(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20240717BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65D47/36 310
B65D47/08 130
(21)【出願番号】P 2020215836
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055535(JP,A)
【文献】特開2019-011131(JP,A)
【文献】特開2016-097990(JP,A)
【文献】特開2018-002224(JP,A)
【文献】米国特許第06484909(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体(100)の口頸部(102)へ装着する装着筒部(4)の上部に連設させた頂壁部(10)を有し、この頂壁部(10)から注出筒(18)を起立したキャップ本体(2)と、
天板(42)の周端部から垂設された蓋周壁(44)がヒンジ(6)を介して前記装着筒部(4)に連結され、かつ
前記天板(42)から前記注出筒(18)
内へ嵌合するシール筒(50)を突設させた上蓋(40)と
を具備し、
前記注出筒(18)の筒孔の下端側に、支承片(30)を介して、前記シール筒(50)に内嵌させるための中栓(20)が支承されており、
前記中栓(20)は、全体の輪郭が縦長の棒状で
あって前記シール筒(50)の内部を埋めることが可能な長さを有しており、外部からの押し上げ操作により、前記シール筒(50)の内部へ嵌入されるように形成され、かつ、この嵌入状態で前記中栓(20)を支える支持手段(H)を
前記シール筒(50)の内側に形成したことを特徴とする、注出キャップ。
【請求項2】
前記支持手段(H)は、前記中栓(20)の上端面(22)の中央部より縦方向に穿設された被係止穴部(26)と、前記天板(42)から垂下されて
前記被係止穴部(26)の内部とかみ合わせるための係止突子(52)とで形成されていることを特徴とすることを特徴とする、請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記中栓(20)の下部(20a)は、下方に向かって小径となるテーパ形状に形成され、当該テーパ形状の下端に相当する液体離脱ポイント(24)を有しており、
当該下部(20a)の外表面に沿って流れる液体が前記液体離脱ポイント(24)から滴下するように設けたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記頂壁部(10)の下面の一部として、
前記注出筒(18)の筒孔に隣接し、当該筒孔から離れるに従って下方へ斜行する斜行面部(A)を形成しており、
前記斜行面部(A)は、当該斜行面部の下縁に相当する液体離脱ライン(L)を有しており、
前記斜行面部(A)に沿って流れる液体が
前記液体離脱ライン(L)から滴下するように設けたことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の注出キャップ。
【請求項5】
前記支承片(30)は、当該支承片の
前記注出筒(18)寄りの端部である外方端部(32)で切断するように形成されており、
かつ前記支承片(30)は薄肉の可撓片であり、
前記中栓(20)と
前記シール筒(50)との間には、
前記支承片(30)の厚み程度のギャップ(g)を設け、
前記中栓(20)を下方から押し上げたときに、
前記中栓(20)と
前記シール筒(50)との間に
前記支承片(30)が挟み付けられるように形成したことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の注出キャップとして、容器体へ装着するキャップ本体の頂壁部の一部の周囲を破断線で囲んで抜栓部とし、抜栓部から立設するプルリングを引っ張ることで注出口を開口するものが知られているが、そうした抜栓操作が不要な抜栓レスキャップも知られている。
例えば特許文献1は、キャップ本体と上蓋とをヒンジを介して連結し、キャップ本体の頂壁部から注出筒を起立するとともに、注出筒の上側に、上蓋の天板から垂設する中栓支持用の支持筒を配置した基本的構造を有する注出キャップであって、前記支持筒を注出筒より大径に形成し、支持筒内に予め嵌入した中栓で注出筒を密閉するように設けている。
