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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ノロウイルス感染抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/745 20150101AFI20240717BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240717BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240717BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240717BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20240717BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K35/745
A61K35/74 A
A61P31/14
A23L33/135
A61K38/40
A23L33/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020559966
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047425
(87)【国際公開番号】W WO2020116511
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2018230345
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11175
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02622
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02623
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】若林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲哉
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181071(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168449(WO,A1)
【文献】特開2018-188436(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004949(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1885863(KR,B1)
【文献】国際公開第2017/217350(WO,A1)
【文献】LEE, H. et al.,Antiviral effect of vitamin A on norovirus infection via modulation of the gut microbiome,Sci Rep,2016年,Vol. 6, Article No. 25835,p. 1-9,ISSN 2045-2322
【文献】ZHENG, Y. et al.,Prospective clinical study of live combined bifidobacterium and lactobacillus tablets in the treatme,Chineese Journal of New Drugs,2017年,Vol. 26, No. 9,p.1034-1037,ISSN 1003-3734
【文献】織田浩嗣,ラクトフェリンの生体防御作用に関する研究,Milk Sience,2013年,Vol. 62, No. 3,p.105-109,ISSN 1343-0289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 38/00
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスから成る群から選択される一又は複数の細菌を有効成分とし、前記細菌が死菌である、ノロウイルス感染抑制用組成物。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622又はビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175である、請求項1に記載のノロウイルス感染抑制用組成物。
【請求項3】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623である、請求項1又は2に記載のノロウイルス感染抑制用組成物。
【請求項4】
ラクトフェリンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のノロウイルス感染抑制用組成物。
【請求項5】
医薬組成物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のノロウイルス感染抑制用組成物。
【請求項6】
飲食品組成物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のノロウイルス感染抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノロウイルス感染抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノロウイルス(Norovirus)は、ヒトに対して嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こさせ、秋口から春先に発症者が多くなる冬型の胃腸炎、食中毒の原因ウイルスとして知られている。ヒトへの感染経路は、主に経口感染であり、感染者の糞便や吐物のほか、これらに直接的又は間接的に汚染された物品類等が代表的な感染源であるとして知られている。
【0003】
ノロウイルス感染を防止するため研究は多方面でされている。
例えば、ラクトフェリンという、母乳や涙、汗、唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質が、ノロウイルスの感染を防止する効果を有することが報告されている。
詳細には、マウスにおいて、ラクトフェリンがノロウイルスの付着及び複製を阻害することによりノロウイルス感染を防止する効果を有することが報告されている(非特許文献1)。
このほかにも、ヒトにおいて、ラクトフェリンがノロウイルスに対する感染の防御効果を有することが知られている(特許文献1)。
さらに、ラクトフェリンが保育園児のノロウイルス感染性胃腸炎の発症抑制作用を有することが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
また、ビフィドバクテリウム属細菌やラクトバチルス属細菌の中の特定の細菌がノロウイルスに対する所定の効果を有することが知られている。
例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の一つである、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)に属する細菌が、マウスノロウイルスの増殖を阻害することが報告されている(非特許文献3)。
また、ラクトバチルス属細菌の一つである、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株を含む飲料を継続的に飲用することにより、ノロウイルス感染性胃腸炎の発症後の発熱が緩和されることが報告されている(非特許文献4)。
【0005】
しかし、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイが、ノロウイルスのヒトへの感染を抑制できることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-111658号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Biochem. Biophys. Res. Commun. 434 (2013) 791-796
