IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アロン化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図1
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図2
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図3
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図4
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図5
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図6
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図7
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図8
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図9
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図10
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図11
  • 特許-継手、継手セットおよび排出システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】継手、継手セットおよび排出システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/02 20060101AFI20240717BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16L21/02 F
E03C1/12 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020204981
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092272
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄大
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】中島 修一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-037041(JP,A)
【文献】米国特許第02314386(US,A)
【文献】米国特許第02809853(US,A)
【文献】特許第3413159(JP,B2)
【文献】実開昭51-141757(JP,U)
【文献】実開平03-114674(JP,U)
【文献】特開2000-035135(JP,A)
【文献】実開昭56-138996(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0116920(KR,A)
【文献】中国実用新案第205446922(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1785632(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02282098(EP,A2)
【文献】特開2017-002934(JP,A)
【文献】特開2013-072522(JP,A)
【文献】特開2019-027577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
E03C
E03F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続管に挿入される挿入端部を有する筒状の差口部と、
前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、
前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、
前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記接続管の内周面に接触可能な接触部と、
を有し、
前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長く、
前記差口部の外周面に凹むように設けられ、前記シール部材の前記接触部が前記差口部側に撓んだときに前記接触部の少なくとも一部が収まる収容凹部を備えた、継手。
【請求項2】
接続管に挿入される挿入端部を有する筒状の差口部と、
前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、
前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、
前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記接続管の内周面に接触可能な接触部と、
を有し、
前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長く、
前記差口部の外周面には、前記差口部の周方向に沿った環状の第1溝および環状の第2溝が前記差口部の軸方向に並ぶように形成され、
前記シール部材は、前記第1溝および前記第2溝の一方に選択的に装着可能に構成され、
前記第1溝と前記第2溝との間の前記差口部の外周面の部分には、前記差口部を径方向に切断するための切断目印が付されている、継手。
【請求項3】
接続管に挿入される挿入端部を有する筒状の差口部と、
前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のシール部材と、
他の接続管が挿入される筒状の受口部と、
を備え、
前記シール部材は、
前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、
前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記接続管の内周面に接触可能な接触部と、
を有し、
前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長く、
前記受口部の内径は、前記差口部の内径よりも大きく、
前記差口部の内周面の一部と、前記受口部に挿入された前記他の接続管の内周面の一部とが面一になるように、前記差口部の中心軸と前記受口部の中心軸とがズレて配置されており、
前記受口部と前記差口部とを連結し、前記受口部から前記差口部に向かって傾斜した傾斜面を有する連結傾斜部と、
前記傾斜面から前記差口部の径方向の外方に突出し、前記差口部が前記接続管に挿入されたときに、前記接続管が当接可能な少なくとも3つの突起と、
を備えた、継手。
【請求項4】
前記接触部は、先端部を有し、
前記先端部は、前記差口部の径方向の外方に向かって突出した凸部を有する、請求項1から3までの何れか1つに記載された継手。
【請求項5】