前記中栓は、栓頂壁の周端から垂設する栓周壁を前記支持筒内に嵌着するともに、栓頂壁から垂下するシール筒を注出筒の内部に密嵌している。
また特許文献2は、前記基本的構造を有する注出キャップであって、前記支持筒を注出筒より小径に形成するとともに、前記注出筒の下端部付近に、破断可能な支承片を介して中栓を支承している。そして外部からの押し上げ作業により、支承片が切れて、中栓がシール筒の下部外面へ嵌合されることで、キャップ本体側から上蓋側へ移行する。
前記中栓は、前記支承片に連設された短いシール用周壁を底板の周端から起立してなる有底筒状であり、上蓋への移行後には、支持筒の外面に嵌合されたシール用周壁で、注出筒の内面を密嵌している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154757
【文献】特開2020-111381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2のものは、上蓋とは別体である中栓で注出筒の内面をシールしているため、中栓のガタツキを生じ、安定したシール性を確保しずらかった。ガタツキを排除するためには、上蓋の支持筒に対して中栓を固く嵌合させることが考えられるが、その加減がむずかしく、設計上の困難があった。
また特許文献1のものは、シール筒の内部へ内容液が入り込み、液汚れの原因となる可能性があった。
また内容液の性質によっては、中栓の下面や注出筒の下端部付近に内容液が溜まってしまい、吐出に影響がでるおそれがあった。
【0005】
本発明の第1の目的は、キャップ本体の注出筒と上蓋とのシール性を安定化できる注出キャップを提供することである。
本発明の第2の目的は、キャップ本体と上蓋との嵌合箇所の内部へ液体が浸入することを抑制できる注出キャップを提供することである。
本発明の第3の目的は、注出筒付近に付着した内容液を容器体側へ回収できる注出キャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、容器体100の口頸部102へ装着する装着筒部4の上部に連設させた頂壁部10を有し、この頂壁部10から注出筒18を起立したキャップ本体2と、
天板42の周端部から垂設された蓋周壁44がヒンジ6を介して前記装着筒部4に連結され、かつ前記天板42から前記注出筒18内へ嵌合するシール筒50を突設させた上蓋40と
を具備し、
前記注出筒18の筒孔の下端側に、支承片30を介して、前記シール筒50に内嵌させるための中栓20が支承されており、
前記中栓20は、全体の輪郭が縦長の棒状であって前記シール筒50の内部を埋めることが可能な長さを有しており、外部からの押し上げ操作により、前記シール筒50の内部へ嵌入されるように形成され、かつ、この嵌入状態で前記中栓20を支える支持手段Hを前記シール筒50の内側に形成した。
【0007】
本手段では、
図1に示す如く、キャップ本体2の頂壁部10から起立した注出筒18内に、上蓋40の天板42から突設したシール筒50を嵌合させている。
この構造によれば、シール箇所のガタツキがなくなり、安定したシール性が得られる。
また注出筒18の下端側に、支承片30を介して、前記シール筒50に内嵌させるための中栓20が支承されている。
また前記中栓20は、全体の輪郭が縦長の棒状
であって前記シール筒50の内部を埋めることが可能な長さを有しており、
図3(A)~(C)に示す如く、外部からの押し上げ操作により、前記シール筒50の内部へ嵌入されるように形成している。この嵌入状態の中栓20を支える支持手段Hが前記シール筒50の内側に形成されている。
この構造によれば、棒状の中栓20により、シール筒50の内部への液体の浸入を有効に抑制することができ、かつシール筒内からの中栓の脱落を効果的に防止できる。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記支持手段Hは、前記中栓20の上端面22の中央部より縦方向に穿設された被係止穴部26と、前記天板42から垂下されて前記被係止穴部26の内部とかみ合わせるための係止突子52とで形成されている。
【0009】
本手段では、前記支持手段Hは、
図2に示す如く、前記中栓20の上端面22の中央部より縦方向に被係止穴部26を穿設させるとともに、この被係止穴部26内にかみ合わせるための係止突子52を前記天板42から垂設してなる。