【文献】日本補完代替医療学会誌 第9巻 第2号 2012年9月:121-128
【文献】Front Microbiol. 2016; 7: 864
【文献】Br. J. Nutr. 106, p549-556 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ノロウイルスがヒトに感染することを抑制できるノロウイルス感染抑制用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ビフィドバクテリウム属細菌の中の特定の細菌及びラクトバチルス属細菌の中の特定の細菌が、ノロウイルスのヒトへの感染を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌を有効成分とするノロウイルス感染抑制用組成物を提供する。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622又はビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、前記ラクトバチルス・パラカゼイが、ラクトバチルス・パラカゼイNITE BP-01633であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、ラクトフェリンを含むことを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、医薬組成物であることを好ましい態様としている。
また、前記組成物は、飲食品組成物であることを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノロウイルス感染抑制用組成物は、ノロウイルスがヒトに感染することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例における、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)によるMNV感染抑制の実験結果を示すグラフ。
図2】本発明の実施例における、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175)によるMNV感染抑制の実験結果を示すグラフ。
図3】本発明の実施例における、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)によるMNV感染抑制の実験結果を示すグラフ。
図4】本発明の実施例における、ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)によるMNV感染抑制の実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のノロウイルス感染抑制用組成物は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌を有効成分として含む。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは、単にビフィドバクテリウム・インファンティスと表記される場合がある。
ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカスは、単にラクトバチルス・ブルガリカスと表記される場合がある。
以下、本発明のノロウイルス感染抑制用組成物が有効成分として含む細菌を、「本発明の細菌」と記載することがある。
また、以下、同組成物を「本発明の組成物」と記載することがある。尚、本発明の組成物は混合物を含む概念であり、その成分が均一であるか不均一であるかを問わない。
【0014】
本発明の組成物の有効成分である本発明の細菌は、それを摂取したヒトがノロウイルスに感染することを抑制する作用を有する。本明細書では、「ヒトがノロウイルスに感染することを抑制すること」を「ノロウイルス感染抑制」と記載することがある。
【0015】
本発明のビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175又はビフィドバクテリウム・ブレーベATCC 15700であることが好ましい。
また、本発明のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623又はビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスBCCM LMG23728であることが好ましい。
また、本発明のラクトバチルス・ヘルベティカスは、ラクトバチルス・ヘルベティカスNITE BP-01671であることが好ましい。
また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02429、ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02431、ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02432又はビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02433であることが好ましい。
また、本発明のラクトバチルス・パラカゼイは、ラクトバチルス・パラカゼイNITE BP-01633であることが好ましい。
【0016】
NITE BP-02622の受託番号が付与された細菌は、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02622の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vと同一の細菌である。
FERM BP-11175の受託番号が付与された細菌は、2009年8月25日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター、〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274と同一の細菌である。
ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC 15700は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所:12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から入手することができる。
【0017】
NITE BP-02623の受託番号が付与された細菌は、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02623の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63と同一の細菌である。
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスBCCM LMG23728は、ベルギーの保存機関であるBelgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM)(住所:ベルギー、B-1000 ブリュッセル シアンス通り(ウェーテンスカップ通り)8)から入手することができる。
【0018】
NITE BP-01671の受託番号が付与された細菌は、2013年7月29日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-01671の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848と同一の細菌である。
【0019】
NITE BP-02429の受託番号が付与された細菌は、2017年2月21日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02429の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1092と同一の細菌である。
