IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノバルティス アーゲーの特許一覧

特許7522040抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用
<>
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図1-1
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図1-2
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図2
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図3
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図4
  • 特許-抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体の投与レジメンおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240717BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P19/00
A61P17/00
A61P15/00
A61P35/04
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 T
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020555916
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019027175
(87)【国際公開番号】W WO2019200229
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】62/657,141
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マーク・スタイン
(72)【発明者】
【氏名】クランダヤン・カシ・スブラマニアン
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/205320(WO,A1)
【文献】Expert Review of Clinical Pharmacology,2017年,Vol.10, No.9,pp.935-945,https://doi.org/10.1080/17512433.2017.1356717
【文献】CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS,2018年02月,Vol.103, No.4,pp.631-642,doi:10.1002/cpt.982
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD-L1抗体分子を有効成分として含む、対象においてがんを処置するための医薬組成物であって、
3週間に1回、800mgまたは1200mgの前記抗PD-L1抗体分子用量で静脈内投与され、
記抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含
前記がんが、骨がん、皮膚がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせから選択される、
医薬組成物。
【請求項2】
3週間に1回、1200mgの前記抗PD-L1抗体分子用量で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記骨がんが脊索腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記皮膚がんが、黒色腫またはメルケル細胞癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記黒色腫が皮膚黒色腫である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記乳がんが、乳癌またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記結腸直腸がんが、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がんから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記結腸直腸がんが、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記肝臓がんが肝細胞癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記子宮頸がんが子宮頸部の扁平上皮癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記甲状腺がんが甲状腺未分化がん(ATC)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が他の処置剤をさらに含む;または前記医薬組成物が他の処置剤、手順もしくは様式と組み合わせて投与される、請求項1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、PD-1阻害剤、トランスフォーミング増殖因子(TGF)β阻害剤、IL15/IL-15Ra複合体、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質(TIM)-3阻害剤、リンパ球活性化遺伝子(LAG)-3阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)および/またはラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤、TIGIT抗体、およびPI3K/AKT/mTOR経路を標的とする処置剤のうちの1つ以上をさらに含む;または前記医薬組成物が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、IL15/IL-15Ra複合体、GITRアゴニスト、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、PI3Kおよび/またはmTORの阻害剤、TIGIT抗体、およびPI3K/AKT/mTOR経路を標的とする療法のうちの1つ以上と組み合わせて投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物がPD-1阻害剤をさらに含む;または前記医薬組成物がPD-1阻害剤と組み合わせて投与される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記PD-1阻害剤が、PDR001、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、REGN2810、PF-06801591、BGB-A317、INCHR1210、TSR-042またはAMP-224から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が前記PD-1阻害剤をさらに含み、3週間に1回、300mgの前記PD-1阻害剤用量、または4週間に1回、400mgの前記PD-1阻害剤用量で投与される;または前記医薬組成物が、3週間に1回、300mgの用量、または4週間に1回、400mgの用量の前記PD-1阻害剤と組み合わせて投与される、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、PI3Kおよび/またはmTORの阻害剤、またはPI3K/AKT/mTOR経路を標的とする処置剤をさらに含む;または前記医薬組成物が、PI3Kおよび/またはmTORの阻害剤、またはPI3K/AKT/mTOR経路を標的とする療法と組み合わせて投与される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記TGFβ阻害剤がXOMA 089またはフレソリムマブであり、前記GITRアゴニストがBMS-986156、MK-4166、MK-1248、TRX518、INCAGN1876、AMG 228、INBRX-110またはMEDI 1873であり、前記TIM-3阻害剤がTSR-022またはF38-2E2であり、前記LAG-3阻害剤がLAG525またはBMS-986016である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が前記TGFβ阻害剤をさらに含み、3週間に1回、0.1mg/kg~15mg/kgの前記TGFβ阻害剤用量で投与される;または前記医薬組成物が、3週間に1回、0.1mg/kg~15mg/kgの用量の前記TGFβ阻害剤と組み合わせて投与される、請求項14または19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗PD-L1抗体分子が、多重特異性抗体分子である、または他のタンパク質との融合タンパク質を形成している、請求項1~20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記抗PD-L1抗体分子が、PD-L1に対する第1の結合特異性、およびTIGITに対する第2の結合特異性を有する二重特異性抗体分子である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記対象が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)においてPD-L1発現を有する、または有すると特定されている、請求項1~22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記対象が、PD-L1を発現するがんを有する、または有すると特定されている、請求項1~23のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
記対象からの血清または血清試料中の可溶性PD-L1の50%以上が前記抗PD-L1抗体分子によって結合される投与スケジュールで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記投与スケジュールで、前記対象からの血清または血清試料中の可溶性PD-L1の60%以上が前記抗PD-L1抗体分子によって結合される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記投与スケジュールで、前記対象からの血清または血清試料中の可溶性PD-L1の70%以上が前記抗PD-L1抗体分子によって結合される、請求項26に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月13日に出願された米国仮特許出願第62/657,141号の利益を主張する。前記出願の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年4月9日に作成された前記ASCIIコピーは、C2160-7023WO_SL.txtという名称で、サイズが245,480バイトである。
【背景技術】
【0003】
T細胞が抗原に対する免疫応答を媒介する能力は、2つの異なるシグナル伝達相互作用を要する(Viglietta,V.ら(2007)Neurotherapeutics 4:666~675;Korman,A.J.ら(2007)Adv.Immunol.90:297~339)。最初に、抗原提示細胞(APC)の表面上に配列された抗原が、抗原特異的ナイーブCD4+T細胞に提示される。このような提示は、T細胞受容体(TCR)を介して、T細胞に、提示された抗原に特異的な免疫応答を開始するように指示するシグナルを伝達する。第2に、APCと別個のT細胞表面分子との間の相互作用を通して媒介される様々な共刺激シグナルおよび抑制性シグナルが、T細胞の活性化および増殖、ならびに最終的にはそれらの阻害を誘因する。
【0004】
免疫系は、共刺激性リガンドおよび共抑制性リガンドならびに受容体のネットワークによって厳密に制御されている。これらの分子は、T細胞活性化の第2のシグナルを提供し、感染に対する免疫応答を最大化しながら、自己に対する免疫を制限する正と負のシグナルのバランスの取れたネットワークを提供する(Wang,L.ら(Epub 2011年3月7日) J.Exp.Med.208(3):577-92;Lepenies,B.ら(2008)Endocrine,Metabolic & Immune Disorders--Drug Targets 8:279~288)。共刺激シグナルの例としては、APCのB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)リガンドと、CD4+Tリンパ球のCD28およびCTLA-4受容体との間の結合が挙げられる(Sharpe,A.H.ら(2002)Nature Rev.Immunol.2:116~126;Lindley,P.S.ら(2009)Immunol.Rev.229:307~321)。B7.1またはB7.2のCD28への結合は、T細胞活性化を刺激するが、B7.1またはB7.2のCTLA-4への結合は、このような活性化を阻害する(Dong,C.ら(2003) Immunolog.Res.28(1):39~48;Greenwald,R.J.ら(2005) Ann.Rev.Immunol.23:515~548)。CD28はT細胞の表面で構成的に発現されるが(Gross,J.ら(1992)J.Immunol.149:380~388)、CTLA-4の発現はT細胞活性化後に急速に上方制御される(Linsley,P.ら(1996)Immunity 4:535~543)。
【0005】
CD28受容体の他のリガンドには、「B7 Superfamily」(B7スーパーファミリー)としても知られている関連するB7分子のグループが含まれる(Coyle,A.J.ら(2001)Nature Immunol.2(3):203~209;Sharpe,A.H.ら(2002)Nature Rev.Immunol.2:116~126;Collins,M.ら(2005)Genome Biol.6:223.1~223.7;Korman,A.J.ら(2007)Adv.Immunol.90:297~339)。B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、プログラム細胞死1リガンド(PD-L1;B7-H1)、プログラム細胞死2リガンド(PD-L2;B7-DC)、B7-H3、B7-H4およびB7-H6を含む、B7スーパーファミリーのいくつかのメンバーが既知である(Collins,M.ら(2005)Genome Biol.6:223.1~223.7)。
【0006】
プログラム細胞死1(PD-1)タンパク質は、T細胞レギュレーターの拡張CD28/CTLA-4ファミリーの抑制性メンバーである(Okazakiら(2002)Curr Opin Immunol 14:391779-82;Bennettら(2003)J.Immunol.170:711-8)。CD28ファミリーの他のメンバーには、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAが含まれる。プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)とプログラム細胞死リガンド2(PD-L2)のPD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドが特定されている。PD-L1およびPD-L2は、PD-1に結合すると、T細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている(Freemanら(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchmanら(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carterら(2002)Eur J Immunol 32:634-43;Ohigashiら(2005)Clin Cancer Res 11:2947-53)。
【0007】
PD-L1(表面抗原分類274(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)としても知られている)は、40kDaの1型膜貫通タンパク質である。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞に見られるその受容体、PD-1に結合して、活性化または阻害を調節する。PD-L1とPD-L2の両方が、PD-1に結合するが、CD28にもCTLA-4にも結合しないB7ホモログである(Blankら(2005)Cancer Immunol Immunother.54:307-14)。PD-L1とT細胞上のその受容体PD-1の結合は、IL-2産生およびT細胞増殖のTCR媒介活性化を阻害するシグナルを伝達する。この機構は、ZAP70リン酸化の阻害およびCD3ζとの会合を伴う(Sheppardら(2004)FEBS Lett.574:37~41)。PD-1シグナル伝達は、転写因子NF-κBおよびAP-1の活性化、ならびにIL-2の産生に必要な、TCRシグナル伝達に起因するPKC-θ活性化ループリン酸化を減弱する。PD-L1は共刺激分子CD80(B7-1)にも結合するが、CD86(B7-2)には結合しない(Butteら(2008)Mol Immunol.45:3567-72)。
【0008】
細胞表面上でのPD-L1の発現は、IFN-γ刺激を通して上方制御されることが示されている。PD-L1の発現は、ヒトの肺癌、卵巣癌および結腸癌、ならびに様々な骨髄腫を含む、多くのがんで見られ、しばしば予後不良と関連している(Iwaiら(2002)PNAS 99:12293-7;Ohigashiら(2005)Clin Cancer Res 11:2947-53;Okazakiら(2007)Intern.Immun.19:813-24;Thompsonら(2006)Cancer Res.66:3381-5)。PD-L1は、抗原特異的T細胞クローンのアポトーシスを増加させることによって腫瘍免疫で役割を果たすことが示唆されている(Dongら(2002)Nat Med 8:793~800)。PD-L1が腸粘膜炎症に関与している可能性があり、PD-L1の阻害が大腸炎に関連する消耗性疾患を抑制することも示唆されている(Kanaiら(2003)J Immunol 171:4156-63)。
【0009】
したがって、がんなどの疾患を治療するための抗PD-L1抗体分子の投与レジメンおよび製剤を含む、PD-L1機能およびPD-L1発現細胞の機能を調節する新規な治療アプローチの必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
高い親和性および特異性でプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に結合する抗体分子(例えば、ヒト化抗体分子)が、少なくとも部分的に本明細書に開示される。抗PD-L1抗体分子を含む医薬組成物および用量製剤も提供される。本明細書に開示される抗PD-L1抗体分子は、がん性障害(例えば、固形腫瘍および血液がん)、ならびに感染性疾患(例えば、慢性感染性障害または敗血症)などの障害を治療または予防するために(単独で、または他の治療剤、手順もしくは様式と組み合わせて)使用することができる。したがって、抗PD-L1抗体分子を使用して様々な障害を治療するための投与レジメンを含む方法が本明細書に開示される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、均一用量または固定用量で投与または使用される。
【0011】
したがって、一態様では、本開示は、対象の障害、例えば、過剰増殖性状態または障害(例えば、がん)を治療(例えば、阻害、低減、改善または予防)する方法を特徴とする。
【0012】
一定の実施形態では、本方法が、3週間に1回または4週間に1回、約1000mg~約1400mgまたは約1400mg~約1900mgの用量で、抗PD-L1抗体分子、例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を対象に投与することを含む。
【0013】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回または4週間に1回、約1000mg~約1400mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回または4週間に1回、約1400mg~約1900mgの用量で投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1400mg、約1100mg~約1300mg、約1000mg~約1200mg、約1000mg~約1300mg、約約1200mg~約1400mg、約1000mg~約1300mg、約約1100mg~約1200mg、または約1200mg~約1300mg、例えば、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1100mg~約1300mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1400mg~約1600mg、約1500mg~約1800mg、約1600mg~約1800mg、約1400mg~約1800mg、約1600mg~約1900mg、約1500mg~約1900mg、約1600mg~約1700mg、約1400mg~約1700mg、または約1500mg~約1700mg、例えば、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、または約1900mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1500mg~約1700mg、例えば、約1600mgの用量で投与される。
【0016】
PD-L1は、広範囲の腫瘍で発現される膜結合タンパク質として、または可溶型で全身循環において存在することができる。本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、可溶性および膜PD-L1の両方に結合することができる。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子の投与が、抗PD-L1抗体分子によるsPD-L1の結合により、総sPD-L1(すなわち、遊離sPD-L1およびsPD-L1-抗PD-L1抗体分子複合体)を増加させることができると考えられる。いくつかの実施形態では、PD-L1抗体分子の投与後の対象中の総sPD-L1濃度(例えば、血清濃度)が、PD-L1抗体分子の投与前の総sPD-L1濃度(例えば、血清濃度)と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、または100倍増加する。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象中(例えば、血液中)の可溶性PD-L1(sPD-L1)の50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上)が、抗PD-L1抗体分子によって結合される用量または投与スケジュールで投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の85%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の90%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の95%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の99%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。
【0019】
いくつかの実施形態では、可溶性PD-L1への抗PD-L1抗体分子の結合が、血液試料(例えば、血清試料または血漿試料)で決定される。いくつかの実施形態では、可溶性PD-L1への抗PD-L1抗体分子の結合が、がん(例えば、がん試料)で決定される。いくつかの実施形態では、可溶性PD-L1への抗PD-L1抗体分子の結合が、例えば、インビトロ(例えば、ELISAもしくは細胞ベースのアッセイによって)もしくはインビボ(例えば、画像化によって)で測定される、またはPK/PDモデル、例えば、本明細書に記載されるPK/PDモデルから予測される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。
【0020】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象中(例えば、血液中)の遊離可溶性PD-L1のレベルを、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの例えば、50%以下(例えば、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下)に低下させる用量または投与スケジュールで投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの15%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの10%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの5%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの1%以下に低下する。
【0023】
いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、血液試料(例えば、血清試料または血漿試料)で決定される。いくつかの実施形態にでは、遊離可溶性PD-L1のレベルが、がん(例えば、がん試料)で決定される。いくつかの実施形態では、遊離遊離可溶性PD-L1のレベルが、例えば、インビトロ(例えば、ELISAもしくは細胞ベースのアッセイによって)もしくはインビボ(例えば、画像化によって)で測定される。またはPK/PDモデル、例えば、本明細書に記載されるPK/PDモデルから予測される。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1の参照レベルが、例えば、投与スケジュールに従って、例えば、抗PD-L1抗体分子の投与前の、対象中の遊離可溶性PD-L1のベースラインレベルである。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象中(例えば、腫瘍中)のPD-L1の50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上)が、抗PD-L1抗体分子によって結合される用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍中のPD-L1の85%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、腫瘍中の可溶性PD-L1の90%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、腫瘍中のPD-L1の95%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、腫瘍中のPD-L1の99%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、障害が、がん、例えば、本明細書に記載されるがんまたはその転移性病変である。一定の実施形態では、がんが固形腫瘍または血液がんである。いくつかの実施形態では、がんが骨がん、例えば脊索腫である。いくつかの実施形態では、がんが、皮膚がん、例えば、メルケル細胞癌または黒色腫、例えば、皮膚黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんが、乳がん、例えば、転移性乳がんまたはステージIV乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。いくつかの実施形態では、がんが子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、結腸直腸がん、例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんが子宮内膜がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんが卵巣がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肝臓がん、例えば、肝細胞癌、例えば、進行期の肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんが、甲状腺がん、例えば甲状腺未分化がん(ATC)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量(例えば、均一用量)で、注入(例えば、静脈内または皮下)によって投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量(例えば、均一用量)で、注入(例えば、静脈内または皮下)によって投与される。投与スケジュール(例えば、均一投与スケジュール)は、例えば、3週間に1回~4週間に1回で変化することができる。
【0031】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で、注入によって投与される。
【0032】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量で、注入によって投与される。
【0033】
別の態様では、本開示は、過剰増殖性(例えば、がん)細胞の活性(例えば、成長、生存、または生存能、または全て)を低下させる方法を特徴とする。本方法は、細胞を抗PD-L1抗体分子、例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子と接触させることを含む。本方法は、例えば、3週間に1回または4週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の用量で、例えば、治療プロトコルの一部として、対象で実施することができる。本方法は、例えば、3週間に1回または4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の抗PD-L1抗体分子の用量で、例えば、治療プロトコルの一部として、対象で実施することができる。
【0034】
一定の実施形態では、用量が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の抗PD-L1抗体分子である。他の実施形態では、用量が、4週間に1回、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の抗PD-L1抗体分子である。
【0035】
がん細胞は、例えば、固形腫瘍、例えば、骨がん(例えば、脊索腫)、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫、例えば、皮膚黒色腫)、乳がん(例えば、転移性乳癌またはステージIV乳癌、例えば、TNBC)、子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)、結腸直腸がん(例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がん)、子宮内膜がん、肺がん(例えば、NSCLC)、卵巣がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、または甲状腺がん(例、甲状腺未分化がん)などの本明細書に記載されるがんからの細胞であることができる。
【0036】
一定の実施形態では、がんが固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが骨がん、例えば脊索腫である。いくつかの実施形態では、がんが、皮膚がん、例えば、メルケル細胞癌または黒色腫、例えば、皮膚黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんが、乳がん、例えば、転移性乳がんまたはステージIV乳癌、例えば、TNBCである。いくつかの実施形態では、がんが子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、結腸直腸がん、例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんが子宮内膜がんである。いくつかの実施形態では、がんが肺がん、例えば、NSCLCである。いくつかの実施形態では、がんが卵巣がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肝細胞癌、例えば、進行期の肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんが、甲状腺がん、例えば甲状腺未分化がん(ATC)である。
【0037】
本明細書に開示される方法の一定の実施形態では、本方法が、対象の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるPD-L1発現のレベルを決定することをさらに含む。他の実施形態では、PD-L1発現のレベルが、(例えば、免疫組織化学を使用して)対象から取得された試料(例えば、腫瘍生検)で決定される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)が、対象中に検出可能なレベルまたは上昇したレベルのPD-L1が存在する場合に投与される。検出工程を、例えば、本明細書に記載される治療剤の有効性を監視するために使用することもできる。例えば、検出工程を使用して、抗PD-L1抗体分子の有効性を監視することができる。
【0038】
別の態様では、本開示は、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含む組成物(例えば、1つ以上の組成物または剤形)を特徴とする。抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含む製剤、例えば、投与製剤、およびキット、例えば、治療キットも、本明細書に記載される。一定の実施形態では、組成物または製剤が、約1000mg~約1400mg、例えば、約1100mg~約1300mg(例えば、約1200mg)の抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含む。一定の実施形態では、組成物または製剤が、約1400mg~約1900mg、例えば、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含む。いくつかの実施形態では、組成物または製剤が、3週間に1回または4週間に1回投与または使用される。一実施形態では、組成物または製剤が、約1200mgの抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含み、3週間に1回投与または使用される。一実施形態では、組成物または製剤が、約1600mgの抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を含み、4週間に1回投与または使用される。一定の実施形態では、組成物または製剤が、がん、例えば、本明細書に開示されるがんまたはその転移性病変を治療するために使用される。
【0039】
本明細書に記載される方法、組成物、投与製剤およびキットの追加の特徴または実施形態には、以下のうちの1つ以上が含まれる。
【0040】
PD-L1に対する抗体分子
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、表3に示される、または表3に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表3に開示されるBAP058-Clone OまたはBAP058-Clone Nの重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表3に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表3に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、KabatとChothiaの両方の組み合わせCDR定義に準ずる(例えば、表3に示される)。一実施形態では、VH CDR1のKabatとChothiaの組み合わせのCDRが、アミノ酸配列GYTFTSYWMY(配列番号647)を含む。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表3に示される、または表3に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0041】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、それぞれ表3に開示される、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0042】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、それぞれ表3に開示される、配列番号628のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR1、配列番号629のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR2、および配列番号630のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR3を含むVHと;配列番号633のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR1、配列番号634のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR2、および配列番号635のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR3を含むVLとを含む。
【0043】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列、または配列番号606と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号616のアミノ酸配列、または配列番号616と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列、または配列番号620と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号624のアミノ酸配列、または配列番号624と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号616のアミノ酸配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号624のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0044】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号607のヌクレオチド配列、または配列番号607と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号617のヌクレオチド配列、または配列番号617と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号621のヌクレオチド配列、または配列番号621と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号625のヌクレオチド配列、または配列番号625と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号607のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号617のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号621のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号625のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0045】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列、または配列番号608と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号618のアミノ酸配列、または配列番号618と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列、または配列番号622と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号626のアミノ酸配列、または配列番号626と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号626のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0046】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号615のヌクレオチド配列、または配列番号615と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号619のヌクレオチド配列、または配列番号619と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号623のヌクレオチド配列、または配列番号623と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号627のヌクレオチド配列、または配列番号627と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号615のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号619のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号623のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号627のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0047】
他の例示的なPD-L1阻害剤
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、YW243.55.S70またはTECENTRIQTMとしても知られているアテゾリズマブ(Genentech/Roche)である。アテゾリズマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,217,149号明細書に開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、アテゾリズマ(Atezolizuma)のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0048】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MSB0010718Cとしても知られているアベルマブ(Merck SeronoおよびPfizer)である。アベルマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2013/079174号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、アベルマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0049】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MEDI4736としても知られているデュルバルマブ(MedImmune/AstraZeneca)である。デュルバルマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,779,108号明細書に開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、デュルバルマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0050】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MDX-1105または12A4としても知られているBMS-936559(Bristol-Myers Squibb)である。BMS-936559および他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる、米国特許第7,943,743号明細書および国際公開第2015/081158号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、BMS-936559のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0051】
さらなる既知の抗PD-L1抗体には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2015/181342号パンフレット、国際公開第2014/100079号パンフレット、国際公開第2016/000619号パンフレット、国際公開第2014/022758号パンフレット、国際公開第2014/055897号パンフレット、国際公開第2015/061668号パンフレット、国際公開第2013/079174号パンフレット、国際公開第2012/145493号パンフレット、国際公開第2015/112805号パンフレット、国際公開第2015/109124号パンフレット、国際公開第2015/195163号パンフレット、米国特許第8,168,179号明細書、米国特許第8,552,154号明細書、米国特許第8,460,927号明細書および米国特許第9,175,082号明細書に記載されるものが含まれる。
【0052】
一実施形態では、抗PD-L1抗体が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗PD-L1抗体のうちの1つとPD-L1上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0053】
製剤
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、本明細書に記載される対象への投与(例えば、静脈内投与)に適した製剤(例えば、用量製剤または剤形)に製剤化することができる。本明細書に記載される製剤は、液体製剤、凍結乾燥製剤または再構成製剤であることができる。
【0054】
一定の実施形態では、製剤が液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)と、緩衝剤とを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、25mg/mL~250mg/mL、例えば、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~180mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~120mg/mL、90mg/mL~110mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、または100mg/mL~200mg/mL、例えば、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子を含む。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、80mg/mL~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する。
【0056】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、ヒスチジンを含む緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)を含む。一定の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、1mg/mL~10mg/mL、例えば、2mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、3mg/mL~7mg/mL、2mg/mL~6mg/mL、3mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、2mg/mL~7mg/mL、3mg/mL~9mg/mL、または1mg/mL~6mg/mL、例えば、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、または9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度で存在する。他の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)または製剤が、pH4~7、例えば、5~6、例えば、5、5.5または6を有する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)または製剤が、pH5~6、例えば、5.5を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、2mg/mL~6mg/mL(例えば、約3mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、ヒスチジンおよびヒスチジン-HClを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL(例えば、約3mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤とを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、炭水化物をさらに含む。一定の実施形態では、炭水化物がスクロースである。いくつかの実施形態では、炭水化物(例えば、スクロース)が、20mg/mL~200mg/mL、例えば、25mg/mL~180mg/mL、30mg/mL~170mg/ml、45mg/mL~140mg/ml、60mg/mL~190mg/mL、35mg/mL~165mg/mL、70mg/mL~130mg/mL、65mg/mL~145mg/mL、40mg/mL~160mg/mL、55mg/mL~165mg/mL、30mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~175mg/mL、または75mg/mL~125mg/mL、例えば、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mLまたは150mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースとを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、界面活性剤をさらに含む。一定の実施形態では、界面活性剤がポリソルベート20である。いくつかの実施形態では、界面活性剤またはポリソルベート20)が、0.1mg/mL~1.0mg/mL、例えば、0.2mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.8mg/mL、0.4mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.8mg/mL、0.3mg/mL~0.6mg/mL、0.4mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.7mg/mL、0.3mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.5mg/mL、0.4mg/m~0.8mg/mL、または0.2mg/mL~0.5mg/mL、例えば、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLまたは0.9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液(例えば、ヒスチジン/ヒスチジン-HCL)を含む緩衝剤と;約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0063】