この構造によれば、シール筒の内部を棒状の中栓で埋めつつ、この中栓の内側に設けた穴内に支持手段Hを形成することができるので、シール筒内の液汚れを抑制する機能を担保しつつ、中栓20の脱落を防止できる。
【0010】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ前記中栓20の下部20aは、下方に向かって小径となるテーパ形状に形成され、当該テーパ形状の下端に相当する液体離脱ポイント24を有しており、
当該下部20aの外表面に沿って流れる液体が前記液体離脱ポイント24から滴下するように設けている。
【0011】
本手段では、前記中栓20の下部20aは、
図2に示す如く、下方に向かって小径となるテーパ形状に形成され、当該テーパ形状の下端に相当する液体離脱ポイント24を有しており、前記下部20aの外表面に沿って流れる液体が前記液体離脱ポイント24から滴下するように設けている(
図4(B)参照)。
この構造によれば、中栓20の下部に付着した内容液を、効率よく容器体100の内部へ回収できる。
【0012】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ前記頂壁部10の下面の一部として、前記注出筒18の筒孔に隣接し、当該筒孔から離れるに従って下方へ斜行する斜行面部Aを形成しており、
前記斜行面部Aは、当該斜行面部の下縁に相当する液体離脱ラインLを有しており、
前記斜行面部Aに沿って流れる液体が前記液体離脱ラインLから滴下するように設けた。
【0013】
本手段では、
図1に示す如く、前記頂壁部10の下面の一部として、注出筒18の筒孔に隣接し、当該筒孔から離れるに従って下方へ斜行する斜行面部Aを形成している。
前記斜行面部Aは、当該斜行面部の下縁に相当する液体離脱ラインLを有しており、斜行面部Aに沿って流れる液体が液体離脱ラインLから滴下するように設けている(
図4(B)参照)。
この構造によれば、前記斜行面部Aに付着した内容液を、効率よく容器体100の内部へ回収できる。
【0014】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ前記支承片30は、当該支承片の前記注出筒18寄りの端部である外方端部32で切断するように形成されており、
かつ前記支承片30は薄肉の可撓片であり、
前記中栓20と前記シール筒50との間には、前記支承片30の厚み程度のギャップgを設け、
前記中栓20を下方から押し上げたときに、前記中栓20と前記シール筒50との間に前記支承片30が挟み付けられるように形成した。
【0015】
本手段では、前記支承片30は、
図2に示す如く、当該支承片の注出筒18寄りの端部である外方端部32で切断するように形成されている。
また前記支承片30は薄肉の可撓片であり、
中栓20とシール筒50との間には、支承片30の厚み程度のギャップgを設け、
前記中栓20を下方から押し上げたときに、中栓20とシール筒50との間に支承片30が挟み付けられるように形成している(
図3(B)及び(C)参照)。
この構造によれば、中栓20とシール筒50との間の摩擦抵抗が減少するため、シール筒50内への中栓20の押込み作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に発明によれば、キャップ本体2の頂壁部から起立した注出筒18内に、上蓋40の天板42から垂下したシール筒50を嵌合したから、シール箇所でガタツキを生じてシール性が低下することがない。
またシール筒50の筒孔の下端側に、支承片30介して全体の輪郭が縦長棒状であってシール筒50の内部を埋めることが可能な長さを有する中栓20を支承させ、外部からの押上げ操作により、中栓20がシール筒50の内部へ嵌入されるから、シール筒50内の液汚れを抑制できる。
また前記嵌入状態で中栓20を支える支持手段Hをシール筒50内に設けたから、中栓20の脱落を有効に防止できる。
第2の手段に係る発明によれば、前記中栓20の上端面22の中央部より縦方向に被係止穴部26を穿設させ、この被係止穴部26内に、前記天板42から垂設した係止突子52をかみ合わせたから、シール筒50の内部を棒状の中栓20で埋めつつ、中栓の内部に形成した穴部の空間を有効利用して、支持手段Hを形成することができる。