NITE BP-02431の受託番号が付与された細菌は、2017年2月21日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02431の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1319と同一の細菌である。
NITE BP-02432の受託番号が付与された細菌は、2017年2月21日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02432の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1868と同一の細菌である。
NITE BP-02433の受託番号が付与された細菌は、2017年2月21日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02433の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1870と同一の細菌である。
【0020】
NITE BP-01633の受託番号が付与された細菌は、2013年6月6日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託され、NITE P-01633の受託番号が付与され、2013年12月19日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、NITE BP-01633の受託番号が付与されたものである。同細菌は、ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849と同一の細菌である。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622は上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌であって、ヒトがその細菌を摂取したときに、そのヒトがノロウイルス感染抑制作用を発揮することができ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、その細菌には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
このことは、上記他の寄託菌についても同様である。
【0022】
本発明の組成物の有効成分は、上記のような細菌の菌体であってもよく、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、本発明の細菌は、本発明の効果を損なわない限り、培養後に加熱、及び凍結乾燥等の種々の追加操作を行うことができる。本発明の細菌は、生菌であっても死菌であってもよく、生菌及び死菌の両方であってもよい。死菌としては、加熱等により殺菌された死菌が挙げられ、細菌の破砕物であってもよい。
【0023】
細菌の培養物としては、細菌を培養した培地もしくはその濃縮物、乾燥物、又は、前記培地から、ヒトがノロウイルスに感染することを抑制し得る画分又は成分を分画又は精製したものが挙げられる。
【0024】
本発明の細菌は、同細菌を培養することにより容易に増殖させることができる。培養する方法は、前記細菌が増殖できる限り特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌(ビフィズス菌)又はラクトバチルス属細菌(乳酸菌)の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は25~50℃でよく、30~40℃であることが好ましい。また、培養は好ましくは嫌気条件下で行われ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0025】
培養に用いる培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌又はラクトバチルス属細菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
【0026】
本発明の組成物は、ラクトフェリンを含むことが好ましい。ラクトフェリンは、哺乳動物の乳由来のものでもよく、乳の処理物である脱脂乳やホエー等から常法によって分離されたものでもよく、微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から遺伝子操作によって産生された組換えラクトフェリンでもよく、合成ラクトフェリンでもよく、又はそれらの混合物でもよい。また、ラクトフェリンは、非グリコシル化又はグリコシル化されたものでもよい。
【0027】
本発明で用いるラクトフェリンとしては、例えば、金属飽和型ラクトフェリン、金属部分飽和型ラクトフェリン、アポ型ラクトフェリンが挙げられ、本発明では、これらのうち一又は複数のラクトフェリンを用いることができる。また、本発明の組成物におけるラクトフェリンの含有量は、本発明の組成物を摂取したヒトがノロウイルスに感染することを抑制し得るものであれば特に制限されないが、総量として、10μg/ml~1mg/mlの範囲内であることが好ましく、50μg/ml~500μg/mlの範囲内であることがより好ましく、100μg/ml~300μg/mlの範囲内であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、医薬組成物及び飲食品組成物として広く用いることができる。例えば、ノロウイルス感染抑制用医薬組成物、ノロウイルス感染抑制用飲食品組成物を提供することができる。以下、それぞれを「本発明の医薬組成物」、「本発明の飲食品組成物」と記載することがある。
【0029】
本発明の医薬組成物は、本発明の細菌を含有する限り特に制限されない。本発明の医薬組成物としては、本発明の細菌をそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体又は固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物の剤形は特に制限されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、及び点鼻剤等を例示できる。また、製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、又は注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0031】
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0032】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0033】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0034】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0035】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム;ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0036】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0037】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0038】
本発明の医薬組成物における本発明の細菌の含有量は、剤形、用法、対象の年齢、性別、症候又は症状の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、通常、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1011cfu/gまたは1×106~1×1011cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましい。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。本発明の細菌が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mlは、個細胞/gまたは個細胞/mlと置き換えることができる。