本明細書に記載される製剤は、容器に保存することができる。本明細書に記載される製剤のいずれかに使用される容器は、例えば、バイアル、および任意に、ストッパー、キャップまたは両方を含むことができる。一定の実施形態では、バイアルが、ガラスバイアル、例えば、6R白色ガラスバイアルまたは無色ガラスバイアルである。他の実施形態では、ストッパーが、ゴム栓、例えば、灰色ゴム栓である。他の実施形態では、キャップが、フリップオフキャップ、例えば、アルミニウムフリップオフキャップである。いくつかの実施形態では、容器が、6R白色ガラスバイアル、灰色ゴム栓、およびアルミニウムのフリップオフキャップを含む。いくつかの実施形態では、容器(例えば、バイアル)が、単回使用容器用である。一定の実施形態では、25mg/mL~250mg/mL、例えば、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~180mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~120mg/mL、90mg/mL~110mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、または100mg/mL~200mg/mL、例えば、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLの抗PD-L1抗体分子が容器(例えば、バイアル)中に存在する。
【0064】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤と、例えば本明細書に記載される投与レジメンに準拠した使用説明書とを含む治療キットを特徴とする。
【0065】
治療的使用
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、PD-L1の1つ以上の活性を阻害、低減または中和し、免疫チェックポイントの遮断または低減をもたらすことができる。したがって、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、対象の免疫応答の増強が望まれる障害(例えば、がん)を治療または予防するために使用することができる。
【0066】
したがって、別の態様では、対象の免疫応答を調節する方法が提供される。本方法は、対象の免疫応答が調節されるように、本明細書に記載される投与レジメンに従って、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を、単独で、または1つ以上の治療剤、手順もしくは様式と組み合わせて、対象に投与することを含む。一実施形態では、抗体分子が、対象の免疫応答を増強、刺激または増加させる。対象は、哺乳動物、例えば霊長類、好ましくは高等霊長類、例えばヒト(例えば、本明細書に記載される障害を有する、または有するリスクがある患者)であることができる。一実施形態では、対象が、免疫応答を増強する必要がある。一実施形態では、対象が、本明細書に記載される障害、例えば、本明細書に記載されるがんもしくは感染性障害を有する、または有するリスクがある。一定の実施形態では、対象が、免疫不全である、または免疫不全のリスクがある。例えば、対象が、化学療法治療および/または放射線療法を受けている、あるいは受けた。あるいは、またはそのうえに、対象が、感染症の結果として、免疫不全である、または免疫不全のリスクがある。
【0067】
一態様では、対象のがんまたは腫瘍を治療する(例えば、低減する、阻害する、または進行を遅延させるの1つ以上)方法が提供される。本方法は、本明細書に記載される投与レジメンに従って、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を、単独で、または1つ以上の治療剤、手順もしくは様式と組み合わせて、対象に投与することを含む。
【0068】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子で治療されるがんが、それだけに限らないが、固形腫瘍、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫)、および転移性病変を含む。一実施形態では、がんが固形腫瘍である。固形腫瘍の例としては、悪性腫瘍、例えば、肉腫および癌腫、例えば、肺、乳房、卵巣、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、肛門、生殖器および尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮、膀胱細胞、前立腺)、咽頭、CNS(例えば、脳、神経またはグリア細胞)、頭頸部、皮膚(例えば、黒色腫、例えば、皮膚黒色腫)、膵臓、および骨(例えば、脊索腫)に発症するものなどの様々な臓器系の腺癌、ならびに結腸がん、直腸がん、腎がん(例えば、腎細胞癌(淡明細胞型または非淡明細胞型腎細胞癌))、肝臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(扁平上皮がんまたは非扁平上皮非小細胞肺がん))、小腸がんおよび食道がんなどの悪性腫瘍を含む腺癌が挙げられる。がんは、初期、中期、末期、または転移性がんであってもよい。
【0069】
一実施形態では、がんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(例えば、扁平および/または非扁平上皮組織を有するNSCLC、あるいはNSCLC腺癌)、または小細胞肺がん(SCLC))、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫(例えば、進行期の黒色腫))、卵巣がん、中皮腫、膀胱がん、軟部組織肉腫(例えば、血管外皮細胞腫(HPC))、骨がん(骨肉腫)、腎臓がん(例えば、腎がん(例えば、腎細胞癌))、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、胆管癌、肉腫、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺がん、乳がん(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体またはHer2/neuのうちの1つ、2つまたは全てを発現しない乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん)、結腸直腸がん(例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ正常型熟練結腸直腸がんまたはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がん)、鼻咽頭がん、十二指腸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、肛門がん、胃食道がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺未分化癌)、子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)、神経内分泌腫瘍(NET)(例えば、非定型肺カルチノイド腫瘍)、リンパ増殖性疾患(例えば、移植後リンパ増殖性疾患)、リンパ腫(例えば、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、または白血病(例えば、骨髄性白血病またはリンパ性白血病)から選択される。
【0070】
一定の実施形態では、がんが固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが、脳腫瘍、例えば、膠芽腫、神経膠肉腫または再発性脳腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが、膵臓がん、例えば、進行期の膵臓がんである。いくつかの実施形態では、がんが、皮膚がん、例えば、黒色腫(例えば、ステージII~IV黒色腫、HLA-A2陽性黒色腫、切除不能黒色腫、または転移性黒色腫)、またはメルケル細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんが、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性腎細胞癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、乳がん、例えば、転移性乳がんまたはステージIV乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。いくつかの実施形態では、がんが、ウイルス関連がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肛門管がん(例えば、肛門管の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、胃がん(例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)陽性胃がん、または胃もしくは胃-食道接合部癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、頭頸部がん(例えば、HPV陽性および陰性の頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN))である。いくつかの実施形態では、がんが鼻咽頭がん(NPC)である。いくつかの実施形態では、がんが、陰茎がん(例えば、陰茎の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、膣または外陰がん(例えば、膣または外陰部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、結腸直腸がん、例えば、再発性結腸直腸がん、転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0071】
一定の実施形態では、がんが血液がんである。いくつかの実施形態では、がんが白血病である。いくつかの実施形態では、がんが、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、再発性または難治性のHLまたはDLBCL)である。いくつかの実施形態では、がんが骨髄腫である。
【0072】
別の実施形態では、がんが、癌腫(例えば、進行期のまたは転移性癌腫)、黒色腫、または肺癌、例えば、非小細胞肺癌から選択される。一実施形態では、がんが、肺がん、例えば、非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、非小細胞肺がんが、ステージI(例えば、ステージIaまたはIb)、ステージII(例えば、ステージIIaまたはIIb)、ステージIII(例えば、ステージIIIaまたはIIIb)、またはステージIVの非小細胞肺がんである。一実施形態では、がんが黒色腫、例えば進行期の黒色腫である。一実施形態では、がんが、他の療法に反応しない進行期のまたは切除不能な黒色腫である。他の実施形態では、がんが、BRAF突然変異(例えば、BRAF V600突然変異)を有する黒色腫である。別の実施形態では、がんが、ウイルス感染症、例えば、慢性ウイルス性肝炎を伴うまたは伴わない、肝細胞癌、例えば、進行期の肝細胞癌である。別の実施形態では、がんが、前立腺がん、例えば、進行期の前立腺がんである。さらに別の実施形態では、がんが、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫である。さらに別の実施形態では、がんが、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性RCC、非淡明細胞型腎細胞癌(nccRCC)または淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC))である。
【0073】
一実施形態では、がん微小環境が、高レベルのPD-L1発現を有する。一実施形態では、がん微小環境が、高レベルのLAG-3発現を有する。あるいは、またはそれに加えて、がん微小環境は、IFNγおよび/またはCD8発現増加を有することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、対象が、高PD-L1レベルもしくは発現、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)+である(例えば、TILの数が増加している)、または両方のうちの1つ以上を有すると特定された、またはされる。一定の実施形態では、対象が、高PD-L1レベルまたは発現を有し、TIL+である腫瘍を有する、または有すると特定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法が、高PD-L1レベルもしくは発現、またはTIL+である、または両方のうちの1つ以上を有する腫瘍を有することに基づいて対象を特定することをさらに含む。一定の実施形態では、本明細書に記載される方法が、高PD-L1レベルもしくは発現を有し、TIL+であるものとしての腫瘍を有することに基づいて対象を特定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、TIL+である腫瘍が、CD8およびIFNγについて陽性である。いくつかの実施形態では、対象が、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つ、またはそれ以上について陽性である細胞の高いパーセンテージを有する、または有すると特定される。一定の実施形態では、対象が、PD-L1、CD8およびIFNγの全てについて陽性である細胞の高いパーセンテージを有する、または有すると特定される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法が、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上について陽性である細胞の高いパーセンテージを有することに基づいて対象を特定することをさらに含む。一定の実施形態では、本明細書に記載される方法が、PD-L1、CD8およびIFNγのうちの全てについて陽性である細胞の高いパーセンテージを有することに基づいて対象を特定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象が、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上、ならびに肺がん、例えば、肺扁平上皮がんまたは肺腺癌(例えば、NSCLC);頭頸部がん;子宮頚部扁平上皮がん;胃がん;食道がん;甲状腺がん(例えば、甲状腺未分化癌);皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫)、乳がん(例えば、TNBC)および/または鼻咽頭がん(NPC)のうちの1つ以上を有する、または有すると特定される。一定の実施形態では、本明細書に記載される方法が、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上、ならびに肺がん、例えば、肺扁平上皮がんまたは肺腺癌(例えば、NSCLC);頭頸部がん;子宮頚部扁平上皮がん;胃がん;甲状腺がん(例えば、甲状腺未分化癌);皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫)、神経内分泌腫瘍、乳がん(例えば、TNBC)および/または鼻咽頭がんのうちの1つ以上を有することに基づいて対象を特定することをさらに記載している。
【0076】
本明細書に開示される方法、組成物および製剤は、前記がんに関連する転移性病変を治療するために有用である。
【0077】
さらなる態様では、本開示は、対象の感染性疾患(例えば、本明細書に記載される感染性疾患)を治療する方法であって、本明細書に記載される投与レジメンに従って、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0078】
なおさらに、本発明は、対象の抗原に対する免疫応答を増強する方法であって、対象の抗原に対する免疫応答が増強されるように、本明細書に記載される投与レジメンに従って、(i)抗原と;(ii)本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子とを対象に投与することを含む方法を提供する。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体由来の抗原であることができる。
【0079】
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、全身的に(例えば、経口、非経口、皮下、静脈内、直腸、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、または吸入もしくは腔内設置によって)、局所的に、または鼻、喉および気管支などの粘膜への適用によって、対象に投与することができる。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、本明細書に記載される均一用量で静脈内投与される。
【0080】
併用療法
本明細書に記載の抗PD-L1抗体分子は、他の治療剤、手順または様式と組み合わせて使用することができる。
【0081】
一実施形態では、本明細書に記載される方法が、障害を治療または予防するのに有効な量で、治療剤、手順または様式と組み合わせて、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む組み合わせを対象に投与することを含む。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、本明細書に記載される投与レジメンに従って投与または使用される。他の実施形態では、抗体分子が、本明細書に記載される組成物または製剤として投与または使用される。
【0082】
抗PD-L1抗体分子および治療剤、手順または様式は、同時にまたは順次に任意の順序で投与または使用することができる。抗PD-L1抗体分子と治療剤、手順または様式(例えば、本明細書に記載される)の任意の組み合わせおよび順序を使用することができる。抗体分子および/または治療剤、手順または様式は、障害の活動期に、または寛解もしくは疾患の活動性の低い期間中に投与または使用することができる。抗体分子は、治療剤、手順または様式による治療の前、これと同時、またはこの後に投与することができる。
【0083】
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、他の抗体分子、化学療法、他の抗がん療法(例えば、標的抗がん療法、遺伝子療法、ウイルス療法、RNA療法、骨髄移植、ナノ療法もしくは腫瘍溶解薬)、細胞傷害剤、免疫系療法(例えば、サイトカインもしくは細胞系免疫療法)、外科的処置(例えば、腫瘤摘出術または乳房切除)、もしくは放射線処置のうちの1つ以上、または前記のいずれかの組み合わせと組み合わせて投与される。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、追加の療法が、酵素阻害剤(例えば、小分子酵素阻害剤)または転移阻害剤である。組み合わせて投与することができる例示的な細胞傷害剤には、微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害することができる薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、プロテアソーム阻害剤、および放射線(例えば、局所または全身照射(例えば、ガンマ線照射))が含まれる。他の実施形態では、追加の療法が、外科手術もしくは放射線、またはこれらの組み合わせである。他の実施形態では、追加の療法が、PI3K/AKT/mTOR経路、HSP90阻害剤またはチューブリン阻害剤のうちの1つ以上を標的とする療法である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体が、単剤療法として投与される。
【0085】
あるいは、または前記組み合わせと組み合わせて、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、免疫調節剤(例えば、共刺激分子の活性化因子、もしくは抑制性分子、例えば免疫チェックポイント分子の阻害剤);ワクチン、例えば、治療用がんワクチン;または他の形態の細胞免疫療法のうちの1つ以上と組み合わせて投与または使用することができる。
【0086】
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1分子が、共刺激分子または抑制性分子、例えば、共阻害リガンドまたは受容体のモジュレーターと組み合わせて投与または使用される。
【0087】
一実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、共刺激分子のモジュレーター、例えば、アゴニストと組み合わせて投与または使用される。一実施形態では、共刺激分子のアゴニストが、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3またはCD83リガンドのアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または可溶性融合体)から選択される。
【0088】
別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、GITRアゴニスト、例えば、抗GITR抗体分子と組み合わせて投与または使用される。
【0089】
一実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3および/またはCEACAM-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4および/またはTGFβから選択される抑制性(または免疫チェックポイント)分子の阻害剤と組み合わせて投与または使用される。一実施形態では、阻害剤が、可溶性リガンド(例えば、CTLA-4-Ig)、またはPD-1、PD-L1、LAG-3、PD-L2もしくはCTLA-4に結合する抗体もしくは抗体フラグメントである。
【0090】
別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体分子と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、TIM-3阻害剤、例えば、抗TIM-3抗体分子と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、LAG-3阻害剤、例えば、抗LAG-3抗体分子と組み合わせて投与または使用される。
【0091】
別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、化学療法剤と組み合わせて投与または使用される。一定の実施形態では、化学療法剤が、白金剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンまたはテトラプラチン)を含む。一定の実施形態では、化学療法剤が、シスプラチン、ペルメトレキセド(permetrexed)、または両方を含む。シスプラチンは、シスプラチナム、プラタミン(platamin)、ネオプラチン(neoplatin)、シスマプラット(cismaplat)またはシス-ジアンミン白金(II)ジクロリド(CDDP)としても知られている。ペルメトレキセド(permetrxed)は、(S)-2-(4-(2-(2-アミノ-4-オキソ-4,7-ジヒドロ-3H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル)ベンズアミド)ペンタン二酸としても知られている。一定の実施形態では、化学療法剤が、ヌクレオチド類似体または前駆体類似体(例えば、カペシタビン、アザシチジン、アザチオプリン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキサートまたはチオグアニン(チオグアニン))を含む。一定の実施形態では、化学療法剤が、低メチル化剤(例えば、デシタビン)を含む。一実施形態では、化学療法剤がnab-パクリタキセルを含む。
【0092】
抗PD-L1抗体分子と組み合わせて使用することができる他の例示的な化学療法剤には、それだけに限らないが、アルキル化剤(例えば、二官能性アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロランブシルもしくはメルファラン))、単官能性アルキル化剤(例えば、ダカルバジン(DTIC)、ニトロソウレアもしくはテモゾロミド(経口ダカルバジン))、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンもしくはバルルビシン)、細胞骨格破壊剤もしくはタキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサンもしくはタキソテール)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタットもしくはロミデプシン)、トポイソメラーゼIの阻害剤(例えば、イリノテカンもしくはトポテカン)、トポイソメラーゼIIの阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシドもしくはタフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブもしくはビスモデギブ)、ペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシンもしくはアクチノマイシン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アリトレチノインもしくはベキサロテン)、またはビンカアルカロイドもしくはその誘導体(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンもしくはビノレルビン)が含まれる。
【0093】
別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)およびTIM-3阻害剤(例えば、抗TIM-3抗体分子)と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)およびLAG-3阻害剤(例えば、抗LAG-3抗体分子)と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、TIM-3阻害剤(例えば、抗TIM-3抗体分子)およびLAG-3阻害剤(例えば、抗LAG-3抗体分子)と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)および化学療法剤(例えば、白金剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンもしくはテトラプラチン)またはヌクレオチド類似体もしくは前駆体類似体(例えば、カペシタビン))と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、CEACAM阻害剤(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3および/またはCEACAM-5阻害剤)、例えば、抗CEACAM抗体分子と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、CEACAM-1阻害剤、例えば、抗CEACAM-1抗体分子と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、CEACAM-3阻害剤、例えば、抗CEACAM-3抗体分子と組み合わせて投与または使用される。別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、CEACAM-5阻害剤、例えば、抗CEACAM-5抗体分子と組み合わせて投与または使用される。
【0094】
本明細書に開示される抗体分子の組み合わせは、別々に、例えば、別個の抗体分子として投与することができる、または連結して、例えば、二重特異性もしくは三重特異性抗体分子として投与することができる。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子と抗PD-1、抗CEACAM(例えば、抗CEACAM-1、CEACAM-3および/または抗CEACAM-5)、抗LAG-3または抗TIM-3抗体分子を含む二重特異性抗体が投与される。一定の実施形態では、本明細書に開示される抗体の組み合わせが、がん、例えば、本明細書に記載されるがん(例えば、固形腫瘍または血液悪性腫瘍)を治療するために使用される。
【0095】
別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、脳がん(例えば、膠芽腫)、黒色腫、腎がん(例えば、腎細胞癌)、ウイルス関連がん(例えば、肛門管がん、子宮頚がん、胃がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん(NPC)、陰茎がん、または膣もしくは外陰がん)、結腸直腸がん、または肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))を治療するために、抗PD-1抗体分子と組み合わせて投与または使用される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を治療するために、抗PD-1抗体分子と組み合わせて投与または使用される。
【0096】
別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、膵臓がんまたは乳がんを治療するために、化学療法剤(例えば、ゲムシタビン、パクリタキセル)と組み合わせて投与または使用される。
【0097】
別の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、乳がん、例えば、TNBCを治療するために、化学療法剤(例えば、白金剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンもしくはテトラプラチン)またはヌクレオチド類似体もしくは前駆体類似体(例えば、カペシタビン))と組み合わせて投与または使用される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、乳がん、例えば、TNBCを治療するために、抗PD-1抗体分子および化学療法剤(例えば、白金剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンもしくはテトラプラチン)またはヌクレオチド類似体もしくは前駆体類似体(例えば、カペシタビン))と組み合わせて投与または使用される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、サイトカインと組み合わせて投与または使用される。サイトカインは、抗PD-L1抗体分子との融合分子として、または別個の組成物として投与することができる。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、融合分子として、または別個の組成物として、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のサイトカインと組み合わせて投与または使用される。一実施形態では、サイトカインが、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15またはIL-21のうちの1つ、2つ、3つまたはそれ以上から選択されるインターロイキン(IL)である。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1の標的(例えば、PD-L1)に対する第1の結合特異性、第2の標的(例えば、PD-1、TIM-3またはLAG-3)に対する第2の結合特異性を有し、任意に、インターロイキン(例えば、IL-12)ドメイン、例えば、完全長IL-12またはその一部に連結されている。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子と本明細書に記載されるサイトカインの組み合わせが、がん、例えば、本明細書に記載されるがん(例えば、固形腫瘍)を治療するために使用される。
【0098】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、HLA Cに対して特異的な抗体、例えば、キラー細胞免疫グロブリン様受容体に特異的な抗体(本明細書では「抗KIR抗体」とも呼ばれる)と組み合わせて投与または使用される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子と抗KIR抗体の組み合わせが、がん、例えば、本明細書に記載されるがん(例えば、固形腫瘍、例えば、進行期の固形腫瘍)を治療するために使用される。
【0099】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、細胞免疫療法(例えば、PROVENGE(登録商標)(例えば、Sipuleucel-T))と組み合わせて、および任意にシクロホスファミドと組み合わせて投与または使用される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子、PROVENGE(登録商標)および/またはシクロホスファミドの組み合わせが、がん、例えば、本明細書に記載されるがん(例えば、前立腺がん、例えば、進行期の前立腺がん)を治療するために使用される。
【0100】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、ワクチン、例えば、がんワクチン(例えば、樹状細胞腎癌(DC-RCC)ワクチン)と組み合わせて投与または使用される。一実施形態では、ワクチンが、ペプチドベース、DNAベース、RNAベースもしくは抗原ベース、またはこれらの組み合わせである。実施形態では、ワクチンが、1つ以上のペプチド、核酸(例えば、DNAもしくはRNA)、抗原、またはこれらの組み合わせを含む。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子とDC-RCCワクチンとの組み合わせが、がん、例えば、本明細書に記載されるがん(例えば、腎癌、例えば、転移性腎細胞癌(RCC)または非淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC))を治療するために使用される。
【0101】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、アジュバントと組み合わせて投与または使用される。
【0102】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、化学療法および/または免疫療法と組み合わせて投与または使用される。例えば、抗PD-L1抗体分子は、単独で、または化学療法もしくは他の抗がん剤(例えば、サリドマイド類似体、例えば、レナリドマイド)、抗PD-1抗体分子、腫瘍抗原パルス樹状細胞、腫瘍細胞と樹状細胞の融合体(例えば、電気融合体)、もしくは悪性形質細胞によって産生される免疫グロブリンイディオタイプのワクチン接種のうちの1つ以上と組み合わせて、骨髄腫を治療するために使用することができる。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫を治療するために、抗PD-1抗体分子と組み合わせて投与または使用される。
【0103】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、肺がん、例えば、非小細胞肺がんを治療するために、化学療法と組み合わせて投与または使用される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、肺がんを治療するために、標準的な肺、例えば、NSCLC、化学療法、例えば、プラチナダブレット療法(platinum doublet therapy)と共に投与または使用される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、進行期のまたは転移性がんを有する対象(例えば、転移性および再発性NSCLがんを有する患者)において、インドールアミン-ピロール2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤(例えば、(4E)-4-[(3-クロロ-4-フルオロアニリノ)-ニトロソメチリデン]-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン(INCB24360としても知られている)、インドキシモド(1-メチル-D-トリプトファン)またはα-シクロヘキシル-5H-イミダゾ[5,1-a]イソインドール-5-エタノール(NLG919としても知られている)と組み合わせて投与または使用される。
【0104】
さらに他の実施形態において、他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、免疫ベースの戦略(例えば、インターロイキン-2またはインターフェロン-α)、標的化剤(例えば、VEGFに対するモノクローナル抗体などのVEGF阻害剤);VEGFチロシンキナーゼ阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブおよびパゾパニブ;RNAi阻害剤;またはVEGFシグナル伝達の下流メディエーターの阻害剤、例えば、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤、例えば、エベロリムスおよびテムシロリムスのうちの1つ以上と組み合わせて投与または使用される。このような組み合わせのいずれかを使用して、腎がん、例えば腎細胞癌(RCC)(例えば、淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC)、非淡明細胞型腎細胞癌(nccRCC)もしくは転移性RCC)または肝臓がん(例えば、肝細胞癌)を治療することができる。
【0105】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MEK阻害剤(例えば、本明細書に記載されるMEK阻害剤)と組み合わせて投与または使用される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子とMEK阻害剤との組み合わせが、がん(例えば、本明細書に記載されるがん)を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、組み合わせで治療されるがんが、黒色腫、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、血液悪性腫瘍または腎細胞癌から選択される。一定の実施形態では、がんが、BRAF突然変異(例えば、BRAF V600E突然変異)、BRAF野生型、KRAS野生型または活性化KRAS突然変異を含む。がんは、初期、中期または末期であってもよい。
【0106】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、化学療法剤(例えば、白金剤(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンもしくはテトラプラチン))またはヌクレオチド類似体もしくは前駆体類似体(例えば、カペシタビン))、ロイコボリン、または5-FU(例えば、FOLFOX共治療)のうちの1つ、2つまたは全てと組み合わせて使用される。あるいは、またはそれに加えて、組み合わせが、VEGF阻害剤(例えば、本明細書に開示されるVEGF阻害剤)をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子、FOLFOX共治療およびVEGF阻害剤の組み合わせが、がん(例えば、本明細書に記載されるがん)を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、組み合わせで治療されるがんが、黒色腫、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、血液悪性腫瘍または腎細胞癌から選択される。がんは、初期、中期または末期であってもよい。
【0107】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、腎細胞癌および他の固形腫瘍を治療するために、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ)と共に投与または使用される。
【0108】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4-1BB受容体標的化剤(例えば、4-1BBを通したシグナル伝達を刺激する抗体(CD-137)、例えば、PF-2566)と共に投与または使用される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ)および4-1BB受容体標的化剤と組み合わせて投与または使用される。
【0109】
抗PD-L1抗体分子を、物質、例えば、細胞傷害剤または部分(例えば、治療薬;放射線を放出する化合物;植物、真菌もしくは細菌起源の分子;または生物学的タンパク質(例えば、タンパク質毒素)もしくは粒子(例えば、組換えウイルス粒子、例えば、ウイルスコートタンパク質))に結合することができる。例えば、抗体を、α-、β-もしくはγ-放出体、またはβ-およびγ-放出体などの放射性同位体に結合することができる。
【0110】
免疫調節剤
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、1つ以上の免疫調節剤と組み合わせて使用することができる。
【0111】
一定の実施形態では、免疫調節剤が、免疫チェックポイント分子の阻害剤である。一実施形態では、免疫調節剤が、PD-1、LAG-3、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4および/またはTGFβの阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤が、PD-1、LAG-3、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、CTLA-4またはこれらの任意の組み合わせを阻害する。
【0112】
抑制性分子の阻害は、DNA、RNAまたはタンパク質レベルで実施することができる。実施形態では、抑制性核酸(例えば、dsRNA、siRNAまたはshRNA)を使用して、抑制性分子の発現を阻害することができる。他の実施形態では、抑制性分子の阻害剤が、ポリペプチド、例えば、可溶性リガンド(例えば、PD-1-IgもしくはCTLA-4 Ig)、または抑制性分子に結合する抗体分子;例えば、PD-1、LAG-3、PD-L2、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、CTLA-4、TIM-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4および/またはTGFβに結合する抗体分子、あるいはこれらの組み合わせである。
【0113】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、二重特異性または多重特異性抗体分子の形態である。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1に対する第1の結合特異性、および第2の結合特異性、例えば、PD-1、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、TIM-3またはPD-L2に対する第2の結合特異性を有する。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびPD-1に結合する。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびLAG-3に結合する。別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびTIM-3に結合する。別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびPD-L2に結合する。別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびCEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)に結合する。別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびCEACAM-1に結合する。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびCEACAM-3に結合する。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-L1およびCEACAM-5に結合する。
【0114】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、二重特異性または多重特異性抗体分子と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-1またはPD-L1に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体分子が、PD-1およびPD-L2に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体分子が、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)およびLAG-3に結合する。
【0115】
前記分子の任意の組み合わせは、多重特異性抗体分子、例えば、PD-L1に対する第1の結合特異性、および以下のうちの2つ以上に対する第2および第3の結合特異性を含む三重特異性抗体で作製することができる:PD-1、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、TIM-3またはPD-L2。
【0116】
一定の実施形態では、免疫調節剤が、PD-1、例えば、ヒトPD-1の阻害剤である。一実施形態では、PD-1の阻害剤が、PD-1に対する抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-1抗体分子)である。
【0117】
PD-1阻害剤と抗PD-L1抗体分子の組み合わせは、例えば、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、またはCTLA-4の阻害剤と組み合わせて、1つ以上の追加の免疫調節剤をさらに含むことができる。一実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびTIM-3阻害剤(例えば、抗TIM-3抗体分子)と組み合わせて投与される。別の実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびCEACAM阻害剤(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5阻害剤)、例えば、抗CEACAM抗体分子と組み合わせて投与される。別の実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびCEACAM-1阻害剤(例えば、抗CEACAM-1抗体分子)と組み合わせて投与される。別の実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびCEACAM-1阻害剤(例えば、抗CEACAM-3抗体分子)と組み合わせて投与される。別の実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびCEACAM-5阻害剤(例えば、抗CEACAM-5抗体分子)と組み合わせて投与される。さらに他の実施形態では、PD-1の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体分子)が、抗PD-L1抗体分子およびTIM-3阻害剤(例えば、抗TIM-3抗体分子)と組み合わせて投与される。免疫調節剤と抗PD-L1抗体分子およびPD-1阻害剤(例えば、PD-L2、CTLA-4、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4および/またはTGFβの1つ以上を含む)の他の組み合わせも本発明の範囲内である。当技術分野で既知の、または本明細書に開示される抗体分子のいずれも、チェックポイント分子の阻害剤の前記組み合わせに使用することができる。
【0118】
他の実施形態では、免疫調節剤が、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、例えば、ヒトCEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)の阻害剤である。一実施形態では、免疫調節剤が、CEACAM-1、例えば、ヒトCEACAM-1の阻害剤である。別の実施形態では、免疫調節剤が、CEACAM-3、例えば、ヒトCEACAM-3の阻害剤である。別の実施形態では、免疫調節剤が、CEACAM-5、例えば、ヒトCEACAM-5の阻害剤である。一実施形態では、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)の阻害剤が、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)に対する抗体分子である。CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)阻害剤と抗PD-L1抗体分子との組み合わせは、例えば、TIM-3、PD-1、LAG-3またはCTLA-4の阻害剤と組み合わせて、1つ以上の追加の免疫調節剤をさらに含むことができる。
【0119】
他の実施形態では、免疫調節剤が、TIM-3、例えば、ヒトTIM-3の阻害剤である。一実施形態では、TIM-3の阻害剤が、TIM-3に対する抗体分子である。TIM-3阻害剤と抗PD-L1抗体分子との組み合わせは、例えば、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、PD-1、LAG-3またはCTLA-4の阻害剤と組み合わせて、1つ以上の追加の免疫調節剤をさらに含むことができる。
【0120】
一定の実施形態では、(例えば、抗原提示組み合わせから選択される治療剤と組み合わせて)本明細書に開示される組み合わせで使用される免疫調節剤が、共刺激分子の活性化因子またはアゴニストである。一実施形態では、共刺激分子のアゴニストが、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3またはCD83リガンドのアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または可溶性融合体)から選択される。
【0121】