第3の手段に係る発明によれば、前記中栓20の下部20aは、下方に向かって小径となるテーパ形状に形成されており、この下部20aの外表面に沿って流れる液体が液体離脱ポイント24から滴下するように設けたから、中栓20の下部に付着した内容液を、効率よく容器体100の内部へ回収できる。
第4の手段に係る発明によれば、前記頂壁部10の下面の一部を、注出筒18の筒孔に隣接し、当該筒孔から離れるに従って下方へ斜行する斜行面部Aとしており、斜行面部Aに沿って流れる液体が液体離脱ラインLから滴下するように設けたから、前記斜行面部Aに付着した内容液を、効率よく容器体100の内部へ回収できる。
第5の手段に係る発明によれば、前記支承片30は、当該支承片の注出筒18寄りの端部である外方端部32で切断するように形成されており、かつ前記支承片30は薄肉の可撓片であり、前記中栓20を下方から押し上げたときに、中栓20とシール筒50との間に支承片30が挟み付けられるように設け、中栓及びシール筒の間の摩擦抵抗が減少するから、シール筒50内への中栓20の押込み作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る注出キャップを側方から見た断面図である。
【
図2】
図1に示す注出キャップの要部の拡大図である。
【
図3】
図1に示す注出キャップの中栓がキャップ本体側から上蓋側へ移行する様子の説明図であり、同図(A)はキャップ本体と中栓とを連結する支承片が切断される直前の状態を、同図(B)は支承片が切断された後に中栓が押し上げられていく途中の状態を、同図(C)は中栓が上蓋の天板に突き当たった状態をそれぞれ示している。
【
図4】
図1に示す注出キャップの使用状態の説明図であり、同図(A)は中栓の移行後に上蓋を開蓋した状態を、同図(B)は液体の注出後に上蓋を再び閉じた状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から
図4は、本発明の実施形態に係る注出キャップを示している。
注出キャップは、キャップ本体2と、上蓋40とで形成されている。
これらキャップ本体2及び上蓋40は例えば合成樹脂材で形成することができ、また後述のヒンジ6を介して連結された一体成形品に成形することができる。
前記注出キャップは、キャップ本体2に対して上蓋40を180°展開した状態で金型成形することができる。
【0019】
キャップ本体2は、容器体100の口頸部102への装着用の装着筒部4を有し、この装着筒部4の上端部に頂壁部10を連設させている。
【0020】
前記装着筒部4の下部内面には、前記口頸部102の外面に周設された外リブの下面に係合させるための内リブ9が付設されている。
前記装着筒部4の後端部には、ヒンジ6を介して前記上蓋40が連結されている。なお、本明細書では、説明の便宜上、
図1の右側を“後”と、左側を“前”と、紙面に直交する方向を“左右”と称するものとする。
また好適な図示例では、
図1に示すように、前記装着筒部4の上側の端面より下方へ穿設する切溝8が形成されている。
この切溝8は、装着筒部4の上部を内周部分と外周部分とに分割するように、装着筒部4のほぼ全周に亘って、前記上側の端面の幅方向中間部に穿設されている。
この切溝8の底面内端と装着筒部4の内面との間には、薄肉破断部8aが形成されている。また前記装着筒部4の上部外面には、図示しない切込み(縦破断部)が穿設されており、開蓋状態で前記上蓋40を側外方に引っ張ることにより、ヒンジの近傍付近に配置された破断不能な厚肉部(図示せず)まで前記薄肉破断部8aが破断するように形成されている。
この状態から、前記上蓋40を引き上げると、注出キャップが容器本体から分離されるので、注出キャップの分別廃棄を容易に行うことができる。
【0021】
前記頂壁部10は、装着筒部4の上端部に連結されている。
この頂壁部10の周端部からは、環状の係合凸条14が隆起されている。
この係合凸条14の内側に位置させて、前記頂壁部10の一部(図示例ではヒンジ6と反対寄りの箇所)からは、上端側に注出口19を開口する注出筒18が一体的に起立されている。
注出筒18は、その内側の頂壁部分に貫通孔16を穿設することにより、頂壁部10の下方へ連通している。
前記頂壁部10の下面には、前記貫通孔16の周囲に位置させて上側に凹状のテーパ状面部17が周設されている。
