(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症の予防及び/又は処置での直接給与微生物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20240717BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20240717BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A23K10/16
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K38/43
A61P31/04 171
C12N1/20 E
(21)【出願番号】P 2020570399
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(86)【国際出願番号】 US2019020482
(87)【国際公開番号】W WO2019173174
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-18
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】NRRL NRRL B-50510
【微生物の受託番号】NRRL NRRL B-50508
【微生物の受託番号】ATCC PTA-6507
(73)【特許権者】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】パロット、テリー
(72)【発明者】
【氏名】ペイリング、ローラ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/083196(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0280090(US,A1)
【文献】Comp. Immunol. Microbiol. Infect. Dis., (2010), 33, [6], p.e105-e110<DOI:10.1016/j.cimid.2010.06.001>
【文献】Res. Vet. Sci., (2011), 91, [3], p.e87-e91<DOI:10.1016/j.rvsc.2011.01.018>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防するための及び/又は処置するための組成物であって、
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5(
NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918
(NRRL B-50508)及び15AP4
(PTA-6507)を単独で含むか又はこれらの株に由来する培養上清と組み合わせて含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物成分を含み、
前記組成物は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される1種又は複数種の能力上の利点をもたらす、組成物。
【請求項2】
前記直接給与微生物は内生胞子の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、少なくとも1種の酵素をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の酵素は、カプセル化され得る、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、飼料添加剤組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、プレミックスである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の飼料添加剤組成物を含む飼料。
【請求項9】
請求項6に記載の飼料添加剤組成物と、投与に関する指示書とを含むキット。
【請求項10】
動物(ヒトを除く)における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防する及び/又は処置する方法であって、
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5(
NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918
(NRRL B-50508)及び15AP4
(PTA-6507)を含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物成分を含む組成物の有効な量を投与することを含み、
前記組成物は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される1種又は複数種の能力上の利点をもたらす、方法。
【請求項11】
前記直接給与微生物は内生胞子の形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、少なくとも1種の酵素をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の酵素は、カプセル化され得る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/639,158号明細書に対する優先権を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
当技術分野は、大腸菌(E.coli)に基づく感染症を有する動物の予防及び/又は処置での直接給与微生物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
大腸菌(E.coli)は、ほとんどの哺乳類及び鳥類の種の腸内のミクロフローラ又は生態系に通常生息するグラム陰性桿菌である。大腸菌(E.coli)は、体細胞(O)抗原、莢膜(K)抗原、線毛(F)抗原、及び鞭毛(H)抗原に基づいて、150~200種の血清型又は血清群に分類される。ほとんどの大腸菌(E.coli)は共生生物であり、即ち、腸内に生息しているが宿主生物には害を及ぼさない。株のごく一部が病原性であり、この株が疾患を引き起こす病原性因子を産生する。一部の大腸菌(E.coli)は、疾患と関連することが知られていない組み合わせで病原性遺伝子を保持しており、潜在的な病原性と見なされ得る。全ての大腸菌(E.coli)は、抗菌剤に対する耐性を示す遺伝子を保有し得る。
【0004】
動物では、大腸菌(E.coli)の病原性株が様々な疾患の原因となっており、特に、生まれたばかりの子ウシにおける敗血症及び下痢、乳牛における急性乳腺炎、マイコプラズマ(Mycoplasma)による慢性呼吸器疾患とも関連する大腸菌病であって、家禽において肝周囲炎、心膜炎、敗血症性肺、腹膜炎等が引き起こされる大腸菌病、並びにイヌにおけるアラバマロット(Alabama rot)の原因となっている。
【0005】
大腸菌(E.coli)は、糞便を介して動物の身近な環境へと絶えず排出されており、屋内で飼育されている動物の檻、寝わら、及び床、並びに屋外の動物のための土壌を汚染する。この大腸菌(E.coli)は長期間にわたり生き残る可能性があり、場合によっては10週間を超えて生き残る可能性があり、且つスラリー及び堆肥を介して、施肥された田畑及び作物へと、並びに地下水及び地表水へと広がる可能性がある。
【0006】
大腸菌(E.coli)は、汚染された飼料、取扱者、及び飲料水を介して他の動物へと伝播され、場合によっては、運搬トラック等の車両により農場から農場へと伝播される。感染症は、鳥類の場合には、経口経路により起こるか、又は汚染された粉塵の吸入を介して起こる。動物由来の大腸菌(E.coli)はまた、直接接触により、又は堆肥の散布後の汚染された食物若しくは水の摂取により、又は屠殺場での枝肉の汚染後の肉の摂取により、ヒトに伝播される場合もある。毒素原性大腸菌(E.coli)(ETEC)に起因する腸内感染症は、ブタ及び子ウシ等の幼若動物の最も一般的なタイプの大腸菌病であり、典型的には、重度の水様性下痢として現れる。ETECは、発展途上国世界における旅行者(「旅行者下痢」)及び小児の間の下痢の大きな原因でもある。
【0007】
ブタでのETECは伝染性であることが多く、同一の株が、大量に、及び数匹の病気のブタで、及びバッチからバッチへと見出されている。この株は通常、おそらく免疫の発達に起因して、感染後数日にわたりのみ排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒト及び動物の両方の処置での抗生物質の使用は、現在では健康への大きな世界的脅威となっている抗菌薬耐性を生じさせてきた。健康上のこの世界的な懸念に対処するために、抗生物質の代替薬を開発することが追求されている。そのため、動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症の予防及び/又は処置のための新規の且つ代替的なアプローチを発見することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防するための及び/又は処置するための組成物であって、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5株(NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918(NRRL B-50508)及び15AP4(PTA-6507)を含む直接給与微生物バチルス属(Bacillus)ベースの成分を含む組成物が開示されている。