他の実施形態では、免疫調節剤がGITRアゴニストである。一実施形態では、GITRアゴニストが、GITRに対する抗体分子である。抗GITR抗体分子および抗PD-L1抗体分子は、別個の抗体組成物の形態であってもよい、または二重特異性抗体分子としてであってもよい。GITRアゴニストと抗PD-L1抗体分子の組み合わせは、例えば、PD-1、LAG-3、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、またはTIM-3の阻害剤と組み合わせて、1つ以上の追加の免疫調節剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、抗GITR抗体分子が、GITRおよびPD-1、LAG-3、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、またはTIM-3に結合する二重特異性抗体である。他の実施形態では、GITRアゴニストが、共刺激分子の1つ以上の追加の活性化因子、例えば、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3またはCD83リガンドのアゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0122】
他の実施形態では、免疫調節剤がOX40アゴニストである。一実施形態では、OX40アゴニストが、OX40に対する抗体分子である。OX40抗体分子および抗PD-L1抗体分子は、別個の抗体組成物の形態であってもよい、または二重特異性抗体分子としてであってもよい。OX40アゴニストと抗PD-L1抗体分子の組み合わせは、例えば、PD-1、LAG-3、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、またはTIM-3の阻害剤と組み合わせて、1つ以上の追加の免疫調節剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体分子が、OX40およびPD-1、LAG-3、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3および/または-5)、またはTIM-3に結合する二重特異性抗体である。他の実施形態では、OX40アゴニストが、他の共刺激分子、例えば、GITR、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3またはCD83リガンドのアゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0123】
チェックポイント阻害剤の阻害剤または共刺激分子のアゴニストの例示的な組み合わせのみが本明細書で提供されることに留意されたい。これらの薬剤のさらなる組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0124】
バイオマーカー
一定の実施形態では、本明細書に開示される方法のいずれかが、対象(例えば、がん、例えば、本明細書に記載されるがんを有する対象)で、本明細書に記載される療法(例えば、単剤療法または併用療法)の有効性を評価または監視することをさらに含む。本方法は、療法に対する有効性の値を取得することを含み、前記値は、療法の有効性を示す。
【0125】
実施形態では、療法に対する有効性の値が、以下のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上(例えば、全て)の尺度を含む:
(i)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)表現型のパラメータ;
(ii)骨髄細胞集団のパラメータ;
(iii)表面発現マーカーのパラメータ;
(iv)免疫応答のバイオマーカーのパラメータ;
(v)全身性サイトカイン調節のパラメータ;
(vi)循環遊離DNA(cfDNA)のパラメータ;
(vii)全身性免疫調節のパラメータ;
(viii)マイクロバイオームのパラメータ;
(ix)循環免疫細胞における活性化のマーカーのパラメータ;または
(x)循環サイトカインのパラメータ。
【0126】
いくつかの実施形態では、TIL表現型のパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、腫瘍試料)中のTIL数、CD8、FOXP3、CD4またはCD3についてのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色のうちの1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上(例えば、全て)のレベルまたは活性を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、骨髄細胞集団のパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、腫瘍試料)中のCD68またはCD163の一方または両方のレベルまたは活性を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、表面発現マーカーのパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、腫瘍試料)中のPD-L1、TIM-3、PD-1またはLAG-3のうちの1つ、2つ、3つまたはそれ以上(例えば、全て)のレベルまたは活性を含む。一定の実施形態では、PD-L1、TIM-3、PD-1またはLAG-3のレベルが、免疫組織化学(IHC)によって決定される。一定の実施形態では、PD-L1のレベルが決定される。
【0129】
いくつかの実施形態では、免疫応答のバイオマーカーのパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、腫瘍試料)中の1つ以上の核酸ベースのマーカーのレベルまたは配列を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、全身性サイトカイン調節のパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、血液試料、例えば、血漿試料)中のIL-18、IFN-γ、ITAC(CXCL11)、IL-6、IL-10、IL-4、IL-17、IL-15またはTGF-βのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上(例えば、全て)のレベルまたは活性を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、cfDNAのパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、血液試料、例えば、血漿試料)中の1つ以上の循環腫瘍DNA(cfDNA)分子の配列またはレベルを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、全身性免疫調節のパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、血液試料、例えば、PBMC試料)中の、活性化免疫細胞、例えば、CD3発現細胞、CD8発現細胞、または両方の表現型特性を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、マイクロバイオームのパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、便試料)のマイクロバイオーム中の1つ以上の遺伝子の配列または発現レベルを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、循環免疫細胞における活性化のマーカーのパラメータが、試料(例えば、血液試料、例えば、血漿試料)中の循環CD8+、HLA-DR+Ki67+、T細胞、IFN-γ、IL-18またはCXCL11(IFN-γ誘導CCK)発現細胞のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上(例えば、全て)のレベルまたは活性を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、循環サイトカインのパラメータが、対象、例えば、対象からの試料(例えば、血液試料、例えば、血漿試料)中のIL-6のレベルまたは活性を含む。
【0136】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、療法が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子と、免疫チェックポイント分子の第2の阻害剤、例えば、PD-1の阻害剤(例えば、抗-PD-1抗体分子)またはLAG-3の阻害剤(例えば、抗LAG-3抗体分子)の組み合わせを含む。
【0137】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、(i)~(x)のうちの1つ以上の尺度が、対象から取得された試料から得られる。いくつかの実施形態では、試料が、腫瘍試料、血液試料(例えば、血漿試料もしくはPBMC試料)、または便試料から選択される。
【0138】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象が、療法を受ける前、受けている間、または受けた後に評価される。
【0139】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、(i)~(x)のうちの1つ以上の尺度が、遺伝子発現、フローサイトメトリーまたはタンパク質発現のうちの1つ以上のプロファイルを評価する。
【0140】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象または試料中のCD8+、HLA-DR+Ki67+、T細胞、IFN-γ、IL-18もしくはCXCL11(IFN-γ誘導CCK)発現細胞のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくはそれ以上(例えば、全て)のレベルもしくは活性の増加の存在、および/またはIL-6のレベルもしくは活性の減少の存在が、療法の有効性の正の予測因子である。
【0141】
あるいは、または本明細書に開示される方法と組み合わせて、前記値に応答して、以下のうちの1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上(例えば、全て)を実施する:
(i)療法を対象に投与する;
(ii)療法の変更した投与を投与する;
(iii)療法のスケジュールまたは時間経過を変更する;
(iv)療法と組み合わせて追加の薬剤(例えば、本明細書に記載される治療剤)を対象に投与する;または
(v)代替療法を対象に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要求に応じて、必要な手数料を支払うことにより、官庁から提供される。
図1図1A図1Bは、3週間に1回、80mg、240mg、800mg、1200mgもしくは1600mgの用量(図1A)または6週間に1回、800mg、1200mgもしくは1600mgの用量(図1B)での単回(サイクル1)および複数回投与(サイクル3または5)後の抗PD-L1抗体分子FAZ053についての平均(±SD)血清濃度-時間プロットのグラフである。
図2図2は、3週間に1回、80mg、240mg、800mg、1200mgもしくは1600mgの用量または6週間に1回、800、1200もしくは1600mgの用量でFAZ053を投与された対象についての総可溶性PD-L1(sPD-L1)の血清濃度-時間プロットのグラフである。
図3図3は、サイクル1(3週目)の終わりの、80mg、240mg、800mg、1200mgまたは1600mgの用量でFAZ053を投与した後の腫瘍における予測されるPD-L1受容体占有のグラフである。ボックスは四分位範囲(IQR)を示し、線はボックスから1.5*IQR以下の最も遠い点まで伸びている。
図4図4は、3週間に1回、80mg、240mg、800mgまたは1600mgの用量でFAZ053を投与された様々ながん型を有する対象についての、用量カテゴリーによるベースラインからの抗腫瘍活性の最良の変化%のグラフである。
図5図5は、6週間に1回、800mgまたは1600mgの用量でFAZ053を投与された様々ながん型を有する対象についての、用量カテゴリーによるベースラインからの抗腫瘍活性の最良の変化%のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0143】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、免疫抑制受容体プログラム細胞死1(PD-1)のリガンドである。PD-L1がPD-1に結合すると、T細胞受容体媒介リンパ球増殖およびサイトカイン分泌が阻害され、抗腫瘍免疫が増強される。PD-L1は、活性化T細胞、樹状細胞、NK細胞、マクロファージ、B細胞、単球および血管内皮細胞で発現される。多くの腫瘍浸潤Tリンパ球は、正常組織のTリンパ球および末梢血Tリンパ球と比較してPD-1を優勢に発現し、腫瘍反応性T細胞でのPD-1の上方制御が抗腫瘍免疫応答障害に寄与することができることを示している。よって、PD-L1シグナル伝達は、T細胞活性化の減弱および免疫監視の回避をもたらしてもよい。
【0144】
したがって、高い親和性および特異性でPD-L1に結合する抗体分子(例えば、ヒト化抗体分子)が、少なくとも部分的に本明細書に開示される。抗PD-L1抗体分子を含む医薬組成物および用量製剤も提供される。本明細書に開示される抗PD-L1抗体分子は、がん性障害(例えば、固形腫瘍および血液がん)、ならびに感染性疾患(例えば、慢性感染性障害または敗血症)などの障害を治療または予防するために(単独で、または他の治療剤、手順もしくは様式と組み合わせて)使用することができる。したがって、抗PD-L1抗体分子を使用して様々な障害を治療するための投与レジメンを含む方法が本明細書に開示される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、均一用量または固定用量で投与または使用される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体が、単剤療法として投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体が、他の治療剤と組み合わせて投与される。
【0145】
定義
追加の用語は、以下でおよび出願全体を通して定義される。
【0146】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」(ある)は、1つのまたは1つより多い(例えば、少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語を指す。
【0147】
「or」(または)という用語は、文脈が明瞭にそうでないことを指示するのでなければ、「and/or」(および/または)という用語を意味するために本明細書中で使用され、これと互換的に使用される。
【0148】
「about」(約)および「approximately」(およそ)は、一般に、測定の性質または精度を考慮して、測定された量の許容可能な程度の誤差を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0149】
「combination」(組み合わせ)または「in combination with」(と組み合わせて)によって、療法または治療剤が、同時に投与されなければならない、および/または一緒に送達されるよう製剤化されなければならないことを意味することを意図するものではないが、これらの送達方法は本明細書に記載される範囲内である。組み合わせの治療剤は、1つ以上の他の追加の療法または治療剤と同時に、この前に、またはこの後に投与することができる。治療剤または治療プロトコルは、任意の順序で投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定される用量および/またはタイムスケジュールで投与される。この組み合わせで利用される追加の治療剤は、単一組成物で一緒に投与されてもよい、または異なる組成物で別々に投与されてもよいことがさらに理解されるだろう。一般に、組み合わせで利用される追加の治療剤は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想される。いくつかの実施形態では、組み合わせで利用されるレベルが、個別に利用されるレベルよりも低いだろう。
【0150】
実施形態では、追加の治療剤が、治療用量または治療用量よりも低い用量で投与される。一定の実施形態では、阻害、例えば、成長阻害を達成するために必要とされる第2の治療剤の濃度が、第2の治療剤が第1の治療剤、例えば、抗PD-L1抗体分子と組み合わせて投与される場合、第2の治療剤が個別に投与される場合よりも低い。一定の実施形態では、阻害、例えば、成長阻害を達成するために必要とされる第1の治療剤の濃度が、第1の治療剤が第2の治療剤と組み合わせて投与される場合、第1の治療剤が個別に投与される場合よりも低い。一定の実施形態では、併用療法において、阻害、例えば、成長阻害を達成するために必要とされる第2の治療剤の濃度が、単剤療法としての第2の治療剤の治療用量よりも低い、例えば、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%または80~90%低い。一定の実施形態では、併用療法において、阻害、例えば、成長阻害を達成するために必要とされる第1の治療剤の濃度が、単剤療法としての第1の治療剤の治療用量よりも低い、例えば、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%または80~90%低い。
【0151】
「inhibition」(阻害)、「inhibitor」(阻害剤)または「antagonist」(アンタゴニスト)という用語は、所与の分子、例えば、免疫チェックポイント阻害剤の一定のパラメータ、例えば、活性の減少を含む。例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%またはそれ以上の活性、例えば、PD-L1活性の阻害がこの用語に含まれる。したがって、阻害が100%である必要はない。
【0152】
「activation」(活性化)、「activator」(活性化因子)または「agonist」(アゴニスト)という用語は、所与の分子、例えば、共刺激分子の一定のパラメータ、例えば、活性の増加を含む。例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%またはそれ以上の活性、例えば、共刺激活性の増加がこの用語に含まれる。
【0153】
「anti-cancer effect」(抗がん効果)という用語は、それだけに限らないが、例えば、腫瘍体積の減少、がん細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加、がん細胞増殖の減少、がん細胞生存率の減少、またはがん状態に関連する様々な生理学的症状の改善を含む、様々な手段によって現れることができる生物学的効果を指す。「anti-cancer effect」(抗がん効果)は、第一に、がんの発生の予防におけるペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によっても現れることができる。
【0154】
「anti-tumor effect」(抗腫瘍効果)という用語は、それだけに限らないが、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、または腫瘍細胞生存率の減少を含む様々な手段によって現れることができる生物学的効果を指す。
【0155】
「cancer」(がん)という用語は、異常な細胞の急速で制御されていない成長を特徴とする疾患を指す。がん細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を通して体の他の部分に広がることができる。様々ながんの例が本明細書に記載され、それだけに限らないが、固形腫瘍、例えば、肺がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、骨がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎がん、肝臓がんおよび脳がん、ならびに血液悪性腫瘍、例えば、リンパ腫および白血病などが挙げられる。「tumor」(腫瘍)および「cancer」(がん)という用語は、本明細書で互換的に使用され、例えば、両用語は、固形腫瘍および液体腫瘍、例えば、びまん性腫瘍または循環腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、「cancer」(がん)または「tumor」(腫瘍)という用語は、前悪性、ならびに悪性がんおよび腫瘍を含む。
【0156】
「antigen presenting cell」(抗原提示細胞)または「APC」という用語は、その表面上で主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体形成した外来抗原を表示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識してもよい。APCは抗原を処理し、抗原をT細胞に提示する。
【0157】
「costimulatory molecule」(共刺激分子)という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、それだけに限らないが、増殖などの、T細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子には、それだけに限らないが、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、およびCD83と特異的に結合するリガンドが含まれる。
【0158】
「immune effector cell」(免疫エフェクター細胞)、または「effector cell」(エフェクター細胞)は、この用語が本明細書で使用される場合、免疫応答、例えば、免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例としては、T細胞、例えば、アルファ/ベータT細胞およびガンマ/デルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、肥満細胞、ならびに骨髄由来食細胞が挙げられる。
【0159】
「immune effector」(免疫エフェクター)もしくは「effector」(エフェクター)「function」(機能)または「response」(応答)は、この用語が本明細書で使用される場合、標的細胞の免疫攻撃を増強または促進する、例えば免疫エフェクター細胞の機能または応答を指す。例えば、免疫エフェクターの機能または応答は、標的細胞の殺傷または成長もしくは増殖の阻害を促進するT細胞またはNK細胞の特性を指す。T細胞の場合、一次刺激および共刺激が免疫エフェクターの機能または応答の例である。
【0160】
「effector function」(エフェクター機能)という用語は、細胞の特殊機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であってもよい。
【0161】
本明細書で使用される場合、「treat」(治療する)、「treatment」(治療)および「treating」(治療している)という用語は、障害、例えば、増殖性障害の進行、重症度および/または持続期間の減少または改善、あるいは1つ以上の療法の投与から生じる障害の1つ以上の症状(好ましくは、1つ以上の認識できる症状)の改善を指す。具体的な実施形態では、「treat」(治療する)、「treatment」(治療)および「treating」(治療している)という用語が、必ずしも患者によって認識できない、腫瘍の成長などの、増殖性障害の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。他の実施形態では、「treat」(治療する)、「treatment」(治療)および「treating」(治療している)という用語が、例えば、認識できる症状の安定化による物理的な、例えば、物理的パラメータの安定化による生理的な、または両方の増殖性障害の進行の阻害を指す。他の実施形態では、「treat」(治療する)、「treatment」(治療)および「treating」(治療している)という用語が、腫瘍サイズまたはがん性細胞数の減少または安定化を指す。
【0162】
本発明の組成物、製剤および方法は、指定された配列、またはそれと実質的に同一もしくは類似の配列、例えば、指定された配列と少なくとも85%、90%もしくは95%同一またはそれ以上の配列を有するポリペプチドおよび核酸を包含する。アミノ酸配列の文脈において、「substantially identical」(実質的に同一)という用語は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能的活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列中の整列されたアミノ酸残基とi)同一である、またはii)その保存的置換である、十分なまたは最小数のアミノ酸残基を含む第1のアミノ酸を指すために本明細書で使用される。例えば、参照配列、例えば、本明細書で提供される配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含むアミノ酸配列。
【0163】
ヌクレオチド配列の文脈において、「substantially identical」(実質的に同一)という用語は、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列が、共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードする、または共通の構造的ポリペプチドドメインもしくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第2の核酸配列中の整列されたヌクレオチドと同一である十分なまたは最小数のヌクレオチドを含む第1の核酸配列を指すために本明細書で使用される。例えば、参照配列、例えば、本明細書で提供される配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列。
【0164】
「functional variant」(機能的バリアント)という用語は、天然に存在する配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する、または実質的に同一のヌクレオチド配列によってコードされ、天然に存在する配列の1つ以上の活性を有することができるポリペプチドを指す。
【0165】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書で互換的に使用される)の計算は、以下の通り実施される。
【0166】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性%を決定するために、配列を、最適な比較目的のために整列させる(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために、非相同配列を無視することができる)。好ましい実施形態では、比較目的で整列された参照配列の長さが、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と同じである)。
【0167】
2つの配列間の同一性%は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入することが必要なギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0168】
配列の比較および2つの配列間の同一性%の決定は、数学的アルゴリズムを使用して実行できる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性%が、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、およびギャップ重み16、14、12、10、8、6または4、および長さ重み1、2、3、4、5または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444~453)アルゴリズムを使用して決定される。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性%が、NWSgapdna.CMPマトリックス、およびギャップ重み40、50、60、70または80、および長さ重み1、2、3、4、5または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを使用して決定される。特に好ましいパラメータセット(および特に指定がない限り使用すべきもの)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリングマトリックスである。
【0169】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性%は、PAM120残基重み付け表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS、4:11~17)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0170】
本明細書に記載される核酸およびタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連する配列を特定するために、公開データベースに対して検索を実施するための「query sequence」(クエリー配列)として使用することができる。このような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施して、本発明の核酸(配列番号1)分子と相同なヌクレオチド配列を取得することができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施して、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を取得することができる。比較目的でギャップのあるアラインメントを取得するために、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389~3402に記載されるようにギャップBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0171】
本明細書で使用される場合、「hybridizes under low stringency,medium stringency,high stringency,or very high stringency conditions」(低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは極めて高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする)という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応を実施するためのガイダンスは、参照により組み込まれるCurrent Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)、6.3.1~6.3.6に見出すことができる。水性および非水性の方法がその参考文献に記載されており、いずれも使用することができる。本明細書で言及される具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである: 1)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、引き続いて少なくとも50℃で0.2X SSC、0.1%SDSで2回の洗浄(洗浄温度は低ストリンジェンシー条件では55℃まで増加させることができる)の低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;2)約45℃で6X SSC、引き続いて60℃で0.2X SSC、0.1%SDSで1回以上の洗浄の中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;3)約45℃で6X SSC、引き続いて65℃で0.2X SSC、0.1%SDSで1回以上の洗浄の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;および好ましくは4)極めて高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は65℃で0.5Mナトリウムホスフェート、7%SDS、引き続いて65℃で0.2X SSC、1%SDSで1回以上の洗浄である。極めて高いストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件であり、特に指定がない限り使用されるべき条件である。
【0172】
本発明の分子が、それらの機能に実質的な効果を及ぼさない、追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有してもよいことが理解される。
【0173】
「amino acid」(アミノ酸)という用語は、天然にせよ合成にせよ、アミノ官能基と酸官能基の両方を含み、天然に存在するアミノ酸のポリマーに含めることができる全ての分子を包含することを意図している。例示的なアミノ酸には、天然に存在するアミノ酸;その類似体、誘導体および同族体;変異側鎖を有するアミノ酸類似体;ならびに前記のいずれかのいずれかの全ての立体異性体が含まれる。本明細書で使用される場合、「amino acid」(アミノ酸)という用語は、D-またはL-光学異性体とペプチド模倣物の両方を含む。
【0174】
「conservative amino acid substitution」(保存的アミノ酸置換)とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0175】
「polypeptide」(ポリペプチド)、「peptide」(ペプチド)および「protein」(タンパク質)(単鎖の場合)という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは直鎖であっても分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語はまた、修飾されたアミノ酸ポリマー;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作も包含する。ポリペプチドは、天然の供給源から単離することができる、真核宿主もしくは原核宿主から組換え技術によって産生することができる、または合成手順の産物であることができる。
【0176】
「nucleic acid」(核酸)、「nucleic acid sequence」(核酸配列)、「nucleotide sequence」(ヌクレオチド配列)、または「polynucleotide sequence」(ポリヌクレオチド配列)、および「polynucleotide」(ポリヌクレオチド)という用語は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらの類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは一本鎖であっても二本鎖であってもよく、一本鎖である場合、コード鎖であっても非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに修飾されてもよい。核酸は、組換えポリヌクレオチド、またはゲノム、cDNA、半合成もしくは合成起源のポリヌクレオチドであってもよく、これらは、天然には存在しない、または非天然配列で別のポリヌクレオチドに連結されている。
【0177】
本明細書で使用される「isolated」(単離された)という用語は、その元の環境または天然の環境(例えば、それが天然に存在する場合は自然環境)から除去された材料を指す。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、天然系に共存する材料のいくつかまたは全てからヒトの介入によって分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドが単離される。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得る、および/またはこのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部であり得、このようなベクターまたは組成物が、天然で見出される環境の一部ではないという点でなお単離されている。
【0178】
本発明の様々な態様は、以下でさらに詳細に説明される。追加の定義は、明細書を通して示される。
【0179】
投与レジメン
PD-L1阻害剤、例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、対象の障害、例えば、過剰増殖性状態または障害(例えば、がん)を治療(例えば、阻害、低減、改善または予防)するために、本明細書に記載される投与レジメンに従って投与することができる。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、2、3、4、6または8週間に1回、約20mg~約2000mgの用量で対象に投与される。
【0180】
いくつかの態様では、本開示は、対象のがんを治療する方法であって、本明細書に記載される用量または投与スケジュールで、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)を対象に投与することを含む方法を特徴とする。
【0181】
いくつかの実施形態では、投与レジメン(例えば、3週間に1回、1200mg)が、優れた全体的安全性、sPDL1結合(総sPDL1)、および腫瘍における99%超の受容体占有を予測した探索的モデリングに基づいて選択される。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、3週間に1回、800mgのより低い用量が同様の受容体占有を達成すると予測されると考えられるが、抗PD-L1抗体分子の腫瘍浸透の可能性を高める、および/または(例えば、総sPDL1の変動性による)対象でのsPDL1(抗原シンク)のより高い負荷の可能性を克服するために、3週間に1回、1200mgが使用される。
【0182】
いくつかの実施形態では、投与レジメン(例えば、4週間に1回、1600mg)が、3週間に1回の1200mgのレジメンと同じ予想される定常状態平均PK濃度(Cave)に基づいて選択される。抗PD-L1抗体分子の平均定常状態濃度(Cave)は、用量/(CL*τ)(式中、τは投与頻度であり、CLは抗PD-L1抗体分子の固有クリアランスである)として計算することができる。この式に基づいて、Cave=1200mg/(CL*3週間)=1600mg/(CL*4週間)である。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、3週間に1回、1600mgまでの用量が患者において安全であり、一般に忍容性が良好と考えられる。
【0183】
一定の実施形態では、投与レジメンが、PK/PDおよび受容体占有に基づくアプローチに基づいて選択される。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、投与レジメンが、患者の利便性を高めるために投与レジメン(例えば、併用薬物の投与スケジュール)を調整する際の柔軟性を可能にすると考えられる。
【0184】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)が、3週間に1回、約800mg以上の用量、または6週間に1回、約1600mg以上の用量で投与される。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、3週間に1回、約800mg以上の用量、または6週間に1回、約1600mg以上の用量が、投与間隔を通して可溶性PD-L1の持続的結合をもたらすと考えられる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体が、対象におけるPD-L1の占有をもたらす用量または投与レジメンで投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体の3週間に1回、800mg以上の用量(例えば、1200mg)が、対象におけるPD-L1の占有(例えば、PD-L1の99%受容体占有)をもたらす。
【0185】
いくつかの実施形態では、用量または投与レジメンが、PD-L1の占有をもたらす用量(例えば、3週間に1回、800mg以上(例えば、1200mg)の用量)で投与された場合の抗PD-L1抗体と同じ予想される定常状態平均PK濃度(Cave)を有することに基づいて選択される。一定の実施形態では、4週間に1回、約1500mg~約1700mg(例えば、約1600mg)の用量が、3週間に1回、800mg以上の用量(例えば、1200mg)で投与された場合の抗PD-L1抗体と同じ予想されるCaveを有する。
【0186】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象における可溶性PD-L1の結合、例えば、飽和をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12、24、36、または48週間以内に、対象における可溶性PD-L1の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の結合、例えば、飽和をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9週間またはそれ以上の投与で、対象における可溶性PD-L1の持続した結合、例えば、持続した飽和をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象の腫瘍中のPD-L1の結合、例えば、占有をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、または48週間以内に、対象の腫瘍中のPD-L1の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の結合、例えば、占有をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9週間またはそれ以上の投与で、対象におけるPD-L1の持続した結合、例えば、持続した占有をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。
【0188】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象における可溶性PD-L1の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の結合、例えば、飽和をもたらし;対象の腫瘍中のPD-L1の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の結合、例えば、占有をもたらす用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、飽和および/または占有が、例えば、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、または48週間以内に起こる。いくつかの実施形態では、飽和および/または占有が、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9週間、またはそれ以上の投与で起こる。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象(例えば、血液)中の可溶性PD-L1の50%以上(例えば、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上)が、抗PD-L1抗体分子によって結合される用量または投与スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、可溶性PD-L1への抗PD-L1抗体分子の結合が、血液試料(例えば、血清試料または血漿試料)で決定される。いくつかの実施形態では、可溶性PD-L1への抗PD-L1抗体分子の結合が、例えば、インビトロ(例えば、ELISAもしくは細胞ベースのアッセイによって)もしくはインビボ(例えば、画像化によって)で測定される、またはPK/PDモデル、例えば、本明細書に記載されるPK/PDモデルから予測される。
【0190】
いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の50%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の60%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の70%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の80%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の90%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の95%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。いくつかの実施形態では、対象からの血清試料中の可溶性PD-L1の99%以上が、抗PD-L1抗体分子によって結合される。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、対象中(例えば、血液中)の遊離可溶性PD-L1のレベルを、遊離可溶性PD-L1の参照レベルの例えば、40%以下(例えば、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下)に低下させる用量または投与スケジュールで投与される。
【0192】
いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、血液試料(例えば、血清試料または血漿試料)で決定される。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1の参照レベルが、例えば、投与スケジュールに従って、例えば、抗PD-L1抗体分子の投与前の、対象中の遊離可溶性PD-L1のベースラインレベルである。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、例えば、インビトロ(例えば、ELISAもしくは細胞ベースのアッセイによって)もしくはインビボ(例えば、画像化によって)で測定される。またはPK/PDモデル、例えば、本明細書に記載されるPK/PDモデルから予測される。
【0193】
いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、対象からの血清試料中の遊離可溶性PD-L1の参照レベルの20%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、対象からの血清試料中の遊離可溶性PD-L1の参照レベルの10%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、対象からの血清試料中の遊離可溶性PD-L1の参照レベルの5%以下に低下する。いくつかの実施形態では、遊離可溶性PD-L1のレベルが、対象からの血清試料中の遊離可溶性PD-L1の参照レベルの1%以下に低下する。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約20mg~約2000mg、約15mg~約1600mg、約20mg~約1400mg、約25mg~約1200mg、約40mg~約1800mg、約60mg~約1600mg、約80mg~約1400mg、約100mgから約1200mg、約120mgから約1000mg、約140mgから約800mg、約160mg~約600mg、約180mg~約400mg、約200mg~約300mg、約220mg~約260mg、約40mg~約1600mg、約40mg~約1200mg、40mg~約1000mg、40mg~約800mg、約40mg~約600mg、約40mg~約400mg、約40mg~約200mg、約40mg~約100mg、約40mg~約80mg、約1600mg~約1800mg、約1200mg~約1800mg、約1000mg~約1800mg、約800mg~約1800mg、約600mg~約1800mg、約400mg~約1800mg、約200mg~約1800mg、約100mg~約1800mg、または約80~約1800mgの用量で投与される。
【0195】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約40mg~約120mg、60mg~約100mg、約70mg~約90mg、約60mg~約80mg、約80mg~約100mg、例えば、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、または約120mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約60mg~約100mg、例えば、約80mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約60mg~約100mg、例えば、約80mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、6週間に1回、約60mg~約100mg、例えば、約80mgの用量で投与される。
【0196】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約200mg~約300mg、約220mg~約280mg、約230mg~250mg、約200mg~約240mg、約240mg~約260mg、例えば、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、または約300mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約220mg~約260mg、例えば、約240mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約220mg~約260mg、例えば、約240mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、6週間に1回、約220mg~約260mg、例えば、約240mgの用量で投与される。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約500mg~約1000mg、約550mg~約950mg、約600mg~約900mg、約650mg~約925、約700mg~約900mg、例えば、約500mg、約600mg、約700mg、約725mg、約750mg、約800mg、約825mg、約850mg、約900mg、または約1000mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約700mg~約900mg、例えば、約800mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約700mg~約900mg、例えば、約800mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、6週間に1回、約700mg~約900mg、例えば、約800mgの用量で投与される。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約900mg~約1400mg、約1000mg~約1400mg、約1100mg~約1300mg、約1000mg~約1200mg、約1200mg~約1400mg、例えば、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、6週間に1回、約1000mg~約1400mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1300mg~約1900mg、約1400mg~約1800mg、約1500mg~約1700mg、約1400mg~約1700mg、約1500mg~約1800mg、例えば、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、または約1900mgの用量で投与される。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1400mg~約1800mg、例えば、約1600mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1400mg~約1800mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、6週間に1回、約1400mg~約1800mg、例えば、約1200mgの用量で投与される。