前記注出筒18の筒孔の下部(図示例では貫通孔16)には、破断可能な複数の支承片30を介して、後述のシール筒に内嵌させるための中栓20が支承されている。支承片30は中栓20の周囲に等間隔に設けることが望ましい。この中栓については後述する。
好適な図示例では、前記注出筒18の下端部を小内径部18bに、残りの部分を大内径部18aに形成している。
また頂壁部10の下面からは、装着筒部4との間に一定の間隔を存してインナーリング15が垂設されており、これら装着筒部とインナーリングとの間に前記口頸部102を挟持させるように形成している。
【0022】
上蓋40は、図示例では、天板42の周端部から垂設された蓋周壁44を有し、この蓋周壁44の下端部が、ヒンジ6を介して前記装着筒部4の後壁部分に連結されている。
前記蓋周壁44の内面下端部には、前記係合凸条14とかみ合う係合凹条48が周設されている。
また前記蓋周壁44の前壁部下端からは、摘み46が前方へ突出されている。
前記天板42からは、前記注出筒18の内部に液密に嵌合するシール筒50を一体的に垂設している。
好適な図示例では、
図2に示す如く、前記シール筒50の内面の下部を、小径シール面部50bに、残りの部分を大径シール面部50aに形成している。
大径シール面部50aは、通常時において前記注出筒18の大内径部18aに密着しており、これら大径シール面部50aと大内径部18aとで主シール部S1が形成されている。
小径シール面部50bと注出筒18の小内径部18bとで補助シール部S2が形成されている。
補助シール部S2を設ける理由は、主シール部S1と補助シール部S2との二段のシールでヒンジキャップが密封されるので、衝撃により、片方のシールが外れる場合にも、他方のシール部によりシールされ、内容液が漏れることがないから、また、主シール部S1と補助シール部S2との間にスペースKが設けられ、容器の落下などによる衝撃を受けて、補助シール部S2に多少の内容液が浸入したときにスペースKに内容液を留めることができるからである。
もっともこれらの構造は適宜変更することができる。
また前記天板42の下面には、前記シール筒50を囲む環状凹部54が周設されている。
【0023】
本発明において、前記中栓20は、全体として縦長棒状の輪郭を有し、
図3(A)に想像線で示す、押上げ用治具Jを用いた押し上げ操作により、前記シール筒50の内部へ嵌入(内嵌)できるように形成されている。
既述特許文献1では、中栓である蓋を、上蓋への移行後にシール筒の外側に嵌合(外嵌)させていた。これに対して、本実施形態の中栓20は、シール筒へ内嵌させ、シール筒の内部を埋めるもの(埋設棒)である。
そのため、本実施形態では、中栓20の周面の形状は、シール筒50の内部に挿入される箇所に関して、シール筒50の内周面と近似する(好ましくはほぼ一致する)ように形成されている。
もっとも、好適な図示例では、棒状の中栓20の外径をシール筒50の内径より僅かに小さく設け、嵌入された状態で中栓20とシール筒50との間に、遊びとしてのギャップgが生ずるように設けられている(
図3(B)参照)。
そして、本実施形態では、前記支承片30を、
図2の状態の状態で水平で薄肉の帯状とし、かつ中栓20が下方から押し上げられたときに、支承片30の外方端部32で切れるように形成している。こうすることにより、前記
図3(B)に示す如く、支承片30は内方端部34を中心として下側へ折り返され、中栓20の外面とシール筒50の内面との間に挟持されるように形成している。
こうすることにより、
図3に示す如く、中栓20がシール筒50内を上昇する際に、中栓20とシール筒50との間の摩擦抵抗を低減することができる。
前記ギャップgは、中栓20をシール筒50内に嵌挿したときに、中栓20の上端面22と上蓋40の天板42との間の空気が当該ギャップを介して頂壁部10の下側へ逃げることが可能な程度に大きく、他方、液体が表面張力により前記ギャップg内へ浸入することができない程度に小さく形成することが望ましい。
【0024】
本実施形態において、中栓20は、一体成形品である一パーツとして形成されており、シール筒50の内部を一パーツで埋めて、液汚れを防止できるように設けられている。
図示例では、
図2に示す如く、中栓20の上下方向中間部20cが上部20b及び下部20aより小外径に形成されている。
前記上部20b及び上下方向中間部20cは、中栓20に後述の被係止穴部26を穿設することにより、筒形状の中空な構造に形成されている。中栓20の上部20bの上端面22は、水平な環状上端面であり、
