(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】船外機の排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/10 20100101AFI20240717BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20240717BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20240717BHJP
【FI】
F01N13/10
F01N13/00 B
F01N13/08 E
F01N13/08 A
(21)【出願番号】P 2020208319
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-11-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)トーハツ株式会社のウェブサイトでの公開 公開日 令和2年1月17日 公開者 トーハツ株式会社 ウェブサイトのアドレス https://www.tohatsu.com/marine/int/news/world_premiere_of_all-new_prototype_at_dusseldorf_boat_show.html (2)ドイツ国デュッセルドルフで開催された展示会への展示 公開日 令和2年1月18日 公開者 トーハツ株式会社 展示会名 boot D■sseldorf 2020(ボート デュッセルドルフ 2020) 会場名 Messe D■sseldorf (メッセ デュッセルドルフ) 住所 D-40474 D■sseldorf,Germany (D-40474 デュッセルドルフ、ドイツ国) (3)アメリカ合衆国マイアミで開催された展示会への展示 公開日 令和2年2月13日 公開者 トーハツ株式会社 展示会名、開催場所 展示会名 Miami International Boat Show 2020(マイアミ・インターナショナル・ボートショー 2020) 会場名 Miami Marine Stadium & Basin (マイアミ マリン スタジアム & ベイスン) 住所 3501 Rickenbacker Causeway,Miami USA(3501 リッケンバッカー コウズウェイ、マイアミ アメリカ合衆国) (4)トーハツ株式会社のウェブサイトでの公開 公開日 令和2年2月18日 公開者 トーハツ株式会社 ウェブサイトのアドレス https://www.tohatsu.com/marine/int/news/world_premiere_of_all-new_prototype_at_dusseldorf_boat_show.html (5)販売 販売日 令和2年8月25日 販売した場所 名称 村田鉄工所 住所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町浦神1805-3 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (6)販売 販売日 令和2年8月26日 販売した場所 名称 迎農機有限会社 住所 長崎県佐世保市鹿町町口ノ里326番地11 公開者 トーハツ株式会社 (7)販売 販売日 令和2年8月26日 販売した場所 名称 中央マリン事業部 住所 新潟県佐渡市真野新町504-17 公開者 トーハツ株式会社 (8)販売 販売日 令和2年8月27日 販売した場所 名称 TOHATSU AMERICA CORPORATION(トーハツアメリカコーポレーション) 住所 670 S.Freeport Parkway,Suite 120 Coppell,TX 75019,U.S.A.(670サウスフリーポートパーク通り スイート120コペル、テキサス75019、アメリカ合衆国) 公開者 トーハツ株式会社 (9)販売 販売日 令和2年8月28日 販売した場所 名称 ESTEC MARINE CO.,LTD.(エステックマリーン株式会社) 住所 32,Seoksil-ro,317beon-gil,Wabu-eup,Namyangju-si,Gyeonggi-do,472-901,Republic of Korea(472-901 京畿道南楊州市和布邑317辺路ソクシル通り32番地,大韓民国) 公開者 トーハツ株式会社 (10)販売 販売日 令和2年8月28日 販売した場所 名称 有限会社おおぜき 住所 三重県桑名市立田町82-1 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (11)販売 販売日 令和2年8月29日 販売した場所 名称 AS KELLOX(株式会社ケロックス) 住所 TROLLASVEIEN 36,1414 TROLLASEN,OPPEGARD,NORWAY(トロラスヴェイエン36,1414 トローラセン,オッペガード,ノルウェー) 公開者 トーハツ株式会社 (12)販売 販売日 令和2年8月29日 販売した場所 名称 DEPAR MOTOR VE MALZEME SAN.Ve TIC.AS(デパーモーターヴァマルゼン株式会社) 住所 RAMAZANOGLU MAHALLESI ACELYA SOKAK,NO:4P.O.BOX 34906 KURTKOY PENDIK,ISTANBUL,TURKEY(ラマザノグル・マハレシ・アセルヤ・ソカクNO:4 私書箱34906 クルトキーペンディック,イスタンブール,トルコ) 公開者 トーハツ株式会社 (13)販売 販売日 令和2年8月29日 販売した場所 名称 Friedrich Marx GmbH & Co.KG(フリードリヒ マークス有限合資会社) 住所 Rungedamm 29,21035 Hamburg,GERMANY(ランゲダム 29,21035 ハンブルグ,ドイツ) 公開者 トーハツ株式会社 (14)販売 販売日 令和2年8 月29日 販売した場所 名称 M3 SERVIZI NAUTICI SRL(エムスリーセルヴィジナウティチ有限会社) 住所 VIA DIVIZIA,,1/F-17051 ANDORA(SV),ITALY)(ヴィア ディヴィジア,,1/エフ-17051 アンドラ(SV),イタリア) 公開者 トーハツ株式会社 (15)販売 販売日 令和2年8月29日 販売した場所 名称 SUMEKO OY(スメコ株式会社) 住所 Juurakkokuja 4,01510 Vantaa,Finland(ジューラッコクヤ4,01510ヴァンターア,フィンランド) 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (16)販売 販売日 令和2年8月30日 販売した場所 名称 LAKESIDE MARINE PTY LTD.(レイクサイドマリーン株式会社) 住所 7 DOHERTY CLOSE,WARNERVALE,,N.S.W.2259,SYDNEY,AUSTRALIA(7 ドハーティークローズ,ウォーナーベイル,N.S.W.2259,シドニー,オーストラリア) 公開者 トーハツ株式会社 (17)販売 販売日 令和2年9月11日 販売した場所 名称 GROW IBERIA(グロー イベリア) 住所 R.fontes Pereira de Melo 16 Abrunheira,2714-506 SINTRA,PORTUGAL(フォンテペレイラ-デ-メロ16通り アブランヘイラ,サントラ 2714-506,ポルトガル 公開者 トーハツ株式会社 (18)販売 販売日 令和2年9月16日 販売した場所 名称 中西モータース 住所 三重県伊勢市樫原町1446 公開者 トーハツ株式会社 (19)販売 販売日 令和2年9月18日 販売した場所 名称 株式会社 田渕鉄工所 住所 岡山県瀬戸内市邑久町虫明3901 公開者 トーハツ株式会社 (20)販売 販売日 令和2年9月19日 販売した場所 名称 Seawave Marine d.o.o.(シーウェイブマリーン社) 住所 SI-4248 Lesce,Alpska cesta 43,SLOVENIA(SI-4248 レッセ,アルプスカ・チェスタ 43,スロヴェニア) 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (21)販売 販売日 令和2年9月20日 販売した場所 名称 PETROS PETROPOULOS AEBE(ペトロスペトロポロス株式会社) 住所 96-104 IERA ODOS,P.O.BOX 41018,122 10 ATHENS,GREECE(96-104 イエラオドス,私書箱41018,122 10 アテネ,ギリシャ) 公開者 トーハツ株式会社 (22)販売 販売日 令和2年9月23日 販売した場所 名称 SUTHEP TECHNIC CO,LTD(ステップテクニック株式会社) 住所 33/1 M.1 T.NAKLUA A.BANGLAMUNG,CHONBURI 20150,THAILAND(33/1 エム.1 ティ・ナクルア エー・バングラムン,チョンブリ 20150,タイ) 公開者 トーハツ株式会社 (23)販売 販売日 令和2年9月26日 販売した場所 名称 TOHATSU MARINE LIMITED(トーハツマリーンリミテッド) 住所 Unit 350,Ampress Lane, Lymington,,Hampshire SO41 8JX,UNITED KINGDOM(ユニット350,アムプレスレーン,リミントン,ハンプシャー SO41 8JX,イギリス 公開者 トーハツ株式会社 (24)販売 販売日 令和2年9月26日 販売した場所 名称 英文名 XIAMEN DONGFAXING IMP.AND EXP.CO.,LTD.