【0200】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約2000mg以下、約1900mg以下、約1800mg以下、約1700mg以下、約1600mg以下、約1500mg以下、約1400mg以下、約1300mg以下、約1200mg以下、約1100mg以下、約1000mg以下、約900mg以下、約800mg以下、約700mg以下、約600mg以下、約500mg以下、約400mg以下、約300mg以下、約250mg以下、約200mg以下、約150mg以下、約100mg以下、または約80mg以下の用量で投与される。
【0201】
いくつかの実施形態では、障害が、がん、例えば、本明細書に記載されるがんである。一定の実施形態では、がんが固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが卵巣がんである。他の実施形態では、がんが、肺がん、例えば、小細胞肺がん(SCLC)または非小細胞肺がん(NSCLC)である。他の実施形態では、がんが中皮腫である。他の実施形態では、がんが、皮膚がん、例えば、メルケル細胞癌または黒色腫である。他の実施形態では、がんが腎臓がん、例えば腎細胞癌である。他の実施形態では、がんが膀胱がんである。他の実施形態では、がんが、軟部組織肉腫、例えば、血管外皮細胞腫(HPC)である。他の実施形態では、がんが、骨がん、例えば、骨肉腫である。他の実施形態では、がんが結腸直腸がんである。他の実施形態では、がんが膵臓がんである。他の実施形態では、がんが鼻咽頭がんである。他の実施形態では、がんが乳がんである。他の実施形態では、がんが十二指腸がんである。他の実施形態では、がんが子宮内膜がんである。他の実施形態では、がんが、腺癌、例えば未知の腺癌である。他の実施形態では、がんが、肝臓がん、例えば、肝細胞癌である。他の実施形態では、がんが胆管癌である。他の実施形態では、がんが肉腫である。一定の実施形態では、がんが、骨髄異形成症候群(MDS)(例えば、高リスクMDS)である。他の実施形態では、がんが、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、例えば、再発性もしくは難治性AMLまたはデノボAML)である。他の実施形態では、がんがリンパ腫である。他の実施形態では、がんが骨髄腫である。他の実施形態では、がんがMSI-highがん(MSI-high cancer)である。いくつかの実施形態では、がんが転移性がんである。他の実施形態では、がんが進行期のがんである。他の実施形態では、がんが再発性または難治性のがんである。
【0202】
一実施形態では、がんがメルケル細胞癌である。他の実施形態では、がんが黒色腫である。他の実施形態では、がんが、乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)またはHER2陰性乳がんである。他の実施形態では、がんが、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC)または非淡明細胞型腎細胞癌(nccRCC))である。他の実施形態では、がんが、甲状腺がん、例えば甲状腺未分化癌(ATC)である。他の実施形態では、がんが、神経内分泌腫瘍(NET)、例えば、非定型肺カルチノイド腫瘍、または膵臓、胃腸(GI)管もしくは肺におけるNETである。一定の実施形態では、がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLC)である。一定の実施形態では、がんが卵管がんである。一定の実施形態では、がんが、マイクロサテライト不安定性高結腸直腸がん(MSI-high CRC)またはマイクロサテライト安定性結腸直腸がん(MSS CRC)である。
【0203】
抗体分子
PD-L1の阻害剤、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトPD-L1に結合する抗体分子を含む方法、組成物および製剤が本明細書に開示される。例えば、抗体分子は、PD-L1上のエピトープ、例えば、直鎖またはコンフォメーションエピトープ(例えば、本明細書に記載されるエピトープ)に特異的に結合する。
【0204】
本明細書で使用される場合、「antibody molecule」(抗体分子)という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質、例えば、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメントを指す。「antibody molecule」(抗体分子)という用語は、例えば、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)を含む。一実施形態では、抗体分子が、完全長抗体または完全長免疫グロブリン鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、完全長抗体の抗原結合フラグメントもしくは機能的フラグメント、または完全長免疫グロブリン鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が多重特異性抗体分子であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。一実施形態では、多重特異性抗体分子が二重特異性抗体分子である。
【0205】
一実施形態では、抗体分子が単一特異性抗体分子であり、単一エピトープに結合する。例えば、単一特異性抗体分子は、各々が同じエピトープに結合する複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を有することができる。
【0206】
一実施形態では、抗体分子が多重特異性抗体分子であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。一実施形態では、第1および第2のエピトープが、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1および第2のエピトープが重複している。一実施形態では、第1および第2のエピトープが重複していない。一実施形態では、第1および第2のエピトープが、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、多重特異性抗体分子が、第3、第4または第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体分子が、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子または四重特異性抗体分子である。
【0207】
一実施形態では、多重特異性抗体分子が二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2つ以下の抗原に対する特異性を有する。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列および第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列を特徴とする。一実施形態では、第1および第2のエピトープが、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1および第2のエピトープが重複している。一実施形態では、第1のエピトープおよび第2のエピトープが重複していない。一実施形態では、第1および第2のエピトープが、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列、ならびに第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体および第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体を含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはそのフラグメントおよび第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはそのフラグメントを含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントおよび第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントを含む。一実施形態では、第1のエピトープがPD-L1に位置し、第2のエピトープがPD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/またはCEACAM-5)、LAG-3、またはPD-L2に位置する。
【0208】
多重特異性(例えば、二重特異性もしくは三重特異性)またはヘテロ二量体抗体分子を作製するためのプロトコルは、当技術分野で既知であり、それだけに限らないが、例えば米国特許第5731168号明細書に記載される「ノブインアホール(knob in a hole)」アプローチ;例えば、国際公開第09/089004号パンフレット、国際公開第06/106905号パンフレットおよび国際公開第2010/129304号パンフレットに記載される静電ステアリングFcペアリング;例えば、国際公開第07/110205号パンフレットに記載される鎖交換操作ドメイン(SEED)ヘテロ二量体形成;例えば、国際公開第08/119353号パンフレット、国際公開第2011/131746号パンフレットおよび国際公開第2013/060867号パンフレットに記載されるFabアーム交換;例えば、米国特許第4433059号明細書に記載される、例えば、アミン反応性基およびスルフヒドリル反応性基を有するヘテロ二官能性試薬を使用した二重特異性構造を生成するための抗体架橋による二重抗体コンジュゲート;例えば、米国特許第4444878号明細書に記載される、2つの重鎖間のジスルフィド結合の還元と酸化のサイクルを通して異なる抗体からの半抗体(重-軽鎖ペアまたはFab)を組み換えることによって作製される二重特異性抗体決定基;例えば、米国特許第5273743号明細書に記載される、三官能性抗体、例えば、スルフヒドリル反応性基を通して架橋した3つのFabフラグメント;例えば、米国特許第5534254号明細書に記載される、生合成結合タンパク質、例えば、好ましくは、ジスルフィドまたはアミン-反応性化学架橋を通して、C末端テールを通して架橋したscFvのペア;例えば、米国特許第5582996号明細書に記載される、二官能性抗体、例えば、定常ドメインを置き換えたロイシンジッパー(例えば、c-fosおよびc-jun)を通して二量体化した異なる結合特異性を有するFabフラグメント;例えば、米国特許第5591828号明細書に記載される、二重特異性およびオリゴ特異性の一価およびオリゴ価(oligovalent)受容体、例えば、典型的には関連する軽鎖を有する一方の抗体のCH1領域と他方の抗体の抗体のVH領域との間のポリペプチドスペーサーを通して連結した2つの抗体(2つのFabフラグメント)のVH-CH1領域;例えば、米国特許第5635602号明細書に記載される、二重特異性DNA-抗体コンジュゲート、例えば、DNAの二本鎖片を通した抗体またはFabフラグメントの架橋;例えば、米国特許第5637481号明細書に記載される、二重特異性融合タンパク質、例えば、2つのscFvとこれらの間の親水性螺旋ペプチドリンカー、および完全定常領域を含有する発現構築物;例えば、米国特許第5837242号明細書に記載される、多価および多重特異性結合タンパク質、例えば、一般的にダイアボディと呼ばれる、Ig重鎖可変領域の結合領域を有する第1のドメインと、Ig軽鎖可変領域の結合領域を有する第2のドメインとを有するポリペプチドの二量体(二重特異性、三重特異性または四重特異性分子を作り出すより高次の構造も開示される);例えば、米国特許第5837821号明細書に記載される、二量体化して二重特異性/多価分子を形成することができる、ペプチドスペーサーによって、抗体ヒンジ領域およびCH3領域にさらに接続された連結VL鎖およびVH鎖を含むミニボディ構築物;二量体を形成して、二重特異性抗体を形成することができる、いずれかの配向で短ペプチドリンカー(例えば、5個もしくは10個のアミノ酸)によって連結されているまたは全くリンカーによって連結されてないVHおよびVLドメイン;例えば、米国特許第5844094号明細書に記載される、三量体および四量体;例えば、米国特許第5864019号明細書に記載される、一連のFV(またはscFv)を形成するようにVLドメインとさらに会合した、C末端で架橋可能な基とペプチド結合によって接続された一連のVHドメイン(またはファミリーメンバーのVLドメイン);および例えば、米国特許第5869620号明細書に記載されるように、ペプチドリンカーを通して連結されたVHドメインとVLドメインの両方を有する単鎖結合ポリペプチドを、scFvまたはダイアボディ型フォーマットの両方を使用して、非共有結合または化学架橋を通して多価構造に組み合わせて、例えば、ホモ二価、ヘテロ二価、三価および四価構造を形成することを含む。追加の例示的な多重特異性および二重特異性分子ならびに同分子を作製する方法は、例えば、米国特許第5910573号明細書、米国特許第5932448号明細書、米国特許第5959083号明細書、米国特許第5989830号明細書、米国特許第6005079号明細書、米国特許第6239259号明細書、米国特許第6294353号明細書、米国特許第6333396号明細書、米国特許第6476198号明細書、米国特許第6511663号明細書、米国特許第6670453号明細書、米国特許第6743896号明細書、米国特許第6809185号明細書、米国特許第6833441号明細書、米国特許第7129330号明細書、米国特許第7183076号明細書、米国特許第7521056号明細書、米国特許第7527787号明細書、米国特許第7534866号明細書、米国特許第7612181号明細書、米国特許出願公開第2002/004587号明細書、米国特許出願公開第2002/076406号明細書、米国特許出願公開第2002/103345号明細書、米国特許出願公開第2003/207346号明細書、米国特許出願公開第2003/211078号明細書、米国特許出願公開第2004/219643号明細書、米国特許出願公開第2004/220388号明細書、米国特許出願公開第2004/242847号明細書、米国特許出願公開第2005/003403号明細書、米国特許出願公開第2005/004352号明細書、米国特許出願公開第2005/069552号明細書、米国特許出願公開第2005/079170号明細書、米国特許出願公開第2005/100543号明細書、米国特許出願公開第2005/136049号明細書、米国特許出願公開第2005/136051号明細書、米国特許出願公開第2005/163782号明細書、米国特許出願公開第2005/266425号明細書、米国特許出願公開第2006/083747号明細書、米国特許出願公開第2006/120960号明細書、米国特許出願公開第2006/204493号明細書、米国特許出願公開第2006/263367号明細書、米国特許出願公開第2007/004909号明細書、米国特許出願公開第2007/087381号明細書、米国特許出願公開第2007/128150号明細書、米国特許出願公開第2007/141049号明細書、米国特許出願公開第2007/154901号明細書、米国特許出願公開第2007/274985号明細書、米国特許出願公開第2008/050370号明細書、米国特許出願公開第2008/069820号明細書、米国特許出願公開第2008/152645号明細書、米国特許出願公開第2008/171855号明細書、米国特許出願公開第2008/241884号明細書、米国特許出願公開第2008/254512号明細書、米国特許出願公開第2008/260738号明細書、米国特許出願公開第2009/130106号明細書、米国特許出願公開第2009/148905号明細書、米国特許出願公開第2009/155275号明細書、米国特許出願公開第2009/162359号明細書、米国特許出願公開第2009/162360号明細書、米国特許出願公開第2009/175851号明細書、米国特許出願公開第2009/175867号明細書、米国特許出願公開第2009/232811号明細書、米国特許出願公開第2009/234105号明細書、米国特許出願公開第2009/263392号明細書、米国特許出願公開第2009/274649号明細書、欧州特許第346087号明細書、国際公開第00/06605号パンフレット、国際公開第02/072635号パンフレット、国際公開第04/081051号パンフレット、国際公開第06/020258号パンフレット、国際公開第2007/044887号パンフレット、国際公開第2007/095338号パンフレット、国際公開第2007/137760号パンフレット、国際公開第2008/119353号パンフレット、国際公開第2009/021754号パンフレット、国際公開第2009/068630号パンフレット、国際公開第91/03493号パンフレット、国際公開第93/23537号パンフレット、国際公開第94/09131号パンフレット、国際公開第94/12625号パンフレット、国際公開第95/09917号パンフレット、国際公開第96/37621号パンフレット、国際公開第99/64460号パンフレットに見出される。上述の出願の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子(例えば、単一特異性、二重特異性または多重特異性抗体分子)が、別のパートナー、例えば、タンパク質、例えば、1つ、2つまたはそれ以上のサイトカインに、例えば、融合分子、例えば融合タンパク質として、共有結合、例えば、融合している。他の実施形態では、融合分子が、1つ以上のタンパク質、例えば、1つ、2つまたはそれ以上のサイトカインを含む。一実施形態では、サイトカインが、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15またはIL-21のうちの1つ、2つ、3つまたはそれ以上から選択されるインターロイキン(IL)である。一実施形態では、二重特異性抗体分子が、第1の標的(例えば、PD-L1)に対する第1の結合特異性、第2の標的(例えば、PD-1またはTIM-3)に対する第2の結合特異性を有し、任意に、インターロイキン(例えば、IL-12)ドメイン、例えば、完全長IL-12またはその一部に連結されている。
【0210】
「fusion protein」(融合タンパク質)および「fusion polypeptide」(融合ポリペプチド)は、互いに共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドを指し、部分の各々が、異なる特性を有するポリペプチドである。特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であってもよい。特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒作用等などの単純な化学的または物理的特性であることができる。2つの部分は、単一ペプチド結合によって直接、またはペプチドリンカーを介して結合することができるが、互いにリーディングフレーム内にある。
【0211】
一実施形態では、抗体分子が、ダイアボディおよび一本鎖分子、ならびに抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2およびFv)を含む。例えば、抗体分子は、重(H)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVHと略される)、および軽(L)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVLと略される)を含むことができる。一実施形態では、抗体分子が、重鎖および軽鎖(本明細書では半抗体と呼ばれる)を含む、またはからなる。別の例では、抗体分子が、2つの重(H)鎖可変ドメイン配列および2つの軽(L)鎖可変ドメイン配列を含み、それによって、2つの抗原結合部位、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fc、Fd、Fd'、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一可変ドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価および二重特異性)、およびキメラ(例えば、ヒト化)抗体を形成し、これらを、全抗体または組換えDNA技術を使用してデノボで合成されたものの修飾によって作製してもよい。これらの機能的抗体フラグメントは、それぞれの抗原または受容体と選択的に結合する能力を保持している。抗体および抗体フラグメントは、それだけに限らないが、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含む抗体の任意のクラス、ならびに抗体の任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)に由来することができる。抗体分子の調製は、モノクローナルまたはポリクローナルとすることができる。抗体分子はまた、ヒト、ヒト化、CDR移植またはインビトロで作製された抗体であることもできる。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有することができる。抗体はまた、例えば、カッパまたはラムダから選択される軽鎖を有することができる。「immunoglobulin」(免疫グロブリン)(Ig)という用語は、本明細書では「antibody」(抗体)という用語と互換的に使用される。
【0212】
抗体分子の抗原結合フラグメントの例としては、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるダイアボディ(dAb)フラグメント;(vi)ラクダまたはラクダ化可変ドメイン;(vii)一本鎖Fv(scFv)、例えば、Birdら(1988)Science 242:423~426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879~5883参照);(viii)単一ドメイン抗体。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、フラグメントは、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0213】
「antibody」(抗体)という用語は、インタクトな分子ならびにその機能的フラグメントを含む。抗体の定常領域を、抗体の特性を改変するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるために)変更、例えば、突然変異させることができる。
【0214】
抗体分子はまた、単一ドメイン抗体であることもできる。単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体を含むことができる。例としては、それだけに限らないが、重鎖抗体、軽鎖を自然に欠く抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が挙げられる。単一ドメイン抗体は、当技術分野の、または任意の将来の単一ドメイン抗体のいずれかであってもよい。単一ドメイン抗体は、それだけに限らないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギおよびウシを含む任意の種に由来してもよい。本発明の別の態様によると、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られている天然に存在する単一ドメイン抗体である。このような単一ドメイン抗体は、例えば、国際公開第94/04678号パンフレットに開示されている。明確にするために、軽鎖を自然に欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、本明細書では、4本鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するためにVHHまたはナノボディとして知られている。このようなVHH分子は、ラクダ科(Camelidae)種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコで産生される抗体に由来することができる。ラクダ科(Camelidae)以外の他の種が、軽鎖を自然に欠く重鎖抗体を産生してもよく;このようなVHHは本発明の範囲内にある。
【0215】
VHおよびVL領域は、「framework region」(フレームワーク領域)(FRまたはFW)と呼ばれるより保存された領域が点在する、「complementarity determining region」(相補性決定領域)(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分することができる。
【0216】
フレームワーク領域およびCDRの範囲は、いくつかの方法によって正確に定義されている(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH公開番号91-3242;Chothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol. 196:901~917;およびOxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されるAbM定義を参照されたい)。一般に、例えば、抗体可変ドメインのタンパク質配列および構造分析(Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains)Antibody Engineering Lab Manual(編者:Duebel,S.およびKontermann,R.、Springer-Verlag, Heidelberg)を参照されたい。
【0217】
本明細書で使用される「complementarity determining region」(相補性決定領域)および「CDR」という用語は、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDRがあり(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、各軽鎖可変領域には3つのCDRがある(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)。
【0218】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabatら(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikaniら、(1997)JMB 273、927~948(「Chothia」ナンバリングスキーム)によって記載されるものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定することができる。本明細書で使用される場合、「Chothia」番号スキームに従って定義されたCDRは、「超可変ループ」と呼ばれることもある。
【0219】
例えば、Kabatの下では、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基に、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)および95~102(HCDR3)の番号を付けており、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基に、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)および89~97(LCDR3)の番号を付けている。Chothiaの下では、VHのCDRアミノ酸に、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)および95~102(HCDR3)の番号を付けており;VLのアミノ酸残基に、26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)および91~96(LCDR3)の番号を付けている。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)および95~102(HCDR3)、ならびにヒトVLのアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)および89~97(LCDR3)からなる。
【0220】
一般に、特に明記しない限り、抗PD-L1抗体分子は、1つ以上のKabat CDRおよび/またはChothia超可変ループの任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態では、以下の定義が抗PD-L1抗体分子に使用される:KabatとChothiaの両方の組み合わせCDR定義によるHCDR1、ならびにKabatのCDR定義によるHCCDR 2~3およびLCCDR 1~3。全ての定義の下で、各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0221】
本明細書で使用される場合、「immunoglobulin variable domain sequence」(免疫グロブリン可変ドメイン配列)は、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えば、配列は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を含んでもよい。例えば、配列は、1つ、2つもしくはそれ以上のN末端またはC末端アミノ酸を含んでも、含まなくてもよい、またはタンパク質構造の形成と互換性のある他の変化を含んでもよい。
【0222】
「antigen-binding site」(抗原結合部位)という用語は、PD-L1ポリペプチドまたはそのエピトープに結合する界面を形成する決定基を含む抗体分子の部分を指す。タンパク質(またはタンパク質模倣物)に関して、抗原結合部位は、典型的には、PD-L1ポリペプチドに結合する界面を形成する(少なくとも4つのアミノ酸またはアミノ酸模倣物の)1つ以上のループを含む。典型的には、抗体分子の抗原結合部位は、少なくとも1つもしくは2つのCDRおよび/または超可変ループ、より典型的には少なくとも3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRおよび/または超可変ループを含む。
【0223】
「compete」(競合する)または「cross-compete」(交差競合する)という用語は、抗PD-L1抗体分子、例えば、本明細書で提供される抗PD-L1抗体分子の、標的、例えば、ヒトPD-L1への結合を妨害する抗体分子の能力を指すために本明細書で互換的に使用される。結合の妨害は直接的であることも間接的であることもできる(例えば、抗体分子または標的のアロステリック調節を介して)。抗体分子が別の抗体分子の標的への結合を妨害することができる程度、したがってそれが競合すると言えるかどうかは、競合結合アッセイ、例えば、FACSアッセイ、ELISAまたはBIACOREアッセイを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、競合結合アッセイが、定量的競合アッセイである。いくつかの実施形態では、競合結合アッセイ(例えば、本明細書に記載される競合アッセイ)において、第1の抗体分子の標的への結合が、10%以上、例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上減少した場合、第1の抗PD-L1抗体分子が、第2の抗PD-L1抗体分子と標的への結合について競合すると言われる。
【0224】
本明細書で使用される「monoclonal antibody」(モノクローナル抗体)または「monoclonal antibody composition」(モノクローナル抗体組成物)という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性および親和性を示す。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって、またはハイブリドーマ技術を使用しない方法(例えば、組換え法)によって作製することができる。
【0225】
「effectively human」(有効にヒト)タンパク質は、中和抗体応答、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こさないタンパク質である。HAMAは、例えば、抗体分子が、例えば、慢性または再発性病状の治療において、繰り返し投与される場合に、いくつかの状況において問題となることができる。HAMA応答は、血清からの抗体クリアランスの増加(例えば、Salehら、Cancer Immunol.Immunother.32:180~190(1990)参照)および潜在的なアレルギー反応(例えば、LoBuglioら、Hybridoma、5:5117~5123(1986)参照)のために、繰り返しの抗体投与を潜在的に無効にすることができる。
【0226】
抗体分子は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であることができる。他の実施形態では、抗体を、組換え的に作製、例えば、ファージディスプレイまたはコンビナトリアル法によって作製することができる。
【0227】
抗体を作製するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアル法は、当技術分野で既知である(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Ladnerら米国特許第5,223,409号明細書;Kangら国際公開第92/18619号パンフレット;Dowerら国際公開第91/17271号パンフレット;Winterら国際公開第92/20791号パンフレット;Marklandら国際公開第92/15679号パンフレット;Breitlingら国際公開第93/01288号パンフレット;McCaffertyら国際公開第92/01047号パンフレット;Garrardら国際公開第92/09690号パンフレット;Ladnerら国際公開第90/02809号パンフレット;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370~1372;Hayら(1992)Hum Antibody Hybridomas 3:81~85;Huseら(1989)Science 246:1275~1281;Griffthsら(1993)EMBO J 12:725~734;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889~896;Clacksonら(1991)Nature 352:624~628;Gramら(1992)PNAS 89:3576~3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373~1377;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133~4137;およびBarbasら(1991)PNAS 88:7978~7982に記載される)。
【0228】
一実施形態では、抗体が、完全ヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン配列から抗体を産生するように遺伝子操作されたマウスで作製された抗体)、または非ヒト抗体、例えば、げっ歯類(マウスまたはラット)、ヤギ、霊長類(例、サル)、ラクダ抗体である。好ましくは、非ヒト抗体はげっ歯類(マウスまたはラット抗体)である。げっ歯類抗体を作製する方法は当技術分野で既知である。
【0229】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを使用して作製することができる。目的の抗原で免疫化されたこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞が、ヒトタンパク質からのエピトープに対する特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを作製するために使用される(例えば、Woodら国際公開第91/00906号パンフレット、KucherlapatiらPCT公開国際公開第91/10741号パンフレット;Lonbergら国際公開第92/03918号パンフレット;Kayら国際公開第92/03917号パンフレット;Lonberg,N.ら1994 Nature 368:856~859;Green,L.L.ら1994 Nature Genet.7:13~21;Morrison,S.L.ら1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851~6855;Bruggemanら1993 Year Immunol 7:33~40;Tuaillonら1993 PNAS 90:3720~3724;Bruggemanら1991 Eur J Immunol 21:1323~1326参照)。
【0230】
抗体は、可変領域またはその一部、例えば、CDRが、非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスで産生されるものであることができる。キメラ、CDR移植およびヒト化抗体は本発明の範囲内である。非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスで産生され、次いで、例えば、ヒトでの抗原性を低下させるために、可変フレームワークまたは定常領域で修飾された抗体は、本発明の範囲内である。
【0231】
キメラ抗体は、当技術分野で既知の組換えDNA技術によって作製することができる(Robinsonら、国際特許公開PCT/US86/02269;Akiraら、欧州特許出願第184,187号明細書;Taniguchi,M.、欧州特許出願第171,496号明細書;Morrisonら、欧州特許出願第173,494号明細書;Neubergerら、国際公開第86/01533号パンフレット;Cabillyら 米国特許第4,816,567号明細書;Cabillyら、欧州特許出願第125,023号明細書;Betterら(1988 Science 240:1041~1043);Liuら(1987)PNAS 84:3439~3443;Liuら、1987、J.Immunol. 139:3521~3526;Sunら(1987)PNAS 84:214~218;Nishimuraら、1987、Canc.Res. 47:999~1005;Woodら(1985)Nature 314:446~449;およびShawら、1988、J.Natl Cancer Inst. 80:1553~1559参照)。
【0232】
ヒト化またはCDR移植抗体は、少なくとも1つまたは2つ、一般的には3つ全てのレシピエントCDR(重および/または軽免疫グロブリン鎖の)がドナーCDRで置き換えられている。抗体が非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えられてもよい、またはCDRのいくらかのみが非ヒトCDRで置き換えられてもよい。ヒト化抗体のPD-L1への結合に必要な数のCDRを置き換えることが必要なだけである。好ましくは、ドナーがげっ歯類抗体、例えばラットまたはマウス抗体であり、レシピエントがヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークである。典型的には、CDRを提供する免疫グロブリンが「donor」(ドナー)と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンが「acceptor」(アクセプター)と呼ばれる。一実施形態では、ドナー免疫グロブリンが非ヒト(例えば、げっ歯類)である。アクセプターフレームワークは、天然に存在する(例えば、ヒト)フレームワークもしくはコンセンサスフレームワーク、またはこれと約85%以上、好ましくは90%、95%、99%以上同一の配列である。
【0233】
本明細書で使用される場合、「consensus sequence」(コンセンサス配列)という用語は、関連する配列のファミリーで最も頻繁に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker、From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft、Weinheim、ドイツ1987)参照)。タンパク質ファミリーでは、コンセンサス配列の各位置が、ファミリー内で、その位置で最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が同じ頻度で存在する場合は、いずれかをコンセンサス配列に含めることができる。「consensus framework」(コンセンサスフレームワーク)は、コンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を指す。
【0234】
抗体は、当技術分野で既知の方法によってヒト化することができる(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Morrison,S.L.、1985、Science 229:1202~1207、Oiら、1986、BioTechniques 4:214ならびにQueenら米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書および米国特許第5,693,762号明細書参照)。
【0235】
ヒト化またはCDR移植抗体は、CDR移植またはCDR置換によって作製することができ、免疫グロブリン鎖の1つ、2つまたは全てのCDRを置き換えることができる。例えば、その全ての内容が参照により明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,225,539号明細書;Jonesら1986 Nature 321:552~525;Verhoeyanら1988 Science 239:1534;Beidlerら1988 J. Immunol.141:4053~4060;Winter 米国特許第5,225,539号明細書を参照されたい。Winterは、その内容が参照により明示的に組み込まれる、本発明のヒト化抗体を調製するために使用してもよいCDR移植法を記載している(1987年3月26日に出願された英国特許出願第2188638号明細書;Winter 米国特許第5,225,539号明細書)。
【0236】
特定のアミノ酸が置換、欠失または付加されたヒト化抗体も、本発明の範囲内にある。ドナーからアミノ酸を選択するための基準は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,585,089号明細書、例えば、米国特許第5,585,089号明細書の12~16段、例えば、米国特許第5,585,089号明細書の12~16段に記載されている。抗体をヒト化するための他の技術は、Padlanら1992年12月23日に公開された欧州特許第519596号明細書に記載されている。
【0237】
抗体分子は一本鎖抗体であることができる。一本鎖抗体(scFV)は操作されてもよい(例えば、Colcher,D.ら(1999)Ann N Y Acad Sci 880:263-80;およびReiter,Y.(1996)Clin Cancer Res 2:245-52参照)。一本鎖抗体を、二量体化または多量体化して、同じ標的タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を有する多価抗体を作製することができる。
【0238】
さらに他の実施形態では、抗体分子が、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEの重鎖定常領域から選択される;特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体分子が、例えば、カッパまたはラムダの(例えば、ヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。定常領域を、抗体の特性を改変するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるために)変更、例えば、突然変異させることができる。一実施形態では、抗体がエフェクター機能を有し、補体を修正できる。他の実施形態では、抗体がエフェクター細胞を動員しない;または補体を修正しない。別の実施形態では、抗体が、Fc受容体に結合する能力が低下している、または全くない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支持しないアイソタイプまたはサブタイプ、フラグメントまたは他の突然変異体であり、例えば、突然変異誘発または欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0239】
抗体定常領域を変更する方法は当技術分野で既知である。機能が変化した抗体、例えば細胞上のFcRなどのエフェクターリガンドまたは補体のC1成分に対する親和性が変化した抗体は、抗体の定常部分の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基で置き換えることによって作製することができる(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第388,151号明細書、米国特許第5,624,821号明細書および米国特許第5,648,260号明細書参照)。マウスまたは他の種の免疫グロブリンに適用した場合に、これらの機能を低下または排除する同様のタイプの変更を説明することができるだろう。
【0240】
抗体分子は、誘導体化、または別の機能的分子(例えば、別のペプチドもしくはタンパク質)に連結することができる。本明細書で使用される場合、「derivatized」(誘導体化された)抗体分子は、修飾されたものである。誘導体化の方法には、それだけに限らないが、蛍光部分、放射性ヌクレオチド、毒素、酵素、またはビオチンなどの親和性リガンドの付加が含まれる。したがって、本発明の抗体分子は、免疫接着分子を含む、本明細書に記載される抗体の誘導体化された形態および他の方法で修飾された形態を含むことを意図している。例えば、抗体分子を、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディ)、検出可能な薬剤、細胞傷害剤、医薬品、および/または抗体もしくは抗体部分と別の分子(ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介することができるタンパク質もしくはペプチドなどの、1つ以上の他の分子実体と(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)機能的に連結することができる。
【0241】
1つのタイプの誘導体化抗体分子は、(例えば、二重特異性抗体を作成するために、同じタイプまたは異なるタイプの)2つ以上の抗体を架橋することによって作製される。適切な架橋剤には、適切なスペーサー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)によって分離された2つの明確に反応性の基を有するヘテロ二官能性またはホモ二官能性(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)のものが含まれる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから入手可能である。
【0242】
本発明の抗体分子を誘導体化(または標識)することができる有用な検出剤には、蛍光化合物、様々な酵素、補欠分子族、発光材料、生物発光材料、蛍光発光金属原子、例えば、ユーロピウム(Eu)および他のアンタニド(anthanide)、ならびに放射性物質(以下に記載される)が含まれる。例示的な蛍光検出剤には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが含まれる。抗体を、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ等といった検出可能な酵素で誘導体化してもよい。抗体が検出可能な酵素で誘導体化されると、酵素が使用する追加の試薬を添加して、検出可能な反応生成物を生成することによって抗体が検出される。例えば、検出剤である西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加が、検出可能な着色反応生成物をもたらす。抗体分子を、補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン)で誘導体化してもよい。例えば、抗体をビオチンで誘導体化し、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的な測定を通して検出してもよい。適切な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン挙げられ;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる。
【0243】
標識抗体分子は、例えば、診断的および/または実験的に、(i)アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的な技術によって所定の抗原を単離すること;(ii)タンパク質の存在量および発現のパターンを評価するために、(例えば、細胞溶解物または細胞上清中の)所定の抗原を検出すること;(iii)例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するために、臨床試験手順の一部として組織内のタンパク質レベルを監視することを含む、いくつかの状況で使用することができる。
【0244】
抗体分子を、別の分子実体、典型的には標識もしくは治療(例えば、細胞傷害もしくは細胞増殖抑制)剤または部分にコンジュゲートしてもよい。放射性同位元素を、診断または治療用途に使用することができる。
【0245】
本発明は、放射性標識抗体分子および同抗体分子を標識する方法を提供する。一実施形態では、抗体分子を標識する方法が開示される。本方法は、抗体分子をキレート剤と接触させて、それによってコンジュゲート抗体を作製することを含む。
【0246】
上に論じられるように、抗体分子を治療剤にコンジュゲートすることができる。治療的に活性な放射性同位元素は既に言及されている。他の治療剤の例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、プロマイシン、マイタンシノイド、例えば、マイタンシノール(例えば、米国特許第5,208,020号明細書参照)、CC-1065(例えば、米国特許第5,475,092号明細書、同第5,585,499号明細書、同第5,846,545号明細書参照)、およびその類似体または相同体が挙げられる。治療剤には、それだけに限らないが、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、CC-1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソールおよびマイタンシノイド)が含まれる。
【0247】
一態様では、本開示は、本明細書に開示される標的、例えば、PD-L1に特異的に結合する標的結合分子を提供する方法を提供する。例えば、標的結合分子は抗体分子である。本方法は、非ヒトタンパク質の少なくとも一部であって、ヒト標的タンパク質の対応する部分と相同(少なくとも70、75、80、85、87、90、92、94、95、96、97、98%同一)であるが、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8または9つのアミノ酸)が異なる一部を含む標的タンパク質を用意することと;抗原に特異的に結合する抗体分子を得ることと;標的タンパク質の活性の調節における結合剤の有効性を評価することとを含む。本方法は、結合剤(例えば、抗体分子)または誘導体(例えば、ヒト化抗体分子)をヒト対象に投与することをさらに含むことができる。