図3(C)に示すように、中栓20が上蓋40側へ移行した状態において、前記天板42の下面に当接されている。
他方、下部20aはテーパ形状の中実な部位である。これについては後述する。
図示例では、前記上部20bと上下方向中間部20cとの間に支承片30の内方端部34が連結されている。そして前記上部20bは、予め、シール筒50の内部へ挿入されており、他方、上下方向中間部20c及び下部20aは、前記頂壁部10の下側へ突設されている。
【0025】
本実施形態では、前記シール筒50の内側に、前記中栓20がシール筒50内に嵌入された状態で中栓20を支える支持手段Hを、当該シール筒50の内側に形成している。
図示の支持手段Hは、
図2に示す如く、上蓋40に設けた係止突子52と、中栓20に設けた被係止穴部26とで形成されている。
前記係止突子52は、ボス形状の突起物であり、シール筒50の内側で天板42から垂下している。
前記被係止穴部26は、ボス穴であるが、肉抜き穴を兼ねる。前記被係止穴部26は、中栓20の水平な上端面22の中央部より縦方向に穿設されている。
被係止穴部26からの係止突子52の抜止め手段として、被係止穴部26の内周面に抜止め用リブ28が、また係止突子52の外周面には環状リブ53がそれぞれ周設されている。
すなわち、係止突子52が被係止穴部26内に嵌入されると、
図3(C)に示すように、前記環状リブ53が前記抜止め用リブ28を乗り越えて、この抜止め用リブ28の下側に係合(アンダーカット嵌合)する。
これにより係止突子52と被係止穴部26とは強固にかみ合った状態となる。
この図示例の中栓20は、上蓋40との結合を中栓20の中心部でのアンダーカット嵌合により実現しており、中栓20側のボス穴へボスを嵌め込むために、その穴径が大きくなったとしても丈夫な嵌合を維持することができる。
もっとも前述のアンダーカット嵌合は好適な一実施例であり、支持手段Hの構成は適宜変更することができる。
好適な図示例では、係止突子52と被係止穴部26とがかみ合った状態で、中栓20の上端面22が前記天板42の下面に圧接されるように設けている。
図示の被係止穴部26は、中栓20の上端面22から下部20a近くまで延びる縦長穴部に形成されている。
さらに図示例では、前記被係止穴部26の下部は小径穴部26aに、また被係止穴部26の上部は大径穴部26bにそれぞれ形成されている。そして前記大径穴部26bに前記係止突子52がかみ合うように形成されている。
前記係止突子52は、中空の筒状に形成されている。
もっともこれらの構造は適宜変更することができる。
【0026】
本実施形態では、前記中栓20の下部20aは、下方に向かって小径となるテーパ形状(先細形状)に形成されており、当該テーパ形状の下端に相当する液体離脱ポイント24を有している。
図示例では、前記テーパ形状として、円錐形、より具体的には先端側にR(丸み)を付けた略円錐形を採用している。
Rを付けた形状にするのは、当該箇所に液体が付着しにくいようにするためである。
もっとも、前記の形状は適宜変更することができ、例えば半球状でも構わない。
そして当該下部20aの外表面に沿って流れる液体が前記液体離脱ポイント24から滴下して容器体100側へ回収されるように形成されている。
内容液が例えば高粘度であるときには、当該液体が注出筒18の下端付近に溜まってしまい、次の注出作業の妨げとなる可能性がある。
本実施形態の構成によれば、注出筒18の筒孔内に付着した液体を容器体100側へ効率的に戻すことにより、そうした不都合を回避できる。
【0027】
本実施形態では、前記頂壁部10の下面の一部として、注出筒18の筒孔に隣接し、当該筒孔から離れるに従って下方へ斜行する斜行面部Aを形成している。
本明細書において、“隣接して”とは注出筒18の下端の近傍に付着した液体を斜行面部Aに導ける程度に近接していることをいい、厳密に隣り合っている必要はない。
図示例では、前記貫通孔16の周囲にテーパ状面部17と周設し、このテーパ状面部17との間に僅かな空きを存して斜行面部Aを設けている。
前記斜行面部Aは、当該斜行面部の下縁に相当する液体離脱ラインLを有しており、当該斜行面部Aに沿って流れる液体が液体離脱ラインLから滴下するように形成している。
こうした構成により、注出筒18の透孔に隣接する領域に付着した液体を容器体100側へ効率的に戻すことができる。