前記接触部は、前記差口部側とは反対側に設けられ、前記差口部側とは反対側に凸になるように湾曲した湾曲面を有する、請求項1から4までの何れか1つに記載された継手。
【請求項6】
前記差口部の外周面には、リブが設けられている、請求項1から5までの何れか1つに記載された継手。
【請求項7】
継手と、
前記継手に接続された受口部材と、
を備え、
前記受口部材は、
第1接続管が挿入される接続受口部と、
前記継手に挿入される接続差口部と、
を備え、
前記継手は、
前記受口部材の前記接続差口部が挿入される筒状の受口部と、
第2接続管に挿入される挿入端部を有する筒状の差口部と、
前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、
前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、
前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記第2接続管の内周面に接触可能な接触部と、
を有し、
前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長く、
前記継手に接続される他の受口部材を備え、
前記他の受口部材は、
前記第1接続管が挿入される他の接続受口部と、
前記継手に挿入される他の接続差口部と、
を備え、
前記継手の前記受口部は、前記受口部材の前記接続差口部と、前記他の受口部材の前記他の接続差口部とのうちの1つを選択的に接続可能に構成されている、継手セット。
【請求項8】
請求項1から6までの何れかに記載された継手と、
前記継手の前記差口部が挿入される接続管と、
を備え、
前記差口部が前記接続管に挿入されていない状態において、前記接触部の先端の径は、前記接続管の内径よりも大きく、
前記基部の外径は、前記接続管の内径よりも小さい、排出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手、継手セットおよび排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各家庭から排出される排水を下水本管に流す排出システムが知られている。排出システムは、排水を排出する排水設備と、下水本管とを接続する接続管路を備えている。接続管路は、例えば陶磁器で形成された陶管によって構成されているものがあり得る。陶磁器製の接続管路が老朽化することで、老朽化した接続管路の一部が、樹脂製の接続管路に取り換えられる。このとき、陶磁器製の接続管路と、樹脂製の接続管路とは、材料が異なるために接着剤で接続することができず、接続箇所を止水し難い。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、樹脂製の上流側の接続管路と、陶磁器製の下流側の接続管路(以下、単に陶管という。)と、を繋ぐ継手が開示されている。この継手は、樹脂製の接続管路が内部に挿通される受口、および、陶管の内部に挿入する差口が形成された樹脂製の継手本体と、継手本体の差口側の外周面に取り付けられた環状の弾性体とを備えている。継手本体の差口を陶管内に挿入したとき、弾性体が陶管の内周面に密着することで、継手と陶管との間を止水することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3413159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、陶管は製造時に寸法の誤差が生じ易く、陶管の内径についても誤差が生じ易い。また、陶管以外の例えばコンクリート製や樹脂製の管であっても、多少の内径誤差が生じ得る。以下、陶管、および、陶管以外のコンクリート製や樹脂製の管のことを総じて接続管という。例えば接続管の内径にプラスの誤差が生じている場合には、継手本体の差口を接続管内に挿入したときに、継手の弾性体と接続管の内周面との間の密着力が弱くなる。その結果、継手と接続管との間を確実に止水できないことがあった。
【0006】
また、特許文献1には、陶管の内周面に、周方向に沿ったゴム製のパッキンが取り付けられ、陶管のゴム製のパッキンと、継手の弾性体とを密着させることで、止水性を高めることが記載されている。しかしながら、陶管のゴム製のパッキンは、陶管よりも老朽化することが早いと考えられ、パッキンが老朽化することで、継手と陶管との間を確実に止水できないことがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内径誤差が生じ得る接続管に接続される継手において、継手と接続管との間を止水することが可能な継手、継手セットおよび排出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る継手は、差口部と、シール部材とを備えている。前記差口部は、接続管に挿入される挿入端部を有する筒状のものである。前記シール部材は、前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のものである。前記シール部材は、前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記接続管の内周面に接触可能な接触部とを有している。前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長い。
【0009】
前記継手によれば、接続管を差口部に接続するとき、差口部を接続管に挿入する。このとき、シール部材の接触部が差口部と接続管との間で撓んだ状態になり、接続管の内周面に密着する。よって、接続管を差口部に接続したとき、継手と接続管との間を止水することができる。また、前記継手によれば、シール部材において接触部における斜めに延びた方向の長さは、基部における差口部の軸方向の長さよりも長い。このことで、仮に接続管において内径誤差が発生している場合であっても、接触部が撓んだ状態で接続管の内周面に接触し易い。そのため、仮に接続管において内径誤差が発生している場合であっても、シール部材の接触部の撓む角度が変わり、シール部材の接触部が差口部と接続管との間で撓んだ状態で、差口部の外方に向かう接触部の弾性力が発生するため、接触部が接続管の内周面に押し付けられた状態になる。よって、接続管に内径誤差が発生している場合であっても、接触部を接続管の内周面に密着させることができるため、継手と接続管との間を止水することができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記接触部は、先端部を有している。前記先端部は、前記差口部の外方に向かって径方向に突出した凸部を有している。
【0011】
上記態様によれば、先端部の径は、凸部の大きさ分、大きくなる。よって、例えば接続管の内径にプラスの誤差が生じている場合であっても、先端部の凸部を接続管の内周面に密着させることができる。したがって、接続管の内径にプラスの誤差が生じている場合であっても、接触部を接続管の内周面に密着させることができるため、継手と接続管との間を止水することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記接触部は、前記差口部側とは反対側に設けられ、前記差口部側とは反対側に凸になるように湾曲した湾曲面を有している。
【0013】