【0248】
本開示は、上記の抗体分子をコードする単離された核酸分子、ベクターおよびその宿主細胞を提供する。核酸分子には、それだけに限らないが、RNA、ゲノムDNAおよびcDNAが含まれる。
【0249】
例示的なPD-L1阻害剤
一実施形態では、PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体分子である。一実施形態では、PD-L1阻害剤が、全体が参照により組み込まれる、2016年4月21日に公開された「PD-L1に対する抗体分子およびその使用」と題された米国特許出願第2016/0108123号明細書に開示される抗PD-L1抗体分子である。
【0250】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、表3に示される、または表3に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表3に開示されるBAP058-Clone OまたはBAP058-Clone Nの重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表3に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表3に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、KabatとChothiaの両方の組み合わせCDR定義に準ずる(例えば、表3に示される)。一実施形態では、VH CDR1のKabatとChothiaの組み合わせのCDRが、アミノ酸配列GYTFTSYWMY(配列番号647)を含む。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表3に示される、または表3に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0251】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、それぞれ表3に開示される、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0252】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、それぞれ表3に開示される、配列番号628のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR1、配列番号629のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR2、および配列番号630のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR3を含むVHと;配列番号633のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR1、配列番号634のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR2、および配列番号635のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR3を含むVLとを含む。
【0253】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列、または配列番号606と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号616のアミノ酸配列、または配列番号616と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列、または配列番号620と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号624のアミノ酸配列、または配列番号624と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号616のアミノ酸配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号624のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0254】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号607のヌクレオチド配列、または配列番号607と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号617のヌクレオチド配列、または配列番号617と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号621のヌクレオチド配列、または配列番号621と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号625のヌクレオチド配列、または配列番号625と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号607のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号617のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号621のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号625のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0255】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列、または配列番号608と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号618のアミノ酸配列、または配列番号618と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列、または配列番号622と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号626のアミノ酸配列、または配列番号626と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号626のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0256】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号615のヌクレオチド配列、または配列番号615と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号619のヌクレオチド配列、または配列番号619と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号623のヌクレオチド配列、または配列番号623と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号627のヌクレオチド配列、または配列番号627と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号615のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号619のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号623のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号627のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0257】
本明細書に記載される抗体分子は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2016/0108123号明細書に記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0258】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0259】
他の例示的なPD-L1阻害剤
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、YW243.55.S70またはTECENTRIQTMとしても知られているアテゾリズマブ(Genentech/Roche)である。アテゾリズマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,217,149号明細書に開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、アテゾリズマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0260】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MSB0010718Cとしても知られているアベルマブ(Merck SeronoおよびPfizer)である。アベルマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2013/079174号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、アベルマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0261】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MEDI4736としても知られているデュルバルマブ(MedImmune/AstraZeneca)である。デュルバルマブおよび他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,779,108号明細書に開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、デュルバルマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0262】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、MDX-1105または12A4としても知られているBMS-936559(Bristol-Myers Squibb)である。BMS-936559および他の抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる、米国特許第7,943,743号明細書および国際公開第2015/081158号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、例えば、表4に開示される、BMS-936559のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0263】
さらなる既知の抗PD-L1抗体には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2015/181342号パンフレット、国際公開第2014/100079号パンフレット、国際公開第2016/000619号パンフレット、国際公開第2014/022758号パンフレット、国際公開第2014/055897号パンフレット、国際公開第2015/061668号パンフレット、国際公開第2013/079174号パンフレット、国際公開第2012/145493号パンフレット、国際公開第2015/112805号パンフレット、国際公開第2015/109124号パンフレット、国際公開第2015/195163号パンフレット、米国特許第8,168,179号明細書、米国特許第8,552,154号明細書、米国特許第8,460,927号明細書および米国特許第9,175,082号明細書に記載されるものが含まれる。
【0264】
一実施形態では、抗PD-L1抗体が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗PD-L1抗体のうちの1つとPD-L1上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0265】
【表2-1】
【表2-2】
【0266】
PD-1阻害剤
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、PD-1阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤が、PDR001(Novartis)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、ペンブロリズマブ(Merck & Co)、ピジリズマブ(CureTech)、MEDI0680(Medimmune)、REGN2810(Regeneron)、TSR-042(Tesaro)、PF-06801591(Pfizer)、BGB-A317(Beigene)、BGB-108(Beigene)、INCSHR1210(Incyte)またはAMP-224(Amplimmune)から選択される。
【0267】
例示的なPD-1阻害剤
一実施形態では、PD-1阻害剤が抗PD-1抗体分子である。一実施形態では、PD-1阻害剤が、全体が参照により組み込まれる、2015年7月30日に公開された「PD-1に対する抗体分子およびその使用」と題された米国特許出願公開第2015/0210769号明細書に記載される抗PD-1抗体分子である。
【0268】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、表1に示される、または表1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表1に開示されるBAP049-Clone-EまたはBAP049-Clone-Bの重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表1に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表1に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、KabatとChothiaの両方の組み合わせCDR定義に準ずる(例えば、表1に示される)。一実施形態では、VH CDR1のKabatとChothiaの組み合わせのCDRが、アミノ酸配列GYTFTTYWMH(配列番号541)を含む。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表1に示される、または表1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0269】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、それぞれ表1に開示される、配列番号501のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号502のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号503のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号510のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号511のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号512のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0270】
一実施形態では、抗体分子が、それぞれ表1に開示される、配列番号524のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR1、配列番号525のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR2、および配列番号526のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR3を含むVHと;配列番号529のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR1、配列番号530のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR2、および配列番号531のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR3を含むVLとを含む。
【0271】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号506のアミノ酸配列、または配列番号506と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号520のアミノ酸配列、または配列番号520と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号516のアミノ酸配列、または配列番号516と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号506のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号520のアミノ酸配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号506のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号516のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0272】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号507のヌクレオチド配列、または配列番号507と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号521もしくは517のヌクレオチド配列、または配列番号521もしくは517と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号507のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号521または517のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0273】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号508のアミノ酸配列、または配列番号508と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号522のアミノ酸配列、または配列番号522と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号518のアミノ酸配列、または配列番号518と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号508のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号522のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、配列番号508のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号518のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0274】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号509のヌクレオチド配列、または配列番号509と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号523もしくは519のヌクレオチド配列、または配列番号523もしくは519と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号509のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号523または519のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0275】
本明細書に記載される抗体分子は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2015/0210769号明細書に記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0276】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0277】
他の例示的なPD-1阻害剤
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはOPDIVO(登録商標)としても知られているニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)である。ニボルマブ(クローン5C4)および他の抗PD-1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,008,449号明細書および国際公開第2006/121168号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、表2に開示される、ニボルマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0278】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、ランブロリズマブ、MK-3475、MK03475、SCH-900475またはKEYTRUDA(登録商標)としても知られているペンブロリズマブ(Merck & Co)である。ペンブロリズマブおよび他の抗PD-1抗体は、全体が参照により組み込まれるHamid,O.ら(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44、米国特許第8,354,509号明細書および国際公開第2009/114335号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、表2に開示される、ペンブロリズマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0279】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、CT-011としても知られているピジリズマブ(CureTech)である。ピジリズマブおよび他の抗PD-1抗体は、全体が参照により組み込まれるRosenblatt,J.ら(2011)J Immunotherapy 34(5): 409-18、米国特許第7,695,715号明細書、米国特許第7,332,582号明細書および米国特許第8,686,119号明細書に開示されている。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、表2に開示される、ピジリズマブのCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0280】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、AMP-514としても知られているMEDI0680(Medimmune)である。MEDI0680および他の抗PD-1抗体は、全体が参照により組み込まれる米国特許第9,205,148号明細書および国際公開第2012/145493号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、MEDI0680のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0281】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子がREGN2810(Regeneron)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、REGN2810のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0282】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子がPF-06801591(Pfizer)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、PF-06801591のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0283】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、BGB-A317またはBGB-108(Beigene)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、BGB-A317もしくはBGB-108のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0284】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、INCSHR01210またはSHR-1210としても知られているINCSHR1210(Incyte)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、例えば、INCSHR1210のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0285】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、ANB011としても知られているTSR-042(Tesaro)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子が、TSR-042のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0286】
さらなる既知の抗PD-1抗体には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2015/112800号パンフレット、国際公開第2016/092419号パンフレット、国際公開第2015/085847号パンフレット、国際公開第2014/179664号パンフレット、国際公開第2014/194302号パンフレット、国際公開第2014/209804号パンフレット、国際公開第2015/200119号パンフレット、米国特許第8,735,553号明細書、米国特許第7,488,802号明細書、米国特許第8,927,697号明細書、米国特許第8,993,731号明細書および米国特許第9,102,727号明細書に記載されるものが含まれる。
【0287】
一実施形態では、抗PD-1抗体が、本明細書に記載される抗PD-1抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗PD-1抗体のうちの1つとPD-1上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0288】
一実施形態では、PD-1阻害剤が、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,907,053号明細書に記載される、PD-1シグナル伝達経路を阻害するペプチドである。一実施形態では、PD-1阻害剤が、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一実施形態では、PD-1阻害剤が、AMP-224(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/027827号パンフレットおよび国際公開第2011/066342号パンフレットに開示されるB7-DCIg(Amplimmune))である。
【0289】
【表4】
【0290】
LAG-3阻害剤
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、LAG-3阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、LAG-3阻害剤が、LAG525(Novartis)、BMS-986016(Bristol-Myers Squibb)またはTSR-033(Tesaro)から選択される。
【0291】
例示的なLAG-3阻害剤
一実施形態では、LAG-3阻害剤が抗LAG-3抗体分子である。一実施形態では、LAG-3阻害剤が、全体が参照により組み込まれる、2015年9月17日に公開された「LAG-3に対する抗体分子およびその使用」と題された米国特許出願公開第2015/0259420号明細書に開示される抗LAG-3抗体分子である。
【0292】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、表5に示される、または表5に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表5に開示されるBAP050-Clone IまたはBAP050-Clone Jの重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表5に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表5に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、KabatとChothiaの両方の組み合わせCDR定義に準ずる(例えば、表5に示される)。一実施形態では、VH CDR1のKabatとChothiaの組み合わせのCDRが、アミノ酸配列GFTLTNYGMN(配列番号766)を含む。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表5に示される、または表5に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0293】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、それぞれ表5に開示される、配列番号701のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号702のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号703のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号710のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号711のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号712のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0294】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、それぞれ表5に開示される、配列番号736または737のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR1、配列番号738または739のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR2、および配列番号740または741のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR3を含むVHと;配列番号746または747のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR1、配列番号748または749のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR2、および配列番号750または751のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR3を含むVLとを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、それぞれ表5に開示される、配列番号758または737のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR1、配列番号759または739のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR2、および配列番号760または741のヌクレオチド配列によってコードされるVHCDR3を含むVHと;配列番号746または747のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR1、配列番号748または749のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR2、および配列番号750または751のヌクレオチド配列によってコードされるVLCDR3を含むVLとを含む。
【0295】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号706のアミノ酸配列、または配列番号706と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号718のアミノ酸配列、または配列番号718と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号724のアミノ酸配列、または配列番号724と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号730のアミノ酸配列、または配列番号730と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号706のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号718のアミノ酸配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号724のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号730のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0296】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号707もしくは708のヌクレオチド配列、または配列番号707もしくは708と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号719もしくは720のヌクレオチド配列、または配列番号719もしくは720と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号725もしくは726のヌクレオチド配列、または配列番号725もしくは726と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号731もしくは732のヌクレオチド配列、または配列番号731もしくは732と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号707または708のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号719または720のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号725または726のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号731または732のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0297】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号709のアミノ酸配列、または配列番号709と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号721のアミノ酸配列、または配列番号721と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号727のアミノ酸配列、または配列番号727と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号733のアミノ酸配列、または配列番号733と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号709のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号721のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、配列番号727のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号733のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0298】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号716もしくは717のヌクレオチド配列、または配列番号716もしくは717と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号722もしくは723のヌクレオチド配列、または配列番号722もしくは723と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号728もしくは729のヌクレオチド配列、または配列番号728もしくは729と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号734もしくは735のヌクレオチド配列、または配列番号734もしくは735と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号716または717のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号722または723のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号728または729のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号734または735のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0299】
本明細書に記載される抗体分子は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2015/0259420号明細書に記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0300】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【0301】
他の例示的なLAG-3阻害剤
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、BMS986016としても知られているBMS-986016(Bristol-Myers Squibb)である。BMS-986016および他の抗LAG-3抗体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2015/116539号パンフレットおよび米国特許第9,505,839号明細書に開示されている。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、例えば、表6に開示される、BMS-986016のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0302】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子がTSR-033(Tesaro)である。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、TSR-033のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0303】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子がIMP731またはGSK2831781(GSKおよびPrima BioMed)である。IMP731および他の抗LAG-3抗体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2008/132601号パンフレットおよび米国特許第9,244,059号明細書に開示されている。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、例えば、表6に開示される、IMP731のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、GSK2831781のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0304】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子がIMP761(Prima BioMed)である。一実施形態では、抗LAG-3抗体分子が、IMP761のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0305】
さらなる既知の抗LAG-3抗体には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2008/132601号パンフレット、国際公開第2010/019570号パンフレット、国際公開第2014/140180号パンフレット、国際公開第2015/116539号パンフレット、国際公開第2015/200119号パンフレット、国際公開第2016/028672号パンフレット、米国特許第9,244,059号明細書、米国特許第9,505,839号明細書に記載されるものが含まれる。
【0306】
一実施形態では、抗LAG-3抗体が、本明細書に記載される抗LAG-3抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗LAG-3抗体のうちの1つとLAG-3上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0307】
一実施形態では、抗LAG-3阻害剤が、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2009/044273号パンフレットに開示される可溶性LAG-3タンパク質、例えば、IMP321(Prima BioMed)である。
【0308】
【表6】
【0309】
TIM-3阻害剤
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、TIM-3阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、TIM-3阻害剤が、MGB453(Novartis)またはTSR-022(Tesaro)である。
【0310】
例示的なTIM-3阻害剤
一実施形態では、TIM-3阻害剤が抗TIM-3抗体分子である。一実施形態では、TIM-3阻害剤が、全体が参照により組み込まれる、2015年8月6日に公開された「TIM-3に対する抗体分子およびその使用」と題された米国特許出願公開第2015/0218274号明細書に開示される抗TIM-3抗体分子である。
【0311】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、表7に示される、または表7に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表7に開示されるABTIM3-hum11またはABTIM3-hum03の重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表7に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表7に示される)。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表7に示される、または表7に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0312】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、それぞれ表7に開示される、配列番号801のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号802のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号803のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号810のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号811のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号812のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、それぞれ表7に開示される、配列番号801のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号820のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号803のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号810のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号811のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号812のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0313】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号806のアミノ酸配列、または配列番号806と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号816のアミノ酸配列、または配列番号816と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号822のアミノ酸配列、または配列番号822と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号826のアミノ酸配列、または配列番号826と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号806のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号816のアミノ酸配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号822のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号826のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0314】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号807のヌクレオチド配列、または配列番号807と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号817のヌクレオチド配列、または配列番号817と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号823のヌクレオチド配列、または配列番号823と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号827のヌクレオチド配列、または配列番号827と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号807のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号817のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号823のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号827のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0315】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号808のアミノ酸配列、または配列番号808と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号818のアミノ酸配列、または配列番号818と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号824のアミノ酸配列、または配列番号824と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号828のアミノ酸配列、または配列番号828と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号808のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号818のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、配列番号824のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号828のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0316】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号809のヌクレオチド配列、または配列番号809と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号819のヌクレオチド配列、または配列番号819と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号825のヌクレオチド配列、または配列番号825と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号829のヌクレオチド配列、または配列番号829と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号809のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号819のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号825のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号829のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0317】