【0010】
第2の実施形態では、本明細書で開示されている組成物は、動物中において1種又は複数種の能力上の利点をもたらし得、この能力上の利点は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される。
【0011】
第3の実施形態では、直接給与微生物は内生胞子の形態である。
【0012】
第4の実施形態では、本明細書で説明されている組成物の内のいずれかは、任意選択的にカプセル化され得る少なくとも1種の酵素をさらに含む。
【0013】
第5の実施形態では、少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される。
【0014】
第6の実施形態では、本明細書で説明されている組成物の内のいずれかは、飼料添加剤組成物又はプレミックスであり得る。
【0015】
第7の実施形態では、本明細書で開示されている飼料添加剤組成物の内のいずれかを含む飼料が開示されている。
【0016】
第8の実施形態では、本明細書で開示されている飼料添加剤組成物の内のいずれかと、投与に関する指示書とを含むキットが開示されている。
【0017】
第9の実施形態では、動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防する及び/又は処置する方法であって、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5株(NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918(NRRL B-50508)及び15AP4(PTA-6507)を含む直接給与微生物を含む組成物の有効な量を投与することを含む方法が開示される。そのように投与される組成物は、動物中において1種又は複数種の能力上の利点をもたらし得、この能力上の利点は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される。この組成物は、本開示の上記で又は他の箇所で説明されている特徴の内のいずれかを包含し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】腸の健康状態の指標としてのタイトジャンクションタンパク質の発現への常用飼料処置の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
引用されている全ての特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本開示では、多くの用語及び略語が使用されている。特に断らない限り、下記の定義が適用される。
【0021】
1つの要素又は成分に先行する「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という冠詞は、その要素又は成分の事例(即ち出現)の数に関して非制限的であることが意図されている。従って、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、1つ又は少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、要素又は成分の単数語形は、その数が明らかに単数であることを意味しない限り、複数形も含む。
【0022】
「含む」という用語は、特許請求の範囲で言及されている特徴、整数、工程、又は成分の存在を意味するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、成分、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。「含む」という用語は、「から本質的になる」及び「からなる」という用語により包含される実施形態を含むことが意図されている。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語により包含される実施形態を含むことが意図されている。
【0023】
存在する場合には、全ての範囲は包括的であり、且つ結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙されている場合には、この列挙された範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、並びに「1~3及び5」等を含むと解釈すべきである。
【0024】
数値と関連して本明細書で使用される場合、「約」という用語は、文脈中でこの用語が別途具体的に定義されていない限り、数値の±0.5の範囲を指す。例えば、「約6のpH値」という語句は、このpH値が別途具体的に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0025】
本明細書全体を通して与えられる全ての数値の上限が、全てのより低い数値の限界を、あたかもそのようなより低い数値の限界が本明細書で明示されていたかのように含むことが意図されている。本明細書全体を通して与えられる全ての数値の下限は、全てのより高い数値の限界を、あたかもそのようなより高い数値の限界が本明細書で明示されていたかのように含むであろう。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、あたかもそのようなより狭い数値範囲が本明細書で全て明示されていたかのように含むであろう。
【0026】
「動物」及び「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。動物は、全ての非反芻動物(例えばヒト)及び反芻動物を含む。特定の実施形態では、動物は、ウマ及び単胃動物等の非反芻動物である。単胃動物の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:子ブタ、成長期ブタ、雌ブタ等のブタ(pig)及びブタ(swine);七面鳥、アヒル、ニワトリ、ブロイラー鶏、産卵鶏等の家禽;サケ、マス、ティラピア、ナマズ、及びコイ等の魚;並びにエビ及びクルマエビ等の甲殻類。さらなる実施形態では、動物は、反芻動物(例えば、限定されないが、ウシ、若ウシ、ヤギ、ヒツジ、キリン、バイソン、ムース、エルク、ヤク、水牛、シカ、ラクダ、アルパカ、ラマ、アンテロープ、プロングホーン、及びニルガイ)等の複胃(multigastric)であり得る。
【0027】
「反芻動物」という用語は、本明細書で使用される場合、主に微生物の作用により、消化の前に特殊な胃で植物ベースの食物を醗酵させることにより、この食物から栄養素を獲得し得る哺乳動物を指す。このプロセスは、典型的には、醗酵した摂取物(食い戻しとして知られている)を逆流させ、次いで再び咀嚼することを必要とする。植物物質をさらに分解して消化を刺激するために食い戻しを再び咀嚼するプロセスは、反芻と呼ばれている。約150種の反芻動物には、家畜種及び野生種の両方が含まれる。反芻動物として、ウシ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、キリン、ヤク、シカ、エルク、アンテロープ、及びバッファロー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「CFU」という用語は、本明細書で使用される場合、「コロニー形成単位」を意味しており、単一の前駆細胞に由来する細胞の凝集体をコロニーが表す生存細胞の尺度である。
【0029】
「直接給与微生物」(「DFM」)という用語とは、本明細書で使用される場合、天然に存在する生きた(生存可能な)微生物の供給源のことである。DFMは、そのような天然に存在する微生物(例えば細菌株)の内の1種又は複数種を含み得る。DFMのカテゴリーには、胞子形成細菌(例えば、バチルス属(Bacillus)及びクロストリジウム属(Clostridium))、並びに非胞子形成細菌(例えば、乳酸菌、酵母、及び真菌)が含まれる。そのため、DFMという用語は、下記の内の1つ又は複数を包含する:直接給与細菌、直接給与酵母、直接給与酵母又は真菌、及びこれらの組み合わせ。
【0030】
バチルス属(Bacillus)は、胞子を形成するユニークなグラム陽性桿菌である。この胞子は非常に安定しており、熱、湿度、及びpH範囲等の環境条件に耐え得る。この胞子は、動物により摂取されると活性な栄養細胞へと発芽し、食物及びペレット化飼料で使用され得る。
【0031】
「バチルス属(Bacillus)ベースの成分」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)細菌株を含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物、(ii)この株から作られたバチルス属(Bacillus)培養物から得られた上清、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを指す。
【0032】
「飼料」及び「食物」は、非ヒト動物及びヒトによりそれぞれ食べられ、摂取され、消化されることが意図されているか又はそうされることに適した、あらゆる天然若しくは人工の常用飼料、若しくは食物等、又はそのような食物の成分をそれぞれ意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「食物」という用語は広義で使用され、ヒト用の食物及び食品、並びに非ヒト動物用の食物(即ち飼料)を包含する。