上記態様によれば、差口部が接続管に挿入されたとき、接触部の湾曲面は、接続管の内周面に向かって突出した状態になる。よって、接続管の内周面と湾曲面とが接触し易くなり、接続管の内周面とシール部材の接触部との接触面積を大きくすることができる。したがって、継手と接続管との間の止水性をより高めることができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記継手は、前記差口部の外周面に凹むように設けられ、前記シール部材の前記接触部が前記差口部側に撓んだときに前記接触部の少なくとも一部が収まる収容凹部を備えている。
【0015】
上記態様によれば、収容凹部に収容された接触部の部分の大きさ分、接触部が差口部側に撓んだときの収容凹部に収まった接触部の部分の最小径を小さくすることができる。よって、差口部を接続管に挿入しているときに、接触部の少なくとも一部が収容凹部に収容された状態で挿入されるため、挿入し易い。また、接続管の内径誤差が、上記の収容凹部に収まった接触部の部分の最小径程のマイナスの誤差であっても、差口部を接続管に挿入し、接続管に接続することができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記差口部の外周面には、リブが設けられている。
【0017】
上記態様によれば、差口部をリブによって補強しつつ、差口部の軽量化を図ることができる。差口部はリブによって補強されるため、差口部を接続管に挿入する際、より大きな力で挿入することができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記差口部の外周面には、前記差口部の周方向に沿った環状の第1溝および環状の第2溝が前記差口部の軸方向に並ぶように形成されている。前記シール部材は、前記第1溝および前記第2溝の一方に選択的に装着可能に構成されている。
【0019】
例えば継手を配置する範囲が狭い場合には、差口部を切断して短くすることがあり得る。上記態様によれば、差口部を切断して、第1溝および第2溝のうちの片方(例えば第1溝)が形成された部分が切り離された場合であっても、残りの片方の溝(例えば第2溝)にシール部材を装着することができる。よって、差口部が切断された場合であっても、切断された後の差口部にシール部材を適切な位置に装着することができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1溝と前記第2溝との間の前記差口部の外周面の部分には、前記差口部を径方向に切断するための切断目印が付されている。
【0021】
上記態様によれば、切断目印に沿って差口部を切断することで、第1溝と第2溝のうちの一方の溝を残した状態で、差口部を適切な位置で切断することができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記継手は、他の接続管が挿入される筒状の受口部を備えている。前記受口部の内径は、前記差口部の内径よりも大きい。前記差口部の内周面の一部と、前記受口部に挿入された前記他の接続管の内周面の一部とが面一になるように、前記差口部の中心軸と前記受口部の中心軸とがズレて配置されている。
【0023】
上記態様によれば、差口部の内周面の一部と、受口部に挿入された他の接続管の内周面の一部との間に段差が生じない。よって、排水を流すとき、排水に含まれる異物などが引っ掛かり難くなるため、排水を円滑に流すことができる。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記継手は、前記受口部と前記差口部とを連結し、前記受口部から前記差口部に向かって傾斜した傾斜面を有する連結傾斜部と、前記傾斜面から前記差口部の径方向の外方に突出し、前記差口部が前記接続管に挿入されたときに、前記接続管が当接可能な少なくとも3つの突起と、を備えている。
【0025】
差口部が接続管の奥まで挿入されたとき、接続管が差口部を超えて連結傾斜部の傾斜面に乗り上げることが考えられる。仮に接続管が傾斜面に乗り上げると、接続管の軸と、差口部の軸とがズレるため、接続管と差口部とを適切に接続できないことがある。しかしながら、上記態様によれば、差口部が接続管の奥まで挿入されたとき、傾斜面に設けられた突起に接続管が接触する。よって、接続管が傾斜面に乗り上げることを防止することができる。したがって、接続管の軸と、差口部の軸とが一致し易く、接続管と差口部とを適切に接続することができる。
【0026】
本発明に係る継手セットは、継手と、前記継手に接続された受口部材と、を備えている。前記受口部材は、第1接続管が挿入される接続受口部と、前記継手に挿入される接続差口部と、を備えている。前記継手は、受口部と、差口部と、シール部材とを備えている。前記受口部は、前記受口部材の前記接続差口部が挿入される筒状のものである。前記差口部は、第2接続管に挿入される挿入端部を有する筒状のものである。前記シール部材は、前記差口部の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のものである。前記シール部材は、前記差口部の外周面に設けられ、前記差口部の軸方向に延びた基部と、前記基部に接続され、前記差口部の外周面から、前記差口部の径方向の外方に向かうにしたがって前記差口部の前記挿入端部から離れるように斜めに延び、少なくとも一部が前記第2接続管の内周面に接触可能な接触部とを有している。前記接触部における斜めに延びた方向の長さは、前記基部における前記差口部の軸方向の長さよりも長い。
【0027】
本発明の好ましい一態様によれば、前記継手セットは、前記継手に接続される他の受口部材を備えている。前記他の受口部材は、前記第1接続管が挿入される他の接続受口部と、前記継手に挿入される他の接続差口部と、を備えている。前記継手の前記受口部は、前記受口部材の前記接続差口部と、前記他の受口部材の前記他の接続差口部とのうちの1つを選択的に接続可能に構成されている。
【0028】
上記態様によれば、継手の受口部には、受口部材を接続すること、および、他の受口部材を接続することの両方が可能である。よって、継手セットを使用する施工現場に応じて、継手の受口部に接続する受口部材を選択することができる。
【0029】
本発明に係る排出システムは、上述の何れかの継手と、前記継手の前記差口部が挿入される接続管と、を備えている。前記差口部が前記接続管に挿入されていない状態において、前記接触部の先端の径は、前記接続管の内径よりも大きい。前記基部の外径は、前記接続管の内径よりも小さい。
【0030】
前記排出システムによれば、仮に接続管において内径誤差が発生している場合であっても、継手の接触部が接続管の内周面に接触し易い。そのため、シール部材の接触部が差口部と接続管との間で撓んだ状態で、差口部の外方に向かう接触部の弾性力が発生するため、接触部が接続管の内周面に押し付けられた状態になる。よって、接続管において内径誤差が発生している場合であっても、接触部を接続管の内周面に密着させることができるため、継手と接続管との間を止水することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、内径誤差が生じ得る接続管に接続される継手において、継手と接続管との間を止水することが可能な継手、継手セットおよび排出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】継手および受口部材が設けられた排出システムを模式的に示した図である。
図2】実施形態に係る継手および受口部材の平面図である。