(中国名 ■出口有限公司 日本名 シャーメン ドンファーシン輸出入株式会社) 住所 NO.1,XINJIA ROAD,HAICANG DISTRICT,,XIAMEN,361000,FUJIAN PROVINCE,CHINA(中国福建省厦門市海滄工業区新嘉路1号) 公開者 トーハツ株式会社 (25)販売 販売日 令和2年9月29日 販売した場所 名称 三好マリンモータース 住所 愛媛県四国中央市寒川町2581 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (26)販売 販売日 令和2年9月30日 販売した場所 名称 株式会社柏原 住所 北海道石狩市厚田区厚田2-11 公開者 トーハツ株式会社 (27)販売 販売日 令和2年10月14日 販売した場所 名称 飛多熔接鉄工所 住所 香川県小豆郡土庄町甲2152-1 公開者 トーハツ株式会社 (28)販売 販売日 令和2年10月14日 販売した場所 名称 有限会社阿部マリン 住所 北海道紋別市元紋別3-14 公開者 トーハツ株式会社 (29)販売 販売日 令和2年10月22日 販売した場所 名称 有限会社ボートの新福商会 住所 鹿児島県垂水市市木12-30 公開者 トーハツ株式会社 (30)販売 販売日 令和2年10月24日 販売した場所 名称 FENWICK SA(フェンウィック株式会社) 住所 92230 GENNEVILLIERS,PARC SWEN-BATIMENT D-HALL 5,108 AVENUE LOUIS ROCHE,FRANCE(92230 ジェンネヴィリア,パルクスウェン‐バチモント Dホール5, ルイ・ロッシュ通り108,フランス) 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (31)販売 販売日 令和2年10月30日 販売した場所 名称 メカニカルサービス 住所 香川県東かがわ市帰来871番地3 公開者 トーハツ株式会社 (32)販売 販売日 令和2年10月30日 販売した場所 名称 伊勢湾商事株式会社 住所 三重県津市柳山津興港中道北370津ヨットハーバー内 公開者 トーハツ株式会社 (33)販売 販売日 令和2年10月30日 販売した場所 名称 有限会社鳥新 住所 愛知県知多郡武豊町1号地2-2 公開者 トーハツ株式会社 (34)販売 販売日 令和2年11月4日 販売した場所 名称 有限会社平田ライトニング 住所 長崎県佐世保市小佐々町西川内282-2 公開者 トーハツ株式会社 (35)販売 販売日 令和2年11月16日 販売した場所 名称 TECNOLOGIA MARITIMA S.A.(テクノロジア マリティマ 株式会社) 住所 MANUEL MONTT 2165,SANTIAGO,CHILE(マニュエルモント2165,サンティアゴ, チリ) 公開者 トーハツ株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (36)販売 販売日 令和2年11月26日 販売した場所 名称 株式会社F.K.サービス 住所 広島県尾道市高須町4840-13 公開者 トーハツ株式会社 (37)販売 販売日 令和2年11月30日 販売した場所 名称 マツモト電機サービス 住所 長崎県平戸市田平町山内免378-1 公開者 トーハツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109945
【氏名又は名称】トーハツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 和之
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-049425(JP,A)
【文献】米国特許第8469754(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00- 1/24、5/00- 5/04、
13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から下に順に並ぶように配置された第1気筒ないし第4気筒をシリンダボディ内に有し、シリンダヘッドの側面に設けられた排気マニホールド取り付け面に前記第1気筒ないし第4気筒に対してそれぞれ設けられた第1排気ポートないし第4排気ポートが上から下に順に並ぶ状態で開口している直列4気筒エンジンを備えて、前記エンジンのクランク軸がその中心軸線を上下方向に向けた状態で配置される船外機の排気装置において、
前記排気マニホールド取り付け面に取り付けられた排気マニホールドを備え、
前記排気マニホールドは、前記第1排気ポート及び第4排気ポートにそれぞれ一端が接続された第1排気管及び第4排気管と、前記第2排気ポート及び第3排気ポートにそれぞれ一端が接続された第2排気管及び第3排気管と、前記エンジンの側方を上下に延びるように設けられていて上部が前記第1排気管及び第4排気管の他端に接続されて前記第1排気管及び第4排気管を通して排出される排気ガスを集合させる第1集合管と、前記エンジンの側方を上下に延びるように設けられていて上部が前記第2排気管及び第3排気管の他端に接続されて前記第2排気管及び第3排気管を通して排出される排気ガスを集合させる第2集合管と、前記第1集合管の下部及び第2集合管の下部に上端が接続されて前記第1集合管及び第2集合管を通して排出される排気ガスをまとめて排出する主排気管とを備え、
前記第1排気管及び第4排気管はそれぞれ前記エンジンの側方を下方及び上方に延びる部分を有するように曲げられて、それぞれの他端が前記第1集合管の上部に接続され、
前記第2排気管及び第3排気管はそれぞれ前記第1排気管の下方に延びる部分及び前記第4排気管の上方に延びる部分を乗り越えて斜め下方及び斜め上方に延びるように設けられてそれぞれの他端が前記第2集合管の上部に接続され、
前記第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び前記第4排気管の最下部の内側に溜まった水を前記主排気管内に導く水抜き通路が設けられ、
前記第1排気管の長さと第4排気管の長さが等しく設定されるとともに、前記第2排気管の長さと第3排気管の長さが等しく設定されていること、
を特徴とする船外機の排気装置。
【請求項2】
前記第1集合管の長さと第2集合管の長さが等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の船外機の排気装置。
【請求項3】
前記第1排気管は、一端が前記第1排気ポートに接続されて前記エンジンから離れる方向に延びる第1基部と、該第1基部の他端に上部が接続され、前記エンジンの側方を下方に延びて他端が前記第1集合管の上部付近に達するように設けられた第1延伸部とを有する形状に形成され、
前記第4排気管は、一端が前記第4排気ポートに接続されて前記エンジンから離れる方向に延びる第4基部と、該第4基部の他端に一端が接続され、前記エンジンの側方を上方に延びて他端が前記第1集合管の上部付近で前記第1延伸部の他端に接続された第4延伸部とを有して、前記第1延伸部の他端と第4延伸部の他端との接続部付近で前記第1排気管及び第4排気管が前記第1集合管に接続され、
前記第2排気管は、前記第1延伸部とエンジンの排気マニホールド取り付け面との間の隙間内で一端が前記第2排気ポートに接続された第2基部と、該第2基部の他端に一端が接続され、前記第1延伸部に密接した状態で該第1延伸部を乗り越えて前記第2集合管の上部に向かって斜め下方に延びるように設けられて他端が前記第2集合管の上部に接続された第2延伸部とを有する形状に形成され、
前記第3排気管は、前記第4延伸部とエンジンの排気マニホールド取り付け面との間の隙間内で一端が前記第3排気ポートに接続された第3基部と、該第3基部の他端に一端が接続され、前記第4延伸部に密接した状態で該第4延伸部を乗り越えて前記第2集合管の上部に向かって斜め上方に延びるように設けられて他端が前記第2集合管の上部に接続された第3延伸部とを有する形状に形成され、
前記第1排気管ないし第4排気管のそれぞれの管壁内には冷却媒体を流す冷却媒体通路が形成されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の船外機の排気装置。
【請求項4】
前記第2延伸部が前記第1延伸部を乗り越える部分で前記第1延伸部と第2延伸部の隣接する部分が管壁を共有するように構成されて、前記第2延伸部が前記第1延伸部を乗り越える部分で前記第1延伸部と第2延伸部の隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて前記第2延伸部の第1延伸部からの突出高さが縮小され、
前記第3延伸部が前記第4延伸部を乗り越える部分で前記第3延伸部と第4延伸部の隣接する部分が管壁を共有するように構成されて、前記第3延伸部が前記第4延伸部を乗り越える部分で前記第3延伸部と第4延伸部の隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて前記第3延伸部の第4延伸部からの突出高さが縮小されていること、