【0034】
「飼料」という用語は、家畜の飼育において動物に給与される製品に関して使用される。「飼料」及び「動物飼料」という用語は、互換的に使用される。好ましい実施形態では、食物又は飼料は、単胃動物及び複胃動物による消費用である。
【0035】
「プロバイオティクス」という用語は、本明細書で使用される場合、生きた微生物(例えば、細菌又は酵母を含む)であって、例えば、十分な数で摂取されたか又は局所的に適用された場合に、宿主生物に有益な影響を及ぼす(即ち、この宿主生物に1種又は複数種の明らかな健康上の利益を付与することによる)微生物と定義される。プロバイオティクスは、1つ又は複数の粘膜表面での微生物バランスを改善し得る。例えば、この粘膜表面は、腸、尿路、気道、又は皮膚であり得る。「プロバイオティクス」という用語にはまた、本明細書で使用される場合、免疫系の有益な分岐を刺激し得、同時に粘膜表面(例えば腸)での炎症反応を減少させ得る生きた微生物も包含される。プロバイオティクス摂取に関しては下限も上限も存在しないが、1日用量として、少なくとも106~1012、好ましくは少なくとも106~1010、好ましくは108~109cfuが、対象において有益な健康効果を得るのに有効であることが示唆されている。
【0036】
「プレバイオティクス」という用語は、1種又は限られた数の有益な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することにより、宿主に有益な影響を及ぼす非消化性食物成分を意味する。
【0037】
「病原体」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患のあらゆる原因物質を意味する。そのような原因物質として、細菌性原因物質、ウイルス性原因物質、及び真菌性原因物質等が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0038】
「大腸菌(E.coli)に基づく感染症」という用語は、大腸菌(E.coli)により引き起こされる下痢等の疾患又は感染症を意味する。
【0039】
「に由来する」及び「から得られる」という用語は、問題の生物の株により産生されるか又は産生可能なタンパク質だけではなく、そのような株から単離されたDNA配列によりコードされ且つそのようなDNA配列を含む宿主生物中で産生されるタンパク質も指す。加えて、この用語は、合成及び/又はcDNA起源のDNA配列によりコードされ且つ問題のタンパク質の識別可能な特徴を有するタンパク質を指す。
【0040】
「有効な量」という用語は、動物に投与される特定の成分の、所望の効果を達成するのに十分な量を意味する。
【0041】
一実施形態では、動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防するための及び/又は処置するための組成物であって、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5株(NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918株(NRRL B-50508)及び15AP4株(PTA-6507)を含む直接給与微生物バチルス属(Bacillus)ベースの成分を含む組成物が開示されている。
【0042】
第2の実施形態では、本明細書で開示されている組成物は、動物における1種又は複数種の能力上の利点をもたらし得、この能力上の利点は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される。
【0043】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースのDFM成分は、生菌を含んでもよいし、上清を含んでもよいし、生菌及び培養上清の組み合わせであってもよい。好ましいバチルス属(Bacillus)ベースのDFM成分は、生菌である。
【0044】
一実施形態では、このDFMは胞子形成細菌株であってもよく、従って、DFMという用語は、胞子(例えば細菌胞子)で構成されてもよいし、この胞子を含んでもよい。そのため、「生菌」という用語は、本明細書で使用される場合、細菌胞子(例えば内生胞子又は分生子)を含み得る。或いは、本明細書で説明されている飼料添加剤組成物中のDFMは、細菌胞子(例えば内生胞子又は分生子)で構成されていなくてもよいし、この微生物胞子を含まなくてもよい。
【0045】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースのDFM成分は、下記の株の組み合わせである:
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5株 アクセッション番号NRRL B-50510、
バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliqufaciens)918株 ATCCアクセッション番号NRRL B-50508、及び
バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliqufaciens)1013株 ATCCアクセッション番号NRRL B-50509。
【0046】
3BP5株及び1013株は、2013年2月28日公開された国際公開第2013-329013号パンフレットで説明されている。
【0047】
15AP4株は、2005年11月17日に公開された米国特許出願公開第2005-0255092号明細書で説明されている。
【0048】
一部の実施形態では、バチルス属(Bacillus)ベースのDFM成分が熱耐性(heat tolerant)であることが重要であり、即ち、胞子形成等の熱耐性(thermotolerant)であることが重要である。このことは、飼料がペレット化される場合に特に当てはまる。桿菌(Bacilli)は、増殖条件が不都合である場合に、安定した内生胞子を形成し得、熱、pH、湿度、及び殺菌剤に対して非常に耐性を示す。細菌/DFMが胞子形成体でない場合には、下記で説明するように、飼料加工に耐えるように保護されるべきである。
【0049】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、培養物及び担体(使用される場合)として調製されてもよく、リボン又はパドルミキサーに入れられて約15分にわたり混合され得るが、この時間を、増加させ得るか又は減少させ得る。この成分を、培養物と担体との均一な混合物が得られるようにブレンドする。最終製品は、好ましくは乾燥した流動性粉末である。従って、バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、a:本明細書で説明されている3種のバチルス属(Bacillus)の細菌株、又はバチルス属(Bacillus)培養物から得られる上清、又は1種若しくは複数種のバチルス属(Bacillus)の細菌株と上清との両方の組み合わせを含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物を含み得る。次いで、そのようなバチルス属(Bacillus)ベースの成分を、動物飼料又は飼料プレミックスに添加し得る。このバチルス属(Bacillus)ベースの成分を、動物飼料の上に添加し得る(「トップ給与」)か、又は動物の飲料水等の液体に添加し得る。
【0050】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースのDFMでの個々の株の包含は、1%~99%で変動する割合であり得、好ましくは25%~75%で変動する割合であり得る。
【0051】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分の、動物飼料中における好適な投与量は、約1×103CFU/g飼料~約1×1010CFU/g飼料の範囲であり得、好適には約1×104CFU/g飼料~約1×108CFU/g飼料の範囲であり得、好適には約7.5×104CFU/g飼料~約1×107CFU/g飼料の範囲であり得る。
【0052】
当業者であれば、食品及び/又は農業産業で使用され且つ一般に動物による消費に適していると考えられる、本明細書で説明されている属内の微生物の特定の種及び/又は株に容易に気付くであろう。動物飼料は、家禽、ブタ、反芻動物、水産養殖、及びペットのための、トウモロコシ、コムギ、ソルガム、ダイズ、キャノーラ、ヒマワリ等の植物材料、又はこれらの植物材料若しくは植物タンパク質源の内のいずれかの混合物を含んでもよい。
【0053】
「動物飼料」、「飼料(feed)」、及び「飼料(feedstuff)」という用語は互換的に使用され、下記を含む群から選択される1種又は複数種の飼料材料を含み得る:a)穀類、例えば、小粒穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、及びこれらの組み合わせ)、並びに/又は大粒穀物(例えば、トウモロコシ若しくはソルガム);b)穀類の副産物、例えば、トウモロコシグルテンミール、可溶物添加蒸留粕乾燥穀類(Distillers Dried Grains with Solubles)(DDGS)(特に、トウモロコシベースの可溶物添加蒸留粕乾燥穀類(cDDGS)、コムギふすま、コムギミドリング粉、コムギショーツ、コメふすま、もみ殻、カラスムギ殻、パーム核、及びシトラスパルプ;c)ダイズ、ヒマワリ、ピーナッツ、ルピン、エンドウ豆、ソラマメ、ワタ、キャノーラ、魚粉、乾燥血漿タンパク質、肉及び骨粉、ジャガイモタンパク質、ホエイ、コプラ、ゴマ等の供給源から得られるタンパク質;d)植物源及び動物源から得られる油脂;並びに/又はe)ミネラル及びビタミン。