図3】実施形態に係る継手および受口部材の正面図である。
図4図2のIV-IV断面における継手および受口部材の断面図である。
図5図3のV-V断面における継手の断面図である。
図6】差口部を切断した後の継手を示す図4相当図である。
図7】シール部材の断面図である。
図8】シール部材の凸部が下流接続管の内周面に接触している状態を示す継手の正面拡大断面図である。
図9】シール部材の先端部の一部が収容凹部に収容された状態を示す継手の正面拡大断面図である。
図10】継手および他の受口部材の正面図である。
図11】継手および他の受口部材の正面図である。
図12】継手および他の受口部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。ここで説明される実施の形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。
【0034】
本実施形態に係る継手30は、図1に示すように、排水を排出する排出システム1の途中部分に設けられるものである。排出システム1は、例えばトイレ、風呂、台所の流し台などの排水設備(図示せず)から排出された排水を、下水本管3に流すシステムである。
【0035】
排出システム1は、例えば上記排水設備に接続された上流側管路5と、上流側管路5よりも下流側に配置され、下水本管3に接続された下流側管路7とを備えている。上流側管路5および下流側管路7の構成は特に限定されるものではない。ここでは、上流側管路5および下流側管路7は、複数の管路部材から構成されている。管路部材には、管、2つの管を繋ぐ継手または「ます」(例えば公共ます)などが含まれる。
【0036】
本実施形態では、上流側管路5は、上流接続管6を有している。上流接続管6は、上流側管路5の最下流の位置に配置される管である。上流接続管6は、樹脂製であり、例えば塩化ビニル樹脂によって形成されている。本実施形態では、上流接続管6は、本発明の第1接続管の一例である。
【0037】
下流側管路7は、下流接続管8を有している。下流接続管8は、下流側管路7の最上流の位置に配置される管である。下流接続管8は、本発明の接続管および第2接続管の一致例である。下流接続管8は、製造時において内径誤差が生じ得る管である。下流接続管8は、例えば陶磁器製またはコンクリート製(例えば鉄筋コンクリート製)である。ここで、陶磁器製の管とは、いわゆる陶管のことであり、コンクリート製の管とは、いわゆるヒューム管のことである。ただし、下流接続管8の材質は特に限定されず、例えば下流接続管8は、樹脂製であり、例えば塩化ビニル樹脂によって形成されてもよい。以下、下流接続管8は陶管であるとする。
【0038】
なお、上流接続管6以外の上流側管路5を構成する管路部材、および、下流接続管8以外の下流側管路7を構成する管路部材について、材料は限定されず、樹脂製であってもよいし、陶磁器製またはコンクリート製であってもよい。本実施形態では、上流側管路5を構成する管路部材は、樹脂製であり、下流側管路7を構成する管路部材は、陶磁器製である。
【0039】
本実施形態に係る継手30は、上流側管路5と下流側管路7との間に配置されており、上流側管路5の上流接続管6と、下流側管路7の下流接続管8とを繋ぐものである。ここでは、継手30は、下流接続管8に直接接続されるが、上流接続管6について受口部材20を介して間接的に接続されている。ただし、継手30は、受口部材20を介さずに上流接続管6に直接接続されてもよい。本実施形態では、継手30および受口部材20によって継手セット10が構成されている。継手セット10は、受口部材20と、継手30とを備えている。
【0040】
受口部材20は、上流側管路5の上流接続管6と継手30との間に配置され、上流接続管6および継手30に接続される。図2に示すように、受口部材20は、接続受口部21と、接続差口部22とを備えている。
【0041】
図4に示すように、接続受口部21は、筒状のものである。接続受口部21には、上流側管路5の上流接続管6が接続される。接続受口部21には、上流接続管6が挿入される。本実施形態では、接続受口部21は、いわゆる自在受口である。接続受口部21の内周面には、上流接続管6が嵌め込まれる嵌合筒部25が設けられている。この嵌合筒部25は、接続受口部21に対して回転自在である。嵌合筒部25を回動させることで、接続受口部21に対する嵌合筒部25の角度、言い換えると嵌合筒部25に嵌め込まれた上流接続管6の角度を調整することができる。
【0042】
本実施形態では、接続受口部21の内部であって、嵌合筒部25の内周面には、ゴム製の環状の受口シール部材27が設けられている。受口シール部材27は、上流接続管6が接続受口部21に挿入されたとき、撓みながら上流接続管6の外周面に接触し、かつ、密着する。このことで、上流接続管6と接続受口部21との止水性を高めることができる。
【0043】
接続差口部22は、継手30に挿入されるものであり、言い換えると継手30に嵌め込まれる。接続差口部22は、接続受口部21と連続しており、内部で連通している。なお、受口部材20、すなわち接続受口部21および接続差口部22を形成する材料は特に限定されない。本実施形態では、接続受口部21および接続差口部22は、樹脂製であり、例えば塩化ビニル樹脂によって形成されている。
【0044】
次に、継手30について詳しく説明する。図1に示すように、本実施形態に係る継手30は、上流接続管6に接続された受口部材20と、下流側管路7の下流接続管8との間に配置され、受口部材20および下流接続管8に接続される。以下の継手30の説明では、継手30を横にした状態、すなわち継手30の軸方向が、水平方向に延びた状態を基準にしている。図4における紙面上の上が、継手30の上であり、当該紙面上の下が、継手30の下である。
【0045】
図4に示すように、継手30は、受口部31と、差口部33と、連結傾斜部35と、シール部材37とを備えている。受口部31には、受口部材20が接続され、受口部材20を介して上流側管路5の上流接続管6が間接的に接続される。本実施形態では、受口部31には、受口部材20の接続差口部22が挿入され、嵌め込まれる。受口部31は、筒状のものである。なお、受口部31の内周面には、上記の受口シール部材27のようなシール部材は設けられていない。受口部31と、受口部材20の接続差口部22とは、例えば接着剤によって互いが固定されている。
【0046】
差口部33は、排出システム1の下流側管路7に接続されている。詳しくは、差口部33には、下流側管路7の陶磁器製の下流接続管8が接続されている。本実施形態では、差口部33は、下流接続管8に挿入され、嵌め込まれる。差口部33は、筒状のものである。差口部33は、下流接続管8に挿入される挿入端部34を有している。挿入端部34は、筒状の差口部33における受口部31側と反対側の端部を構成しており、図4の矢印のように、挿入端部34から下流接続管8への挿入が開始される。
【0047】
本実施形態では、図2に示すように、受口部31の軸方向の長さL1は、差口部33の軸方向の長さL2よりも短い。ただし、受口部31の長さL1は、差口部33の長さL2と同じであってもよいし、長さL2よりも長くてもよい。本実施形態では、図4に示すように、受口部31の内径L3は、差口部33の内径L4よりも大きい。言い換えると、受口部31の開口面積は、差口部33の開口面積よりも大きい。
【0048】
