的に変化する。
【0028】
図2に示すように台座本体21の中央部には、左右両側よりも上面高さが低い上面凹部21aが設けられている。そのため台座本体21は、中央が左右両側よりも低い正面視でV字状の鞍形状である。台座本体21は、例えば正面視でU字状であっても良い。上面凹部21aに左右回転支持部15cが設けられている。台座本体の前面上部は、前方に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した前方傾斜面21bが設けられている。前方傾斜面21bには、パネル状の操作部21cが設けられている。操作部21cには、電源スイッチ、風量スイッチ、タイマースイッチ、首振りスイッチ等が設けられている。操作部21cには、電源スイッチは、押すことで電動モータ11への電力供給状態を切替える。風量スイッチは、押すことで電動モータ11の動作状態を切替える。タイマースイッチは、押すことで電動モータ11の駆動時間を切替える。首振りスイッチは、押すことで首振り機構28の動作状態を切替える。
【0029】
図4に示すように台座本体21の後面21dの中央部には、バッテリ取付部26が設けられている。バッテリ取付部26の上端は、上面凹部21aと略同じ高さもしくは上面凹部21aよりも低い高さに位置する。バッテリ取付部26は、台座本体21の下面21eよりも下方まで延出している。バッテリ取付部26のバッテリ取付面26aは、後方を向きかつ上下方向に長手方向を有して延びている。
【0030】
図5,7に示すようにバッテリ取付部26には、バッテリ(充電式バッテリパック)27を取外し可能に装着できる。バッテリ27は、電動工具用であって、例えば電動ねじ締め機やグラインダ等の電動工具の電源として利用される。バッテリ27は、別途用意した充電器で充電でき、繰り返し電源として利用可能である。バッテリ27は、例えば18Vまたは36Vの直流電流を出力するリチウムイオンバッテリである。バッテリ27の出力電力は、バッテリ取付部26を介して電動モータ11に供給される。
【0031】
図5,7に示すようにバッテリ27は、バッテリ取付面26aの延びる前後方向に沿ってバッテリ取付部26に着脱可能である。バッテリ27をバッテリ取付面26aに沿って上から下方に向けてスライドさせる。これによりバッテリ27をバッテリ取付部26に装着できる。バッテリ取付部26に設けられた取外しボタンを押した状態で、バッテリ27をバッテリ取付面26aに沿って下から上方に向けてスライドさせる。これによりバッテリ27をバッテリ取付部26から取外すことができる。バッテリ取付部26に装着されたバッテリ27の下端は、設置面Fよりも上方に位置する。
【0032】
図7,8に示すように台座本体21の下面21eの前部には、上方に向けて凹形状の取手21fが設けられている。使用者は、取手21fに指を引き掛けて台座本体21を把持できる。使用者が取手21fで台座本体21を把持すると、バッテリ取付部26が概ね取手21fの下方に位置する。そのため扇風機1の重心が低い位置になり、バランス良く扇風機1を持ち運びできる。
【0033】
図1,2,5に示すように左右の脚部22は、上下方向に沿って延出する起立脚部23と、前後方向に水平に延出する設置脚部24を有している。左右の起立脚部23は、台座本体21の左右両側部から下方に向けて延出している。左右の起立脚部23は、下方に向かうにしたがって左右方向の間隔が互いに拡がるように傾斜して延出している。設置脚部24は、起立脚部23の下端に設けられている。設置脚部24は、起立脚部23の下端から前方に延出する前方延出部24aと、起立脚部23の下端から後方に延出する後方延出部24bを有している。前方延出部24aは、台座本体21の前端よりも前方に延出している。後方延出部24bは、バッテリ取付部26よりも後方に延出し、例えばバッテリ取付部26に装着されたバッテリ27の前後方向の略中央部まで延出している。
【0034】
図1,2,7に示すように左右の設置脚部24の中央部は、左右方向に延出する板状の連結部25によって連結されている。台座本体21と左右の脚部22と連結部25は、正面視で等脚台形状を形成している。連結部25は、上下方向に板厚方向を有する。連結部25は、上下方向において本体ハウジング13とオーバーラップしている。連結部25は、左右方向に見て高さが変化する段付部25bを左右両側部に有している。左右の段付部25bに挟まれた連結部25の中央部は、設置脚部24の下面と略同じ高さまで下げられている。左右の段付部25bの間には、複数の円形孔25aが連結部25を板厚方向に貫通して設けられている。円形孔25aを利用して連結部25を例えば三脚に取り付けることができる。これにより三脚に扇風機1を取り付けることができる。
【0035】
上述するように扇風機1は、図5に示すように電動モータ11と、電動モータ11により回転する羽根12と、羽根12を収容する本体ハウジング13を有する。扇風機1は、台座20とバッテリ取付部26を有する。台座20は、本体ハウジング13を設置面Fに対して起立させて支持する。バッテリ取付部26は、羽根12の送風上流側である台座20の後面21dに設けられ、かつ電動モータ11に電力を供給するバッテリ27が台座20の後面21dに沿って着脱可能である。
【0036】
したがって設置面に設置または取付けられて姿勢が安定する台座20にバッテリ取付部26が設けられる。そのため扇風機1は、バッテリ取付部26にバッテリ27を取付けて使用する際の姿勢が安定する。バッテリ取付部26が台座20の後面21dに設けられかつバッテリ27を台座20の後面21dに沿って着脱可能であることで、大きいサイズのバッテリ27を取付けることができる。
【0037】