【0054】
機能性飼料等の飼料として使用されるか又はこの飼料の調製で使用される場合には、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、下記の内の1つ又は複数と併用されてもよい:栄養学的に許容される担体、栄養学的に許容される希釈剤、栄養学的に許容される添加剤、栄養学的に許容されるアジュバント、栄養学的有効成分。例えば、タンパク質、ペプチド、スクロース、ラクトース、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、ソルビン酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ソルビン酸マグネシウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種の成分が挙げられ得る。
【0055】
好ましい実施形態では、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分を飼料成分と混合して、飼料を形成し得る。「飼料成分」という用語は、本明細書で使用される場合、飼料の全て又は一部を意味する。飼料の一部は、飼料の1種の成分を意味し得るか、又は飼料の複数種の成分(例えば、2種、若しくは3種、若しくは4種、若しくはより多く)を意味し得る。一実施形態では、「飼料成分」という用語は、プレミックス又はプレミックス成分を包含する。好ましくは、飼料は、飼い葉又はそのプレミックス、配合飼料又はそのプレミックスであり得る。本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分を含む飼料添加剤組成物は、配合飼料と混合されてもよいし、配合飼料のプレミックスと混合されてもよいし、飼い葉と混合されてもよいし、飼い葉成分と混合されてもよいし、飼い葉のプレミックスと混合されてもよい。
【0056】
飼い葉という用語は、本明細書で使用される場合、(動物自身が探さなければならない食物ではなく)動物に与えられるあらゆる食物を意味する。飼い葉は、切断されている植物を包含する。
【0057】
飼い葉という用語には、干し草、わら、サイレージ、圧縮飼料及びペレット化飼料、油及び混合飼料が含まれ、発芽した穀物及びマメ科植物も含まれる。
【0058】
飼い葉を、下記から選択される植物の内の1つ又は複数から得ることができる:アルファルファ(ルーサン)、オオムギ、ミヤコグサ、アブラナ、キャベツ(Chau moellier)、ケール、ナタネ(カノーラ)、ルタバガ(スウェーデンカブ)、チューリップ、クローバー、アルサイククローバー、レッドクローバー、地下クローバー、シロツメクサ、イネ科草本、偽エンバク(false oat grass)、ウシノケグサ、ギョウギシバ、スズメノチャヒキ、ヒースグラス(heath grass)、牧草(自然と混ざった牧草地、草地に由来する、カモガヤ、ドクムギ、チモシー牧草、トウモロコシ(corn)(トウモロコシ(maize))、キビ、カラスムギ、ソルガム、ダイズ、樹木(まぐさ(tree-hay)用に刈り込まれた樹木の若枝)、コムギ、及びマメ類。
【0059】
「配合飼料」という用語は、ミール、ペレット、ナッツ、ケーキ、又は粉砕物の形態の市販の飼料を意味する。配合飼料は、様々な原材料及び添加剤からブレンドされ得る。このブレンド物は、標的動物の特定の要件に従って配合される。
【0060】
配合飼料は、1日に必要な栄養素の全てを提供する完全飼料であり得るか、飼料の一部(タンパク質、エネルギー)を提供する濃縮物であり得るか、又はミネラル及びビタミン等の追加の微量栄養素のみを提供するサプリメントであり得る。
【0061】
配合飼料で使用される主成分は飼料用穀物であり、この飼料用穀物として、トウモロコシ、ダイズ、ソルガム、カラスムギ、及びオオムギが挙げられる。
【0062】
好適には、本明細書で言及されているプレミックスは、微量成分(例えば、ビタミン、ミネラル、化学保存料、抗生物質、発酵生成物、及び他の必須成分)から構成される組成物であり得る。プレミックスは、通常、市販の飼料にブレンドするのに適した組成物である。
【0063】
本明細書で説明されている任意の飼料は、下記を含む群から選択される1種又は複数種の飼料材料を含み得る:a)穀類、例えば、小粒穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、及びこれらの組み合わせ)、並びに/又は大粒穀物(例えば、トウモロコシ、ソルガム);b)穀類の副産物、例えば、トウモロコシグルテンミール、可溶物添加蒸留粕乾燥穀類(DDGS)、コムギふすま、コムギミドリング粉、コムギショーツ、コメふすま、もみ殻、カラスムギ殻、パーム核、及びシトラスパルプ;c)ダイズ、ヒマワリ、ピーナッツ、ルピン、エンドウ豆、ソラマメ、ワタ、キャノーラ、魚粉、乾燥血漿タンパク質、肉及び骨粉、ジャガイモタンパク質、ホエイ、コプラ、ゴマ等の供給源から得られるタンパク質;d)植物源及び動物源から得られる油脂;e)ミネラル及びビタミン。
【0064】
さらに、そのような飼料は、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%の、トウモロコシ及びダイズミール、又はトウモロコシ及び全脂肪ダイズ、又はコムギミール若しくはヒマワリミールを含んでもよい。
【0065】
加えて、又は代替として、飼料は、高繊維飼料を提供するために、少なくとも1種の高繊維飼料材料及び/又は少なくとも1種の高繊維飼料材料の少なくとも1種の副産物を含んでもよい。高繊維飼料材料の例として、下記が挙げられる:コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、穀類からの副産物、例えばトウモロコシグルテンミール、可溶物添加蒸留粕乾燥穀類(DDGS)、コムギふすま、コムギミドリング粉、コムギショーツ、コメふすま、もみ殻、カラスムギ殻、パーム核、及びシトラスパルプ。下記の一部のタンパク質源も高線維と見なされ得る:ヒマワリ、ルピン、ソラマメ、及びワタ等の供給源から得られるタンパク質。
【0066】
本明細書で説明されているように、飼料は、下記の内の1つ又は複数であり得る:配合飼料及びプレミックス、例えば、ペレット、ナッツ、又は(ウシ)ケーキ;作物又は作物残渣:トウモロコシ、ダイズ、ソルガム、カラスムギ、オオムギ、トウモロコシの茎葉、コプラ、わら、もみ殻、サトウダイコンの屑;魚粉;切断されたばかりの牧草及び他の飼料植物;肉及び骨粉;糖蜜;油粕(oil cake)及び油粕(press cake);オリゴ糖;保存された飼料植物:干し草及びサイレージ;海藻;種子及び穀物(全体、又は粉砕、摩砕等により調製されたもの);発芽した穀物及びマメ科植物;酵母抽出物。
【0067】
飼料という用語はまた、本明細書で使用される場合、一部の実施形態ではペットフードも包含する。ペットフードは、ドッグフード又はキャットフード等の、ペットによる消費が意図された植物性材料又は動物性材料である。ドッグフード及びキャットフード等のペットフードは、イヌ用のキブル等の乾燥形態であってもよいし、湿式缶詰形態であってもよい。キャットフードは、アミノ酸であるタウリンを含んでもよい。
【0068】
飼料という用語はまた、一部の実施形態では魚用の餌も包含し得る。魚用の餌は、通常、捕獲された魚を良好な健康状態に保つのに必要な多量栄養素、微量元素、及びビタミンを含む。魚用の餌は、フレーク、ペレット、又はタブレットの形態であり得る。ペレット化形態(この一部は急速に沈む)は、大型の魚又は底生種に使用されることが多い。一部の魚用の餌はまた、観賞魚の発色を人工的に増強するために、ベータカロテン又は性ホルモン等の添加剤も含む。
【0069】
同様に、「飼料」という用語に包含されるのは、鳥用の餌であり、この鳥用の餌には、バードフィーダーで使用される餌と、ペットの鳥に給与するために使用される餌との両方が含まれる。典型的には、鳥用の餌は様々な種子を含むが、スエット(牛脂又は羊脂)を包含してもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「接触した」という用語は、製品(例えば飼料)への飼料添加剤組成物の間接的な又は直接的な塗布を指す。使用され得る塗布方法の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:飼料添加剤組成物を含む材料で製品を処理すること、飼料添加剤組成物と製品とを混合することによる直接的な塗布、製品表面上に飼料添加剤組成物を噴霧すること、又は飼料添加剤組成物の調製物中に製品を浸漬すること。
【0071】
バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、好ましくは、製品(例えば飼料)と混合され得る。或いは、バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、飼料の乳濁液又は原料に含まれ得る。
【0072】
一部の用途では、影響を受ける/処理される製品の表面上で、又はこの製品の表面にバチルス属(Bacillus)ベースの成分を利用可能にすることが重要である。
【0073】
バチルス属(Bacillus)ベースの成分を塗布して、バチルス属(Bacillus)ベースの成分の制御された量を、製品(例えば、飼料、又は飼料の原料)に、散剤させ得、コーティングし得、及び/又は含浸させ得る。