【0039】
対象に対する本発明の医薬組成物の投与量は、剤形、用法、対象、対象の年齢、性別、疾患等の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それが投与された対象においてノロウイルス感染抑制作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の含有量として、1日当たりかつkg体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1012cfuの範囲内であることがさらに好ましい。本発明の細菌が死菌の場合、cfuは個細胞と置き換えることができる。
【0040】
本発明の医薬組成物の投与時期は特に限定されず、対象となる症候又は症状の予防方法又は治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。尚、本明細書において、「治療」は「緩和」を含む。
本発明の医薬組成物はノロウイルス感染前に予防的に投与してもよく、ノロウイルス感染後のさらなるノロウイルス感染を抑制するために投与してもよく、維持療法に用いてもよい。また、投与形態は製剤形態、対象の年齢、性別、その他の条件、対象の症候又は症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。なお、本発明の医薬組成物は、いずれの場合も1日1回又は複数回に分けて投与することができ、また、数日又は数週間に1回の投与としてもよい。
【0041】
本発明の医薬組成物は、単独で投与してもよいし、他の医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品、例えば、他のノロウイルス感染抑制用医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品;ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状に対する医薬組成物若しくは医薬又は飲食品組成物若しくは飲食品等と併用してもよい。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
【0042】
本発明の飲食品組成物は、本発明の細菌を含有する限り特に制限されない。本発明の飲食品組成物としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、飲食品であってもよく、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、グミ、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。
また、本発明の飲食品組成物は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。サプリメントである場合には、一日当りの食事量及び摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、本発明の細菌を摂取できる。
【0043】
本発明の飲食品組成物は、通常の飲食品の原料に本発明の細菌を添加することにより製造することができ、本発明の細菌を添加すること以外は、通常の飲食品と同様にして製造することができる。本発明の細菌の添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。また、添加した本発明の細菌による発酵工程を経て、本発明の飲食品組成物が製造されてもよい。そのような飲食品組成物としては、乳酸菌飲料、及び発酵乳等が挙げられる。
本発明の飲食品組成物の原料としては、通常の飲食品に用いられる原料を使用することができる。製造された飲食品組成物は、経口的に摂取することが可能である。
【0044】
本発明の飲食品組成物には、飲食品組成物製造のための原料、及び食品添加物等、飲食品組成物の製造工程又は製造後に飲食品組成物に添加されるものも含まれる。例えば、本発明の細菌は、発酵乳製造用スターターとして使用することができる。また、本発明の細菌を、製造された発酵乳に後から添加することもできる。
【0045】
また、本発明の飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプレバイオティクス効果を有する成分又はプレバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本発明の飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;フィッシュオイル;又は、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、HMO(ヒトミルクオリゴ糖)等のオリゴ糖等の成分と、本発明の細菌とを配合して製造することができる。
【0046】
ヒトミルクオリゴ糖としては、2'-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、2',3-ジフコシルラクトース、3'-シアリルラクトース、6'-シアリルラクトース、3-フコシル-3'-シアリルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースII、並びに、ラクト-N-シアリルペンタオース、LSTa、LSTb及びLSTc等が挙げられる。
【0047】
本発明の飲食品組成物における本発明の細菌の含有量は、飲食品組成物の態様によって適宜設定されるが、通常、飲食品組成物中に、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1011cfu/gまたは1×106~1×1011cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましい。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。本発明の細菌が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mlは、個細胞/gまたは個細胞/mlと置き換えることができる。
【0048】
本発明の飲食品組成物の摂取量は、飲食品組成物の形態、用法、対象、対象の年齢、性別、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを摂取した対象においてノロウイルス感染抑制作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の含有量として、1日当たりかつkg体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1012cfuの範囲内であることがさらに好ましい。本発明の細菌が死菌の場合、cfuは個細胞と置き換えることができる。
尚、本発明の飲食品組成物は、1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。また、数日又は数週間に1回の摂取としてもよいが、毎日摂取することが好ましい。
【0049】
本発明の飲食品組成物は、単独で摂取してもよいし、他の飲食品組成物若しくは飲食品又は医薬組成物若しくは医薬、例えば、他のノロウイルス感染抑制用飲食品組成物若しくは飲食品又は医薬組成物若しくは医薬;ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状に対する飲食品組成物若しくは飲食品又は医薬組成物若しくは医薬等と共に摂取してもよい。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
【0050】
本発明の飲食品組成物は、ノロウイルス感染抑制用との用途が表示された飲食品組成物又は飲食品として販売することができる。また、本発明の飲食品組成物は、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防用又は治療用との用途が表示された飲食品組成物又は飲食品として販売することができる。また、本発明の飲食品組成物又は飲食品には、「ノロウイルス感染抑制用」等の表示をすることができる。また、これ以外でも、ノロウイルス感染抑制によって二次的に生じる効果を表す文言であれば、使用できることはいうまでもない。