を特徴とする請求項3に記載の船外機の排気装置。
【請求項5】
前記水抜き通路は、前記第3排気管の最下部の内側に溜まった水を前記第4排気管内に導く第1の水抜き通路と、前記第4排気管の最下部に溜まった水を前記主排気管内に導く第2の水抜き通路とからなっている請求項3又は4に記載の船外機の排気装置。
【請求項6】
前記第1排気管の他端及び第4排気管の他端と相会する部分と前記第2排気管の他端及び第3排気管の他端と相会する部分とを上部に有し、前記エンジンの側方を上下に延びて下端が下方に開口させられた中空構造体が設けられて、該中空構造体の上部寄りの部分に前記第1集合管及び第2集合管が構成され、前記中空構造体の前記第1集合管及び第2集合管を構成している部分より下方の部分により前記主排気管が構成されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一つに記載の船外機の排気装置。
【請求項7】
前記エンジンは、第1気筒、第2気筒、第4気筒及び第3気筒の順又は第1気筒、第3気筒、第4気筒及び第2気筒の順に点火が行われるエンジンである請求項1ないし6の何れか一つに記載の船外機の排気装置。
【請求項8】
前記エンジンの排気マニホールド取り付け面は、前記第1気筒ないし第4気筒の中心軸線を含む平面を基準平面としたときに、エンジンのシリンダボディ側からヘッドカバー側に向かうに従って前記基準平面に近づいていくように傾斜した状態で設けられていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一つに記載の船外機の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列4気筒エンジンを備えた船外機の排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船外機は、エンジンのクランク軸の中心軸線を上下方向に向けた状態で使用される。そのため、4気筒エンジンを用いる場合、エンジンの第1気筒ないし第4気筒は、シリンダブロック内に上下に並べた状態で設けられる。第1気筒ないし第4気筒からそれぞれ流出する排気ガスを排出するために、シリンダヘッドに第1排気ポートないし第4排気ポートが設けられる。これらの排気ポートは、シリンダヘッドに設けられた排気マニホールド取り付け面に上下に並べた状態で開口させられる。第1排気ポートないし第4排気ポートからそれぞれ流出する排気ガスを外部に排出させるため、第1排気ポートないし第4排気ポートにそれぞれ接続された第1排気管ないし第4排気管を備えた排気マニホールドが設けられ、この排気マニホールドが排気マニホールド取り付け面に取り付けられることにより、排気装置が構成される。
【0003】
船外機に4気筒エンジンを用いる場合、第1排気管ないし第4排気管を一括して一つの集合管に接続して、第1排気ポートないし第4排気ポートから排出された排気ガスを一つの集合管に集合させる構成をとることが多い。このような排気のさせ方は、4つの排気ポートからそれぞれ排出された排気を1つの集合管に集合させるという意味で、4-1集合排気と呼ばれる。
【0004】
4-1集合排気の構成を採用した場合には、複数の排気ポートから排出される排気が干渉し合うため、排気効率が低下し、エンジンの性能が低下するのを避けられない。そこで、特許文献1に示されているように、第1排気ポートないし第4排気ポートにそれぞれ接続された第1排気管ないし第4排気管のうち、点火順序が連続しない(続いて点火が行われることがない)2つの気筒に対して設けられた2つの排気管を第1集合管に接続して集合させるとともに、点火順序が連続しない他の2つの気筒に対して設けられた他の2つの排気管を第2集合管に接続して集合させ、更に第1集合管及び第2集合管を1つの主排気管に接続して集合させる構成をとることが行われるようになった。このような排気のさせ方は、4つの排気管を2つの集合管に集合させ、更にこれら2つの集合管を1つの主排気管に集合させるという意味で、4-2-1集合排気と呼ばれる。
【0005】
4サイクルエンジンの排気装置において、長さが異なる排気管を集合させると、波長や位相が異なる排気音が干渉し合うことにより、不快な排気干渉音が生じる。この排気干渉音を低減するためには、集合させる排気管の長さを等しくすることが好ましいことが知られている。第1気筒、第2気筒、第4気筒及び第3気筒の順又は第1気筒、第3気筒、第4気筒及び第2気筒の順に点火が行われる直列4気筒4サイクルエンジンにおいて、排気の干渉による排気効率の低下を防止し、かつ排気干渉音の低減を図るためには、続いて点火が行われることがない第1気筒及び第4気筒に対してそれぞれ設ける第1排気管及び第4排気管を第1集合管に集合させ、同様に続いて点火が行われることがない第2気筒及び第3気筒に対してそれぞれ設ける第2排気管及び第3排気管を第2集合管に集合させて、4-2-1集合排気の構成をとった上で、第1排気管の長さと第4排気管の長さとを等しくし、第2排気管の長さと第3排気管の長さとを等しくすることが好ましい。集合させる排気管の長さを等しくしておくことを排気管の等長配置と呼ぶ。
【0006】
特許文献2に示されているように、クランク軸を水平方向に向けた状態で使用されるエンジンにおいては、4-2-1集合排気の構成をとる場合に、横方向に順に並べて配置された第1排気ポートないし第4排気ポートにそれぞれ接続される第1排気管ないし第4排気管のうち、両端に配置される第1排気管と第4排気管とをエンジン本体の中央付近の側方に設定した集合部に向けて曲げて左右対称な形状とすることによりそれぞれの長さを等しくし、第1排気管と第4排気管の間に配置される第2排気管及び第3排気管も、エンジン本体の中央付近の側方に設定した集合部に向けて曲げて左右対称な形状とすることによりそれぞれの長さを等しくする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-49425号公報
【文献】特開2018-178778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に示された排気装置の構成によれば、4-2-1集合排気の構成を採用して、しかも第1排気管と第4排気管の長さを等しくするとともに、第2排気管と第3排気管の長さを等しくすることができるため、排気の干渉により、エンジン性能が低下するのを防ぐとともに、排気干渉音の低減を図ることができる。
【0009】
特許文献2に示された排気装置の構成を、船外機にも適用することが考えられる。クランク軸の中心軸線を上下方向に向け、第1排気ポートないし第4排気ポートを上から下に順に並べて配置した構成を有する4気筒エンジンを使用する船外機に、特許文献2に示された排気装置の構成を適用する場合には、第1排気管ないし第4排気管のうち、最上部に配置される第1排気管及び最下部に配置される第4排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて対称な形状にした状態で第1集合管に接続することにより、第1排気管の長さと第4排気管の長さとを等しくするとともに、第1排気管及び第4排気管の間に配置される第2排気管及び第3排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて対称な形状とした状態で第2集合管に接続することにより、第2排気管の長さと第3排気管の長さとを等しくすることになる。
【0010】
本願の発明者は、種々検討を行った結果、直列4気筒4サイクルエンジンを用いる船外機において、上記のように、4-2-1集合排気の構成をとった場合には、第3気筒及び第4気筒内で行われる燃焼に伴って生じた水蒸気が液化することにより生じた水が、下方から上方に延びる部分を有するように曲げられることになる第3排気管及び第4排気管の最下部の内側に溜まり、この水がエンジンの気筒内に侵入してエンジンを故障させたり、排気管を腐食させて排気管の寿命を短くしたりするという問題が生じることが明らかになった。
【0011】
また特許文献2に示された構成を船外機に適用すると、エンジン本体からの排気マニホールドの突出長が長くなるため、エンジンを収容するカウルが大形になるのを防ぐための工夫が必要になることが明らかになった。
【0012】
本発明の目的は、4-2-1集合排気の構成をとる4気筒エンジンを用いる船外機の排気装置において、第1排気管及び第4排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて、第1排気管の長さと第4排気管の長さとを等しくし、第2排気管及び第3排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて第2排気管の長さと第3排気管の長さとを等しくして排気管を等長配置する構成を採用することにより、エンジンの排気効率を高め、かつ第1排気管の最下部及び第3排気管の最下部の内側に水が溜まって、この水がエンジンを故障させたり、排気管の寿命を短くしたりする原因になるのを防ぐことにある。
【0013】