【0074】
本明細書で説明されているDFMは適度な濃度で添加され得、例えば、約2×103CFU/g飼料~約2×1011CFU/g飼料、好適には約2×106~約1×1010、好適には約3.75×107CFU/g飼料~約1×1010CFU/g飼料の1日用量を付与する最終飼料製品中の濃度で添加され得る。
【0075】
好ましくは、バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、最大約70℃;最大約85℃;又は最大約95℃の熱処理に対して熱的に安定であるだろう。この熱処理は、約30秒~数分間実施され得る。「熱的に安定な」という用語は、特定の温度まで加熱する前に存在した/活性であったバチルス属(Bacillus)ベースの成分の少なくとも約50%が、室温にまで冷却した後もなお存在している/活性であることを意味する。特に好ましい実施形態では、バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、粉末を製造するために均質化される。
【0076】
或いは、バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/044968号パンフレットで説明されているような顆粒(TPT顆粒と称される)に製剤化されている。
【0077】
別の好ましい実施形態では、飼料添加剤組成物が顆粒に製剤化される場合には、この顆粒は、タンパク質の核の上にコーティングされた水和バリア塩を含む。そうした塩コーティングの利点は、耐熱性の改善、貯蔵安定性の改善、並びに1種又は複数種の細菌株を含む少なくとも1種のプロテアーゼ及び/又はDFMに悪影響を及ぼす他の飼料添加剤に対する保護である。好ましくは、塩コーティングに使用される塩は、20℃にて、0.25を超える水分活性又は60%を超える恒湿を有する。好ましくは、この塩コーティングは、Na2SO4を含む。
【0078】
バチルス属(Bacillus)ベースの成分を含む飼料は、飼料ペレット化プロセスを使用して製造され得る。任意選択的に、このペレット化工程は、ペレットの形成前に、蒸気処理又はコンディショニング段階を含み得る。粉末を含む混合物を、コンディショナー(例えば、蒸気注入を有するミキサー)に入れ得る。この混合物は、コンディショナー中で60~100℃等の特定の温度まで加熱され、典型的な温度は、70℃、80℃、85℃、90℃、又は95℃であるだろう。滞留時間は、数秒間から、数分間、さらには数時間まで可変であり得る。例えば、5秒、10秒、15秒、30秒、1分2分、5分、10分、15分、30分、及び1時間。
【0079】
顆粒に関して、少なくとも1つのコーティングは、この顆粒の少なくとも55重量/重量%を占める水分水和物質を含み得;及び/又は少なくとも1つのコーティングは、2つのコーティングを含み得る。これら2つのコーティングは、水分水和コーティングと、水分バリアコーティングとであり得る。一部の実施形態では、この水分水和コーティングは、この顆粒の25重量/重量%~60重量/重量%であり得、この水分バリアコーティングは、この顆粒の2重量/重量%~15重量/重量%であり得る。この水分水和コーティングは、無機塩、スクロース、デンプン、及びマルトデキストリンから選択され得、この水分バリアコーティングは、ポリマー、ガム、ホエイ、及びデンプンから選択され得る。
【0080】
顆粒は、飼料ペレット化プロセスを使用して製造され得、飼料前処理プロセスは、最大数分にわたり70℃~95℃(例えば85℃~95℃)で行なわれ得る。
【0081】
バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、コア;貯蔵後に、且つ顆粒が成分である蒸気加熱ペレット化プロセスの後に、少なくとも80%の活性を保持する顆粒の活性剤;水分バリアコーティング;及び顆粒の少なくとも25重量/重量%である水分水和コーティングを含む動物飼料用の顆粒であって、蒸気加熱ペレット化プロセスの前に0.5未満の水分活性を有する顆粒に製剤化され得る。
【0082】
顆粒は、ポリマー及びガムから選択される水分バリアコーティングを有し得、水分水和物質は無機塩であり得る。水分水和コーティングは、顆粒の25重量/重量%~45重量/重量%であり得、水分バリアコーティングは、顆粒の2重量/重量%~10重量/重量%であり得る。
【0083】
顆粒は、最大数分にわたり85℃~95℃で行なわれ得る蒸気加熱ペレット化プロセスを使用して製造され得る。
【0084】
或いは、組成物は、消費に適した液体製剤中に存在し、好ましくは、そのような液体消費物は、バッファー、塩、ソルビトール、及び/又はグリセロールの内の1つ又は複数を含む。
【0085】
また、飼料添加剤組成物は、例えば粉砕コムギ等の担体基材上に、バチルス属(Bacillus)ベースの成分を塗布する(例えば噴霧する)ことにより製剤化されてもよい。
【0086】
一実施形態では、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分を含むそのような飼料添加剤組成物を、プレミックスとして製剤化し得る。単なる例として、このプレミックスは、1種又は複数種の飼料成分を含み得、例えば、1種若しくは複数種のミネラル及び/又は1種若しくは複数種のビタミンを含み得る。
【0087】
或いは、この組成物は、消費に適した液体製剤中に存在し、好ましくは、そのような液体消費物は、バッファー、塩、ソルビトール、及び/又はグリセロールの内の1つ又は複数を含む。
【0088】
また、この飼料添加剤組成物は、例えば粉砕コムギ等の担体基材上に、バチルス属(Bacillus)ベースの成分を塗布する(例えば噴霧する)ことにより製剤化されてもよい。
【0089】
一実施形態では、本明細書で説明されているそのようなバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、プレミックスとして製剤化され得る。単なる例として、このプレミックスは、1種又は複数種の飼料成分を含み得、例えば、1種若しくは複数種のミネラル及び/又は1種若しくは複数種のビタミンを含み得る。
【0090】
本明細書で開示されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、任意の適切な飼料材料への添加に適していることが理解されるであろう。
【0091】
本明細書で使用される場合、飼料材料という用語は、動物により消費される基本的な飼料材料を指す。さらに、この飼料材料は、例えば、少なくとも1種又は複数種の未加工穀物、並びに/又は加工された植物性材料及び/又は動物性材料(例えば、ダイズミール若しくは骨粉)を含み得ることが理解されるであろう。
【0092】
動物が異なると必要な飼料も異なり、且つ同じ動物であっても、この動物の飼育される目的に応じて必要な飼料が異なり得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0093】
好ましくは、飼料は、トウモロコシ(maize)若しくはトウモロコシ(corn)、コムギ、オオムギ、ライコムギ、ライムギ、コメ、タピオカ、ソルガム、及び/又は副産物のいずれか、並びにダイズ平均、ナタネミール、キャノーラミール、綿実ミール、ヒマワリ種子平均、動物副産物ミール、及びこれらの混合物のようなタンパク質に富む成分を含む飼料材料を含み得る。より好ましくは、この飼料は、動物性脂肪及び/又は植物油を含み得る。
【0094】
任意選択的に、飼料はまた、例えばカルシウム等の追加のミネラル、及び/又は追加のビタミンを含み得る。好ましくは、この飼料は、トウモロコシダイズミールミックスである。
【0095】
別の態様では、飼料を製造する方法が提供される。飼料は、典型的には飼料ミルで製造され、この飼料ミルでは、最初に原料が好適な粒径に粉砕され、次いで適切な添加剤と混合される。次いで、飼料を、マッシュ又はペレットとして製造し得;後者は、典型的には、温度を目標レベルまで上昇させ、次いで飼料をダイに通して、特定のサイズのペレットを製造する方法を含む。このペレットを冷却する。続いて、脂肪及び酵素等の液体添加剤を添加し得る。飼料の製造はまた、特に、少なくとも蒸気の使用を含み得る好適な技術による、ペレット化の前の押し出し又は膨張を含むさらなる工程も含み得る。
【0096】
この飼料は、家禽(例えば、ブロイラー、産卵鶏、ブロイラー種鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、水鳥)、ブタ(全ての年齢区分)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)、又は魚等の単胃動物用の飼料であり得、好ましくは、この飼料は家禽用である。
【0097】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、動物飼料の上に置かれ得、即ちトップ給与され得る。或いは、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、動物の飲料水等の液体に添加され得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「接触した」という用語は、製品(例えば飼料)への本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分の間接的な又は直接的な塗布を指す。
【0099】