受口部31の中心軸A1は、差口部33の中心軸A2と平行になるように配置され、中心軸A2に対してズレて配置されている。本実施形態では、差口部33の内周面の一部(ここでは管底)と、受口部31に挿入された受口部材20の接続差口部22の内周面の一部(ここでは管底)とが面一になるように、受口部31の中心軸A1は、差口部33の中心軸A2からズレて配置されている。受口部31の中心軸A1は、差口部33の中心軸A2よりも上方に配置されている。
【0049】
図3に示すように、差口部33の外周面には、差口部33の径方向の外方(以下、単に差口部33の外方ともいう。)に向かって突出したリブ40が設けられている。リブ40は、差口部33の周方向に沿うように、差口部33の外周面に設けられた環状のものである。なお、差口部33の外周面に設けられたリブ40の数は、特に限定されない。本実施形態では、リブ40の数は、6つである。6つのリブ40は、差口部33の軸方向に並んで配置されている。なお、本実施形態では、隣り合うリブ40の間隔は、異なっているが、同じであってもよい。
【0050】
連結傾斜部35は、受口部31と差口部33との間に配置されており、受口部31と差口部33とを連結させるものである。連結傾斜部35を介して受口部31と差口部33とは連通している。ここでは、連結傾斜部35は、受口部31から差口部33に向かって下方に傾斜する傾斜面42を有している。なお、本実施形態では、連結傾斜部35の管底部分は、傾斜されていない。
【0051】
連結傾斜部35には、突起45が設けられている。突起45は、傾斜面42から差口部33の外方に向かって突出している。本実施形態では、図5に示すように、突起45の数は3つである。ただし、突起45の数は3つに限定されず、4つ以上であってもよい。突起45は、差口部33が、下流接続管8内に挿入されたときに、下流接続管8が当接可能なものである。このことで、差口部33が更に奥に挿入されることが阻止され、下流接続管8が傾斜面42に乗り上げることを防止することができる。
【0052】
本実施形態では、3つの突起45を、それぞれ45a、45b、45cとする。ここで突起45aと突起45bは、継手30の下部において同じ高さの位置に配置され、平面視において差口部33の中心軸A2を挟んで配置されている。突起45cは、突起45aおよび突起45bとよりも高い位置に配置されており、平面視において差口部33の中心軸A2と重なっている。ここでは、突起45aと突起45bとの距離、突起45bと突起45cとの距離、および、突起45cと突起45aとの距離は、同じである。
【0053】
図3に示すシール部材37は、差口部33と下流側管路7の下流接続管8との間の止水性を高めるものである。シール部材37は、差口部33の外周面に設けられている。詳しくは、シール部材37は、挿入端部34の外周面に設けられている。シール部材37は、差口部33の周方向に沿った環状のものであり、可撓性を有している。シール部材37が撓んでいるときには、差口部33の外方に向かう弾性力が発生する。シール部材37を形成する材料は特に限定されない。本実施形態では、シール部材37を形成する材料は、弾性体であり、例えばゴムである。
【0054】
図4に示すように、シール部材37は、差口部33の周方向に沿って形成された環状の溝50に設けられる。ここでは、溝50の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。溝50の数が複数の場合、シール部材37は、差口部33に形成された複数の溝50のうちの1つの溝50に選択的に設けられる。本実施形態では、溝50は、第1溝51と、第2溝52とを有しており、図4および図6に示すように、シール部材37は、第1溝51と第2溝52とのうちの一方に選択的に装着可能に構成されている。なお、シール部材37を溝50に固定する方法は特に限定されない。ここでは、シール部材37は、溝50に嵌め込まれることで固定される。
【0055】
第1溝51および第2溝52は、環状の溝である。図4に示すように、第1溝51と第2溝52は、差口部33の軸方向に並んで配置されている。第1溝51は、切断されていない差口部33の挿入端部34、言い換えると下流接続管8に挿入される側の端部の外周面に、差口部33の周方向に沿って形成されている。詳しくは、第1溝51は、受口部31側から5つ目のリブ40と、6つ目のリブ40との間に形成されている。第2溝52は、第1溝51よりも受口部31側の差口部33の外周面に、差口部33の周方向に沿って形成されている。詳しくは、第2溝52は、受口部31側から2つ目のリブ40と、3つ目のリブ40との間に形成されている。
【0056】
なお、本実施形態では、第1溝51における受口部31側とは反対側の端には、第1溝51と隣り合うように第1盛上り部53が設けられている。同様に、第2溝52における受口部31側とは反対側の端には、第2溝52と隣り合うように第2盛上り部54が設けられている。第1盛上り部53および第2盛上り部54は、差口部33の外周面から外方に向かって突出している。なお、本実施形態では、第1盛上り部53および第2盛上り部54は、リブ40よりも突出していないが、リブ40よりも突出していてもよい。
【0057】
本実施形態では、図6に示すように、第2溝52にシール部材37が設けられるとき、差口部33を径方向に切断し、差口部33の軸方向の長さを短くして使用される。なお、差口部33が切断されたときは、切断された差口部33の部分が挿入端部34になる。ここでは、図3に示すように、差口部33の外周面には、差口部33の切断位置を示す切断目印55が付されている。切断目印55は、差口部33の周方向に沿って、差口部33の外周面に付されている。切断目印55は、第1溝51と第2溝52との間に位置する差口部33の外周面に付されており、本実施形態では、第1溝51よりも第2溝52側寄りに付されている。詳しくは、切断目印55は、受口部31側から3つめのリブ40と、4つ目のリブ40との間に形成されている。
【0058】
なお、切断目印55は、差口部33の外周面に描かれた線(例えばペンで描かれた線)であってもよいし、当該外周面に形成された溝であってもよい。また、切断目印55は、破線であってもよいし、連続した直線であってもよい。本実施形態では、切断目印55は、連続した直線の溝である。なお、切断目印55の差口部33の軸方向の位置は、切断されていない差口部33が下流接続管8に挿入されたときの下流接続管8の端の位置合わせの位置を示す稜線56(図4参照)と同じ位置である。稜線56は、差口部33の内周面に付されている。本実施形態では、切断目印55は、稜線56と同じように、切断されていない差口部33が下流接続管8に挿入されたときの下流接続管8の端の位置合わせの位置を示す。
【0059】
次に、シール部材37の構成について詳しく説明する。図7に示すように、シール部材37は、基部61と、接触部62とを有している。図4に示すように、基部61は、差口部33の外周面に設けられ、差口部33の軸方向に延びたものである。本実施形態では、基部61は、溝50に設けられた環状のものである。
【0060】
図8および図9は、差口部33が下流接続管8に挿入された状態を示す継手30の正面拡大断面図である。図8図9において、下流接続管8に内径誤差が生じ、図9の下流接続管8の内径は、図8の下流接続管8の内径よりも小さく、マイナスの内径誤差が生じている。図8および図9に示すように、接触部62は、差口部33が陶磁器製の下流接続管8に挿入されたときに、少なくとも一部が下流接続管8の内周面に接触する。図4に示すように、接触部62は、基部61に接続されており、基部61と連続している。ここでは、接触部62は、差口部33の外周面から、差口部33の外方に向かうにしたがって差口部33の挿入端部34から離れるように斜めに延びている。本実施形態では、接触部62と基部61とによって、断面形状がレ字状に形成されている。