本発明の他の目的は、4-2-1集合排気の構成をとる船外機の排気装置において、第1排気管及び第4排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて、第1排気管の長さと第4排気管の長さとを等しくし、第2排気管及び第3排気管をそれぞれ下方及び上方に曲げて第2排気管の長さと第3排気管の長さとを等しくする等長配置の構成を採用する場合に、排気マニホールドのエンジン本体からの突出長が増大するのを抑制して、エンジンを収容するカウルが大形化するのを防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上から下に順に並ぶように配置された第1気筒ないし第4気筒を有し、シリンダヘッドの側面に設けられた排気マニホールド取り付け面に前記第1気筒ないし第4気筒に対してそれぞれ設けられた第1排気ポートないし第4排気ポートが上から下に順に並ぶ状態で開口している直列4気筒エンジンを備えて、前記エンジンのクランク軸がその中心軸線を上下方向に向けた状態で配置される船外機の排気装置を対象とする。本発明に係る排気装置は、エンジンの排気マニホールド取り付け面に排気マニホールドを取り付けることにより構成される。
【0015】
本明細書には、前記の目的を達成するために、少なくとも以下に示す第1の発明ないし第8の発明が開示される。
<第1の発明>
第1の発明においては、排気マニホールドが下記のように構成される。
(1)第1排気ポート及び第4排気ポートにそれぞれ一端が接続された第1排気管及び第4排気管と、第2排気ポート及び第3排気ポートにそれぞれ一端が接続された第2排気管及び第3排気管と、エンジンの側方を上下に延びるように設けられて上部が第1排気管及び第4排気管の他端に接続されて第1排気管及び第4排気管を通して排出される排気ガスを集合させる第1集合管と、エンジンの側方を上下に延びるように設けられて上部が第2排気管及び第3排気管の他端に接続されて第2排気管及び第3排気管を通して排出される排気ガスを集合させる第2集合管と、第1集合管の下部及び第2集合管の下部に上端が接続されて第1集合管及び第2集合管を通して排出される排気ガスをまとめて排出する主排気管とを備えている。
(2)第1排気管及び第4排気管はそれぞれエンジンの側方を下方及び上方に延びる部分を有するように曲げられて、それぞれの他端が第1集合管の上部に接続される。
(3)第2排気管及び第3排気管はそれぞれ第1排気管の下方に延びる部分及び第4排気管の上方に延びる部分を乗り越えて斜め下方及び斜め上方に延びるように設けられてそれぞれの他端が第2集合管の上部に接続される。
(4)第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路が設けられている。
(5)第1排気管の長さと第4排気管の長さが等しく設定されるとともに、第2排気管の長さと第3排気管の長さが等しく設定されている。
【0016】
上記のように構成すると、第1気筒及び第4気筒に対して設けられた第1排気管及び第4排気管が同じ長さを持って第1集合管に接続され、第2気筒及び第3気筒に対して設けられた第2排気管及び第3排気管が同じ長さを持って第2集合管に接続されるため、第1気筒及び第4気筒で続けて点火が行われないようにするとともに、第2気筒及び第3気筒で続けて点火が行われないようにしておくことにより、排気の干渉により排気効率が低下するのを防いで、エンジンの性能を向上させるとともに、排気干渉音の低減を図ってエンジンの低騒音化(不快な騒音の発生の抑制)を図ることができる。また第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路が設けられているため、第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水がエンジンを故障させたり排気管の寿命を短くしたりする原因になるのを防ぐことができる。
【0017】
<第2の発明>
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、第1集合管の長さと第2集合管の長さが等しく設定される。
【0018】
このように構成すると、第1集合管を通して伝搬する排気音と第2集合管を通して伝搬する排気音との干渉により異音が発生するのを防ぐことができるため、騒音の低減効果を更に高めることができる。
【0019】
<第3の発明>
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に適用されるもので、本発明においては、排気マニホールドが下記のように構成される。
(a)第1排気管は、一端が第1排気ポートに接続されてエンジンから離れる方向に延びる第1基部と、該第1基部の他端に一端が接続され、エンジンの側方を下方に延びて他端が第1集合管の上部付近に達するように設けられた第1延伸部とを有する形状に形成される。
(b)第4排気管は、一端が第4排気ポートに接続されてエンジンから離れる方向に延びる第4基部と、該第4基部の他端に一端が接続され、エンジンの側方を上方に延びて他端が第1集合管の上部付近で第1延伸部の他端に接続された第4延伸部とを有して、第1延伸部の他端と第4延伸部の他端との接続部付近で第1排気管及び第4排気管が第1集合管に接続される。
(c)第2排気管は、前記第1延伸部とエンジンの排気マニホールド取り付け面との間の隙間内で一端が第2排気ポートに接続された第2基部と、該第2基部の他端に一端が接続され、前記第1延伸部に密接した状態で該第1延伸部を乗り越えて第2集合管の上部に向かって斜め下方に延びるように設けられて他端が第2集合管の上部に接続された第2延伸部とを有する形状に形成されている。
(d)第3排気管は、前記第4延伸部とエンジンの排気マニホールド取り付け面との間の隙間内で一端が前記第3排気ポートに接続された第3基部と、該第3基部の他端に一端が接続され、前記第4延伸部に密接した状態で該第4延伸部を乗り越えて前記第2集合管の上部に向かって斜め上方に延びるように設けられて他端が前記第2集合管の上部に接続された第3延伸部とを有する形状に形成されている。
(e)第1排気管ないし第4排気管のそれぞれの管壁内には冷却媒体を流す冷却媒体通路が形成されている。
【0020】
上記のように、第2延伸部が第1延伸部に密接した状態で該第1延伸部を乗り越え、第3延伸部が第4延伸部に密接した状態で該第4延伸部を乗り越えるように第2排気管及び第3排気管を構成しておくと、排気マニホールドをコンパクトに構成することができるため、排気マニホールドのエンジンからの突出長が長くなって船外機が大形化するのを防ぐことができる。第2延伸部を第1延伸部に密接させ、第3延伸部を第4延伸部に密接させた状態で配置すると、排気マニホールドの温度が上昇するおそれが生じるが、本発明においては、第1排気管ないし第4排気管のそれぞれの管壁内に冷却媒体を流す冷却媒体通路が設けられているため、排気マニホールドの温度上昇を抑制することができる。
【0021】
<第4の発明>
第4の発明は第3の発明に適用されるもので、本発明においては、前記第2延伸部が前記第1延伸部を乗り越える部分で前記第1延伸部と第2延伸部の隣接する部分が管壁を共有するように構成されることにより、前記第2延伸部が前記第1延伸部を乗り越える部分で前記第1延伸部と第2延伸部の隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて前記第2延伸部の第1延伸部からの突出高さが縮小される。また、前記第3延伸部が前記第4延伸部を乗り越える部分で前記第3延伸部と第4延伸部の隣接する部分が管壁を共有するように構成されることにより、前記第3延伸部が前記第4延伸部を乗り越える部分で前記第3延伸部と第4延伸部の隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて前記第3延伸部の第4延伸部からの突出高さが縮小される。
【0022】
上記のように構成すると、排気マニホールドの取付面からの突出長さの縮小を図って、排気装置をコンパクトに構成することができる。
【0023】
<第5の発明>
第5の発明は、第3の発明又は第4の発明に適用されるもので、本発明においては、水抜き通路が、第3延伸部の最下部の内側に溜まった水を前記第4延伸部内に導く第1の水抜き通路と、第4延伸部の最下部に溜まった水を主排気管内に導く第2の水抜き通路とにより構成される。
【0024】
上記のように、第3排気管の最下部に溜まった水を第4延伸部内を経由して主排気管内に導く構造にすると、第3排気管の最下部に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路と、第4排気管の最下部に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路とを個別に設ける場合に比べて構成の簡素化を図ることができる。
【0025】
<第6の発明>
第6の発明は、第1の発明ないし第5の発明の何れか一つに適用されるもので、第1集合管及び第2集合管と主排気管の好ましい構成例を要旨としたものである。本発明においては、第1排気管の他端及び第4排気管の他端と相会する部分と第2排気管の他端及び第3排気管の他端と相会する部分とを上部に有し、エンジンの側方を上下に延びていて下端が下方に開口させられた中空構造体が設けられて、該中空構造体の上部寄りの部分に第1集合管及び第2集合管が構成され、前記中空構造体の第1集合管及び第2集合管を構成している部分より下方の部分により前記主排気管が構成されている。