使用され得る塗布方法の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:バチルス属(Bacillus)ベースの成分を含む材料で製品を処理すること、本明細書で説明されている飼料添加剤組成物バチルス属(Bacillus)ベースの成分と、製品とを混合することによる直接的な塗布、製品表面上にそのような飼料添加剤組成物を噴霧すること、又は飼料添加剤組成物の調製物中に製品を浸漬すること。一実施形態では、本明細書で説明されている飼料添加剤組成物バチルス属(Bacillus)ベースの成分は、好ましくは製品(例えば飼料)と混合される。或いは、飼料添加剤組成物は、飼料の乳濁液又は原料に含まれ得る。これにより、この組成物が能力上の利益を付与することが可能になる。
【0100】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分を調製する方法はまた、粉末をペレット化するさらなる工程も含み得る。この粉末を、当該技術分野で既知の他の成分と混合し得る。この粉末、又はこの粉末を含む混合物を、ダイに通して押し出し得、得られたストランドを、可変長の好適なペレットへと切断する。
【0101】
任意選択的に、このペレット化工程は、ペレットの形成前に、蒸気処理又はコンディショニング段階を含み得る。粉末を含む混合物を、コンディショナー(例えば、蒸気注入を有するミキサー)に入れ得る。この混合物は、コンディショナー中で60~100℃等の特定の温度まで加熱され、典型的な温度は、70℃、80℃、85℃、90℃、又は95℃であるだろう。滞留時間は、数秒間から、数分間、さらには数時間まで可変であり得る。例えば、5秒、10秒、15秒、30秒、1分、2分、5分、10分、15分、30分、及び1時間。
【0102】
動物が異なると必要な飼料も異なり、且つ同じ動物であっても、この動物の飼育される目的に応じて必要な飼料が異なり得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0103】
任意選択的に、この飼料はまた、例えばカルシウム等の追加のミネラル、及び/又は追加のビタミンも含み得る。一部の実施形態では、この飼料は、トウモロコシダイズミールミックスである。
【0104】
飼料は、典型的には飼料ミルで製造され、この飼料ミルでは、最初に原料が好適な粒径に粉砕され、次いで適切な添加剤と混合される。次いで、飼料を、マッシュ又はペレットとして製造し得;後者は、典型的には、温度を目標レベルまで上昇させ、次いで飼料をダイに通して、特定のサイズのペレットを製造する方法を含む。このペレットを冷却する。続いて、脂肪及び酵素等の液体添加剤を添加し得る。飼料の製造はまた、特に、少なくとも蒸気の使用を含み得る好適な技術による、ペレット化の前の押し出し又は膨張を含むさらなる工程を含み得る。
【0105】
上述したように、バチルス属(Bacillus)ベースの成分、及び/又はこれを含む飼料を、任意の適切な形態で使用し得る。バチルス属(Bacillus)ベースの成分、及び/又はこれを含む飼料を、固体若しくは液体の調製物、又はその代替物の形態で使用し得る。固体調製物の例として、粉末、ペースト、巨丸剤、カプセル、ペレット、錠剤、粉剤、及び顆粒が挙げられ、これらは、可溶性であってもよいし、噴霧乾燥されていてもよいし、凍結乾燥されていてもよい。液体調製物の例として、水溶液、有機溶液又は水性-有機溶液、懸濁液、及び乳濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
一部の用途では、飼料添加剤組成物を、飼料と混合してもよいし、飲料水で投与してもよい。
【0107】
本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分を、飼料で許容される担体、希釈剤、又は添加剤と混合すること、及び(任意選択的に)包装することを含む、バチルス属(Bacillus)ベースの成分。
【0108】
飼料及び/又はバチルス属(Bacillus)ベースの成分を、少なくとも1種のミネラル及び/又は少なくとも1種のビタミンと組み合わせ得る。そのようにして得られた組成物を、本明細書ではプレミックスと称し得る。飼料は、少なくとも0.0001重量%のバチルス属(Bacillus)ベースの成分を含み得る。好適には、飼料は、少なくとも0.0005重量%;少なくとも0.0010重量%;少なくとも0.0020重量%;少なくとも0.0025重量%;少なくとも0.0050重量%;少なくとも0.0100重量%;少なくとも0.020重量%;少なくとも0.100重量%;少なくとも0.200重量%;少なくとも0.250重量%;少なくとも0.500重量%のバチルス属(Bacillus)ベースの成分を含み得る。
【0109】
好ましくは、食物又はバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、少なくとも1種の生理学的に許容される担体をさらに含み得る。この生理学的に許容される担体は、好ましくは、マルトデキストリン、石灰石(炭酸カルシウム)、シクロデキストリン、コムギ又はコムギ成分、スクロース、デンプン、Na2SO4、タルク、PVA、及びこれらの混合物の内の少なくとも1つから選択される。さらなる実施形態では、食物又は飼料は、金属イオンキレート剤をさらに含み得る。この金属イオンキレート剤は、EDTA又はクエン酸から選択され得る。
【0110】
一実施形態では、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分(カプセル化されているか否かを問わない)は、下記の内の少なくとも1つから選択される少なくとも1種の生理学的に許容される担体と共に製剤化され得る:マルトデキストリン、石灰石(炭酸カルシウム)、シクロデキストリン、コムギ又はコムギ成分、スクロース、デンプン、Na2SO4、タルク、PVA、ソルビトール、安息香酸塩、ソルベート、グリセロール、スクロース、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グルコース、パラベン、塩化ナトリウム、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、カルシウム、メタ重亜硫酸塩、ギ酸塩、及びこれらの混合物。
【0111】
一部の実施形態では、本明細書で説明されているバチルス属(Bacillus)ベースの成分は、生理学的に許容される担体中に存在するであろう。好適な担体は、大きくて緩やかに代謝される巨大分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子)であり得る。薬学的に許容される塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等の鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩等の有機酸の塩)を使用し得る。治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノール等の液体をさらに含み得る。加えて、そのような組成物中には、湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝物質等の補助物質が存在し得る。そのような担体は、患者による摂取のために、錠剤、丸剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液として医薬組成物を製剤化することを可能にする。製剤化されると、対象に直接投与し得る。処置する対象は動物であり得る。
【0112】
本明細書で開示されている組成物は、動物中において1種又は複数種の能力上の利点(即ち、動物の能力)をもたらし得、この能力上の利点は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択されると考えられる。
【0113】
好ましくは、「動物の能力」は、飼料効率、及び/又は動物の体重増加、及び/又は飼料転換率により決定される。
【0114】
「動物の能力の改善」は、本明細書で開示されている組成物を含まない飼料又は飼料添加剤組成物と比較した、飼料効率の増加、及び/又は体重増加の上昇、及び/又は飼料転換率の減少、及び/又は腸バリアの完全性の改善、及び/又は死亡率の減少、及び/又は糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少を意味する。
【0115】
好ましくは、「動物の能力の改善」は、飼料効率の増加、及び/又は体重増加の上昇、及び/又は飼料転換率の減少を意味する。本明細書で使用される場合、「飼料効率」という用語は、一定期間の間に、動物に食物を適宜給与するか又は規定量の食物を給与する場合に起こる、動物の体重増加の量を指す。
【0116】
「飼料効率の増加」は、飼料中における本発明に係る飼料添加剤組成物の使用による、前記飼料添加剤組成物が存在することなく給与した動物と比較した、飼料摂取の単位当たりの体重増加の上昇を意味する。
【0117】
本明細書で使用される場合、「飼料転換率」という用語は、動物の体重を規定量だけ増加させるために動物に給与される飼料の量を指す。
【0118】
飼料転換率の改善は、より低い飼料転換率を意味する。
【0119】
「より低い飼料転換率」又は「飼料転換率の改善」は、飼料中における飼料添加剤組成物の使用により、本明細書で開示されている飼料添加剤組成物を飼料が含まない場合に動物の体重を規定量だけ増加させるために必要とされる飼料の量と比較して、動物の体重を同量だけ増加させるために動物に給与する必要がある飼料の量が低いことを意味する。
【0120】