本明細書に記載される抗体分子は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2015/0218274号明細書に記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0318】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【0319】
他の例示的なTIM-3阻害剤
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子がTSR-022(AnaptysBio/Tesaro)である。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、TSR-022のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、例えば、表8に開示される、APE5137もしくはAPE5121のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。APE5137、APE5121および他の抗TIM-3抗体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/161270号パンフレットに開示されている。
【0320】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が抗体クローンF38-2E2である。一実施形態では、抗TIM-3抗体分子が、F38-2E2のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0321】
さらなる既知の抗TIM-3抗体には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/111947号パンフレット、国際公開第2016/071448号パンフレット、国際公開第2016/144803号パンフレット、米国特許第8,552,156号明細書、米国特許第8,841,418号明細書および米国特許第9,163,087号明細書に記載されるものが含まれる。
【0322】
一実施形態では、抗TIM-3抗体が、本明細書に記載される抗TIM-3抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗TIM-3抗体のうちの1つとTIM-3上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0323】
【表8】
【0324】
GITRアゴニスト
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、GITRアゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、GITRアゴニストが、GWN323(NVS)、BMS-986156、MK-4166もしくはMK-1248(Merck)、TRX518(Leap Therapeutics)、INCAGN1876(Incyte/Agenus)、AMG228(Amgen)またはINBRX-110(Inhibrx)である。
【0325】
例示的なGITRアゴニスト
一実施形態では、GITRアゴニストが抗GITR抗体分子である。一実施形態では、GITRアゴニストが、全体が参照により組み込まれる、2016年4月14日に公開された「増強免疫応答およびがん療法のための組成物および使用方法」と題された国際公開第2016/057846号パンフレットに記載される抗GITR抗体分子である。
【0326】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、表9に示される、または表9に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域から(例えば、表9に開示されるMAB7の重鎖および軽鎖可変領域配列から)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含む。いくつかの実施形態では、CDRが、Kabatの定義に準ずる(例えば、表9に示される)。いくつかの実施形態では、CDRが、Chothiaの定義に準ずる(例えば、表9に示される)。一実施形態では、CDRの1つ以上(または集合的にCDRの全て)が、表9に示される、または表9に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)または欠失を有する。
【0327】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、それぞれ表9に開示される、配列番号909のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号911のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号913のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号914のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号916のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号918のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0328】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号901のアミノ酸配列、または配列番号901と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号902のアミノ酸配列、または配列番号902と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号901のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号902のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0329】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号905のヌクレオチド配列、または配列番号905と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVHを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号906のヌクレオチド配列、または配列番号906と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされるVLを含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号905のヌクレオチド配列によってコードされるVHと、配列番号906のヌクレオチド配列によってコードされるVLとを含む。
【0330】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号903のアミノ酸配列、または配列番号903と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号904のアミノ酸配列、または配列番号904と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、配列番号903のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号904のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0331】
一実施形態では、抗体分子が、配列番号907のヌクレオチド配列、または配列番号907と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号908のヌクレオチド配列、または配列番号908と少なくとも85%、90%、95%もしくは99%同一もしくはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。一実施形態では、抗体分子が、配列番号907のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖と、配列番号908のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖とを含む。
【0332】
本明細書に記載される抗体分子は、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2016/057846号明細書に記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0333】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0334】
他の例示的なGITRアゴニスト
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、BMS 986156またはBMS986156としても知られているBMS-986156(Bristol-Myers Squibb)である。BMS-986156および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許第9,228,016号明細書および国際公開第2016/196792号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、例えば、表10に開示される、BMS-986156のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0335】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、MK-4166またはMK-1248(Merck)である。MK-4166、MK-1248および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許第8,709,424号明細書、国際公開第2011/028683号パンフレット、国際公開第2015/026684号パンフレットおよびMahneらCancer Res.2017;77(5):1108~1118に開示されている。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、MK-4166もしくはMK-1248のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0336】
一実施形態では、抗GITR抗体分子がTRX518(Leap Therapeutics)である。TRX518および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許第7,812,135号明細書、米国特許第8,388,967号明細書、米国特許第9,028,823号明細書、国際公開第2006/105021号パンフレットおよびPonte Jら(2010)Clinical Immunology;135:S96に開示されている。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、TRX518のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0337】
一実施形態では、抗GITR抗体分子が、INCAGN1876(Incyte/Agenus)である。INCAGN1876および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2015/0368349号明細書および国際公開第2015/184099号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、INCAGN1876のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0338】
一実施形態では、抗GITR抗体分子がAMG 228(Amgen)である。AMG 228および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許第9,464,139号明細書および国際公開第2015/031667号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗GITR抗体分子が、AMG 228のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0339】
一実施形態では、抗GITR抗体分子がINBRX-110(Inhibrx)である。INBRX-110および他の抗GITR抗体は、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2017/0022284号明細書および国際公開第2017/015623号パンフレットに開示されている。一実施形態では、GITRアゴニストが、INBRX-110のCDR配列の1つ以上(または集合的にCDR配列の全て)、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列を含む。
【0340】
一実施形態では、GITRアゴニスト(例えば、融合タンパク質)が、MEDI1873としても知られているMEDI 1873(MedImmune)である。MEDI 1873および他のGITRアゴニストは、例えば、全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2017/0073386号明細書、国際公開第2017/025610号パンフレットおよびRossらCancer Res 2016;76(14補遺):抄録番号561に開示されている。一実施形態では、GITRアゴニストが、MEDI 1873のIgG Fcドメイン、機能的多量体化ドメインおよびグルココルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)の受容体結合ドメインのうちの1つ以上を含む。
【0341】
さらなる既知のGITRアゴニスト(例えば、抗GITR抗体)には、例えば、全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/054638号パンフレットに記載されるものが含まれる。
【0342】
一実施形態では、抗GITR抗体が、本明細書に記載される抗GITR抗体のうちの1つと結合について競合する、および/または本明細書に記載される抗GITR抗体のうちの1つとGITR上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0343】
一実施形態では、GITRアゴニストが、GITRシグナル伝達経路を活性化するペプチドである。一実施形態では、GITRアゴニストが、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したイムノアドヘシン結合フラグメント(例えば、GITRLの細胞外またはGITR結合部分を含むイムノアドヘシン結合フラグメント)である。
【0344】
【表10】
【0345】
IL15/IL-15Ra複合体
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、IL-15/IL-15Ra複合体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、IL-15/IL-15Ra複合体が、NIZ985(Novartis)、ATL-803(Altor)またはCYP0150(Cytune)から選択される。
【0346】
例示的なIL-15/IL-15Ra複合体
一実施形態では、IL-15/IL-15Ra複合体は、ヒトIL-15Raの可溶型と複合体形成したヒトIL-15を含む。複合体は、IL-15Raの可溶型に共有結合または非共有結合したIL-15を含んでもよい。特定の実施形態では、ヒトIL-15が、IL-15Raの可溶型に非共有結合している。特定の実施形態では、全体が参照により組み込まれる国際公開第2014/066527号パンフレットに記載されるように、組成物のヒトIL-15が、表11の配列番号1001のアミノ酸配列を含み、ヒトIL-15Raの可溶型が、表11の配列番号1002のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載される分子は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2007/084342号パンフレットに記載されるベクター、宿主細胞および方法によって作製することができる。
【0347】
【表11】
【0348】
他の例示的なIL-15/IL-15Ra複合体
一実施形態では、IL-15/IL-15Ra複合体が、IL-15/IL-15Ra Fc融合タンパク質(IL-15N72D:IL-15RaSu/Fc可溶性複合体)であるALT-803である。ALT-803は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2008/143794号パンフレットに開示されている。一実施形態では、IL-15/IL-15Ra Fc融合タンパク質が、表12に開示される配列を含む。
【0349】
一実施形態では、IL-15/IL-15Ra複合体が、IL-15Raのsushiドメインに融合したIL-15(CYP0150、Cytune)を含む。IL-15Raのsushiドメインは、IL-15Raのシグナルペプチドの後の最初のシステイン残基で始まり、前記シグナルペプチドの後の4番目のシステイン残基で終わるドメインを指す。IL-15Raのsushiドメインに融合したIL-15の複合体は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2007/04606号パンフレットおよび国際公開第2012/175222号パンフレットに開示されている。一実施形態では、IL-15/IL-15Ra sushiドメイン融合体は、表12に開示される配列を含む。
【0350】
【表12】
【0351】
TGFβ阻害剤
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子が、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤が、XOMA 089(Novartis)またはフレソリムマブ(Sanofi-Aventis)から選択される。
【0352】
例示的なTGFβ阻害剤
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤が、XOMA 089、または全体が参照により組み込まれる国際特許出願公開第2012/167143号パンフレットに開示される化合物を含む。TGFβは、TGF-β、TGFbまたはTGF-ベータとしても知られており、本明細書では互換的に使用される。
【0353】
XOMA 089は、XPA.42.089としても知られている。XOMA 089は、TGF-ベータ1および2リガンドに特異的に結合し、これらを中和する完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0354】
XOMA 089の重鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列を含む:QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGTANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGLWEVRALPSVYWGQGTLVTVSS(配列番号1101)(国際公開第2012/167143号パンフレットで配列番号6として開示される)。
【0355】
XOMA 089の軽鎖可変領域は、以下のアミノ酸配列を含む:SYELTQPPSVSVAPGQTARITCGANDIGSKSVHWYQQKAGQAPVLVVSEDIIRPSGIPERISGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDRDSDQYVFGTGTKVTVLG(配列番号1102)(国際公開第2012/167143号パンフレットで配列番号8として開示される)。
【0356】
XOMA 089は、ヒトTGF-βアイソフォームに高い親和性で結合する。一般に、XOMA 089は、TGF-β1およびTGF-β2に高い親和性で結合し、TGF-β3にはより低い程度で結合する。Biacoreアッセイでは、ヒトTGF-βでのXOMA 089のKDが、TGF-β1で14.6pM、TGF-β2で67.3pM、TGF-β3で948pMである。3つ全てのTGF-βアイソフォームへの高親和性結合を考えると、一定の実施形態では、XOMA 089が、本明細書に記載されるXOMA 089の用量でTGF-β1、2および3に結合すると予想される。XOMA 089は、げっ歯類およびカニクイザルのTGF-βと交差反応し、インビトロおよびインビボで機能的活性を示し、げっ歯類およびカニクイザルが毒物学的研究に適切な種となる。
【0357】
一実施形態では、TGF-β阻害剤(例えば、XOMA 089)が、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、0.1mg/kg~20mg/kg、例えば、0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~12mg/kg、0.3mg/kg~6mg/kg、1mg/kg~3mg/kg、0.1mg/kg~1mg/kg、0.1mg/kg~0.5mg/kg、0.1mg/kg~0.3mg/kg、0.3mg/kg~3mg/kg、0.3mg/kg~1mg/kg、3mg/kg~6mg/kgまたは6mg/kg~12mg/kgの用量、例えば約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、12mg/kgまたは15mg/kgの用量で投与される。
【0358】
一実施形態では、TGF-β阻害剤(例えば、XOMA 089)が、例えば、3週間に1回、0.1mg/kg~15mg/kg(例えば、0.3mg/kg~12mg/kgまたは1mg/kg~6mg、例えば、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、12mg/kgまたは15mg/kg)の用量で投与される。例えば、TGF-β阻害剤(例えば、XOMA 089)は、例えば、3週間に1回、0.1mg/kg~1mg/kg(例えば、0.1mg/kg~1mg/kg、例えば、0.3mg/kg)の用量で投与することができる。一実施形態では、TGF-β阻害剤(例えば、XOMA 089)が静脈内投与される。
【0359】
他の例示的なTGFべ阻害剤
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤が、フレソリムマブ(CAS登録番号:948564-73-6)を含む。フレソリムマブはGC1008としても知られている。フレソリムマブは、TGF-ベータアイソフォーム1、2および3に結合し、これらを阻害するヒトモノクローナル抗体である。
【0360】
フレソリムマブの重鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSNVISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIVDIANYAQRFKGRVTITADESTSTTYMELSSLRSEDTAVYYCASTLGLVLDAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1103)。
【0361】
フレソリムマブの軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:ETVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSLGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRAPGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYADSPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1104)。
【0362】
フレソリムマブは、例えば、全体が参照により組み込まれる国際特許出願公開第2006/086469号パンフレット、ならびに米国特許第8,383,780号明細書および同第8,591,901号明細書に開示されている。
【0363】
医薬組成物、製剤およびキット
別の態様では、本開示は、薬学的に許容される担体と合わせて製剤化された、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む組成物、例えば、薬学的に許容される組成物を提供する。本明細書で使用される場合、「pharmaceutically acceptable carrier」(薬学的に許容される担体)には、生理学的に適合性である任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、直腸、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適していることができる。
【0364】
本明細書に記載される組成物は、様々な形態であってもよい。これらには、溶液(例えば、注射可能および注入可能な溶液)、分散液または懸濁液、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体および固体剤形が含まれる。好ましい形態は、意図される投与様式および治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能または注入可能な溶液の形態である。好ましい投与様式は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態では、抗体が、静脈内注入または注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、抗体が、筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0365】
本明細書で使用される「parenteral administration」(非経口投与)および「administered parenterally」(非経口投与される)という句は、通常は注射による経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を含む。
【0366】
治療用組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定であるべきである。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高抗体濃度に適した他の規則正しい構造として製剤化することができる。無菌注射液は、必要に応じて、上に列挙される成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量の活性化合物(例えば、抗体または抗体部分)を組み込み、引き続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、以前に滅菌濾過された溶液から、有効成分の粉末に加えて、任意の追加の所望の成分が得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0367】
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子または組成物は、本明細書に記載される対象への投与(例えば、静脈内投与)に適した製剤(例えば、用量製剤または剤形)に製剤化することができる。本明細書に記載される製剤は、液体製剤、凍結乾燥製剤または再構成製剤であることができる。
【0368】
一定の実施形態では、製剤が液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)と、緩衝剤とを含む。
【0369】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、25mg/mL~250mg/mL、例えば、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~180mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~120mg/mL、90mg/mL~110mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、または100mg/mL~200mg/mL、例えば、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子を含む。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、80mg/mL~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する。
【0370】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、ヒスチジンを含む緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)を含む。一定の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、1mg/mL~10mg/mL、例えば、2mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、3mg/mL~7mg/mL、2mg/mL~6mg/mL、3mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、2mg/mL~7mg/mL、3mg/mL~9mg/mL、または1mg/mL~6mg/mL、例えば、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、または9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度で存在する。他の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)または製剤が、pH4~7、例えば、5~6、例えば、5、5.5または6を有する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)または製剤が、pH5~6、例えば、5.5を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、2mg/mL~6mg/mL(例えば、約3mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、ヒスチジンおよびヒスチジン-HClを含む。
【0371】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL(例えば、約3mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤とを含む。
【0372】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、炭水化物をさらに含む。一定の実施形態では、炭水化物がスクロースである。いくつかの実施形態では、炭水化物(例えば、スクロース)が、20mg/mL~200mg/mL、例えば、25mg/mL~180mg/mL、30mg/mL~170mg/ml、45mg/mL~140mg/ml、60mg/mL~190mg/mL、35mg/mL~165mg/mL、70mg/mL~130mg/mL、65mg/mL~145mg/mL、40mg/mL~160mg/mL、55mg/mL~165mg/mL、30mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~175mg/mL、または75mg/mL~125mg/mL、例えば、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mLまたは150mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースを含む。
【0373】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースとを含む。
【0374】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、界面活性剤をさらに含む。一定の実施形態では、界面活性剤がポリソルベート20である。いくつかの実施形態では、界面活性剤またはポリソルベート20)が、0.1mg/mL~1.0mg/mL、例えば、0.2mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.8mg/mL、0.4mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.8mg/mL、0.3mg/mL~0.6mg/mL、0.4mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.7mg/mL、0.3mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.5mg/mL、0.4mg/m~0.8mg/mL、または0.2mg/mL~0.5mg/mL、例えば、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLまたは0.9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20を含む。
【0375】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含む緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0376】
いくつかの実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、pH5~6(例えば、5.5)で、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液(例えば、ヒスチジン/ヒスチジン-HCL)を含む緩衝剤と;約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0377】
いくつかの実施形態では、液体製剤が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む製剤を希釈することによって調製される。例えば、原薬製剤を、1つ以上の賦形剤(例えば、濃縮賦形剤)を含む溶液で希釈することができる。いくつかの実施形態では、溶液が、ヒスチジン、スクロースまたはポリソルベート20のうちの1つ、2つまたは全てを含む。一定の実施形態では、溶液が、原薬製剤と同じ賦形剤を含む。例示的な賦形剤には、それだけに限らないが、アミノ酸(例えば、ヒスチジン)、炭水化物(例えば、スクロース)、または界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)が含まれる。一定の実施形態では、液体製剤が、再構成された凍結乾燥製剤ではない。他の実施形態では、液体製剤が、再構成された凍結乾燥製剤である。いくつかの実施形態では、製剤が液体として貯蔵される。他の実施形態では、製剤が液体として調製され、次いで、貯蔵前に、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥によって乾燥される。
【0378】
一定の実施形態では、容器(例えば、バイアル)1つ当たり0.5mL~10mL(例えば、0.5mL~8mL、1mL~6mL、または2mL~5mL、例えば、1mL、1.2mL、1.5mL、2mL、3mL、4mL、4.5mL、または5mL)の液体製剤が充填される。他の実施形態では、容器(例えば、バイアル)1つ当たり少なくとも1mL(例えば、少なくとも1.2mL、少なくとも1.5mL、少なくとも2mL、少なくとも3mL、少なくとも4mL、または少なくとも5mL)の抽出可能な体積の液体製剤を引き出すことができるように、液体製剤が容器(例えば、バイアル)に充填される。一定の実施形態では、液体製剤が、臨床部位で希釈することなく、容器(例えば、バイアル)から抽出される。一定の実施形態では、液体製剤が、原薬製剤から希釈され、臨床部位で容器(例えば、バイアル)から抽出される。一定の実施形態では、製剤(例えば、液体製剤)が、例えば、患者に注入が開始される前1時間以内(例えば、45分、30分または15分以内)に注入バッグに注射される。
【0379】
本明細書に記載される製剤は、容器に保存することができる。本明細書に記載される製剤のいずれかに使用される容器は、例えば、バイアル、および任意に、ストッパー、キャップまたは両方を含むことができる。一定の実施形態では、バイアルが、ガラスバイアル、例えば、6R白色ガラスバイアルまたは無色ガラスバイアルである。他の実施形態では、ストッパーが、ゴム栓、例えば、灰色ゴム栓である。他の実施形態では、キャップが、フリップオフキャップ、例えば、アルミニウムフリップオフキャップである。いくつかの実施形態では、容器が、6R白色ガラスバイアル、灰色ゴム栓、およびアルミニウムのフリップオフキャップを含む。いくつかの実施形態では、容器(例えば、バイアル)が、単回使用容器用である。一定の実施形態では、25mg/mL~250mg/mL、例えば、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~180mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~120mg/mL、90mg/mL~110mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、または100mg/mL~200mg/mL、例えば、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLの抗PD-L1抗体分子が容器(例えば、バイアル)中に存在する。
【0380】
いくつかの実施形態では、製剤が凍結乾燥製剤である。一定の実施形態では、凍結乾燥製剤が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む液体製剤から凍結乾燥または乾燥される。例えば、容器(例えば、バイアル)1つ当たり1~5mL、例えば、1~2mLの液体製剤を充填し、凍結乾燥することができる。
【0381】
いくつかの実施形態では、製剤が再構成された製剤である。一定の実施形態では、再構成された製剤が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む凍結乾燥製剤から再構成される。例えば、再構成された製剤は、タンパク質が再構成された製剤中に分散されるように、凍結乾燥された製剤を希釈剤に溶解することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥製剤が、1mL~5mL、例えば、1mL~2mL、例えば、1.2mLの注射用水または緩衝液で再構成される。一定の実施形態では、凍結乾燥された製剤が、例えば、臨床部位で、1mL~2mLの注射用水で再構成される。
【0382】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)と、緩衝剤とを含む。
【0383】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、25mg/mL~250mg/mL、例えば、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~180mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~120mg/mL、90mg/mL~110mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、または100mg/mL~200mg/mL、例えば、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、または150mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子を含む。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、80mg/mL~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する。
【0384】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、ヒスチジンを含む緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)を含む。一定の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、1mg/mL~10mg/mL、例えば、2mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、3mg/mL~7mg/mL、2mg/mL~6mg/mL、3mg/mL~8mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、2mg/mL~7mg/mL、3mg/mL~9mg/mL、または1mg/mL~6mg/mL、例えば、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、または9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度で存在する。他の実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、pH4~7、例えば、5~6、例えば、5、5.5または6を有する。いくつかの実施形態では、緩衝剤(例えば、ヒスチジン緩衝液)が、pH5~6、例えば、5.5を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、15mM~25mL(例えば、20mM)の濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する。一定の実施形態では、緩衝剤が、ヒスチジンおよびヒスチジン-HClを含む。
【0385】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL(例えば、約3mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する緩衝剤とを含む。
【0386】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、炭水化物をさらに含む。一定の実施形態では、炭水化物がスクロースである。いくつかの実施形態では、炭水化物(例えば、スクロース)が、20mg/mL~200mg/mL、例えば、25mg/mL~180mg/mL、30mg/mL~170mg/ml、45mg/mL~140mg/ml、60mg/mL~190mg/mL、35mg/mL~165mg/mL、70mg/mL~130mg/mL、65mg/mL~145mg/mL、40mg/mL~160mg/mL、55mg/mL~165mg/mL、30mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~175mg/mL、または75mg/mL~125mg/mL、例えば、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mLまたは150mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースを含む。
【0387】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースとを含む。
【0388】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、界面活性剤をさらに含む。一定の実施形態では、界面活性剤がポリソルベート20である。いくつかの実施形態では、界面活性剤またはポリソルベート20)が、0.1mg/mL~1.0mg/mL、例えば、0.2mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.8mg/mL、0.4mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.8mg/mL、0.3mg/mL~0.6mg/mL、0.4mg/mL~0.7mg/mL、0.2mg/mL~0.7mg/mL、0.3mg/mL~0.9mg/mL、0.3mg/mL~0.5mg/mL、0.4mg/m~0.8mg/mL、または0.2mg/mL~0.5mg/mL、例えば、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLまたは0.9mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、製剤が、0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20を含む。
【0389】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、80~120mg/mL、例えば、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;2mg/mL~6mg/mL、例えば、約3mg/mLの濃度のヒスチジン緩衝液を含み、pH5~6(例えば、5.5)を有する緩衝剤と;50mg/mL~100mg/mL、例えば、約75mg/mLの濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.2mg/mL~0.6mg/mL、例えば、0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0390】
いくつかの実施形態では、再構成された製剤が、100mg/mLの濃度で存在する抗PD-L1抗体分子と;約3mg/mL(例えば、3.1mg/mL)の濃度のヒスチジン緩衝液(例えば、ヒスチジン/ヒスチジン-HCL)を含み、pH5.5を有する緩衝剤と;約75mg/mL(例えば、75.3mg/mL)の濃度で存在する炭水化物またはスクロースと;0.4mg/mLの濃度で存在する界面活性剤またはポリソルベート20とを含む。
【0391】
いくつかの実施形態では、少なくとも1mL(例えば、少なくとも1.2mL、1.5mL、2mL、2.5mLまたは3mL)の抽出可能な体積の再構成された製剤を、再構成された製剤を含有する容器(例えば、バイアル)から引き出すことができるように、製剤が再構成される。一定の実施形態では、製剤が、臨床場面で容器(例えば、バイアル)から再構成および/または抽出される。一定の実施形態では、製剤(例えば、再構成された製剤)が、例えば、患者に注入が開始される前1時間以内(例えば、45分、30分または15分以内)に注入バッグに注射される。
【0392】
本明細書に記載される製剤に使用することができる他の例示的な緩衝剤には、それだけに限らないが、アルギニン緩衝液、クエン酸緩衝液またはホスフェート緩衝液が含まれる。本明細書に記載される製剤に使用することができる他の例示的な炭水化物には、それだけに限らないが、トレハロース、マンニトール、ソルビトールまたはこれらの組み合わせが含まれる。本明細書に記載される製剤はまた、張性剤、例えば、塩化ナトリウム、および/または安定剤、例えば、アミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、メチオニンまたはこれらの組み合わせ)を含有してもよい。
【0393】
抗体分子は、当技術分野で既知の様々な方法によって投与することができるが、多くの治療用途にとって、好ましい投与経路/投与様式は、静脈内注射または注入である。例えば、抗体分子を、20mg/分超、例えば、20~40mg/分、および典型的には40mg/分以上の速度で静脈内注入によって投与して、約35~440mg/m2、典型的には約70~310mg/m2、より典型的には約110~130mg/m2の用量に到達することができる。実施形態では、抗体分子を、10mg/分未満;好ましくは5mg/分以下の速度で静脈内注入によって投与して、約1~100mg/m2、好ましくは約5~50mg/m2、約7~25mg/m2、より好ましくは約10mg/m2の用量に到達することができる。当業者によって理解されるように、投与経路および/または投与様式は、所望の結果に応じて変化するだろう。一定の実施形態では、活性化合物を、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、急速放出から化合物を保護する担体を用いて調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための多くの方法は、特許を取得されている、または一般に当業者に既知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照されたい。
【0394】
一定の実施形態では、抗体分子を、例えば、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与することができる。化合物(および所望であれば、他の成分)を、ハードシェルもしくはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入する、錠剤に圧縮する、または対象の食餌に直接組み込んでもよい。経口治療投与の場合、化合物を、賦形剤と共に組み込み、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で使用してもよい。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するためには、化合物をその不活性化を防ぐための材料でコーティングする、またはこれと同時投与する必要があってもよい。治療用組成物はまた、当技術分野で既知の医療機器で投与することができる。
【0395】
投与レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少もしくは増加させてもよい。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療される対象に単一投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体と合わせて所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の仕様は、(a)活性化合物の固有の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感受性の治療のためのこのような活性化合物の配合の当技術分野における固有の制限によって指示され、これらに直接依存する。
【0396】
抗体分子の治療上または予防上有効量についての例示的な非限定的な範囲は、50mg~2000mg、典型的には80mg~1800mgである。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、約60mg~約100mg(例えば、約80mg)、約200mg~約300mg(例えば、約240mg)、約700mg~約900mg(例えば、約800mg)、約1000mg~約1400mg(例えば、約1200mg)、または約1400mg~約1800mg(例えば、約1600mg)の用量(例えば、均一用量)で、注入(例えば、皮下または静脈内)によって投与される。投与スケジュール(例えば、均一投与スケジュール)は、例えば、1週間に1回~2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回または6週間に1回で変化することができる。
【0397】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約60mg~100mg(例えば、約80mg)の用量で投与される。
【0398】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約200mg~約300mg(例えば、約240mg)の用量で投与される。