【0026】
上記のように構成すると、第1集合管及び第2集合管と主排気管とを別個の管状部材により構成する場合に比べて構造の簡素化を図ることができる。
【0027】
<第7の発明>
第7の発明においては、エンジンが、第1気筒、第2気筒、第4気筒及び第3気筒の順又は第1気筒、第3気筒、第4気筒及び第2気筒の順に点火を行うように構成される。
【0028】
このようにエンジンを構成しておくと、第1気筒及び第4気筒で点火が続けて行われることがなく、また第2気筒及び第3気筒でも点火が続けて行われることがないため、排気の干渉により排気効率が低下するのを防いで、出力トルクの低下などのエンジン性能の低下が生じるのを防ぐことができる。
【0029】
<第8の発明>
第8の発明は、第1ないし第7の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、排気マニホールド取り付け面が、前記エンジンの第1気筒ないし第4気筒の中心軸線を含む平面を基準平面としたときに、エンジンのシリンダボディ側からヘッドカバー側に向かうに従って前記基準平面に近づいていくように傾斜した状態で設けられている。
【0030】
このように構成しておくと、第1排気管の延伸部(第1延伸部)と排気マニホールド取り付け面との間の隙間及び第4排気管の延伸部(第4延伸部)と排気マニホールド取り付け面との間の隙間を比較的狭く設定しても、第2排気管の基部(第2基部)及び第3排気管の基部(第3基部)を排気マニホールド取り付け面に接続することが容易になるため、第1排気管の延伸部及び第4排気管の延伸部を排気マニホールド取り付け面に近づけるとともに、第2排気管の延伸部及び第3排気管の延伸部を排気マニホールド取付面に近づけて、排気マニホールドのエンジン本体からの突出長を短くすることができ、排気装置をコンパクトに構成して、エンジンを収容するカウルの大形化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、点火が続いて行われることがない第1気筒及び第4気筒に対してそれぞれ設けられた第1排気管及び第4排気管が同じ長さを持って第1集合管に接続され、第2気筒及び第3気筒に対してそれぞれ設けられた第2排気管及び第3排気管が同じ長さを持って第2集合管に接続されるため、第1気筒及び第4気筒で続けて点火が行われないようにするとともに、第2気筒及び第3気筒で続けて点火が行われないようにしておくことにより、排気の干渉により排気効率が低下するのを防いで、エンジンの性能を向上させることができる。また互いに集合させられる第1排気管の長さと第4排気管の長さが等しく設定されるとともに、第2排気管の長さと第3排気管の長さが等しく設定されているため、排気干渉音の低減を図ってエンジンの低騒音化を図ることができる。更に、第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路が設けられているため、第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水が、エンジンを故障させたり排気管の寿命を短くしたりする原因になるのを防ぐことができる。従って、本発明によれば、エンジンを故障させたり、エンジンの寿命を短くしたりするおそれを生じさせることなく、船外機において4-2-1集合排気の構成をとって、しかも排気管の等長配置を実現することができる。
【0032】
特に第8の発明によれば、排気マニホールドのエンジン本体からの突出長を短縮することができるため、排気装置をコンパクトに構成してエンジンを収容するカウルが大形化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明が適用された排気装置を備えた船外機の一部を断面して、その構成を概略的に示した正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたエンジンの本体部分の外観を模式的に示した側面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る排気装置の構成を模式的に示した側面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された排気装置を
図3のIV-IV線に沿って断面して要部の構成を模式的に示した断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る排気装置を構成する排気マニホールドの実施例を、
図1において排気マニホールドを見ている方向と同じ方向から見て示した同実施例の正面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された排気マニホールドを、同図のVI-VI線に沿って断面して示した断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示された排気マニホールドを、同図のVII-VII線に沿って断面して、主排気管の一部と第4排気管の下部とを構成している部品の断面形状を示した断面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示された排気マニホールドの要部を、同図のIIX-IIX線に沿って、
図5には図示されていないカウルとともに断面して示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明に係る排気装置を備えた船外機の構成の一例が概略的に示されている。また
図2を参照すると、
図1に示された船外機で用いられているエンジンの本体部分が概略的に示されており、
図3を参照すると、本発明に係る排気装置の要部の構成例が概略的に示されている。
図1ないし
図3においては、本発明の構成を分かりやすくするために、各部の構造を模式的に図示してある。
【0035】
図1において、1は、熱伝導性が良好なアルミニウムをダイキャスト成形することにより形成されたハウジングである。ハウジング1は、ロワーハウジング1Aとアッパーハウジング1Bとからなっており、アッパーハウジング1Bの上端には、直列4気筒4サイクルエンジン2が、そのクランク軸2aの中心軸線を上下方向に向け、かつクランク軸2aの先端を下方に向けた状態で支持されている。
【0036】
ハウジング1内には、ドライブシャフト3が収容されている。ドライブシャフト3はその中心軸線を上下方向に向けた状態で配置されて、ベアリング4によりアッパーハウジング1Bに回転自在に支持されている。ドライブシャフト3の上端はエンジン2のクランク軸2aに直結されている。
【0037】
ロワーハウジング1A内の下部には、プロペラシャフト5がその中心軸線をドライブシャフト3の中心軸線と直交させた状態で回転自在に支持されている。ベアリング4から下方に突出したドライブシャフト3の下端が減速機構6を介してプロペラシャフト5に結合され、ドライブシャフト3の回転が減速機構6を介してプロペラシャフト5に伝達される。
【0038】
減速機構6は、ベアリング4から下方に突出したドライブシャフト3の下端に取り付けられて減速機構の入力部を構成するドライブ側ベベルギア7と、プロペラシャフト5の軸線方向に対向した状態で配置されて、ドライブ側ベベルギア7に噛み合わされた前進用ベベルギア8及び後進用ベベルギア9とを備えている。前進用ベベルギア8及び後進用ベベルギア9は、それぞれの中心軸線を一致させた状態で配置されて、ベアリングを介してロワーハウジング1Aに回転自在に支持されている。プロペラシャフト5は、前進用ベベルギア8及び後進用ベベルギア9を回転自在に貫通した状態で設けられて、前進用ベベルギア8及び後進用ベベルギア9を介してロワーハウジング1Aに支持されている。
【0039】
プロペラシャフト5の減速機構6から離れた側の端部はベアリングを介してロワーハウジング1Aに支持され、ロワーハウジング1Aから外部に導出されたプロペラシャフト5の外端部にプロペラ10のボス部11が取り付けられている。
【0040】
減速機構6には、ハウジング1の上部に取り付けられた図示しないシフトレバーにより操作されて上下する操作ロッド12の変位に応じて、前進用ベベルギア8及び後進用ベベルギア9の双方の回転がプロペラシャフト5に伝達されないようにして、プロペラシャフト5がエンジンにより駆動されないようにするニュートラル状態と、前進用ベベルギア8の回転のみをプロペラシャフト5に伝達して、船体を前進させる方向にプロペラ10を回転させる状態にする前進状態と、後進用ベベルギア9の回転のみをプロペラシャフト5に伝達して、船体を後進させる方向にプロペラ10を回転させる状態にする後進状態とを切り換えるクラッチ機構が設けられている。この種のクラッチ機構の構造は、船外機の技術分野においては周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
プロペラ10のボス部11の内側には、前進航行時にエンジンの排気ガスを水中に排出するための排気孔11aが形成されている。アッパーハウジング1B内には、エンジンの排気ガスが導入される排気空間13が設けられ、後述する排気装置から排気空間13に排出された排気ガスが、ロワーハウジング1A内に設けられて航行時には水で満たされている排気通路14を通してプロペラのボス部11の内側の排気孔11aに導かれるようになっている。船体が前進する際には、プロペラのボス部11の内側の排気孔11aに導入された排気ガスが、プロペラ10の回転に伴って生じる水流の力を借りてプロペラの後方の水中に排出される。