図示例の構成では、前記インナーリング15の内側において、前記注出筒18をヒンジと反対寄り(前寄り)に設け、注出筒18よりヒンジ6側(後方側)に側方から見て“くの字”状の主傾斜壁部11及び副傾斜壁部12を形成している。
前記主傾斜壁部11は、側方からみて、注出筒18の孔縁との隣接箇所から後下方へ延びており、また前記副傾斜壁部12は主傾斜壁部11の下縁ラインから後上方へ延びている。
主傾斜壁部11及び副傾斜壁部12は、それぞれ左右方向に長い帯板状の壁部であり、両傾斜壁部の両端はインナーリング15に連結している。
そして主傾斜壁部11の下面を前記斜行面部Aとし、前記主傾斜壁部11の下縁ラインを液体離脱ラインLとしている。
これらの構造は適宜変更することができる。例えば前記副傾斜壁部12に代えて、液体離脱ラインLから上方へ延びる垂直壁部を設けてもよい。
【0028】
前記構成において、本発明のキャップを使用するときには、容器体100への装着に先立って、
図1に示す閉蓋状態から、
図3(A)に想像線で示すように、押上げ棒などの押上げ用治具Jで中栓20を突き上げる。
そうすると、
図3(B)に示すように、支承片30が引き延ばされて、外方端部32側で切断される。そして前記支承片30は内方端部34を中心として下方へ折り返され、中栓20の外面とシール筒50の内面との間のギャップg内で挟持される。故に、中栓20とシール筒50との間の摩擦抵抗が小さくなる。
さらに前記押上げ用治具Jが中栓20を押し上げることにより、中栓20は周方向に等間隔に付設した支承片30において前記シール筒50の内面に対して摺接しながら、シール筒50内を上昇する。
なお、上蓋40の天板42と中栓20との間の空間内の空気が前記ギャップgを通って頂壁部10の下方へ逃げることができる。従って、中栓20の押込みによって前記空間の内圧が上昇して中栓20の押込みの妨げとなることがない。
前記中栓20の上昇により、
図3(C)に示す如く、係止突子52の上蓋40の係止突子52が中栓20の被係止穴部26内に嵌入される。この際に、被係止穴部26内の抜止め用リブ28が前記係止突子52の環状リブ53を乗り越え、環状リブ53の上側に係合するとともに、中栓20の上端面22が前記天板42の下面に突き当たる。
これにより、係止突子52と被係止穴部26とが強固にかみ合うとともに、キャップ本体2から上蓋40への中栓20の移行が完了する。中栓20が移行することにより、実質的にシール筒50内には液体が入ることが抑制される。
次に
図4(A)に示す如く、容器体100の口頸部102にキャップ本体2を装着した後に、上蓋40を開方向へ回動すると、注出筒18から上蓋40のシール筒50が離脱し、注出筒18が開放される。この際に、中栓20も上蓋40とともに開位置に移動する。
この状態で容器体100を傾け、内容液を注出筒18から注出するとよい。
注出作業が完了したら、容器体100を正立状態に戻すとともに、上蓋40を閉蓋する。
このときに、
図4(B)に示す如く、注出筒18の筒孔内の液体は中栓20のテーパ形状の下部20aの外表面に沿って流れて液体離脱ポイント24から容器体100内へ滴下する。
また注出筒18の下端との隣接領域に付着した液体は斜行面部Aに沿って流れて液体離脱ラインLから容器体100内へ滴下する。
これにより、注出キャップ側に付着した液体を容器体100側へ効率的に回収することができる。
【符号の説明】
【0029】
2…キャップ本体 4…装着筒部 6…ヒンジ 8…切溝 8a…薄肉破断部
9…内リブ 10…頂壁部 11…主傾斜壁部 12…副傾斜壁部
14…係合凸条 15…インナーリング 16…貫通孔 17…テーパ状面部
18…注出筒 18a…大内径部 18b…小内径部 19…注出口
20…中栓 20a…下部(テーパ状下部) 20b…上部 20c…上下方向中間部
22…上端面 24…液体離脱ポイント 26…被係止穴部 26a…小径穴部
26b…大径穴部 28…抜止め用リブ
30…支承片 32…外方端部 34…内方端部
40…上蓋 42…天板 44…蓋周壁 46…摘み 48…係合凹条
50…シール筒 50a…大径シール面部 50b…小径シール面部
52…係止突子 53…環状リブ 54…環状凹部
100…容器体 102…口頸部
A…斜行面部 D…液滴 g…ギャップ H…支持手段 J…押上げ用治具
K…スペース(液溜め部) L…液体離脱ライン r…液回収リブ
S1…主シール部 S2…補助シール部