【0051】
また、本発明の飲食品組成物は、プロバイオティクス等の用途(保健用途を含む)が表示された飲食品組成物又は飲食品として提供・販売されることが可能である。また、飲食品組成物又は飲食品の摂取対象として、「ビフィズス菌と暮らす生活を望む方」、「乳酸菌と暮らす生活を望む方」、「腸内環境を改善したい方」、「お腹の調子を整えたい方」、「良好な腸内環境を形成したい方」等と表示して提供・販売されることが可能である。
【0052】
前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。
具体的には、本発明の飲食品組成物又は飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示でき、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。
【0053】
また、表示としては、行政等によって許可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましい。例えば、保健機能食品など、より具体的には保健機能食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を例示することができる。さらに詳細には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示等を例示することができる。
【0054】
さらに本発明の飲食品組成物の一例として、乳児用ミルク(例えば、乳児用調製粉乳等)が挙げられる。当該「乳児用ミルク」は、好ましくは生後0~36ヶ月、より好ましくは生後0~12ヶ月の乳児が母乳の代わりとして飲むことができるように意図された、それだけで乳児の栄養的要求を満たす食品をいう。本発明の細菌及び/又はラクトフェリン;ヒトミルクオリゴ糖、フルクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖などのプレバイオティクス;カゼイン、大豆、ホエー又はスキムミルク由来のタンパク質;ラクトース、サッカロース、マルトデキストリン、デンプンまたはそれらの混合物などの炭水化物;脂質(例えば、パームオレイン、ヒマワリ油、ヒマワリ油);及び、日常の食物に不可欠なビタミン類及びミネラル等を含有することができ、また、これらの群から選択される1種又は2種以上を含有することができる。
【0055】
さらに、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕ノロウイルス感染抑制用組成物の製造における、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌の使用。
〔2〕ノロウイルス感染抑制のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌の使用。
〔3〕ノロウイルス感染抑制に用いられる、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌。
〔4〕ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防又は治療に用いられる、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一又は複数の細菌。
〔5〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一若しくは複数の細菌又はノロウイルス感染抑制用組成物をヒトに投与する段階を含む、ノロウイルスのヒトへの感染を抑制する方法。
〔6〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリカス及びラクトバチルス・パラカゼイから成る群から選択される一若しくは複数の細菌又はノロウイルス感染抑制用組成物をヒトに投与する段階を含む、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防方法又は治療方法。
【実施例
【0056】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
〔調製例1〕
(細菌の調製)
下記4種類の細菌の死菌体を準備した。
・ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)
・ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175)
・ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)
・ラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)
具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌の死菌体については、MRS培地(0.05%システイン含有)で嫌気培養し、70℃で10分の加熱処理をした後、上清を除去し、PBSで洗浄して調製した。加熱処理前後の培養液をTOSプロピオン酸寒天培地に塗抹し、菌数を確認した。
ラクトバチルス属細菌の死菌体については、MRS培地(0.5%乳糖含有)で培養し、70℃で10分の加熱処理をした後、上清を除去し、PBSで洗浄して調製した。加熱処理前後の培養液をBCP加プレート寒天培地に塗抹し、菌数を確認した。
【0058】
(ウイルスの調製)
H.W.Virgin教授(Washington University School of Medicine、米国)より恵与されたMurine norovirus-1 CW1(以下、MNVと記載することがある。)を、マクロファージ様RAW264.7細胞(ATCC TIB-71、住商ファーマインターナショナル株式会社)を用いて常法に従って増幅し、1×107 pfu/mlの濃度のウイルスを得、使用時にはこれを希釈して使用した。
【0059】
(細胞の調製)
RAW264.7細胞(ATCC TIB-71、住商ファーマインターナショナル株式会社)を、継代回数15回程度を目安にして、FBSを10%添加したDMEM high glucose培地(Sigma-Aldrich)を用いて、37℃、5% CO2下で培養、維持し、使用した。
【0060】
(ラクトフェリンの調製)
ラクトフェリン(本明細書では、LFと略記することがある。)は10mg/mlとなるようリン酸緩衝液にて溶解し、0.45μmのMillex filterに通して調製した。使用時には、10% FBS DMEM培地を用いて200μg/mlの濃度に希釈して使用した。
【0061】
〔試験例1〕細菌のMNV感染抑制への効果の検討
(試験方法)
上記4種類の細菌ごとに下記(1)~(4)の試験液を用意し、RAW264.7細胞へのMNVの感染をどの程度抑制するかについて、プラークアッセイを用いて試験した。
(1) 10% FBS DMEM培地
(2) 1×105個細胞/mlの死菌体を含有する10% FBS DMEM培地
(3) 200μg/mlのラクトフェリンを含有する10% FBS DMEM培地
(4) 1×105個細胞/mlの死菌体及び200μg/mlのラクトフェリンを含有する10% FBS DMEM培地
【0062】
1日培養したRAW264.7細胞の上清を除去し、感染前30分から各試験液で前培養した。30分後、試験液を除去し、DMEM培地でリンスし、試験液で希釈したMNV含有液を添加し、1時間感染させた。その後、感染液を除き、試験液で作成した0.35%アガロースを添加し、37℃、5% CO2のインキュベーター内で2日間培養し、染色してプラーク数をカウントした。
【0063】
(結果)
図1図4に、各細菌について各試験液を用いた場合のプラークの形成率を、(1)の試験液を用いた場合のプラークの形成率を100%として表した。
いずれの細菌の場合も、(1)の試験液(10% FBS DMEM培地)を用いた場合との対比から、(2)の試験液(1×105個細胞/mlの死菌体を含有する10% FBS DMEM培地)を用いた場合には、MNV感染抑制効果が認められた。また、(4)の試験液(1×105個細胞/mlの死菌体及び200μg/mlのラクトフェリンを含有する10% FBS DMEM培地)を用いた場合には、(3)の試験液(200μg/mlのラクトフェリンを含有する10% FBS DMEM培地)を用いた場合よりも強い又はそれと同等のMNV感染抑制効果が認められた。すなわち、上記4種類の細菌はMNV感染抑制効果を有し、ラクトフェリンと併用した場合には、その効果がさらに強くなることが確認された。