【0399】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約700mg~約900mg(例えば、約800mg)の用量で投与される。
【0400】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、2週間に1回または4週間に1回、約1000mg~約1400mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。
【0401】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、2週間に1回または4週間に1回、約1400mg~約1800mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0402】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約80mgの用量で投与される。
【0403】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約240mgの用量で投与される。
【0404】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約800mgの用量で投与される。
【0405】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1200mgの用量で投与される。
【0406】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1600mgの用量で投与される。
【0407】
理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、均一または固定投与が、例えば薬物供給を節約する、および薬局の誤りを減らすように、患者にとって有益であることができる。
【0408】
抗体分子を、20mg/分超、例えば、20~40mg/分、および典型的には40mg/分以上の速度で静脈内注入によって投与して、約35~440mg/m2、典型的には約70~310mg/m2、より典型的には約110~130mg/m2の用量に到達することができる。実施形態では、約110~130mg/m2の注入速度が、約3mg/kgのレベルを達成する。他の実施形態では、抗体分子を、10mg/分未満;例えば、5mg/分以下の速度で静脈内注入によって投与して、約1~100mg/m2、例えば、約5~50mg/m2、約7~25mg/m2、または約10mg/m2の用量に到達することができる。いくつかの実施形態では、抗体が、約30分の期間にわたって注入される。投与量値は、緩和すべき状態の種類および重症度によって変化してもよいことに留意すべきである。さらに、特定の対象について、具体的な投与計レジメンを、個々の必要性および組成物を投与またはその投与を監督する人の専門的判断に従って経時的に調整すべきであり、本明細書に示される投与範囲は例示的なものにすぎず、請求される組成物の範囲も実施も制限することを意図していないことをさらに理解すべきである。
【0409】
本発明の医薬組成物は、「therapeutically effective amount」(治療上有効量)または「prophylactically effective amount」(予防上有効量)の本発明の抗体または抗体部分を含んでもよい。「therapeutically effective amount」(治療上有効量)は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。修飾された抗体または抗体フラグメントの治療上有効量は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体または抗体部分の能力などの因子によって変化してもよい。治療上有効量はまた、修飾された抗体または抗体フラグメントの毒性または有害効果よりも治療上有益な効果が勝る量である。「therapeutically effective dosage」(治療上有効投与量)は、好ましくは、未治療対象と比較して、測定可能なパラメータ、例えば腫瘍成長速度を、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおより好ましくは少なくとも約80%阻害する。化合物が、測定可能なパラメータ、例えば、がんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に既知のアッセイによって、インビトロで、このような阻害、化合物が阻害する能力を調べることによって評価することができる。
【0410】
「prophylactically effective amount」(予防上有効量)は、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の前または初期段階の対象に使用されるので、予防上有効量は、治療上有効量よりも少なくなる。
【0411】
また、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤を含むキットも本開示の範囲内にある。キットは、(例えば、本明細書に記載される投与レジメンによる)使用説明書と;他の試薬、例えば、ラベル、治療剤、またはキレート化もしくはカップリングに有用な薬剤、ラベルもしくは治療剤に対する抗体、または放射線保護組成物と;投与するための抗体を調製するための装置または他の材料と;薬学的に許容される担体と;対象に投与するための装置または他の材料とを含む1つ以上の他の要素を含むことができる。
【0412】
抗PD-L1抗体分子の使用
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を使用して、対象の免疫応答を改変することができる。いくつかの実施形態では、免疫応答が、増強、刺激または上方制御される。一定の実施形態では、免疫応答が、阻害、低減または下方制御される。例えば、これらの抗体分子を、培養中の細胞に、例えばインビトロもしくはエキソビボで、または対象に、例えばインビボで投与して、がん、免疫障害および感染性疾患などの様々な障害を治療、予防および/または診断することができる。
【0413】
本明細書で使用される場合、「subject」(対象)という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。いくつかの実施形態では、対象が、ヒト対象、例えば、異常なPD-L1機能を特徴とする障害または状態を有するヒト患者である。一般に、対象は、抗体分子によって結合されるPD-L1エピトープ、例えば、PD-L1への抗体結合を支持するのに十分高いレベルのタンパク質およびエピトープを含む、少なくともいくつかのPD-L1タンパク質を有する。「non-human animal」(非ヒト動物)という用語は、哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類を含む。いくつかの実施形態では、対象がヒトである。いくつかの実施形態では、対象が、免疫応答の増強を必要とするヒト患者である。本明細書に記載される方法および組成物は、免疫応答を調節する(例えば、増強または阻害する)ことによって治療することができる障害を有するヒト患者を治療するのに適している。
【0414】
一定の実施形態では、対象が、抗PD-L1抗体分子を受ける前に、PD-1/PD-L1療法で治療されていない。他の実施形態では、対象が、抗PD-L1抗体分子を受ける前に、PD-1/PD-L1療法で治療されている。一定の実施形態では、対象が、腫瘍浸潤リンパ球においてPD-L1発現を有すると特定されている。他の実施形態では、対象が、腫瘍浸潤リンパ球において検出可能なレベルのPD-L1発現を有さない。
【0415】
がんを治療する方法
一態様では、本開示は、がん性腫瘍の成長が阻害または低減されるように、抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)、または抗PD-L1を含む組成物もしくは製剤(例えば、本明細書に記載される組成物または製剤)を使用するインビボでの対象の治療に関する。
【0416】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、がんまたはその転移性病変を治療するのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約20mg~約2000mgの用量で投与される。
【0417】
例えば、抗PD-L1抗体分子は、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約40mg~約2000mg、約300mg~約1800mg、約200mg~約1600mg、約300mg~約1400mg、約600~約1700mg、約700mg~約1900mg、または約400mg~約1500mgの用量で投与することができる。
【0418】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約60mg~100mg(例えば、約80mg)の用量で投与される。
【0419】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約200mg~約300mg(例えば、約240mg)の用量で投与される。
【0420】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約700mg~約900mg(例えば、約800mg)の用量で投与される。
【0421】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1000mg~約1400mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。
【0422】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1400mg~約1800mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0423】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約80mgの用量で投与される。
【0424】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約240mgの用量で投与される。
【0425】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約800mgの用量で投与される。
【0426】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1200mgの用量で投与される。
【0427】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1600mgの用量で投与される。
【0428】
抗PD-L1抗体、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤を単独で使用して、がん性腫瘍の成長を阻害してもよい。あるいは、抗PD-L1抗体、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤を、(例えば、がんもしくは感染性障害のための)標準治療、別の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、免疫調節剤(例えば、共刺激分子の活性化因子もしくは抑制性分子の阻害剤);ワクチン、例えば、治療用がんワクチン;または本明細書に記載される、他の形態の細胞免疫療法のうちの1つ以上と組み合わせて使用してもよい。
【0429】
したがって、一実施形態では、本開示は、対象の腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、例えば本明細書に記載される投与レジメンに従って、治療上有効量の本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を対象に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、本明細書に記載される組成物または製剤の形態で投与される。
【0430】
一実施形態では、本方法が、インビボでのがんの治療に適している。抗原特異的な免疫増強を達成するために、抗PD-L1抗体分子を目的の抗原と一緒に投与することができる。抗PD-L1抗体を1つ以上の薬剤と組み合わせて投与する場合、組み合わせをいずれかの順序でまたは同時に投与することができる。
【0431】
別の態様では、対象を治療する、例えば、対象の過剰増殖性状態または障害(例えば、がん)、例えば、固形腫瘍、血液がん、軟部組織腫瘍または転移性病変を低減または改善する方法が提供される。本方法は、本明細書に開示される投与レジメンに従って、本明細書に開示される抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤を対象に投与することを含む。
【0432】
本明細書で使用される場合、「cancer」(がん)という用語は、組織病理学的タイプまたは浸潤の段階に関係なく、全てのタイプのがん性増殖または発癌過程、転移性組織または悪性形質転換した細胞、組織もしくは臓器を含むことを意味する。がん性障害の例としては、それだけに限らないが、固形腫瘍、血液がん、軟部組織腫瘍および転移性病変が挙げられる。固形腫瘍の例としては、様々な臓器系の悪性腫瘍、例えば、肉腫および癌腫(腺癌および扁平上皮癌を含む)、例えば肝臓、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮または膀胱細胞)、前立腺、CNS(例えば、脳、神経またはグリア細胞)、皮膚、膵臓および咽頭に発症するものが挙げられる。腺癌には、ほとんどの結腸がん、直腸がん、腎細胞癌、肝臓がん、肺の非小細胞癌、小腸がんおよび食道がんなどの悪性腫瘍が含まれる。扁平上皮癌には、例えば、肺、食道、皮膚、頭頸部領域、口腔、肛門および子宮頸部の悪性腫瘍が含まれる。一実施形態では、がんが黒色腫、例えば、進行期黒色腫である。前記がんの転移性病変も、本発明の方法および組成物を使用して治療または予防することができる。
【0433】
本明細書に開示される、抗体分子、組成物または製剤を使用して成長を阻害することができる例示的ながんには、典型的には免疫療法に応答するがんが含まれる。治療するための典型的ながんの非限定的な例としては、例えば、骨がん(例えば、脊索腫)、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫、例えば、皮膚黒色腫)、乳がん(例えば、転移性乳癌またはステージIV乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)、結腸直腸がん(例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がん)、子宮内膜がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、卵巣がん、または肝臓がん(例えば、肝細胞癌)が挙げられる。
【0434】
治療することができる他のがんの例としては、それだけに限らないが、基底細胞癌、胆道がん;膀胱がん;脳および中枢神経系(CNS)がん;原発性CNSリンパ腫;CNSの新生物;乳がん;骨がん;子宮頸がん;絨毛癌;結腸および直腸がん;結合組織がん;消化器系がん;子宮内膜がん;食道がん;眼がん;頭頸部がん;胃がん;上皮内新生物;腎臓がん;喉頭がん;白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性または急性白血病を含む);肝臓がん;肺がん(例えば、小細胞および非小細胞);腎がん(例えば、淡明細胞型癌);ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;リンパ球性リンパ腫;黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫);骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔がん(例えば、唇、舌、口および咽頭);卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌);網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸がん;呼吸器系がん;肉腫;皮膚がん;胃がん;精巣がん;甲状腺がん;子宮がん;泌尿器系がん、肝細胞癌、肛門部がん、ファロピウス管癌、膣癌、外陰癌、小腸がん、内分泌系がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児期の固形腫瘍、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境的に誘発されるがん、他の癌腫および肉腫、ならびに前記がんの組み合わせが挙げられる。さらに、難治性または再発性の悪性腫瘍を、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を使用して治療することができる。
【0435】
いくつかの実施形態では、障害が、がん、例えば、本明細書に記載されるがんである。一定の実施形態では、がんが固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが骨がん、例えば脊索腫である。いくつかの実施形態では、がんが、皮膚がん、例えば、黒色腫(例えば、皮膚黒色腫、ステージII~IV黒色腫、HLA-A2陽性黒色腫、切除不能黒色腫、または転移性黒色腫)、またはメルケル細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんが、乳がん、例えば、転移性乳がんまたはステージIV乳癌、例えば、TNBCである。いくつかの実施形態では、がんが子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、結腸直腸がん、例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんが子宮内膜がんである。いくつかの実施形態では、がんが肺がん、例えば、NSCLCである。いくつかの実施形態では、がんが卵巣がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肝細胞癌、例えば、進行期の肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんが、脳腫瘍、例えば、膠芽腫、神経膠肉腫または再発性脳腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが、膵臓がん、例えば、進行期の膵臓がんである。いくつかの実施形態では、がんが、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性腎細胞癌)または治療未経験転移性腎臓がんである。いくつかの実施形態では、がんが、ウイルス関連がんである。いくつかの実施形態では、がんが、肛門管がん(例えば、肛門管の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、胃がん(例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)陽性胃がん、または胃もしくは胃-食道接合部癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、頭頸部がん(例えば、HPV陽性および陰性の頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN))である。いくつかの実施形態では、がんが鼻咽頭がん(NPC)である。いくつかの実施形態では、がんが、陰茎がん(例えば、陰茎の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、膣または外陰がん(例えば、膣または外陰部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんが、結腸直腸がん、例えば、再発性結腸直腸がん、転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんである。一定の実施形態では、がんが血液がんである。いくつかの実施形態では、がんが白血病である。いくつかの実施形態では、がんが、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、再発性または難治性のHLまたはDLBCL)である。いくつかの実施形態では、がんが骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんがMSI-highがんである。いくつかの実施形態では、がんが転移性がんである。他の実施形態では、がんが進行期のがんである。他の実施形態では、がんが再発性または難治性のがんである。
【0436】
一実施形態では、がんがメルケル細胞癌である。他の実施形態では、がんが黒色腫である。他の実施形態では、がんが、乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)またはHER2陰性乳がんである。他の実施形態では、がんが、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC)または非淡明細胞型腎細胞癌(nccRCC))である。他の実施形態では、がんが、甲状腺がん、例えば甲状腺未分化癌(ATC)である。他の実施形態では、がんが、神経内分泌腫瘍(NET)、例えば、非定型肺カルチノイド腫瘍、または膵臓、胃腸(GI)管もしくは肺におけるNETである。一定の実施形態では、がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLC)である。一定の実施形態では、がんが卵管がんである。一定の実施形態では、がんが、マイクロサテライト不安定性高結腸直腸がん(MSI-high CRC)またはマイクロサテライト安定性結腸直腸がん(MSS CRC)である。
【0437】
他の実施形態では、がんが、それだけに限らないが、白血病またはリンパ腫を含む、血液悪性腫瘍またはがんである。例えば、抗PD-L1抗体分子を使用して、それだけに限らないが、例えば、急性白血病、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL);慢性白血病、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL);追加の血液がんまたは血液学的状態、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞または大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄性血液細胞の無効な産生(または異形成)を特徴とする血液学的状態の多様な集合である「preleukemia」(前白血病)などを含むがんおよび悪性腫瘍を治療することができる。
【0438】
本明細書で使用される場合、「subject」(対象)という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。いくつかの実施形態では、対象が、ヒト対象、例えば、異常なPD-L1機能を特徴とする障害または状態を有するヒト患者である。一般に、対象は、抗体分子によって結合されるPD-L1エピトープ、例えば、PD-L1への抗体結合を支持するのに十分高いレベルのタンパク質およびエピトープを含む、少なくともいくつかのPD-L1タンパク質を有する。「non-human animal」(非ヒト動物)という用語は、哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類を含む。いくつかの実施形態では、対象がヒトである。いくつかの実施形態では、対象が、免疫応答の増強を必要とするヒト患者である。本明細書に記載される方法および組成物は、免疫応答を調節する(例えば、増強または阻害する)ことによって治療することができる障害を有するヒト患者を治療するのに適している。
【0439】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤が、単剤として投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤が、第2の治療剤または様式、例えば、PD-1阻害剤またはLAG-3阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤が、抗PD-1抗体分子、例えば、本明細書に記載される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、LAG-3阻害剤が、抗LAG-3抗体分子、例えば、本明細書に記載される抗LAG-3抗体分子である。
【0440】
いくつかの実施形態では、がんが固形腫瘍である。一定の実施形態では、がんが、骨がん(例えば、脊索腫)、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫、例えば、皮膚黒色腫)、乳がん(例えば、転移性乳癌またはステージIV乳癌、例えば、TNBC)、子宮頸がん(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)、結腸直腸がん(例えば、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がん、例えば、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がん)、子宮内膜がん、肺がん(例えば、NSCLC)、卵巣がん、または肝臓がん(例えば、肝細胞癌)から選択される。
【0441】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤が、固形腫瘍(例えば、本明細書に記載される固形腫瘍)を治療するために単剤として投与される。他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤が、固形腫瘍を治療するために、第2の治療剤または様式、例えば、PD-1阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤が、抗PD-1抗体分子、例えば、本明細書に記載される抗PD-1抗体である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がPDR001である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がREGN2810である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がニボルマブである。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がペンブロリズマブである。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がピジリズマブである。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がMEDI0680である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がTSR-042である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がPF-06801591である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がBGB-A317である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がBGB-108である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がINCSHR1210である。一定の実施形態では、抗PD-1抗体分子がAMP-224である。
【0442】
本明細書に開示される方法および組成物は、前記がんに関連する転移性病変を治療するために有用である。
【0443】
いくつかの実施形態では、本方法が、腫瘍試料がPD-L1、CD8およびIFN-γのうちの1つ以上について陽性であるかどうかを決定すること、および腫瘍試料がマーカーのうちの1つ以上、例えば2つまたは3つ全てについて陽性である場合、治療上有効量の抗PD-L1抗体分子を、任意に、本明細書に記載される1つ以上の他の免疫調節剤または抗がん剤と組み合わせて患者に投与することをさらに含む。
【0444】
他の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損(dMMR)を特徴とするがんを治療するために使用される。患者についてのMSI-HまたはdMMR腫瘍状態の特定は、例えば、MSI-H状態についてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査またはdMMRについては免疫組織化学(IHC)検査を使用して決定することができる。MSI-HまたはdMMR腫瘍状態を特定する方法は、例えば、RyanらCrit Rev Oncol Hematol.2017;116:38~57;Dietmaier and Hofstadter.Lab Invest 2001、81:1453~1456;KawakamiらCurr Treat Options Oncol.2015;16(7): 30に記載されている。
【0445】
本明細書に記載される併用療法は、1つ以上の追加の治療剤、例えば、1つ以上の抗がん剤、細胞傷害もしくは細胞増殖抑制剤、ホルモン治療、ワクチン、および/または他の免疫療法と共製剤化および/または共投与される本発明の組成物を含むことができる。他の実施形態では、抗体分子が、外科手術、放射線、凍結手術および/または温熱療法を含む他の治療様式と組み合わせて投与される。このような併用療法は、より低い投与量の投与される治療剤を有利に利用して、よって、様々な単剤療法に関連する可能性のある毒性または合併症を回避してもよい。
【0446】
本明細書に記載される方法、組成物および組み合わせ(例えば、抗PD-L1抗体およびそれらを使用する方法)を、他の薬剤または治療様式、例えば、その内容全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/061142号パンフレットの表6に列挙される薬剤のうちの1つ以上から選択される第2の治療剤と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、本明細書に記載される方法が、国際公開第2016/061142号パンフレットに記載される抗PD-L1抗体分子を(任意に、PD-1、PD-L1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/またはCEACAM-5)、またはCTLA-4のうちの1つ以上の阻害剤と組み合わせて)対象に投与することを含み、障害、例えば、本明細書に記載される障害、例えば、がんを治療または予防するのに有効な量の国際公開第2016/061142号パンフレットの表6に列挙される薬剤のうちの1つ以上から選択される第2の治療剤の投与をさらに含む。組み合わせで投与される場合、抗PD-L1抗体分子、追加の薬剤(例えば、第2もしくは第3の薬剤)、または全てを、例えば単剤療法として個別に使用される各薬剤の量または投与量よりも高い、低いまたはこれと同じ量または用量で投与することができる。一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子、追加の薬剤(例えば、第2もしくは第3の薬剤)、または全ての投与される量または投与量が、例えば単剤療法として個別に使用される各薬剤の量または投与量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%)。他の実施形態では、所望の効果(例えば、がんの治療)をもたらす、抗PD-L1抗体分子、追加の薬剤(例えば、第2もしくは第3の薬剤)、または全ての量または投与量が、例えば単剤療法として個別に使用される各薬剤の量または投与量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%低い)。
【0447】
他の実施形態では、追加の治療剤が、国際公開第2016/061142号パンフレットの表6に列挙される薬剤のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤が、以下のうちの1つ以上から選択される:1)プロテインキナーゼC(PKC)阻害剤;2)熱ショックタンパク質90(HSP90)阻害剤;3)ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)および/またはラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の阻害剤;4)チトクロムP450の阻害剤(例えば、CYP17阻害剤または17α-ヒドロキシラーゼ/C17-20リアーゼ阻害剤);5)鉄キレート剤;6)アロマターゼ阻害剤;7)p53の阻害剤、例えば、p53/Mdm2相互作用の阻害剤;8)アポトーシス誘導剤;9)血管新生阻害剤;10)アルドステロンシンターゼ阻害剤;11)スムーズンド(Smoothened)(SMO)受容体阻害剤;12)プロラクチン受容体(PRLR)阻害剤;13)Wntシグナル伝達阻害剤;14)CDK4/6阻害剤;15)線維芽細胞成長因子受容体2(FGFR2)/線維芽細胞成長因子受容体4(FGFR4)阻害剤;16)マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の阻害剤;17)c-KIT、ヒスタミン放出、Flt3(例えば、FLK2/STK1)またはPKCのうちの1つ以上の阻害剤;18)VEGFR-2(例えば、FLK-1/KDR)、PDGFRベータ、c-KITまたはRafキナーゼCのうちの1つ以上の阻害剤;19)ソマトスタチンアゴニストおよび/または成長ホルモン放出阻害剤;20)未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤;21)インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)阻害剤;22)P-糖タンパク質1阻害剤;23)血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤;24)BCR-ABLキナーゼ阻害剤;25)FGFR阻害剤;26)CYP11B2の阻害剤;27)HDM2阻害剤、例えば、HDM2-p53相互作用の阻害剤;28)チロシンキナーゼの阻害剤;29)c-METの阻害剤;30)JAKの阻害剤;31)DACの阻害剤;32)11β-ヒドロキシラーゼの阻害剤;33)IAPの阻害剤;34)PIMキナーゼの阻害剤;35)Porcupineの阻害剤;36)BRAF、例えば、BRAF V600Eまたは野生型BRAFの阻害剤; 37)HER3の阻害剤;38)MEKの阻害剤;または39)例えば国際公開第2016/061142号パンフレットの表6に記載される脂質キナーゼの阻害剤。
【0448】
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を含む併用療法の追加の実施形態は、全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/061142号パンフレットに記載されている。
【0449】
感染性疾患を治療する方法
抗PD-L1抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子)、または抗PD-L1を含む組成物もしくは製剤(例えば、本明細書に記載される組成物または製剤)を使用して感染性疾患を治療する方法が本明細書に開示される。一定の実施形態では、抗体分子、組成物または製剤が、本明細書に記載される投与レジメンに従って対象に投与される。
【0450】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、感染性疾患またはその症状を治療するのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約20mg~約2000mgの用量で投与される。
【0451】
例えば、抗PD-L1抗体分子は、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約2000mg、約300mg~約1800mg、約200mg~約1600mg、約300mg~約1400mg、約600~約1700mg、約700mg~約1900mg、または約400mg~約1500mgの用量で投与することができる。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約60mg~100mg(例えば、約80mg)の用量で投与される。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約200mg~約300mg(例えば、約240mg)の用量で投与される。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約700mg~約900mg(例えば、約800mg)の用量で投与される。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1000mg~約1400mg(例えば、約1200mg)の用量で投与される。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、4週間に1回または6週間に1回、約1400mg~約1900mg(例えば、約1600mg)の用量で投与される。
【0452】
本明細書に記載される一定の方法は、特定の毒素または病原体に曝露された対象を治療するために使用される。理論に拘束されることを望むのものではないが、いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体が、標的細胞のNK細胞媒介殺傷を刺激し、IFN-γ分泌およびCD4+T細胞の増殖を増強することができると考えられる。したがって、一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物、および製剤が、感染因子に対する免疫応答の刺激に使用するのに適している。したがって、本発明の別の態様は、対象の感染性疾患を治療する方法であって、対象が感染性疾患について治療されるように、例えば、本明細書に記載される投与レジメンに従って、抗PD-L1抗体分子、または抗PD-L1抗体分子を含む組成物もしくは製剤を対象に投与することを含む方法を提供する。感染症(例えば、急性および/または慢性)の治療では、抗PD-L1抗体分子の投与を、感染症に対する自然宿主免疫防御を刺激することに加えて、またはその代わりに、従来の治療と組み合わせることができる。感染症に対する自然宿主免疫防御には、それだけに限らないが、炎症、発熱、抗体媒介宿主防御、リンホカイン分泌および細胞傷害性T細胞を含むTリンパ球媒介宿主防御(特にウイルス感染中)、補体媒介溶解ならびにオプソニン化(促進された食作用)および食作用が含まれる。抗PD-L1抗体分子が機能傷害性T細胞を再活性化する能力は、慢性感染症、特に細胞性免疫が完全な回復にとって重要であるものを治療するのに有用となるだろう。
【0453】
前の節で論じられる腫瘍への適用と同様に、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物および製剤は、単独で、または第2の治療剤もしくは様式と組み合わせて、またはアジュバントとして、病原体もしくは毒素に対する免疫応答を刺激するためのワクチンと組み合わせて使用することができる。この治療アプローチが特に有用であってもよい病原体の例としては、現在有効なワクチンがない病原体、または従来のワクチンが完全に有効ではない病原体が挙げられる。これらには、それだけに限らないが、HIV、肝炎(A、BおよびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア(Giardia)、マラリア、リーシュマニア(Leishmania)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が含まれる。抗PD-L1抗体分子療法は、感染の過程で変化した抗原を提示する、HIVなどの病原体による確立された感染症に対しても有用である。
【0454】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤が、感染症を有する、または感染症を有するリスクがある対象を治療するために使用される。感染症は、例えば、宿主内で複製する外来生物または病原体の宿主における存在に起因する疾患または状態を指す。感染症は、典型的には、感染性生物または病原体による正常な粘膜または他の組織バリアの決壊を伴う。感染症を有する対象は、対象の体内に客観的に測定可能な感染性生物または病原体が存在している対象である。感染症を有するリスクがある対象は、感染症を発症する素因がある対象である。このような対象は、例えば、感染性生物または病原体への既知のまたは疑わしい曝露を有する対象を含むことができる。感染症を有するリスクがある対象はまた、感染性生物または病原体に対する免疫応答を開始する能力の障害に関連する状態を有する対象、例えば、先天性または後天性免疫不全を有する対象、放射線療法または化学療法を受けている対象、熱傷を有する対象、外傷を有する対象、外科手術または他の侵襲的な医学的もしくは歯科的処置を受けている対象も含むことができる。
【0455】
感染症は、関与する感染性生物または病原体のカテゴリーに基づいて、細菌、ウイルス、真菌または寄生生物に大まかに分類される。他のあまり一般的ではないタイプの感染症には、例えば、リケッチア、マイコプラズマ、ならびにスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)およびプリオン病(例えば、クールー病およびクロイツフェルト・ヤコブ病)を引き起こす病原体が関与する感染症が含まれる。感染症を引き起こす細菌、ウイルス、真菌および寄生生物の例は、当技術分野で周知である。感染症は、急性、亜急性、慢性または潜伏性であることができ、限局性または全身性であることができる。さらに、感染症は、宿主における感染性生物または病原体のライフサイクルの少なくとも1段階の間、主に細胞内または細胞外にあることができる。
【0456】
ウイルス
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤が、ウイルス感染症またはウイルスに関連する疾患を治療するために使用される。
【0457】
ヒトで感染症を引き起こすことが分かっているウイルスの例としては、それだけに限らないが、以下が挙げられる:レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV-1(HTLV-IIIとも呼ばれる)、HIV-2、LAVまたはHTLV-III/LAV、またはHIV-III、およびHIV-LPなどの他の分離株などのヒト免疫不全ウイルス);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス)、フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンタウイルス、ブニヤウイルス(bunga viruses)、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルス(orbiviurses)およびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvoviridae)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(Poxyiridae)(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);および未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病因物質、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトであると考えられている)、非A型、非B型肝炎の病原体(クラス1=腸管伝播性;クラス2=非経口伝播性(すなわち、C型肝炎));ノーウォークウイルスおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルス)。本明細書の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例としては、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス(cornovirus)、呼吸器合抱体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。
【0458】
ウイルスの原因に起因する感染症の場合、抗PD-L1抗体分子を、ウイルス感染症を治療するための標準的な療法の施用と同時に、施用前に、または施用後に施用することによって組み合わせることができる。このような標準的な療法は、ウイルスの種類によって異なるが、ほとんど全ての場合、ウイルスに特異的な抗体(例えば、IgA、IgG)を含有するヒト血清の投与が有効となることができる。
【0459】
方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例としては、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス(cornovirus)、呼吸器合抱体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、およびエボラウイルス(例えば、BDBV、EBOV、RESTV、SUDVおよびTAFV)が挙げられる。
【0460】
一実施形態では、感染症がインフルエンザ感染症である。インフルエンザ感染症は、発熱、咳、筋肉痛、頭痛および倦怠感をもたらすことができ、通常、季節的流行で発生する。インフルエンザは、脳炎、心筋心膜炎、グッドパスチャー症候群およびライ症候群などのいくつかの感染後障害にも関連している。インフルエンザ感染症はまた、正常な肺の抗菌防御を抑制し、結果としてインフルエンザから回復した患者は細菌性肺炎を発症するリスクが高くなる。インフルエンザウイルスの表面タンパク質は、突然変異および組換えに起因する顕著な抗原変異を示す。したがって、細胞溶解性Tリンパ球が、感染後にウイルスを排除するための宿主の主要な媒体となる。インフルエンザは、A、BおよびCの3つの主要なタイプに分類される。インフルエンザA型は、ヒトと他の多くの動物(例えば、ブタ、ウマ、鳥類およびアザラシ)の両方に感染するという点で独特であり、パンデミックインフルエンザの主因である。また、細胞が2つの異なるインフルエンザA型株に感染すると、複製中に2つの親ウイルス型のセグメント化されたRNAゲノムが混合してハイブリッドレプリカントが作成され、新たな流行株が生じる。インフルエンザB型は動物で複製しないため、遺伝的変異が少なく、インフルエンザC型はただ1つの血清型を有する。
【0461】
ほとんどの従来の療法は、感染症に起因する症状の緩和であり、宿主の免疫応答が実際に疾患を取り除く。しかしながら、一定の株(例えば、インフルエンザA型)は、より深刻な病気および死を引き起こすことができる。インフルエンザA型を、ウイルス複製を阻害する環状アミン阻害剤アマンタジンおよびリマンタジンの投与によって、臨床的にも予防的にも治療してもよい。しかしながら、これらの薬物の臨床的有用性は、有害反応の発生率が比較的高く、抗ウイルススペクトルが狭く(インフルエンザA型のみ)、ウイルスが耐性になる傾向があるために制限される。主要なインフルエンザ表面タンパク質である血球凝集素およびノイラミニダーゼに対する血清IgG抗体の投与が肺感染症を防ぐことができるが、粘膜IgAが上気道および気管の感染症を防ぐために必要である。インフルエンザの現在の最も効果的な治療は、ホルマリンまたはβ-プロピオラクトンで不活化されたウイルスの投与によるワクチン接種である。
【0462】
別の実施形態では、感染症が、肝炎感染症、例えば、B型肝炎またはC型肝炎感染症である。
【0463】
B型肝炎ウイルス(HB-V)は、最も感染性の既知の血液媒介性病原体である。これは、急性および慢性肝炎、および肝細胞癌、ならびに生涯にわたる慢性感染症の主な原因である。感染後、ウイルスは肝細胞で複製し、その後、表面抗原HBsAgも放出する。血清中の過剰なレベルのHBsAgの検出が、B型肝炎感染症を診断するための標準的な方法として使用される。急性感染症は回復してもよい、または慢性持続感染症に発展することができる。慢性HBVの現在の治療には、肝細胞の表面上でのクラスIヒト白血球抗原(HLA)の発現を増加させ、それによって細胞傷害性Tリンパ球による認識を促進するα-インターフェロンが含まれる。さらに、ヌクレオシド類似体であるガンシクロビル、ファムシクロビルおよびラミブジンも、臨床試験でHBV感染症の治療にある程度の有効性を示している。HBVの追加の治療には、ペグ化α-インターフェロン、アデホビル(adenfovir)、エンテカビルおよびテルビブジンが含まれる。受動免疫は、抗HBsAg血清抗体の親投与によって付与することができるが、不活化または組換えHBsAgによるワクチン接種も感染症に対する耐性を付与しする。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、B型肝炎感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0464】
C型肝炎ウイルス(HC-V)感染症は、慢性型の肝炎を引き起こし、肝硬変をもたらしてもよい。症状はB型肝炎に起因する感染症に似ているが、HB-Vとは明らかに対照的に、感染した宿主は10~20年間無症候性であることができる。抗PD-L1抗体分子は、単剤療法として投与することができる、またはC型肝炎感染の標準治療と組み合わせることができる。例えば、抗PD-L1抗体分子は、Sovaldi(ソホスブビル)、Olysio(シメプレビル)に加えてリバビリンまたはペグ化インターフェロンのうちの1つ以上と共に投与することができる。Incivek(テラプレビル)またはVictrelis(ボセプレビル)に加えてリバビリンおよびペグ化インターフェロンを含むレジメンも承認されているが、副作用の増加および治療期間の延長を伴うので、好ましいレジメンとは見なされていない。
【0465】
HC-V感染症の従来の治療には、α-インターフェロンとリバビリンの組み合わせの投与が含まれる。HC-V感染症の有望な潜在的療法は、プロテアーゼ阻害剤テラプレビル(VX-960)である。追加の治療には、抗PD-1抗体(MDX-1106、Medarex)、バビツキシマブ(B2-糖タンパク質I依存的にアニオン性リン脂質ホスファチジルセリンに結合する抗体、Peregrine Pharmaceuticals)、抗HPVウイルスコートタンパク質E2抗体(例えば、ATL 6865-Ab68+Ab65、XTL Pharmaceuticals)およびCivacir(登録商標)(ポリクローナル抗HCVヒト免疫グロブリン)が含まれる。本発明の抗PD-L1抗体を、治療上の利点のために、C型肝炎感染症のこれらの治療のうちの1つ以上と組み合わせてもよい。C型肝炎感染を特異的に治療するために抗PD-L1抗体分子と組み合わせて使用してもよいプロテアーゼ、ポリメラーゼおよびNS5A阻害剤には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2013/0045202号明細書に記載されるものが含まれる。
【0466】
別の実施形態では、感染症が麻疹ウイルスである。9~11日間のインキュベーション後、麻疹ウイルスに感染した宿主は、発熱、咳、鼻感冒および結膜炎を発症する。1~2日以内に、紅斑性の斑状丘疹状皮疹が発症し、急速に全身に広がる。感染症が細胞性免疫も抑制するため、宿主は中耳炎、肺炎および麻疹後脳脊髄炎を含む細菌重複感染症を発症するリスクが高くなる。急性感染症は、特に栄養失調の青年において、重大な罹患率および死亡率に関連している。
【0467】
麻疹の治療には、プールされたヒトIgGの受動投与が含まれ、これにより、曝露後1週間までに投与された場合でさえも、非免疫対象の感染を防ぐことができる。ただし、弱毒生ウイルスによる事前の予防接種が最も有効な治療であり、免疫化された人の95%超で疾患を予防する。このウイルスにある血清型は1つであるので、1回の予防接種または感染が、典型的には、その後の感染から生命を保護する。
【0468】
感染した宿主のごく一部では、麻疹が、中枢神経系の持続的感染に起因する慢性進行性神経障害であるSSPEに発展することができる。SSPEは、ビリオン集合および出芽を妨げる欠陥を有する麻疹ウイルスのクローン変異体によって引き起こされる。これらの患者にとっては、ウイルスクリアランスを促進するために、抗PD-L1抗体分子によるT細胞の再活性化が望ましいだろう。