【0042】
アッパーハウジング1Bの背面には、ドライブシャフト3と平行に延びる操舵軸16を介してスイベルブラケット17が回動自在に支持され、このスイベルブラケットに、船外機を船体に固定する際に用いられるクランプブラケット18が、操舵軸16に対して直角な方向に延びるチルト軸19を介して回動自在に支持されている
【0043】
アッパーハウジング1Bの上端にはカウル20が取り付けられ、このカウルの内部に直列4気筒4サイクルエンジン2が収容されている。
【0044】
図2も示されているように、エンジン2は、内部に第1気筒ないし第4気筒が設けられたシリンダブロック21と、第1気筒ないし第4気筒内のピストンの上死点側に位置させて、シリンダブロック21の一端に取り付けられたシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22のシリンダブロック21と反対側の端部を閉じるヘッドカバー23と、シリンダブロック21の他端に取り付けられたクランクケース24とを備えている。クランクケース24とシリンダブロック21との間に、クランク軸2aがその中心軸線を上下方向に向けた状態で支持されている。
【0045】
エンジン2の第1気筒ないし第4気筒は、それぞれの中心軸線をクランク軸2aの中心軸線に対して直角な方向に向けた状態で、上から下に順に並ぶように設けられている。
図1及び
図2においては、第1気筒ないし第4気筒がそれぞれ設けられている位置を符号#1,#2,#3及び#4で示している。第1気筒ないし第4気筒内にそれぞれ設けられたピストンは、ピストンロッドを介してクランクケース24内に設けられたクランク機構に連結され、各ピストンの往復運動が、このクランク機構により回転運動に変換されてクランク軸2aに伝達される。
【0046】
第1気筒ないし第4気筒の中心軸線を含む平面を間にして対向するシリンダヘッド22の両側面のうちの一方に排気マニホールド取り付け面25が設けられ、両側面のうちの他方には吸気マニホールド取り付け面(図示せず。)が設けられている。
図2に示されているように、排気マニホールド取り付け面25には、第1気筒ないし第4気筒に対してそれぞれ設けられた第1排気ポートP1ないし第4排気ポートP4が、上から下に順に並ぶ状態で開口している。本実施形態では、
図4に示したように、排気マニホールド取り付け面25が、第1気筒ないし第4気筒の中心軸線を含む平面を基準平面O-Oとしたときに、エンジンのシリンダボディ21側からヘッドカバー23側に向かうに従って基準平面に近づいていくように傾斜した状態で設けられている。
【0047】
本実施形態で用いているエンジン2では、第1気筒→第2気筒→第4気筒→第3気筒の順又は第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順に点火が行われる。各気筒の排気ポートから排出される排気が他の気筒の排気ポートから排出される排気と干渉すると、エンジンの排気効率が低下し、エンジンの出力トルクが低下する等、エンジンの性能が低下する。このような現象が起るのを防ぐため、本実施形態では、後述するように、点火が続いて行われることがない第1気筒及び第4気筒に対してそれぞれ設けられた第1排気ポートP1及び第4排気ポートP4にそれぞれ一端が接続された第1排気管31及び第4排気管34の他端を第1集合管41に接続してこれらの排気管31,34を集合させ、同様に点火が続いて行われることがない第2気筒及び第3気筒に対してそれぞれ設けられた第2排気ポートP2及び第3排気ポートP3にそれぞれ一端が接続された第2排気管32及び第3排気管33の他端を第2集合管42に接続してこれらの排気管32,33を集合させることにより、4-2-1集合排気を実現する。
【0048】
シリンダヘッド22の排気マニホールド取り付け面25に排気マニホールド30が取り付けられることにより本発明に係る排気装置が構成される。
図3及び
図4にも示されているように、排気マニホールド30は、排気マニホールド取り付け面25の上端寄り及び下端寄りにそれぞれ設けられた第1排気ポートP1及び第4排気ポートP4にそれぞれ一端が接続された第1排気管31及び第4排気管34と、第1排気ポートP1及び第4排気ポートP4の内側に配置された第2排気ポートP2及び第3排気ポートP3にそれぞれ一端が接続された第2排気管32及び第3排気管33と、エンジン2のシリンダブロック21の側方を上下に延びるように設けられて上部が第1排気管31及び第4排気管34の他端に接続されて、第1排気管31及び第4排気管34を通して排出される排気ガスを集合させる第1集合管41と、同じくシリンダブロック21の側方を上下に延びるように設けられて、上部が第2排気管32及び第3排気管33の他端に接続されて、第2排気管32及び第3排気管33を通して排出される排気ガスを集合させる第2集合管42と、第1集合管41の下部及び第2集合管42の下部に上端が接続されて第1集合管41及び第2集合管42を通して排出される排気ガスを集合させてまとめて排出する主排気管43とを備えている。
【0049】
図3に示されているように、第1排気管31ないし第4排気管34のそれぞれの一端にはフランジf,f,… が設けられ、これらのフランジを対応する排気ポートP1~P4の周辺部に、ガス漏れを防ぐための措置を講じて接続することにより、第1排気管31ないし第4排気管34の一端を第1排気ポートP1ないしP4に接続する。
【0050】
第1排気管31及び第4排気管34はそれぞれエンジン2の側方を下方及び上方に延びる部分を有するようにL字形に曲げられ、それぞれの他端が相互に接続されると共に、第1集合管41の上部に接続されている。第2排気管32及び第3排気管33はそれぞれ第1排気管31の下方に延びる部分及び第4排気管34の上方に延びる部分を乗り越えて斜め下方及び斜め上方に延びる部分を有するように設けられてそれぞれの他端が第2集合管42の上部に接続されている。
【0051】
本実施形態においては、第1排気管31の長さと第4排気管34の長さがほぼ等しく設定されるとともに、第2排気管32の長さと第3排気管33の長さがほぼ等しく設定されている。第1排気管及び第4排気管は湾曲した形状を有するため、第1排気管及び第4排気管の長さを等しくするように設定する際には、両排気管の長さをそれぞれの管の何れの部分の長さで定義するかを決めておく必要がある。各排気管の長さを定義するに当っては、その定義に従って測った第1排気管31の長さと第4排気管34の長さとを等しくした場合に、両排気管内を通してそれぞれの一端から他端まで(集合管41の入口まで)排気音の音波が伝搬する時間がほぼ等しくなるように配慮する必要がある。即ち第1排気管31の長さと第4排気管34の長さとをほぼ等しくするとは、それぞれの排気管の一端から他端まで音波が伝搬するのに要する時間をほぼ等しくするように、それぞれの排気管の長さを設定することを意味する。第1排気管及び第4排気管の長さは例えば、それぞれの一端から他端まで延びるそれぞれの中心軸線(それぞれの管の各部の横断面の中心を結ぶ線)の長さとして定義することができる。第2排気管32の長さ及び第3排気管33の長さの定義についての考え方も上記と同様である。
【0052】
本実施形態で用いるエンジン2では、第1気筒→第2気筒→第4気筒→第3気筒の順又は第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順に点火が行われるため、第1排気管31及び第4排気管34が接続された第1気筒及び第4気筒では点火が続いて行われることがない。同様に、第2排気管32及び第3排気管33が接続された第2気筒及び第3気筒でも点火が続いて行われることがない。このように、点火が続いて行われることがない気筒に接続された排気管を集合管に接続して排気ガスの集合を図ると、排気の干渉によりエンジンの排気効率が低下して、エンジンの出力トルクの低下等、エンジンの性能が低下するのを防ぐことができる。
【0053】
また上記のように、第1排気管31の長さと第4排気管34の長さとをほぼ等しくし、第2排気管32の長さと第3排気管33の長さとをほぼ等しくしておくと、集合される排気管内を通して伝搬する排気音の音波が集合部で干渉し合うのを防ぐことができるため、排気干渉音の低減を図ることができ、船外機の低騒音化を図ることができる。
【0054】
なお第1排気管31及び第4排気管34の長さと、第2排気管32及び第3排気管33の長さは等しくても良く、異なっていても良い。
【0055】
また本実施形態では、第1集合管41の長さと第2集合管42の長さとが等しく設定されている。このように構成しておくと、第1集合管41内を伝搬する音波と第2集合管42内を伝搬する音波とが干渉するのを防ぐことができるため、更なる低騒音化を図ることができる。第1集合管41及び第2集合管42の長さの定義の仕方は、第1排気管31ないし第4排気管34の長さの定義の仕方と同様である。
【0056】