【0061】
本実施形態では、図7に示すように、接触部62は、根元部65と、先端部66と、連結部67とを有している。図4に示すように、根元部65は、差口部33の外周面に設けられており、基部61と連続している部分である。先端部66は、根元部65よりも差口部33の外方に離れて位置しており、根元部65側よりも受口部31側に位置している。また、先端部66は、差口部33の外周面に設けられたリブ40よりも差口部33の外方に位置している。
【0062】
図7に示すように、先端部66は、差口部33の径方向、すなわち差口部33の軸方向と直交する方向に突出した凸部68を有している。図4に示すように、差口部33が下流接続管8に挿入されていない状態において、凸部68は、接触部62のうち差口部33から最も離れた位置に配置されている部位である。本実施形態では、図8に示すように、差口部33が下流接続管8内に挿入されたとき、シール部材37は、接触部62の根元部65から折れ曲がり、先端部66が差口部33に近づくように撓む。このように、シール部材37が撓んだ状態であっても、凸部68は、差口部33の外方に向かって突出した状態になる。
【0063】
図7に示すように、連結部67は、根元部65と先端部66とを連結させるものである。本実施形態では、接触部62は、湾曲面69を有している。図4に示すように、湾曲面69は、連結部67に設けられている。湾曲面69は、連結部67における差口部33側とは反対側に設けられており、差口部33側とは反対側に凸となるように湾曲している。本実施形態では、図9に示すように、差口部33が下流接続管8内に挿入されて、シール部材37の接触部62が差口部33に近づくように撓んだとき、湾曲面69は、差口部33の外方に凸となるように湾曲した状態になる。
【0064】
本実施形態では、図4に示すように、差口部33が下流接続管8に挿入されていない状態において、接触部62の先端部66の外径L10は、下流接続管8の内径L20よりも大きく、かつ、根元部65の外径L11よりも大きい。根元部65の外径L11は、下流接続管8の内径L20よりも小さい。なお、下流接続管8に内径誤差が生じている場合であっても、下流接続管8の内径L20は、先端部66の外径L10よりも小さく、根元部65の外径L11よりも大きい。ここでは、外径L10は、接触部62の先端の径と言い換えることが可能であり、凸部68の外径とも言い換えることが可能である。外径L11は、基部61の外径と言い換えることが可能である。
【0065】
例えば下流接続管8の内径L20は、135mm~165mmであり、好ましくは140mm~160mm、特に好ましくは145mm~155mmである。ここでは、下流接続管8の内径L20は、例えば150mmである。下流接続管8の内径誤差は、±5mm以下、例えば±4mm以下である。すなわち、内径誤差を加味すると、下流接続管8の内径L20は、130mm~170mmであり、好ましくは135mm~165mm、特に好ましくは140mm~160mmである。例えば下流接続管8の内径L20が150mmの場合には、内径誤差を加味した下流接続管8の内径L20は、145mm~155mmであり、例えば146mm~154mmである。接触部62の先端の径L10は、165mm~175mmであり、好ましくは170mm~173mm、特に好ましくは171mm~172mmである。ここでは、接触部62の先端の径L10は、例えば171.5mmである。そのため、下流接続管8に内径誤差が生じている場合であっても、差口部33が下流接続管8に挿入されるとき、接触部62は撓んだ状態になり、下流接続管8の内周面に密着する。
【0066】
図7に示すように、シール部材37において、接触部62における斜めに延びた方向の長さL31は、基部61における差口部33の軸方向の長さL32よりも長い。ここでは、接触部62の長さL31は、基部61の長さL32の1.1倍以上であり、好ましくは1.3倍以上であり、特に好ましくは1.5倍以上である。接触部62の長さL31は、20mm~30mmであり、好ましくは22mm~28mmであり、特に好ましくは22mm~26mmである。ここでは、接触部62の長さL31は、例えば24mmである。基部61の長さL32は、10mm~20mmであり、好ましくは13mm~18mmであり、特に好ましくは15mm~16mmである。ここでは、基部61の長さL31は、例えば15.5mmである。そのため、図8に示すように、接触部62が差口部33側に撓んだとき、接触部62の先端は、基部61よりも挿入端部34側とは反対側に突出した状態になる。
【0067】
本実施形態では、図9に示すように、差口部33が下流接続管8内に挿入されて、シール部材37の接触部62が差口部33に近づくように撓んだとき、接触部62の一部(ここでは先端部66の一部)が差口部33の外周面に接触することがあり得る。ここでは、差口部33の外周面には、接触部62が差口部33側に撓んだときに接触部62の一部(ここでは先端部66の一部)が収まる収容凹部57が設けられている。収容凹部57は、差口部33の外周面において凹むように形成されており、環状のものである。収容凹部57は、溝50よりは凹んでいないが、収容凹部57以外の差口部33の外周面の部分よりは、凹んでいる。
【0068】
図4に示すように、収容凹部57の数は、シール部材37が設けられる溝50の数と同じ数であり、本実施形態では2つである。一の収容凹部57は、第1溝51にシール部材37が設けられたときに、先端部66の一部が収容可能であり、かつ、接触可能である。一の収容凹部57は、第1溝51の近傍に設けられており、第1溝51側よりも受口部31側に配置されている。他の収容凹部57は、第2溝52にシール部材37が設けられたときに、先端部66の一部が収容可能であり、かつ、接触可能である。他の収容凹部57は、第2溝52の近傍に設けられており、第2溝52側よりも受口部31側に配置されている。
【0069】
継手30、言い換えると受口部31、差口部33および連結傾斜部35を形成する材料は、特に限定されない。本実施形態では、受口部31、差口部33および連結傾斜部35は、受口部材20と同じ材料で形成されており、樹脂製である。受口部31、差口部33および連結傾斜部35は、例えば塩化ビニル樹脂によって形成されている。
【0070】
以上、本実施形態に係る継手30の構成について説明した。次に、継手30を使用して、排出システム1の上流側管路5と下流側管路7を繋ぐ施工手順について説明する。図1に示す本実施形態に係る排出システム1では、例えば陶磁器製の下流側管路7は、既設の管路であり、既に地中に埋設されたものである。上流側管路5は、これから新規で使用されるものであり、今回の施工で新たに地中に埋設されるものである。本施工では、まず上流側管路5を地中に埋設する。
【0071】
本実施形態では、受口部材20と継手30とを備えた継手セット10が使用され、受口部材20と継手30とを固定した状態で使用する。図4に示すように、継手セット10では、継手30の受口部31に、受口部材20の接続差口部22が接続されている。受口部31に受口部材20の接続差口部22が挿入されており、受口部31と接続差口部22とは接着剤によって固定されている。