図1,2に示すように台座20は、台座本体21と左右の脚部22と連結部25を有する。台座20が本体ハウジング13より下方に位置する姿勢において、台座本体21は、本体ハウジング13を左右方向または上下方向に回転可能に支持する。左右の脚部22は、台座本体21の左右両側から延出しかつ下方に向かうにしたがって互いの間隔が左右方向に拡がる。連結部25は、台座本体21より下方において左右の脚部22を連結する。したがって左右の脚部22は、下方に向かうにしたがって間隔が広くなるいわゆる末広がりの形状を有する。そのため設置面Fに対する本体ハウジング13および台座20の姿勢をより安定させることができる。さらに左右の脚部を連結部25が連結することで台座20の強度が高くなる。これにより台座20の姿勢の安定性を高めることができる。
【0038】
図2に示すように台座本体21は、前方視で中央部が左右両側よりも下方に位置する鞍形状である。したがって本体ハウジングは、台座本体21の中央部において設置面Fに近い位置で台座本体21に支持される。そのため扇風機1の重心の位置が低くなる。これにより扇風機1を設置面Fに設置または取付ける際の安定性を高めることができる。
【0039】
図4,5に示すようにバッテリ取付部26は、バッテリ27が上から下方にスライドすることで装着される構成であり、かつ台座本体21よりも下方に張出している。したがって扇風機1を設置面Fに設置または取付けた状態で、バッテリ27を容易に装着できる。バッテリ取付部26を台座本体21よりも下方に張出させることで、扇風機1の重心の位置が低くなる。これにより大きくて重いバッテリ27を装着する場合でも、扇風機1の設置の安定性を高くすることができる。
【0040】
図7に示すように台座本体21の下面前領域には、凹凸形状からなる取手21fが設けられる。したがって使用者が取手21fを把持して扇風機1を持つ際に、バッテリ27が取手21fの把持の妨げにならない。しかも取手21fを把持する際にバッテリ27が下側に位置する。そのためバッテリ27を取付けた扇風機1の重心が取手21fの下方近傍に位置する。これによりバッテリ27の重量に対してバランス良く持つことができる。
【0041】
図2,5に示すように左右の脚部22は、上下方向に延出して台座本体21を設置面Fから離間させて支持する左右の起立脚部23と、各起立脚部23の下端から設置面Fに沿って前後両方に延出する左右の設置脚部24を有する。したがって左右方向のバランス良くできる。さらに前後方向についてもバランス良く安定した姿勢で設置できる。
【0042】
図2,7に示すように連結部25は、左右の設置脚部24を連結する。台座本体21と左右の脚部22と連結部25は、前方視で連結部25を長辺とする等脚台形状である。したがって強度が高くかつ設置面Fに対して安定した姿勢で設置可能な台座20で本体ハウジングを支持できる。
【0043】
図5,6に示すように本体ハウジング13は、前後方向に分離可能な前側ハウジング13aと後側ハウジング13bと、外周に沿って並設された複数の凹部13hを有する。したがって前側ハウジング13aと後側ハウジング13bを分離させる際に凹部13hに指を引き掛けることができる。そのため前側ハウジング13aと後側ハウジング13bを容易に分離できる。
【0044】
図3,5に示すようにバッテリ27は、電動工具の電源として利用可能な矩形箱形の充電式バッテリパックである。したがって電動工具用のバッテリ27を扇風機1にも適用できる。また、充電式のバッテリパックであるため、繰り返し使用できる。そのため扇風機1の利便性が高くなる。バッテリ27は、矩形箱形であるためコンパクトに配置できる。そのため扇風機1を様々な設置面Fに設置できる。
【0045】
以上説明した扇風機1には種々変更を加えることができる。バッテリ27は、例示した出力電圧に限らず、例えば10.8V、14.4Vの出力のものであっても良い。バッテリ取付部26は、バッテリ27を左右方向に着脱させる構成であっても良い。連結部25は、例えば柱状、筒状、棒状等であっても良い。首振り機構28を具備しない扇風機にも適用することができる。また、左右回転支持部15cまたは上下傾動支持部15bによる本体ハウジング13の回転機構を有さない扇風機に適用しても良い。取外しボタン14による前側ハウジング13aと後側ハウジング13bの着脱構造に代えて、例えば前側ハウジング13aを周方向に回転させることで後側ハウジング13bにねじ係合させる構造であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…扇風機(バッテリ式扇風機)
10…本体部
11…電動モータ、11a…モータ軸
12…羽根、12a…中央部、12b…翼
13…本体ハウジング、13a…前側ハウジング、13b…後側ハウジング
13c…前側外周部、13d…後側外周部、13e…網目部、13f…放射枠
13g…周方向枠、13h…凹部、13i…凸部、13j…ループハンドル
13k…傾斜面
14…取外しボタン、14a…圧縮ばね、14b…係合ピン、14c…長孔
15…本体支持部、15a…支持アーム、15b…上下傾動支持部
15c…左右回転支持部、15d…上下傾動軸、15e…左右回転軸
20…台座
21…台座本体、21a…上面凹部、21b…前方傾斜面、21c…操作部
21d…後面、21e…下面、21f…取手
22…脚部
23…起立脚部
24…設置脚部、24a…前方延出部、24b…後方延出部
25…連結部、25a…円形孔、25b…段付部
26…バッテリ取付部、26a…バッテリ取付面
27…バッテリ(充電式バッテリパック)
28…首振り機構
F…設置面
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9