上記のように第1排気管31ないし第4排気管34を設けると、第3排気管33及び第4排気管34に下方から上方に延びる部分が形成されるため、第3排気管33の最下部33aの内側及び第4排気管34の最下部34aの内側にどうしても水が滞留しやすい部分が形成され、第3気筒内で行われた燃焼に伴って発生した水蒸気及び第4気筒内で行われた燃焼に伴って生じる水蒸気が液化して生じた水が、第3排気管33の最下部33aの内側及び第4排気管34の最下部34aの内側に溜まるのを避けられない。第3排気管33の最下部及び第4排気管の最下部に溜まった水がそれぞれエンジンの第3排気ポート及び第4排気ポートから第3気筒内及び第4気筒内に侵入するとエンジンが故障するおそれがある。また第3排気管の最下部及び第4排気管の最下部に水が溜まったままにしておくと、排気管が腐食するため、排気管の寿命が短くなるのを避けられない。
【0057】
そこで、本発明においては、第3排気管33の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管34の最下部の内側に溜まった水を抜くために、これらの水を主排気管43内に導く水抜き通路を設ける。この水抜き通路は、第3排気管33の下部及び第4排気管の下部をそれぞれ主排気管43内に連通させるように設けても良いが、第3排気管33の下部と主排気管43との間は離れているため、第3排気管33の下部に溜まった水を直接主排気管43内に導くように水抜き通路を設けることは容易ではない。そこで、本実施形態では、
図3の概略構成図に示すように、第3排気管33の最下部に溜まった水を第4排気管34内に導く第1水抜き通路38と、第4排気管34の最下部に溜まった水を主排気管37内に導く第2水抜き通路39とにより、水抜き通路を構成している。
【0058】
ここで、
図3及び
図4に示された模式図(概念図)を用いて、本実施形態で用いている排気マニホールドの構成を更に詳細に説明する。
【0059】
第1排気管31は、一端が第1排気ポートP1に接続されてエンジン2から離れる方向に延びる第1基部31Aと、該第1基部の他端に一端が接続され、エンジン2の側方を下方に延びて他端が第1集合管41の上端付近に達するように設けられた第1延伸部31Bとを有する逆L字形の形状に形成されている。
【0060】
第4排気管34は、一端が第4排気ポートP4に接続されてエンジン2から離れる方向に延びる第4基部34Aと、該第4基部の他端に一端が接続され、エンジン2の側方を上方に延びて他端が第1集合管42の上端付近で第1延伸部31Bの他端に接続された第4延伸部34Bとを有するL字形の形状に形成されて、第1延伸部31Bの他端と第4延伸部34Bの他端との接続部付近で第1排気管31及び第4排気管34が第1集合管41の上部(上端及び上端寄りの部分を含む。)に接続されている。
【0061】
第2排気管32は、第1延伸部31Bとエンジン2の排気マニホールド取り付け面25との間の隙間内で一端が第2排気ポートP2に接続された第2基部32Aと、該第2基部32Aの他端に一端が接続され、第1延伸部31B(第1排気管の上下に延びる部分)に密接した状態で該第1延伸部31Bを乗り越えて第2集合管42の上部に向かって斜め下方に延びるように設けられて他端が第2集合管42の上部に接続された第2延伸部32Bとを有する形状に形成されている。
【0062】
第3排気管33は、第4延伸部34Bとエンジン2の排気マニホールド取り付け面25との間の隙間内で一端が第3排気ポートP3に接続された第3基部33Aと、該第3基部33Aの他端に一端が接続され、第4延伸部34Bに密接した状態で該第4延伸部34Bを乗り越えて第2集合管42の上端に向かって斜め上方に延びるように設けられて、他端が第2集合管42の上部に接続された第3延伸部33Bとを有する形状に形成されている。
【0063】
上記のように、第1排気管31ないし第4排気管34を密接させて配置すると、排気マニホールドの温度が上昇し易くなるおそれがある。排気マニホールドの温度が過度に上昇するおそれがある場合には、第1排気管31ないし第4排気管34のそれぞれの管壁内に水等の冷却媒体を流す冷却媒体通路を形成しておくことが望ましい。
【0064】
本実施形態では、第1集合管41及び第2集合管42と、主排気管37とが一体化された状態で構成されている。本実施形態では、第1排気管31の他端及び第4排気管34の他端と相会する部分と、第2排気管32の他端及び第3排気管33の他端と相会する部分とを上部に有し、エンジン2の側方を上下に延びて下端が下方に開口させられた中空構造体40が設けられて、この中空構造体40の上部寄りの部分が上下に延びる2つの部分に二股状に分岐された形状に形成されることにより、第1集合管41及び第2集合管42が構成されている。また、中空構造体40の第1集合管41及び第2集合管42を構成している部分より下方の部分により主排気管43が構成されている。
【0065】
図3に示した例では、中空構造体40の主排気管37を構成する部分よりも上方に位置する部分を、二股状に分岐された形状に形成することにより、第1集合管41及び第2集合管42を構成しているが、中空構造体40の主排気管37を構成する部分よりも上方に位置する部分の中空部を仕切り壁により2つの中空部に仕切ることにより、第1集合管41及び第2集合管42を構成してもよい。
【0066】
主排気管43には、必要に応じてマフラや触媒装置が接続される。
図1に示した例では、主排気管43の下端にマフラ44が接続され、主排気管43から流出した排気ガスをマフラ44を通して排気空間13に排出させるようにしている。
【0067】
本実施形態においては、第2排気管32及び第3排気管33の一部を第1排気管31及び第4排気管34の上を乗り越えさせた状態で配置するため、排気マニホールド30のエンジン本体からの突出長が長くなって、エンジンを収容するカウルが大形化するおそれがある。カウルの大形化を防ぐためには、
図4に示したように、エンジンの第1気筒ないし第4気筒のそれぞれの中心軸線を含む平面O-Oを基準平面としたときに、排気マニホールド取り付け面25が、エンジンのシリンダボディ21側からヘッドカバー23側に向かうに従って、基準平面O-Oに近づいていくように、排気マニホールド取付面25を基準平面に対して一定角度θだけ傾斜させた状態で設けるのが好ましい。
【0068】
このように排気マニホールド取り付け面25を傾斜させておくと、第1排気管31の延伸部(第1延伸部)31Bとエンジン本体との間の距離dを比較的短く設定しても、第2排気管32の基部32Aを第1排気管の延伸部31Bの上に向かって斜めに立ち上げるために必要なスペースを確保することができ、第4排気管34の延伸部(第4延伸部)34Bとエンジン本体との間の距離を比較的短く設定しても、第3排気管33の基部33Aを第4排気管の延伸部33Bの上に向けて斜めに立ち上げるために必要なスペースを確保することができる。そのため、第1排気管の延伸部(第1延伸部)31B及び第4排気管の延伸部(第4延伸部)34Bをエンジン本体に近づけて、排気マニホールドのエンジン本体からの突出長L(
図4参照)を短くすることができ、排気装置をコンパクトに構成して、エンジンを収容するカウルが大形化するのを防ぐことができる。
【0069】
上記のように排気装置を構成すると、点火が続いて行われることがない第1気筒及び第4気筒に対して設けられた第1排気管31及び第4排気管34が第1集合管41に接続され、点火が続いて行われることがない第2気筒及び第3気筒に対して設けられた第2排気管32及び第3排気管33が第2集合管42に接続されるため、排気干渉により排気効率が低下してエンジンの性能が低下するのを防ぐことができる。また集合させる第1排気管31の長さと第4排気管34の長さを等しくし、第2排気管32の長さと第3排気管33の長さを等しくしてあるため、排気干渉音の低減を図ってエンジンの低騒音化を図ることができる。
【0070】
また上記のように排気装置を構成すると、第3気筒内で行われた燃焼及び第4気筒内で行われた燃焼に伴って生じた水蒸気が液化して生じた水が第3排気管の最下部の内側及び第4排気管の最下部の内側に集まることになるが、本発明においては、第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水を主排気管内に導く水抜き通路が設けられているため、第3排気管の最下部の内側に溜まった水及び第4排気管の最下部の内側に溜まった水がエンジンを故障させたり排気管の寿命を短くしたりする原因になるのを防ぐことができる。
【0071】
またエンジンの排気マニホールド取り付け面25を、第1気筒ないし第4気筒の中心軸線を含む平面を基準平面としたときに、エンジンのシリンダボディ21側からヘッドカバー23側に向かうに従って基準平面に近づいていくように傾斜させた状態で設けて、第1排気管の延伸部31B及び第4排気管の延伸部34Bをエンジン本体に近づけて配置することができるようにしたので、排気マニホールドのエンジン本体からの突出長を短くしてエンジンの小型化を図ることができる。
【実施例】
【0072】
次に
図5ないし
図8を参照して、本発明で用いる排気マニホールドの実際の構成例(実施例)につき説明する。
図5ないし
図8において、
図1ないし
図4に示された各部と同じ部分には
図1ないし
図4に示された符号と同じ符号が付されている。
【0073】
図3及び
図4に示した例と同様に、排気マニホールド30は、排気マニホールド取り付け面の上端寄り及び下端寄りにそれぞれ設けられた第1排気ポートP1及び第4排気ポートP4(
図5ないし