【0072】
このように継手30と受口部材20とが接着固定された継手セット10を施工現場に運ぶ。次に、排出システム1の上流側管路5の上流接続管6と、下流側管路7の下流接続管8との間隔に応じて、継手30における差口部33の軸方向の長さを決定し、かつ、シール部材37の位置を決定する。例えば上流接続管6と下流接続管8との間隔が大きい場合には、図4に示すように、継手30の差口部33を切断せずに、差口部33の第1溝51にシール部材37を設けた状態で継手30を使用する。
【0073】
一方、上流接続管6と下流接続管8との間隔が小さい場合には、図6に示すように、継手30の差口部33を径方向で切断して、差口部33の第2溝52にシール部材37を設ける。このとき、作業者は、のこぎりなどの切断器具(図示せず)を使用して、差口部33を径方向で切断する。ここでは、差口部33の外周面に付された切断目印55(図3参照)に沿って上記切断器具を使用して、差口部33を切断する。
【0074】
以上のように、継手30の差口部33の長さ、および、シール部材37の位置を決定した後、上流接続管6と下流接続管8との間に継手セット10、すなわち互いに固定した受口部材20および継手30を配置する。その後、図4に示すように、継手セット10の受口部材20と、上流側管路5の上流接続管6とを接続する。ここでは、受口部材20の接続受口部21に、上流接続管6を挿入し、接続受口部21内に配置された嵌合筒部25に嵌め込む。このことで、受口部材20に上流側管路5を接続することができる。
【0075】
次に、継手30を下流接続管8に接続する。ここでは、図4の矢印のように、継手30の差口部33を下流接続管8に挿入し、嵌合させる。このとき、作業者は、下流接続管8の端部が、継手30の傾斜面42に設けられた突起45に接触または近づくまで、差口部33を下流接続管8内に差し込む。このとき、図8および図9に示すように、シール部材37の接触部62は、根元部65で折れ曲がり、差口部33に向かって撓んだ状態になる。
【0076】
このように、下流接続管8の端部が突起45に接触または近づいた後、下流接続管8の端部が突起45から離れるように、差口部33を引っ張る。例えば差口部33が切断されていない場合、下流接続管8の端が、差口部33の外周面に付された切断目印55(図3参照)、および、差口部33の内周面に付された稜線56の位置に配置されるまで、差口部33を引っ張る。このとき、シール部材37の接触部62と、下流接続管8の内周面との間で摩擦力が発生する。このことで、接触部62が差口部33から若干起き上がり、接触部62と下流接続管8の内周面とがより密着し、継手30と下流接続管8との間の止水性をより高めることができる。
【0077】
なお、上記のように差口部33を下流接続管8から引っ張るとき、シール部材37が溝50から取り外されるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、溝51、52の隣には、盛上り部53、54が設けられており、盛上り部53、54によってシール部材37が溝50から取り外され難くなる。このようにして、継手30を下流側管路7に接続することができる。
【0078】
以上、本実施形態では、図1に示すように、排出システム1は、継手10と、接続管8とを備えている。図4に示すように、継手セット10は、受口部材20と、継手30とを備えている。受口部材20は、上流接続管6が挿入される接続受口部21と、継手30に挿入される接続差口部22と、を備えている。継手30は、差口部33と、シール部材37とを備えている。差口部33は、下流接続管8に挿入される挿入端部34を有する筒状のものである。シール部材37は、差口部33の外周面に設けられ、可撓性を有する環状のものである。シール部材37は、基部61と、接触部62とを有している。基部61は、差口部33の外周面に設けられ、差口部33の軸方向に延びている。接触部62は、基部61に接続され、差口部33の外周面から、差口部33の径方向の外方に向かうにしたがって差口部33の挿入端部34から離れるように斜めに延び、図9に示すように、少なくとも一部が下流接続管8の内周面に接触可能な接触部62を有している。図7に示すように、接触部62における斜めに延びた方向の長さL31は、基部61における差口部33の軸方向の長さL32よりも長い。図4に示すように、差口部33が下流接続管8に挿入されていない状態において、接触部62の先端の径L10は、下流接続管8の内径L20よりも大きい。基部61の外径L11は、下流接続管8の内径L20よりも小さい。
【0079】
本実施形態では、下流接続管8を差口部33に接続するとき、差口部33を下流接続管8に挿入する。このとき、図9に示すように、シール部材37の接触部62が差口部33と下流接続管8との間で撓んだ状態になり、下流接続管8の内周面に密着する。よって、下流接続管8を差口部33に接続したとき、継手30と下流接続管8との間を止水することができる。また、本実施形態では、図4に示すように、差口部33が下流接続管8に挿入されていない状態において、接触部62の先端の径L10は、下流接続管8の内径L20よりも大きい。そのため、仮に下流接続管8において内径誤差が発生している場合であっても、接触部62が撓んだ状態で下流接続管8の内周面に接触し易い。そのため、仮に下流接続管8において内径誤差が発生している場合であっても、シール部材37の接触部62の撓む角度が変わり、シール部材37の接触部62が差口部33と下流接続管8との間で撓んだ状態で、差口部33の外方に向かう接触部62の弾性力が発生するため、接触部62が下流接続管8の内周面に押し付けられた状態になる。よって、下流接続管8に内径誤差が発生している場合であっても、接触部62を下流接続管8の内周面に密着させることができるため、継手30と下流接続管8との間を止水することができる。
【0080】
本実施形態では、先端部66は、差口部33の外方に向かって径方向に突出した凸部68を有している。先端部66の径は、凸部68の大きさ分、大きくなる。よって、例えば下流接続管8の内径L20にプラスの誤差が生じている場合であっても、図8に示すように、先端部66の凸部68を下流接続管8の内周面に密着させることができる。したがって、下流接続管8の内径L20にプラスの誤差が生じている場合であっても、接触部62を下流接続管8の内周面に密着させることができるため、継手30と下流接続管8との間を止水することができる。
【0081】
本実施形態では、図4に示すように、接触部62は、先端部66と根元部65とを連結する連結部67と、差口部33側とは反対側に設けられ、差口部33側とは反対側に凸になるように湾曲した湾曲面69と、を有している。このことによって、図9に示すように、差口部33が下流接続管8に挿入されたとき、連結部67に設けられた湾曲面69は、下流接続管8の内周面に向かって突出した状態になる。よって、下流接続管8の内周面と湾曲面69とが接触し易くなり、下流接続管8の内周面とシール部材37の接触部62との接触面積を大きくすることができる。したがって、継手30と下流接続管8との間の止水性をより高めることができる。
【0082】