【0064】
〔製造例1〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)、又はラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)をMRS液体培地3 mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、菌体を遠心分離及び蒸留水に再懸濁により3回洗浄した後に、蒸留水で10 mg (菌体乾燥重量換算)/mlになるように懸濁し、100℃、15分の加熱殺菌を行い、加熱殺菌体を含む溶液とする。該加熱殺菌体を含む溶液を濃縮し、凍結乾燥を行い、該細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。各菌末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate; WPC)とを均一に混合して組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶かし、ノロウイルス感染抑制用組成物を得る。
本組成物の投与により、ノロウイルス感染抑制効果が期待できる。さらに、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防又は治療に用いることが出来る。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
【0065】
〔製造例2〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175) 、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)、又はラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)をMRS液体培地3 mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、菌体を遠心分離及び蒸留水に再懸濁により3回洗浄した後に、蒸留水で10 mg (菌体乾燥重量換算)/mlになるように懸濁し、100℃、15分の加熱殺菌を行い、加熱殺菌体を含む溶液とする。該加熱殺菌体を含む溶液を濃縮し、凍結乾燥を行い、該細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。次に、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加え造粒、造粒物を乾燥し、該細菌の抽出成分を含有し、賦形剤を含有してなる造粒物を得る。
本組成物の投与により、ノロウイルス感染抑制効果が期待できる。さらに、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防又は治療に用いることが出来る。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
【0066】
〔製造例3〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175) 、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)、又はラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)をMRS液体培地3 mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、菌体を遠心分離及び蒸留水に再懸濁により3回洗浄した後に、蒸留水で10 mg (菌体乾燥重量換算)/mlになるように懸濁し、100℃、15分の加熱殺菌を行い、加熱殺菌体を含む溶液とする。加熱殺菌体を含む溶液を濃縮し、凍結乾燥を行い、該細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。該菌末と、オリゴ糖とを均一に混合して組成物を得る。当該組成物を、プレバイオティクス素材として提供する。該細菌の摂取量が1×104~1×1013 cfu/kg体重/日になるようにし、1週間毎日朝食で提供する。該細菌が死菌の場合、cfu/kg体重/日は、個細胞/kg体重/日と置き換えることができる。なお、発酵乳等の飲食物と混合してもよい。オリゴ糖としてはイソマルトオリゴ糖、ラクチュロース、ラフィノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖が使用出来る。
本組成物の投与により、ノロウイルス感染抑制効果が期待できる。さらに、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防又は治療に用いることが出来る。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
【0067】
〔製造例4〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175) 、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)、又はラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)を添加した発酵乳の製造法を下記に示す。
まず、乳原料、および必要に応じた水、その他の成分等を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理する。均質化処理および加熱殺菌処理は常法により行うことができる。加熱殺菌された 殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、発酵物を得る。発酵によりカードが形成される。
乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵物を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
次いで、発酵工程で得られた発酵物を加熱処理して加熱後発酵物(加熱処理後の発酵物)を得る。発酵物を適度に加熱することにより、加熱後発酵物中の乳酸菌による酸の生成を抑えることができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌若しくは乳酸菌入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑えることができ、その結果、ビフィズス菌又は乳酸菌の生残性を向上させることができる。
次いで、加熱処理工程で得られた加熱後発酵物に、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V (NITE BP-02622)、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274 (FERM BP-11175) 、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63 (NITE BP-02623)、又はラクトバチルス・パラカゼイMCC1849 (NITE BP-01633)を添加する。その添加量は、加熱後発酵物に対して1×104~1×1013 cfu/mlが好ましく、1×105~1×1012 cfu/mlがより好ましい。死菌の場合、cfu/mlは、個細胞/mlと置き換えることができる。
その後、濃縮を行う。濃縮工程は公知の濃縮方法を適宜用いて行うことができる。例えば遠心分離法または膜分離法を用いることができる。
上述のようにして得られた発酵乳を摂取することにより、ノロウイルス感染抑制効果が期待できる。さらに、ノロウイルス感染抑制によって予防又は治療され得る症候又は症状の予防又は治療に用いることが出来る。該症候又は症状としては、例えば、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等が挙げられる。
図1
図2
図3
図4