腸の完全性及び微生物叢は、腸の健康の維持に役立つと思われる。腸のバリアを支持することは、感染症及び炎症のリスクを減少させることに役立つ。例えば、タイトジャンクションとは、2個の細胞の密接に関連する領域のことであり、これらの細胞の膜は互いに結合して、流体に対して実質的に不透過性のバリアを形成する。タイトジャンクションの完全性を保護する能力により、動物の健康が改善され得る。タイトジャンクションはまた、さらなる細胞損傷をもたらす可能性がある「漏出性腸(leaking gut)」を避けるためにも維持される必要がある。そのため、動物の身体への細菌の意図しない侵入を妨げる、よく調整されたバリア機能を維持する動物の能力を支持するか又は増加させることにより、腸の完全性を改善することが望ましい。
【0121】
タイトジャンクション(閉塞ジャンクション(occluding junction)としても既知である)とは、2個の細胞の密接に関連する領域のことであり、これらの細胞の膜は互いに結合して、流体に対して実質的に不透過性のバリアを形成する。腸の健康という観点から、タイトジャンクションは、良好な腸の完全性又は不十分な腸の完全性のどちらかにつながる可能性がある腸の上皮細胞間のチャネルのことである。良好な腸の完全性が存在する場合には、クローディン3及びオクルディン等のタイトジャンクションタンパク質は、より高いレベルで2個の上皮細胞の間で発現され、腸管内腔から体循環への病原体の転位を防止し得るバリアを提供するのに役立つ(透過性の減少)。クローディンは、タイトジャンクションタンパク質の最も重要なファミリであり、クローディン3は、これらのタイトジャンクションタンパク質をコードする遺伝子の内の1つである。オクルディンは、別の重要なタイトジャンクションタンパク質である。クローディン及びオクルディンは、同定された最初のタイトジャンクション内在性膜タンパク質であった。タイトジャンクションタンパク質RNAの測定は、タイトジャンクションが動物の消化管中で維持されていない場合には、病原体及び毒素の腸管内腔から体循環への転位を可能にし得る透過性が生じ得、そのため動物の健康を危険にさらすか、又は動物の死(例えば敗血症)さえももたらすことから、バリアの完全性と腸の健康との指標として機能し得る。
【0122】
本明細書で教示されている組成物を使用することによる、糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少により、大腸菌(E.coli)に基づく感染症のさらなるまん延が減少し得、同様に動物の能力が改善され得る。
【0123】
栄養素消化率は、本明細書で使用される場合、消化管又は消化管の特定の区域(例えば小腸)から消失する栄養素の割合を意味する。栄養素消化率を、対象に投与されたものと、対象の糞便中に出るものとの間の差異として測定してもよいし、対象に投与されたものと、消化管の特定の区域(例えば回腸)の消化管内容物中に残存するものと間の差異として測定してもよい。
【0124】
栄養素消化率は、本明細書で使用される場合、ある期間の最中の、栄養素の摂取と、排泄物の総回収量による排泄された栄養素との間の差異により測定してもよいし;又は動物により吸収されず且つ全消化管で若しくは消化管のある区域で消失した栄養素の量を研究者が算出することを可能にする不活性マーカーの使用により測定してもよい。そのような不活性マーカーは、二酸化チタン、酸化クロム、又は酸不溶性灰分であり得る。消化率を、飼料中における栄養素の百分率として表し得るか、又は飼料中における栄養素の質量単位当たりの可消化栄養素の質量単位として表し得る。
【0125】
栄養素消化率は、本明細書で使用される場合、デンプン消化率、脂肪消化率、タンパク質消化率、及びアミノ酸消化率を包含する。
【0126】
エネルギー消化率は、本明細書で使用される場合、(消費された飼料の総エネルギー)-(糞便の総エネルギー)又は(消費された飼料の総エネルギー)-(動物の消化管の特定の区域(例えば回腸)で残存する消化管内容物の総エネルギー)を意味する。代謝エネルギーは、本明細書で使用される場合、見かけの代謝エネルギーを指し、(消費された飼料の総エネルギー)-(糞便、尿、及び消化のガス状生成物に含まれる総エネルギー)を意味する。エネルギー消化率及び代謝エネルギーを、飼料の代謝エネルギーを算出するために窒素排出に関して適切な補正を行ない、栄養素の消化率の測定と同じ方法を使用して、総エネルギーの摂取と、糞便中に又は消化管の特定の区域に存在する消化管内容物中に排泄された総エネルギーとの間の差異として測定し得る。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、対象中における食物性のヘミセルロース又は繊維の消化率又は利用を改善し得る。
【0128】
生存率という用語は、本明細書で使用される場合、生存している対象の数を意味する。「生存率の改善」という用語を、「死亡率の減少」と言い換え得る。
【0129】
「体重増加の上昇」は、飼料添加剤組成物が存在しない飼料を給与する動物と比較した、前記飼料添加剤組成物を含む飼料の給与時の動物の体重増加を指す。
【0130】
本明細書で開示されている組成物及び方法の非限定的な例として、下記が挙げられる:
1.動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防するための及び/又は処置するための組成物であって、バチルス(Bacillus)3BP5株(NRRL B-50510);B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)918株(NRRL B-50508)及び15AP4株(PTA-6507)を単独で含むか又はこれらの株に由来する培養上清と組み合わせて含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物成分を含む組成物。
2.前記組成物は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、死亡率の減少、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される1種又は複数種の能力上の利点をもたらす、実施形態1に記載の組成物。
3.直接給与微生物は内生胞子の形態である、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.前記組成物は、任意選択的にカプセル化され得る少なくとも1種の酵素をさらに含む、実施形態1又は2に記載の組成物。
5.前記組成物は、任意選択的にカプセル化され得る少なくとも1種の酵素をさらに含む、実施形態3に記載の組成物。
6.少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される、実施形態4に記載の組成物。
7.前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、実施形態1、2、5、又は6のいずれか一つに記載の組成物。
8.前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、実施形態3に記載の組成物。
9.前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、実施形態4に記載の組成物。
10.実施形態7に記載の飼料添加剤組成物を含む飼料。
11.実施形態8又は9に記載の飼料添加剤組成物を含む飼料。
12.実施形態7に記載の飼料添加剤組成物と、投与に関する指示書とを含むキット。
13.実施形態8又は9に記載の飼料添加剤組成物と、投与に関する指示書とを含むキット。
14.動物における大腸菌(E.coli)に基づく感染症を予防する及び/又は処置する方法であって、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)3BP5株(NRRL B-50510);バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)918株(NRRL B-50508)及び15AP4株(PTA-6507)を含むバチルス属(Bacillus)ベースの直接給与微生物成分を含む組成物の有効な量を投与することを含む方法。
15.組成物は、体重増加の上昇、飼料率の増加、腸バリアの完全性の改善、及び糞便中での大腸菌(E.coli)排出の減少からなる群から選択される1種又は複数種の能力上の利点をもたらす、実施形態14に記載の方法。
16.直接給与微生物は内生胞子の形態である、実施形態14又は15に記載の方法。
17.前記組成物は、任意選択的にカプセル化され得る少なくとも1種の酵素をさらに含む、実施形態14又は15に記載の方法。
18.前記組成物は、任意選択的にカプセル化され得る少なくとも1種の酵素をさらに含む、実施形態16に記載の方法。
19.少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
20.少なくとも1種の酵素は、フィターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、及びベータ-グルカナーゼからなる群から選択される、実施形態18に記載の方法。
21.前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、実施形態14、15、19、及び20のいずれか一つに記載の方法。
22.前記組成物は、飼料添加剤組成物又はプレミックスである、実施形態16に記載の方法。
【実施例】
【0131】
別途本明細書で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,N.Y.(1991)は、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0132】