本実施形態では、継手30は、差口部33の外周面に凹むように設けられ、シール部材37の接触部62が差口部33側に撓んだときに接触部62の少なくとも一部(ここでは先端部66の少なくとも一部)が収まる収容凹部57を備えている。このことによって、収容凹部57に収容された先端部66の大きさ分、接触部62が差口部33側に撓んだときの先端部66の最小径を小さくすることができる。よって、差口部33を下流接続管8に挿入しているときに、先端部66の少なくとも一部が収容凹部57に収容された状態で挿入されるため、挿入し易い。また、下流接続管8の内径誤差が、上記の先端部66の最小径程のマイナスの誤差であっても、差口部33を下流接続管8に挿入し、下流接続管8に接続することができる。
【0083】
本実施形態では、図4に示すように、差口部33の外周面には、複数のリブ40が設けられている。このことによって、差口部33をリブ40によって補強しつつ、差口部33の軽量化を図ることができる。差口部33はリブ40によって補強されるため、差口部33を下流接続管8に挿入する際、より大きな力で挿入することができる。
【0084】
本実施形態では、差口部33の外周面には、差口部33の周方向に沿った環状の第1溝51および環状の第2溝52が差口部33の軸方向に並ぶように形成されている。図4および図6に示すように、シール部材37は、第1溝51および第2溝52の一方に選択的に装着可能に構成されている。例えば継手30を配置する範囲が狭い場合には、差口部33を切断して短くすることがあり得る。このような場合、図6に示すように、差口部33を切断して、第1溝51が形成された部分が切り離された場合であっても、残りの片方の第2溝52にシール部材37を装着することができる。よって、差口部33が切断された場合であっても、切断された後の差口部33にシール部材37を適切な位置に装着することができる。
【0085】
本実施形態では、図3に示すように、第1溝51と第2溝52との間の差口部33の外周面の部分には、差口部33を径方向に切断するための切断目印55が付されている。このことによって、切断目印55に沿って差口部33を切断することで、第1溝51と第2溝52のうちの一方の溝を残した状態で、差口部33を適切な位置で切断することができる。
【0086】
本実施形態では、図4に示すように、継手30は、上流接続管6が挿入される筒状の受口部31を備えている。受口部31の内径L3は、差口部33の内径L4よりも大きい。差口部33の内周面の一部(ここでは管底)と、受口部31に挿入された上流接続管6の内周面の一部(ここでは管底)とが面一になるように、差口部33の中心軸A2と受口部31の中心軸A1とがズレて配置されている。よって、差口部33の管底に位置する内周面と、受口部31に挿入された上流接続管6の管底に位置する内周面との間に段差が生じない。よって、排水を流すとき、排水に含まれる異物などが引っ掛かり難くなるため、排水を円滑に流すことができる。
【0087】
本実施形態では、継手30は、受口部31と差口部33とを連結し、受口部31から差口部33に向かって傾斜した傾斜面42を有する連結傾斜部35と、傾斜面42から差口部33の径方向の外方に突出し、差口部33が下流接続管8に挿入されたときに、下流接続管8が当接可能な少なくとも3つの突起45(図5参照)と、を備えている。例えば差口部33が下流接続管8の奥まで挿入されたとき、下流接続管8が差口部33を超えて連結傾斜部35の傾斜面42に乗り上げることが考えられる。仮に下流接続管8が傾斜面42に乗り上げると、下流接続管8の軸と、差口部33の軸とがズレるため、下流接続管8と差口部33とを適切に接続できないことがある。しかしながら、本実施形態では、差口部33が下流接続管8の奥まで挿入されたとき、傾斜面42に設けられた突起45に下流接続管8が接触する。よって、下流接続管8が傾斜面42に乗り上げることを防止することができる。したがって、下流接続管8の軸と、差口部33の軸とが一致し易く、下流接続管8と差口部33とを適切に接続することができる。
【0088】
なお、本実施形態に係る継手セット10は、図4に示すように、受口部材20と、継手30とを備えており、受口部材20の接続差口部22と、継手30の受口部31とが接続された状態で使用されていた。しかしながら、継手セット10は、受口部材20以外の他の受口部材、例えば他の受口部材20A(図10参照)と、他の受口部材20B(図11参照)と、他の受口部材20C(図12参照)とを備えていてもよい。
【0089】
ここでは、図10に示すように、他の受口部材20Aは、接続受口部21Aと、接続差口部22Aとを備えている。図11に示すように、他の受口部材20Bは、接続受口部21Bと、接続差口部22Bとを備えている。図12に示すように、他の受口部材20Cは、接続受口部21Cと、接続差口部22Cとを備えている。ここで、接続差口部22A、22B、22Cは、図4に示す受口部材20の接続差口部22と同じ構成、および、同じ形状であり、継手30の受口部31に挿入されるものである。また、接続差口部22A、22B、22Cは、受口部31と接着剤によって固定される。
【0090】
接続受口部21A、21B、21Cは、図4に示す受口部材20の接続受口部21と同様に、上流側管路5の上流接続管6に接続されるものであり、上流接続管6が挿入される。ただし、接続受口部21A、21B、21Cは、接続受口部21と構成または形状が異なる。また、接続受口部21A、21B、21C同士も構成または形状が異なる。例えば図10に示す接続受口部21Aは、いわゆる可撓受口である。図11に示す接続受口部21Bは、いわゆるゴム輪受口である。図12に示す接続受口部21Cは、いわゆる自在受口であるが、図4に示す接続受口部21と形状が異なる。このように、受口部材20、20A、20B、20Cは、接続受口部21、21A、21B、21Cの構成または形状が異なるものであり、種類が異なるものである。
【0091】
本実施形態では、継手30は、種類が異なる受口部材20、20A、20B、20Cのうちの何れか1つを選択的に接続可能に構成されている。言い換えると、継手30は、受口部材20、20A、20B、20Cの接続差口部22、22A、22B、22Cの何れか1つを選択的に接続可能に構成されている。例えば施工現場に応じて、受口部材20、20A、20B、20Cのうちのどの受口部材を使用することが最も適切かが異なることがあり得る。そこで、本実施形態では、継手30の受口部31には、受口部材20、20A、20B、20Cの何れも選択的に接続することが可能である。よって、継手セット10を使用する施工現場に応じて、受口部材20、20A、20B、20Cのうち最も適切な受口部材を選択することができる。そして、選択した受口部材を継手30に接続した状態で、排出システム1の上流側管路5と下流側管路7とを接続することができる。
【符号の説明】
【0092】
6 上流接続管(第1接続管)
8 下流接続管(接続管、第2接続管)
10 継手セット
20 受口部材(他の接続管)
20A、20B、20C 他の受口部材
21 接続受口部
21A、21B、21C 接続受口部(他の接続受口部)
22 接続差口部
22A、22B、22C 接続差口部(他の接続差口部)
30 継手
31 受口部
33 差口部
34 挿入端部
35 連結傾斜部
37 シール部材
40 リブ
42 傾斜面
45 突起
51 第1溝
52 第2溝
55 切断目印
57 収容凹部
62 接触部
65 根元部
66 先端部
67 連結部
68 凸部
69 湾曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12