図8には図示せず。)にそれぞれ一端が接続される第1排気管31ないし第4排気管34と、第1排気ポートP1及び第4排気ポートP4の内側に配置された第2排気ポートP2及び第3排気ポートP3にそれぞれ一端が接続された第2排気管32及び第3排気管33と、エンジンのシリンダブロックの側方を上下に延びるように設けられて上部が第1排気管31及び第4排気管34の他端に接続された第1集合管41と、エンジンのシリンダブロックの側方を上下に延びるように設けられて、上部が第2排気管32及び第3排気管33の他端に接続された第2集合管42と、第1集合管41の下部及び第2集合管42の下部に上端が接続されて第1集合管41及び第2集合管42を通して排出される排気ガスを集合させて排出する主排気管43とを備えている。
【0074】
図6及び
図8において、符号31B1及び34B1はそれぞれ第1排気管31の延伸部31B内の空間及び第4排気管34の延伸部34B内の空間を示し、符号32B1及び33B1はそれぞれ第2排気管32の延伸部32B内の空間及び第3排気管33の延伸部33B内の空間を示している。
【0075】
図8において、41B1及び42B1はそれぞれ第1集合管41内及び第2集合管42内の空間を示している。また41Cは、第1排気管の延伸部及び第4排気管の延伸部から第1集合管41内に流入する排気ガスの流入口であり、42Cは、第2排気管42の延伸部42B及び第3排気管43の延伸部43Bから第2集合管42内に流入する排気ガスの流入口である。
【0076】
図7は、
図5に示された排気マニホールドを、同図のVII-VII線に沿って断面して、主排気管43の一部と第4排気管34の下部とを構成している部品の断面形状を示したものである。
図7において、符号45で示した部分は、同図に示された部品を、第4排気管34を構成する他の部品に結合する際に、部品間の位置合せを行うために用いるピンである。
【0077】
排気マニホールドを可能な限りコンパクトに構成するため、本実施例では、第1排気管31の延伸部(第1延伸部)31Bと第2排気管32の延伸部(第2延伸部)32Bとが密接して配置され、第3排気管33の延伸部(第3延伸部)33Bと第4排気管34の延伸部(第4延伸部)34Bも密接して配置されている。第2排気管32の延伸部32B及び第3排気管33の延伸部33Bはそれぞれ第1排気管31の延伸部31B及び第4排気管34の延伸部34Bを乗り越えて伸びるように設けられている。
【0078】
排気マニホールドのエンジン本体からの突出長を短縮するため、本実施例では、
図6に示されているように、第2排気管32の延伸部(第2延伸部)32Bが第1排気管31の延伸部(第1延伸部)31Bを乗り越える部分で、第2排気管32の延伸部32Bと第2延伸部の隣接する部分が管壁E1(
図6参照)を共有するように構成されることにより、第2延伸部32Bが第1延伸部31Bを乗り越える部分で第1延伸部と第2延伸部の隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて、第2延伸部32Bの第1延伸部31Bからの突出高さhが縮小されている。
【0079】
同様に、第3排気管33の延伸部(第3延伸部)33Bが第4排気管34の延伸部(第4延伸部)34Bを乗り越える部分で、第3排気管33の延伸部323と第4排気管の延伸部の隣接する部分が管壁E2を共有するように構成されることにより、第3延伸部33Bが第4延伸部34Bを乗り越える部分で第3延伸部33Bと第4延伸部34Bの隣接する部分に個別に管壁を持たせた場合に比べて、第3延伸部33Bの第4延伸部34Bからの突出高さh′が縮小されている。
【0080】
本実施例では、第3排気管33の延伸部33Bが第4排気管の延伸部34Bを乗り越える部分で第3排気管33の延伸部33Bと第4排気管34の延伸部34Bとが共有している管壁E2が、第3排気管33の最下部の内側の空間と、第4排気管34の延伸部34Bの内側の空間との間を仕切っている状態にある。そのため、
図6及び
図8に示されているように、第3排気管33と第4排気管34とが共有している管壁E2を貫通した状態で、第1水抜き通路38が形成され、第3気筒内で行われた燃焼により生じた水蒸気が液化することにより第3排気管33の延伸部33Bの最下部の内側に溜まった水が、水抜き通路38を通して第4排気管34の延伸部34B内の空間34B1内に排出される。第4排気管34の延伸部34B内の空間34B1内に排出された水は、第4排気管34の延伸部34B内を下方に流れて、第4排気管34の延伸部34Bの最下部に達する。
【0081】
図6及び
図7に示されているように、第4排気管34の延伸部34Bの最下部の内側の空間を主排気管43内の上部空間に連通させるように第2水抜き通路39が形成され、第4排気管34の最下部の内側に溜まった水が、第2水抜き通路39を通して主排気管43内に排出されるようになっている。
【0082】
図示の例では、第1排気管31の他端と第4排気管34の他端とが相会する部分と、第2排気管32の他端と第3排気管33の他端とが相会する部分とを上部に有し、エンジンの側方を上下に延びて下端が下方に開口させられた中空構造体40が設けられて、この中空構造体40の上端寄りの部分が上下に延びる2つの部分に分岐された形状に形成されることにより、等しい長さを有する第1集合管41及び第2集合管42が構成され、中空構造体40の第1集合管41及び第2集合管42を構成している部分より下方の部分により、主排気管43が構成されている。
【0083】
本実施例では、第1排気管31ないし第4排気管34が密接して配置されているため、これらの排気管の温度が上昇して排気マニホールドの温度が上昇し易い状態にある。そのため、第1排気管31ないし第4排気管34のそれぞれの管壁内には、随所に冷却媒体を流す冷却媒体通路51(
図6参照)が形成されている。同様に第1集合管41及び第2集合管42の管壁内、並びに主排気管43の管壁内にも冷却媒体通路51が形成され、各冷却媒体通路51を通して水等の冷却媒体を流すことにより、排気マニホールド30を冷却するようになっている。
【0084】
第1排気管31及び第4排気管34のそれぞれの延伸部31B及び34Bは、上下に直線的に延びていて、両者の相会する端部(延伸部31Bの下端と延伸部34Bの上端)が相互に接続され、延伸部31Bと34Bの接続部の内側の空間が、
図6に符号Cで示した部分に開口するように設けられたガス流出孔を通して第1集合管41の上部空間Dに接続されている。
【0085】
本実施例では、第2排気管32の延伸部32Bの先端(第2排気管の他端)及び第3排気管33の延伸部33Bの先端(第3排気管の他端)が、両排気管に対して共通に設けられたフランジ板50(
図5参照)に接続されている。フランジ板50には、延伸部32B内の空間及び延伸部33B内の空間を第2集合管42内に連通させるための孔が設けられ、このフランジ板50が第2集合管42の上部に接続されることにより、第2排気管32及び第3排気管33を通して排出された排気ガスが第2集合管42内に導入されるようになっている。
【0086】
図5ないし
図8に示された排気マニホールド30を構成する第1排気管31ないし第4排気管34及び中空構造体40は、アルミニウムを重力鋳造することにより製作されている。排気マニホールドの各部は、重力鋳造することが可能な複数の部品に分割されていて、各部を構成する部品を結合することにより排気マニホールドが組立てられている。
図5ないし
図8において、符号60で示した円形の部分は、各部を構成する部品を接続するために用いられているネジを示している。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に示された構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲から逸脱することがない範囲で、各部に種々の変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 船外機のハウジング
1A ロワーハウジング
1B アッパーハウジング
2 直列4気筒4サイクルエンジン
2a クランク軸
3 ドライブシャフト
5 プロペラシャフト
6 減速機構
10 プロペラ
11 プロペラのボス部
13 排気空間
14 排気通路
20 カウル
21 シリンダブロック
22 シリンダヘッド
23 ヘッドカバー
24 クランクケース
25 排気マニホールド取付面
P1~P4 第1排気ポートないし第4排気ポート
30 排気マニホールド
31 第1排気管
31A 第1排気管の基部(第1基部)
31B 第2排気管の延伸部(第1延伸部)
32 第2排気管
32A 第2排気管の基部(第1基部)
32B 第2排気管の延伸部(第2延伸部)
32B1 第2排気管の延伸部内の空間
33 第3排気管
33A 第3排気管の基部(第3基部)
33B 第3排気管の延伸部(第3延伸部)
33B1 第3排気管の延伸部内の空間
33a 第3排気管の最下部
34 第4排気管
34A 第4排気管の基部(第4基部)
34B 第4排気管の延伸部(第4延伸部)
34B1 第4排気管の延伸部内の空間
34a 第4排気管の最下部
38 第1水抜き通路
39 第2水抜き通路
40 中空構造体
41 第1集合管
42 第2集合管
43 主排気管
51 冷却媒体通路
E1 第2排気管の延伸部と第1排気管の延伸部とが共有する管壁
E2 第3排気管の延伸部と第4排気管の延伸部とが共有する管壁