本開示は、下記の実施例においてさらに定義される。実施例は、ある特定の実施形態を示しているものの、例示のみを目的として与えられていることを理解すべきである。上記の考察及び実施例から、当業者は、本開示の本質的な特徴を確認し得、且つ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な用途及び条件に適合するように様々な変更及び修正を加え得る。
【0133】
実施例1
F18腸内毒素原性大腸菌(Escherichia coli)でチャレンジした離乳ブタの成長能力、糞便の大腸菌(E.coli)排出スコア、及び腸バリア機能への、バチルス属(Bacillus)の3種の株をベースとする直接給与微生物(バチルス属(Bacillus)3BP5株、918株、15AP4株)の効果
材料及び方法
飼育及び環境
動物及び実験プロトコルの使用は、Animal Experiment Committeeにより承認されている。基礎常用飼料を、給与時に、エネルギーとタンパク質とのバランスが取れているように、且つNRC(2012)により推奨されているようにこの年齢の成長期のブタの栄養素要求量を満たすか又は上回るように、配合する(表1)。
【0134】
この基礎常用飼料を分割し、次いで、表1に示すように直接給与微生物(DFM)で処理する。飼料混合の最中では、ミキサーを洗い流して常用飼料の交差汚染を防止する。各バッチの開始、中間、及び終了での各処理常用飼料からサンプルを採取し、一緒にブレンドして、飼料中におけるDFMを計数する。各処理常用飼料からのサンプルを、混合の最中に採取し、必要となるまで-20℃で保管する。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
実験設計
体重が6.44±0.64kgの新たに離乳した雌雄混合(去勢ブタ及び若雌ブタそれぞれ50%)ブタ合計72匹を、17日間の実験で使用する。各ブタを遺伝子検査して、F18大腸菌(E.coli)に対する感受性を確実なものにする。これらのブタを個々に秤量し、体重でブロックし、ブロック内で1~4の常用飼料処置に無作為に割り当てる。これらのブタを、1個の檻当たり2匹のブタで収容し、これらのブタのチャレンジ状態に基づいて、下記の2つの別々の部屋の内の1つで飼育する:18匹の非チャレンジコントロ-ルブタ(9個の檻;PC処置)のためのより小さい部屋、並びに54匹のチャレンジブタ(27個の檻;NC、NC+DFM1、及びNC+DFM2に関する処置当たり9個の檻)のための他のより大きい部屋。全てのブタを、環境が管理された部屋で飼育する。各檻の片側には、ブタが飼料及び水を自由に摂取することが可能であるステンレス鋼製の自動給与器及び乳首給水器が備えられている。この実験を17日にわたり実行した。この実験は、常用飼料への7日間の適応期間と、それに続く10日間のチャレンジ期間とで構成された。離乳後7日目(この研究の7日目)に、NC処置群、NC+DFM1処置群、及びNC+DFM2処置群のブタに、F18毒素原性大腸菌(E.coli)(ETEC)を経口感染させる。PC処置群には、大腸菌(E.coli)でチャレンジしない。
【0139】
成長能力、並びに糞便サンプルの採取及び分析
体重及び飼料消費量を、0日目、7日目、及び17日目(試験終了)に測定して、平均1日増加量(ADG)、平均1日飼料摂取量(ADFI)、及び増加量対飼料比(G:F)をモニタリングする。7日目(チャレンジ直前)、並びに感染後(dpi)1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、及び10日目に糞便スワブを採取し、大腸菌(E.coli)排出を評価する。糞便スコアを、下記の尺度を使用して、盲検方式で毎日目視にてランク付けする:1=固体;2=半固体;3=半液体;4=液体。
【0140】
dpi10(この研究の最終日)に、各檻からの1匹のブタを捕獲ボルトにより安楽死させ、続いて失血させて下記の組織を採取する:新鮮な固定された回腸及び結腸のセグメント、並びに回腸及び結腸の消化管内容物。回腸組織のセグメントをPCRにより分析して、タイトジャンクション(腸)の完全性に影響を及ぼすタイトジャンクションタンパク質のRNA発現を決定する。
【0141】
成長能力データを、共変数としての初期体重と共にPROC MIXED(SAS 9.4)を使用して分析する。時間経過データを、PROC GLIMMIXでの反復測定として分析する。
【0142】
結果
成長能力:7日間の適応期間の最中に、4種の処置の間に、ADG、ADFI、又はG:Fの有意差はない(P>0.10)。しかしながら、NC+DFM2による体重増加は、他の全ての処置と比べて数値的に大きい。NC+DFM2常用飼料によるブタは、この研究の最初の7日間の最中に0.781kg(最終体重-初期体重)増加し、PC、NC、及びNC+DFM1はそれぞれ、0.239、0.188、及び0.365kg増加した(表3)。
【0143】
このことは、NC+DFM2常用飼料を給与したブタはまた、常用飼料適応の最初の7日間で、他の全ての処置と比べて、ADG及びG:Fも数値的に高い(表3)ことを意味する。
【0144】
【0145】
10日間のチャレンジ期間(この研究の8~17日目)後に、NC処置、NC+DFM1処置、及びNC+DFM2処置によるブタは、PCと比較して、最終BWが低く(P=0.002)、ADGが低く(P<.0001)、且つADFIが低い(P=0.002)(表4)。このことは、成功裏の大腸菌(E.coli)チャレンジの予想される結果である。しかしながら、NC処置群及びNC+DFM1処置群のみは、コントロールと比べてG:Fが低い。
【0146】
NC+DFM2ブタは、中間G:Fが、NCと比べて19%高く(0.647対0.542)且つPCと統計的に類似する(表4)。
【0147】
DFM2を給与したブタは、10日間のチャレンジ期間の最中に2.477kg増加したが、NC又はNC+DFM1を給与したブタはそれぞれ、2.312及び1.881kgしか増加しなかった(表4)。
【0148】
【0149】
大腸菌(E.coli)排出スコア:全体的に、PC処置大腸菌(E.coli)排出スコア(SS)は、予想されるように、チャレンジ処置と比べて低い(P<.0.01、表6)。NC+DFM2処置により、NCと比較して、2dpiでのSSは増加する(P=0.04)が、7dpiでのSSは減少する(P=0.003)(表5)。NC+DFM2は、dpi5及び10で、NCに対してSSを数値的に減少させる(表5)。
【0150】
全体的に、NC+DFM1及びNC+DFM2は、NCと比較して、大腸菌(E.coli)糞便排出を数値的に減少させる(それぞれ、2.12に対して1.96及び2.03;表6)。
【0151】
【0152】
【0153】
糞便スコア:感染後3日目から8dpiまで、PCは、予想されるように、NCと比べて糞便スコア(FS)が低い(P<.0001、表7)。2dpiでは、NC+DFM2を給与したブタは、NCブタと比べてFSが高いが、dpi7では、DFM2ブタは、NCブタと比べてFSが低い(P<0.10;表7)。
【0154】
同様に、dpi4~10では、DFM2を給与したブタは、NC給与ブタと比べてFCが数値的に低い。DFM1は、いずれのdpiでも、NCと比べてFSを有意に減少させなかった(表7)。
【0155】
【0156】
タイトジャンクションタンパク質RNA発現(腸の完全性):
タイトジャンクション(閉塞ジャンクションとしても既知である)とは、2個の細胞の密接に関連する領域のことであり、これらの細胞の膜は互いに結合して、流体に対して実質的に不透過性のバリアを形成する。腸の健康という観点から、タイトジャンクションは、良好な腸の完全性又は不十分な腸の完全性のどちらかにつながる可能性がある腸の上皮細胞間のチャネルのことである。良好な腸の完全性が存在する場合には、クローディン3及びオクルディン等のタイトジャンクションタンパク質は、2個の上皮細胞の間で発現し、腸管内腔から体循環への病原体の転位を防止し得るバリアを提供するのに役立つ。クローディンは、タイトジャンクションタンパク質の最も重要なファミリであり、クローディン3は、これらのタイトジャンクションタンパク質をコードする遺伝子の内の1つである。オクルディンは、別の重要なタイトジャンクションタンパク質である。クローディン及びオクルディンは、同定された最初のタイトジャンクション内在性膜タンパク質であった。タイトジャンクションタンパク質RNAの測定は、タイトジャンクションが動物の消化管中で維持されていない場合には、病原体及び毒素の腸管内腔から体循環への転位を可能にし得る透過性が生じ得、そのため動物の健康を含むか、又は動物の死さえももたらすことから、バリアの完全性と腸の健康との指標として機能し得る。
【0157】
この実験では、常用飼料処置は、タイトジャンクションタンパク質クローディン3のRNA発現への有意な効果はないが;PCは、NC及びNC+DFM1と比べて数値的に高い(0.982対それぞれ0.638及び0.648;
図1)ことが分かった。しかしながら、NC+DFM2は、PCと数値的に類似するクローディン3のRNA発現を示す(0.945対0.982;
図1)。
【0158】
処置(即ちDFM1又はDFM2)は、タイトジャンクションタンパク質オクルディンのRNA発現に対する有意な効果を有し、それにより、NC及びNC+DFM1は、PCと比べてオクルディン発現が低いが、NC+DFM2は、PCとNCとの中間である(P=0.045)。P値は、
図1に示すように処置間の全体的な差違を示す。