【0469】
別の実施形態では、感染症がHIVである。HIVは、Tリンパ球、単球マクロファージ、濾胞樹状細胞、ランゲルハンス細胞を含むCD4+細胞を攻撃し、CD4+ヘルパー/インデューサー細胞が枯渇する。結果として、宿主は細胞性免疫の深刻な欠陥を獲得する。HIVに感染すると、個体の少なくとも50%がAIDSとなり、性的接触、感染した血液または血液製剤の投与、感染した精液による人工授精、血液を含有する針または注射器への曝露、および出産中の感染した母親から乳児への伝播を介して伝播される。
【0470】
HIVに感染した宿主は、無症候性であってもよい、または単核球症に似た急性疾患(発熱、頭痛、喉の痛み、倦怠感および発疹)を発症してもよい。症状は、持続性の発熱、寝汗、体重減少、原因不明の下痢、湿疹、乾癬、脂漏性皮膚炎、帯状疱疹、口腔カンジダ症および口腔毛状白板症を含む進行性免疫機能障害に進行することができる。多くの寄生生物による日和見感染症は、感染症がAIDSに発展する患者で一般的である。
【0471】
HIVの治療には、ヌクレオシド類似体、単独で、またはジダノシンもしくはザルシタビンと組み合わせたジドブジン(AST)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ラミドブジン、スタブジン;デラビルジン、ネビラピン、ロビリドなどの逆転写阻害剤、ならびにサキナビル、リトナビル、インジナビルおよびネルフィナビルなどのプロテイナーゼ阻害剤が含まれる。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、HIV感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0472】
別の実施形態では、感染症がサイトメガロウイルス(CMV)である。CMV感染症は、通常、持続性、潜伏性および再発性の感染症に関連している。CMVは、単球および顆粒球-単球前駆細胞に感染し、潜伏し続ける。CMVの臨床症状には、単核球症様症状(すなわち、発熱、腺の腫れ、倦怠感)、および抗生物質に対するアレルギー性皮膚発疹を発症する傾向が含まれる。ウイルスは直接接触によって広がる。ウイルスは、尿、唾液、精液に放出され、程度は少ないが、他の体液にも放出される。感染した母親から胎児または新生児に、ならびに輸血および臓器移植によっても伝播が起こることができる。CMV感染症は、非特異的マイトジェンおよび特異的CMV抗原に対する芽球形成反応の障害、細胞傷害能力の減少、ならびにCD4+リンパ球のCD8リンパ球数の上昇を特徴とする細胞性免疫の一般的な障害をもたらす。
【0473】
CMV感染症の治療には、抗ウイルス薬ガンシクロビル、ホスカルネットおよびシドビルが含まれるが、これらの薬物は、典型的には、免疫不全患者にのみ処方される。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、サイトメガロウイルス感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0474】
別の実施形態では、感染症がエプスタインバーウイルス(EBV)である。EBVは、持続性および潜伏性の感染症を確立し、B細胞を主に攻撃する。EBVによる感染は、発熱、しばしば滲出液を伴う喉の痛み、全身性リンパ節腫脹および脾腫を含む感染性単核球症の臨床状態をもたらす。肝炎も存在し、黄疸に発展することができる。
【0475】
EBV感染症の典型的な治療は症状の緩和であるが、EBVはバーキットリンパ腫および上咽頭がんなどの一定のがんの発症に関連している。したがって、これらの合併症が生じる前にウイルス感染症を排除することが非常に有益となるだろう。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、エプスタインバーウイルス感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0476】
別の実施形態では、感染症が単純ヘルペスウイルス(HSV)である。HSVは、感染した宿主との直接接触によって伝播される。直接感染は無症候性であってもよいが、典型的には感染性粒子を含有する疱疹をもたらしてもよい。この疾患は、疾患の活動期間のサイクルとして現れ、ウイルスがその後の発生のために神経節に潜伏感染するので、病原が現れたり、消失したりする。病変は、顔、生殖器、眼および/または手にあってもよい。場合によっては、感染症が脳炎を引き起こすこともできる。
【0477】
ヘルペス感染症の治療は、主に症候性の発生を解決することを目的としており、アシクロビル(例えば、Zovirax(登録商標))、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビルなどの全身性抗ウイルス薬、ならびにドコサノール(Abreva(登録商標))、トロマンタジンおよびジラクチンなどの局所薬を含む。ヘルペスの潜伏感染症の除去は、臨床的に非常に有益となるだろう。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、ヘルペスウイルス感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0478】
別の実施形態では、感染症がヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV-1、HTLV-2)である。HTLVは、性的接触、授乳または汚染された血液への曝露を介して伝播される。このウイルスは、Th1細胞と呼ばれるTH細胞のサブセットを活性化し、Th1関連サイトカイン(例えば、IFN-γおよびTNF-α)の過剰増殖および過剰産生をもたらす。これにより、Th2リンパ球が抑制され、Th2サイトカイン産生(例えば、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13)が減少し、感染した宿主が、クリアランスのためにTh2依存性応答を必要とする侵入生物(例えば、寄生生物感染、粘膜および液性抗体の産生)に対する十分な免疫応答を開始する能力が低下する。
【0479】
HTLV感染症は日和見感染症を引き起こし、気管支拡張症、皮膚炎ならびにスタフィロコッカス属(Staphylococcus)種およびストロンギロイデス属(Strongyloides)種による重複感染をもたらし、多微生物性敗血症による死につながる。HTLV感染症は、成人T細胞白血病/リンパ腫およびHAM/TSPとして知られている進行性脱髄性上位運動ニューロン疾患を直接もたらすこともできる。HTLV潜伏感染症の除去は、臨床的に非常に有益となるだろう。抗PD-L1抗体分子を、治療上の利点のために、HTLV感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0480】
別の実施形態では、感染症がヒトパピローマウイルス(HPV)である。HPVはケラチノサイトに主に発症し、皮膚と生殖器の2つの形態で発生する。伝播は、直接接触および/または性的活動を通して起こると考えられている。皮膚と生殖器の両方のHPV感染症は、疣贅および潜伏感染症、ならびに時には再発性感染症をもたらすことができ、これらは、症状を制御し、疣贅の出現を阻止する宿主免疫によって制御されるが、宿主は感染症を他者に伝播させることができるままである。
【0481】
HPVによる感染は、子宮頸がん、肛門がん、外陰がん、陰茎がんおよび口腔咽頭(oropharynial)がんなどの一定のがんをもたらすこともできる。HPV感染症の既知の治療法はないが、現在の治療は、免疫系を刺激して患部を攻撃するイミキモドの局所施用である。HPV潜伏感染症の除去は、臨床的に非常に有益となるだろう。本発明の抗PD-L1抗体を、治療上の利点のために、HPV感染症の従来の治療と組み合わせてもよい。
【0482】
別の実施形態では、感染症がエボラウイルス(EBOV)である。EBOVは、エボラウイルス属の中の5つの既知のウイルスの1つである。EBOVは、エボラウイルス疾患(EVD)として知られている、ヒトおよび哺乳動物における重度の、しばしば致死的な出血熱を引き起こす。伝播は、感染した患者の血液、分泌物、臓器または他の体液(boldily fluid)との接触を通して起こる。現在、証明された治療もワクチンもない。
【0483】
細菌
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤が、細菌感染症または細菌に関連する疾患を治療するために使用される。
【0484】
細菌には、グラム陰性菌とグラム陽性菌の両方が含まれる。グラム陽性菌の例としては、それだけに限らないが、パスツレラ属(Pasteurella)種、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)種およびストレプトコッカス属(Streptococcus)種が含まれる。グラム陰性菌の例としては、それだけに限らないが、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas )種およびサルモネラ属(Salmonella)種が含まれる。感染性細菌の具体的な例としては、それだけに限らないが、以下が挙げられる:ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリウム属(Mycobacteria)種(例えば、結核菌(M.tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(M. gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)(A群レンサ球菌(Group A Streptococcus))、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群レンサ球菌(Group B Streptococcus))、ストレプトコッカス属(Streptococcus)(ビリダンス群)、フェカリス菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)(嫌気性種)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属(Campylobacter)種、エンテロコッカス属(Enterococcus)種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス属(Bacteroides)種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、レプトスピラ属(Leptospira)、らい菌(Mycobacterium leprae)、リケッチア属(Rickettsia)およびアクチノマイセス・イスラエリイ(Actinomyces israelii)。本明細書の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例としては、クラミジア、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、ニューモノコッカス(pneumonococci)、髄膜炎菌およびコノコッカス(conococci)、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス症、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症およびライム病(Lymes disease)菌が挙げられる。
【0485】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例としては、梅毒、クラミジア、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、ニューモノコッカス(pneumonococci)、髄膜球菌およびコノコッカス(conococci)、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス症、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症およびライム病(Lymes disease)菌が挙げられる。抗PD-L1抗体分子を、前記感染症の既存の治療様式と組み合わせて使用することができる。例えば、梅毒の治療には、ペニシリン(例えば、ペニシリンG)、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、セフトリアキソンおよびアジスロマイシンが含まれる。
【0486】
ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)によって引き起こされるライム病は、ダニ咬傷を介してヒトに伝播する。この疾患は、最初は限局性発疹として現れ、これに倦怠感、発熱、頭痛、肩こりおよび関節痛を含むインフルエンザ様症状が続く。後の症状は、移動性および多関節性関節炎、脳神経麻痺および神経根症を伴う神経学的および心臓の合併症、心筋炎ならびに不整脈を含むことができる。ライム病のいくつかの症例は持続し、第三期梅毒に類似した不可逆的損傷をもたらす。ライム病の現在の療法には、主に抗生物質の投与が含まれる。抗生物質耐性菌株は、ヒドロキシクロロキンまたはメトトレキサートで治療してもよい。神経因性疼痛を伴う抗生物質不応性患者は、ガバペンチンで治療することができる。ミノサイクリンが、神経学的または他の炎症性症状を伴う後期/慢性ライム病に役立ってもよい。
【0487】
ボレリア・レクレンチス(B.recurentis)、ボレリア・ヘルムシイ(B.hermsii)、ボレリア・ツリカタエ(B.turicatae)、ボレリア・パリケリ(B.parikeri)、ボレリア・ヒスパニカ(B.hispanica)、ボレリア・ダットニイ(B.duttonii)およびボレリア・ペルシカ(B.persica)から生じるものなどのボレリア症の他の形態、ならびにレプトスピラ症(例えば、レプトスピラ・インテロガン(L.interrogans))は、典型的には、血中力価が肝内閉塞を引き起こす濃度に達しない限り、自然に回復する。
【0488】
真菌および寄生生物
一定の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子、組成物または製剤が、真菌もしくは寄生生物感染症または真菌もしくは寄生生物に関連する疾患を治療するために使用される。
【0489】
真菌の例としては、以下が挙げられる:アスペルギルス属(Aspergillus)種、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、他のカンジダ属(Candida)種、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、ノカルジア属(Nocardia)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)。本明細書の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例にとしては、カンジダ属(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラタ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)等)、ケカビ目(Mucorales)の属(ムコール(mucor)、アブシディア(absidia)、リゾフス(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)およびヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)が挙げられる。
【0490】
寄生生物には、それだけに限らないが、血液媒介および/または組織寄生生物、例えば、ネズミバベシア(Babesia microti)、多型バベシア(Babesia divergens)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、リーシュマニア属(Leishmania)種、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、およびトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)、およびローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)(アフリカ睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)(シャーガス病)、およびトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、扁形動物、回虫が含まれる。本明細書の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性寄生生物のいくつかの例としては、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア(Babesia microti)、ブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondi)、およびブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)が挙げられる。
【0491】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例にとしては、カンジダ属(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラタ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)等)、ケカビ目(Mucorales)の属(ムコール(mucor)、アブシディア(absidia)、リゾフス(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)およびヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)が挙げられる。
【0492】
本明細書に記載される方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性寄生生物のいくつかの例としては、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア(Babesia microti)、ブルセイトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondi)、およびブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)が挙げられる。
【0493】
核酸
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、本明細書に記載される核酸によってコードすることができる。核酸を使用して、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子を作製することができる。
【0494】
一定の実施形態では、核酸が、本明細書に記載される、抗PD-L1抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0495】
例えば、本開示は、本明細書に開示される抗体分子のうちの1つ以上、例えば、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1の抗体から選択される抗PD-L1抗体分子の、重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸を特徴とする。核酸は、本明細書の表のアミノ酸配列のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、または米国特許出願公開第第2016/0108123号明細書の表1に提供される配列と3、6、15、30もしくは45ヌクレオチド以下異なる配列)を含むことができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に要約される、BAP058-hum01、BAP058-hum02、BAP058-hum03、BAP058-hum04、BAP058-hum05、BAP058-hum06、BAP058-hum07、BAP058-hum08、BAP058-hum09、BAP058-hum10、BAP058-hum11、BAP058-hum12、BAP058-hum13、BAP058-hum14、BAP058-hum15、BAP058-hum16、BAP058-hum17、BAP058-Clone-K、BAP058-Clone-L、BAP058-Clone-M、BAP058-Clone-NまたはBAP058-Clone-Oのうちの1つ以上から選択される抗PD-L1抗体分子の、重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸、またはこれと実質的に同一の配列が本明細書で開示される。
【0496】
一定の実施形態では、核酸が、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ以上の置換、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸が、表1に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ以上の置換、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸が、表1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ以上の置換、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。
【0497】
一定の実施形態では、核酸が、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示されるヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列、これと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または本明細書に記載されるストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸が、表1に示されるヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または本明細書に記載されるストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含むことができる。一定の実施形態では、核酸が、表1に示されるヌクレオチド配列を有する重鎖および軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRをコードするヌクレオチド配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または本明細書に記載されるストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含むことができる。本明細書に開示される核酸は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはこれらの類似体を含む。ポリヌクレオチドは一本鎖であっても二本鎖であってもよく、一本鎖である場合、コード鎖であっても非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに修飾されてもよい。核酸は、組換えポリヌクレオチド、またはゲノム、cDNA、半合成もしくは合成起源のポリヌクレオチドであってもよく、これらは、天然には存在しない、または非天然配列で別のポリヌクレオチドに連結されている。
【0498】
一定の実施形態では、抗PD-L1抗体分子をコードするヌクレオチド配列が、コドン最適化されている。
【0499】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、抗PD-L1抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が開示される。例えば、本開示は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1による抗PD-L1抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸、またはこれと実質的に同一の配列を提供する。例えば、核酸は、表1による抗PD-L1抗体分子をコードするヌクレオチド配列、またはこのヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、または上記ヌクレオチド配列と3、6、15、30もしくは45ヌクレオチド以下異なる配列)を含むことができる。
【0500】
一定の実施形態では、核酸が、表1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDR、または超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ、2つ、3つもしくはそれ以上の置換、挿入もしくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。
【0501】
一定の実施形態では、核酸が、表1に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つもしくは3つのCDR、または超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ、2つ、3つもしくはそれ以上の置換、挿入もしくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。
【0502】
いくつかの実施形態では、核酸が、表1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと少なくとも約85%、90%、95%、99%もしくはそれ以上同一である、および/または1つ、2つ、3つもしくはそれ以上の置換、挿入もしくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を含むことができる。
【0503】
いくつかの実施形態では、核酸が、単離されている、または組換えである。
【0504】
本明細書に記載される核酸は、本明細書により詳細に記載されるように、単一のベクターに存在してもよい、または同じ宿主細胞もしくは別個の宿主細胞に存在する別個のベクターに存在してもよい。
【0505】
ベクターおよび宿主細胞
本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子は、本明細書に記載される核酸を含む宿主細胞およびベクターを使用して作製することができる。核酸は、単一のベクターに存在してもよい、または同じ宿主細胞もしくは別個の宿主細胞に存在する別個のベクターに存在してもよい。
【0506】
一実施形態では、ベクターが、本明細書に記載される抗体分子をコードするヌクレオチドを含む。一実施形態では、ベクターが、本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含む。ベクターには、それだけに限らないが、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージまたは酵母人工染色体(YAC)が含まれる。
【0507】
多数のベクター系を使用することができる。例えば、あるクラスのベクターは、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTVもしくはMOMLV)またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルスおよびフラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNA要素を利用する。
【0508】
さらに、DNAを染色体に安定に組み込んだ細胞を、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択してもよい。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対するプロトトロピー、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅などの重金属に対する耐性などを提供してもよい。選択可能なマーカー遺伝子を、発現させるDNA配列に直接連結する、または同時形質転換によって同じ細胞に導入することができる。mRNAの最適な合成に、追加の要素が必要であってもよい。これらの要素は、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルを含んでもよい。
【0509】
いったん発現ベクターまたはDNA配列を含む構築物が発現用に調製されたら、発現ベクターを、適切な宿主細胞にトランスフェクトまたは導入してもよい。これを達成するために、例えば、プロトプラスト融合、カルシウムホスフェート沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクションまたは他の従来の技術などの様々な技術を使用してもよい。プロトプラスト融合の場合、細胞を培地で培養し、適切な活性についてスクリーニングする。得られたトランスフェクト細胞を培養し、産生された抗体分子を回収するための方法および条件は、当業者に既知であり、本説明に基づいて、使用される特定の発現ベクターおよび哺乳動物宿主細胞に応じて変更または最適化してもよい。
【0510】
一定の実施形態では、宿主細胞が、本明細書に記載される抗PD-L1抗体分子をコードする核酸を含む。他の実施形態では、宿主細胞が、抗PD-L1抗体分子をコードする核酸を含むように遺伝子操作される。
【0511】
一実施形態では、宿主細胞が、発現カセットを使用することによって遺伝子操作される。「expression cassette」(発現カセット)という句は、このような配列と適合性の宿主における遺伝子の発現に影響を及ぼすことができるヌクレオチド配列を指す。このようなカセットは、プロモーター、イントロンを伴うまたは伴わないオープンリーディングフレーム、および終結シグナルを含んでもよい。例えば、誘導性プロモーターなどの、発現をもたらすのに必要または有用な追加の因子を使用してもよい。一定の実施形態では、宿主細胞が、本明細書に記載されるベクターを含む。
【0512】
細胞は、それだけに限らないが、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞またはヒト細胞であることができる。適切な真核細胞には、それだけに限らないが、Vero細胞、HeLa細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞およびMDCKII細胞が含まれる。適切な昆虫細胞には、それだけに限らないが、Sf9細胞が含まれる。
【0513】
いくつかの実施形態では、宿主細胞が、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、または原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)である。例えば、哺乳動物細胞は、培養細胞または細胞株であることができる。例示的な哺乳動物細胞には、リンパ球細胞株(例えば、NSO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、卵母細胞、およびトランスジェニック動物からの細胞、例えば、乳腺上皮細胞が含まれる。
【0514】
本明細書の開示に従って使用することができる追加の抗体分子、組成物、方法、核酸およびキットは、その内容全体が参照により組み込まれる国際出願公開第WO2016/061142号パンフレットに記載されている。
いくつかの態様では、本開示は、以下の項に記載のものを特徴とする:
[項1]
対象のがんの治療において、3週間に1回、約1000mg~約1400mgの用量、または4週間に1回、約1400mg~約1900mgの用量で使用するための抗PD-L1抗体分子であって、
前記抗PD-L1抗体分子が、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
抗PD-L1抗体分子。
[項2]
対象のがんを治療する方法であって、3週間に1回、約1000mg~約1400mgの用量、または4週間に1回、約1400mg~約1900mgの用量で抗PD-L1抗体分子を前記対象に投与することを含み、
前記抗PD-L1抗体分子が、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
方法。
[項3]
前記抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1100mg~約1300mgの用量で使用される、上記項1に記載の使用のための抗体分子、または上記項2に記載の方法。
[項4]
前記抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1200mgの用量で使用される、上記項3に記載の使用のための抗体分子、または上記項3に記載の方法。
[項5]
前記抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1500mg~約1700mgの用量で使用される、上記項1に記載の使用のための抗体分子、または上記項2に記載の方法。
[項6]
前記抗PD-L1抗体分子が、4週間に1回、約1600mgの用量で使用される、上記項5に記載の使用のための抗体分子、または上記項5に記載の方法。
[項7]
前記抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号616のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項1または3~6のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~6のいずれかに記載の方法。
[項8]
前記抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項1または3~7のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~7のいずれかに記載の方法。
[項9]
前記抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号624のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項1または3~6のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~6のいずれかに記載の方法。
[項10]
前記抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号626のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項1、3~6または9のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~6または9のいずれかに記載の方法。
[項11]
前記がんが、固形腫瘍、血液がん、またはその転移性病変である、上記項1または3~10のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~10のいずれかに記載の方法。
[項12]
前記がんが、骨がん、皮膚がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせから選択される、上記項1または3~11のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~11のいずれかに記載の方法。
[項13]
前記骨がんが脊索腫である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項14]
前記皮膚がんが、黒色腫またはメルケル細胞癌である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項15]
前記黒色腫が皮膚黒色腫である、上記項14に記載の使用のための抗体分子、または上記項14に記載の方法。
[項16]
前記乳がんが、乳癌またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項17]
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項18]
前記結腸直腸がんが、再発性結腸直腸がんまたは転移性結腸直腸がんから選択される、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項19]
前記結腸直腸がんが、マイクロサテライト不安定性結腸直腸がん、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん、ミスマッチ修復正常型結腸直腸がん、またはミスマッチ修復欠損型結腸直腸がんから選択される、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項20]
前記肝臓がんが肝細胞癌である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項21]
前記子宮頸がんが子宮頸部の扁平上皮癌である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項22]
前記甲状腺がんが甲状腺未分化がん(ATC)である、上記項12に記載の使用のための抗体分子、または上記項12に記載の方法。
[項23]
前記抗PD-L1抗体分子が、第2の治療剤または様式と組み合わせて使用される、上記項1または3~22のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~22のいずれかに記載の方法。
[項24]
前記抗PD-L1抗体分子がPD-1阻害剤と組み合わせて使用される、上記項1または3~23のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~23のいずれかに記載の方法。
[項25]
前記PD-1阻害剤が、PDR001、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、REGN2810、PF-06801591、BGB-A317、INCHR1210、TSR-042またはAMP-224から選択される、上記項24に記載の使用のための抗体分子、または上記項24に記載の方法。
[項26]
前記PD-1阻害剤が、3週間に1回、約300mgの用量、または4週間に1回、約400mgの用量で使用される、上記項24または25に記載の使用のための抗体分子、または上記項24または25に記載の方法。
[項27]
前記対象が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)においてPD-L1発現を有する、または有すると特定されている、上記項1または3~26のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~26のいずれかに記載の方法。
[項28]
前記対象が、PD-L1を発現するがんを有する、または有すると特定されている、上記項1または3~27のいずれかに記載の使用のための抗体分子、または上記項2~27のいずれかに記載の方法。
[項29]
対象のがんの治療において、3週間に1回、約1000mg~約1400mgの用量、または4週間に1回、約1400mg~約1900mgの用量で使用するための抗PD-L1抗体分子を含む医薬組成物または用量製剤であって、
前記抗PD-L1抗体分子は、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
医薬組成物または用量製剤。
[項30]
前記用量が、3週間に1回、約1100mg~約1300mgである、上記項29に記載の医薬組成物または用量製剤。
[項31]
前記用量が、4週間に1回、約1500mg~約1700mgである、上記項29に記載の医薬組成物または用量製剤。
[項32]
前記抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号616のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項29~31のいずれかに記載の医薬組成物または用量製剤。
[項33]
前記抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項29~32のいずれかに記載の医薬組成物または用量製剤。
[項34]
前記抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号624のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項29~31のいずれかに記載の医薬組成物または用量製剤。
[項35]
前記抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号626のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項29~31または34のいずれかに記載の医薬組成物または用量製剤。
[項36]
がんを治療するために使用するための、上記項29~35のいずれかに記載の医薬組成物または用量製剤。
[項37]
前記がんが、固形腫瘍、血液がん、またはその転移性病変である、上記項36に記載の医薬組成物または用量製剤。
[項38]
前記がんが、骨がん、皮膚がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、甲状腺がん、またはこれらの組み合わせから選択される、上記項36または37に記載の医薬組成物または用量製剤。
[項39]
対象のがんを治療する方法であって、前記対象に抗PD-L1抗体分子を、前記対象からの血清または血清試料中の可溶性PD-L1の50%以上が前記抗PD-L1抗体分子によって結合される用量または投与スケジュールで投与することを含む、方法。
[項40]
前記投与スケジュールが、前記対象からの血清または血清試料中の可溶性PD-L1の60%以上を、前記抗PD-L1抗体分子によって結合させる、上記項39に記載の方法。
[項41]
前記投与スケジュールが、前記対象からの血清、または血清試料中の可溶性PD-L1の70%以上を、前記抗PD-L1抗体分子によって結合させる、上記項39または40に記載の方法。
[項42]
前記抗PD-L1抗体分子が、配列番号601のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号602のVHCDR2アミノ酸配列、および配列番号603のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と;配列番号609のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号610のVLCDR2アミノ酸配列、および配列番号611のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、上記項39~41のいずれかに記載の方法。
[項43]
前記抗体分子が、配列番号606のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号616のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項39~42のいずれかに記載の方法。
[項44]
前記抗体分子が、配列番号608のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号618のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項39~43のいずれかに記載の方法。
[項45]
前記抗体分子が、配列番号620のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号624のアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記項39~42のいずれかに記載の方法。
[項46]
前記抗体分子が、配列番号622のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号626のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項39~42または45のいずれかに記載の方法。
[項47]
前記抗PD-L1抗体分子が、3週間に1回、約1000mg~約1400mgの用量、または4週間に1回、約1400mg~約1900mgの用量で投与される、上記項39~46のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0515】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために示されるが、その範囲を制限することを決して意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。
【0516】
実施例1:例示的な抗PD-L1抗体の薬物動態および薬力学
薬物動態(Pk)パラメータを、用量拡大試験で、FAZ053を投与されたヒト対象から収集した試料の血清濃度-時間プロファイルから計算した。試料を、3週間に1回(Q3W)、80mg、240mg、800mg、1200mgまたは1600mgの用量および6週間に1回(Q6W)、800mg、1200mgまたは1600mgの用量で静脈内注入によってFAZ053を投与された対象から分析した。Phoenix 6.4(Pharsight、Mountain View、CA)を使用して、ノンコンパートメント解析(NCA)を実施した。LC-MS/MSを使用して血清PK試料を分析した。アッセイの定量限界(LOQ)は0.25μg/mLであった。pKパラメータの要約を表13に示す。
【0517】
【表13-1】
【表13-2】
【0518】
80mg、240mg、800mg、1200mgおよび1600mg Q3Wならびに800mg、1200mgおよび1600mg Q6Wの用量レベルでの静脈内注入によるFAZ053の投与後、最大血清濃度(Cmax)は一般に注入の終了後に生じた(図1A図1B)。PKの変動は低~中程度であった;PKパラメータについての対象間変動(CV%幾何平均)は、Cmax(C1D1)については14.7~59.5%、AUC0~504h(C1D1)では8.9~52.1%の範囲であった。曝露におけるほぼ用量に比例した増加(C1D1 AUCtauおよびCmax)は、80mgから1600mgのQ3W、および800mgから1600mgのQ6Wに観察された。Q3W投与でおよそ1.5倍の蓄積が観察され;Q6W投与で最小の蓄積が観察された。
【0519】
実施例2:抗PD-L1抗体分子への可溶性PD-L1の結合
PD-L1は、広範囲の腫瘍で発現される膜結合タンパク質である。PD-L1は、可溶型(sPD-L1)で体循環にも存在する。抗PD-L1抗体FAZ053のsPD-L1への結合を調査するために、実施例1に記載されるFAZ053を投与された対象から収集された総sPD-L1(遊離sPD-L1+sPD-L1-FAZ053複合体)試料を、ELISAベースの方法を使用して分析した。80mg、240mg、800mg、1200mgおよび1600mg Q3Wならびに800mg、1200mgおよび1600mg Q6Wの用量で静脈内注入によってFAZ053を投与された対象からの試料を分析した。
【0520】
投与前のベースラインでは、試料の約76%が、0.25ng/mLのLOQ未満であった。総sPD-L1濃度は、Q3Wで240mg以上の用量でFAZ053を投与すると増加し、FAZ053へのsPD-L1の結合を示唆している(図2)。Q3Wで800mg以上またはQ6Wで1600mg以上の用量は、投与間隔全体にわたって持続的な総sPD-L1を示した。Q6Wで1200mg以下の用量では、サイクル2の間に総sPD-L1が減少した。1サイクルの期間は21日であった。
【0521】
全体として、総sPD-L1データは、投与間隔全体にわたる持続的なsPD-L1結合のために、Q3Wで800mg以上またはQ6Wで1600mg以上の投与を支持する。ただし、総sPD-L1は、コホート間で高い個体間変動を示した。
【0522】
サイクル1の3週目の終わりの腫瘍における受容体占有率を推定するために、以下の式を使用した。
【数1】
【0523】
次いで、0.14nMのPD-L1に対する結合親和性(Kd)を、インビトロBiacoreアッセイを使用して決定した。腫瘍間質液中の薬物濃度を、全身濃度のB=30%であると仮定した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dengら(2016)MAbs;8(3):593~603参照)。C504hは、サイクル1の3週目(504時間)の終わりの血清中のFAZ053の濃度を表す。1200mgでは、3週目の終わりに予測される受容体占有率は、この試験の全ての患者で99%を超えると予測された(図3)。これらの結果は、FAZ053によるsPD-L1の結合による、総可溶性PD-L1(遊離sPD-L1+sPD-L1-FAZ053複合体)の増加を示している。
【0524】
1200mg Q3WのFAZ053の拡大推奨用量(RDE)を、sPD-L1結合(総sPD-L1)、試験の全ての対象についての腫瘍における99%超の受容体占有の予測、およびこの用量でのFAZ053の優れた全体的安定性に基づいて選択した。より低い800mg Q3Wの用量は同様の受容体占有を達成すると予測されたが、FAZ053の腫瘍浸透の可能性を高め、総sPD-L1で観察された変動性によって示唆された、一部の患者でのsPD-L1(抗原シンク)のより高い負荷の可能性を克服するために、1200mg Q3W用量をRDEとして選択した。
【0525】
次いで、FAZ053の1600mg Q4W RDEの用量を、1200mg Q3Wレジメンと同じ予測定常状態平均PK濃度(Cave)に基づいて選択した。FAZ053についての平均定常状態濃度(Cave)を、用量/(クリアランス(CL)*τ)(式中、τは投与頻度であり、CLはFAZ053の固有クリアランスである)から決定した。この式に基づいて、Cave=1200mg/(CL*3週間)=1600mg/(CL*4週間)である。さらに、1600mg Q3Wまでの用量が患者において安全であり、一般に忍容性が良好であることが示された。
【0526】
実施例3:ヒト対象における例示的な抗PD-L1抗体の抗腫瘍活性
進行中の臨床試験では、様々な腫瘍タイプの対象に、80mg、240mg、800mg、1200mgおよび1600mg Q3Wならびに800mg、1200mgおよび1600mg Q6Wの用量で、静脈内注入を介して、単剤療法としてFAZ053を投与した。対象は、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、脊索腫、子宮内膜がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん、肝細胞癌およびその他の形態のがんを有していた。800mg Q3Wおよび800mg Q6Wの用量レベルでの単剤療法としてのFAZ053治療で、RECIST v1.1で2つの確認された部分的応答が観察された(図4および図5)。
【0527】
参照による援用
本明細書に言及される全ての刊行物、特許および受託番号は、各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0528】
等価物
本発明の具体的な実施形態を論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を検討すると、本発明の多くの変形が当業者に明らかになるだろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、それらの等価物の全範囲、および明細書と共に、このような変形と共に参照することによって決定されるべきである。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
【配列表】
0007522040000001.app